北海道における女性農業者の現状 平成 25 年度農業 農村における女性の社会参画実態調査結果から 道では 農村における女性の地位や社会参画の状況を把握するため 平成 25 年度に一般社団法人北海道総合研究調査会に委託し 実態調査を実施した 調査の概要 1 全道調査調査対象 : 全道の女性農業者 (1000 件 ( 回収率 61.5%)) 調査内容 : 経営上の役割 労働条件 家事分担 社会参画の問題点等調査時期 : 平成 25 年 8 月調査方法 :JA 女性部員へ調査票を配布し 返信用封筒により回収 2 重点地区調査全道調査を補完するため 経営形態の異なる 4 地域で農業者等に面接調査を実施 注 : 道では 平成 15 年及び 19 年に同様の調査項目で調査を実施しており 参考として比較した 調査結果の総括 女性農業者の労働負担は増加する傾向にある 女性農業者の農業経営への参画は進んでおらず 参画する意欲は低下している 女性農業者の労働条件の取り決めは不十分である 地域の政策 方針決定の場への女性の参画は進んでおらず 夫や家族の協力が求められている 地域の運営への女性の意見反映は進展していない 1 女性農業者の労働状況 (1) 農作業時間 ( 農繁期 ) 農繁期の農作業時間については 女性農業者は9 時間以上が66.3% うち11 時間以上が 34. 6% また 配偶者は 9 時間以上が 76.3% うち 11 時間以上が54.0% となっている 19 年の調査結果と比べ 女性農業者の農作業時間が増加傾向にある また 配偶者は を除いた比率では 11 時間の割合が 19 年度調査とほぼ同程度であり 上限に近い労働時間であることが伺われる 近年 経営規模が拡大するなかで 主に機械作業を担当する男性は機械の高性能化等により作業面積を増やし 一方 女性農業者は主に機械作業以外を担当しており その作業負担が増加していると捉えられる 5.0% 22.6% 31.7% 34.6% 6.0% 7.5% 22.3% 36.9% 29.6% 3.7% 4.0% 19.9% 37.0% 36.0% 3.1% ~5h 6~8h 9~10h 11h~ 1.1% 22.3% 54.0% 17.6% 5.0% 5.3% 22.2% 59.3% 6.2% 7.0% 1.9% 5.3% 22.5% 65.1% ~5h 6~8h 9~10h 11h~ 5.2% 図 1 農繁期の農作業時間 ( 上 : 女性農業者下 : その配偶者 ) 1
(2) 家事作業時間 ( 農繁期 ) 農繁期の家事作業時間は 3~5 時間が 48.9% で 前回に比べ 長時間化する傾向となっている 一方 配偶者は 依然として 0 時間が 62.8% と最も多く その比率は増加傾向にあり 農作業時間が上限に近い中で 家事に携わる時間を取ることが難しくなっていると考えられる 0.7% 31.9% 48.9% 5.9% 0.3% 12.4% 1.0% 43.9% 42.4% 7.2% 4.8% 1.1% 0.7% 4.1% 50.5% 38.3% 5.9% 0.1% 0h 1~2h 3~5h 6~10h 11h~ 45.0% 45.9% 62.8% 15.2% 14.8% 11.2% 0.4% 0.2% 0.6% 0.7% 0.1% 1.3% 38.6% 38.4% 24.7% 0.0% 0h 1~2h 3~5h 6~10h 11h~ 図 2 農繁期の家事作業時間 ( 上 : 女性農業者下 : その配偶者 ) (3) 日常の時間配分農繁期は 農作業と家事の時間を合計すると 女性の労働時間は一日の 45% を超えており 多忙な状況にある 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 6.2% 本人 / 農繁期 35.5% 11.2% 7.4% 22.4% 12.3% (N=531) 8.1% 5.0% 本人 / 農閑期 13.4% 14.3% 6.8% 15.7% 24.8% 16.8% (N=467) 0.8% 6.5% 配偶者 / 農繁期 (N=449) 配偶者 / 農閑期 (N=389) 18.1% 41.6% 1.5% 6.4% 9.2% 4.8% 18.1% 9.1% 25.9% 23.0% 20.8% 14.2% 農作業家事家族のために使っている時間地域活動自分のために使っている時間睡眠時間その他 合計時間が 24 時間 となった回答者のみを抽出した後 項目ごとの時間数の平均を算出し 24 時間中の割合を計算した そのため 項目ごとに N 数は異なる その他回答 ( 一例 ) 本人 / 農繁期本人 / 農閑期配偶者 / 農繁期配偶者 / 農閑期 食事 買い物 休憩 ペットの世話 花壇 家庭菜園食事 パート アルバイト 買い物 休憩 ペットの世話食事 休憩 デスクワーク食事 パート アルバイト 休憩 除雪 デスクワーク 図 3 日常の時間配分 2
2 女性農業者の農業経営への参画状況 営農計画策定への関わり等 女性の農業経営への関与は依然として低調であり いずれの項目とも主体的に意見を述べる者の割合は低下している 15.3% 50.1% 25.4% 9.3% 営農計画 17.4% 49.7% 23.1% 9.8% 21.4% 53.3% 16.5% 8.8% 9.4% 53.7% 26.5% 10.4% 新規投資 17.9% 49.5% 23.9% 8.7% 18.2% 55.6% 15.3% 10.9% 8.9% 39.2% 38.2% 13.7% 資金借入 13.9% 36.6% 30.0% 19.5% 15.8% 41.7% 24.0% 18.2% 24.6% 56.3% 10.2% 8.9% 農作業の役割分担 32.1% 49.8% 9.5% 8.6% 39.3% 46.4% 6.9% 7.4% 主体的に意見を述べる相談時だけ意見を述べる参画していない 