金融所得税制の見直し

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税調第19回総会 資料3-3

中小企業の退職金制度への ご提案について

日本版IRA(個人型年金積立金非課税制度)と番号制度

(2) 源泉分離課税制度源泉分離課税制度とは 他の所得と全く分離して 所得を支払う者 ( 銀行 証券会社等 ) がその所得の支払の際に 一定の税率で所得税を源泉徴収し それだけで所得税の納税が完結するものです 1 対象となる所得代表的なものとして 預金等の利子所得 定期積金の給付補てん金等があります

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参考 平成 27 年 11 月 政府税制調査会 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する論点整理 において示された個人所得課税についての考え方 4 平成 28 年 11 月 14 日 政府税制調査会から 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告 が公表され 前記 1 の 配偶

2. 改正の趣旨 背景税制面では 配偶者のパート収入が103 万円を超えても世帯の手取りが逆転しないよう控除額を段階的に減少させる 配偶者特別控除 の導入により 103 万円の壁 は解消されている 他方 企業の配偶者手当の支給基準の援用や心理的な壁として 103 万円の壁 が作用し パート収入を10

第5回基礎問題小委員会 礎5-4

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スライド 1

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2. 改正の趣旨 背景の等控除は 給与所得控除とは異なり収入が増加しても控除額に上限はなく 年金以外の所得がいくら高くても年金のみで暮らす者と同じ額の控除が受けられるなど 高所得の年金所得者にとって手厚い仕組みとなっている また に係る税制について諸外国は 基本的に 拠出段階 給付段階のいずれかで課

日本版IRA(個人型年金積立金非課税制度)と番号制度

[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

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上場株式等の譲渡益に係る課税 上場株式等の税金について 上場株式等の譲渡益に係る税率は以下の通りです 平成 25 年 1 月 1 日 ~ 平成 25 年 12 月 31 日 平成 26 年 1 月 1 日 ~ 平成 49 年 12 月 31 日 平成 50 年 1 月 1 日 ~ % (

公募株式投資信託の解約請求および償還時

市場と経済A

改正された事項 ( 平成 23 年 12 月 2 日公布 施行 ) 増税 減税 1. 復興増税 企業関係 法人税額の 10% を 3 年間上乗せ 法人税の臨時増税 復興特別法人税の創設 1 復興特別法人税の内容 a. 納税義務者は? 法人 ( 収益事業を行うなどの人格のない社団等及び法人課税信託の引

年金制度の体系 現状 ( 平成 26 年 3 月末現在 ) 加入員数 48 万人 加入者数 18 万人 加入者数 464 万人 加入者数 788 万人 加入員数 408 万人 国民年金基金 確定拠出年金 ( 個人型 D C ) 確定拠出年金 ( 企業型 DC) 厚生年金保険 被保険者数 3,527

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「経済政策論(後期)《運営方法と予定表(1997、三井)

投資法人の資本の払戻 し直前の税務上の資本 金等の額 投資法人の資本の払戻し 直前の発行済投資口総数 投資法人の資本の払戻し総額 * 一定割合 = 投資法人の税務上の前期末純資産価額 ( 注 3) ( 小数第 3 位未満を切上げ ) ( 注 2) 譲渡収入の金額 = 資本の払戻し額 -みなし配当金額

1: とは 居住者の配偶者でその居住者と生計を一にするもの ( 青色事業専従者等に該当する者を除く ) のうち 合計所得金額 ( 2) が 38 万円以下である者 2: 合計所得金額とは 総所得金額 ( 3) と分離短期譲渡所得 分離長期譲渡所得 申告分離課税の上場株式等に係る配当所得の金額 申告分

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6 課税上の取扱い日本の居住者又は日本法人である投資主及び投資法人に関する課税上の一般的な取扱いは 下記のとおりです なお 税法等の改正 税務当局等による解釈 運用の変更により 以下の内容は変更されることがあります また 個々の投資主の固有の事情によっては異なる取扱いが行われることがあります (1)

「公的年金からの特別徴収《Q&A

平成18年度地方税制改正(案)について

税調第19回総会 資料3-1

公共債の税金について Q 公共債の利子に対する税金はどのようになっていますか? 平成 28 年 1 月 1 日以後に個人のお客様が支払いを受ける国債や地方債などの特定公社債 ( 注 1) の利子については 申告分離課税の対象となります なお 利子の支払いを受ける際に源泉徴収 ( 注 2) された税金

