国土技術政策総合研究所資料

Similar documents
国土技術政策総合研究所資料

水防法改正の概要 (H 公布 H 一部施行 ) 国土交通省 HP 1

キャリブレーションガイド

近畿地方整備局 資料配付 配布日時 平成 23 年 9 月 8 日 17 時 30 分 件名土砂災害防止法に基づく土砂災害緊急情報について 概 要 土砂災害防止法に基づく 土砂災害緊急情報をお知らせします 本日 夕方から雨が予想されており 今後の降雨の状況により 河道閉塞部分での越流が始まり 土石流

資料 -5 第 5 回岩木川魚がすみやすい川づくり検討委員会現地説明資料 平成 28 年 12 月 2 日 東北地方整備局青森河川国道事務所

Microsoft PowerPoint - 基礎水理シンポ②村上.pptx

2. 急流河川の現状と課題 2.1 急流河川の特徴 急流河川では 洪水時の流れが速く 転石や土砂を多く含んだ洪水流の強大なエネルギー により 平均年最大流量程度の中小洪水でも 河岸侵食や護岸の被災が生じる また 澪筋 の変化が激しく流路が固定していないため どの地点においても被災を受ける恐れがある

4. 堆砂

Microsoft PowerPoint - SDF2007_nakanishi_2.ppt[読み取り専用]

6. 現況堤防の安全性に関する検討方法および条件 6.1 浸透問題に関する検討方法および条件 検討方法 現況堤防の安全性に関する検討は 河川堤防の構造検討の手引き( 平成 14 年 7 月 ): 財団法人国土技術研究センター に準拠して実施する 安全性の照査 1) 堤防のモデル化 (1)

1. 多変量解析の基本的な概念 1. 多変量解析の基本的な概念 1.1 多変量解析の目的 人間のデータは多変量データが多いので多変量解析が有用 特性概括評価特性概括評価 症 例 主 治 医 の 主 観 症 例 主 治 医 の 主 観 単変量解析 客観的規準のある要約多変量解析 要約値 客観的規準のな

国土技術政策総合研究所 研究資料

<4D F736F F D20894A AF905A93A78E7B90DD82CC88DB8E9D82C98AD682B782E98AEE8F802E646F6378>

Kumamoto University Center for Multimedia and Information Technologies Lab. 熊本大学アプリケーション実験 ~ 実環境における無線 LAN 受信電波強度を用いた位置推定手法の検討 ~ InKIAI 宮崎県美郷

不確かさ 資料 1/8

η η η η

地下水の水質及び水位地下水の水質及び水位について 工事の実施による影響 ( 工事の実施に伴う地下水位の変化 地下水位流動方向に対する影響 並びに土地の造成工事による降雨時の濁水の影響及びコンクリート打設工事及び地盤改良によるアルカリ排水の影響 ) を把握するために調査を実施した また

【参考資料】中小河川に関する河道計画の技術基準について

Microsoft PowerPoint - 基礎水理シンポ①村上.pptx

<4D F736F F F696E74202D B78EF596BD89BB82CC8EE888F882AB C8E86816A F4390B3205B8CDD8AB B83685D>

Microsoft PowerPoint - 千代田概要版 ppt [互換モード]

流速流量表 ( 縦断用 ) 呼び名 幅 a(m) 深さ c(m) ハンチ高 s(m) 水深余

ダムの運用改善の対応状況 資料 5-1 近畿地方整備局 平成 24 年度の取り組み 風屋ダム 池原ダム 電源開発 ( 株 ) は 学識者及び河川管理者からなる ダム操作に関する技術検討会 を設置し ダム運用の改善策を検討 平成 9 年に設定した目安水位 ( 自主運用 ) の低下を図り ダムの空き容量

【論文】

作成 承認 簡単取扱説明書 ( シュミットハンマー :NR 型 ) (1.0)

1

淀川水系流域委員会第 71 回委員会 (H20.1 審議参考資料 1-2 河川管理者提供資料

目次 Ⅰ. 調査概要 調査の前提... 1 (1)Winny (2)Share EX (3)Gnutella データの抽出... 2 (1) フィルタリング... 2 (2) 権利の対象性算出方法... 2 Ⅱ. 調査結果 Win

