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イマー ) とコテ塗用 ( 断面増厚 ) の仕様の異なる 2 種類のポリマーセメントモルタルを交互に施工することによって, 既設床版と補強部材の一体化を強固に図っている さらに施工を下面から行うため, 交通に障害を与えず, 床版振動下にあっても既設床版と増厚部が一体化するものである 位計を設置してた

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記入上の注意 1 施設点検表 ( 統括表 ) 施設点検入力シート 写真帳 のシートの 黄色のセル のみ記入してください 2 施設点検表 ( 統括表 ) シートの主な不具合点には 特に無し や 無し 等の入力は行わないでください シート名の変更は行わないでください 非表示になっているシートがあります

Transcription:

(Ⅰ) 一般的性状 損傷の特徴 1 / 11 コンクリート床版 ( 間詰めコンクリートを含む ) からコンクリート塊が抜け落ちることをいう 床版の場合には, 亀甲状のひびわれを伴うことが多い 間詰めコンクリートや張り出し部のコンクリートでは, 周囲に顕著なひびわれを伴うことなく鋼材間でコンクリート塊が抜け落ちることもある 写真番号 9.1.1 説明コンクリート床版が抜け落ちた例 写真番号 9.1.2 説明 T 桁橋の間詰め部のコンクリートが抜け落ちた例 - 307 -

(Ⅰ) 一般的性状 損傷の特徴 2/ 11 写真番号 9.1.3 説明鋼板接着補強されたコンクリート床版が劣化し, 抜け落ちた例 1) コンクリートの抜け落ち, 補強鋼板の損傷 2) ( 参考 ) 路面 ( 舗装 ) 側の状況 ( 左上 ) 3) ( 参考 ) 抜け落ちたコンクリート床版を切断した断面状況 ( 右下 ) 写真番号 9.1.4 説明 PCプレテン床版橋の間詰めコンクリートが抜け落ちた例 - 308 -

(Ⅱ) 他の損傷との関係 3 / 11 床版の場合には, 著しいひびわれが生じていてもコンクリート塊が抜け落ちる直前までは, 床版ひびわれ として扱う 剥離が著しく進行し, 部材を貫通した場合に, 抜け落ち として扱う 写真番号 9.2.1 説明床版に著しいひびわれが生じている 広範囲に鉄筋が露出し, ひびわれも認められるものの, 明らかなコンクリート塊の抜け落ちは見られない場合は, 床版ひびわれ としてのみ扱う - 309 -

(Ⅱ) 他の損傷との関係 4/ 11 写真番号 9.2.2 説明床版コンクリートに剥離が生じている 広範囲に鉄筋が露出しているものの, 床版コンクリートの脱落はかぶり部分のみである 床版ひびわれ と 剥離 鉄筋露出 の 2 項目で扱う 写真番号 9.2.3 説明鋼板接着補強された床版コンクリートの劣化により, 車道に凹凸が生じ, 補強鋼板の端部とボルトには漏水による腐食が生じている 床版コンクリートの状態は目視では確認できないため, コンクリートのひびわれや抜け落ちの評価はできない この例では, 舗装の異常, 腐食 防食機能の劣化 コンクリート補強材の損傷, 漏水 遊離石灰 の 5 項目で扱う - 310 -

5/ 11 (Ⅱ) 他の損傷との関係 写真番号 9.2.4 説明 PC-T 桁の間詰めコンクリートが下方に移動し, 車道の縦断方向に凹凸が生じ, 間詰めコンクリートの打継目にずれと漏水が生じている 間詰め部と T 桁の境界部に漏水と遊離石灰の析出が見られるものの, 間詰めコンクリートが明らかに抜け落ちる直前の状態であるかどうかは外観からは評価できない 舗装の異常, ひびわれ, 漏水 遊離石灰 の 3 項目で扱う 写真番号 9.2.5 説明コンクリート塊が抜け落ちており, また, その周囲の床版にひびわれと遊離石灰が生じている 当該要素では 抜け落ち でのみで扱う - 311 -

6 / 11 (Ⅲ) 損傷程度の評価 損傷程度の評価は, 抜け落ち の損傷評価基準に基づいて行う (1) 損傷評価基準 1) 損傷程度の評価区分 区分 a 損傷なし b - c - d - e コンクリート塊の抜け落ちがある 一般的状況 - 312 -

1 1 (Ⅲ) 損傷程度の評価 (2) 評価例 (1/1) 評価 e 7/ 11 写真番号 9.3.1 コンクリート塊の抜け落ちがある 写真番号 9.3.2 コンクリート塊の抜け落ちがある ( 鉄筋が明らかに浮いて, その裏側の床版コンクリートが相当範囲にわたり脱落している ) 写真番号 9.3.3 間詰め部コンクリートが抜け落ちている ( 抜け落ち部より舗装が見えている ) - 313 -

