独立行政法人国立成育医療研究センターエコチル調査メディカルサポートセンター特任部長生体防御系内科部アレルギー科医長 大矢幸弘 1
有 アレルギーマーチはアトピー性皮膚炎と食物アレルギーから始まる 食物アレルギーアトピー性皮膚炎 喘息 アレルギー性鼻炎 病 率.5 1 3 7 15 year 2
乳児期の湿疹は食物アレルギーを合併することが多い 食物アレルギー 食物感作 湿疹 3
食物アレルギーがアトピー性皮膚炎の原因? かつてはこのような考え方が支配的だったしかし 説明できない現象が多い アトピー性皮膚炎が食物アレルギーの原因? 最近はこの考え方が有力になってきたこれまでの謎の多くに説明がつく 4
乳児期のアトピー性皮膚炎の原因が食物アレルギーだとする仮説が正しいとすると 食物抗原感作 食物アレルギー発症 アトピー性皮膚炎発症 一次予防二次予防三次予防 食物抗原による感作を防ぐことが重要 5
妊娠 授乳中の食物制限は有効か? 妊娠中の食物制限に 18 ヶ月時の卵感作の予防効果なし 妊娠中の食物制限に 18 ヶ月時の牛乳感作の予防効果なし 妊娠中の食物制限に 18 ヶ月時のアトヒ ー性皮膚炎の予防効果なし Kramer MS et al., Cochrane Database of Systematic Reviews 26, Issue 3. Art. No.: CD133 6
アレルキ ー疾患のハイリスク児に対する感作予防 米国ガイドライン ハイリスク児の定義 アレルギー疾患ハイリスク児に対して妊娠中の母親の食物抗原除去 授乳中の母親の食物抗原除去 乳児期の加水分解乳 米国 AAP 2 両親 同胞に 2 人以上の ピーナッツ以外は推奨しない ピーナッツ ナッツ類除去 ( 卵 牛乳 魚も考慮 ) 推奨する 米国 AAP 28 両親 同胞に 2 人以上のアレルギー疾患 推奨しない 推奨しない 推奨する 7
イリスク児に対してアレルキ ー疾患のハイリスク児に対する感作予防 妊娠授乳中 乳児期に予防のために食物制限を行うことは推奨されなくなった アメリカ ( 小児科学会 ) 28 年 ヨーロッパ ( 小児アレルギー学会など ) 28 年 日本 ( 小児アレルギー学会 ) 212 年 ハイリスク児の定義 両親 同胞に 1 人以上のアレルギー疾患 両親 同胞に1 人以上のアレルギー疾患 母親の妊娠中の食物抗原除去 母親の授乳中の食物抗原除去 乳児期の加水分解乳 両親 同胞に 1 人以上のアレルギー疾患ハ推奨しない推奨しない推奨しない ( 偏食はしない ) 推奨しない推奨しない推奨しない ( 偏食はしない ) 推奨する推奨する医師の指導の下に 固形食導入 4~6 ヶ月から開始抗原性が高い食物を除去する根拠はない 5 ヶ月から開始抗原性が高い食物を除去する根拠はない 5~6 ヶ月頃が適当 8
生後 3 ヶ月のときアトピー性皮膚炎があると食物抗原に感作を受ける危険性が高くなる 英国の生後 3 ヶ月の完全母乳栄養の乳児 619 人から得られたデータ アトピー性皮膚炎なし 1 オッズ比 (95% CI) P value アトピー性皮膚炎あり 6.18 2.94 12.98 <.1 重症度の低いアトピー性皮膚炎 SCORAD<2 重症度の高いアトピー性皮膚炎 SCORAD>2 3.91 1.7 9..1 25.6 9.3 72.57 <.1 Flohr C et.al. J Invest Dermatol. 214; 134: 345 35 9
J Allergy Clin Immunol 28;122:984-91 ピーナッツアレルギー多いのはどっち? イギリス イスラエル J Allergy Clin Immunol 28;122:984-91 1
J Allergy Clin Immunol 28;122:984-91 ピーナッツの食べ始めが早いのはどっち? イギリス イスラエル 11
牛乳や離乳食の開始時期および母乳期間は 2 歳時での牛乳や卵の抗原感作率に影響なし 離乳食の開始が遅いほど 2 歳時のアトピー性皮膚炎や反復喘鳴 ( 乳児喘息 ) が多くなる PEDIATRICS Vol. 122 No. 1 July 28, pp. e115-e122 ピーナツアレルギーが 1 倍も多い英国ではイスラエルよりもピーナツの摂取開始時期が遅い英国の子どもはアトピー性皮膚炎がイスラエルよりもかなり多い J Allergy Clin Immunol 28;122:984-91 12
加熱卵摂取開始が遅いと卵アレルキ ーが増加 OR: adjusted odds ratio 卵加工品摂取開始時期 1 12 ヶ月 7 9 ヶ月 4 6 ヶ月 OR = 1. OR = 1. OR = 1.1 加熱卵摂取開始時期 1 12 ヶ月 7 9 ヶ月 OR = 4.4 OR = 5.9 4 6 ヶ月 OR = 1.. 2. 4. 6. 8. 1. 12. 1 歳台での卵アレルギーの有病率 ( % ) J. J. Koplin et al. Can early introduction of egg prevent egg allergy in infants? A population based study: JACI 21; 126: 87 813 13
