イーズ NO.002(15 年 8 月発行 ) 日本薬局方 微生物限度試験法微生物限度試験法の実際 監修 : 国立衛生試験所三瀬勝利 前号では微生物限度試験法について 全体的な解説を行ったが 本号では生菌数試験 大腸菌 サルモネラ 緑膿菌 黄色ブドウ球菌の試験項目ごとに それぞれ実際の試験の流れを図解してみた 試験を行う際に役立てて頂ければ幸いである また無菌試験法についても補冊として添付したので参照されたい 試験方法に関するさらに詳細な情報と手技については 厚生省薬務局研究開発振興課監修 : 日本薬局方技術情報 15, 薬業時報社 に記載されているので利用されると良い なお今回 紙面の都合上掲載できなかった の際のコロニーや試薬反応などのカラー写真掲載については別の機会に検討したい
1-1. 生菌数試験 メンブランフィルター法 試料溶液の準備 20 ( 細菌 ) ( 真菌 ) 10 10 試料溶液のろのろ過 [ メンブランフィルター ] 直径 : 約 50mm 孔径 :0.45μm 以下 ろ過洗浄 (100 100 3 回以上 ) [ 洗浄液 ] ペプトン食塩緩衝液 リン酸緩衝液または使用する液体培地 フィルターを平板平板に置く ポテト デキストロースカンテン培地 GP カンテン培地のどれか 1 種類 ( 抗生物質添加 ) 30~35 20~25 < 例 > 集落の計測 信頼度の高い計測値が得られた場合に限り 5 日以前の計測値を採用してもよい
1-2. 生菌数試験 カンテン平板混釈平板混釈法 試料溶液の調製 原液 2 10 倍希釈液 2 ( 細菌 ) ( 真菌 ) ( 細菌 ) ( 真菌 ) 試料溶液の分注 15~20 15~20 15~20 15~20 培地の分注分注 混釈 ポテト デキストロースカンテン培地 GP カンテン培地 ポテト デキストロースカンテン培地 GP カンテン培地 のどれか 1 種類 ( 抗生物質添加 ) のどれか 1 種類 ( 抗生物質添加 ) 培地の固化 30~35 20~25 30~35 20~25 [ 例 ] 原液 10 倍希釈液 集落の計測 ソイビーン カゼイン ダイジェストカンテン培地 265 コロニー 38 コロニー サブロー ブドウ糖カンテン培地 5 コロニー 3 コロニー 信頼度の高い計測値が得られた場合に限り 5 日以前の計測値を採用してもよい
1-3. 生菌数試験 カンテン平板塗抹平板塗抹法 試料溶液の調製 原液 10 倍希釈液 ( 細菌 ) ( 真菌 ) ( 細菌 ) ( 真菌 ) 0.05~0.2 0.05~0.2 0.05~0.2 0.05~0.2 試料溶液の接種 ポテト デキストロースカンテン培地 GP カンテン培地 ポテト デキストロースカンテン培地 GP カンテン培地 のどれか 1 種類 ( 抗生物質添加 ) のどれか 1 種類 ( 抗生物質添加 ) 試料溶液の塗抹 30~35 20~25 30~35 20~25 [ 例 ] 原液 10 倍希釈液 集落の計測 ソイビーン カゼイン ダイジェストカンテン培地 265 コロニー 38 コロニー サブロー ブドウ糖カンテン培地 5 コロニー 3 コロニー 信頼度の高い計測値が得られた場合に限り 5 日以前の計測値を採用してもよい 培地の性能試験及び発育阻止物質の確認試験については第十二改正日本薬局方第二追補をご参照ください
1-4. 生菌数試験 生菌数試験液体培地段階希釈法 ( 最確数法 ) 希釈液の接種 ( 対照実験 ) 10 希釈液 1 試料溶液 10 10 ( 対照 1) 希釈液 2 ( 対照 2) 希釈液 3 ( 対照 3) (: ソイビーン カゼイン ダイジェスト培地 ) 試料溶液の希釈 希釈液 1( 10) 希釈液 2( 100) 希釈液 3( 1,000) 希釈したした試料溶液試料溶液の接種 試料接種後の希釈液 1 試料接種後の希釈液 2 試料接種後の希釈液 3 30~35 以上 対照 1 10 10 10 対照 2 100 100 100 対照 3 1,000 1,000 1,000 試料 1g 又は 当たりの細菌の最確数 結果のが難しい場合またはあいまいな結果の場合は カンテン培地または液体培地に 0. を移植し 30~35 で 24~72 時間し 増殖の有無をする 当たりのたりの最確数 0 ( 本試験は細菌のみに用いる試験である )
