研修中間報告書

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H30全国HP

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平成23年度全国学力・学習状況調査問題を活用した結果の分析   資料

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平成 30 年 1 月平成 29 年度全国学力 学習状況調査の結果と改善の方向 青森市立大野小学校 1 調査実施日平成 29 年 4 月 18 日 ( 火 ) 2 実施児童数第 6 学年 92 人 3 平均正答率 (%) 調 査 教 科 本 校 本 県 全 国 全国との差 国語 A( 主として知識

Microsoft Word - 数学指導案(郡市教科部会)

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平成21年度全国学力・学習状況調査の結果分析(非公表資料)

平成 年度佐賀県教育センタープロジェクト研究小 中学校校内研究の在り方研究委員会 2 研究の実際 (4) 校内研究の推進 充実のための方策の実施 実践 3 教科の枠を越えた協議を目指した授業研究会 C 中学校における実践 C 中学校は 昨年度までの付箋を用いた協議の場においては 意見を出

課題研究の進め方 これは,10 年経験者研修講座の各教科の課題研究の研修で使っている資料をまとめたものです 課題研究の進め方 と 課題研究報告書の書き方 について, 教科を限定せずに一般的に紹介してありますので, 校内研修などにご活用ください

Microsoft Word - 中学校数学(福島).doc

Taro-小学校第5学年国語科「ゆる

Microsoft Word - 全国調査分析(H30算数)

国語科学習指導案様式(案)

調査の概要 1 目的義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から 全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握 分析し 教育施策の成果と課題を検証し その改善を図るとともに そのような取組を通じて 教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立する また 学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の

Microsoft PowerPoint - syogaku [互換モード]

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平成 28 年度全国学力 学習状況調査の結果伊達市教育委員会〇平成 28 年 4 月 19 日 ( 火 ) に実施した平成 28 年度全国学力 学習状況調査の北海道における参加状況は 下記のとおりである 北海道 伊達市 ( 星の丘小 中学校を除く ) 学校数 児童生徒数 学校数 児童生徒数 小学校

Taro-H29結果概要(5月25日最終)

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1 単元名 分数 ( 全 10 時間 ) 教材名 分数をくわしく調べよう ( 東京書籍 4 年下 ) 第 4 学年算数科学習指導案平成 26 年 11 月 26 日 ( 水 ) 5 校時 4 年 1 組 ( 男子 13 名 女子 10 名計 23 名 ) 指導者上田稚子 ( 学習指導要領 ) A 数

4 単元構想図 ( 全 14 時間 ) 生徒の意識の流れ 表を使って解く 縦 (m) 0 8 横 (m) x= 右辺の形に式を変形して 二次方程式を解こう1 ax = b (x + m) = nは平方根の考えで解くことができる x= 右辺の形に式を変形して 二次方程式を解こう2 x +

調査の概要 1 目的義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から 的な児童生徒の学力や学習状況を把握 分析し 教育施策の成果と課題を検証し その改善を図るとともに 学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立てる さらに そのような取組を通じて 教育に関する継続的な検証改善サイ

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問 題

第 4 学年算数科学習指導案 平成 23 年 10 月 17 日 ( 月 ) 授業者川口雄 1 単元名 面積 2 児童の実態中条小学校の4 年生 (36 名 ) では算数において習熟度別学習を行っている 今回授業を行うのは算数が得意な どんどんコース の26 名である 課題に対して意欲的に取り組むこ

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p.1~2◇◇Ⅰ調査の概要、Ⅱ公表について、Ⅲ_1教科に対する調査の結果_0821_2改訂

Microsoft PowerPoint - 中学校学習評価.pptx

○数学科 2年 連立方程式

(Microsoft Word - \207U\202P.doc)

第5学年  算数科学習指導案

数学科学習指導案 1 次方程式 ( 中学校第 1 学年 ) 神奈川県立総合教育センター < 中学校 高等学校 > 数学 理科授業づくりガイドブック 平成 22 年 3 月 問題つくりを題材として取り上げ 身近な生活の中にある数量関係を見いだし それを基に文章題を作らせる指導によって 自ら具体的な事象

(6) 調査結果の取扱いに関する配慮事項調査結果については 調査の目的を達成するため 自らの教育及び教育施策の改善 各児童生徒の全般的な学習状況の改善等につなげることが重要であることに留意し 適切に取り扱うものとする 調査結果の公表に関しては 教育委員会や学校が 保護者や地域住民に対して説明責任を果

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瑞浪市調査結果概略(平成19年度全国学力・学習状況調査)

指導方法等の改善計画について

261並榎中市野報告書

ICTを軸にした小中連携

今年度は 創立 125 周年 です 平成 29 年度 12 月号杉並区立杉並第三小学校 杉並区高円寺南 TEL FAX 杉三小の子

2、協同的探究学習について

英語                                    英-1

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ホームページ掲載資料 平成 30 年度 全国学力 学習状況調査結果 ( 上尾市立小 中学校概要 ) 平成 30 年 4 月 17 日実施 上尾市教育委員会

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能を習得したり活用したりすることの必要性について確認する グラフをかく力やグラフを読み取る力を身に付けさせるとともに, 一次関数を学ぶことに対する意欲を高めたい 小単元全体を通して主体的に学ぶ意欲を高め, 自分の考えを説明したいという気持ちにさせた上で, 目的や方法等を明確にした意図のあるペアやグル

