当院人工透析室における看護必要度調査 佐藤幸子 木村房子 大館市立総合病院人工透析室 The Evaluation of the Grade of Nursing Requirement in Hemodialysis Patients in Odate Municipal Hospital < 諸

Similar documents
000-はじめに.indd

PowerPoint プレゼンテーション

0_____目次.indd

メディフィットプラスパンフ_通販用_ ai

<4D F736F F F696E74202D AAE90AC94C5817A835F C581698FE39E8A90E690B6816A2E >

4 研修について考慮する事項 1. 研修の対象者 a. 職種横断的な研修か 限定した職種への研修か b. 部署 部門を横断する研修か 部署及び部門別か c. 職種別の研修か 2. 研修内容とプログラム a. 研修の企画においては 対象者や研修内容に応じて開催時刻を考慮する b. 全員への周知が必要な

Microsoft PowerPoint - 参考資料

平成30年度 患者様満足度調査 【外 来】

平成 28 年 10 月 17 日 平成 28 年度の認定看護師教育基準カリキュラムから排尿自立指導料の所定の研修として認めら れることとなりました 平成 28 年度研修生から 排泄自立指導料 算定要件 施設基準を満たすことができます 下部尿路機能障害を有する患者に対して 病棟でのケアや多職種チーム

透析看護の基本知識項目チェック確認確認終了 腎不全の病態と治療方法腎不全腎臓の構造と働き急性腎不全と慢性腎不全の病態腎不全の原疾患の病態慢性腎不全の病期と治療方法血液透析の特色腹膜透析の特色腎不全の特色 透析療法の仕組み血液透析の原理ダイアライザーの種類 適応 選択透析液供給装置の機能透析液の組成抗

「手術看護を知り術前・術後の看護につなげる」

助成研究演題 - 平成 23 年度国内共同研究 (39 歳以下 ) 重症心不全の集学的治療確立のための QOL 研究 東京大学医学系研究科重症心不全治療開発講座客員研究員 ( 助成時 : 東京大学医学部附属病院循環器内科日本学術振興会特別研究員 PD) 加藤尚子 私は 重症心不全の集学的治療確立のた


広報誌みなと No.37

Microsoft Word - cjs63B9_ docx

Microsoft PowerPoint - å½fi报説柔ㅂㅯㅼㅚ㇤ㅳㅋ.pptx

短 報 Nurses recognition and practice about psychological preparation for children in child health nursing in the combined child and adult ward Ta

国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院医療に係る安全管理のための指針 第 1 趣旨本指針は 医療法第 6 条の10の規定に基づく医療法施行規則第 1 条の11 の規定を踏まえ 国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 ( 以下 センター病院 という ) における医療事故防止について組織的に


表紙.indd

「手術看護を知り術前・術後の看護につなげる」

心房細動1章[ ].indd

高齢化率が上昇する中 認定看護師は患者への直接的な看護だけでなく看護職への指導 看護体制づくりなどのさまざまな場面におけるキーパーソンとして 今後もさらなる活躍が期待されます 高齢者の生活を支える主な分野と所属状況は 以下の通りです 脳卒中リハビリテーション看護認定看護師 脳卒中発症直後から 患者の

untitled

正誤表 正誤箇所 誤 正 医科 - 基本診療料 -35/47 注 3 診療に係る費用 ( 注 2 及び注 4に規定する加算 注 3 診療に係る費用 ( 注 2 及び注 4に規定する加算 注の見直し 当該患者に対して行った第 2 章第 1 部医学管理等の 当該患者に対して行った第 2 章第 1 部医学

3 医療安全管理委員会病院長のもと 国府台病院における医療事故防止対策 発生した医療事故について速やかに適切な対応を図るための審議は 医療安全管理委員会において行うものとする リスクの把握 分析 改善 評価にあたっては 個人ではなく システムの問題としてとらえ 医療安全管理委員会を中心として 国府台

透析患者のかゆみ問診に かゆみチェック表を作成 活用して - 透析患者かゆみアンケートからみえる看護の方向性 - 高橋賢志 千葉幸子 大信田友美 戸澤真紀 千葉方美 齋藤由美子 佐藤勝 藤川一人 大河秀一 鈴木一正 市立角館総合病院透析室看護部 臨床工学技士 泌尿器科 <はじめに> 維持透析患者の6

平成 27 年 1 月から難病医療費助成制度が変わりました! (H26 年 12 月末までに旧制度の医療費助成を受けている人は 3 年間の経過措置 を受けられます ) 分かり難い場合は協会又は自治体の窓口へお問い合わせください H27 年 1 月からの新制度 1. 難病医療費助成の対象は ALS 重

