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子として同定され 前立腺癌をはじめとした癌細胞や不死化細胞で著しい発現低下が認められ 癌抑制遺伝子として発見された Dkk-3 は前立腺癌以外にも膵臓癌 乳癌 子宮内膜癌 大腸癌 脳腫瘍 子宮頸癌など様々な癌で発現が低下し 癌抑制遺伝子としてアポトーシス促進的に働くと考えられている 先行研究では ヒ

能性を示した < 方法 > M-CSF RANKL VEGF-C Ds-Red それぞれの全長 cdnaを レトロウイルスを用いてHeLa 細胞に遺伝子導入した これによりM-CSFとDs-Redを発現するHeLa 細胞 (HeLa-M) RANKLと Ds-Redを発現するHeLa 細胞 (HeL

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1. はじめに ステージティーエスワンこの文書は Stage Ⅲ 治癒切除胃癌症例における TS-1 術後補助化学療法の予後 予測因子および副作用発現の危険因子についての探索的研究 (JACCRO GC-07AR) という臨床研究について説明したものです この文書と私の説明のな かで わかりにくいと

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切除不能進行・再発胃癌における血清HER2タンパクと組織HER2発現の一致率に関する検討 [全文の要約]

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骨形成における LIPUS と HSP の関係性が明らかとなった さらに BMP シグナリングが阻害されたような症例にも効果的な LIPUS を用いた骨治癒法の提案に繋がる可能性が示唆された < 方法 > 10%FBS と 抗生剤を添加した α-mem 培地を作製し 新生児マウス頭蓋骨採取骨芽細胞を

83.8 歳 (73 91 歳 ) であった 解剖体において 内果の再突出点から 足底を通り 外果の再突出点までの最短距離を計測した 同部位で 約 1cmの幅で帯状に皮膚を採取した 採取した皮膚は 長さ2.5cm 毎にパラフィン包埋し 厚さ4μmに薄切した 画像解析は オールインワン顕微鏡 BZ-9

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性黒色腫は本邦に比べてかなり高く たとえばオーストラリアでは悪性黒色腫の発生率は日本の 100 倍といわれており 親戚に一人は悪性黒色腫がいるくらい身近な癌といわれています このあと皮膚癌の中でも比較的発生頻度の高い基底細胞癌 有棘細胞癌 ボーエン病 悪性黒色腫について本邦の統計データを詳しく紹介し

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抑制することが知られている 今回はヒト子宮内膜におけるコレステロール硫酸のプロテ アーゼ活性に対する効果を検討することとした コレステロール硫酸の着床期特異的な発現の機序を解明するために 合成酵素であるコ レステロール硫酸基転移酵素 (SULT2B1b) に着目した ヒト子宮内膜は排卵後 脱落膜 化

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報告にも示されている. 本研究では,S1P がもつ細胞遊走作用に着目し, ヒト T 細胞のモデルである Jurkat 細胞を用いて血小板由来 S1P の関与を明らかにすることを目的とした. 動脈硬化などの病態を想定し, 血小板と T リンパ球の細胞間クロストークにおける血小板由来 S1P の関与につ

