Microsoft PowerPoint - H23内分泌総論final、講義スライド

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Ⅰ. ヒトの遺伝情報に関する次の記述を読み, ~ に答えなさい 個体の形成や生命活動を営むのに必要な ( a ) は, 真核生物の細胞では主に核 の中で染色体を形成している 通常, ₁ 個の体細胞には同じ大きさと形の染色体が 一対ずつあり, この対になっている染色体を ( b ) といい, 片方の染

平成14年度研究報告

スライド 1

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

生理学 1章 生理学の基礎 1-1. 細胞の主要な構成成分はどれか 1 タンパク質 2 ビタミン 3 無機塩類 4 ATP 第5回 按マ指 (1279) 1-2. 細胞膜の構成成分はどれか 1 無機りん酸 2 リボ核酸 3 りん脂質 4 乳酸 第6回 鍼灸 (1734) E L 1-3. 細胞膜につ

核内受容体遺伝子の分子生物学

( 図 ) IP3 と IRBIT( アービット ) が IP3 受容体に競合して結合する様子

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

解剖・栄養生理学

グルコースは膵 β 細胞内に糖輸送担体を介して取り込まれて代謝され A T P が産生される その結果 A T P 感受性 K チャンネルの閉鎖 細胞膜の脱分極 電位依存性 Caチャンネルの開口 細胞内 Ca 2+ 濃度の上昇が起こり インスリンが分泌される これをインスリン分泌の惹起経路と呼ぶ イ

, 2008 * Measurements of Sleep-Related Hormones * 1. * 1 2.

生物時計の安定性の秘密を解明

第6回 糖新生とグリコーゲン分解

スライド 1

2. 看護に必要な栄養と代謝について説明できる 栄養素としての糖質 脂質 蛋白質 核酸 ビタミンなどの性質と役割 およびこれらの栄養素に関連する生命活動について具体例を挙げて説明できる 生体内では常に物質が交代していることを説明できる 代謝とは エネルギーを生み出し 生体成分を作り出す反応であること

生物学に関する実験例 - 生化学 / 医療に関する実験例 ラジオアッセイ法によるホルモン測定 [ 目的 ] 本実習では, 放射免疫測定 (Radioimmunoassay,RIA) 法による血中インスリンとイムノラジオメトリックアッセイ ( 免疫放射定測定 Immunoradiometric ass

報道発表資料 2006 年 8 月 7 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人大阪大学 栄養素 亜鉛 は免疫のシグナル - 免疫系の活性化に細胞内亜鉛濃度が関与 - ポイント 亜鉛が免疫応答を制御 亜鉛がシグナル伝達分子として作用する 免疫の新領域を開拓独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事

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生物 第39講~第47講 テキスト

問 21 細胞膜について正しい記述はどれか 問 31 発汗について誤っている記述はどれか A 糖脂質分 が規則正しく配列している A 体温の上昇を防ぐ B イオンに対して選択的な透過性をもつ B 汗腺には交感神経が分布する C タンパク質分 の 重層膜からなる C 温熱性発汗には 脳 質が関与する

第6回 糖新生とグリコーゲン分解

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脂質異常症を診断できる 高尿酸血症を診断できる C. 症状 病態の経験 1. 頻度の高い症状 a 全身倦怠感 b 体重減少 体重増加 c 尿量異常 2. 緊急を要する病態 a 低血糖 b 糖尿性ケトアシドーシス 高浸透圧高血糖症候群 c 甲状腺クリーゼ d 副腎クリーゼ 副腎不全 e 粘液水腫性昏睡

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

抑制することが知られている 今回はヒト子宮内膜におけるコレステロール硫酸のプロテ アーゼ活性に対する効果を検討することとした コレステロール硫酸の着床期特異的な発現の機序を解明するために 合成酵素であるコ レステロール硫酸基転移酵素 (SULT2B1b) に着目した ヒト子宮内膜は排卵後 脱落膜 化


