乳酸について真剣に考える 2015/01/20 慈恵医大 ICU 勉強会 阿部建彦

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乳酸について真剣に考える 2015/01/20 慈恵医大 ICU 勉強会 阿部建彦

CONTENTS 1 乳酸のいろいろ 2 乳酸は良くない? 3 乳酸上昇の仕組み 4 治療目標としての乳酸 5 全体のまとめ

1 乳酸のいろいろ 歴史から代謝まで

歴史 1780 年スウェーデンの化学者 Karl Scheele が発見 Lactate in sour milk 1850 年ドイツの化学者 Joseph Scherer が敗血症で死亡した若い女性の血液から検出 1856 年 Louis Pasteur が乳酸菌の分離に成功 1858 年 Carl Folwarczny は生きているヒトの血液から乳酸の存在を証明した

化学式 C 6 H 12 O 6 グルコース CH 3 CH(OH)COOH 乳酸 CH 3 C(=O)COOH ピルビン酸

解糖系 グルコース 2ADP 2ATP NAD + NADH < 好気性代謝 > LDH PDH 乳酸ピルビン酸アセチル CoA NAD + ADP NADH ATP TCA サイクル電子伝達系 O2 36ATP < 嫌気性代謝 > H 2 O+CO 2 2007/8/7 ICU 勉強会 乳酸 参考

産生 / 代謝 産生 グルコースの代謝で産生される 細胞質で行われるため すべての細胞で可能 代謝 Cori cycle: 糖新生の一種 乳酸からグルコースを産生肝臓や腎臓などで行われる酸化 : ピルビン酸を経てTCA cycleに入る ( 電子伝達系 ) 安静時は50% 運動時は75-80% が酸化される

産生 / 代謝 産生 代謝 20mmol/kg/day (0.9-1.0mmol/kg/hr) 体重 60kgだと 1 日あたり 1200mmol 産生 Ciba Found Symp 1982, 87:214 234. クリアランス :800-1800ml/min 全身の血液は3-4 分で浄化される血中濃度 1-2mmol/Lだと 60-120mmol/hrで除去 Crit Care Med 1997, 25:58 62.

< 細胞質 > < ミトコンドリア > MCT : MonoCarboxylate Transport proteins CD147:a type of mloc (mitochondrial Lactate Oxidadon Complex) CriDcal Care 2014, 18:503

2 乳酸は良くない? 乳酸値と予後の関係

乳酸上昇は予後予測に使用されてきた 1964 年 Broder and Weil 鑑別不能のショック患者で乳酸 >4mmol/L で予後不良 1983 年 Vincent 17 人のショック患者において 生存者は治療開始後の 1 時間で Lactate が 10% 減少 Science 1964;143(3613):1457-59 Crit Care Med 1983;11(6):449-451

Minerva Anestesiol 2011;77:1063-71 ü 後ろ向き観察研究 ü アメリカの大学病院 2 施設 ü 非外傷成人患者の院外心停止 ROSC ü 148 症例 ü Primary outcome: 院内死亡率

ROSC Lactate <5 mmol/l 39% Lactate 5-10 mmol/l 67% Lactate >10 mmol/l 92%

Serum Lactate as a Predictor of Mortality in Emergency Department Pa?ents with Infec?on Ann Emerg Med 2005, 45:524 528. ü 後ろ向きコホート研究 ü 年間 5 万人が受診する大学病院の救急センター ü 感染症の診断で入院した 18 歳以上の成人 ü 2003/7/24-2004/3/24 1278 人が対象 ü 28 日の院内死亡率と 3 日以内の死亡

Sepsis 1278 ALL 105(8.2%):Death during hospitalizadon 55(4.3%):Death occurring in the first 3 days Lactate 0-2.5 mmol/l:877 43(4.9%) 2.5-4 mmol/l:267 24(9.0%) > 4 mmol/l : 134 38(28.4%)

CriDcal Care 2011;15:R242 ü 後ろ向き観察研究 ü 4 つのオーストラリアの大学病院 ü 5041 人の ICU 入室患者 ü 入室後 24 時間の乳酸値の推移と死亡率 (ICU/ 院内 ) の関係 ü 乳酸値

Cridcally Ill Padents

乳酸値の上昇 (LAC TW24 ) は院内死亡率 /ICU 死亡率を上げる 1.37 (1.29-1.45)/1.43 (1.35-1.52) 乳酸値の上昇 (LAC Δ24 ) は院内死亡率 /ICU 死亡率を上げる 1.15 (1.10-1.20)/1.18 (1.13-1.24)

2 乳酸は良くない? まとめ Ø 乳酸値が上昇するにつれて 死亡率は上昇する ( 特に ROSC 敗血症 ICU 患者において )

3 乳酸上昇の仕組み (1) 嫌気性代謝の亢進 組織低酸素? (2) 解糖系の亢進 ( 好気性条件下 ) (3) ミトコンドリア機能異常 (4) PDH 機能不全 (5) アドレナリン刺激 (6) 薬剤性 (7) クリアランスの低下

乳酸上昇の仕組み (1) 嫌気性代謝の亢進 組織低酸素?

