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DESIGN-Rについて DESIGNとは 褥瘡の状態を その深さ (D) 滲出液 (E) 大きさ (S) 炎症 / 感染 (I) 肉芽組織 (G) 壊死組織 (N) ポケット (P) の7 項目で評価する判定スケールであり その重度 軽度を大文字 小文字で表した褥瘡重症度分類用と 治癒過程をモニタリングできるように数量化した褥瘡経過評価用の 2 種類がある また DESIGNはアセスメントツールとして我が国の臨床現場に定着しているが 2002 年版 DESIGN 褥瘡経過評価用は予測妥当性をもっていない すなわち 点数自体に重み付けがされていないため 20 点の褥瘡と 15 点の褥瘡を比べて 15 点の褥瘡の方が軽症 あるいは 治癒期間が短いということではない DESIGN-R とは 2002 年版 DESIGN 褥瘡経過評価用の改訂版として 予測妥当性を併せ持った DESIGN-R(R はrating: 評価 評点の頭文字 ) が 2008 年 11 月に公表された 表 1 また 深さ以外の 6 項目から個々の重み得点を導き出すことで 個々の褥瘡がよくなったか悪くなったかの評価ができるだけでなく 患者間の重症度を比較することも可能になった DESIGN-R のつけ方 DESIGN-R(2008 年改訂版 DESIGN 褥瘡経過評価用 ) では深さの数値は重み値には関係しないが 2002 年版 DESIGN 褥瘡経過評価用と同様に たとえば真皮までの損傷を d2 皮下組織までの損傷を D3と表記する それ以外の項目の記載法は 滲出液が 0 点から 6 点 大きさが 0 点から 15 点 炎症 / 感染が 0 点から 9 点 肉芽組織と壊死組織が 0 点から 6 点 ポケットが 0 点から 24 点までの重み得点で表記する これら 6 項目の合計点の 0 点から 66 点までの総点がその創の重症度を表しており DESIGN-Rでは d( もしくは D ) - e( もしくはE) s( もしくはS) i( もしくはI) g( もしくはG) n( もしくは N) p( もしくは P) : ( 点 ) と表記する なお 点 は入れても入れなくてもよい D と ESIGNP の間に -( ハイフン ) を入れることで 2002 年版 DESIGN 褥瘡経過評価用の表記との区別化を図っている また Dの数値と ESIGNPの点数の下付き表記が煩雑であれば通常表記にしてもよい DESIGN-R の特徴 2002 年版 DESIGN 褥瘡経過評価用のD5から 判定不能例 を分離し 新たに判定不能(unstageable ) の頭文字をつけた DUのカテゴリーを追加することで 深さの項目を 6 項目から 7 項目としている これにより 従来より指摘されていた D5の中に軽症例が紛れ込むことはなくなると共に いつから DTI (Deep Tissue Injury) の表面皮膚の障害が生じたかなども分かるようになった また 2002 年版 DESIGN 褥瘡経過評価用ではポケットがない場合は何も記載しなかったが DESIGN-Rではポケットなしの場合を p0 としている なお 名称は DESIGN-P ではなくこれまで通り DESIGN のままである 褥瘡経過評価用がDESIGN-Rに移行しても 2002 年版 DESIGN 褥瘡重症度分類用はそのまま継続するので DESIGN-R 右段のアルファベットはこれまで通り大文字表示 左段は小文字表記としている また 大文字あるいは小文字表記により 深い褥瘡 (D) の治療方針 すなわち 深さ以外の項目の中で特に大文字のものに注目し それを小文字に変えていく ことがより明確となる 1

