HEV の車両全体シミュレーションによるシステム最適化 MathWorks Japan アプリケーションエンジニアリング部アプリケーションエンジニア張莉 2016 The MathWorks, Inc. 1
マルチモードハイブリッド自動車 Engine Mode EV Mode SHEV Mode 1. Higuchi, N., Sunaga, Y., Tanaka, M., Shimada, H.: Development of a New Two-Motor Plug-In Hybrid System, SAE 2013-01-1476 (2013) 2
システム設計の段階の課題 小型軽量化 コスト削減 燃費向上 部品構成 点数削減 バッテリーの小型化 コンパクトな車体設計 軽い材料の使用 システム全体への影響は? 走行性能 安全性能 どこまでの小型化が最適? 部品構成 点数削減 ユニット原価削減 試作回数の削減 開発の不具合を最小化 ( 手戻り防止 ) 最初からシステム全体の把握が大事 早い段階での検証が必要 バッテリー容量の向上 エネルギー回生 エネルギーマネジメントの最適化アイドルストップ システム全体への影響 他の性能とのトレードオフ どこまで最適化できる? 複雑なハイブリッドシステムだからこそ 机上で 1D シミュレーションによる検討 検証が重要 3
1D シミュレーションとは? 単純に空間的な 1 次元の意味ではなく 物事の 本質 を的確にとらえ 機能 を見通しのよい形式でシンプルに表現すること 例えば 物理系の場合 システム設計に必要な物理的な振る舞いを抽出 再現 ( 抽象化 ) 走行パターン 制御器 トランスミッション 車両 エンジン 機械 電気 熱 流体などの複合領域の現象を表現しやすい 一般的に 3D に比べてシミュレーション負荷が小さい 詳細な形状 配置 (3D) 決定前の機能 性能検討が一つの使い所 4
本日のキーポイント 車両全体モデルの構築 ( ハードの仕様 諸元検討 ) モデルを活用した走行モード制御ロジックの開発 燃費向上の検討 ( エネルギーマネジメント最適化 ) 5
アジェンダ 1. 車両全体 1D モデリング 2. 走行モード制御ロジック開発への応用 3. 燃費最適化への応用 6
システムの挙動は? パフォーマンスは? システムレベルのモデルを構築 モデリングツール 7
マルチドメインの物理対象をモデリングするには Simscape が便利 8
Simscape は システムの構造を直観的に 表現できる F Spring = k Spring *(z Car ) F Shock = b Shock *( dz Car ) dt Simulink Simscape d 2 z Car dt 2 = F Spring F Shock m Car 9
Simscape は システムの変更や拡張を 柔軟に対応できる Simulink Simscape F Spring = k Spring *(z Car z Whl ) F Shock = b Shock *( dz Car dt d 2 z Car dz Whl ) dt = F Spring F Shock m Car dt 2 F Tire = k Tire *(z Whl ) + b Tire *( dz Car dt d 2 z Whl dt 2 = F Spring + F Shock F Tire m Car ) 10
Simscape 製品群 11
システムレベルのモデル モデリングツール 12
電気システムプラントモデル用途 / 目的別に詳細度の異なるライブラリ開発 バッテリー ( 抽象 ) SimPowerSystems 内部抵抗を含んだ充電依存ソース バッテリー ( 詳細 ) Simscape 熱と SOC 依存性を含んだ RC 等価回路 13
電気システムプラントモデル用途 / 目的別に詳細度の異なるライブラリ開発 モータ / インバーター ( 抽象 ) SimElectronics サーボモータブロック 最大トルク / 速度曲線効率マップ モータ / インバーター ( 詳細 ) SimPowerSystems PMSM ブロック (3 相 ) IGBT ブリッジ ( スイッチングダイナミックス ) [3] 14
<electromagnetic_torque> 計算時間 <Current> Amplitude <Voltage> rotor_velocity_rpm 抽象モデルと詳細モデルのシミュレーション結果比較 1500 1000 500 0-500 Measured vs. Simulated Responses Chirp 抽象モデル 詳細モデル ローター速度 機械系では電気系の詳細度を変えてもほぼ同じ結果 600 400 200 0 200 150 電圧 電流 電気系では高詳細度モデルで PWM 動作による高調波が可視化 100 50 0 600 400 電磁トルク 200 0-200 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 Time (sec) 時間 (s) モデル詳細度 15
