( 第 3 回 ) 鹿間信介摂南大学工学部電気電子工学科 4.3 オームの法則 4.4 金属の電気抵抗 4.5 ジュール熱 演習 4.3 オームの法則 E 電池 電圧 V 抵抗 電流 I 可変抵抗 抵抗両端の電圧 V [V] と電流 I [A] には比例関係がある V =I (: 電気抵抗 ; 比例定数 ) 大 電流が流れにくい 抵抗の単位 : オーム [Ω] 1[Ω]=1[V/A] 1V の電圧を加えたときに 1A の電 流が流れる抵抗が 1Ω
オームの法則 () 目的に応じて使い分ける V I V / I V / I 重要 (4.5) 1 コンダクタンス G[S] (4.6 ) ( 抵抗の逆数 ) 単位 : ジーメンス [S]=[1/Ω] 電圧降下 電圧降下 V: 抵抗 に電流 I が流れると抵抗の両端に電位差 I が生じる現象 電気抵抗 : 金属中を流れる自由電子が金属イオンに流れを邪魔されて生じる ( 摩擦現象 )
導体の電気抵抗 実験事実 : 抵抗は導体の長さ [m] に比例し 断面積 S [m ] に反比例 /S S [Ω] (4.7) : 抵抗率 [Ω m] 抵抗率 ρは 物質の種類と温度で決まる ρは長さ1m, 断面積 1m の物体の抵抗に相当 抵抗率と電気伝導率 [Ω] S 重要 電気伝導率 σ: 抵抗率の逆数 抵抗率 : 大きい物質ほど電気を通しにくい 電気伝導率 : 大きい物質ほど電気を通しやすい : 抵抗率 [Ωm] 1 (4.8) : 電気伝導率 [1/( m)] [S/m] 抵抗 : 非常に大きい時, 非常に小さい時の両方有用 電気の通りやすさ 通りにくさの性質を数値として強調すべく ρ,σ を使い分ける
局所的なオームの法則 電位差 : i 長さ ( 電位差 V ) 電流 I V E I I S I E (4.9) S (4.9) より 電流密度 I は : I / S 一様電場 E E / i E S (4.10) 一様電場 E で長さ の導体の電 位差 V より電場を求める : (4.9) (4.9) より電流密度 i [A/m ] を求める : (4.10) (4.10) をベクトルで表現 : (4.11) オームの法則 ( 局所的 ) i E 重要 (4.11) 電流密度はその座標の電場に比例 4.4 金属の電気抵抗 自由電子の運動方向 摩擦力 高温になるほど金属の結晶格子 ( 正イオン ) の熱振動が盛んになり 自由電子の動きを妨げる 自由電子と結晶格子の摩擦が電気抵抗の発生原因 摩擦力は電子が結晶格子内を運動するときの速度に比例する 電子の運動方程式 dv m ee kv 抵抗力の比例定数 (4.1) ここに v : 電子の速度ベクトル k : 電子の速度に比例する
dv m 金属の電気抵抗 () 電子の運動方程式 ee kv ee kv i nev ne i E k (4.1) 定常電流では加速度 =0 なので : (4.13) に (4.13) を用いて (4.14) i 電子の運動方程式 (4.1) より電気伝導率 σ, 抵抗率 ρ を導く 定常電流では電子の加速度 =0 ゆえ (4.1) 式の左辺 =0 E (4.14) を局所的なオームの法則と比べて次の ρ,σ を得る 電気伝導率 抵抗率 ne k /( ne / k [S/m] ) [Ωm] (4.15) (4.16) n: 電荷担体密度 [m 3 ] 金属, 絶縁体, 半導体の電気伝導率の差異を決める 金属の電気抵抗 (3) 電気抵抗 (Ω) = 0 (1+α 0 T) (4.17) 0 温度 T ( ) 温度上昇すると金属の電気抵抗は増加 格子振動が温度上昇で増加し 摩擦が増加するのが原因 常温付近では温度 T に対し線形に抵抗変化 ( 経験式 ) α o : 抵抗の温度係数 [K 1 ] 絶対零度では残留抵抗あり ( 結晶格子の零点振動による ) 物質によっては 絶対零度近辺で完全に抵抗が0になる ( 超伝導 )
