双方向対話型授業の有効性 松本有紀 1. はじめに私が現在通っている大学の特色の 1 つに 双方向対話型授業 というものがある 私はこの言葉に興味を持ち オープンキャンパス等に参加し その良さを実際に体験してみてこの大学に入学することを決意した 私はこの双方向対話型授業を通して 単なる知識以上のものを獲得できていると感じている 現在の大学の授業というものは講義の形になるとどうしても双方向とはいかず 一方的な授業になってしまっている状況にあるように思われる このレポートではこの双方向対話型授業が一方的な授業と比べ どのようなメリットがあるか またその有効性など私の授業での実体験等を踏まえながら述べていく 2. 双方向対話型授業とはまず 双方向対話型授業 とはなにかというと 文字どおり教員と学生が双方で対話をしながら授業を展開する形態のことである これと対に当たるのが 一方向型授業 である 双方向対話型の授業とは異なり 教員から学生に一方的に授業を展開する形態ことである 具体的に言えば 理解しているかな? 分かる人は手を挙げて発表して下さい 等の教員と学生がやりとりを交わす授業が 双方向対話型授業 である 反対に教えるべきことを黒板に記したり 教科書に線を引かせたりするような授業が 一方向型授業 である 3. 双方向対話型授業のメリットでは 双方向対話型授業 と 一方向型授業 な授業で比較した際にどの辺りが 双方向対話型授業 のメリットと言えるのだろうか 最大の利点としては 学生が主体的に授業に参加するようになることである 私の大学では 教科書を学生の誰かに読んでもらったり 先ほど説明したところは理解したかな? 理解できたかチェックしたいから周りの人と話しながら問題解いてみて 等 授業の理解度を図りつつ 学生も参加できる授業が展開されている 一方高校の頃に 一方向型授業 も経験したが 教員がずっと学生に授業の内容を語っているだけなので 静かに授業を聞いている身としてはありがたくもあったが 最初の方の授業で理解が出来なくなった学生や 退屈していて寝ている学生などが多く 教室はとても静かで主体的に授業に参加しているとは言えなかった 学生個人の差は 1
あると思うが 大学の授業と高校の授業を比べると大学の授業の方が活気があり 授業に積極的であるように感じた またその他の大きなメリットとしては コミュニケーション能力の向上 という点が挙げられる 私の大学では授業が終わった後に 今日の授業でなにを学んだのかを班で話し合って発表してもらおうと思います 班の一番前の左に座っている学生がリーダーになって話しあいを進めてください と時々言われることがある 班自体も無差別に組んだりするので学部や年齢 性別の違う学生と話し合いをしなければならない またリーダーになったときは会話をリードしたり 発言を促したり 発表内容をまとめたりたくさんのことをやらなければならない また発表自体も教員の他に他の班の人も聞いていて 質問等をされることもあるため 聞く能力 伝える能力 が培われ 結果として コミュニケーション能力の向上 に繋がっていると考える 高校の授業ではあまりこういった授業は無く 発表等もあったが個人で行ったものを発表するだけであったので 自分の友人以外と関わるということはあまりなかった また発表自体も大学とは違い 数少ないものだったので 資料等はしっかり用意していても周りから予想もしていなかった質問が飛んで来たり 説明をもっと詳しくしてくれと言われたりして 自分の実力であったり成果をうまく出すことが出来ずに悔しい思いをしたことが何度もあった 次こそはと思ってもまた発表の機会はなかなか訪れず そのころには前回何を失敗したのかを忘れ また同じ失敗を繰り返すということが多くあった 大学は発表の機会は非常に多く どの授業にも盛り込まれている 私は人前で話したりするのはとても緊張するので苦手であったが このように毎回授業を通して発表を経験することによって 今ではうまくとまではいかないが 人並みに発表を展開することが出来るようになったと感じている また 何をどう発表すれば皆が興味を持ってくれるか どう説明するのが一番わかりやすいか等を発表をする際は必ず考えられるようになったのはこういった授業形態の恩恵であると考える 4. 双方向対話型授業のデメリット 双方向対話型授業 の大きなメリットを述べてきたが 双方向対話型授業 にデメリットはないのかと言われると残念ながらそうとは言い切れない 双方向対話型授業 は理想的な授業の形態ではあるが 一方向型授業 に比べると時間がかかってしまう 今 大学の授業は楽しく学習出来ていると感じるがディスカッションや発表等で時間がかかりすぎて 授業が予定していたところまで到達しなかったりすることもある 反対に高校の頃 2