前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

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糖鎖の新しい機能を発見:補体系をコントロールして健康な脳神経を維持する

細胞骨格を形成するタンパク質

ドリル No.6 Class No. Name 6.1 タンパク質と核酸を構成するおもな元素について述べ, 比較しなさい 6.2 糖質と脂質を構成するおもな元素について, 比較しなさい 6.3 リン (P) の生体内での役割について述べなさい 6.4 生物には, 表 1 に記した微量元素の他に, ど

検査項目情報 トータルHCG-β ( インタクトHCG+ フリー HCG-βサブユニット ) ( 緊急検査室 ) chorionic gonadotropin 連絡先 : 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLAC10)

60 秒でわかるプレスリリース 2008 年 10 月 22 日 独立行政法人理化学研究所 脳内のグリア細胞が分泌する S100B タンパク質が神経活動を調節 - グリア細胞からニューロンへの分泌タンパク質を介したシグナル経路が活躍 - 記憶や学習などわたしたち高等生物に必要不可欠な高次機能は脳によ

負荷試験 検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 検体ラベル ( 単項目オーダー時 )

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( 続紙 1 ) 京都大学 博士 ( 薬学 ) 氏名 大西正俊 論文題目 出血性脳障害におけるミクログリアおよびMAPキナーゼ経路の役割に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 脳内出血は 高血圧などの原因により脳血管が破綻し 脳実質へ出血した病態をいう 漏出する血液中の種々の因子の中でも 血液凝固に関

報道発表資料 2006 年 6 月 5 日 独立行政法人理化学研究所 独立行政法人科学技術振興機構 カルシウム振動が生み出されるメカニズムを説明する新たな知見 - 細胞内の IP3 の緩やかな蓄積がカルシウム振動に大きく関与 - ポイント 細胞内のイノシトール三リン酸(IP3) を高効率で可視化可能

るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導

学位論文の要約

の活性化が背景となるヒト悪性腫瘍の治療薬開発につながる 図4 研究である 研究内容 私たちは図3に示すようなyeast two hybrid 法を用いて AKT分子に結合する細胞内分子のスクリーニングを行った この結果 これまで機能の分からなかったプロトオンコジン TCL1がAKTと結合し多量体を形

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のと期待されます 本研究成果は 2011 年 4 月 5 日 ( 英国時間 ) に英国オンライン科学雑誌 Nature Communications で公開されます また 本研究成果は JST 戦略的創造研究推進事業チーム型研究 (CREST) の研究領域 アレルギー疾患 自己免疫疾患などの発症機構

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新規遺伝子ARIAによる血管新生調節機構の解明

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報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

報道発表資料 2006 年 6 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 アレルギー反応を制御する新たなメカニズムを発見 - 謎の免疫細胞 記憶型 T 細胞 がアレルギー反応に必須 - ポイント アレルギー発症の細胞を可視化する緑色蛍光マウスの開発により解明 分化 発生等で重要なノッチ分子への情報伝達

脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

共同研究チーム 個人情報につき 削除しております 1

研究背景 糖尿病は 現在世界で4 億 2 千万人以上にものぼる患者がいますが その約 90% は 代表的な生活習慣病のひとつでもある 2 型糖尿病です 2 型糖尿病の治療薬の中でも 世界で最もよく処方されている経口投与薬メトホルミン ( 図 1) は 筋肉や脂肪組織への糖 ( グルコース ) の取り

細胞の構造

各論(3)視床下部-下垂体副腎総論、副腎糖質ステロイド

8 内分泌系のしくみと働き

P002~013 第1部第1章.indd

4) ホルモンの化学構造からみた種類にはホルモンの種類分泌器官とホルモン名視床下部放出ホルモン 下垂体前葉ホルモン 1 ペプチドホルモン上皮小体ホルモン インスリン グルカゴンなど卵巣ホルモン 精巣ホルモン 副腎皮質コルチコイド 2 ステロイドホルモン活性型ビタミン D 1) カテコ ルアミン 3

