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研究課題 : EGFR 陽性 KRAS 野生型の進行 再発大腸癌症例に対する一次治療 FOLFIRI+Cetuximab (q2w) 併用療法および二次治療 mfolfox6/xelox+bevacizumab 併用療法の検討 に関する計画書 研究実施責任者埼玉医科大学総合医療センター消化管 一般外科石橋敬一郎 1. 背景, 意義, 目的 背景 意義 進行 再発大腸癌症例に対する化学療法に対する FOLFOX 療法,XELOX 療法,FOLFIRI 療法は基軸レジメンとして確立されている. 近年, これらに加えて, 抗血管内皮細胞増殖因子 (VEGF) ヒト化モノクローナル抗体である Bevacizumab や抗ヒト細胞増殖因子受容体 (EGFR) モノクローナル抗体の Cetuximab などの分子標的薬剤が臨床導入され, 大腸癌の化学療法は新たな時代を向かえた. 一次治療 FOLFIRI 療法への Cetuximab 併用効果を確認する為に実施された CRYSTAL 試験では無増悪生存期間の有意な延長は確認されたものの, 当初生存期間への延長は確認されなかった. しかし,KRAS 層別の報告として 2011 年 5 月に CRYSTAL 試験の追跡結果が発表され,KRAS 野生型では全生存期間の延長が統計学的に有意であるとこが確認され (23.5M vs 20.0M p=0.00094), Cetuximab は現在大腸癌で標準治療とされている FOLFIRI 療法レジメンにおいて全生存期間の上乗せ効果が確認された初めての分子標的薬になった (1). このように,Cetuximab は一次治療における FOLFIRI 療法との併用で全生存期間を延長することのできた唯一の分子標的治療薬である (1) が, 後治療まで含めて前向きに検討をされた試験はこれまでに報告されていない. 一方,Bevacizumab は,ECOG (Eastern Cooperative Oncology Group) の進行 再発大腸癌患者を対象とした無作為化比較試験 (E3200) においてイリノテカンおよびフッ化ピリミジンによる治療歴を有し, オキサリプラチンまたは Bevacizumab による治療歴のない患者に対して, 二次治療としての FOLFOX 療法との併用で有意に全生存期間を延長すると報告されている (2). また, 海外から転移性結腸 直腸癌の一次治療において FOLFOX 療法と Capecitabine を用いる XELOX (CapeOX) 療法を比較した臨床第 Ⅲ 相試験の結果が報告され,FOLFOX 療法に対する XELOX (CapeOX) 療法の治療効果の非劣性が確認され, 簡便性の点から有用性を示唆する報告 (3) より,FOLFOX 療法同様 XELOX 療法も日常臨床にて使用されるに至っている. これらの報告から,KRAS 野生型の患者に対して, 一次治療に Cetuximab を FOLFIRI 療法との併用で選択し, 二次治療に Bevacizumab を FOLFOX 療法または XELOX 療法との併用で選択をすることが, 全生存期間を最も延長できるレジメンになる可能性があると考えられるため本試験を企画した.Cetuximab は FOLFIRI 療法,FOLFOX 療法, イリノテカンとの併用において主に毎週投与での検討がされてきたが, 患者の来院回数などを考慮した隔週スケジュールも検討されている.500 mg/ m2の隔週投与は, 毎週投与と比較して治療効果や副作用において大きく変わらないことが報告 (4) され,NCCN ガイドラインにも記載されている. 隔週投与 1

による患者へのメリットも期待されていることから, 今回の試験における一次治療では. Cetuximab の投与を隔週で行うこととした. 本試験を実施することで, 想定した仮説どおりの無増悪生存期間が得られ, 付随する評価項目である安全性や全生存期間, 奏効率, 進行後生存期間も海外での臨床試験を同等あるいは上回る成績が得られれば, 一次治療と二次治療を総合的に考察できるため, 本邦における実臨床での一次治療および二次治療の選択肢として汎用される. 今後, 切除不能進行 再発大腸癌治療の治療選択における, 医師 コメディカル, 患者に対する本邦での貴重なエビデンスとなりうる. 