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1. 化学反応について ある物質とある物質が出会ってそれぞれの持っている原子の組み換えが起こることを化学反応といいます ここで 化学反応はなぜ起こるのか考えて見ます 物質が出会っても 必ず化学反応によって原子の組み換えが起こるわけではありません 原子を切断し 別の原子と結合するためのエネルギーが必要になります たとえば 下記の反応を考えます H 2 + I 2 2HI この場合 H 2 と I 2 の分子の結合を切り離すためのエネルギーが必要になります ちなみに H 2 と I 2 の分子がエネルギーをもらって新しい結合 (H-I) をつくりかける状態を活性化状態といいます そして この状態は運動している分子が衝突することによって作り出されます つまり 運動している物質同士が衝突することによって得られるエネルギーが活性化エネルギー以上になったとき 分子が活性化状態になり原子の組み換えが起こって化学反応が起こるのです 化学反応が起こる様子 原子の組み換えはいかにして起こるか 活性化エネルギー (H H)+(I I) 活性化エネルギー ( H - H) + (I- I ) 逆向きの活性化エネルギー 9.0kJ 2( H - I ) 図 1. 化学反応の起こる過程 - 西誠 2/8 -

2. 化学反応の速度について 化学反応は反応する物質があってはじめて起こります 例えば A という物質と B という物質から物質 C ができる A + B C の化学反応を考えます このとき A B が反応物質であり C が生成物質となります 化学反応は A と B の分子が衝突して活性化状態を作り出すことによって起こることになります したがって A 分子と B 分子の出会う回数が多いほうが 反応が多く起こる可能性が高くなります ( 出会わなければ反応できません ) 反応がどれだけの速さで進むのかは時間あたりどれだけの濃度が反応したかで表されます つまり 反応速度 vは時間あたりどの程度反応物質が減っているかで考えると A B の物質の濃度を [A] [B] とすると [A] [B] (1) v v となります 反対に生成物質 C がどれだけ増えているかで考えれば C の物質の濃度を [C] として と表せます そして もし 0 [C] (2) v とすれば 反応速度は微分の形として d[a] d[b] d[c] (3) v v v d d d で表されることになります 化学反応 A+B C A B の濃度 [A][B] が減る速さ C の濃度 [C] が増える速さ 生成物質の濃度 [A] v [A] 生成物質の濃度 [C] [C] v 時間 時間 図 2. 化学反応速度について - 西誠 3/8 -

3. 反応速度と濃度次に A + B C の反応を実際にさせてみます このとき 最初 A B はふんだんにあるため 反応速度は大きくなりますが 反応が進むにつれて 徐々に反応する物質が減って行くため 反応する頻度は減って 反応速度が小さくなります このように 反応速度は濃度に比例します 化学反応の速度 反応の速度 A+B C A B の濃度 [A][B] が減る速さ C の濃度 [C] が増える速さ 反応する物質が減ると反応速度も小さくなる 図 3. 反応の速度 具体的には 反応物質の濃度を [A] [B] とすると反応速度は v k[a][b] (4) と書くことができます (k は反応速度定数 ) つまり 反応速度は濃度の積に比例するのです たとえば 分子が1 個ずつしかなければ 衝突の頻度は1 1しかありませんが 分子の数が 3 個ずつあれば3 3となるのです 濃度が 3 倍になると衝突頻度は 9 倍になる 図 4. 濃度と衝突頻度 - 西誠 4/8 -

4. 反応次数と反応速度ここでは 代表的な化学反応である1 次反応と2 次反応について反応速度定数を求めてみます (1)1 次反応と反応速度化学反応において A B+C+ のような反応物質が 1 つの場合を 1 次反応といいます もし この反応において最初の A の濃度 を a(mol) とします そして 時間 の経過後に x (mol) 反応したと仮定すると A B C の濃度はそれぞれ以下のようになります 反応前 秒後 A B + C + --- a 0 0 a x x x これより時間 の経過後の A,B,C の反応速度は式 (3) より d[a] d( a v d d d[b] d[c] v d d d となります また 反応速度は濃度に比例することから (4) より (5) vk[a] k( a (6) と書くことができます これらの式を使うことによって反応速度定数 kを求めることができます すなわち (5)(6) 式より 以下の式を得ることができます ka ( d (7) そして この式を変数分離型の微分方程式として以下のように変形します ( a kd この式を積分すると 以下のように計算できます そして 最終的には x ( a 0 0 kd log( a x k 0 0 log( a log a k 1 a k log a x となり 反応速度定数を得ることができます (8) - 西誠 5/8 -