News Release 報道関係各位 2015 年 6 月 22 日 アストラゼネカ株式会社 40 代 ~70 代の経口薬のみで治療中の 2 型糖尿病患者さんと 2 型糖尿病治療に従事する医師の意識調査結果 経口薬のみで治療中の 2 型糖尿病患者さんは目標血糖値が達成できていなくても 6 割が治療

日本標準商品分類番号 カリジノゲナーゼの血管新生抑制作用 カリジノゲナーゼは強力な血管拡張物質であるキニンを遊離することにより 高血圧や末梢循環障害の治療に広く用いられてきた 最近では 糖尿病モデルラットにおいて増加する眼内液中 VEGF 濃度を低下させることにより 血管透過性を抑制す

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 花房俊昭 宮村昌利 副査副査 教授教授 朝 日 通 雄 勝 間 田 敬 弘 副査 教授 森田大 主論文題名 Effects of Acarbose on the Acceleration of Postprandial

漢方薬

論文題目  腸管分化に関わるmiRNAの探索とその発現制御解析

報道発表資料 2001 年 12 月 29 日 独立行政法人理化学研究所 生きた細胞を詳細に観察できる新しい蛍光タンパク質を開発 - とらえられなかった細胞内現象を可視化 - 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は 生きた細胞内における現象を詳細に観察することができる新しい蛍光タンパク質の開発に成

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第6号-2/8)最前線(大矢)

相模女子大学 2016 年度 AO 入学試験 適性試験問題 栄養科学部 2015 年 8 月 29 日 ( 土 )10 時 00 分 ~10 時 50 分 注意事項 1. 監督の指示があるまで 問題冊子を開いてはいけません 2. これは 適性試験の問題冊子です 問題の本文は 1ページから 5 ページ

第11回 肝、筋、脳、脂肪組織での代謝の統合

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胞運命が背側に運命変換することを見いだしました ( 図 1-1) この成果は IP3-Ca 2+ シグナルが腹側のシグナルとして働くことを示すもので 研究チームの粂昭苑研究員によって米国の科学雑誌 サイエンス に発表されました (Kume et al., 1997) この結果によって 初期胚には背腹

本日の内容 HbA1c 測定方法別原理と特徴 HPLC 法 免疫法 酵素法 原理差による測定値の乖離要因

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第12回 代謝統合の破綻 (糖尿病と肥満)

05ホルモンと病気15

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2019 年 3 月 28 日放送 第 67 回日本アレルギー学会 6 シンポジウム 17-3 かゆみのメカニズムと最近のかゆみ研究の進歩 九州大学大学院皮膚科 診療講師中原真希子 はじめにかゆみは かきたいとの衝動を起こす不快な感覚と定義されます 皮膚疾患の多くはかゆみを伴い アトピー性皮膚炎にお

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インスリンが十分に働かない ってどういうこと 糖尿病になると インスリンが十分に働かなくなり 血糖をうまく細胞に取り込めなくなります それには 2つの仕組みがあります ( 図2 インスリンが十分に働かない ) ①インスリン分泌不足 ②インスリン抵抗性 インスリン 鍵 が不足していて 糖が細胞の イン

婦人科63巻6号/FUJ07‐01(報告)       M

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今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

Microsoft Word - HP用(クッシング症候群).doc

難病 です これまでの研究により この病気の原因には免疫を担当する細胞 腸内細菌などに加えて 腸上皮 が密接に関わり 腸上皮 が本来持つ機能や炎症への応答が大事な役割を担っていることが分かっています また 腸上皮 が適切な再生を全うすることが治療を行う上で極めて重要であることも分かっています しかし

く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM

ホルモンの合成と作用(1)