乳酸上昇の仕組み (1) 解糖系 グルコース 2ADP 2ATP NAD + NADH < 好気性代謝 > LDH PDH 乳酸ピルビン酸アセチル CoA NAD + ADP NADH ATP TCA サイクル電子伝達系 O2 36ATP < 嫌気性代謝 > H 2 O+CO 2

乳酸上昇の仕組み (1) 解糖系 グルコース 2ADP 2ATP NAD + NADH < 好気性代謝 > LDH PDH 乳酸ピルビン酸アセチル CoA NAD + ADP NADH ATP TCA サイクル電子伝達系 O2 36ATP < 嫌気性代謝 > H 2 O+CO 2

Iden?fica?on of the Cri?cal Oxygen Delivery for Anaerobic Metabolism in Cri?cally III Sep?c and Nonsep?c Humans JAMA. 1993;270:1724-1730 ü コホート研究 ü 大学病院の Medical / Surgical の 2 つの ICU ü Sepdc / Non- sepdc の 9 人ずつ ü 治療継続を希望していない患者 ü 観察期間は 214 分 (60-335 分 ) ü O2 消費 O2 供給 O2 利用率 血清乳酸値を測定

Sepsis Nonsepsis

Iden?fica?on of the Cri?cal Oxygen Delivery for Anaerobic Metabolism in Cri?cally III Sep?c and Nonsep?c Humans JAMA. 1993;270:1724-1730 Sepsis と Non- sepsis では O2 代謝に差はなし Cridcal O2 delivery より下がると乳酸値も上昇する Lactate 上昇は Cridcal O2 delivery に影響を与えない 乳酸上昇は 組織低酸素と関係なく 他の要因が関与している

Skeletal muscle par?al pressure of oxygen in pa?ents with sepsis. Crit Care Med 1994, 22:640 650. 上腕二頭筋の酸素濃度を直接計測 敗血症 (39) 限局性の感染症 (16) 心原性ショック (15) 敗血症群で PO2 50mmHg と高い状態であった 血清乳酸値との相関はない 敗血症で循環不全に陥る患者でも 筋内 PO2 は 30mmHg 以下にならない ( 正常の筋内 PO2 は 15-30mmHg)

Cridcal Care 2014, 18:503 組織低酸素が乳酸上昇の原因と考えるのは やや強引な印象

乳酸上昇の仕組み (2) 解糖系の亢進 ( 好気性条件下 )

乳酸上昇の仕組み (2) 解糖系 グルコース 2ADP 2ATP NAD + NADH < 好気性代謝 > LDH PDH 乳酸ピルビン酸アセチル CoA NAD + ADP NADH ATP TCA サイクル電子伝達系 O2 36ATP < 嫌気性代謝 > H 2 O+CO 2

乳酸上昇の仕組み (2) グルコース 2ADP 2ATP 解糖系 NAD + NADH LDH PDH 乳酸ピルビン酸アセチル CoA < 好気性代謝 > NAD + ADP NADH ATP TCA サイクル電子伝達系 O2 36ATP < 嫌気性代謝 > H 2 O+CO 2

ü 酸化的リン酸化 (TCA cycle+ 電子伝達系 ) は酵素が脆弱のため 大量の ATP が必要な場合は律速段階になってしまう 電子伝達系は大量に作れるが遅い ü 解糖系により 迅速なエネルギー供給が可能 ü 乳酸からピルビン酸を経て 酸化的リン酸化に入ることも可能 ü 骨格筋では 乳酸を産生するとともに利用もする ü 大量の ATP が必要な状態で行われる : 敗血症 癌細胞 過剰な運動など

ü 酸化的リン酸化 (TCA cycle+ 電子伝達系 ) は酵素が脆弱のため 大量の ATP が必要な場合は律速段階になってしまう 電子伝達系は大量に作れるが遅い ü 解糖系により 迅速なエネルギー供給が可能 ü 乳酸からピルビン酸を経て 酸化的リン酸化に入ることも可能 ü 骨格筋では 乳酸を産生するとともに利用もする ü 大量の ATP が必要な状態で行われる : 敗血症 癌細胞 過剰な運動など

< 乳酸をエネルギー源として利用する > 乳酸シャトル Intra- celler: 細胞質 ミトコンドリア Inter- celler: 筋肉 心臓 脳 肝臓 腎臓など