DESIGN-R を用いた創評価の実際 72 歳 女性の仙骨部褥瘡 図 1 : 深さは 皮下組織までの損傷 であり D3 また 滲出液は 中等量 の 3 点 大きさは 5.5cm x 2.5cm = 13.8cm 2 の 6 点 炎症 / 感染は 炎症徴候なし の 0 点 肉芽組織は 貧血気味の不良肉芽が半分以上を占める ため 4 点 壊死組織は ない ので 0 点 ポケットは 7.9cm x 4.3cm - 5.5cm x 2.5cm = 20.2cm 2 の 12 点であり D3-e3s6i0G4n0P12:25( 点 ) となる なお 2002 年版 DESIGNでは D3e2s2i0G3n0-P3:13( 点 ) である 図 1 72 歳 女性の仙骨部褥瘡 DESIGN-R の限界 DESIGN-Rの総点が20 点から 10 点に要した期間から 10 点から治癒までの期間は推測できない 10 点同士の褥瘡は治癒期間が同じではない また 総点 20 点の褥瘡は総点 10 点の褥瘡に比べ 2 倍重症あるいは 2 倍の治療期間を有することにはならない すなわち DESIGN-Rの分析データは全身状態や治療法などを統一していないすべての褥瘡を対象としたものであり さらには 解析方法が経過中にDESIGNの最高点を記録した日と治癒した日 ( あるいは最終観察日 ) の2 点のみから予測妥当性を検討したものであるため 比尺度ではあっても相対的な重症度しか表していないことに注意する 表 1 DESIGN-R 褥瘡経過評価用月日 / Depth 深さ創内の一番深い部分で評価し 改善に伴い創底が浅くなった場合 これと相応の深さとして評価する d 0 皮膚損傷 発赤なし 1 持続する発赤 D 3 皮下組織までの損傷 4 皮下組織を越える損傷 5 関節腔 体腔に至る損傷 2 真皮までの損傷 U 深さ判定が不能の場合 Exudate 滲出液 e 0 なし 1 少量 : 毎日のドレッシング交換を要しない 3 中等量 :1 日 1 回のドレッシング交換を要する Size 大きさ皮膚損傷範囲を測定 :[ 長径 (cm) 長径と直交する最大径 (cm)] s 0 皮膚損傷なし 3 4 未満 6 4 以上 16 未満 8 16 以上 36 未満 9 36 以上 64 未満 12 64 以上 100 未満 Inflammation / Infection 炎症 / 感染 E 6 多量 :1 日 2 回以上のドレッシング交換を要する S 15 100 以上 0 局所の炎症徴候なし局所の明らかな感染徴候あり 3 i I ( 炎症徴候 膿 悪臭など ) 局所の炎症徴候あり 1 ( 創周囲の発赤 腫脹 熱感 痛 ) 9 全身的影響あり ( 発熱など ) Granulation tissue 肉芽組織治癒あるいは創が浅いため 0 4 良性肉芽が創面の10% 以上 50% 未満を占める肉芽形成の評価ができない g G 1 良性肉芽が創面の 90 % 以上を占める 5 良性肉芽が創面の10% 未満を占める 3 良性肉芽が創面の50% 以上 90% 未満を占める 6 良性肉芽が全く形成されていない Necrotic tissue 壊死組織混在している場合は全体的に多い病態をもって評価する 3 柔らかい壊死組織あり n 0 壊死組織なし N 6 硬く厚い密着した壊死組織あり Pocket ポケット毎回同じ体位で ポケット全周 ( 潰瘍面も含め )[ 長径 ( c m ) 長径と直交する最大径 ( c m )] から潰瘍の大きさを差し引いたもの 6 4 未満 9 4 以上 16 未満 p 0 ポケットなし P 12 16 以上 36 未満 24 36 以上部位 [ 仙骨部 坐骨部 大転子部 踵骨部 その他 ] 深さ (Depth:d,D) の得点は合計点には加えない 合計 2

褥瘡治療について 治療の基本は創を保護しつつ病期と創の深さを考慮した wound bed preparationと moist wound healingを心掛けることであり 急性期と慢性期に分けて対処する また 褥瘡が生じた場合には 局所治療を考える前に褥瘡の発生原因を追及することが重要である 除圧不足だったのか ずれが加わっていたのか あるいは全身状態や栄養状態の悪化が引き金になったのかなどを考え まずこれらの褥瘡発生原因を徹底して除去することが重要である 特に全身状態の安定化は 急性期の褥瘡治療には不可欠である 急性期褥瘡の局所治療 その基本方針は 適度の湿潤環境を保ちながら創部を保護することである 慢性期褥瘡の局所治療 慢性期褥瘡の局所治療を始める際 まずその褥瘡の深さが真皮までとどまる 浅い褥瘡 (d ) であるのか それとも真皮を越えて深部組織にまで及ぶ 深い褥瘡 (D) であるのかを判断する なお 浅い褥瘡 の治療方針は急性期褥瘡と同じであるが 