試験の目的 EGFR 陽性 KRAS 野生型の切除不能進行 再発大腸癌症例に対して, 一次治療 FOLFIRI+Cetuximab (q2w) 併用療法を行い, 一次治療開始後に病勢の進行 (PD) が見られた症例, または不耐に対して二次治療 mfolfox6/xelox+bevacizumab 併用療法を行い, それぞれの治療効果および安全性を評価する. 2. 方法 (1) 対象埼玉医科大学総合医療センター消化管 一般外科で EGFR 陽性 KRAS 野生型の切除不能進行 再発大腸癌患者のうち, 本研究についての同意が得られた症例とする. 詳細な適格基準および除外基準は実施計画書 ( 以下, 計画書 )( 添付資料 3)p.19-20 参照 (2) 登録試験担当医は対象患者が適格基準をすべて満たし, 除外基準のいずれにも該当しないことを確認し, 本研究の対象症例の同意を得た後, 研究事務局に 症例登録票 ( 計画書参照 ) に必要事項をすべて記入の上 FAX する ( 中央登録方式 ). 症例登録票にある患者イニシャルは黒塗りにし, 使用しない. カルテ番号に関して,FAX 時には記入せず, 症例登録後当科の控えとして使用する. 当院での管理は, 匿名化番号対照表 ( 添付資料 4) を用い, 匿名化を行う. 匿名化は本研究に直接関与しない熊谷准教授が行い, データマネージャーの資格を有する医局秘書 ( 小山覚巳 ) が管理を行う. 適格性, 症例番号が試験担当医宛 FAX で返信される. これらの番号は各種記録用紙に記入し, 関係書類は保管しておく. 登録に関する詳細は計画書 p.20 参照. (3) 方法登録後に一次治療 FOLFIRI+Cetuximab (q2w) 併用療法を行い, 一次治療開始後に病勢の進行 (PD ) が見られた症例, または不耐の症例に対して二次治療 mfolfox6/xelox+bevacizumab 併用療法を行う. 2

FOLFIRI+Cetuximab 治療スケジュール第 1 週第 2 週第 3 週第 4 週第 5 週 Cetuximab CPT-11 l-lv 5-FU/bolus 5-FU/infusional 500mg/m 2 /bi-week 150mg/m 2 /bi-week 200mg/m 2 /bi-week 400mg/m 2 /bi-week 2,400mg/m 2 /bi-week mfolfox6+bevacizumab 治療スケジュール第 1 週第 2 週第 3 週第 4 週第 5 週 Bevacizumab L-OHP l-lv 5-FU/bolus 5-FU/infusional 5mg/kg/bi-week 85mg/m 2 /bi-week 200mg/m 2 /bi-week 400mg/m 2 /bi-week 2,400mg/m 2 /bi-week (day 1-3) XELOX+Bevacizumab 治療スケジュール第 1 週第 2 週第 3 週第 4 週第 5 週第 6 週 Bevacizumab L-OHP 7.5mg/kg/tri-week 130mg/m 2 /tri-week Capecitabine 2000mg/m 2 /day/ 分 2 (day 1-15) < 評価項目, データ収集 解析 > 一次治療の無増悪生存期間 (PFS1) と二次治療の無増悪生存期間 (PFS2) の合計期間 (PFS1+PFS2) を主要評価項目とする. 副次的評価項目は以下のとおりである.(1) 一次治療の無増悪生存期間 (PFS1)(2) 二次治療の無増悪生存期間 (PFS2)(3) 一次治療の奏効率 (RR1)(4) 二次治療の奏効率 (RR2)(5) 一次治療開始後 8 週時点での腫瘍縮小率 (6) 全生存期間 (OS)(7) 進行後生存期間 (SBP)(8) 安全性. 安全性の解析に血液検査を行うが, 通常の診察の一環として行い, その検体は中央検査室で測定し, そのまま検体を通常通り破棄する. 3. 試験期間 症例の集積期間は倫理委員会承認後から 2014 年 9 月までと計画されている. 観察期間は最終症例登録後 3 年間とする. 3