高齢者におけるサルコペニアの実態について みやぐち医院 宮口信吾 我が国では 高齢化社会が進行し 脳血管疾患 悪性腫瘍の増加ばかりでなく 骨 筋肉を中心とした運動器疾患と加齢との関係が注目されている 要介護になる疾患の原因として 第 1 位は脳卒中 第 2 位は認知症 第 3 位が老衰 第 4 位に

第1回 障害者グループホームと医療との連携体制構築のための検討会

為化比較試験の結果が出ています ただ この Disease management というのは その国の医療事情にかなり依存したプログラム構成をしなくてはいけないということから わが国でも独自の Disease management プログラムの開発が必要ではないかということで 今回開発を試みました

医療法人高幡会大西病院 日本慢性期医療協会統計 2016 年度

2011 年 11 月 2 日放送 NHCAP の概念 長崎大学病院院長 河野茂 はじめに NHCAP という言葉を 初めて聴いたかたもいらっしゃると思いますが これは Nursing and HealthCare Associated Pneumonia の略で 日本語では 医療 介護関連肺炎 と

2017年度患者さん満足度調査結果(入院)

早稲田大学大学院日本語教育研究科 修士論文概要書 論文題目 ネパール人日本語学習者による日本語のリズム生成 大熊伊宗 2018 年 3 月

を増床しました 地域包括ケア病棟とは? 急性期後の受入れをはじめとする 地域包括ケアシステム を支える病棟です 急性期治療の後すぐの在宅や施設等での療養に不安があったり, もう少しの入院治療で社会復帰ができる患者さんのために退院支援を行います 当院では5 階全床を 地域包括ケア病棟 (60 床 )

脳血管疾患による長期入院者の受診状況~レセプトデータによる入院前から退院後5年間の受診の分析

統計トピックスNo.92急増するネットショッピングの実態を探る

10050 WS2-3 ワークショップ P-129 一般演題ポスター症例 ( 感染症 ) P-050 一般演題ポスター症例 ( 合併症 )9 11 月 28 日 ( 土 ) 18:40~19:10 6 分ポスター会場 2F 桜 P-251 一般演題ポスター療

1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( はい / ) 上記外来の名称 対象となるストーマの種類 7 ストーマ外来の説明が掲載されているページのと は 手入力せずにホームページからコピーしてください 他施設でがんの診療を受けている または 診療を受けていた患者さんを

第 1 章調査の実施概要 1. 調査の目的 子ども 子育て支援事業計画策定に向けて 仕事と家庭の両立支援 に関し 民間事業者に対する意識啓発を含め 具体的施策の検討に資することを目的に 市内の事業所を対象とするアンケート調査を実施しました 2. 調査の方法 千歳商工会議所の協力を得て 4 月 21

3. 提出データ形式 平成 28 年度 H ファイル 大項目 必須条件等有 小項目内容 ( 入力様式等 ) (1) 施設コード都道府県番号 + 医療機関コード間 には区切りを入れない (2) 病棟コード病院独自コード 但し 一般 一般以 外の区が可能なこと 左詰め (3) データ識番号複数回入退院し


居宅介護支援事業者向け説明会

09西宮市立中央病院/本文

PowerPoint プレゼンテーション

9(1) 介護の基本的な考え方 9() 介護に関するこころのしくみの基礎的理解 9() 介護に関するからだのしくみの基礎的理解 9(4) 生活と家事 5 9(5) 快適な居住環境整備と介護 9(6) 整容に関連したこころとからだのしくみと自立に向けた介護 4 4 理論と法的根拠に基づき介護を行うこと

ケア困難患者や家族への直接ケア 医療スタッフへのコンサルテーション 退院や倫理的問題を調整する調整 ケアの質を改善 向上させるための教育と研究を実践し CNS が関わることで患者の病状や日常生活機能と社会的機能が改善して 患者と家族の QOL が高まり 再入院が減少することが明らかとなってきておりま

第 3 節心筋梗塞等の心血管疾患 , % % % %

2) 各質問項目における留意点 導入質問 留意点 A B もの忘れが多いと感じますか 1 年前と比べてもの忘れが増えたと感じますか 導入の質問家族や介護者から見て, 対象者の もの忘れ が現在多いと感じるかどうか ( 目立つかどうか ), その程度を確認する. 対象者本人の回答で評価する. 導入の質

Microsoft Word - 単純集計_センター長.docx

2013 年度 統合実習 [ 表紙 2] 提出記録用紙 5 実習計画表 6 問題リスト 7 看護過程展開用紙 8 ( アセスメント用紙 1) 9 ( アセスメント用紙 2) 学生証番号 : KF 学生氏名 : 実習期間 : 月 日 ~ 月 日 実習施設名 : 担当教員名 : 指導者名 : 看護学科