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学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 小川憲人 論文審査担当者 主査田中真二 副査北川昌伸 渡邉守 論文題目 Clinical significance of platelet derived growth factor -C and -D in gastric cancer ( 論文内容の要旨 ) < 要旨 > platelet derived growth factor (PDGF 血小板由来成長因子)-C, -D はヒトの癌細胞の進展 転移において重要な役割を果たしていると考えられているが 胃癌における発現頻度や腫瘍の進展 予後との関連については現在明らかになっていない 今回 根治切除がなされた 204 例を対象に 切除標本の免疫染色を行い PDGF-C, -D の発現と臨床病理学因子 予後との関係を評価した PDGF-D の高発現は腫瘍の深達度 (p=0.039) 分化度(p<0.01) 再発(p<0.01) と有意に関連し 無再発生存期間において予後不良因子であった 一方 PDGF-C の高発現は腫瘍の分化度 (p=0.05) と関連し 有意ではないものの予後不良である傾向を認めた (p=0.10) 多変量解析では PDGF-D の高発現は独立した予後不良因子であった ( ハザード比 3.3 p=0.02) 胃癌において PDGF-D の高発現は腫瘍の進展 再発 予後不良と強く関連しており 独立した予後予測因子 分子標的治療薬のターゲットとなりうる可能性が示唆された < 緒言 > 進行胃癌は根治切除がなされても予後不良な疾患であり 再発例では化学療法を行っても生存中央期間は 13 か月に満たない 近年 human epidermal growth factor (EGFR, HER) や vascular endothelial growth factor (VEGF) に代表される受容体型チロシンキナーゼが胃癌の進展に関連していることが報告されており そのシグナル伝達を阻害することで胃癌の進展を抑制する治療薬の開発が試みられているが 現在までに有効と確認されたものは trastuzumab (anti-her2) のみである しかも trastuzumab の治療対象となる HER2 高発現の胃癌は全体の 23% 程度である 胃癌の予後改善のためには その進展 予後に関連し 分子標的治療薬のターゲットとなるタンパク質を同定することが必要である PDGF は受容体型チロシンキナーゼの一種で 正常組織では細胞の増殖 分化 遊走 胎生期の発達に関連している リガンドは A, B, C, D の 4 つのアイソフォームからなり レセプターはα, βの 2 つのアイソフォームからなる それぞれ 2 量体を形成し 活性化する PDGF-C は PDGFR-αと結合し PDGF-D は PDGFR-βと結合する 様々な癌細胞株で PDGF-C PDGF-D の高発現が確認され 腫瘍の進展との関連が報告されているが 胃癌における発現頻度や腫瘍の - 1 -

進展 予後との関連についてはこれまでに報告がない この研究の目的は 胃癌における PDGF-C PDGF-D の発現と臨床病理学因子 予後との関連を評価することにある < 方法 > 2003 年 1 月から 2007 年 12 月に東京医科歯科大学医学部附属病院食道胃外科で根治切除がなされた胃腺癌 204 症例を対象とした 切除標本に対して PDGF-C PDGF-D の免疫染色を行い 染色の強度と範囲をそれぞれ 0 から 3 までのスコアで判定し 和が 4 以上のものを高発現群 4 未満のものを低発現群とし 臨床病理学因子 予後 ( 無再発生存期間 ) との関係を評価した < 結果 > PDGF-C PDGF-D とも細胞質に発現を認め 非癌部ではほとんど染色されなかった PDGF-C の高発現は 114 例 (56%) に PDGF-D の高発現は 151 例 (74%) に認めた 98 例 (48%) は PDGF-C PDGF-D の双方が高発現であった 転移リンパ節では 81% に PDGF-C の高発現を 87% に PDGF-D の高発現を認め 統計学的に有意でないものの原発巣における高発現率より高かった 臨床病理因子との評価では PDGF-C の高発現は分化型の胃癌に多く認め (p=0.05) 有意ではないものの再発と関連する傾向を認めた (p=0.07) PDGF-D の高発現は男性に多く認め (p=0.02) 腫瘍の深達度 (p=0.04) 再発(p<0.01) と有意に関連し リンパ節転移と関連する傾向を認めた (p=0.07) 予後との評価では PDGF-C の高発現は有意ではないものの予後不良である傾向を認めた (p=0.10) 一方 PDGF-D は予後不良因子であり (p<0.01) 多変量解析においても分化度 深達度 リンパ節転移とともに独立した予後不良因子であった ( ハザード比 3.3 p=0.02) < 考察 > 今回 PDGF-C, -D の高発現が 腫瘍の進展 再発に関連し 特に PDGF-D は独立した予後不良因子であることが示された PDGF-D は 様々な癌細胞株において phosphatidylinositol 3-kinase (PI3K)/Akt nuclear factor-κβ(nf-κβ) extracellular signal-regulated kinases (ERK) mammalian target of rapamycin (mtor) mitogen-activated protein kinase (MAPK) Notch pathways といったシグナル伝達を介して 腫瘍の進展 血管新生 転移に関与していることが知られている さらに epithelial-to-mesenchymal transition (EMT) を介して転移に関与している可能性も示唆されている 今回の我々の研究結果は 臨床病理因子や予後といった観点からも PDGF-D が腫瘍の進展 転移に関与していることを示している PDGF-C に関しては PDGF-D と同様に細胞株を用いた研究で腫瘍の進展と関連することが報告されているが 今回の研究結果から胃癌においては PDGF-D の方がより腫瘍の進展に関与していると考えられる 癌細胞株を用いた研究において PDGF-D の活性化を阻害することによって癌の増殖 浸潤 血管新生が抑制されることが報告されている 今回の研究結果では PDGF-D の高発現は胃癌の 74% に認められており PDGF-D 阻害剤が胃癌に有効であれば 広く使用できる可能性を秘めており 今後の進行 再発胃癌に対する PDGF-D 阻害剤の評価が期待される - 2 -

