がん化学療法と 薬剤師が読み解く臨床検査値 松下記念病院薬剤部 1

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がん化学療法と 薬剤師が読み解く臨床検査値 1

臨床検査値とは? 血液検査 WBC Hb Plt ANC 血液生化学検査 Alb Na K Ca AST ALT LDH ALP BUN Cr 血清検査 腫瘍マーカー 2

血液 ( 血球 ) 検査の見方 ( 私はこうみてる ) 血球検査 ( 造血機能 ) 1. WBC( 白血球数 ) 増加 : 炎症 腫瘍 白血病など減少 : 骨髄機能低下など 2. Hb( ヘモクロビン ) 増加 : 脱水 赤血球増多少など減少 : 骨髄機能低下 消化管出血 貧血など 3. Plt( 血小板数 ) 増加 : 造血器腫瘍など減少 : 骨髄機能低下 DICなど 4. ANC( 好中球数 ) 減少 : 骨髄機能低下 3

生化学検査の見方 ( 私はこうみてる ) 生化学一般 1. Alb( アルブミン ) 増加 : 脱水など減少 : 全身状態悪化 低栄養 肝障害など 2. LDH( 乳酸脱水素酵素 ) 増加 : 炎症 腫瘍など 3. ALP( アルカリフォスファターゼ ) 増加 : 炎症 腫瘍 ( 骨転移 ) など 4. CRP 増加 : 炎症 腫瘍など 4

生化学検査の見方 ( 私はこうみてる ) 肝機能 1. AST(GOT) ALT(GPT) 増加 : 肝機能障害 2. T-Bil 増加 : 肝機能障害 ( 胆道閉塞など ) 黄疸 腎機能 1. Cr( クレアチニン ) 増加 : 腎機能障害 脱水など 2. BUN( 尿素窒素 ) 増加 : 腎機能障害 脱水 高たんぱく食など 5

腎機能 生化学検査の見方 ( 私はこうみてる ) イヌリンクリアランス実際はイヌリンの持続点滴を行い30 分ごとに排尿するそこで代替案としてクレアチニンを使用する 1. Cockcroft-Gault 式 CCr= 2. 日本人の GFR 推算式 3. Jalliffe 式 (140- 年齢 ) 体重 72 scr( 血中クレアチニン値 ) ( 女性 0.85) GFR(ml/min/1.73 m2 )=194 scr -1.094 age -0.287 ( 女性 0.739) CCr= 98-0.8 ( 年齢 -20) scr BSA/1.73 ( 女性 0.9) 6

生化学検査の見方 ( 私はこうみてる ) 電解質 1. Na( ナトリウム ) 増加 : 脱水 尿崩症など減少 : 経口摂取不良 脱水 SIADHなど 2. K( カリウム ) 増加 : 腎障害など減少 : 下痢など 3. Ca( カルシウム ) 増加 : 骨転移 Ca 産生腫瘍など 血清 Alb 値 <4.0g/mL: 補正 Ca 値 = 実測 Ca 値 +(4.0- 血清 Alb 値 ) 7

がん患者における臨床検査値異常 腫瘍そのもの自体による病態 腫瘍の産生物質による腫瘍随伴症候群 治療 ( 主に化学療法の影響 ) 8

腫瘍そのもの自体による病態 がんの進行 多臓器転移 臓器障害 肝転移 : 肝機能障害 尿管圧迫 : 腎機能障害 骨 ( 髄 ) 転移 : 造血機能障害 低栄養状態 : 低アルブミン血症 9

腫瘍随伴症候群 腫瘍随伴症候群とは : 原発巣や転移巣の部位から離れた部位で生じる症状 皮膚の腫瘍随伴症候群 消化管の腫瘍随伴症候群 内分泌系の腫瘍随伴症候群 血液の腫瘍随伴症候群 神経系の腫瘍随伴症候群 腎臓の腫瘍随伴症候群 MSD マニュアル 10

骨髄抑制 化学療法による臨床検査値異常 ほとんど全ての化学療法薬の有害事象 骨髄機能障害による造血障害 肝機能障害 ウィルス肝炎を増悪させる可能性あり 相互作用 ワルファリンとS-1 PPIとTKI パロキセチンとタモキシフェン 11

ワルファリンカリウムと S-1 薬剤名臨床症状 措置方法機序 危険因子 ワルファリンカリウム ワルファリンカリウムの作用を増強することがあるので 凝固能の変動に注意すること 機序 危険因子機序は不明である 添付文書より 当院の事例 胆道がんstageⅣ 2nd line S-1 単剤療法門脈へ血栓ありワルファリン服用中の患者 2コース目 day1 診察前介入時 血便を聴取 医師へ相互作用の可能性を伝える PT-INR:1.81 3.66へ上昇 ビタミンK 投与後 ワルファリンを減量再開となりPT-INR:1.8 付近でコントロール可能となる 12