検査項目情報 1171 一次サンプル採取マニュアル 4. 内分泌学的検査 >> 4F. 性腺 胎盤ホルモンおよび結合蛋白 >> 4F090. トータル HCG-β ( インタクト HCG+ フリー HCG-β サブユニット ) トータル HCG-β ( インタクト HCG+ フリー HCG-β サブ

1. 背景血小板上の受容体 CLEC-2 と ある種のがん細胞の表面に発現するタンパク質 ポドプラニン やマムシ毒 ロドサイチン が結合すると 血小板が活性化され 血液が凝固します ( 図 1) ポドプラニンは O- 結合型糖鎖が結合した糖タンパク質であり CLEC-2 受容体との結合にはその糖鎖が

ヒト脂肪組織由来幹細胞における外因性脂肪酸結合タンパク (FABP)4 FABP 5 の影響 糖尿病 肥満の病態解明と脂肪幹細胞再生治療への可能性 ポイント 脂肪幹細胞の脂肪分化誘導に伴い FABP4( 脂肪細胞型 ) FABP5( 表皮型 ) が発現亢進し 分泌されることを確認しました トランスク

Microsoft Word - (最終版)170428松坂_脂肪酸バランス.docx

Microsoft PowerPoint - 2_(廣瀬宗孝).ppt

生物有機化学

児に対する母体の甲状腺機能低下症の影響を小さくするためにも 甲状腺機能低下症を甲状腺ホル モン薬の補充でしっかりとコントロールしておくのが無難と考えられます 3) 胎児 新生児の甲状腺機能低下症 胎児の甲状腺が生まれながらに ( 先天的に ) 欠損してしまう病気があります 通常 妊娠 8-10 週頃

< 研究の背景 > 運動に疲労はつきもので その原因や予防策は多くの研究者や競技者 そしてスポーツ愛好者の興味を引く古くて新しいテーマです 運動時の疲労は 必要な力を発揮できなくなった状態 と定義され 疲労の原因が起こる身体部位によって末梢性疲労と中枢性疲労に分けることができます 末梢性疲労の原因の

各論 心血管内分泌

検査項目情報 1174 一次サンプル採取マニュアル 4. 内分泌学的検査 >> 4F. 性腺 胎盤ホルモンおよび結合蛋白 >> 4F090.HCGβ サブユニット (β-hcg) ( 遊離 ) HCGβ サブユニット (β-hcg) ( 遊離 ) Department of Clinical Lab

講座授業事例集

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Transcription:

Ⅰ 内分泌総論 A. 内分泌系の機能 ( 中尾 ) B. ホルモンの定義と分類 ( 中尾 ) C. ホルモンの合成 ( 橋本 ) D. ホルモンの分泌 ( 橋本 ) E. ホルモンの生物効果 ( 福田 ) F. 内分泌系の調節機構 ( 福田 ) 20110112 中尾匠 20110120 橋本祐一郎 20110131 福田龍一

その前にちょっと復習 外分泌 内分泌

ホルモンの種類

A. 内分泌系の機能 1 内部環境の恒常性維持 2 エネルギー代謝 3 発育と成長

A 1 内部環境の恒常性維持 細胞が正常に機能を営むためには細胞外液の諸条件 ( 体液量 浸透圧 各種イオン濃度 ) が一定に保たれていなければならない 例えば 体液量の調節 = 血圧調節 主役は ( レニン アンギオテンシン アルドステロン系 ) 体液浸透圧 抗利尿ホルモンの ( バゾプレッシン ) が関与 血漿カルシウムイオン濃度 ( 副甲状腺ホルモン ) ビタミン D や ( カルシトニン ) が関与

A 2 エネルギー代謝 中枢神経にとってグルコースはとても大切なエネルギー基質である 血中グルコース濃度が ( 40 mg/dl ) を下回ると重篤な低血糖症を引き起こす 血糖値を上げるホルモンがグルカゴン コルチゾール 成長ホルモン アドレナリン ノルアドレナリン とある中で 血糖値を下げるホルモンは ( インスリン ) だけである 正常範囲 死 60 90 血糖 (mg/dl)