< 結論 > 胃癌において PDGF-C および PDGF-D の高発現は腫瘍の進展と予後不良に関連した 特に PDGF-D の高発現は 発現頻度も高く 独立した予後不良因子であり 根治切除後の予後予測因子のひとつとなる可能性および分子標的治療薬のターゲットとなりうる可能性が示唆された - 3 -

論文審査の要旨および担当者 報告番号甲第 4868 号小川憲人 論文審査担当者 主査田中真二 副査北川昌伸 渡邉守 ( 論文審査の要旨 ) 1. 論文内容本論文は胃癌における platelet derived growth factor (PDGF 血小板由来成長因子)-C, -D の発現と臨床病理学的因子との関連についての論文である 2. 論文審査 1) 研究目的の先駆性 独創性ヒトの癌細胞の進展 転移において PDGF-C, -D は重要な役割を果たしていると考えられているが 胃癌における発現頻度や腫瘍の進展 予後との関連については不明な点が多い 申請者は根治切除がなされた胃腺癌 204 症例を対象として切除標本の PDGF-C, -D 免疫染色所見と臨床病理学因子 予後 ( 無再発生存期間 ) との関連について解析を行っており その着眼点は評価に値するものである 2) 社会的意義本研究で得られた主な結果は以下の通りである 1. PDGF-C の高発現は腫瘍の分化度 (p=0.05) と関連し 有意ではないものの予後不良である傾向を認めた (p=0.10) 2. PDGF-D の高発現は腫瘍の深達度 (p=0.039) 分化度(p<0.01) 再発(p<0.01) と有意に関連し 無再発生存期間において予後不良因子であった 3. 多変量解析では PDGF-D の高発現は無再発生存期間において独立した予後不良因子であった ( ハザード比 3.3 p=0.02) 以上のように申請者は PDGF-D 高発現が胃癌再発の独立規定因子であることを明らかにしている これは臨床的にも極めて有用な研究成果であると言える 3) 研究方法 倫理観研究には本学医学部附属病院食道胃外科で根治切除がなされた胃癌 204 症例が用いられ 切除標本の PDGF-C, PDGF-C-D 免疫染色所見と臨床病理学的因子の相関を調べている 十分な病理組織学的知識 技術 臨床的知見のもとに遂行されており 申請者の研究方法に対する知識と技術力が十分に高いことが示された また 本学医学部倫理審査委員会の承認を得ており 本研究が十分な準備の上に行われてきたと考えられる (831: 消化器癌および乳癌の発生と進展 ( 1 )

治療効果 予後に関わる因子の解析 ) 4) 考察 今後の発展性申請者は 本研究結果によって PDGF-D が胃癌の根治切除後の予後予測因子のひとつとなる可能性および分子標的治療薬のターゲットとなりうる可能性を考察している これは先行研究と照らし合わせても極めて妥当な考察であり 今後の研究にてさらに発展することが期待される 3. その他一部理解が不十分なところがみられたため 他の増殖因子シグナルとの関連性と本研究の意義についてレポートの提出を求めた 4. 審査結果論文審査およびレポートの内容を踏まえ 本論文は博士 ( 医学 ) の学位申請に値する十分な価値があるものと認められた ( 2 )