山梨県地域医療再生計画 ( 峡南医療圏 : 救急 在宅医療に重点化 ) 現状 社保鰍沢病院 (158 床 ) 常勤医 9 名 実施後 社保鰍沢病院 峡南病院 (40 床 ) 3 名 市川三郷町立病院 (100 床 ) 7 名 峡南病院 救急の重点化 県下で最も過疎 高齢化が進行 飯富病院 (87 床

別添 1 抗不安薬 睡眠薬の処方実態についての報告 平成 23 年 11 月 1 日厚生労働省社会 援護局障害保健福祉部精神 障害保健課 平成 22 年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業 向精神薬の処方実態に関する国内外の比較研究 ( 研究代表者 : 中川敦夫国立精神 神経医療研究センタートラン

3) 適切な薬物療法ができる 4) 支持的関係を確立し 個人精神療法を適切に用い 集団精神療法を学ぶ 5) 心理社会的療法 精神科リハビリテーションを行い 早期に地域に復帰させる方法を学ぶ 10. 気分障害 : 2) 病歴を聴取し 精神症状を把握し 病型の把握 診断 鑑別診断ができる 3) 人格特徴

婦人科63巻6号/FUJ07‐01(報告)       M

<90DA8D9C8E7489EF34328D862E696E6464>

<4D F736F F D AAE90AC94C B835794D48D8682C882B5816A915395B68CB48D652E646F63>

Microsoft Word - 単純集計_センター職員.docx

Transcription:

当院人工透析室における看護必要度調査 佐藤幸子 木村房子 大館市立総合病院人工透析室 The Evaluation of the Grade of Nursing Requirement in Hemodialysis Patients in Odate Municipal Hospital < 諸言 > 近年 透析患者数は毎年 1 万人ずつ増加しているといわれており 2008 年度におけるわが国の透析患者数は 28 万人に達し 国民の 500 人に1 人の割合になっていると報告がある 1) 当人工透析室においても 昨年度より維持透析患者が 13 名増加しており 現在総患者数は 69 名となっている 患者内訳としても 糖尿病性腎症による透析導入している方が 53.6% と半数を超え 脳血管障害や心血管系疾患などの合併症があり 綿密な観察を要する患者が増加している また認知症やADLの低下などにより車椅子使用の方など手厚い看護を必要としている患者も多い しかし患者数は増える一方で 昨年度とスタッフの人数が変わりなく 業務に追われるため 患者とのコミュニケーションの時間や患者指導の時間が減少している現状である 本研究では 2004 年に杉田らによって報告された 透析看護必要度と適正人員配置基準の検討 2) をもとに当院人工透析室における看護必要度を調査し 現状を把握することを目的とした 得られたデータは 今後のスタッフ人数の検討や安全な看護の提供 看護の質の向上につながるための資料となると考える < 研究方法 > 1. 研究デザイン : 実態調査研究 2. 研究期間 : 平成 22 年 7 月 19 日 7 月 24 日 3. 調査内容 : 当院人工透析室にて血液透析を行っている患者 69 名 4. 研究場所 : 人工透析室 5. データ収集方法 : 日本腎不全看護学会誌 2004 年 No2,Vol 6に掲載されている杉田らによる 透析看護必要度と適正人員配置基準の検討 2) より透析室の看護必要度分類表 ( 表 1) を用いて患者の看護度の測定を行った 看護度の測定は 観察 処置の程度を4 段階 自立の程度を3 段階にて分類し 分類表よりケアの度合いを得点化した 109

6. 分析方法 :1)2007 年 2009 年の 4 月 1 日に行われ まとめられていた看護必要度調査結果と 今回得られた看護必要度調査の結果を比較した 2)2007 年 2010 年 4 月 1 日現在の患者数とスタッフ数を調べ 現在の患者 10 人当たりのスタッフ数の割合を算出した 計算式 : 総患者数 スタッフ数 10 人 表 1. 透析室看護必要度分類表 < 結果 > 1. 対象属性 : 男性 45 名 女性 24 名 計 69 名 2. 年齢 : 平均年齢 67.4 歳 (22 歳 87 歳 ) 3. 平均透析歴 :2.5 年 ( 内 1 年未満 34 名 1カ月 31 年 ) 4. 観察 処置の程度について ( 図 1) 2007 年度では観察の程度がⅠ 及びⅡのみであったのが 2010 年度では観察の程度がⅠ Ⅳ までとなっている 5. 自立の程度について ( 図 2) 2007 年度は自立が 61% であったのが 2010 年度では 40% となっている また 部分介助及び全面介助の割合がどちらとも約 3 割となっている 全面介助の割合が 2007 年度では 10% 未満であったのが 2010 年度では 28% となっている 図 1. 観察 処置の程度 図 2. 自立の程度 110