(1)2 次反応と反応速度化学反応において A+B C+D+ のような反応物質が2つの場合を2 次反応といいます この反応においても同様の考え方で計算できます 最初の A B の濃度を a(mol) とします そして 時間 の経過後に x (mol) 反応したと仮定すると A B C D の濃度はそれぞれ以下のようになります 反応前 秒後 A + B C + D--- a a 0 0 a x a x x x これより時間 の経過後の A B C D の反応速度は式 (3) より d[a] d[b] d( a v d d d d[c] d[d] v d d d となります また 反応速度は濃度に比例することから (4) より (9) vk[a][b] k( a( a (10) と書くことができます これらの式を使うことによって反応速度定数 kを求めることができます すなわち (5)(6) 式より 以下の式を得ることができます 2 ka ( d (11) ここから 1 次反応と同様に変数分離型の微分方程式として解いていきます すなわち そして 最終的には ( a x 0 2 0 kd 1 x ax k 0 0 ( ) 1 1 k ( a a 1 x k aa ( となり k を求めることができます (12) - 西誠 6/8 -

5. 化学平衡と質量作用の法則 (1) 化学平衡もう一度 以下の化学反応を考えます H 2 + I 2 2HI 化学反応でも説明したようにこの反応では H 2 と I 2 の分子が衝突することによって分子が活性化状態になり原子の組み換えが起こって新しい結合状態 HI を作ります ここで 注意しなければいけないことが1つあります H 2 と I 2 の分子が結合してできた新しい結合 (H-I) が 別の HI と衝突した場合 もしそのときのエネルギーが活性化状態以上であれば 再び原子を組み換えて H 2 と I 2 の分子にもどってしまう可能性もあるのです 化学反応が起こる様子 原子の組み換わりはどちらも起こりえるのです 活性化エネルギー (H H)+(I I) 正反応の活性化エネルギー (H-H)+(I-I) 逆反応の活性化エネルギー 9.0kJ 2(H-I) 図 5. 正反応と逆反応 以上のことから H 2 と I 2 を反応させたとき 以下のようになることがわかるはずです つまり まず 最初は H 2 と I 2 しかないため H 2 と I 2 が HI になる反応が起きます ( 正反応といいます ) しかし 反応が進むと HI が増えてきて HI 同士が衝突して H 2 と I 2 に戻る反応も起きてきます そのうちに H 2 と I 2 が HI になる反応と HI 同士が衝突して H 2 と I 2 に戻る反応が同じだけ起こる平衡状態になります ( 図 6 参照 ) この状態で見かけ上化学反応がとまって濃度が変わらなくなってしまったように見えます このように 正反応と逆反応が同じだけ起こって反応が止まった状態を 化学平衡の状態といいます - 西誠 7/8 -

化学平衡の状態 正反応 反応速度 逆反応 平衡状態 時間 可逆反応がどこで平衡状態に達するのかを予測するためには正反応と逆反応の反応速度を予測する必要がある 図 6. 平衡の状態ここで 反応の進み方を数学的に考えてみます (2) 質量作用の法則以下の反応式において H 2 + I 2 2HI 右向きの正反応と左向きの逆反応を考えます 右向きの正反応 H 2 +I 2 度の積に比例するので (4) 式より 2HI の反応速度は濃 v k [H ][I ] (13) 1 1 2 2 となります また 左向きの逆反応 H 2 +I 2 2HI は同様に v k [HI][HI] 2 2 (14) で与えられます もし 反応の速度が同じになった化学平衡の状態では v v 1 2 となることから k 2 1[H 2][I 2] k2[hi] (15) となります ここで k 1 k 2 は定数であることから 式を変形して k [HI] 2 1 K k 2 [H 2][I 2] (16) という形に整理します この式において K は温度によって変化する値なので kと K の関係式を導くことによって 反応の進み方や反応と温度の関係を把握できます - 西誠 8/8 -