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1~4 をうめよ 1 解糖系 2 クエン酸 細胞へ入った糖は 3 段階の異化を経て分解される (1 ) と (2 ) と回路 3 電子伝達系 (3 ) 1 は細胞質ゾルで 2 と 3 は (4 ) で行われる 4 ミトコンドリア 糖新生はグルコースの他にエネルギーの産生や消費をする反応である 注 )

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官能基の酸化レベルと官能基相互変換 還元 酸化 炭化水素 アルコール アルデヒド, ケトン カルボン酸 炭酸 H R R' H H R' R OH H R' R OR'' H R' R Br H R' R NH 2 H R' R SR' R" O R R' RO OR R R' アセタール RS S

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アミノ酸代謝 (1) 平成 30 年度 6 月 14 日 1 限病態生化学分野 吉澤達也

アミノ酸代謝 アミノ酸の修飾 食物タンパク質 消化吸収 分解 タンパク質 (20 種類 +α) 遊離アミノ酸 生合成 アミノ酸の生合成 ( 栄養学的非必須アミノ酸 ) 窒素 分解 炭素骨格 非タンパク質性誘導体 ( 神経伝達物質 ホルモン アミノ糖など ) 尿素サイクル 代謝中間体 尿素 糖質 脂質 エネルギー

ヒトにおける栄養学的必須アミノ酸と栄養学的非必須アミノ酸 栄養学的必須アミノ酸 栄養学的非必須アミノ酸 食事から摂らなければならない必須アミノ酸と合成できる非必須アミノ酸がある * ほ乳類はアルギニンを合成できるが 合成速度が小児の成長を指示するのには不十分なので 栄養学的に準必須アミノ酸 アルギニン (Arg, R)* アスパラギン (Asn, N) イソロイシン (Ile, I) アスパラギン酸 (Asp, D) トリプトファン (Trp, W) アラニン (Ala, A) トレオニン (Thr, T) グリシン (Gly, G) バリン (Val, V) グルタミン (Gln, Q) ヒスチジン (His, H) グルタミン酸 (Glu, E) フェニルアラニン (Phe, F) システイン (Cys, C) メチオニン (Met, M) セリン (Ser, S) リシン (Lys, K) チロシン (Tyr, Y) ロイシン (Leu, L) プロリン (Pro, P)

アミノ酸の生合成 チロシン以外の非必須アミノ酸 ( 青字 ) は 4 種の共通代謝中間体 ピルビン酸 オキサロ酢酸 α- ケトグルタル酸 3- ホスホグリセリン酸のどれかから合成される チロシンは必須アミノ酸 ( 赤字 ) のフェニルアラニンから合成される

グルタミン酸 (Glu, E) グルタミン (Gln, Q) α- ケトグルタル酸はグルタミン酸デヒドロゲナーゼ (GDH) により還元的にアミノ化され グルタミン酸を生成する GDH 反応で細胞毒性のあるアンモニアを除くことが出来る 逆反応で遊離するアンモニアは尿素として除去される ( 尿素サイクル ) グルタミン酸はアミノトランスフェラーゼ ( トランスアミナーゼ ) によるアミノ転移によっても合成される アミノ基が α ーケトグルタル酸に転移して α ーケト酸とグルタミン酸を生じる アミノトランスフェラーゼ グルタミンはグルタミンシンテターゼによりグルタミン酸のアミド化で合成される

アラニン (Ala, A) アスパラギン酸 (Asp, D) ALT ( アラニンアミノトランスフェラーゼ 別名 GPT グルタミン酸ーピルビン酸トランスアミナーゼ ) アラニンアミノトランスフェラーゼ (ALT) グルタミン酸 + ピルビン酸 α- ケトグルタル酸 + アラニン AST( アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ 別名 GOT グルタミン酸ーオキサロ酢酸トランスアミナーゼ ) によりアスパラギン酸が生成される グルタミン酸 + オキサロ酢酸 α- ケトグルタル酸 + アスパラギン酸 アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ (AST) AST (GOT) や ALT (GPT) は筋細胞や肝細胞に存在し 細胞内酵素が組織障害で漏れ出すので 筋肉や肝臓の組織障害マーカーとなる アスパラギンシンテターゼによりアスパラギン酸からアスパラギン (Asn, N) が生成される. この反応では グルタミンがアミノ基を供給する

セリン (Ser, S) グリシン (Gly, G) システイン (Cys, C) 3- ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ アミノトランスフェラーゼ 脱リン酸化 セリンは解糖系の中間体である 3- ホスホグリセリン酸から生合成される グリシンはセリンからセリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼにより生合成される システインは必須アミノ酸のメチオニンと非必須アミノ酸のセリンから合成される ( ホモシステインはメチオニン分解から )