A 3 発育と成長 個体の発育と成長には 発達段階に応じた成長ホルモン 発達段階に応じた成長ホルモン甲状腺ホルモン コルチゾル 性ホルモンの分泌が必要 小児期にコルチゾールが過剰分泌されたり 甲状腺ホルモンや成長ホルモンが欠乏すると成長が抑制される 骨端線閉鎖前の成長ホルモンの過剰分泌は ( 招く 巨人症 ) を 骨端線閉鎖後の成長ホルモンの過剰分泌は ( 先端巨大症 ) を招く

( 小人症 ) と ( 巨人症 ) 発育と成長の異常

B. ホルモンの定義と分類 1. ホルモンの定義 2. ホルモンの種類 3. ホルモンの測定

B 1 ホルモンの定義 ホルモンは 特定の臓器で作られ 血行によって遠くに運ばれて特定の標的器官に作用し 少量で特異的効果を現す物質 である 何故特定の臓器にのみ作用するのか?

しかし ホルモンが次々と発見されるに従って 必ずしもこの定義に合わないものが出てきた 特異的な分泌構造を持つ組織で作られるホルモン (ex 視床下部ホルモン 神経内分泌 ) 隣接した細胞や分泌細胞自体に組織間隙液を介して作用するホルモン 後者のようなホルモンを一括して局所ホルモンという 局所ホルモン 用隣接細胞に作用すること作法分泌細胞自体に作用すること方パラクライン オートクリン 分泌細胞自体に作用すること 神経伝達物質やサイトカインとホルモンの境界は必ずしも明確ではない ex( ノルアドレナリン ) は副腎髄質からホルモンとして血中に分泌されるが 一方で神経伝達物質としてシナプス間隙に放出され 神経細胞間の信号伝達を担う ex 免疫担当細胞からは ( サイトカインフィン ( 痛覚抑制に関与 ) が含まれる ) が分泌されるが この中には ACTH や β エンドル

ここ!!! 神経内分泌

B 2 ホルモンの種類 アミノ酸誘導体ホルモン 甲状腺ホルモン ドーパミンアドレナリン セロトニンメラトニン ホルモン ステロイドホルモン 副腎皮質ホルモン性ホルモン ペプチドホルモン ACTH 成長ホルモン性腺刺激ホルモン TSH ( 糖鎖が付いている ) ホルモン分泌や作用様式の違いはホルモンが脂溶性であるか否か つまり ( 細胞膜を自由に通過できるか否かに依存している )

B 3 ホルモンの測定 体液中のホルモン濃度は極めて低い ペプチドホルモンの血漿濃度 10 ¹⁰~10 ¹²mol/L ステロイドホルモンの濃度 10 ⁶~10 ⁹mol/L そこで 競合法を用いる

競合法とは 1. 使用するのは (a) 標識した一定量のホルモン (b) 標識していない適当量のホルモン () (c) ホルモンに対する結合蛋白である 2.(a) と (b) を混ぜ合わせ 結合蛋白に結合している (a) の割合を測定する その割合は添加する (b) の量で変わる 2の試行を繰り返し結果を 横軸に添加した (b) の量 縦軸に結合蛋白に結合している (a) の割合 に設定してプロットすると曲線が得られる こうして得られた曲線をもとにしてサンプルのホルモン濃度が測定できる

Radio-Immuno-Assay (RIA) ( 固相法を例に ) 125 I I-T4 T T 4 サンプル? スタンダード YY YY YY YY YY YY YY YY YY YY YY YY 抗 T 4 抗体固相チューブ? YYY YY YYY YY YYY YY YYY YY YYY YY YYY YYY