平成 27 年 9 月埼玉県東松山環境管理事務所 東松山工業団地における土壌 地下水汚染 平成 23~25 年度地下水モニタリングの結果について 要旨県が平成 20 年度から 23 年度まで東松山工業団地 ( 新郷公園及びその周辺 ) で実施した調査で確認された土壌 地下水汚染 ( 揮発性有機化合物

, COMPUTATION OF SHALLOW WATER EQUATION WITH HIERARCHICAL QUADTREE GRID SYSTEM 1 2 Hiroyasu YASUDA and Tsuyoshi HOSHINO


水質

<4D F736F F F696E74202D208A438ADD8BDF82AD82CC97AC82EA82C697A48B4E8CB A82E B8CDD8AB B83685D>

学識経験者による評価の反映客観性を確保するために 学識経験者から学術的な観点からの評価をいただき これを反映する 評価は 中立性を確保するために日本学術会議に依頼した 詳細は別紙 -2 のとおり : 現時点の検証の進め方であり 検証作業が進む中で変更することがあり得る - 2 -

水質

<4D F736F F D2091E E8FDB C588ECE926E816A2E646F63>

3-3 現地調査 ( カレイ類稚魚生息状況調査 ) 既存文献とヒアリング調査の結果 漁獲の対象となる成魚期の生息環境 移動 回遊形態 食性などの生活史に関する知見については多くの情報を得ることができた しかしながら 東京湾では卵期 浮遊期 極沿岸生活期ならびに沿岸生活期の知見が不足しており これらの

Microsoft PowerPoint - 発表II-3原稿r02.ppt [互換モード]

図 5 一次微分 図 6 コントラスト変化に伴う微分プロファイルの変化 価し, 合否判定を行う. 3. エッジ検出の原理ここでは, 一般的なエッジ検出の処理内容と, それぞれの処理におけるパラメータについて述べる. 3.1 濃度投影検出線と直交する方向に各画素をスキャンし, その濃度平均値を検出線上

多変量解析 ~ 重回帰分析 ~ 2006 年 4 月 21 日 ( 金 ) 南慶典

インターリーブADCでのタイミングスキュー影響のデジタル補正技術

電磁波レーダ法による比誘電率分布(鉄筋径を用いる方法)およびかぶりの求め方(H19修正)

()

<4D F736F F D A C5817A8E59918D8CA B8BBB89BB8A778D488BC B8BBB F A2E646F63>

スライド タイトルなし

横浜市環境科学研究所

測量士補 重要事項 レベルによる観測作業の注意事項

1. 湖内堆砂対策施設の見直し 1.2 ストックヤード施設計画 ストックヤードの平面配置は 既往模型実験結果による分派堰内の流速分布より 死水域となる左岸トラップ堰の上流に配置し 貯砂ダムから取水した洪水流を放流水路でストックヤード内に導水する方式とした ストックヤード底面標高は 土木研究所の実験結

強度のメカニズム コンクリートは 骨材同士をセメントペーストで結合したものです したがって コンクリート強度は セメントペーストの接着力に支配されます セメントペーストの接着力は 水セメント比 (W/C 質量比 ) によって決められます 水セメント比が小さいほど 高濃度のセメントペーストとなり 接着

0 21 カラー反射率 slope aspect 図 2.9: 復元結果例 2.4 画像生成技術としての計算フォトグラフィ 3 次元情報を復元することにより, 画像生成 ( レンダリング ) に応用することが可能である. 近年, コンピュータにより, カメラで直接得られない画像を生成する技術分野が生

global.html

新事業分野提案資料 AED(自動体外式除細動器) 提案書

Decomposition and Separation Characteristics of Organic Mud in Kaita Bay by Alkaline and Acid Water TOUCH NARONG Katsuaki KOMAI, Masataka IMAGAWA, Nar

周期時系列の統計解析 (3) 移動平均とフーリエ変換 nino 2017 年 12 月 18 日 移動平均は, 周期時系列における特定の周期成分の消去や不規則変動 ( ノイズ ) の低減に汎用されている統計手法である. ここでは, 周期時系列をコサイン関数で近似し, その移動平均により周期成分の振幅

Q3 現在の川幅で 源泉に影響を与えないように河床を掘削し さらに堤防を幅の小さいパラペット ( 胸壁 ) で嵩上げするなどの河道改修を行えないのですか? A3 河床掘削やパラペット ( 胸壁 ) による堤防嵩上げは技術的 制度的に困難です [ 河床掘削について ] 県では 温泉旅館の廃業補償を行っ