4. 予定症例数集積目標症例数は全国 53 例である. 埼玉医科大学総合医療センター消化管 一般外科では倫理委員会の承認後,10 例の集積 参加を予定している. 5. 患者選択基準 除外基準, 研究に参加されなかった場合の治療について << 適格基準 >> 1) 病理組織学的に結腸癌あるいは直腸癌であることが確認された症例 2) 原発巣または転移巣組織において免疫組織化学的染色で EGFR 陽性が確認されている症例 3) 原発巣または転移巣組織において KRAS 野生型が確認されている症例 4) 進行 再発例であり化学療法歴のない症例 1 手術が非治癒切除で終了すれば, その時点から進行 再発症例として扱う 2 治癒切除が可能であった症例の手術後の化学療法は術後補助化学療法と定義する 3オキサリプラチンまたはフッ化ピリミジン系抗癌剤を含む術後補助化学療法が施行された場合は, 投与終了後 24 週以降の再発は適格とする 4 術前補助化学療法の既往がある患者は本試験には不適格とする 5) 年齢 :20 歳以上の症例 6) PS:0~1 (ECOG performance status score) の症例 7) 測定可能な標的病変を有する症例 (RECIST v1.1 に準拠 :CT で 20mm 又はヘリカル CT で 10mm, 短径 15mm 以上のリンパ節病変 ) 8) 経口摂取が可能な患者 9) 主要臓器 ( 骨髄, 肝, 腎など ) の機能が十分に保持されている症例 1 白血球数 : 3,000/mm 3, 好中球数 : 1,500/mm 3 2 血小板数 : 100,000/mm 3 3 ヘモグロビン : 9.0g/dl 4 AST (GOT), ALT (GPT), ALP: 施設正常値上限 (ULN) の 2 倍 ( 肝転移を有する症例は,5 倍とする ) 5 血清総ビリルビン : 施設正常値上限 (ULN) の 1.5 倍 6 血清クレアチニン : 施設正常値上限 (ULN) の 1.5 倍 10) プロトコール試験開始日より 3 ヶ月以上の生存が期待される症例 11) 患者本人より文書による同意が得られた症例 << 除外基準 >> 1) 同時性重複がんまたは無病期間が 5 年以内の異時性重複がんを有する症例 ( ただし局所治療で治癒が見込める早期がんは除外とはしない ) 2) 症状を有する脳転移症例 3) 重篤な骨髄抑制を有する症例 4

4) 下痢 ( 水様便 ) のある症例 5) 重篤な感染症を有する症例 6) 間質性肺炎あるいはその既往症および肺線維症を有する症例 7) 重篤な心疾患またはその既往歴を有する症例 8) 機能障害を伴う重度の感覚異常または知覚不全のある症例 9) 多量の癌性体腔液 ( 胸水, 腹水, 心嚢水 ) を有する症例 10) 重篤な併存疾患 ( 腎不全, 肝不全, 高血圧など ) を有する症例 11) 腸管麻痺, 腸閉塞を有する症例 12) 黄疸を有する症例 13) アタザナビル硫酸塩を投与中の症例 14) 避妊する意思のない男性. または, 妊婦, 授乳婦, 妊娠検査陽性の女性又は避妊する意思のない女性 15) 重篤な過敏症の既往を有する症例 16) Cetuximab,Bevacizumab, フッ化ピリミジン製剤, イリノテカン, オキサリプラチンまたは他の白金を含む薬剤に対し過敏症の既往歴がある症例 17) これまでに Cetuximab,Bevacizumab, イリノテカンまたはオキサリプラチンの投与を行ったことがある症例その他, 担当医が本プロトコール治療の対象に不適当と判断した症例 << 研究に参加されなかった場合の治療について >> 臨床試験への参加を希望されない場合は, 他の抗がん剤治療があります. 6. 期待される利益及び不利益計画書 (p.31-) に記載された有害事象の発現が想定される. しかしながら, これは実地医療と同様の程度で起こりうることであり, 試験に参加したという理由で変わるものではない. 逆に, 計画書 (p.25, 27- ) に記載されたとおり, 減量, 中止規準を設け, 試験グループ内での徹底を行い, 実地医療よりも頻回なモニターを行うことにより, 有害事象の発現リスクを下げること, 有害事象の重篤化を防ぐことが可能であると考えられる. 7. 有害事象への対応この臨床試験は, これまでの報告に基づいて科学的に計画され慎重に行われますが, もし, 臨床試験の期間中あるいは終了時に, 被験者に副作用などの健康被害が生じた場合には担当医師が適切な診療と治療を行います. 本試験は既に市販されている薬をその適応範囲内で使用して行うので, 健康被害の治療も通常の診療と同様に被験者の健康保険を用いて行う. その他の金銭による補償は行なわない. 5