第 2 章 知 徳 体 のバランスのとれた基礎 基本の徹底 基礎 基本 の定着 教育基本法 学校教育法の改正により, 教育の目標 義務教育の目標が定められるとともに, 学力の重要な三つの要素が規定された 本県では, 基礎 基本 定着状況調査や高等学校学力調査を実施することにより, 児童生徒の学力や学

○学部 ○○科 学習指導案

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(2) -2,4,1 3 y=-x-2 をかいた ( 人 ) 4 (1) y=2x-9,y=2x,y=3x+3 (2) y=x+11 (3) 指導観校内の研究テーマが 考える力を引き出す授業のあり方 ということで, 数学科では考える力とは何かを分析し,11 項目に整理した 1 帰納的に考える力 2

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平成 28 年度埼玉県学力 学習状況調査各学年の結果概要について 1 小学校 4 年生の結果概要 ( 平均正答率 ) 1 教科区分による結果 (%) 調査科目 羽生市 埼玉県 国語 算数 分類 区分別による結果 < 国語 > (%) 分類 区分 羽生市 埼

第4学年算数科学習指導案

学習指導要領の領域等の平均正答率をみると 各教科のすべての領域でほぼ同じ値か わずかに低い値を示しています 国語では A 問題のすべての領域で 全国の平均正答率をわずかながら低い値を示しています このことから 基礎知識をしっかりと定着させるための日常的な学習活動が必要です 家庭学習が形式的になってい

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数学○ 学習指導案

平成 29 年度全国学力 学習状況調査の結果の概要 ( 和歌山県和歌山市 ) 1 調査の概要 (1) 調査日平成 29 年 4 月 18 日 ( 火 ) (2) 調査の目的義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から 全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握 分析し 教育施策の成果と課題を検証し

平成 29 年度全国学力 学習状況調査の結果の概要 ( 和歌山県海草地方 ) 1 調査の概要 (1) 調査日平成 29 年 4 月 18 日 ( 火 ) (2) 調査の目的義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から 全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握 分析し 教育施策の成果と課題を検証し

領域別正答率 Zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz んんんんんんんんんんんんん 小学校 中学校ともに 国語 A B 算数( 数学 )A B のほとんどの領域において 奈良県 全国を上回っています 小学校国語 書く B において 奈良県 全国を大きく上回っています しかし 質問紙調査では 自分

彩の国埼玉県 埼玉県のマスコット コバトン 科学的な見方や考え方を養う理科の授業 小学校理科の観察 実験で大切なことは? 県立総合教育センターでの 学校間の接続に関する調査研究 の意識調査では 埼玉県内の児童生徒の多くは 理科が好きな理由として 観察 実験などの活動があること を一番にあげています

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平成 29 年度 全国学力 学習状況調査結果と対策 1 全国学力調査の結果 ( 校種 検査項目ごとの平均正答率の比較から ) (1) 小学校の結果 会津若松市 国語 A は 全国平均を上回る 国語 B はやや上回る 算数は A B ともに全国平均を上回る 昨年度の国語 A はほぼ同じ 他科目はやや下

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知識・技能を活用して、考えさせる授業モデルの研究

英語科学習指導案 京都教育大学附属桃山中学校 指導者 : 津田優子 1. 指導日時平成 30 年 2 月 2 日 ( 金 ) 公開授業 Ⅱ(10:45~11:35) 2. 指導学級 ( 場所 ) 第 2 学年 3 組 ( 男子 20 名女子 17 名計 37 名 ) 3. 場所京都教育大学附属桃山中

Microsoft Word - ④「図形の拡大と縮小」指導案

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平成 30 年度全国学力 学習状況調査 北見市の結果等の概要 Ⅰ 調査の概要 1 調査の目的義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から 全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握 分析するとともに教育施策の成果と課題を検証し その改善を図り 学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等

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2 教科に関する調査の結果 ( 各教科での % ) (1) 小学校 国語 4 年生 5 年生 6 年生 狭山市埼玉県狭山市埼玉県狭山市埼玉県 平領均域正等答別率 話すこと 聞くこと 書くこと

(2) 国語 B 算数数学 B 知識 技能等を実生活の様々な場面に活用する力や 様々な課題解決のための構想を立て実践し 評価 改善する力などに関わる主として 活用 に関する問題です (3) 児童生徒質問紙児童生徒の生活習慣や意識等に関する調査です 3 平成 20 年度全国学力 学習状況調査の結果 (

1. 研究主題 学び方を身につけ, 見通しをもって意欲的に学ぶ子どもの育成 ~ 複式学級における算数科授業づくりを通して ~ 2. 主題設定の理由 本校では, 平成 22 年度から平成 24 年度までの3 年間, 生き生きと学ぶ子どもの育成 ~ 複式学級における授業づくり通して~ を研究主題に意欲的

国語 求められている学力が見える 主として 知識 に関する問題では ほかの学習や実生活において活用できる知識 技能の習得が求められている 描写 要約 紹介 説明 記録 報告 対話 討論などの言語活動に必要な 基礎的な知識 技能を身につけていること 表現したり理解したりするための言語事項に関する 基礎