国土技術政策総合研究所 研究資料

1.民営化

症状原因対処方法 電源が入らない 電源が入ると ブザー 音が 1 回 ピ と鳴った あと Cyclops 本体の中 央の LED が緑または赤 に 1 回点滅します 充電されない 正常に充電できている 場合 Cyclops 本体の左 側の LED が赤点灯し 満充電で緑点灯しま す 電源が切れる 故

目次 組立 施工の前に P.1 開口部の確認 P.2 同梱一覧 P.3 組立 施工 1. 枠の組立 P.8 2. 埋込敷居の床貼込み寸法 P.9 3. 枠の取付 P 敷居の取付 P ケーシングの取付 P 床付ガイドピン 振止めストッパーの取付上吊りタイプ P.16

( 速報 ) ~ 騒音 振動調査 ( 騒音 )~ 騒音レベル (db) 騒音レベル (db) 各地点の騒音調査結果 騒音調査結果まとめ (L のみ表示 ) NVR-2 NVR-3 L L L9 LAeq L L L9 LAeq 騒音レベル (db) 9 8 7

Microsoft PowerPoint - 1.プロセス制御の概要.pptx

<4D F736F F F696E74202D CD90EC8B5A8F708DA7926B89EF816993BF938791E BA816A8F4390B E707074>

粒子画像流速測定法を用いた室内流速測定法に関する研究

(1) (2) (3) (4) (5) 2.1 ( ) 2

<4D F736F F F696E74202D208E518D6C8E9197BF325F94F093EF8AA98D CC94AD97DF82CC94BB92668AEE8F8082C98AD682B782E992B28DB88C8B89CA2E B8CDD8AB B83685D>

Microsoft Word - 報告書(9-5).doc

土壌含有量試験(簡易分析)

森林・河川等の環境中における 放射性セシウムの動き

ÿþ

平成 29 年 7 月 20 日滝川タイムライン検討会気象台資料 気象庁札幌管区気象台 Sapporo Regional Headquarters Japan Meteorological Agency 大雨警報 ( 浸水害 ) 洪水警報の基準改正 表面雨量指数の活用による大雨警報 ( 浸水害 )

各資産のリスク 相関の検証 分析に使用した期間 現行のポートフォリオ策定時 :1973 年 ~2003 年 (31 年間 ) 今回 :1973 年 ~2006 年 (34 年間 ) 使用データ 短期資産 : コールレート ( 有担保翌日 ) 年次リターン 国内債券 : NOMURA-BPI 総合指数

阿寒川水系の水と森林に関する調査研究事業報告書 ( H16~ H20 年度 ) H21 年 3 月 財団法人北海道森林保全協会

する距離を一定に保ち温度を変化させた場合のセンサーのカウント ( センサーが計測した距離 ) の変化を調べた ( 図 4) 実験で得られたセンサーの温度変化とカウント変化の一例をグラフ 1 に載せる グラフにおいて赤いデータ点がセンサーのカウント値である 計測距離一定で実験を行ったので理想的にはカウ

EBNと疫学

2-2 需要予測モデルの全体構造交通需要予測の方法としては,1950 年代より四段階推定法が開発され, 広く実務的に適用されてきた 四段階推定法とは, 以下の4つの手順によって交通需要を予測する方法である 四段階推定法将来人口を出発点に, 1 発生集中交通量 ( 交通が, どこで発生し, どこへ集中

黄砂消散係数 (/Km) 黄砂消散係数 (/Km) 黄砂消散係数 (/Km) 黄砂消散係数 (/Km) 日数 8~ 年度において長崎 松江 富山で観測された気象台黄砂日は合計で延べ 53 日である これらの日におけるの頻度分布を図 6- に示している が.4 以下は全体の約 5% であり.6 以上の

津波警報等の留意事項津波警報等の利用にあたっては 以下の点に留意する必要があります 沿岸に近い海域で大きな地震が発生した場合 津波警報等の発表が津波の襲来に間に合わない場合があります 沿岸部で大きな揺れを感じた場合は 津波警報等の発表を待たず 直ちに避難行動を起こす必要があります 津波警報等は 最新