可視化したい現象に基づき詳細度を選択 プラント ( 制御対象 ) 精度パラメータ計算速度 抽象モデル 定常特性少速 今回 燃費最適化のため 繰り返しシミュレーションが必要なので 実行速度の速い抽象モデルを使用 詳細モデル 過渡特性多遅 16
熱システムプラントモデル クーリングシステム Simscape 熱流体ライブラリ モーター ジェネレーター バッテリー 熱伝導と熱伝達 17
エンジンモデル Model Based Calibration Toolbox 高精度なエンジン統計モデル 最適なキャリブレーションテーブルを生成 18
車両モデル パワートレイン Simscape Driveline 車両進行方向の車両ダイナミクス タイヤ ( マジックフォーミュラ ) 摩擦ブレーキ デファレンシャルギア / ギア ドグクラッチ 19
物理ドメインごとに異なる計算周期を設定 マルチレートシステムのシミュレーション 計算の効率化 リアルタイムハードウェア ( マルチコア ) で使用可能 10 ms 1 ms 100 ms 20
アジェンダ 1. 車両全体 1D モデリング 2. 走行モード制御ロジック開発への応用 3. 燃費最適化への応用 21
ドライブサイクルとドライバーモデル ドライブサイクル 複数都市 / クルーズサイクル US06, FTP75 ドライバーモデル アクセル / ブレーキペダル : 参照値追従の PI 制御 Stateflow で制御状態を直観的に表現 ( 停止 加速 減速 ) 22
マルチモード制御 Mode Control EV SHEV 遷移条件 Engine 23
マルチモード制御例 Mode Control EV SHEV Eng=1 Engine Engine Control Generator Control Off Start SHEV (Speed Control) Eng=1 Off Start SHEV (Torque Control) Eng=1 Engine Drive (Power Split w/ Motor) Clutch=1 Wait for Clutch Speed Match (Close Clutch = Speeds Matched) 24
アジェンダ 1. 車両全体 1D モデリング 2. 走行モード制御ロジック開発への応用 3. 燃費最適化への応用 25
マルチモード制御の最適化 モード間の境界は エネルギー消費量に大きな影響を与える 最適な境界形状は? 26
最適化を行うための必要条件 ドライブサイクル 0-60 と US06 の組み合わせ モデル プラント ドライバー コントロール 入力変数 目的出力 最適化アルゴリズム 遺伝的アルゴリズム 27
Requested Tractive Force [N] 最適化問題の定義 8000 7000 6000 5000 4000 3000 EV SHEV 2000 1000 Engine / Power Split 0 0 20 40 60 80 100 120 140 160 Vehicle Speed [kph] プラントの内部制約を満たしつつ 燃費を最適化 28
遺伝的アルゴリズムとは? 進化生物学の概念を使用 目的関数に対してテストされている候補ソリューションの初期世代から開始 その後の世代は 選択 交叉と突然変異を経て初期世代から進化 長所 短所 大域的に解を探すことが得意 計算負荷が高い Global Optimization Toolbox 29
最適化プロセスの高速化 Parallel Computing Toolbox 複数シミュレーションの並列実行 複数のコア / プロセッサで複数のシミュレーションを並列実行 トータルのシミュレーション実行時間の大幅な短縮 MATLAB Distributed Computing Server によるコンピュータクラスタを用いた並列処理 Computer Cluster Workers HEV Model Simulation 1 Simulation 2 Desktop System Workers for parfor シミュレーションの並列実行によるテストプロセスの高速化 30
初期世代の生成 40 1.00 0.01-0.02-0.00 0.03 30 20 10 8 6 0.01 1.00-0.00-0.02-0.00 4 2 10-0.02-0.00 1.00 0.01 0.05 5 0 40-0.00-0.02 0.01 1.00-0.00 20 0 1 0.03-0.00 0.05-0.00 1.00 0-1 10 20 30 40 2 4 6 8 0 5 10 0 20 40-1 0 1 31
MPGe 世代の進化 35 30 25 20 20 40 60 80 100 120 140 160 180 Population [-] 32
MPGe US06 モードでの燃費最適化 34 33 32 31 30 0 5 10 15 20 25 8 6 40 30 20 10 0 0 5 10 15 20 25 2 1.5 4 2 0 0 5 10 15 20 25 1 0.5 0 0 5 10 15 20 25 15 10 5 0 0 5 10 15 20 25 Generation -0.1-0.2-0.3-0.4-0.5 0 5 10 15 20 25 Generation 33