S-1 の減量規定 TS-1 適正使用ガイド 13

パロキセチンとタモキシフェン 薬剤名臨床症状 措置方法機序 危険因子 選択的セロトニン再取り込み阻害剤 (SSRI) パロキセチン等 本剤の作用が減弱するおそれがある ただし相互作用に起因する効果の減弱及び副作用の報告はない 2008 年 CYP2D6 阻害作用により本剤の活性代謝物の血漿中濃度が低下したとの報告がある 薬剤名臨床症状 措置方法機序 危険因子 選択的セロトニン再取り込み阻害剤 (SSRI) パロキセチン等 本剤の作用が減弱するおそれがある 併用により乳癌による死亡リスクが増加したとの報告がある 2010 年 6 月改訂 CYP2D6 阻害作用により本剤の活性代謝物の血漿中濃度が低下したとの報告がある 14

ゲフィチニブと制酸剤 薬剤名臨床症状 措置方法機序 危険因子 プロトンポンプ阻害剤オメプラゾール等 H 2 - 受容体拮抗剤ラニチジン塩酸塩等 著しい低胃酸状態が持続することにより 本剤の血中濃度が低下するおそれがある 制酸剤を用いて約 6~7 時間にわたり胃内 ph を 5 以上で維持したところ 本剤の AUC が約 50% 減少した 本剤の溶解性が ph に依存することから 胃内 ph が持続的に上昇した条件下において 本剤の吸収が低下し 作用が減弱するおそれがある ゲフィチニブの溶解度はpHに依存する 低 ph 域ではやや溶けにくく ph4~6の間で溶解度は大きく低下し ph6 以上においてはほとんど溶けない 製剤 ( イレッサ錠 250) の各 phにおける溶出率は上記のゲフィチニブの溶解度に関する知見と一致しており ph5.0 以下では 15 分以内に85% 以上の溶出がみられたが phが増加するにつれて溶出率が次第に低下した 添付文書 15

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化学療法による副作用評価 抗がん薬の副作用を評価する世界共通基準 CTCAE version4.03 (Common Terminology Criteria for Adverse Event) 日本語訳 JCOG ホームページ http://www.jcog.jp/ 2009 年 5 月に米国 National Cancer Institute(NCI) が公表 その後 2010 年 6 月に改定 有害事象共通用語規準 v4.0 日本語訳 JCOG 版 18

CTCAE とは NCI 有害事象共通用語規準 v4.0 は 有害事象 (AE) の評価や報告に用いることができる記述的用語集である また各 AE について重症度のスケール (Grade) を示している 有害事象共通用語規準 v4.0 日本語訳 JCOG 版 19

用語 有害事象 (AE:Adverse Event) 医薬品の使用と時間的に関連のある あらゆる好ましくない 意図しない徴候 ( 例えば 臨床検査値の異常 ) 症状又は疾病のことであり 当該医薬品との因果関係の有無は問わない 副作用 (ADR:Adverse Drug Reaction) 副作用とは医薬品に対する有害で意図しない反応 つまり有害事象のうち当該医薬品との因果関係が否定できないものをいう 薬食安発 0328007 号平成 17 年 3 月 28 日緊急報告のための用語の定義と報告の基準について 20

用語 重篤な有害事象 (SAE:Serious Adverse Event) 1. 死に至るもの 2. 生命を脅かすもの ( 注 : ここでいう 生命を脅かすもの とは その事象の発現時点において患者が死の危険にさらされている 場合をいい 仮にもっと重度であれば死を招いたかもしれない という意味ではない ) 3. 治療のための入院又は入院期間の延長が必要であるもの 4. 永続的又は顕著な障害 機能不全に陥るもの 5. 先天異常 先天性欠損を来すもの 6. その他の医学的に重要な状態と判断される事象又は反応 薬食安発 0328007 号平成 17 年 3 月 28 日緊急報告のための用語の定義と報告の基準について 21