Microsoft PowerPoint - 知財報告会H20kobayakawa.ppt [互換モード]

Microsoft Word - Chap17

0.45m1.00m 1.00m 1.00m 0.33m 0.33m 0.33m 0.45m 1.00m 2


< F2D B4C8ED294AD955C8E9197BF C>

青森県環境保健センター所報No11

Microsoft Word - 第5章09電波障害 doc

Microsoft Word - 005_第4章_工法(作業済)

SUMMIT-X検査装置

<4D F736F F D2091E6358FCD31328B438FDB A5182F08ADC82DE816A2E646F6378>

505_切削オーバーレイ

測量試補 重要事項

(a) (b) 写真 -3 流下状況 ( ケース 1) 写真 -2 (a) 家屋模型,(b) 橋梁模型表 -1 実験ケース 実験パターン 流下条件 流量 (L / min) ケース1 家屋実験 泥流 25 ケース2 家屋実験 土石流 25 ケース3 橋桁実験 泥流 25 ケース4 橋桁実験 土石流

<4D F736F F F696E74202D F093EF8A6D95DB8C7689E681768DEC90AC82CC8EE888F882AB2E B8CDD8AB B83685D>

Microsoft PowerPoint - 01_内田 先生.pptx

- 14 -

AM部会用資料(土木・建築構造物)

Microsoft PowerPoint _40

2011河川技術論文集

微分方程式による現象記述と解きかた

7 章問題解答 7-1 予習 1. 長方形断面であるため, 断面積 A と潤辺 S は, 水深 h, 水路幅 B を用い以下で表される A = Bh, S = B + 2h 径深 R の算定式に代入すると以下のようになる A Bh h R = = = S B + 2 h 1+ 2( h B) 分母の

0 スペクトル 時系列データの前処理 法 平滑化 ( スムージング ) と微分 明治大学理 学部応用化学科 データ化学 学研究室 弘昌

Microsoft Word - H doc

Transcription:

3. 濁度計観測に関する留意事項 3.1 設置前の留意事項濁度計を設置する前には 設置場所の現地調査を行い 調査目的および設置場所に適した濁度計を選定し 濁度計の機種および設置場所に適した保護ケースを準備する また濁度計は設置前にキャリブレーションを行う 解説 濁度計の選定および保護ケースについては 2.2 濁度計の種類 および 3.2 観測場所選定時 設置時の留意事項 を考慮して適切な機種を検討する 濁度計のキャリブレーションについては 山地河道における流砂水文観測の手引き ( 案 ) の 4.3.2 に従い実施することを基本とする なお キャリブレーションに用いるサンプル土砂の粒径区分は 山地河道における流砂水文観測の手引き ( 案 ) の参考資料 3や横山 (2002) も参照すること 濁度計の出力は 粒径数 m 以下 ( 粘土 ) の粒子に強く依存するため 粒径 0.075 mm 以下のサンプル土砂については レーザー回折 散乱式粒度分布測定装置により詳細な粒径分布を把握しておくことが望ましい 参考文献 山地河道における流砂水文観測の手引き ( 案 ): 国土技術政策総合研究所資料 No.686,2012 年 4 月横山勝英 (2002): 濁度計の粒径依存特性と現地使用方法に関する考察, 土木学会論文集, Vol. 698, II-58, pp. 93-98. 6