第 2 学年 理科学習指導案 平成 29 年 1 月 1 7 日 ( 火 ) 場所理科室 1 単元名電流とその利用 イ電流と磁界 ( イ ) 磁界中の電流が受ける力 2 単元について ( 1 ) 生徒観略 ( 2 ) 単元観生徒は 小学校第 3 学年で 磁石の性質 第 4 学年で 電気の働き 第 5

1. 調査結果の概況 (1) の児童 ( 小学校 ) の状況 < 国語 A> 今年度より, ( 公立 ) と市町村立の平均正答率は整数値で表示となりました < 国語 B> 4 国語 A 平均正答率 5 国語 B 平均正答率 ( 公立 ) 74.8 ( 公立 ) 57.5 ( 公立 ) 74 ( 公立

(1) 具体的な場面を通して正の数と負の数について理解し, その四則計算 (1) 正の数と負の数について具体的な場面での活動を通して理解し, その ができるようにするとともに, 正の数と負の数を用いて表現し考察する 四則計算ができるようにする ことができるようにする ア 正の数と負の数の必要性と意味

算数科学習指導案 広島市立 小学校教諭 1 日時平成 21 年 2 月 日 ( ) 2 学年 5 年 組 3 単元数量関係 割合とグラフ 4 単元について 本単元では, 百分率について理解し, それを用いることができるようにするとともに, 目的に応じて資料を分類整理し, それを円グラフや帯グラフを用

(2) 学習指導要領の領域別の平均正答率 1 小学校国語 A (%) 学習指導要領の領域 領 域 話すこと 聞くこと 66.6(69.2) 77.0(79.2) 書くこと 61.8(60.6) 69.3(72.8) 読むこと 69.9(70.2) 77.4(78.5) 伝統的な言語文化等 78.3(

目 次 1 学力調査の概要 1 2 内容別調査結果の概要 (1) 内容別正答率 2 (2) 分類 区分別正答率 小学校国語 A( 知識 ) 国語 B( 活用 ) 3 小学校算数 A( 知識 ) 算数 B( 活用 ) 5 中学校国語 A( 知識 ) 国語 B( 活用 ) 7 中学校数学 A( 知識 )

★数学学習指導案最終(知的障害)

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6 年 No.22 my summer vacation. 1/8 単元の目標 主な言語材料 過去の表し方に気付く 夏休みの思い出について, 楽しかったことなどを伝え合う 夏休みの思い出について, 音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現で書かれたものの意味が分かり, 他者に伝えるなどの目的


Microsoft Word - 研究報告書14_公民_黒田

中学 3 年数学 ( 東京書籍 ) 単元別コンテンツ一覧 単元ドリル教材解説教材 確認問題ライブラリ (OP) プリント教材 教材数 :17 問題数 : 基本 145, 標準 145, 挑戦 145 多項式と単項式の乗法 除法 式の展開 乗法公式などの問題を収録 解説教材 :6 確認問題 :6 単項

平成 26 年度 高知県学力定着状況調査結果の概要 速報版 平成 27 年 2 月 高知県教育委員会

Ⅰ 評価の基本的な考え方 1 学力のとらえ方 学力については 知識や技能だけでなく 自ら学ぶ意欲や思考力 判断力 表現力などの資質や能力などを含めて基礎 基本ととらえ その基礎 基本の確実な定着を前提に 自ら学び 自ら考える力などの 生きる力 がはぐくまれているかどうかを含めて学力ととらえる必要があ

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(2) 国語科 国語 A 国語 A においては 平均正答率が平均を上回っている 国語 A の正答数の分布では 平均に比べ 中位層が薄く 上位層 下位層が厚い傾向が見られる 漢字を読む 漢字を書く 設問において 平均正答率が平均を下回っている 国語 B 国語 B においては 平均正答率が平均を上回って

算数科学習指導案 指導者伊達詩恵 1 日時平成 24 年 5 月 21 日 ( 月 ) 5 校時 2 学年第 6 学年 1 組 22 名 3 場所 6 年 1 組教室 4 単元名文字と式 5 単元について 単元観 本単元は, 数量の関係を表す式についての理解を深め, 式に表したり, 式を読み取ったり

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平成23年度東京都教育研究員  地区発表公開授業

るかどうか, そして, その予想した事柄を ~は, になる という形で表現できるかどうかをみるものである 正答率は, 48.1% であり, 発展的に考え, 予想した事柄を ~は, になる という形で表現することに課題がある (3) 学習指導に当たって 事柄を予想することを大切にする数や図形について成

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平成 22 年度全国学力 学習状況調査結果の概要と分析及び改善計画 調査実施期日 平成 22 年 4 月 20 日 ( 火 )AM8:50~11:50 平成 22 年 9 月 14 日 ( 火 ) 研究主任山口嘉子 調査実施学級数等 三次市立十日市小学校第 6 学年い ろ は に組 (105 名 )

2 各教科の領域別結果および状況 小学校 国語 A 書くこと 伝統的言語文化と国語の特質に関する事項 の2 領域は おおむね満足できると考えられる 話すこと 聞くこと 読むこと の2 領域は 一部課題がある 国語 B 書くこと 読むこと の領域は 一定身についているがさらに伸ばしたい 短答式はおおむ