金融庁の税制改正要望について(1)

公共債の税金について Q 公共債の利子に対する税金はどのようになっていますか? 平成 28 年 1 月 1 日以後に個人のお客様が支払いを受ける国債や地方債などの特定公社債 ( 注 1) の利子については 申告分離課税の対象となります なお 利子の支払いを受ける際に源泉徴収 ( 注 2) された税金

第11 源泉徴収票及び支払調書の提出

【表紙】

握の問題 執行面での対応の可能性等を含め様々な角度から総合的に検討する 複数税率の導入について 財源の問題 対象範囲の限定 中小事業者の事務負担等を含め様々な角度から総合的に検討する 施策の実現までの間の暫定的及び臨時的な措置として 簡素な給付措置を実施する つまり 低所得者対策として 給付付き税額

年金制度のポイント

「経済政策論(後期)《運営方法と予定表(1997、三井)

なるほどNISA 第9回 財形貯蓄・確定拠出年金などとの違い

上場株式等の住民税の課税方式の実質見直し

平成19年度税制改正.xls

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[Q1] 復興特別所得税の源泉徴収はいつから行う必要があるのですか 平成 25 年 1 月 1 日から平成 49 年 12 月 31 日までの間に生ずる所得について源泉所得税を徴収する際 復興特別所得税を併せて源泉徴収しなければなりません ( 復興財源確保法第 28 条 ) [Q2] 誰が復興特別所

「経済政策論(後期)」運営方法と予定表(1997、三井)

1. 復興基本法 復興の基本方針 B 型肝炎対策の基本方針における考え方 復旧 復興のための財源については 次の世代に負担を先送りすることなく 今を生きる世代全体で連帯し負担を分かち合うこととする B 型肝炎対策のための財源については 期間を限って国民全体で広く分かち合うこととする 復旧 復興のため

1. 指定運用方法の規定整備 今般の改正により 商品選択の失念等により運用商品を選択しない者への対応として あらかじめ定められた指定運用方法 に係る規定が整備されます 指定運用方法とは 施行日(2018 年 5 月 1 日 ) 以降 新たに確定拠出年金制度に加入された方が 最初の掛金納付日から確定拠

確定拠出年金制度に関する改善要望について

上場株式等の住民税の課税方式の解説(法改正反映版)

第16回税制調査会 別添資料1(税務手続の電子化に向けた具体的取組(国税))

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株式等の譲渡(特定口座の譲渡損失と配当所得等の損益通算及び翌年以後への繰越し)編

1 1. 課税の非対称性 問題 1 年をまたぐ同一の金融商品 ( 区分 ) 内の譲渡損益を通算できない問題 問題 2 同一商品で 異なる所得区分から損失を控除できない問題 問題 3 異なる金融商品間 および他の所得間で損失を控除できない問題

経 [2] 証券投資信託の償還 解約等の取扱い 平成 20 年度税制改正によって 株式投資信託等の終了 一部の解約等により交付を受ける金銭の額 ( 公募株式投資信託等は全額 公募株式投資信託等以外は一定の金額 ) は 譲渡所得等に係る収入金額とみなすこととされてきました これが平成 25 年度税制改

債券税制の見直し(金融所得課税の一体化)に伴う国債振替決済制度の主な変更点について

積立 NISA の創設 1. 改正のポイント (1) 趣旨 背景 1 家計の安定的な資産形成を支援する観点から 少額の積立 分散投資を促進するための 積立 NISA が創設される (2) 内容 1 積立 NISA は 20 歳以上の居住者等が金融機関に開設した非課税口座内に 積立 NISA 専用の累

2017 年度税制改正大綱のポイント ~ 積立 NISA の導入 配偶者控除見直し ~ 大和総研金融調査部研究員是枝俊悟

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( 外国 ) 同上 ケース ( ) 相続人が取得した全 2 財産に対して課税 ( 外国 ) 国内財産に対しての み課税 ケース ( ) 相続人が取得した全 3 財産に対して課税 ( 外国 ) 同上 ( 平成 25 年度税制改正より ) ケース ( ) 被相続人 相続人いず 4 れも 5 年超居住の場