3.2 観測場所選定時 設置時の留意事項 3.2.1 設置場所および設置高に関する留意事項設置場所および設置高は 観測結果に不具合が生じる原因 (2.3 参照 ) となりうる事態が生じないように留意する 解説 濁度計の設置場所および設置高は 山地河道における流砂水文観測の手引き ( 案 ) の 4.3.3 に従い実施することを基本とする 浮遊砂濃度は深さ方向に違いがあることが考えられることから 水深が常時十分にあり 精度の高い浮遊砂量の観測が必要な場合については 深さ方向に複数の濁度計を設置することが考えられる 設置場所および設置高を決定するにあたっては以下の項目に留意する 1 濁度計が土砂の堆積により埋没するおそれがない位置に設置する 2 濁度計の設置高は検出面が常時流水に浸る高さで 河床と検出面との距離が 20 cm 以上確保できることが望ましい 十分な水深が確保できる場所がない場合は できる限り水深の大きい場所を選定し 河床と検出面との距離が 5 cm 以下となる場所には設置しない なお 河床変動に応じて濁度計の設置高を変更できるよう 濁度計の取り付け金具を可変式にすることが望ましい 3 濁度計の検出面に直射日光が当たらない場所に設置する 4 コンクリート面など日射の反射が生じるおそれのある箇所の近傍に濁度計を設置しない 5 ごみ 落ち葉などが濁度計に絡まりにくい場所に設置する 上記の1~5の条件を満たす場所が観測候補地周辺にない場合 濁度計が埋没するとその後 埋没が解消されない限り 継続的に結果が得られなくなるので1の条件を確保することを優先する 濁度計設置位置以下に水位が低下すると 濁度計は正しく濁度を計測できない さらに 細かい土砂が濁度計に付着する場合がある このような場合 再び 水位が濁度計設置位置以上になった場合でも しばらく 付着した土砂がすぐには洗い流されないため 異常値を示す場合がある そのため 2に示したように 濁度計は検出面が常時流水に浸る高さに設置することが望ましい ただし 水位がいったん濁度計設置位置以下に下がった場合であっても その後の出水で水位が濁度計設置位置以上になった場合 正常に観測できる場合も 7

ある このため 1の条件 2の条件の両方を満たすことが困難な場合 1の条件を優先する また 3~5については 適切な場所がない場合は 3.2.2 で示すように設置方法によって解決できる場合がある 参考文献 山地河道における流砂水文観測の手引き ( 案 ): 国土技術政策総合研究所資料 No.686,2012 年 4 月 8

3.2.2 設置方法に関する留意事項濁度計の設置にあたっては 観測結果に不具合が生じる原因 (2.3 参照 ) となる事態が生じないように留意し 設置方法を決定する 解説 設置方法を決定するにあたっては 以下の項目に留意する 1 濁度計設置場所に十分な水深 (20 cm 以上 ) を確保できない場合 濁度計のセンサー面が河岸 河床に向かないように設置する 2 その場合 濁度計のセンサー面に直射日光および反射光が当たらないように設置する 3 ごみ 落ち葉などが濁度計に極力絡まらないように設置する 4 データ回収時 定期保守時に濁度計のセンサー面の状態が確認しやすいように設置する 5 豪雨時に濁度計の流失 ケーブルの破断が生じないように設置する 良好な観測結果が得られている箇所の具体的な設置手法を参考資料 4 に示す 9

3.3 観測期間中の留意事項観測期間中には 直接採水を行い 濁度計のキャリブレーションを行うことが望ましい 解説 濁度計による流砂観測の精度を向上させるため 濁度計を用いた観測期間において 出水時に直接採水を行い 浮遊砂 ウォッシュロードの濃度 粒径を計測することが望ましい 直接採水により浮遊砂 ウォッシュロードの濃度を計測した場合は 直接採水から得られた濃度と濁度計の出力値から得られた濃度が大きく異なる場合等 必要に応じて 観測前に行ったキャリブレーション式の係数の見直しを行う 10

参考 様々な濁度と SS 濃度の関係式 一般に 山地河川では 出水中の河川水の SS(Suspended Solid; 浮遊物質, または懸濁物質 ) に浮遊砂やウォッシュロードが含まれる場合が多い 流砂観測において SS 流出量を評価するには SS 濃度 (mg/l) に流量を乗じて算出する 濁度計で観測された濁度値から SS 濃度を推定するには 濁度と SS 濃度の関係式を構築する必要があるが 濁度と SS 濃度の関係は とくに濁度が高い範囲でばらつくことが多く かならずしも相関がよくない その原因の一つとして 濁度の粒径依存性が指摘されており ( 横山 2002) 実際の出水時に SS の粒度分布が均一でないことに起因している可能性がある ( 水垣ら 2012, Abe ら 2012) 1 浮遊砂 ウォッシュロードが多様な粒径で構成されている場合に 粒径を考慮して濁度から SS 濃度 (mg/l) に変換する方法 :( 横山 2002) 1 SS: 浮遊土砂の重量濃度 [mg/l] T b : 濁度 [ppm または FTU] α: 係数で 3.1 で 示したキャリブレーション等により決定 k: 粒度分布の分割数 P i : それぞれの粒径階 i の重量比 d i : 粒径階 i の代表粒径 [mm] 2 粒径に流量依存性がある場合に 濁度から SS 濃度を推定する方法 : 水垣ら (2012) Abe ら (2012) 濁度成分 ( 浮遊砂 ウォッシュロード等 ) の粒径は 流量 ( 流速 ) に比例して大きくなる可能性がある その場合 SS 濃度に対する濁度の応答は小さくなるため SS 濃度と濁度との比 (SS/T b 比 ) を流量の関数で回帰することで 濁度計による SS 濃度の推定精度が向上する場合がある 2 SS: 浮遊土砂の重量濃度 [mg/l] T b : 濁度 [ppm, FTU] Q: 流量 [m 3 /s] a, b, c: 係数で 観測期間中の直接採水による観測結果に基づき決定する 参考文献 横山勝英 (2002): 濁度計の粒径依存特性と現地使用方法に関する考察, 土木学会論文集, Vol. 698, No. II-58, pp. 93-98. 11