洗浄? Y Y Y Y YY YY YY Y Y YY YY YY YY YY YY 放射線測定 5 4 3 2 1 4 検量腺を描いて サンプル濃度決定 5 4 3 2 10 0 3 5 10 15 (T4)

C. ホルモンの合成 1. アミノ酸誘導体ホルモン 2. ペプチドホルモン 3. ステロイドホルモン

C 1 アミノ酸誘導体ホルモン 能動的に細胞内に取り込まれた前駆体アミノ酸が一連の酵素反応を経て ホルモンとなる ホルモンは一度細胞内にある小胞に蓄積された後 開口分泌で放出される ただし アミノ酸誘導体ホルモンすべてが同じように合成されるわけでなく 例えば松果体メラトニンのように細胞内に蓄積されることなく 分泌されるものもある

C 2 ペプチドホルモン ペプチドホルモンの合成はタンパク質の合成と同じである ホルモン遺伝子が転写 修飾 翻訳を受けることで プレプロホルモンを合成する プレプロホルモンが翻訳後修飾を受けることで ペプチド鎖の特定結合が切れたり 糖鎖が付いたりして 活性をもつホルモンが作られる

プロホルモンの加工 プレプロホルモンの N 末端にあるシグナルペプチドが外れてプレホルモンとなる 切断 ( 翻訳後修飾 ) される部位によって合成されるホルモンは異なり それは翻訳後修飾が組織によって異なるからである

C 3 ステロイドホルモン ステロイドホルモンはコレステロールから合成される ルから合成される コレステロールは分泌細胞内で酢酸から合成されるか 血中の低密度リポタンパクから供給され それが酸化反応 水酸化反応を経て ステロイドに変換される 一部の性ホルモンは副腎や性腺で合成され 血中に放出されたホルモンが標的組織でさらに変化を受けることがある 例 : テストステロンは ( 前立腺 ) で ( デヒドロテストステロン ) に ( 中枢神経細胞 ) では ( エストラジオール ) に変換される

D. ホルモンの分泌 1. ホルモンの開口分泌 2. 血中半減期 3. 内分泌系と血液

D 1 ホルモンの開口分泌 開口分泌は 細胞内情報伝達系や細胞膜の脱分極を介して Ca イオンの細胞質内濃度が上昇することにより誘導される Caイオンがカルモジュリンなどのタンパクキナーゼを活性化し 分泌顆粒を細胞表面に移動させ 小胞膜と細胞膜を融合させることで 小胞内のホルモンを組織間隙液に放出させる ステロイドホルモンは細胞膜を自由に通過できるので 合成されるとただちに細胞外に漏出し 血中に入る

D 2 血中半減期 ステロイドホルモンや一部のアミノ酸誘導体ホルモンは脂溶性で ンは脂溶性で 血中で親和性の高い特異結合タンパク質やアルブミンと結合して 可溶性になる 血中でタンパク分子と結合しているホルモンを( 結合型ホルモン) していないものを ( 遊離型ホルモン ) という 標的細胞に作用するのは ( 遊離型ホルモン) であり また肝細胞に取り込まれて代謝不活性化されるのも ( 遊離型ホルモン ) である 結合型ホルモンと遊離型ホルモンの割合は結合タンパク質の親和性に依存しており この親和性はホルモンの血中半減期を左右する 親和性の高いホルモンは血中半減期が ( 長く) なる 親和性の低いホルモンは血中半減期が ( ) なる 短く

D 3 内分泌系と血流 内分泌系機能と血管系の解剖学的構築には深い関係がある いくつかの系では ホルモンの標的器官が内分泌器官の下流に位置し ホルモンが体循環で希釈される前に高濃度のホルモンにさらされる また 内分泌系の多くは門脈系を形成している 門脈系とは血中濃度を低下させることなく ホルモンを標的器官に運ぶ装置である ( 例 ) 視床下部ホルモンは ( 下垂体門脈系 ) の一次毛細血管叢に分泌され ( 下垂体門脈 ) を下行し 二次毛細血管叢から ( 下垂体前葉細胞 ) に達する