「経済政策論(後期)《運営方法と予定表(1997、三井)

税金読本(11-1)年金と税金

上場株式等の配当等に対する課税

確定拠出年金制度に関する改善要望について

第3回税制調査会 総3-2

このページを印刷する 2017 年 11 月 23 日森信茂樹 : 中央大学法科大学院教授東京財団上席研究員 副業 兼業の時代 所得税控除見直 し で不公平を正せ 来年度税制改正の作業が 与党税調で始まっている 連日のように改正案の 断片が報道されているが 全体像がいまだよくわからない そこで これ

平成19年度分から

ワコープラネット/標準テンプレート

(4) 今月下旬に所得税法施行令を改正するとともに 法令解釈通達を発遣し 上記のとおり 保険年金 に係る所得税の取扱いを変更いたします 取扱い変更後 所得税の還付の手続きが可能となります なお 納税者の方々には 次の点にご注意いただく必要があります 所得税が納めすぎとなっていた場合の還付手続きには

株式等の譲渡(前年からの繰越損失を譲渡所得及び配当所得から控除)編

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特定口座一般口座株式等の譲渡 売却などが該当 ) による所得は 申告分離課税の対象となっており 原則として お客さまによる譲渡損益の計算や申告納税の手続きが必要です 特定口座には これらの事務負担を軽減する機能があります 特定口座の機能 上場株式等の譲渡損益の計算 管理を行います 特定口座内に保管す

企業年金のポータビリティ制度 ホ ータヒ リティ制度を活用しない場合 定年後 : 企業年金なし A 社 :9 年 B 社 :9 年 C 社 :9 年 定年 ホ ータヒ リティ制度を活用する場合 ホ ータヒ リティ制度活用 ホ ータヒ リティ制度活用 定年後 :27 年分を通算した企業年金を受給 A

iii. 源泉徴収選択口座への受入れ源泉徴収ありを選択した特定口座 ( 以下 源泉徴収選択口座 といいます ) が開設されている金融商品取引業者等 ( 証券会社等 ) に対して 源泉徴収選択口座内配当等受入開始届出書 を提出することにより 上場株式等の配当等を源泉徴収選択口座に受け入れることができま

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e. 未成年者に係る少額上場株式等の非課税口座制度 ( ジュニア NISA) 未成年者に係る少額上場株式等の非課税口座制度に基づき 証券会社等の金融商品取引業者等に開設した未成年者口座において設定した非課税管理勘定に管理されている上場株式等 ( 平成 28 年 4 月 1 日から平成 35 年 12

2. 改正の趣旨 背景給与所得控除額の変遷 1 昭和 49 年産業構造が転換し会社員が急速に増加 ( 働き方が変化 ) する中 (1) 実際の勤務関連経費が給与所得控除を上回っても 当時は特定支出控除 ( 昭和 63 年導入 ) がなく 会社員は実際の勤務関連経費がいくら高くても実額控除できなかった

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第6回税制調査会 総6-3

金融資産運用設計関連 主な改正事項

金融調査研究会報告書 わが国家計の資産形成に資する金融制度・税制のあり方

給与所得控除額の改正前後の比較 改正前 改正後 給与等の収入金額給与所得控除額給与等の収入金額給与所得控除額 180 万円以下 収入金額 40% 65 万円に満たない場合は 65 万円 180 万円以下 収入金額 40%-10 万円 55 万円に満たない場合は 55 万円 180 万円超 360 万

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個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入状況

(ⅲ) 源泉徴収選択口座への受入れ 源泉徴収ありを選択した特定口座 ( 以下 源泉徴収選択口座 といいます ) が開設されている金融商品取引業者等 ( 証券会社等 ) に対して 源泉徴収選択口座内配当等受入開始届出書 を提出することにより 上場株式等の配当等を源泉徴収選択口座に受け入れることができま

本資料のポイント 平成 29 年度税制改正で 上場株式等に係る配当等 について 所得税 と 住民税 で異なる課税方式を選択することが可能であると明確化されました このことにより 課税所得 900 万円以下の場合 所得税は 総合課税 住民税は 申告不要 を選択することで 納税額を抑えることが可能となり