水垣滋 阿部孝章 丸山政浩 (2012): 濁度計による高濃度濁水中の浮遊土砂濃度推定法, 寒地土木研究所月報, Vol. 706, pp. 12-19. Abe T., Mizugaki S., Toyabe T., Maruyama M., Murakami Y., Ishiya T.(2012): High range turbidity monitoring in the Mu and Saru river basins: All-year monitoring of hydrology and suspended sediment transport in 2010, International Journal of Erosion Control Engineering, Vol. 5, No. 1, pp. 70-79. 12

3.4 データ回収時 定期保守時の留意事項データ回収時 定期保守時には以下の点について留意する 1 濁度計のセンサー面を清掃する 清掃にあたっては センサー面を傷つけないようにする 2 データの出力値の異常の有無を確認する 解説 山地河道における流砂水文観測の手引き( 案 ) の 4.3.4 に従い実施することを基本とする 濁度計のセンサー面が汚れると 濁度計は正常に計測できない そこで データ回収時には必ず 濁度計のセンサー面の状態を確認し 汚れが見られる場合 布で拭くなど清掃する データの回収時には 出力値の異常の有無を確認する 出力値の異常の有無を確認できるように 回収前に通常時の出力値の範囲を把握しておくことが重要である また センサーが経年的に劣化するなど 出力値と濁度の関係が 経年的に変化する可能性が考えられる そこで 出水期前など 概ね 1 年に 1 度 濁度計を取りはずし キャリブレーション等を行い 出力値に変化が無いか確認することが望ましい また 現地で設置されている濁度計のケーブルにある程度余裕がある場合は 濁度計を固定している留め金をはずして引き出し 現地で出力値に変化が無いか確認することが望ましい 濁度計の出力値の確認にあたっては あらかじめ計量しておいたカオリン粘土等を用いて 現地で簡易に濁度計のキャリブレーションを行うことが考えられる ただし バケツ等を用いて実施する場合は バケツの大きさが小さいとバケツ壁面の影響を受けるおそれがあることに注意する また 現地でキャリブレーションを行う場合は 日光が当たらないように留意する 参考文献 山地河道における流砂水文観測の手引き ( 案 ): 国土技術政策総合研究所資料 No.686,2012 年 4 月 13

参考 デジタルカメラによるセンサー部の光学系の異常の確認 現在 使用されている濁度計の多くは センサー光として赤外線 ( 波長 865 nm 周辺 ) が使用されている そのため 人間の目では センサー光を確認することはできないが 一般的なデジタルカメラであれば センサー光を撮影可能である すなわち 光学系の故障があり センサー光が発光されていない場合は デジタルカメラで撮影した場合でも 光は写らない なお 光量が少ないので 接写する必要がある 写真 -1 デジタルカメラによるセンサー部の撮影例 参考 現地でキャリブレーションを行う際の直射日光 反射光の遮蔽 現地でキャリブレーションを行う際は 直射日光 反射光をセンサー感部に受けないように留意する必要がある 写真 -2 のように直射日光 雪による反射光を遮蔽する容器 ( バケツ ) を用いることにより 濁度計の出力値のバラツキを小さくすることができる ( 北海道開発局帯広開発建設部 ) 写真 -2 直射日光 雪による反射光を遮蔽する容器を用いた現地でのキャリブレーション 14