Microsoft Word - 小学校第6学年国語科「鳥獣戯画を読む」

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テーマ A 2 中学校数学 武雄市立山内中学校教諭菰田充範 要旨本研究は, 数学的な思考力 判断力 表現力を育むために, 説明し伝え合う活動を取り入れた学習指導の在り方を探ったものである 説明し伝え合う活動を充実させるために, 個人のワークシートやグループでの共有シートを活用して, 説明のための図をかいたり, 式に説明を書き加えたりする活動に取り組ませた また, 自分の考えを筋道立てて説明させるために, 基本的な文型 ( 話型 ) を提示した これらの取組をペア, グループで繰り返し行ったことで, 自分と異なる多様な考えに触れて思考を深めたり, 筋道立てて表現したりすることができる生徒が増えた キーワード 1 説明し伝え合う活動 2 共有シートの活用 3 話型 1 研究の目標 数学的な思考力 判断力 表現力を育むために, 説明し伝え合う活動を取り入れた学習指導の在り 方を探る 2 目標設定の趣旨平成 20 年 9 月に示された中学校学習指導要領解説数学編では, 数学的活動は, 基礎的 基本的な知識及び技能を確実に身に付けるとともに, 数学的に考える力を高めたり, 数学を学ぶことの楽しさや意義を実感したりするために, 重要な役割を果たすものである 1) と, 数学的活動の重要性が述べられている 中でも, 特に重視している数学的活動の一つに, 数学的な表現を用いて根拠を明らかにし筋道立てて説明し伝え合う活動 2) がある この活動については 言葉や数, 式, 図, 表, グラフなどを適切に用いて, 数量や図形などに関する事実や手続き, 思考の過程や判断の根拠などを的確に表現したり, 考えたことや工夫したことなどを数学的な表現を用いて伝え合い共有したり, 見いだしたことや思考の過程, 判断の根拠などを数学的に説明したりする活動である 3) と述べられている 平成 22 年度の全国学力 学習状況調査の佐賀県中学校数学の調査では, 数学的な見方や考え方 の観点に関する問題や 活用 に関する問題の正答率が全国よりも低い結果が見られた また, 同年度に実施された佐賀県小 中学校学習状況調査における中学校数学 第 2 学年の調査においても, 数学的な見方や考え方 の観点に関する問題の正答率は, おおむね達成 の基準を僅かに上回る結果にとどまっていた さらに, 活用 に関する記述式の問題の正答率は, おおむね達成 の基準より低く, 無解答率については高い結果が出ていた これらのことから, 佐賀県の生徒は, 数学的な思考力 判断力 表現力に関して大きな課題があると考えられる この課題を解決するためには, 数学的な表現を用いて根拠を明らかにし筋道立てて説明し伝え合う活動 の充実を図っていくことが重要であると考える そこで, 本研究では, グループの研究テーマ, 研究課題を受け, 説明し伝え合う活動の充実を図るための学習指導の在り方について探る その中で, 生徒が筋道立てて説明することができるようになったり, 自分と異なる考えにふれて思考を深めたりすることができるようになれば, 数学的な思考力 判断力 表現力を育むことができるだろうと考え, 本目標を設定した 3 研究の仮説 個人やグループでのワークシートの活用の工夫をしたり, 話型を取り入れたりすることで, 説明し 伝え合う活動の充実を図れば, 生徒は筋道を立てて表現することができるようになったり, 自分と異 - 49 -

なる考えに触れて思考を深めたりすることができるようになり, 数学的な思考力 判断力 表現力を 育むことができるであろう 4 研究の方法 (1) 説明し伝え合う活動を取り入れた授業実践例や活動の充実を図るための手立てに関する理論研究 (2) 仮説を検証するための, 所属校における授業実践 (3) 検証授業を基にした手立ての有効性についての検証及び考察 5 研究の内容 (1) 先行研究や文献等を基に理論研究を行い, 説明し伝え合う活動を充実させるために, 個人やグループでのワークシートの活用の手立てを明確化する (2) 理論研究を基に説明し伝え合う活動を取り入れた授業実践を行う (3) 事前 事後アンケートや授業のワークシート及び確認テストの結果を考察することで, 検証及び分析を行う 6 研究の実際 (1) 文献による理論研究今回改訂された学習指導要領では, 数学的活動を通して, 基礎的 基本的な知識及び技能を確実に身に付け, 数学的な思考力 判断力 表現力を育むことが求められている 数学的活動とは, 生徒が主体的に取り組む数学に関わりのある様々な営みを意味し, その内容は多岐にわたっているが, 特に, 中学校数学科において重視されているのは次の3つである 1 既習の数学を基にして数や図形の性質などを見いだし発展させる活動 2 日常生活や社会で数学を利用する活動 3 数学的な表現を用いて根拠を明らかにし筋道立てて説明し伝え合う活動本研究では,3の活動を充実させることを重視して, 研究を進めていくことにした この活動を充実させる手立てについては, 自分の考えを筋道立てて他の人に説明する際には, 説明のための図をかいたり, 式に説明を書き加えたりし, 言語技術を使いながら相手意識をもった説明ができるよう意識させることが大切である 4) という藤井の考えを参考にした 具体的には, ワークシートを活用して, 説明のための図をかいたり, 式に説明を書き加えたりする活動を取り入れることを考えた また, 自分の考えを説明するときに基本的な文型を提示することで, 自分の考えを分かりやすく相手に筋道立てて伝えられるようになり, 説明し伝え合う活動の充実を図ることができると考えた これらの取組を行っていくことで, 数学的な思考力 判断力 表現力を育むことができると考え, 研究の構想を立てて授業を実践していくことにした ( 図 1) (2) 実践化への手立て図 1 研究の構想図ア授業について 1 時間の授業を つかむ, 見通す, 練り合う, 深める, まとめる の5つの段階に分け, それぞれの段階にアからカの数学的活動を位置付けて授業を展開するようにした ( 次頁図 2) - 50 -