HEV 並列計算のスケーリング ノート PC/ デスクトップ 簡単 計算規模に制限あり 40 コアのインテルシステム 簡単 高速 高価 Amazon EC2 高速 オンデマンド 低価格 適用フェースが早い http://www.mathworks.com/discovery/matlab-ec2.html 34
Requested Tractive Force [N] Requested Tractive Force [N] 最適化結果 8000 8000 7000 7000 6000 6000 5000 5000 4000 3000 2000 EV SHEV 4000 3000 2000 EV SHEV 1000 Engine / Power Split 0 0 50 100 150 Vehicle Speed [kph] Nominal 1000 Engine / Power Split 0 0 50 100 150 Vehicle Speed [kph] Optimized 燃費は 13.14km/L から 14.37km/L を改善 (+9.4%) 計算時間は 27 日から 0.5 日に 35
まとめ Simscape Simscape PowerSystems Simscape Electronics Simscape Driveline Stateflow 物理モデリングツールによる車両全体モデルの直観的な構築 モデルを活用した走行モード制御ロジックの開発 車両全体シミュレーションによる燃費の最適化 Global Optimization Toolbox Parallel Computing Toolbox 36
その他の適用事例 パワーショベル パワーウィンドウ 冷却 / 空調サイクル デュアル クラッチ トランスミッション パワーステアリング 37
もう少し深く知りたい方に向けの情報 製品名 物理モデリング領域 概要説明ショートムービー 基本操作チュートリアル ブロックリスト 機能紹介 Web ページ Simscape マルチドメインの基本環境 2:16 マス バネ ダンパ Simscape Power Systems ( 旧 SimPowerSystems ) パワエレ / 電力系統 2:26 誘導モータ駆動装置 Simscape Electronics ( 旧 SimElectronics ) メカトロ / 電子回路 2:03 DC モータ駆動装置 Simscape Fluids ( 旧 SimHydraulics ) 油圧回路 (1D) 1:49 油圧駆動機構 Simscape Multibody ( 旧 SimMechanics ) メカ (3D) 1:50 単振り子 Simscape Driveline ( 旧 SimDriveline ) 動力伝達装置 (1D) 1:57 車両 38
トレーニング コンサルティングサービス 投資 効果 トレーニングサービス 定期トレーニング ; 東京 名古屋 大阪にて定期開催 基礎コース (11) 応用コース(11) 専門コース (4) をご提供 オンサイトトレーニング ; お客様サイトにて開催ご要望に応じて3つのレベルでカリキュラムのカスタマイズが可能 投資対効果の最大化 コンサルティングサービス カスタム Jumpstart ; 顧客モデルをベースにした短期集中型ツール導入サポート Advisory Service; 顧客 Project に合わせた中長期アドバイザリサービス 39
技術トレーニングサービスについて 習熟度合わせてコースを選択いただくことで無理なくスキルアップを図れます 専門 応用 基礎 (e.g. 制御システムエンジニア向けトレーニング ) Programming Xilinx Zynq SoCs with MATLAB and Simulink Simulink モデルの管理 Embedded Coder による量産向けコード生成 MATLAB/Simulink によるモデルベース開発 MATLAB と Simulink による制御設計 Simscape によるマルチドメインシステムの物理モデリング SimPowerSystems による電力系統の物理モデリング Simulink モデルの検証と妥当性確認 MATLAB 基礎 Simulink 基礎 Stateflow 基礎 リアルタイムコードの生成およびテストの基礎 40
Accelerating the pace of engineering and science Li.Zhang@mathworks.co.jp 2016 The MathWorks, Inc. MATLAB and Simulink are registered trademarks of The MathWorks, Inc. See www.mathworks.com/trademarks for a list of additional trademarks. Other product or brand names may be trademarks or registered trademarks of their respective holders. 41