3.5 データ回収後の留意事項 3.5.1 異常値の有無の確認および分析データ回収後は速やかにデータを図化し異常の有無を確認する データの異常があった場合は 異常の種類について分析する 解説 濁度計のデータの異常の有無は以下の観点で確認を行う 1 降雨 水位上昇に対して 濁度の上昇が確認されない 2 降雨 大きな水位変動が生じていないにもかかわらず 濁度に大きな変動が見られる 3 低水時に流水がほとんど濁っていないにもかかわらず 比較的高い出力値が見られる なお 具体的な異常データの例は参考資料 2 にまとめた 次に データの異常が見られた場合 異常の種類について分析する 分析の観点は以下に示す (1) 異常値の出現するタイミング異常値の出現するタイミングについて 以下の観点で整理する a. 異常値が観測期間中 継続的に見られる b. 異常値が観測期間中の特定の時期以降 継続的に見られる c. 異常値が観測期間中の特定の時期以降 しばらく継続して解消される d. 異常値が一時的に出現する d1 異常値が洪水時に出現する d2 異常値が低水時に出現する d3 異常値がランダムに出現する (2) 異常値のパターン異常値のパターンについて 以下の観点で整理する A. ほぼ一定値 ( 若干の変動はある ) が継続的に出現する A1 ほぼゼロに近い値が継続的に出現する A2 レンジオーバーの値が継続的に出現する A3 ゼロ レンジオーバー以外の値が継続的に出現する B. 大きな変動が見られる C. 日周変動などほぼ周期的な変動が見られる 15

3.5.2 異常への対応異常値の有無の確認および分析 (3.5.1) の結果に従い 異常の原因について考察し 異常を解消するように観測の改善を図る 解説 濁度計の代表的な異常事例について 以下に示す (1) 観測期間中 継続的に一定値が見られる (3.5.1 の分類における a-a) 濁度計の故障により 一定値を出力することがある 一定の出力が観測期間中 継続的に見られる場合は 初期不良または設置時に故障した可能性が高い このような症状の場合 濁度計をいったん取り外し 機器が正常に作動するかの動作確認を行い 正常に作動しない場合は濁度計の修理 交換を行う (2) 観測期間中の特定の時期以降 継続的に一定値が見られる (3.5.1 の分類における b-a) 1) ゼロに近い値を示す (3.5.1 の分類における b-a1) 濁度計が土砂に埋没するとゼロに近い値が継続的に出現する場合がある また 濁度計および記録部の故障 ケーブル断線によりゼロ出力となる可能性が考えられる また 流砂等の外力と関係なく 経年劣化によりゼロ出力となる場合もある そこで このような症状の場合 まず 濁度計が土砂で埋没していないか確認する その上で 埋没していない場合 濁度計をいったん取り外して動作確認を行い 正常に作動しない場合は濁度計の修理 交換を行う また 濁度計が正常に作動する場合は 記録部の動作確認 ケーブルの断線の有無を確認する 2) レンジオーバーを示す (3.5.1 の分類における b-a2) 濁度計の故障により 基準電圧をそのまま出力することがある このとき 出力値はレンジオーバーする このような症状の場合 濁度計をいったん取り外して動作確認を行い 機器が正常に作動するか確認し 正常に作動しない場合は濁度計の修理 交換を行う また 濁度計が正常に作動する場合は 記録部の動作確認 ケーブルの断線の有無を確認する 河床 流路変動等により濁度計が埋没した場合にも 濁度値が継続してレンジオーバーする場合がある ( しばらく継続して解消する場合もある その場合は c-a2 ) このような症状の場合 まず 濁度計が土砂で埋没していないか確認する 3) ゼロ レンジオーバー以外の一定値を示す ( 低水時にもかかわらず ゼロに 16