図 4 経営方針への参画状況 また 農業経営への参画について積極的な回答を選択する割合は 前回調査より大幅に減少している その他農作業は行わず 3.1% 経理等の事務作業に関わりたい 0.7% 農業が忙しい時だけ手伝いたい 5.5% 15.9% 経営者として農業経営全体に取り組みたい 4.6% 共同経営者として農業経営全体に参画したい 18.0% 共同経営者として特定部門の経営に取り組みたい 4.2% 指示された農作業に従事するだけにしたい 13.6% 7.4% 経営者として農業経営全体に取り組みたい 7.6% 共同経営者として農業経営全体に参画したい 27.0% 14.3% 指示された農作業に従事するだけにしたい 33.7% 経営方針決定は夫あるいは親等が主に行うが 自分の意見も反映したい 35.4% 経営方針決定は夫あるいは親等が主に行うが 自分の意見も反映したい 25 年度調査 19 年度調査 図 5 農業経営への参画意向 共同経営者として 9.0% 特定部門の経営に取り組みたい 3
3 女性農業者の労働条件の整備 (1) 家族経営協定の締結 家族経営協定を締結している とした回答者は 21.1% と前回よりも増えているが このうち 協定に沿った農業経営がなされている との回答は 63.8% となっていることから 取り決めのもとに労働しているのは全体の 13.5% 程度となっている 21.1% 67.5% 11.4% 20.8% 16.8% 76.8% 6.4% 18.5% 75.3% 締結している締結していない 7.6% なされていない 15.4% 63.8% なされている 図 6 家族経営協定の締結状況 図 7 協定に沿った経営ができているか (2) 休日の採り方休日を 決めている と回答したのは 5.9% 決めていない が 91.1% となっている 休日を決めている人の割合は減少傾向にある 5.9% 91.1% 3.1% 10.1% 86.3% 3.6% 9.6% 88.1% 2.3% 決めている決めていない 図 8 休日の設定 (3) 労働報酬 労働報酬を受け取っている と回答した割合は 76.9% で 前回までの調査と比較すると 労働報酬を受け取っている割合は増加傾向にある しかし 現地の面接調査では 受け取っているが 家計費となっている との指摘も聞かれている 76.9% 19.7% 3.4% 71.1% 25.1% 3.9% 64.5% 32.4% 3.1% 受け取っている受け取っていない 図 9 労働報酬の受取状況 4
4 地域活動への参画状況 農協女性部等役員以外に地域での役職 役割を引き受けている割合は低い状況にある その理由としては 責任に対する不安や時間 経済的制約と回答している者が多い [ 参考 ] [ 参考 ] 役職 役割名平成 19 年度調査平成 15 年度調査 件数 割合 件数 割合 件数 割合 指導農業士 8 1.4% 17 3.1% 13 1.9% 農業士 2 0.3% 9 1.6% - - 農協理事 6 1.0% 4 0.7% 0 0.0% 市 町議 1 0.2% 2 0.4% 4 0.6% 農業委員 8 1.4% 17 3.1% 15 2.2% 農協女性部 562 96.6% 493 90.3% 604 88.8% 等役員その他回答 ( 一例 ) PTA 役員 254 43.6% - - - - 教育委員 町内会役員 87 14.9% - - - - 民生委員 生産組織等役員 - - 23 4.2% 27 4.0% 少年団委員 その他 66 11.3% 182 33.3% 231 34.0% フレッシュミズ 全体 582 546 680 ( 若妻会 ) 役員 平成 19 年 15 年の値は平成 19 年度調査報告書を参考に作成 表 1 持っている ( または持ったことがある ) 役職 役割 女性は選ばれない 0.0% 時間的あるいは経済的な余裕がない 責任ある役職を果たす自信がない 45.8% 50.0% その他 12.5% 図 10 役職 役割を持ったことがない理由 ( 複数回答 ) 女性が地域で活動する上で必要なこととしては 夫や家族の協力 と回答した人が 92.4% と ほとんどの女性農業者が 夫や家族の協力 が必要と感じている 夫や家族の協力 家事 育児等は女性の仕事という固定的役割分担意識の打破雇用 ヘルパー等の農作業労働力の確保保育 介護等の外部サービスの利用女性の意見を踏まえた地域農業の運営 34.8% 27.8% 20.3% 24.1% 92.4% 家族経営協定の締結 5.7% 女性の事情を配慮した労務管理 29.1% その他 上記に該当なし ( 完全 ) 2.8% 3.3% 図 11 女性が地域で活動する上で必要なこと ( 複数回答 ) 5
5 地域における女性の意見反映 地域の行事や共同作業などの運営おいて女性の意見が 聞き入れられている と回答した人が 57.7% となっているが 10 年前と比べて 傾向は変化しておらず 女性の意見反映は進んでいない 57.7% 30.2% 12.0% 59.8% 32.8% 7.4% 60.4% 31.8% 7.8% 聞き入れられている聞き入れられていない図 12 地域への女性の意見反映 集落の主要な役員は男性 と回答した人が89.6% で最も高く これまでの調査結果と同様の結果となっている 89.6% 2.8% 7.6% 96.7% 2.0% 1.4% 4.5% 95.5% はいいいえ 図 13 集落の主要な役員は男性である 6 ワーク ライフ バランス 農業 地域活動 家事 育児 介護等にバランス良く携われていると回答した人は 50.2% と過半を占めており 女性の農村生活全体への満足度は低くない 11.4% バランスよく携われていない 38.4% バランスよく携われている 50.2% 図 14 農業 地域活動 家事等のバランス 6