イ税務署へ確定申告書を提出し 所得税の住宅ローン控除の適用を受けている 退職所得 山林所得がある方 所得税の平均課税の適用を受けている方は 住宅ローン控除申告書を提出することにより控除額が大きくなる場合があります 申告書を提出される方は3 月 15 日 ( 月 ) までに申告してください 申告しなけ

Microsoft Word - 平成15年税制改正(2).doc

. 個人投資家の年齢層と年収 個人投資家 ( 回答者 ) の年齢層 8% 6% 28% 2~3 代 5% 2% 3% 4 代 5 代 6~64 歳 65~69 歳 7 代以上 個人投資家 ( 本調査の回答者 ) の過半数 (56%) は 6 歳以上のシニア層 昨年調査 6 歳以上の個人投資家 56%

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「個人投資家の証券投資に関する意識調査」の結果について

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資料5 表紙

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税法実務コース 所得税 学習スケジュール 回数 学 習 テ ー マ 内 容 第 1 章 テーマ1 所得税の仕組みテーマ2 所得税額の計算テーマ3 非課税所得 所得税の仕組み 税額計算 所得税が課税されないものについて学習します テーマ1 各種所得金額の計算の概要テーマ2 利子所得テーマ3 配当所得

確定拠出年金とは 確定拠出年金は 公的年金に上乗せして給付を受ける私的年金のひとつです 基礎年金 厚生年金保険と組み合わせることで より豊かな老後生活を実現することが可能となります 確定拠出年金には 個人型 と 企業型 のつのタイプがあります 個人型確定拠出年金の加入者は これまで企業年金のない企業

2018年度税制改正大綱ポイント整理

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みずほインサイト 政策 2018 年 10 月 18 日 ideco 加入者数が 100 万人超え加入率引き上げへさらなる制度見直しを 政策調査部上席主任研究員堀江奈保子 naoko. ideco( 個人型確定拠出年金 ) の加入

平成 28 年度税制改正要望項目 1. 働く者のより豊かな生活の実現に向けて (1) 企業年金等の積立金に対する特別法人税の撤廃 (2) 財形非課税限度額の引き上げ等 (3) 給与所得者に対する選択納税制度の導入 2. 損保グループ産業の健全な発展に向けて (1) 火災保険等に係る異常危険準備金制度

障財源化分とする経過措置を講ずる (4) その他所要の措置を講ずる 2 消費税率の引上げ時期の変更に伴う措置 ( 国税 ) (1) 消費税の軽減税率制度の導入時期を平成 31 年 10 月 1 日とする (2) 適格請求書等保存方式が導入されるまでの間の措置について 次の措置を講ずる 1 売上げを税

概要 平成 27 年までと平成 28 年以後の証券税制の比較 平成 27 年までは 上場株式等 と 公社債等 の税制上の取扱いが異なっています 平成 28 年以後は 金融所得課税の一体化 により 上場株式等 と 公社債等 の税制上の取扱いが統一されます 平成 27 年まで 上場株式等 上場株式 公募

Transcription:

金融所得税制の見直しと 資産形成支援税制 ジャパン タックス インスティチュート講演資料 18年4月5日 東京財団政策研究所研究主幹 中央大学法科大学院 特任教授 森信茂樹

なぜ金融所得税制が話題になるのか 平成30年度与党税制改正大綱に 金融所得に対する課税のあり方に ついては 税負担の垂直的公平性等を確保する観点から 諸 外国の制度や市場への影響も踏まえつつ 総合的に検討する と明 記されている 19年10月に予定されている消費増税時に軽減税率が導入されるが その減収額は1兆円と見積もられており 法律で 安定的な恒久財 源を確保するため 平成30年度末までに歳出及び歳入上の措置を講 じる ことが義務付けられている 4000億円は総合合算制の取りやめで手当 30年度税制改正で たばこ税増税2500億円 所得税 住民税増税で800億円 足 りないのは3000億円弱ということになる なお 金融所得税制は1 で500億円程度の増収(ネットベース と いわれている