乳酸シャトル l 糖新生 Annals of Intensive Care 2013, 3:12

ü 心臓や脳で乳酸は酸化基質として利用 ü ストレス時は心臓での 60% は乳酸を利用し ピルビン酸供給としてグルコースを上回る Med Sci Sports Exerc 1991;23:920 924. ü 急性心不全において乳酸の投与で CO が上昇する CriDcal Care 2014, 18:R48 ü 外傷性脳損傷で乳酸の投与がグルタミン酸 ICPを減少させる Intensive Care Med 2014;40:412 421

乳酸上昇の仕組み (3) ミトコンドリア機能異常 乳酸上昇の仕組み (4) PDH 機能不全

乳酸上昇の仕組み (3) 解糖系 グルコース 2ADP 2ATP NAD + NADH ミトコンドリア < 好気性代謝 > LDH PDH 乳酸ピルビン酸アセチル CoA NAD + ADP NADH ATP TCA サイクル電子伝達系 O2 36ATP < 嫌気性代謝 > H 2 O+CO 2

乳酸上昇の仕組み (3) 解糖系 グルコース 2ADP 2ATP NAD + NADH ミトコンドリア < 好気性代謝 > LDH PDH 乳酸ピルビン酸アセチル CoA NAD + ADP NADH ATP TCA サイクル電子伝達系 O2 36ATP < 嫌気性代謝 > H 2 O+CO 2

乳酸上昇の仕組み (4) 解糖系 グルコース 2ADP 2ATP NAD + NADH < 好気性代謝 > LDH PDH 乳酸ピルビン酸アセチル CoA NAD + ADP NADH ATP TCA サイクル電子伝達系 O2 36ATP < 嫌気性代謝 > H 2 O+CO 2

乳酸上昇の仕組み (4) 解糖系 グルコース 2ADP 2ATP NAD + NADH < 好気性代謝 > LDH PDH 乳酸ピルビン酸アセチル CoA NAD + ADP NADH ATP TCA サイクル電子伝達系 O2 36ATP < 嫌気性代謝 > H 2 O+CO 2

< 敗血症において > ミトコンドリアの機能異常や PDH 機能不全が示唆されている ミトコンドリア ミトコンドリア内の ATP 濃度は 敗血症と正常では変化がない ミトコンドリア異常は実証できていない PDH 機能不全 エンドトキシンにより PDH 機能不全になるとされる 敗血症ではむしろ PDH 活性が上がり 酸化反応が進む 現在のところ 明確な根拠はない

乳酸上昇の仕組み (5) アドレナリン刺激

乳酸上昇の仕組み (5) 解糖系 グルコース 2ADP 2ATP NAD + NADH < 好気性代謝 > LDH PDH 乳酸ピルビン酸アセチル CoA NAD + ADP NADH ATP TCA サイクル電子伝達系 O2 36ATP < 嫌気性代謝 > H 2 O+CO 2

乳酸上昇の仕組み (5) グルコース 2ADP 2ATP 解糖系 NAD + NADH LDH PDH 乳酸ピルビン酸アセチル CoA < 好気性代謝 > NAD + ADP NADH ATP TCA サイクル電子伝達系 O2 36ATP < 嫌気性代謝 > H 2 O+CO 2

Na/K- ATPase pump を活性化する グリコーゲンの分解を促進する CriDcal Care 2014, 18:503

乳酸上昇の仕組み (6) 薬剤性

Mayo Clin Proc. 2013;88(10):1127 1140 メトホルミン プロポフォール β2 刺激吸入薬 リネゾリド アドレナリン は注意が必要

乳酸上昇の仕組み (7) クリアランスの低下

クリアランス :800-1800ml/min 全身の血液は 3-4 分で浄化される 血中濃度 1-2mmol/L だと 60-120mmol/hr で除去 肝不全によるクリアランスの低下で乳酸上昇 急性肝不全で著明 肝硬変だと 予備能が低いの上昇しやすい

3 乳酸上昇の仕組み まとめ Ø 乳酸上昇 : 産生の増加 or/and 代謝の低下 Ø 好気性代謝でも嫌気性代謝でも 乳酸は上昇する Ø 大量の ATP を必要とするときに乳酸は産生され 乳酸をエネルギー基質として利用する

4 治療目標としての乳酸 RCT を中心に

JAMA. 2010;303(8):739-746 ü 対象 :17 歳以上の重症敗血症患者 (150 vs. 150) 低還流 >20ml/kg volume challenge しても sbp<90mmhg ScvO2 70% もしくは Lactate >36mg/dl (4mmol/L) ScvO2<70% かつ Hct<30% RBC を輸血 ScvO2<70% だが Hct 30% dobutamine を滴定 Lactate clearance 10% or Lactate 18mg/dL(2mmol/L) Lactate clearance<10% かつ Hct<30% RBC を輸血 Lactate clearance<10% だが Hct 30% dobutamine を滴定