深い褥瘡 では 壊死組織を除去した上で (N n) 肉芽形成を促進し(G g) さらに創の縮小 閉鎖を目指す (S s) また 各々の段階で 感染 滲出液過多やポケット形成があれば それを抑制 解消あるいはなくすような局所治療を選択する (I i E e P -) 図 2および表 2 I E P N n ( 壊死組織の除去 ) G g ( 肉芽形成の促進 ) S s ( 創の縮小 ) i e - これらの要素については 大文字のものがあれば 適宜それを小文字に あるいは それをなくすための治療を最優先に考える 図 2 慢性期の深い褥瘡における局所治療の基本スキーム ( 日本褥瘡学会編 : 褥瘡予防 管理ガイドライン 照林社 東京 2009より引用 ) 浅い褥瘡 (d) の場合 ( 発赤 水疱 びらん 浅い潰瘍の治療 ) 項目推奨推奨度 発赤には 発赤には 水疱の場合には 水疱の場合には びらん 浅い潰瘍には びらん 浅い潰瘍には 創面保護が大切であり 創面が観察できるドレッシング材での被覆を第一選択とするが 外用薬ではアズレン 酸化亜鉛を使用してもよい 創面保護を目的として ポリウレタンフィルムを用いてもよい 仮に真皮に至る創傷へ移行する恐れのある発赤や周囲皮膚の損傷が危惧される場合には 機能別分類 A の透明で薄いハイドロコロイドも選択肢として考慮してもよい 水疱は破らずそのまま 破れたときにはドレッシング材による被覆を第一選択とするが 外用薬では創の保護目的にアズレン 酸化亜鉛を使用してもよい 水疱は破らずそのままにし 創面保護を目的として ポリウレタンフィルムを用いてもよい 機能別分類 A の透明で薄いハイドロコロイドを用いてもよい 創面が観察できるドレッシング材での被覆を第一選択とするが 外用薬では創面保護を目的にアズレン 酸化亜鉛を用いてもよい 上皮形成促進を期待して塩化リゾチーム ブクラデシンナトリウム プロスタグランジン E 1 を用いてもよい 保険適用のある機能別分類 A のハイドロコロイド キチン ハイドロジェルのシートタイプで潰瘍周囲の健康な皮膚面を含めて被覆してもよい 機能別分類 1 のハイドロコロイド ハイドロポリマー ポリウレタンフォーム キチン ハイドロジェルを使用してもよいが保険適用外である 3

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項目推奨推奨度壊死組織の除去Nをnにする電気刺激療法を行ってもよい 肉芽形成の促進GをgにするSをsにする創の縮小高圧酸素療法を行ってもよい 感染 炎症の制御IをiにするEをeにする出液の制御機能別分類 1 C のキチン ハイドロファイバー R( 銀含有製材を含む ) アルギン酸塩を使用してもよい ポケットの解消Pをなくす深い褥瘡 ( D ) の場合 外科的デブリードマンはどのように行えばよいか どのように洗浄を行えばよいか どのような物理療法があるか どのような場合に外科的治療を行えばよいか どのような物理療法があるか 壊死組織と周囲の健常組織との境界が明瞭となった時期に外科的デブリードマンを行ってもよいが 事前の全身状態をよく評価してから行うようにする 壊死組織除去作用を有するカデキソマー ヨウ素 デキストラノマー フィブリノリジン デオキシリボヌクレアーゼ配合剤 ブロメライン スルファジアジン銀 硫酸フラジオマイシン トリプシンを用いてもよい 適切な時期を選んだ外科的切除 壊死組織除去作用を有する外用薬の使用を第一選択とするが これらの選択 が難しい場合には 自己融解作用により壊死組織除去環境を創に形成する機能別分類 2のハイドロジェルを 使用してもよい 創傷の処置を行う際には洗浄を行う 洗浄液は 消毒薬などの細胞毒性のある製品の使用は避け 生理食塩水または蒸留水 水道水を使用してもよい 創傷表面の壊死組織や残留物等を除去するために圧をかけて行ってもよい 創傷表面から壊死組織や残留物等を除去するために十分な量を用いて行ってもよい [ ポケットのある場合 ] ポケット内部の壊死組織や残留物等を除去するために十分な圧をかけて行ってもよい 外科的切除 壊死組織除去作用を有する外用薬の使用を第一選択とするが 付加価値のある物理療法として水治療法を行ってもよい 肉芽形成促進作用を有するアルミニウムクロロヒドロキシアラントイネート