チロシン (Tyr, Y) プロリン (Pro, P) チロシン : フェニルアラニンヒドロキシラーゼがフェニルアラニンをチロシンに変換する ( フェニルアラニンの分解経路 ) プロリン : グルタミン酸を一旦リン酸化し 還元してプロリンとアルギニンの分解における共通中間体にし さらに還元してプロリンを生成

ヒドロキシプロリンとヒドロキシリシン セレノシステイン (21 番目のアミノ酸 ) ヒドロキシプロリンとヒドロキシリシンは主としてコラーゲンに存在 これらに対応する trna は存在しない プロリンとリシンがペプチド鎖に取り込まれた後 ヒドロキシル化が起こる 反応に必要なビタミン C( アスコルビン酸 ) が欠乏すると コラーゲンの安定性が低下し 歯茎から出血したり 関節が腫れたりする壊血病になる セレノシステイン (Sec, U) が存在するタンパク質が 25 種ある セレノシステインは酸化還元反応を触媒する酵素の活性部位に存在 ATP とセレン酸からセレノリン酸が生成され セレンの供与体となる ヒドロキシプロリン ヒドロキシリシン P-Ser-tRNA Sec + セレノリン酸 Sec-tRNA Sec

タンパク質分解 タンパク質とアミノ酸の窒素の異化 細胞は絶えずタンパク質をアミノ酸から合成し アミノ酸に分解する 人は毎日 体のタンパク質の 1 2% 以上を代謝回転している 過剰のアミノ酸は分解され アミノ基の窒素は尿素として排泄する タンパク分解は合成と同様に重要 ハウスキーピング酵素 ( 組織維持管理酵素 ) は半減期が長い それに対し 重要な代謝制御ポイントを占める酵素は半減期が短い PEST 配列 ( プロリン グルタミン酸 セリン トレオニン ) を含むタンパクは半減期が短い ノーベル賞 2014 年 : ユビキチン経路 2016 年 : オートファジー ( 大隅先生 )

ATP およびユビキチン依存性の分解 半減期の短い調節タンパク質や異常タンパク質 折りたたみに誤りがあるタンパク質は ATP とユビキチン (ubiquitous に由来 ) を用いて分解 ユビキチンの末端カルボキシル基が標的タンパク質のリシン残基の ε- アミノ基と非 α- ペプチド結合で結合する タンパク質はポリユビキチン化される E1: 活性化酵素 E2: 合成酵素 E3: 転移酵素 ユビキチン化されたタンパク質はプロテアソームで分解される ユビキチン E3 リガーゼに欠陥がみられる Angelman 症候群と von Hippel-Lindau 症候群

組織間のアミノ酸交換 遊離アミノ酸のうち 特にアラニンとグルタミンは筋肉から血流中に放出される アラニンは肝臓に取り込まれる グルタミンは腸と腎臓に取り込まれ 大部分はアラニンに変換される グルタミンは腎臓から排出されるアンモニア源 アラニンは主要な糖新生アミノ酸 コリ回路 ( 乳酸回路 ) の乳酸の代わりにアラニンが筋肉から肝臓に運ばれる グルコース - アラニン回路 : アラニンは肝臓に運ばれ アミノ基転移でピルビン酸に戻り 糖新生でグルコースになる ALT ( アラニンアミノトランスフェラーゼ 別名 GPT グルタミン酸ーピルビン酸トランスアミナーゼ ) 肝臓に運ばれるアミノ基はアンモニアかアスパラギン酸のアミノ基となり 尿素合成に使われる ALT ALT

α アミノ基窒素に由来するアンモニアの排出 食事タンパクや細胞内タンパクは分解されて遊離アミノ酸となる アミノ基はアンモニアに変わり 尿素分子に取り込まれる アミノ基のはずれた炭素骨格 (α- ケト酸 ) は他の化合物に分解する

α アミノ基窒素に由来するアンモニアの排出 アミノ酸代謝で排出されるアンモニアは 水生動物ではそのまま排出される 鳥類とは虫類では尿酸に 陸生脊椎動物では尿素に変換されて排出される 尿素は肝臓で尿素サイクルにより合成される 尿素は血液に分泌され 腎臓で集められて尿に排泄される

グルタミン酸 + オキサロ酢酸 α- ケトグルタル酸 + アスパラギン酸 尿素合成は以下の4 段階 (1) アミノ基転移反応 (2) グルタミン酸の酸化的脱アミノ反応 (3) アンモニア輸送 (4) 尿素回路の諸反応 尿素サイクル (1) アミノ基転移反応 (1) アミノ基転移反応は対になった α- アミノ酸と α- ケト酸を相互変換する 哺乳動物では AST (GOT) と ALT (GPT) の活性が高い アミノ基受容体としては α- ケトグルタル酸が最も広く使われ その結果 アミノ基はグルタミン酸に集中する ALT ( アラニンアミノトランスフェラーゼ 別名 GPT グルタミン酸ーピルビン酸トランスアミナーゼ ) グルタミン酸 + ピルビン酸 α- ケトグルタル酸 + アラニン AST( アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ 別名 GOT グルタミン酸ーオキサロ酢酸トランスアミナーゼ )