有害事象と副作用 重篤な副作用 有害事象 (AE) 副作用 (ADR) 重篤な有害事象 (SAE) 22

グレード (Gread) 評価 Grade 1 軽症 ; 症状がない, または軽度の症状がある ; 臨床所見または検査所見のみ ; 治療を要さない Grade 2 中等症 ; 最小限 / 局所的 / 非侵襲的治療を要する ; 年齢相応の身の回り以外の日常生活動作の制限 * Grade 3 重症または医学的に重大であるが, ただちに生命を脅かすものではない ; 入院または入院期間の延長を要する ; 活動不能 / 動作不能 ; 身の回りの日常生活動作の制限 ** Grade 4 生命を脅かす ; 緊急処置を要する Grade 5 AE による死亡 Grade 説明文中のセミコロン (;) は または を意味する * 身の回り以外の日常生活動作 (instrumental ADL) とは食事の準備 日用品や衣服の買い物 電話の使用 金銭の管理などをさす ** 身の回りの日常生活動作 (self care ADL) とは入浴 着衣 脱衣 食事の摂取 トイレの使用 薬の内服が可能で 寝たきりではない状態をさす 有害事象共通用語規準 v4.0 日本語訳 JCOG 版 23

CTCAEver4.0 の例 有害事象共通用語規準 v4.0 日本語訳 JCOG 版 24

CTCAE 使用の注意点 Nearest matchの原則観察された有害事象が複数のgrade の定義に該当するような場合には 総合的に判断してもっとも近いGrade に分類する 例 ) Grade 3: 輸液を要する と定義されている場合 輸液を一度でも行ってしまったらGrade 3 とするのではなく 輸液が処置として本当に必要な状態であったかどうかと前後のGrade の表記を鑑みて 総合的に判断してもっとも近いGrade に分類するが原則である 有害事象共通用語規準 v4.0 日本語訳 JCOG 版 25

CTCAE 使用の注意点 エピソード 消化管: 嘔吐 で用いられている エピソード については NCI-CTCv2.0の和訳では 1 回 としたため誤解を招いたことから 原文にはない注釈が加えられた 1 エピソード とは 1 回嘔吐したことを指すのではなく 嘔吐発作の一連の経過を指す すなわち 短時間に連続して2,3 回の嘔吐があったとしても それは 1 エピソード としてカウントされる CTCAE v3.0 日本語訳 JCOG/JSCO 版 解説と指針 v1.0 26

CTCAE 使用の注意点 ベースライン いくつかの有害事象では 症状や検査値がベースラインからどの程度変化したかによってgrade が定義されている それ以外ではCTCAE v3.0 の規準に厳密に従って gradingを行い ベースラインの患者の状態によって grade を調整してはならない 後に発生した有害事象との比較を容易にするためにベースラインデータ ( 症状 検査データなど ) を記録しておくことが推奨される 何をベースラインとするか? は試験ごとに明確にプロトコールで規定すべきである 通常は ベースラインは 治療前 の状態や検査値を意味する CTCAE v3.0 日本語訳 JCOG/JSCO 版 解説と指針 v1.0 27

CTCAE とは NCI 有害事象共通用語規準 v4.0 は 有害事象 (AE) の評価や報告に用いることができる記述的用語集である また各 AE について重症度のスケール (Grade) を示している 治験の時に使用される 1 つの指標 28

実臨床では 絶対にCTCAEを用いて評価をしなければならないわけではない CTCAEを使用する事で治験の時と同じ評価が出来る 他職種がみても同じ評価 ( 同じ解釈 ) が出来る 29

もし治験患者に遭遇したら 患者の言葉のみで記録を行う事は控えたほうが良い CTCAE に準じて Greading を 30

腫瘍マーカー がん種に特徴的な物質を産生するものがある その様な物質のうち 体液中 ( 主として血液中 ) で測定可能なもの 進行したがんの動態を把握する為に使用 腫瘍マーカー検査は 他の検査と同じく 診断を最終目的とした多くの検査の1つとして行うもの 診断そのものは血液検査 画像を用いた検査 身体所見等を総合的に勘案して医師が行う 国立がん研究センターがん情報サービス 31

腫瘍マーカー 効果判定や再発の検知 CEA: 大腸がん 乳がん 肺がん CA19-9: 胆嚢がん 膵がん特定の種類の標的療法による治療が妥当かどうかを決定 ALK 遺伝子の転位および過剰発現 : 非小細胞肺がん クリゾチニブ アレクチニブ セリチニブ EGFR 遺伝子変異解析 : 非小細胞肺がん ゲフィチニブ エルロチニブ アファチニブ オシメルチニブ RAS の遺伝子解析 : 大腸がん セツキシマブ パニツムマブ HER2 遺伝子 HER2/neu 遺伝子増幅 : 乳がん 胃がん トラスツズマブ 32

まとめ 診断そのものは血液検査 画像を用いた検査 身体所見等を総合的に勘案して医師が行う 臨床検査値は薬剤師にとって 医師へ判断を伺い疑義紹介の一助となすものでありよい処方提案を行うひとつの材料 33

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