トレチノイントコフェリルを推奨する 塩化リゾチーム トラフェルミン ( フィブラスト R スプレー ) ブクラデシンナトリウム プロスタグランジンE1 幼牛血液抽出物を用いてもよい 湿潤環境形成により肉芽形成を阻害する要因を排除し 自然な肉芽形成を助長するハイドロコロイド ポリウレタンフォーム キチン ハイドロポリマーを使用してもよい 過剰な滲出液を吸収し肉芽組織形成環境を創面に保持するアルギン酸塩 ハイドロファイバー R( 銀含有製材を含む ) を使用してもよい 創の縮小作用を有するアルミニウムクロロヒドロキシアラントイネート トラフェルミン ( フィブラスト R スプレー ) ブクラデシンナトリウム プロスタグランジンE1を推奨する 塩化リゾチーム アズレン 酸化亜鉛 幼牛血液抽出物を用いてもよい 創からの滲出液を吸収し 創に適切な湿潤環境を形成するアルギン酸塩の使用を推奨する ハイドロコロイド ハイドロジェル ハイドロポリマー ポリウレタンフォーム キチン ハイドロファイバー R ( 銀含有製材を含む ) を創からの滲出液の程度により選択し使用してもよい [ 手術適応について ] 深さが 皮下組織以上に及ぶときには外科的治療 ( 手術療法 ) を考慮してもよい [ 手術時期について ] 感染が鎮静化しているときに外科的治療 ( 手術療法 ) を行うことを考慮してもよい 電気刺激療法を推奨する 陰圧閉鎖療法を行ってもよい 光線療法 ( 近赤外線あるいは紫外線 ) を行ってもよい 水治療法を行ってもよい 消毒は必要か どのように洗浄を行えばよいか どのような場合に外科的治療を行えばよいかどのような物理療法があるか電気刺激療法を行ってもよい 滲 どのような場合に外科的治療を行えばよいかどのような物理療法があるか 感染抑制作用を有するカデキソマー ヨウ素 スルファジアジン銀 ポビドンヨード シュガーを推奨する ポビドンヨード ヨードホルム 硫酸フラジオマイシン トリプシンを用いてもよい 感染抑制作用を有する外用薬の使用を推奨する もしくは 銀含有のハイドロファイバー R を使用してもよい 滲出液が多い場合に吸収性の高いアルギン酸塩が用いられることもあるが 感染制御の機能はない 洗浄のみで十分であり 通常は必要ないが 明らかな創部の感染を認め 滲出液や膿苔が多いときには洗浄前に消毒を行ってもよい 洗浄液は 消毒薬などの細胞毒性のある製品の使用は避け 生理食塩水または蒸留水 水道水の使用を推奨する 創傷表面の壊死組織や残留物等を除去するために圧をかけて行ってもよい 創傷表面から壊死組織や残留物等を除去するために十分な量を用い 創傷の深さや面積に応じて調整して行ってもよい 洗浄液の温度は 体温程度に温めて使用してもよい 膿汁や悪臭 あるいは骨髄炎を伴う感染創には 外科的デブリードマンを行うことを考慮してもよい 滲出液吸収作用を有するカデキソマー ヨウ素 ポビドンヨード シュガーを推奨する デキストラノマーを用いてもよい ドレッシング材は滲出液を減少させる効果はない そのため 過剰な滲出液を吸収保持し 創面の湿潤を保ち周囲皮膚の浸軟予防が可能なドレッシング材であるポリウレタンフォームを推奨する ポケット内に壊死組織が残存する場合は まず創面の清浄化を図る また 滲出液が多ければポビドンヨード シュガーを用いてもよい 少なければトラフェルミン ( フィブラスト R スプレー ) トレチノイントコフェリルを用いてもよい しかし 改善しなければ 外科的治療あるいは物理療法を検討する 残存する壊死組織の融解排除を促進させ 肉芽形成を助長させるドレッシング材を使用する 滲出液が多ければアルギン酸塩 ハイドロファイバー R( 銀含有製材を含む ) を使用してもよい なお ポケット内にドレッシング材を深く挿入したり 圧迫するような用い方にならないように注意する また 壊死組織が残存する場合はデブリードマンを優先する 保存的治療を行って改善しないポケットは 外科的に切開することを考慮してもよい ポケット内に壊死組織がない場合には 前後壁を接着させる目的で陰圧閉鎖療法を行ってもよい C2 ( 日本褥瘡学会編 : 褥瘡予防 管理ガイドライン 照林社 東京 2009 より引用 ) 5

2009 4 2009 年 4月作成 FGF125-09G-10-CO2