は理解の度合いはともかく 授業の進行はとても早かったように感じる またディスカッション等を交えると 収集がつかなくなってしまうことや授業に関係ない私語を誘発してしまう危険性もある 双方向対話型授業 というのは 学生が主体的に参加する授業であるが その域を超えてしまうと授業が成立しなくなってしまうこともあるということを念頭に入れておく必要がある 5. 双方向型授業と一方向型授業の違い私は元々勉強自体に苦手意識はなく 一方向型授業 を特に苦痛に感じることもなく ペーパーテスト等では実力を出すことが出来た しかし 発表やプレゼンテーション等の機会や グループでの活動となると萎縮してしまいがちで うまく実力が出し切れなかった 高校の頃までは発表等に苦手意識を抱いていたが 大学でたくさん経験を積ましてもらえたおかげで今は発表に対する苦手意識であったり 集団の討議でも自分の意見を言えるようになった 授業に対する取り組み方も大きく変化した 一方向型授業 を受けたときは 個人で勉強しているという気持ちが大きく 先生に聞くこともあまりなく また誰かに教えてもらう 教えるということもあまりなかった 授業でわからないところがあったら個人的に先生の所に行き 教えてもらったり 家に帰ってからノートや教科書を見て勉強した 双方向対話型授業 を受けている現在はわからないことがあったら教員が回ってきたときに聞いたり ディスカッション時間に私が分からなかったところを相手に教えてもらい 相手が分からなかったところを教えたりすることが自然とできるようになった また そういうことが許されている環境下で勉強が出来ていると感じている 勉強に関する知識を身につける面に関していえば 一方向型授業 でも問題はなく 時間や進行度の面でいえばこの形態の方が優れているように思えるが 双方向対話型授業 は対話しながらの授業であるため 授業の理解度を学生に確認出来たりするため やる気のある学生は置いて行かれるということはほとんどないように感じる 一方向型授業 では教員の話を聞き ノートをとる単調なものになりがちで勉強が苦手な学生はさらに授業に対して関心がなくなり ぼーっとしていたり居眠りをする それだけでなく やる気がある学生であっても一回授業でわからないことがあると聞ける人がおらず その後の勉強であったり授業をうやむやにしてしまう傾向にあると私個人の体験を通して感じるところがある 対して 双方向対話型授業 は話しあいであったり発表であったりを設けるため 3
学生の興味関心を高めるとともに 理解の遅れている学生をそのままにしておくということがあまりない 講義を聞いて分からなくて寝ている学生 ぼーっとしている学生も話し合いや発表では 周りや先生から聞き 得るものが全くなかったということはないように感じる 6. 双方向対話型授業の有効性 双方向対話型授業 は学校が上になるごとに少なくなっていくもののように思える そうなっている理由の 1 つに 勉強はあくまでも自分自身で考え 学ぶものであるという考え方がある その考え方は確かに一理あり 勉強が得意であるという学生はそれでもいいと思う また テストに正しい答えを書かせるにはそれで充分であると思う しかし 勉強の苦手な学生に 授業をただ聞いてたくさんノートをとって授業中は静かに勉強に勤しみなさいと言ったところで実現は不可能だと思う やる気のある学生であっても躓くとだんだんとやる気が削がれていって最終的には他の学生の邪魔はしないように静かにする そんなところだけが達成されてしまっているように思える また勉強が得意な学生であっても 知識を増やしテストの成績を上げることにはこの 一方向型授業 でも問題はないように思えるが それを周りに伝える能力 対話する能力 総じてコミュニケーション能力は向上するとは言い切れない このようなことから 双方向対話型授業 を授業に盛り込むことは有効ではないかと考えられる しかしデメリットのところでも述べたように 授業が進まない 話し合いが長すぎたり授業とは関係ない方向に進んでしまっては授業そのものが成り立っているとは言えなくなってしまうので 講義を聞く時間 ノートをとる時間等もしっかり設け ディスカッションや発表 質問等の時間も区切りをつけて行うことが 双方向対話型授業 を行う際には大切であると思う 私の周りでやる気はあるがどうしても授業を最後まで理解することが出来ない 興味が持てないと言う学生もいる 私も 一方向型授業 を受けていたときは 詰め込みの授業 とにかくひたすら自身で書いて覚えなければという思いがあり 勉強に対し受け身で嫌なものとして捉えていた時期があった しかし 双方向対話型授業 を受けている今はわからないことがあっても苦にすることはなくなった 誰かに聞いて教えてもらえるからである 授業が難しくてもそれを教員に伝えることもできるからである そのためまるきり 1 人で取り残されることはまずない そして必要な知識を頭に入れることだけでなく その知識を使い 周りとコミュニケーションをとることも 双方向対話型授業 では可能であ 4
り その能力を経験と共に向上させることができると考えている 本レポートがやる気はあるものの勉強に興味関心が強く向けられない学生や 知識の面でなく それを相手に伝えるなどのコミュニケーション能力に不安を抱える学生たちの少しでも役に立つことを願っている 5