この中でも, 特に 練り合う 段階において, ワークシートを活用し, 説明し伝え合う活動の充実を図るための取組を行っていくことにした ( 図 3) イ話型について説明し伝え合う活動の充実を図るために, 自分の考えを書き表したり説明したりする際に, 話型を取り入れるようにした ( 図 4) 話型を取り入れることで, 図や表, 式, 言葉などを使って, 自分の考えをうまく筋道立てて説明することができるようになると考えた また, 話型を使うことで, 相手意識をもった説明ができるようになると考えた ウ共有シートについて共有シートとは, グループ内で多様な考えを説明し伝え合う活動を行う際に, 複数の考えを書き込むことができるワークシートである これは, 個人の考えを説明するために必要なスペースを十分にとった紙に透明のラミネートフィルムをかぶせ, その上からホワイトボードマーカーで記入できるようにしたものである これを使って, 図や表, 式, 言葉を必要に応じて用いることで, 相手に自分の考えを分かりやすく説明することができるようにした ( 図 5) エワークシートの活用の工夫について 練り合う 段階の 観察 操作などの具体的な活動 では, まず, 課題について既習内容で使えるものがないか検討させたり, 具体物を操作させたりすることにより解き方を個人で考えさせるようにした 次に, 考えたことをワークシートに, 図や表, 式, 言葉を使ってまとめさせるようにした その際, 話型や既習の数学の用語を使わせることで, 自分の考えを筋道立てて説明ができるようにした そして, 自分の考えを人に伝える活動 人の考えを理解する活動 では, ペア グループでの説明し伝え合う活動を取り入れた 具体的には, ペア活動では, 個人でまとめたワークシートを活用して互いに説明させるようにし, もし, 相手の考えで分からないところや疑問に思うところがあれば, 質問させたり, アドバイスさせたりした グループ活動では, 多様な見方や考え方に触れさせるために,4 人でグループを編成させ, 共有シートを 1 時間の授業の流れと数学的活動 図 2 授業に位置付ける主な数学的活動図 3 練り合う 段階の取組の流れ図 4 話型図 5 共有シートの例 活用させて複数の考えを書き込ませるようにした その後, 話合いを通してグループから出た複数の考えができるだけ重ならないように配慮しながら, グループ毎に共有シートにまとめさせた クラス全体で考える際には, グループ毎に共有シートにまとめた考えを発表させることで共有化を図り, 多様な見方や考え方に触れさせるようにした ( 次頁図 6) - 51 -

(3) 検証の視点次のような2つの視点に着目し, 検証した ア 検証の視点 Ⅰ 数学的な表現力の高まり説明し伝え合う活動の際に, 話型と数学の用語を使わせることで, 数学的な表現力の高まりが見られたかを検証した イ 検証の視点 Ⅱ 多様な見方や考え方の深まり個人のワークシートや共有シートを活用して, ペア, 図 6 共有シートを活用している様子グループ, クラス全体へと説明し伝え合う活動を取り入れることで, 多様な見方や考え方の深まりが見られたかを検証した (4) 授業の実際 ( 検証授業 1) 単元 平方根 ( 全 15 時間 ) で,7 時間目と9 時間目において実践を行った ( 表 1) 表 1 単元の概要 単元名 単元目標 第 3 学年 平方根 数の平方根について理解し, 数の概念の理解をいっそう深めるとともに, 数を用いてものご とをいっそう広く考察 処理することができるようにする 時 ( 全 15 時 ) ここでは, 分母に をふくまないように変形 する の授業について説明する 教科書では, 分 母に をふくむ数を をふくまないように変形 する という例題で, 具体的な計算の仕方の例が 紹介されていた そこで, どのように変形するの かを考えさせるために, 問題の形式を変えて生徒 に提示した ( 図 7) その際, 根拠を示して筋道立 てて説明できるように話型を用いらせた そして, 下表のように, 授業のそれぞれの段階に数学的活 動を位置付けて実践を行った ( 表 2) 段階 数学的活動 生徒の活動 検証の視点 手立て つかむ既習内容を振り返る フラッシュカード 見通すア問題 1 について, どのように考えて変形するのか予想する ヒントカードの提示 練り合う イ ウ 問題 1 の求め方について, 個人で考えたことを説明できるよう にワークシートにまとめる 問題 2 に取り組む 検証の視点 Ⅰ 問題 3 に取り組み, ペアで解き方について説明し伝え合う 問題 3 の多様な解き方について, グループ クラス全体で説明 し伝え合う 検証の視点 Ⅱ 深めるオ演習問題に取り組む まとめるカ本時の学習内容を振り返る 主な学習内容 7/15 時 を の形に変形する あるいは を の形に変形する 9/15 時分母に をふくまないように変形する 図 7 ワークシートの問題 表 2 分母に をふくまないように変形する の授業について 個人のワークシート 話型の提示 ヒントカードの提示 共有シートの活用 表 2 のアからカの数学的活動は, 図 2 の 授業に位置付ける主な数学的活動 にあるアからカに対応している - 52 -