E. ホルモンの生物効果 1 受容体との結合 2 ホルモン受容体の種類 3 生物効果 4 許容作用

1. 受容体との結合 血中に存在している遊離型ホルモンは 対象となる細胞に作用する この細胞を標的細胞と言い その細胞膜上 あるいは細胞内に存在する特異受容体と結合することで効果を発揮する 標的細胞の感受性は受容体の ( 数 ) と ( ホルモンに対する親和性 ) に依存している 基本的にホルモンの総受容体数に対し ホルモン効果を最大に発揮するのに必要なホルモン物質と受容体数は非常に少量である

スキャッチャード プロット 受容体の親和性を Kd( 平衡解離定数 ) 総受容体数を Rt と置き 結合実験によってそれらの値を推定する方法

2 ホルモン受容体の種類 2 ホルモン受容体の種類 ( 細胞膜受容体 ) と ( Human Biology P331から引用 細胞内受容体 )がある がある

3. 生物効果 同じホルモンでも標的細胞によってその効果は ( 異なる ) 例 ) テストステロンの場合胎生期 : 性の分化出産後 : 外生殖器発達 精子形成 筋発達 etc 同じ生体内 同じホルモンでも細胞の役割 形態の多様性からその効果は種々の細胞によって異なり これがホルモンを液性情報伝達物質たらしめる特徴であるといえる

3 1. 1 蛋白質の活性化 ACTH やNA は ( G 蛋白共役型受容体 ) と結合し 細胞内 camp 濃度を上昇させる campは ( Aキナーゼ ) を活性化し 活性化された ( Aキナーゼ ) がセリンやスレオニンの残基をリン酸化することでタンパク質を活性化させる 同じホルモンであっても対象とタンパク質によって生物効果が異なる

3 2. 2 タンパク質合成の促進 抑制 ステロイドホルモンは他の遺伝子の転写因子と結合することとでその転写因子を促進 抑制することで蛋白質の合成を調節する ACTHやNAがG 蛋白共役型受容体と結合し 細胞内 camp 濃度が上昇する ( 蛋白質の活性化 ) camp は Aキナーゼを介し転写因子の CRBG を活性化するので 遺伝子の転写が促進され タンパク質合成の促進が見られる

3 3. 3 細胞膜電位の変化 神経伝達等に関わるホルモンは受容体と結合することで細胞膜電位を変える 例 ) アセチルコリンのニコチン受容体

4. 許容作用 許容作用とは 他のホルモンの生物効果の発揮に必要ではあるが その物質自体には生物効果が無い物質のこと ( 例 ) 甲状腺ホルモン ( 成長ホルモン ) 糖質コルチコイド( グルカゴン アドレナリン 成長ホルモン ) 許容作用の仕組み 対象となるホルモンの標的細胞の受容体の合成促進 etc

F. 内分泌系の調節機構 内分泌系の調節の役割 1. 血中濃度の調節血中ホルモン濃度を決める因子は分泌速度と消退速度 ホルモン調節の場合 調節されるのは調節される ( 分泌 ) 速度 2. ホルモン感受性の調節 受容体 ( 数 ) ( 受容体の感受性 ) 細胞内情報伝達系クロス トーク 主にこの 2 つによって内分泌のバランスは調節されている

1. ホルモン血中濃度の調節 1 1. 1 生体リズム 多くのホルモンの基礎分泌は突発性のものであり 分泌周分泌周期は特に決まっていない しかし 下垂体ホルモンであるLH 成長ホルモン等など1 3 時間周期で規則的に分泌されている このような分泌方法を ( 拍動性分泌 ) という

拍動性分泌の種類 24h リズム分泌 要因 : 生物時計 睡眠 etc 生物時計に影響されるもの ACTH 基本朝メラトニン夜間 睡眠に強く影響されるもの成長ホルモン睡眠時 2 3h 周期 TSH 睡眠中プロラクチン日中