近づかない )(3.5.1 の分類における b- A3) 濁度計の故障により 一定値を出力することがある このような症状の場合 濁度計をいったん取り外し動作確認し 機器が正常に作動するか確認し 正常に作動しない場合は濁度計の修理 交換を行う また センサー面の汚れが生じると低水時にもかかわらず 比較的高い出力値が継続する このような場合は センサー面の汚れを疑い 濁度計のセンサー面を点検 センサー面の清掃を行う それでも正常に戻らない場合は 濁度計をいったん取り外して動作確認を行い 正常に作動しない場合は濁度計の修理 交換を行う また 濁度計が正常に作動する場合は記録部の動作確認 ケーブルの断線の有無を確認する 河床 流路変動等により濁度計が干上がったり埋没したりして通水がない場合にも 一定値を出力することがある ( しばらく継続して解消する場合もある その場合は c-a3 ) このような症状の場合 まず 濁度計が土砂で埋没していないか確認する (3) 異常値が観測期間中の特定の時期以降 しばらく継続して一定値が解消される (3.5.1 の分類における c-a) 1) ゼロに近い値を示す (3.5.1 の分類における c-a1) 濁度計が土砂に埋没するとゼロに近い値が継続的に出現する場合がある いったん土砂に埋没した場合であっても その後の出水により 土砂の埋没が解消されると 濁度計の出力値は正常に戻る また このような場合 洪水の最中に急に 出力値が低下する場合が多い そこで 洪水時においても濁度計の応答が見られない時がある場合は データ解析時 (3.6 参照 ) に留意する また 濁度計の設置高の見直しを検討する ただし 低水時に濁度が低い場合は 継続的にゼロに近い値が出力される場合があるので 異常かどうかの判断は 洪水時にも継続的にゼロ出力が続くかどうかで判断する必要がある 2) ゼロ レンジオーバー以外の一定値を示す (3.5.1 の分類における c- A3) 濁度計にゴミや落ち葉等が絡まった場合や土砂等がセンサー面に付着した場合に 出力値がゼロよりかなり大きい値が低水時にもかかわらず継続的に出現する場合がある さらに その後出水等により ゴミや落ち葉 付着していた土砂等が流出すると 濁度計の出力値は正常に戻る また ゴミや落ち葉 土砂等がセンサー面に絡まったり 付着したりした場合の出力値は必ずしも一定の値ではなく 細かい時間的ばらつきが見られる場合が多い また 土砂等のセンサー面への付着は 3.2.1 に示したように 水位が低下し 17

濁度計が乾燥した状態になった際に土砂も乾燥し 水位再上昇後にしばらく異常が継続する場合が多い また ゴミや落ち葉等が濁度計に絡まる現象はどちらかというと洪水時に多く 洪水終了後継続的に高い出力値が継続する場合がある このような期間のデータについては データ解析時 (3.6 参照 ) に留意する また 濁度計のゴミや落ち葉等が原因と考えられる場合は ゴミや落ち葉等が絡まりにくい設置手法を検討する 一方 センサー面への土砂等の付着が原因と考えられる場合は 濁度計が土砂による埋没のおそれのない範囲で 濁度計の設置高を検討する (4) 異常値が一時的に出現する 1) 洪水時に短期的に水位変動に追随しない ( 一定値 大きな変動 )(3.5.1 の分類における d1) 洪水時に濁度計にゴミや落ち葉等が絡まった場合 水位変動があるにもかかわらず 出力値が一時的にほぼ一定値になる または 大きな変動を伴う場合がある このような場合 ゴミや落ち葉等が絡まりにくい場所への移設または設置方法を検討する 2) 低水時に日周変動が見られる (3.5.1 の分類における d2-c d3-c) 濁度計に直接 日射が当たる または コンクリート面などからの反射光が当たる場合 低水時の濁度が低い状況でも 比較的高い値が出力される場合がある このような場合 日中に出力値が大きくなる日周変動が見られる このような場合 日射 反射光の影響が小さい場所への移設または設置方法を検討する 3) ランダムにパルス状の異常値が発生 (3.5.1 の分類における d3) 河道内や河道周辺における工事や排水など 人為的な影響が原因となっている場合がある その場合 工事時期や農地 民家等からの排水経路 時期を確認し データ解析時の参考とする 18

3.6 データ解析時の留意事項データ解析時には 異常値の有無の確認および分析 (3.5.1) において 異常値として確認された期間については 解析に含めないように留意する 解説 山地河道における濁度計を用いた観測においては 技術的な課題が少なくない そのため 観測期間を通じて 正常なデータを取得するのは 必ずしも容易ではない そこで 観測データを有効に活用するにあたっては データが正常に取れている期間とデータの異常が見られる期間を分離することが望ましい また 概ね正常に観測されている期間であっても パルス状に異常値が認められる場合もある 観測に異常が見られる期間のデータであっても 部分的に正常に観測されているデータの値を類推することが可能なデータは参考値として使用してもよい 19

20