見通す 段階では, 問題 1の解き方が分からない生徒への手立てとして, どのように変形したらよいかなどの考えを書いたヒントカードを提示し考えさせた ( 図 8) 練り合う 段階では, 考えたことを筋道立てて説明できるように, 話型や数学の用語を使って個人のワークシートにまとめさせ, ペアやクラス全体で確認させた その後, 練習問題を解かせた上で問題 2に取り組ませた ( 図 9) 問題 3では, 多様な見方や考え方を書き込めるようにワークシートを工夫し, ペアで考えを出し合わせるようにした ( 図 10) また, グループで考えを出し合わせる際には, 共有シートを活用させることで, 自分では気付かなかった考えに触れさせるようにした クラス全体においても, この共有シートを活用させることで, グループでは出なかった多様な見方や考え方に気付かせるようにした 次の 1,2 のヒントを使って考えてみよう 1 何をかけたら, 2( ) の中に何の数 整数になるかな? を入れたらいい? 2 2 2 4 1 1 ( 3 3 ( ) ) 3 9 図 8 ヒントカード図 9 問題 2のワークシート図 10 問題 3のワークシート (5) 検証授業 1における生徒の変容 分母に をふくまないように変形する の授業で, 抽出した生徒 Aと生徒 Bのワークシートを分析した ( 表 3) 表 3 抽出した生徒 Aと生徒 Bの4 月の実態 生徒 A 定期テストの成績が下位で, 事前調査の因数分解の式の説明を記述する問題では, ほとんど説明を書くことができなかった生徒 生徒 B 定期テストの成績が中位で, 事前調査の因数分解の式の説明を記述する問題では, 筋道立てて説明することができていなかった生徒 ア 検証の視点 Ⅰ 数学的な表現力の高まり問題 2において, 数学的な表現力の高まりについて検証した 事前調査では, ほとんど説明を書くことができていなかった生徒 Aは, 話型や 有理数 などの数学の用語を使って, 自分の考えを筋道立てて説明することができていた また, 筋道立てて説明することができていなかった生徒 B は, なぜなら という根拠を示す言葉や 有理化 などの数学の用語を使って, 自分の考えを筋道立てて説明することができていた ( 図 11) 生徒 A 生徒 B 図 11 抽出した生徒 Aと生徒 Bにおける数学的な表現力の高まりイ 検証の視点 Ⅱ 多様な見方や考え方の深まり問題 3において, 多様な見方や考え方の深まりについて検証した 生徒 Aは, 個人で考える際には, 分母と分子に 8 を掛けることで, 分母に をふくまない形にする計算方法で解いていた - 53 -

しかし, 個人のワークシートや共有シートを活用して, ペア, グループ, クラス全体と考えを共 有する中で, 分母の数 8 を 2 2 に直して計算するなど, 新たに2 種類の計算方法に気付いて答え を求めることができていた 生徒 B は, 個人で考える際には,2 種類の解き方で問題を解いていた が, 共有シートを活用して話し合った後は, 新たにの数をへ変形し, 根号の中の数を簡単な 数にして計算する解き方に気付いて答えを求めることができていた ( 図 12) 生徒 A 20 8 10 4 生徒 B 個人のワークシートや共有シート活用後 図 12 抽出した生徒 Aと生徒 Bにおける多様な見方や考え方の深まりウクラス全体の数学的な表現力の高まりと多様な見方や考え方の深まりについての考察数学的な表現力を見るために, 計算及びその解き方を説明する問題において, 事前テスト ( 因数分解 4 月 ) と確認テスト ( 平方根 5 月, 二次方程式 9 月 ) を行い, その結果を比較した その結果, 解き方の説明を含めて解答が正確にできている生徒の割合が増えている傾向が見られた ( 図 13) また, 多様な見方や考え方の深まりを見るために, 図 13 数学的な表現力の高まり複数の考え方で解けるような問題について, 確認テスト ( 平方根 5 月と二次方程式 9 月 ) を行い, その結果を比較した その結果, 事後の確認テストの方が 2つ以上の解き方で解いていた生徒の割合が増えている傾向が見られた ( 図 14) (6) 授業の実際 ( 検証授業 2) 単元 図形と相似 ( 全 21 時間 ) で,11 時間目と12 図 14 多様な見方や考え方の深まり時間目において実践を行った ( 次頁表 4) 検証授業 1 の反省を受けて検証授業 2では, まずは, 複数の考え方で解ける問題について, 全員が1つの考え方を書くことができ, さらに,2つ以上の多様な見方や考え方をもてる生徒が増えるように, 次のような2つの手立てを取るようにした 1つ目は, 問題の解き方が分からない生徒に, ヒントとなるような問い掛けを丁寧に行い, ワークシートに手がかりを記述させ, 問題の解き方についての見通しがもてるようにした 2つ目は, 提示するヒントカードの種類を増やすことで, 生徒から2つ以上の多様な見方や考え方を引き出すようにした - 54 -