Lac と ScvO2 では両群に差はなし DOB/RBC の使用には両群で差はなし 7-9%/21-23%

Prognos?c Value and Agreement of Achieving Lactate Clearance or Central Venous Oxygen Satura?on Goals During Early Sepsis Resuscita?on Acad Emerg Med 2012;19(3):252-8 ü 対象 :2010 JAMA と同様 ü Lactate か ScvO2 のどちらか一方を指標とした 203 人 ScvO2(+)LC(- ) 9 of 22 (41%) ScvO2(- )LC(+) 2 of 25 (8%) propordon difference = 33%; 95% CI = 9% to 55%

CHEST 2013;143(6):1548 53 ü 対象 :2010 JAMA と同様 ü 救急室での最初の 6 時間で Lactate >2mmol/L の患者 187 人 Lactate normalizadon(<2mmol/l) Lactate clearance 50% 予後予測因子として強い関連性が認められた (LC10% は ScvO2 と同等 )

ü 後ろ向きコホート研究 ü サウジアラビアの大学病院の Medical/Surgical ICU ü 10791(Total) 4538(<24hr, Lactate) 2157(0-2mmol/L) ü Youden index Best cutoff threshold between survivors and nonsurvivors ü Primary outcome: hospital mortality CriDcal Care 2013, 17:R197

術後患者 22.6% 敗血症 22.5% ICU 滞在日数 9.2±10.8 日 ICU 死亡率 14.1%

< Youden index > Highest 1.35mmol/L

Am J Respir Crit Care Med 2010;182:752 761 ü 対象 : 入室時の Lactate >3mmol/L の 18 歳以上の患者 肝不全 (PT- INR>1.5 脳症 ) 肝切後 てんかんは除く

敗血症 : 約 40% 術後患者 : 約 45%

両群で Lactate 値に差はなし! Lactate 群の方が 開始 8 時間の輸液量 血管拡張薬の使用が多い hyperlactatemia does not sufficiently reflect dssue hypoperfusion our study underscored the funcdon of lactate as a warning signal.

ü 乳酸値は差がない Lactate 群の治療プロトコール自体にエビデンスがない ü Lactate 群の 2 時間ごとの強制的な介入が予後を改善 ü Lactate 群は血管拡張薬の使用が多い ü 血管拡張薬が組織循環を改善? 乳酸値は組織低還流のマーカーではない 血管拡張薬を投与する指標は? ü 組織還流を血圧で評価? 血管拡張薬の効果は不明 ü そもそも EGDT を中心としたプロトコールでいいのか? ー Editorials ー 乳酸モニタリングには目覚まし時計が必要!

Anaerobic metabolism associated with trauma?c hemorrhagic shock monitored by microdialysis of muscle?ssue is dependent on the levels of hemoglobin and central venous oxygen satura?on Scand J Trauma Resusc Emerg Med. 2014 Feb 5;22:11 ü 外傷性出血性ショック 1L 以上の出血が予想される 36 人 ü 三角筋に Microdialysis を挿入 組織の乳酸 ピルビン酸 グリセロール グルコースヘモグロビン 血清乳酸 ScvO2 を測定 ü L/P ( 乳酸 / ピルビン酸の比 ) とヘモグロビン ScvO2 の関係を比較 ü 血清乳酸値は産生 / 代謝を反映した値に対して 組織乳酸値は産生だけを反映している

ü L/P は Hb 変化の 13 時間前に上昇 輸血後 7-10 時間後に低下する ScvO2 低下の 10-11 時間前に上昇 10 時間以上後に正常化する ü Tissue L/P は組織低還流の指標として有用 ü 敗血症では L/P は変化せず 虚血と非虚血の鑑別に使える SHOCK 2011;35(4):343-348

4 治療目標としての乳酸 まとめ Ø 潜在性ショックの可能性がある Ø 原因検索 ( ショック 感染症 出血 薬剤 肝機能など ) Ø 高い乳酸に対して対応していると 死亡率は改善する Ø 乳酸の治療ターゲットは >2-4mmo/L Ø 乳酸値は臨床経過と合わせて判断する

5 全体のまとめ Ø 乳酸は嫌気性代謝 でも 上昇する ( 好気条件下でも上昇 ) Ø 乳酸が高いと予後は良くない Ø 乳酸自体が悪い物質なのではなく 悪い状態の結果 as a warning signal. Ø 組織低還流を示すマーカーとは限らないし だから補液や強心薬や血管拡張薬で乳酸値は下がらない Ø Tissue L/P は組織低還流を予測できるかもしれない