6. 看護必要度の比較 ( 図 3) 1 点 ( 看護必要度が低い ) の割合は変わりない 2010 年度は3 点以上が約半数を占めている 7. 患者数とスタッフ数の比較 ( 表 2) 2007 年から 2010 年において 患者数は 1.6 倍 スタッフ数は 1.2 倍となっている 8. 患者 10 人当たりのスタッフ数について ( 表 3) 患者 10 人当たりのスタッフ数の割合を全国平均と比較すると 全スタッフ 看護師の割合では全国平均を下回る結果となった 臨床工学技士においては全国平均と同じであった 図 3. 看護必要度 表 2. 患者数とスタッフの人数 (4 月 1 日 ) (2007 年 2010 患者数 1.6 倍 スタッフ数 1.2 倍 ) 表 3. 患者 10 人に対するスタッフ数の割合 (2010 年 7 月 ) 111

< 考察 > 看護必要度の調査を行ってみることにより 現在の当人工透析室は全国平均のスタッフ配置を下回るという結果となった 全国的な統計によると総合病院では全国平均より上回る傾向があるが 当院ではこのような結果となり スタッフ数が不足していると言える また 4 年間比較し 患者数が増加し 看護必要度が高くなっている現状が明確となった 観察 処置の程度の比較では 観察の程度が頻回の患者数が多くなっており 2007 年度と比較すると 認知症患者はほとんどいなく自立している患者が主であったのに対し 現在は入院中でモニターを装着中であったり 酸素投与をしていたり 認知症があり体動が多く頻回に観察が必要の患者が多いことが要因であると考えられる 自立度については 2007 2009 年度では入院中の患者以外に外来通院の方では 60 70% の方が自立状態であったのに対し 現在は入院中でストレッチャーでの来室の方も数名おり 外来通院でも車いす使用や 送迎ヘルパー利用の方が6 名 ( 約 8.7%) となっていることが要因であると考えられる 看護必要度の比較では 現在認知症症状を呈する方が 12 名 ( 約 17.4%) ほどおり 約半数を占めている3 点以上に含まれるため このような結果になったのではないかと考えられる これらの結果から 患者数の増加に伴い 安全に業務を遂行するということに第一に焦点が行き 透析中の患者とゆっくりコミュニケーションを取るという時間を十分に作れていなかった現状がある 透析室看護師の役割として 三上は 自己管理ができるように患者とともに歩みながら 安全な透析が継続できるようにかかわっていくことが看護師の重要な役割です 3) と述べている 機械や装置に依存しながら健康回復や維持に対し主体性を持って永続的に取り組まなくてはならないという特性のある透析看護では 安全に透析を行いながら 個々の患者さんの段階に適した精神面や自己管理行動を高めてもらうための看護援助を行うことが透析室看護師に求められている事であり 今後の患者の自己管理行動に繋がってゆくものであると考える また 患者とスタッフの関係が良好に保たれるためには信頼関係の構築が大切であり そのためにもコミュニケーションが重要な役割を占めていると考える 先行研究で杉田らが述べているように 透析室看護必要度分類表 には患者のケアの度合いを観察 処置の程度と自立の程度で表したものであり 患者教育や支援などに使用される労力や時間 看護能力は組み込まれていない 患者に対しより質の高い看護を提供するためには 透析室における人員配置基準を設けていただき 十分なスタッフの配置が必要であると考える 現在当院では8 月より CKD 外来を立ち上げ 透析導入前の患者に対しての関わりに重点を置き コミュニケーションを十分に取ることで信頼関係を深め 透析導入へのスムーズな受け入れ体制を作っていけるよう取り組んでいる 透析導入前からの関わりが 透析導入後の良好な関係へと継続していけるよう今後も取り組んで行きたい 来年度には増員が予定されるという計画もあり 現在のスタッフで患者と関わりを深めながら 112

患者指導を行っていくことを今後の課題とし 安全に業務を行っていきたい < 結語 > 看護必要度調査により 4 年間比較し看護必要度が高くなった 当人工透析室のスタッフ配置は全国を下回る結果であった 引用文献 1) 政金生人 : 透析看護の知識と実際 P18 2010. 2) 杉田他 : 透析看護必要度と適正人員配置基準の検討 日本腎不全看護学会誌 vol.6 No.2: 82-88 2004. 3) 三上裕子 : 透析ケア Vol.13 No.4 2007. 参考文献 1) 日本腎不全看護学会誌 Vol. 6 No.2 2004 2) 宇田有希他 : 透析看護第 2 版 医学書院 2005 3) 栗山哲 : 透析ナーシング 医学書院 1999 4) 吉田典 : 臨床透析クルズス透析看護あれこれ 日本医学センター 1991 113