単元名 表 4 単元の概要 第 3 学年 図形と相似 単元目標三角形の相似条件を基にして図形の性質についての理解をいっそう深めるとともに, 時 ( 全 21 時間 ) 相似の考え方が活用できるようにする 主な学習内容 11/21 時平行線と線分の比の性質を利用して, 線分の長さを求める 12/21 時平行線と線分の比の性質を利用し, 多様な見方や考え方で値を求める ここでは, 平行線と線分の比の性質を利用して, 線分の長 さを求める の授業について説明する 教科書では, 証明 の問題として取り扱われていたが, 数学を苦手としている生 徒にとっても取り組みやすく, また, 生徒の多様な見方や考 え方を引き出すことができるように問題の形式を変えて生徒 に提示した ( 図 15) そして, 下表のように, 授業のそれぞれ の段階に数学的活動を位置付けて実践を行った ( 表 5) 図 15 ワークシートの問題表 5 平行線と線分の比の性質を利用して, 線分の長さを求める の授業について 段階 数学的活動 生徒の活動 検証の視点 つかむ既習内容 ( 平行線と線分の比 ) を振り返る 確認問題 練り合う 手立て 見通す ア x にの長さについて, どのようにして求めるのか予想する 個人のワークシート イx に x にの長さの求め方について, 個人で考えたことを説明できるように 話型の提示 x に ウ ワークシートにまとめる ヒントカードの提示 x にの長さの求め方について, ペアで説明し伝え合う 検証の視点 Ⅰ x にの長さの多様な求め方について, グループ クラス全体で説明し伝え合う 検証の視点 Ⅱ 深めるオ演習問題に取り組む まとめるカ本時の学習内容を振り返る 共有シートの活用 表 2のアからカの数学的活動は, 図 2の 授業に位置付ける主な数学的活動 にあるアからカに対応している 見通す 段階では, にx にの長さの求め方について自分なりの考えをもつことができるように, 既習内容の何を使えばよいのか などの問い掛けを行い, 解き方について見通しをもたせた 練り合う 段階 では, 個人で考えた解き方についてワークシートに筋道立てて説明することができるようにまとめさせ た ( 図 16) その際, 問題の解き方が分からない生徒への手立てとしては, 補助線の引き方の例を提示し, 図の中の三角形において平行線と線分の比の関係を使って, 比例式を導き出せるようなヒントカードを 渡して考えさせるようにした ( 図 17) 問題の解き方について, 個人でまとめたものをペアで互いに確認 させた後, 共有シートを活用して, グループやクラス全体で考え方を共有させることで, 多様な見方や 考え方にも気付かせるようにした ( 図 18) 図 (7) 16 見通す 段階の問い掛け検証授業 2における生徒の変容図 17 ヒントカード図 18 共有シート活用の様子 - 55 -

(7) 検証授業 2における生徒の変容 平行線と線分の比の性質を利用して, 線分の長さを求める の授業で, 抽出した生徒 Aと生徒 Bのワークシートを分析した ア 検証の視点 Ⅰ 数学的な表現力の高まり問題において, 数学的な表現力の高まりについて検証した 生徒 Aは, 補助線の引き方を説明しながら三角形を図で示し, 平行線と線分の比の関係を使ってx にの長さの求め方について, 話型を使って筋道立てて説明することができていた 生徒 Bは, 平行線と線分の比の性質や平行四辺形のなどの数学の用語を使い分け, 数学的な表現を使って筋道立てて説明することができていた ( 図 19) 他の生徒も, 全体的に数学的な表現を使って筋道立てて説明することができていた 生徒 A 生徒 B 生徒のワークシート 生徒のワークシート図 19 抽出した生徒 Aと生徒 Bにおける数学的な表現力の高まりイ 検証の視点 Ⅱ 多様な見方や考え方の深まり問題において, 多様な見方や考え方の深まりについて検証した 生徒 Aは, 個人で考える際には, 図の中に補助線を引くことで三角形を見いだし, 平行線と線分の比の関係を使って比例式をつくりにx にの長さを求めていた しかし, 個人のワークシートや共有シートを活用して, ペア, グループ, クラス全体と考えを共有する中で, 補助線の引き方を変えたり, 個人で考えた三角形とは違う三角形を図の中に見いだしたりして新たな解き方に気付き, 答えを求めることができていた 生徒 Bは, 個人で考える際には, 生徒 Aとは違う補助線の引き方で, 図の中に相似な三角形を見いだすなど,2 種類の解き方で問題を解いていたが, 共有シートを活用して話し合った後は, 新たな考え方で xにの長さを求めることができていた ( 図 20) 生徒 A 生徒 B 個人のワークシートや共有シート活用後 図 20 抽出した生徒 Aと生徒 Bにおける多様な見方や考え方の深まりウクラス全体の数学的な表現力の高まりと多様な方や考え方の深まりについての考察数学的な表現力の高まりを見るために, 授業後に解き方の説明を記述する問題において確認テスト ( 二次方程式 9 月と10 月, 関数 y a x 2 11 月, 図形と相似 12 月 ) を実施した その結果, 学習が - 56 -