尿素サイクル (2&3) グルタミン酸の 酸化的脱アミノ反応とアンモニア輸送 グルタミン酸デヒドロゲナーゼ (GDH) は窒素をアンモニアとして遊離する NADPH + H + NADP + ATP や GTP は GDH によるグルタミン酸合成を促進 ADP や GDP は GDH による異化反応 ( グルタミン酸分解 ) を促進 NH 4+ + α- ケトグルタル酸 GDH グルタミン酸 つまり 運動時など エネルギー生成が不足している時 (ADP 濃度が高い時 ) は グルタミン酸の α- ケトグルタル酸への異化が促進する NADH + H + NAD + アミノ酸オキシダーゼもアミノ酸を α- ケト酸に分解し アンモニアを放出する

ミトコンドリアのグルタミナーゼ ( グルタミンシンテターゼの逆反応を触媒 ) によってもアンモニアが放出される グルタミン グルタミナーゼ 門脈周囲の肝細胞 グルタミン グルタミン酸 GDH α- ケトグルタル酸 NH + 4 NH + 4 NH 4 + 尿素 尿素 尿素回路 肝静脈周囲の肝細胞 NH 4 + グルタミン NH 4 + NH 4 + α- ケトグルタル酸 GDH グルタミン酸 グルタミン グルタミンシンテターゼ 血液

尿素サイクル (4) 尿素回路の諸反応 尿素サイクル 5 反応のうち 2 反応はミトコンドリアで 3 反応はサイトゾルで起こる 尿素の N 原子はアンモニアとアスパラギン酸に由来し C 原子は HCO 3- (CO 2 ) に由来する アスパラギン酸はグルタミン酸のアミノ基を引き継いでいる ミトコンドリア

尿素サイクルの各酵素 カルバモイルリン酸シンテターゼ I ミトコンドリアに存在 CO 2 アンモニア 2ATP を縮合してカルバモイルリン酸を生成 尿素回路の律速酵素で その活性は N- アセチルグルタミン酸によってアロステリックに調節される アミノ酸が分解されるとグルタミン酸 次いで N- アセチルグルタミン酸が増える その結果 この酵素が活性化されて尿素回路が活発になる N- アセチルグルタミン酸は N- アセチルグルタミン酸シンターゼ (NAGS) によってグルタミン酸とアセチル CoA から生成され N- アセチルグルタミン酸ヒドラターゼにより加水分解される オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ ミトコンドリアに存在 カルバモイルリン酸のカルバモイル基をオルニチンに転移してシトルリンと正リン酸を生成 オルニチンのミトコンドリア内への移入とシトルリンのミトコンドリア外への移出には ミトコンドリア内膜の輸送系が関与

尿素サイクルの各酵素 アルギニノコハク酸シンテターゼ アスパラギン酸のアミノ基を介してアスパラギン酸とシトルリンを結合する アスパラギン酸から尿素の第 2 の窒素が供給される シンターゼ : ATP を必要としないシンテターゼ : ATP を必要とする アルギニノコハク酸リアーゼ アルギニノコハク酸が切断され アスパラギン酸の骨格部分がフマル酸として遊離し アルギニンが生成される フマル酸 -> リンゴ酸 -> オキサロ酢酸と反応が進行し AST( アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ ) によってグルタミン酸のアミノ基がオキサロ酢酸に移され アスパラギン酸となる

尿素サイクルの各酵素 アルギナーゼ アルギニンの加水分解で尿素とオルニチンが生成される オルニチンはミトコンドリアに入り 再び尿素回路に入る

尿素サイクル異常症 尿素サイクルを構成する酵素が欠損すると アンモニアが蓄積して高アンモニア血症による中枢神経症状が出現する 1 から 4 の欠損症では尿素の前駆体 おもにアンモニアが蓄積する 5 ではアルギニンとして尿中に排泄されるので 高アンモニア血症にはならない 2 1 3 1 カルバモイルリン酸シンテターゼ I (CPS1) 欠損症 2 オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ ( オルニチントランスカルバミラーゼ OTC) 欠損症 3 アルギニノコハク酸シンテターゼ欠損症 >シトルリン血症 4 アルギニノコハク酸リアーゼ欠損症 >アルギニノコハク酸尿症 5 アルギナーゼ欠損症 >アルギニン血症 6 N-アセチルグルタミン酸シンターゼ (NAGS) 欠損症 5 4