電気抵抗率と温度係数の例 ( 室温近傍 ) 物質 銀銅アルミニウム鉄ニクロム線純水人の皮膚乾燥木材ガラス雲母水晶 ( 融解 ) 抵抗率 ρ [Ωm] 1.49 10 8 1.55 10 8.41 10 8 8.71 10 8 ~108 10 8.5 10 5 約 5.0 10 5 10 10 ~10 13 10 10 ~10 14 10 13 ~10 16 7.5 10 17 温度係数 α [K 1 ] 3.8 10 3 4.4 10 3 4.3 10 3 6.5 10 3 1~ 10 4 出典 : Wikipedia ( 純水 ~ 水晶の抵抗率 ) 抵抗率は10 8 ~10 15 以上と大変広い範囲に分布 電荷担体密度 n が主要因 抵抗率 : k/( ne ) [Ωm] 温度依存性も大 ( 銅 : T =100 で44% 抵抗 増加 ) 半導体材料 (Si,Ge 他 ) の抵抗率は不純物濃度に強く依存 4.5 ジュール熱 t [S] に流れる電荷量 : Q It [ C] AB 間の電場 : E V / l [V/m ] ヒータ, 白熱電球等の抵抗体に電流を流すと自由電子の摩擦熱が発生 ( ジュール熱 ) ジュール熱は電場により与えられた電子の運動エネルギーが結晶格子との摩擦で熱エネルギーに変わる現象 導線 ABに電流をt [S] 流したときの電場の仕事 W [J] を求める Q [C] の電荷が受ける力 : F QE ItV / l [N] 電場のする仕事 : W Fl VIt [J] 重要
ジュール熱 () 電位差 V [V] のところを電荷 q [C] が移動したときの仕事量 U [J] 電力 : (4.18) 両辺を時間 t で微分,[J/s]=[W] 電力の別表現 : (4.19) をオームの法則で変形 U qv [J] du du (4.18) dq V IV [W] (4.19) V IV I [W] (4.0) 電力量 H : t [s] 流し続けた全仕事量 H IVt I V t t [J] (4.1) 電力量の単位 [J]=[Ws], 1W 1h=1[W] 3600[s]=3600[J] 実際の電力使用量 : キロワット時 [kwh], 1kWの電力 1 時間分に相当 オーム ゲオルク ズィーモン オーム (Georg Simon Ohm) 1789 年 3 月 16 日 1854 年 7 月 6 日 ドイツの物理学者 1817 年にケルンのギムナジウム ( 日本での中高一貫校に相当 ) の数学教師になり 1833 年にニュルンベルクの工科学校 185 年にミュンヘン大学の実験物理の教授となった キャヴェンディッシュによって 1781 年に発見されたものの未公表であった 導体中の電位差は電流に比例する というオームの法則を再発見し 187 年にベルリンで出版された Die galvanische Kette mathematisch bearbeitet ( 数学的に取扱ったガルヴァーニ電池 ) のなかで発表 オームの名前は 電圧と電流の比である抵抗の単位オームとして SI 組立単位に採用されている ( 出典 Wikipedia)
ジュール ジェームズ プレスコット ジュール (James Prescott Joule) 1818 年 1 月 4 日 1889 年 10 月 11 日 ) イギリスの物理学者 生涯 大学などの研究職に就くことなく 家業の醸造業を営むかたわら研究を行った ジュールの法則を発見し 熱の仕事当量 (*) の値を明らかにするなど 熱力学の発展に重要な寄与をした 熱量の単位ジュールに その名をとどめる ( 出典 Wikipedia) (*) 熱の仕事等量 : 1[cal]=4.19[J] 1[cal]: 1[g] の水の温度を標準大気圧下で1[ ] 上昇させる熱量 ( 参考 ) 様々な抵抗とその読み方
( 参考 ) 電力会社の電力使用量表示例 971 898 = 730