に x 進むにつれ, 解き方の説明を含めて解答が正確にできている生徒の割合が増えている傾向が見られた ( 図 21) また, 多様な見方や考え方ができる問題について, 確認テスト ( 二次方程式 9 月と10 月, 関数 y a 2 11 月, 図形と相似 12 月 ) を実施した その結果, 図 21 数学的な表現力の高まり 2つ以上の解き方で解いていた生徒の割合が, 学習が進むにつれ増えていた ( 図 22) (8) アンケート調査から見た生徒の意識の変容次のようにアンケートを実施して, 生徒の意識の変容の分析を行った 事前 : 平方根 の単元学習の前 (5 月, アンケート対象生徒数は28 名 ) に実施図 22 多様な見方や考え方の深まり 中間 : 二次方程式 の単元終了後 (9 月, アンケート対象生徒数は28 名 ) に実施 事後 : 図形と相似 の単元終了後 (12 月, アンケート対象生徒数は28 名 ) に実施 話型を使うことで, 自分の考えを筋道立てて説明し伝え合うことができるようになりましたか という質問では, 事前と事後を比べると, とてもそう思う, そう思う と答えた生徒が,72% (20 名 ) から97%(27 名 ) に増えていた ( 図 23) このことから, 話型を取り入れたことにより, 多くの生徒が説明し伝え合う活動がしやすくなったと感じていることが分かる 実際, 数学を苦手として図 23 筋道立てて説明し伝え合えたかいる生徒 Aは 話型を使って説明することで, 説明がしやすかったし, 相手の説明を聞くときも分かりやすかった と感想を書いていた 個人のワークシートや共有シートを活用することで, 自分の考えを積極的に伝えることができましたか という質問では, とてもそう思う, そう思う と答えた生徒が事前の57%(16 名 ) か図 24 共有シートを活用して自分の考えら, 事後は93%(26 名 ) に増えていた ( 図 24) を積極的に伝えることができたかまた, ペア, グループ, クラス全体へと説明し伝え合う活動をすることで, 多様な見方や考え方ができるようになりましたか という質問では, とてもそう思う, そう思う と答えた生徒が事前の57%(16 名 ) から, 事後は100%(28 名 ) に増えていた ( 図 25) このことから, ペア, グループ, クラス全体で説明し伝え合う活動を行ったことにより, 多様な見方や考え方ができるようになった図 25 多様な見方や考え方ができたかと感じている生徒が増えてきていることが分かる 事後アンケートにおける生徒の感想の記述内容を見てみると, 生徒 Bは, ペア, グループ, クラス全体で考えを出し合うことで, 自分とは異なった解き方を知ることができて考えが広がった - 57 -

と書いていた また, 他の生徒の主な感想としては, 次のようなものがあった ( 資料 1) ペアやグループで考えを出し合ったとき, 初めはうまく自分の考えを説明することができなかったけど, 友達の説明の仕方をまねして話型を使って説明することで, うまく筋道立てて説明できるようになってきた 話型を使うことで, 自分が何を求めたいのかがよく分かってすっきりと解けるようになったのでよかった 共有シートはいろいろな意見を書き込むことができ, グループの意見を一つにまとめて書くときにも便利だった 資料 1 生徒の主な感想 7 研究のまとめと今後の課題 (1) 研究のまとめ本研究を通して, 次のようなことが明らかになった 問題解決に際し, 自分の考えを説明し伝え合う場面で, 話型と数学の用語を使わせることで, 生徒は根拠を明らかにし筋道立てて説明することができるようになった 説明し伝え合う活動の場面で, 個人のワークシートや共有シートを活用して, 説明のための図をかいたり, 式に説明を書き加えたりする活動を, ペア, グループ, クラス全体へと取り入れることで, 問題解決への多様な見方や考え方に触れて思考を深めることができた (2) 今後の課題本研究を通して, 次のようなことが今後の課題として明らかになった 今回は中学校の第 3 学年で, 説明し伝え合う活動を充実するための実践を行ってきたが, 今後は, 第 1 学年 第 2 学年においても実践を考えて,3 年間を見通した学習指導の在り方を探る必要がある 今回の授業では, 生徒の多様な見方や考え方を共有する手立てとして, 個人のワークシートや共有シートの活用を図ったが, 他の有効な手段の1つとして,ICT を活用することが考えられ, 今後検討していく必要があると考える 引用文献 1)2)3) 文部科学省 中学校学習指導要領解説数学編 平成 20 年 9 月教育出版 p.14,p.15,p.55 4) 藤井博敏 数学的な考え方を育てる算数科授業の新展開 2009 年 6 月明治図書 p.16 参考文献 熊倉啓之編 数学的な思考力 表現力を鍛える授業 2011 年 3 月明治図書 柗元新一郎 数学的な表現力を育成する授業モデル 2009 年 9 月明治図書 参考 URL 佐賀県教育センター 平成 22 年度全国学力 学習状況調査結果 (2012 年 2 月 ) http://www.pref.saga.lg.jp/web/kurashi/_1018/ik-genba/_48207/_48219.html 佐賀県教育センター 平成 22 年度佐賀県小 中学校学習状況調査結果 (2012 年 2 月 ) http://www.saga-ed.jp/kenkyu/scholastic_attainments_analysis/index.html - 58 -