主要国における給与所得課税と金融所得課税の概要 日 本 給与所得課 総合課税 税 ア メ リ カ 10 55 総合課税 源泉分離 課 利子課税 税 20% 申告分離と 配当課税 総合課税と の選択 申告分離 20 又は 総合課税 10 55% 株式 譲 申告分離 課 税 渡益 課税 20 連邦税 10 39.6 州 地方政府税 イ ギ リ ス 総合課税 段階的課税 分離課税 20 40 45 0 20 40 38.1 ド イ ツ 総合課税 フ ラ ン ス 0 47.475 給与所得 8 53 申告不要 分離課税 総合課税 段階的課税 連邦税 分離課税 段階的課税 連邦税 0 分離課税 15 20 州 地方政府 州 地方政府税 段階的課税 税 総合課税 分離課税 7.5 32.5 38.1 総合課税 も選択可 26.375 金融所得 15.5 60.5 10 20 注1 日本では 特定公社債等の利子等については 20% 所得税15% 個人住民税5% の税率による申告分離課税の対象となる 源泉徴収されたものについては 申告不要を選択できる 日本の配当課税は 源泉徴収 20% 所得税15% 個人住民税5 のみで申告不要を選択することも可能 注2 アメリカでは 配当課税は 適格配当 配当落ち日の前後60日の計121日間に60日を超えて保有する株式について 内国法人又は適格外国法人から受領した配当 についてのものである 注3 イギリスでは 給与所得等 利子所得 配当所得 キャピタル ゲインの順に所得を積み上げて それぞれの所得毎に適用税率が決定される 注4 ドイツでは 資本所得と他の所得を合算したときに適用される税率が25 以下となる場合には 申告により総合課税の適用が可能 ただし 申告を行った結果 総合課税を選択した方が納税者に とって却って不利になる場合には 税務当局において資本所得は申告されなかったものとして取り扱われ 26.375 の源泉徴収税のみが課税される 注5 フランスでは 2013年予算法において 利子 配当 譲渡益について分離課税との選択制が廃止され 2013年分所得から総合課税が一律適用されることとなった 財務省資料を筆者が加工

日本版IRAのイメージ 生命保険契約 簡易保険契約 生命共済契約に基づく個人年金等 個人型確定拠出年金 EET型 私学 三階部分 日本版IRAに統合 二階部分 小 規 模 企 業 共 済 農 業 者 年 金 基 金 国 民 年 金 基 金 確定拠出 年金 企業型 厚生年金 基金 確定給付 企業年金 石炭 鉱業 年金 基金 中小企業退職金 共済 特定退職金共済 外国の法令に基 づく年金 自社年金 TEE型 年金払い退職給付 厚生年金保険 公的年 金等 控除に 該当 付加年金 国民年金 基礎年金 一階部分 第2号被保険者の 被扶養配偶者 自営業者等 民間サラリーマン 公務員等 第3号被保険者 第1号被保険者 第2号被保険者等 金融税制 番号研究会

EET型とTEE型の運用比較 貯蓄額 貯蓄時の 納税額 A 所得課税 消費課税 タイプ 元本と運用 益 B 20 119 10年後の 税額 C 10年後の税引 き後手取り 10年間の 税額の10年 後の価値 税引き後手取 り額の所得課税 との差 B - C 注11 注4 118 注2 注5 減税額 注6 45 注7 0 A EET 型 100 B TEE 型 80 20 130 非課税 130 33 12 100 非課税 163 非課税 163 0 45 非課税 EEE型 注1 注2 注3 注4 注5 注6 注7 注8 80 10年後の 貯蓄総額 当初の所得100を 税率20% 利子率5%で10年間運用した場合 非課税 163 33 130 33 注3 注2 12 注8 10年目の元本とその運用益 元本は毎年4%ずつ成長 80 1.04の9乗 1.05 100 1.05の10乗 80 1.05の10乗 10年目の運用益に対する税額 80 1.04の9乗 0.05 0.2 10年後の手取り額 貯蓄総額 に対する税額 163 0.2 毎年の運用益に20%の税率がかかるため 貯蓄額は差し引き4%成長 80 1.04の10乗 貯蓄時の納税額と毎年の運用益に対する税額 初年度の税額0.8が毎年4%ずつ成長 を割引率5%で計算した10年後の現在価値 PV 初年度の税額20を割引率5%で計算した10年後の現在価値 PV 金融税制 番号研究会