2-1. 特定微生物試験大腸菌 大腸菌 (Escherichia coli) 試料の準備 調製した試料 10g または 10 試料溶液の接種 0 乳糖ブイヨン 増菌 30~35 24~72 時間 陽性 陰性 マッコンキーカンテン培地 大腸菌陰性 30~35 18~24 時間 赤レンガ色の集落 発育なし グラム染色 グラム陰性桿菌 大腸菌陰性 周囲に赤味がかった沈降線の帯を持つ赤レンガ色のグラム陰性菌の集落が検出されない EMB カンテン培地 30~35 18~24 時間 金属光沢の集落青黒色の集落 IMViC 試験 IND MR VP Cit + - + + - - - - IND: インドール産生試験 MR: メチルレッド反応試験 VP: フォーゲス プロスカウエル試験 Cit: クエン酸塩利用試験 大腸菌陽性 大腸菌陰性 金属光沢または透過光下で青黒色を帯びた集落が検出されない
2-2. 特定微生物試験サルモネラ サルモネラ (Salmonella) 試料の準備 調製した試料 10g または 10 試料溶液の接種 0 乳糖ブイヨン 増菌 30~35 24~72 時間 陽性 陰性 サルモネラ陰性 接種 10 10 セレナイトシスチン液体培地またはラパポート液体培地 テトラチオネート液体培地 30~35 12~24 時間 ブリリアントグリーンカンテン培地 XLD カンテン培地 亜硫酸ビスマスカンテン培地の内 2 種類以上に塗抹
30~35 24~48 時間 発育なし サルモネラ特有の集落 それ以外の集落 培地 ブリリアントグリーンカンテン培地 XLD カンテン培地 亜硫酸ビスマスカンテン培地 集落の特徴 小型で無色透明又は不透明で白色 ~ 桃色 ( しばしば周囲に桃色 ~ 赤色の帯が形成される ) 赤色, 中心部に黒点が現れる場合とそうでない場合がある 黒色又は緑色 サルモネラ陰性 グラム染色 グラム陰性桿菌 接種 TSI 斜面カンテン培地 35~37 18~24 時間 赤色黄色陽性 赤色 黒色 黄色 詳細な確認試験 生化学的試験 血清学的試験 サルモネラ陽性
2-3. 特定微生物試験緑膿菌 緑膿菌 (Pseudomonas aeruginosa) 試料の準備 調製した試料 10g または 10 試料溶液の接種 0 ソイビーン カゼイン ダイジェスト培地 または抗菌性物質を含まない適当な液体培地 30~35 24~48 時間 陽性 陰性 セトリミドカンテン培地 または NAC カンテン培地 緑膿菌陰性 30~35 24~48 時間 緑がかった蛍光集落 発育なし グラム染色 緑膿菌陰性 フルオレセイン検出用シュードモナスカンテン培地 ピオシアニン検出用シュードモナスカンテン培地 30~35 24~72 時間 黄色の蛍光集落それ以外青色の蛍光集落それ以外 フルオレセイン陽性 緑膿菌陰性 ピオシアニン陽性 緑膿菌陰性 オキシダーゼ試験 N.N- ジメチル -P- フェニレンジアミン塩酸塩をしみこませたろ紙 5~10 秒以内に紫色に変化 無変化 緑膿菌陽性 緑膿菌陰性 キットの使用を含む適当な生化学的試験の併用も可能
2-4. 特定微生物試験黄色 黄色ブドウブドウ球菌 (Staphylococcus aureus) 試料の準備 調製した試料 10g または 10 試料溶液の接種 0 ソイビーン カゼイン ダイジェスト培地 または抗菌性物質を含まない液体培地 増菌 30~35 24~48 時間 陽性 陰性 フォーゲル ジョンソンカンテン培地 ベァード パーカーカンテン培地またはマンニット 食塩カンテン培地 黄色ブドウ球菌陰性 30~35 24~48 時間 培地 フォーゲル ジョンソンカンテン培地 ベァード パーカーカンテン培地 集落の特徴 黄色の帯に囲まれた黒色 透明な帯に囲まれた黒色 光沢あり それ以外の集落 発育なし マンニット 食塩カンテン培地 黄色の帯に囲まれた黄色 黄色ブドウ球菌陰性 グラム染色 コアグラーゼ試験 ウサギまたはウマの血漿 0.5 37±1 3 時間 凝固 液状 黄色ブドウ球菌陽性 37±1 適当な時間ごと 24 時間まで 凝固 液状 黄色ブドウ球菌陽性 黄色ブドウ球菌陰性