2 2. 2 フィードバック制御 視床下部 下垂体 末端内分泌器官 ( 上位 ) ( 下位 ) 正のフィードバックホルモン分泌 生理作用におけるアクセル キーワード排卵性 LH( 代表的なホルモン ) 負のフィードバック内分泌によく見られる制御機序 キーワード長環フィードバック 短環フィードバック 長短環フィードバック

環フィードバック

2. ホルモン感受性の制御 1. 受容体 ダウンレギュレーション アップレギュレーション 2. 細胞内情報伝達 クロストークク

2 1. 1 受容体 ダウンレギュレーションレ持続的なホルモンの作用が受容体数を減少させ 感受性が低下する ( 例 ) プロラクチンはLHの受容体数を減少させる受容体活性も減少させる ( 拍動性分泌 ) はダウンレギュレーションを防ぐために存在する仕組みである アップレギュレーションダウンレギュレーションの逆レンの逆

2 2. 2 細胞内情報伝達系 ホルモンが受容体に結合する量は極めて少量 ではそんなに少ない量で生物作用が引き起こせるのか? 1 分子のホルモンが 数分子の受容体を活性化し それぞれが多くの ( セカンドメッセンジャー ) を合成 1 分子のセカンドメッセンジャーが多数の酵素を活性化 情報がスゴイ数に増幅される

ホルモンの受容体は一細胞に一種類ではない 細胞内には複数の異なる種の受容体が存在する つまり 目的と違う部位の受容体を刺激してしまう事があるう事!

なぜ内分泌 代謝を学ぶのか? 人間の基本となる生理機能複雑ネットワークシステムの理解 生体内の 3つの情報伝達系 1. 内分泌 2. 神経 3. 免疫 生物は 常に厳しい外界 ( 環境 ) にさらされている 生命を維持するために外界から身を守るために適切な情報を細胞レベルで受け取り生体が反応する必要がある 外部環境に対して内部環境を維持する ( ホメオスターシス Homeostasis) 構造と機能の理解無くして病気を診れず

内分泌 代謝疾患とは? 甲状腺疾患 ; 1,000 万 ~2,000 万人の患者高血圧 ;30 歳以上の 20% そのうち 2 次性 ( 内分泌性 ) 高血圧は~15%? 糖尿病 ; 数百万人 ( そのうち約 5% が膵以外が原因の内分泌性 ) 肥満とメタボは30% 下垂体疾患 ; 腫瘍は MRI 検査で 10%? 副腎疾患 ; 5000 人に1 人の割合で腫瘍骨 カルシウム疾患 ; 尿路結石の2-3% に副甲状腺機能亢進症 閉経後の骨粗鬆症

本日の講義の到達目標 内分泌とは? ホルモンとは? 内分泌 vs. 外分 パラクライン オートクライン 内分泌臓器 ホルモン名を覚えること ( 英語名も ) ホルモンの種類 測定方法 合成 分泌の理解 ホルモンの作用機序と受容体シグナル伝達を理解すること フィードバック機構について理解すること 代謝については生化学反応を理解すること

歴史 1891 年 George Murray 甲状腺機能低下症の患者に甲状腺粉末を投与 1901 年 高峰譲吉がアドレナリンを発見 1902 年 ベイリスとスターリングのセクレチン発見リングのセクレチン発見 ( ホルモンの概念成立 ) 1921 年トロント大学生理学教室 ( マクラウド教授 ) にて バンティング ( 外科医 ) とベスト ( 医学部学生 ) インスリンを発見 1922 年糖尿病の患者へのインスリンの治療投与開始 その結果をバンティング発表 1923 年ノベル医学賞がバンティングとマクラウドに贈ら 1923 年ノーベル医学賞が バンティングとマクラウドに贈られる