最近は 離乳食の開始を遅らせても 食物アレルギーやアトピー性皮膚炎の予防には役立たないという国外のコホート研究の結果が多くなっている エコチル調査に参加している皆さんは どのような行動をされてているでしょうか 14
2 歳児 食物アレルギーと診断されたこと (%) 1 歳 7. 1 歳 6 か月 11.7 2 歳 12.5 回答数 :25577 件 1 歳までに食物アレルギーと診断されたお子さんが 7% 1 歳 6 か月まででは 11.7% 2 歳まででは 12.5% ( 注意 ) この結果は 214 年 11 月 3 日時点の回答にもとづくデータクリーニング前の暫定的な結果です 15
1 歳児 食べ始めた時期 (%) 米 ( おかゆ せんべいなどを含む ) 79 2 1 小麦 ( うどん パンなど ) 28 52 16 2 1 大豆 ( 豆腐 納豆など ) 34 5 13 2 1 くだもの 果汁 ( りんごのしぼり汁 ジュースなど ) 41 4 15 31 牛乳 ( ヨーグルト チーズ などを含む ) 粉ミルク類を除く 9 37 31 13 1 8 鶏卵 ( 卵ボーロ パンなどを含む ) 1 43 31 8 7 ピーナッツ 1 22 95 そば 2 4 5 1 88 6 か月より以前 7~8 か月 9~1 か月 11~12 か月 13 か月以降まだ食べていない 回答数 : 58418 件 ( 無回答 :12~1183 件 ) 一般的にアレルゲンになるとされる食品について 食べはじめが遅い あるいは まだ食べさせていないという傾向がみられる ( 注意 ) この結果は 214 年 11 月 3 日時点の回答にもとづくデータクリーニング前の暫定的な結果です 16
1 歳 6 か月児 食べないようにしている食べ物 (%) 鶏卵 ( たまごを含む食べ物 ) 89 2 7 2 牛乳 ( 粉ミルク チーズ等を含む ) 95 1 3 1 小麦 ( うどん パン類 ) 99 1 大豆 ( 豆腐 納豆等 ) 99 魚 98 2 米 ( おかゆ せんべい等を含む ) 1 くだもの 果汁 98 1 甲殻類 ( えび かに等 ) 71 23 6 1 そば 42 56 1 ごま 93 6 ナッツ類 49 47 3 1 現在普通に食べている今まで全く食べたことがない現在 一部食べないようにしている以前食べていたが 今は全く食べていない 回答数 : 468 件 ( 無回答 :398~55 件 ) ( 注意 ) この結果は 214 年 11 月 3 日時点の回答にもとづくデータクリーニング前の暫定的な結果です 17
2 歳児 食べないようにしている食べ物 (%) 鶏卵 ( たまごを含む食べ物 ) 9 2 7 1 牛乳 ( 粉ミルク チーズ等を含む ) 96 131 小麦 ( うどん パン類 ) 99 大豆 ( 豆腐 納豆等 ) 99 魚 98 2 米 ( おかゆ せんべい等を含む ) 1 くだもの 果汁 99 1 甲殻類 ( えび かに等 ) 83 1 6 1 そば 59 39 21 ごま 97 3 ナッツ類 68 26 5 1 現在普通に食べている今まで全く食べたことがない現在 一部食べないようにしている以前食べていたが 今は全く食べていない 回答数 : 26521 件 ( 無回答 :198~26 件 ) ( 注意 ) この結果は 214 年 11 月 3 日時点の回答にもとづくデータクリーニング前の暫定的な結果です 18
2 歳児 医師の指示以外で特定の食べ物を食べないようにしたこと 全体合計 21 (%) 2 歳未満 14 お母さんの年齢 2 25 歳 25 3 歳 3 35 歳 35 4 歳 19 22 22 21 4 歳以上 17 回答数 : 26521 件 ( 無回答 :259 件 ) 21% が 医師の指示以外で特定の食べ物を食べないようにしたこと があると回答 ( 注意 ) この結果は 214 年 11 月 3 日時点の回答にもとづくデータクリーニング前の暫定的な結果です 19
2 歳児 食べないようにした理由 食べて症状が出た 18 (%) アレルギーが心配 8 マクロビオティック 1 ベジタリアン その他 12 回答数 : 5533 件 アレルギーが心配 という人が 8% ( 注意 ) この結果は 214 年 11 月 3 日時点の回答にもとづくデータクリーニング前の暫定的な結果です 2
まとめ 1 最近は 離乳食の開始を遅らせても 食物アレルギーやアトピー性皮膚炎の予防には役立たないという国外のコホート研究の結果が多くなっている 2 エコチル調査に参加しているお母さんたちの行動をみると 一般的にアレルギーの原因になるとされる食品について 食べはじめを遅らせる傾向にあることが伺えた 子どもに卵とかナッツとかを食べさせる時期を遅らせたほうが アレルギーが減るのか? それとも 増えるのか? 21
あと2-3 年すると エコチル調査の結果から その答えがわかります 参考 エコチル調査では 2 歳児 5 人のアレルギーについて調べる血液検査 ( 医学的検査 ) を本年 4 月より実施 22