(Ⅳ) 対策区分の判定 8 / 11 (1) 一般 対策区分の判定は, 構造上の部材区分あるいは部位毎, 損傷種類毎に行なわれ, 損傷程度の評価結果, その原因や将来予測, 橋全体の耐荷性能へ与える影響, 当該部位, 部材周辺の部位, 部材の現状, 必要に応じて同環境とみなせる周辺の橋梁の状況等をも考慮し, 今後道路管理者が執るべき処置を助言する総合的な評価であり, 橋梁検査員の技術的判断が加えられたものである したがって, 構造特性や架橋条件, 利用状況などにより異なる判定となるため, 定型的な判定要領や目安は用意されていない また, 要素毎に記録される損傷程度の評価や損傷写真のみで形式的に評価してはならない 橋梁検査員の判定は, あくまでも道路管理者への一次的な評価としての所見, 助言的なものであり, 最終的に道路管理者は, これらを参考として, 当該橋や部材の維持管理等も考慮し, 道路管理者による評価や詳細調査によって対策区分の見直しを行い, 意思決定を行うこととなる (2) 抜け落ちの判定の参考 判定区分 E1 E2 S 判定の内容 橋梁構造の安全性の観点から, 緊急対応が必要な損傷 その他, 緊急対応が必要な損傷 詳細調査が必要な損傷 コンクリート床版 ( 間詰めコンクリートを含む ) からのコンクリート塊の抜け落ちであり, 基本的には, 構造安全性を著しく損なう状況と考えられ, 緊急対応が妥当と判断されることが多い 万一上記に該当しない場合であっても, 抜け落ちが生じており, 路面陥没によって交通に障害が発生することが懸念される状況などにおいて, 緊急対応が妥当と判断できる場合がある ( 参考 ) PC-T 桁の間詰め部においてひびわれや漏水 遊離石灰が発生しており, 無筋で抜け落ちにつながるおそれがある状況などにおいては, 当該損傷の対策区分として詳細調査を実施することが妥当と判断できる場合がある ちなみに, 次の PC-T 桁の間詰め部において, 無筋の可能性があることが知られている プレテン桁の設計が 1971 年以前, 又は竣工年が 1974 年以前の橋梁 ポステン桁の設計が 1969 年以前, 又は竣工年が 1972 年以前の橋梁 M 維持工事で対応が必要な損傷 B,C 補修等が必要な損傷 ( 参考 ) 上記 S 参考に記載した損傷に対する詳細調査などによって抜け落ちの可能性があると判断した場合には, 損傷の程度や発生位置が部材の機能に及ぼす影響, 第三者に障害を及ぼす可能性などの観点から,B,C の判断が分かれると考えられる (3) 事例 関連する事例写真を示す 欄には, 各写真毎に, 1 部位 部材に関する補足説明 判定の参考となる情報 2 状況に関する補足説明 判定の参考となる情報 3 その他の事項を, 各頁毎に, 4 共通する留意事項を示す - 314 -

1 2 (Ⅳ) 対策区分の判定 (3) 事例 (1/2) 9/ 11 写真番号 9.4.1 1 床版 2 3 輪荷重位置で, 床版のコンクリートが鉄筋を残して落下している 床版の抜け落ちでは, 鉄筋は破断していないことが多い 写真番号 9.4.2 1 床版 2 輪荷重位置で, 床版のコンクリートが鉄筋を残して落下している 4 抜け落ちが生じた床版では, 抜け落ち部周辺あるいは車線方向の同じ位置で, 舗装に凹凸や顕著なひびわれ, 過去の補修痕が認められることがある 床版コンクリートでは, 鉄筋を残してコンクリートだけが落下することが多い 抜け落ち前には, 鉄筋に沿って格子状にコンクリートがブロック化していることが多い また, 抜け落ちた箇所の近傍や前後で舗装に顕著なひびわれが生じていたり, 過去に同じ車線位置で補修が繰り返されていることがある 3-315 -

2 2 (Ⅳ) 対策区分の判定 (3) 事例 (2/2) 10 / 11 写真番号 9.4.3 1 床版間詰め部 2 間詰めコンクリートが落下している ( 抜け落ち部の黒いものは舗装 ) 3 古いT 桁ではT 桁フランジ端部にテーパーがないので, 間詰めとの境界部が劣化すると, 間詰めコンクリートが大きな塊で抜け落ちることがある 写真番号 9.4.4 1 床版間詰め部 2 床版間詰めコンクリートが移動し, ひびわれが発生している 3 間詰めコンクリートが抜け落ちる場合, 桁との境界部が劣化して漏水や遊離石灰の析出, 錆汁の漏出, 間詰め部のずれが見られることがある 写真番号 9.4.5 1 PC-T 桁床版部 2 3 横締め用 PC 鋼材が破断し, 定着部から抜け出している 横締め緊張力が適切に機能していない場合では, 間詰め部の脱落を生じることがある 4 間詰め部と PC 桁との間が無筋でテーパーも無い場合, 横締め緊張力が低下又は喪失すると, 輪荷重によって間詰め部がずれたり, 落下することがある 間詰め部と桁との境界に差し筋が配置されているかどうかは, 非破壊検査によって確認できることがある - 316 -

(Ⅴ) その他参考情報 11 / 11 情報 (1) ( 留意事項 ) 鋼板接着や炭素繊維補強が行われていると, 床版下面の外観だけでは抜け落ちの徴候の発見が遅れることがある 床版に局所的な著しい遊離石灰とひびわれが生じ, かつ, 漏水がある場合には, 抜け落ちが生じる危険性が高い場合がある 床版のかぶりコンクリートが大規模に剥落した箇所では, 床版の耐荷力低下が懸念され, 早期に抜け落ちに至ることもある また, 剥落の原因によっては, その周囲でも同様の変状が進行していることがある 写真番号 9.5.1 補強が行われている床版に損傷が生じた例 鋼板や炭素繊維を床版裏面に設置した床版では, 床版コンクリートの状態が目視できないため, 劣化状況が判断ができないことがある 写真番号 9.5.2 かぶりコンクリートが剥落し, 露出鉄筋に錆が, 周囲には遊離石灰が見られる 床版の有効断面の減少により耐荷力が低下し, 早期に抜け落ちに進展することがある - 317 -