日本証券業協会作成

わが国の金融所得税収の推移 源泉所得税 申告所得税 利子所得 配当所得 譲渡益 単位千億円 うち株式譲 渡益 合計 うち金融所 得 2012年度 決算 4 20 7 2 31 27 2013年度 決算 5 26 13 8 44 39 2014年度 決算 5 38 12 7 54 49 2015年度 決算 4 45 15 9 64 58 2016年度 補正後 3 37 12 6 52 47 2017年度 予算 3 37 12 6 52 46 財務省資料を筆者が加工 注 法人の受取る利子 配当からの源泉所得税は法人税から控除されるので ネットの税収は相当少ない

あわせて金融インフラを強化する税制の見直しを 金融所得税制の見直しについては 国民の資産形成を支援する税制の拡充 具体的には NISAを本格的なTEE型 拠出時課税 あとは非課税 の資産形成支援制度として整備する ことなどとパッケージで行う必要がある わが国の公的年金制度は賦課方式なので 少子高齢化の進展で制度の根幹が揺らいでいる 14年の財政検証では 8つのうち3つのケースで 年金の所得代替率 65歳で受け取る 年金額と平均賃金との比率 が50 を割っており 国民の将来不安を高めている その ためにも 自助努力での老後の生活資金の確保を支援する税制の必要性がある 17年に拡充したiDeCoの税制はEET型 拠出 運用時非課税 給付時課税 である 諸外 国を見ると EET型とTEE型の貯蓄優遇制度が並立し 国民はニーズに応じて選択できる 米国ではIRAとRoth IRA カナダでは登録退職貯蓄制度 RRSP と非課税貯蓄口座 TFSA という2つの選択肢があり 前者がEET型 後者がTEE型で 税率が一定であれ ば 税引き後の手取りは等しくなる 税制改正大綱にも 諸外国の制度 も踏まえつ つ と記されており参考にすべきだ わが国のNISAはTEE型で 10年に導入され 16年にジュニアNISA 18年からはつみたて NISAが追加されたが いまだ暫定措置である これを本格的な貯蓄優遇制度 たとえば日 本版IRA http://www.japantax.jp/teigen/file/20171016.pdf に模様替えし 国民の老後 貯蓄の選択肢を広げることが必要である 複数に分散しわかりづらい3階部分の年金の整 理 統合の受け皿としての役割も期待できる idecoは厚生労働省所管の年金制度であり NISAは金融庁所管の証券税制の流れをくむ制度であるが 国民にとっては同じ機能を持つ

2段階 累進の金融税制は可能か 金融所得 譲渡益 配当 利子所得 の税率を 一定の所得 たとえば金融所得100万円 申告所得1500万 円 について 20 から30 に引上げることは可能か 1 特定口座で30 で源泉徴収し金融所得100万円未満や申告所得2000万円未満の場合に還付する方法 2 20 で源泉徴収し金融所得100万円以上や申告所得2000万円以上の場合には改めて申告納税させる方法 税務署の徴税実務がついていけるかどうか メリットの多い特定口座では完結できない ①金融所得100万円以上の判定が金融機関ではできない 特定口座を複数の金融機関で持っている場合 下記 の状況から金融所得情報の連携困難 特定口座外の金融所得がある場合 配当を比例配分方式で受け取っていない 一般口座を持っている 銀行 利子を含めるか等 ②申告所得についての情報が金融機関にはない マイナンバーを利用しての税務署から金融機関への申告所得情報の連携が理論的には可能かもしれないが マイナンバーを金融機関に提出しない顧客が相当数いる 昨年末現在で 証券会社の顧客からのマイナンバー 取得割合は4割程度にとどまり たび重なる案内にも関わらず 取得積み上げは困難を極めている 一律低い税率で源泉徴収しておいて 確定申告義務がある2000万円以上の申告所得の者に限って税率引上げ分 だけ申告納税させれるという考え方もある この方式では 高齢者に金融資産が偏在している状況からすると 金融所得は多いのに 給与所得等は少なく 確定申告不要という人が多く 税収増の効果は期待できない