8. 費用についてこの臨床試験で使用する薬や臨床試験参加中の治療や検査などはすべて保険で認められている. この試験に参加している期間中の, 治療に必要な薬代, 検査の費用は被験者の加入している医療保険 ( 国民健康保険など ) が用いられ, 通常の治療と同様の自己負担分で行う. 9. 個人情報の取扱い登録に先立って, 対象者に対し説明者 ( 研究実施責任者およびその他の消化管 一般外科の共同研究者 ) が書類を用い, 外来あるいは病棟のプライバシーの保たれた場所で説明する. 本研究の目的及び方法, 予想される利益と不利益, 研究的側面の説明, 個人情報の保護, 本研究に同意しなくても不利益を受けないこと, 同意した場合でも随時撤回できることなどについて説明し, 承諾を得た場合, 本人より署名を得る. 登録患者の氏名は参加施設から研究事務局へ知らされることはない. 登録患者の同定や照会は, 登録時に発行される登録番号を用いて行われる. 患者登録にあたっては, 識別番号を設定し, 連結匿名化を行い, 患者イニシャル, カルテ番号等は施設外に開示しないこととする. 第三者が当該施設の職員やデータベースへの不正アクセスを介さずに直接患者を識別できる情報が, 登録センターのデータベースに登録されることはない. 以上より, 研究事務局では最小限の識別情報として登録番号を用いるが, 参加施設のすべての研究者は, 個人情報保護のため最大限の努力を払う. 施設, 研究事務局間の患者データのやりとりは, 紙, 電子媒体のいかんにかかわらず, 症例登録は FAX を用い, それ以外は FAX, 郵送あるいは直接手渡しすることを原則とする. 10. 利益相反本研究はNPO 群馬がんアカデミーの研究資金を用いて実施するもので, 金銭的な利益やそれ以外の個人的利益のために専門的な判断を曲げるようなことはない. また企業との雇用関係ならび親族, 師弟関係等の個人的な関係もなく, 利益相反はない. 11. 知的財産権 知的財産権は群馬大学大学院病態総合外科学臨床研究 Group に属す. 12. 研究代表者, 当センター研究責任者 実施者 < 研究代表者 > 群馬大学大学院病態総合外科学教授桑野博行 < 研究実施責任者 > 埼玉医科大学総合医療センター消化管 一般外科准教授石橋敬一郎 < 研究実施者 > 埼玉医科大学総合医療センター消化管 一般外科教授石田秀行埼玉医科大学総合医療センター消化管 一般外科教授持木彫人埼玉医科大学総合医療センター消化管 一般外科講師馬場裕之 6

埼玉医科大学総合医療センター消化管 一般外科講師福地稔埼玉医科大学総合医療センター消化管 一般外科助教傍島潤埼玉医科大学総合医療センター消化管 一般外科助教松澤岳晃埼玉医科大学総合医療センター消化管 一般外科助教幡野哲埼玉医科大学総合医療センター消化管 一般外科助教鈴木典秀埼玉医科大学総合医療センター消化管 一般外科助教田島雄介埼玉医科大学総合医療センター消化管 一般外科助教近範泰 < 質問等の連絡先 > 消化管 一般外科外来 :049-228-3618 担当者 : 石橋敬一郎 参考文献 1) E. Van Cutsem, et al: Cetuximab Plus Irinotecan, Fluorouracil, and Leucovorin As First-Line Treatment for Metastatic Colorectal Cancer: Updated Analysis of Overall Survival According to Tumor KRAS and BRAF Mutation Status. J Clin Oncol. 29(15):2011-2019,2011 2) Giantonio BJ, et al. Bevacizumab in Combination With Oxaliplatin,Fluorouracil, and Leucovorin (FOLFOX4) for Previously Treated Metastatic Colorectal Cancer: Results From the Eastern Cooperative Oncology Group Study E3200. J Clin Oncol 25(12):1539-1544,2007 3) Cassidy J, et al. Randomized phase III study of capecitabine plus oxaliplatin compared with fluorouracil/folinic acid plus oxaliplatin as first-line therapy for metastatic colorectal cancer. J Clin Oncol 26(12):2006-2012, 2008 4) Ramanathan RK. Alternative dosing schedules for cetuximab: a role for biweekly administration? Clin Colorectal Cancer. 7(6):364-368, 2008 7