平成 27 年 11 月 10 日 第 3 回市大センター病院 薬局間地域連携ワーキング 大腸がんの化学療法 ~1st, 2nd line を中心に ~ ヨッチー 横浜市立大学附属市民総合医療センター薬剤部外来化学療法室担当薬薬連携担当川上佳那子
本日の内容 切除不能進行再発大腸がんの化学療法 大腸癌治療ガイドライン 2014 年版 模擬症例を用いた処方解析と服薬指導 mfolfox6+bevacizumab 当院における大腸がんの化学療法
大腸がんの化学療法 切除不能進行再発大腸癌に対する化学療法 術後 ( 術前 ) 補助化学療法 目的 : 再発抑制 ( 術前の腫瘍縮小 ) 治療期間 : 術前 術後合わせて原則 6 ヶ月
切除不能進行再発大腸癌に対する化学療法 大腸癌治療ガイドライン 2014 年版より抜粋 化学療法を実施しない場合 切除不能と判断された進行再発大腸癌の生存期間中央値は約 8 ヶ月 化学療法の目標は延命と症状コントロール 切除不能進行再発大腸癌に対する化学療法が奏効して切除可能となることがある 強力な治療が適応となる患者と強力な治療が適応とならない患者に分けて治療方針を選択するのが望ましい Cmab, Pmab は KRAS 野生型のみに適応される 特に一次 二次治療において Bmab や抗 EGFR 抗体などの分子標的治療薬が適応となる症例には化学療法との併用が推奨される
大腸がんの Key Drug イリノテカン 5-FU+LV (Cape, TS-1, UFT/LV) オキサリプラチン パニツムマブ ベバシズマブ セツキシマブ レゴラフェニブ ロンサーフ
切除不能大腸癌に対する化学療法のアルゴリズム 1 強力な治療が適応となる患者 < 一次治療 > FOLFOX/CapeOX+Bmab < 二次治療 > FOLFIRI+Bmab or IRIS/IRI FOLFIRI+Cmab/Pmab or IRI+Cmab/Pmab < 三次治療 > IRI+Cmab/Pmab or Cmab/Pmab regorafenib or 対症療法 < 四次治療 > regorafenib or 対症療法 (or ロンサーフ ) FOLFIRI+Bmab FOLFOX/CapeOX+Bmab IRI+Cmab/Pmab or Cmab/Pmab regorafenib or 対症療法 FOLFOX+Cmab/Pmab FOLFIRI+Bmab or IRIS/IRI regorafenib or 対症療法 FOLFIRI+Cmab/Pmab FOLFOX/XELOX+Bmab regorafenib or 対症療法 FOLFOXIRI IRI+Cmab/Pmab or Cmab/Pmab regorafenib or 対症療法 大腸癌治療ガイドライン 2014 年版
切除不能大腸癌に対する化学療法のアルゴリズム 2 強力な治療が適応とならない患者 対症療法 FL/Cape+Bmab or UFT+LV 可能なら 最適と判断されるレジメンを考慮する 対症療法 大腸癌治療ガイドライン 2014 年版
模擬症例を用いた処方解析と服薬指導 ある日 こんな処方箋を患者さんが持ってきました 市大太郎さん 60 歳消化器病センター デカドロン (0.5mg) 16 錠 1 日 2 回朝 昼食後 2 日分点滴翌日から2 日間 化学療法施行患者 身長 160cm 体重 50kg 体表面積 1.5 m2
お薬手帳シールを確認 シダイタロウ 市大 太郎 60 大腸 -mfolfox+bevacizumab
薬剤部ホームページを確認 ~ 登録レジメン情報 ~
薬剤部ホームページを確認 ~ 説明書 1~ mfolfox6
薬剤部ホームページを確認 ~ 説明書 2~ Bevacizumab
mfolfox6+bevacizumab エルプラット 85mg/ m2 1 コース :14 日間 アバスチン 5mg/kg アロキシデキサート レボホリナート 200mg/ m2 5-FU bolus 400mg/ m2 5-FU continuous infusion 2400mg/ m2 0.5~1.5hr 0.25hr 2hr 46hr 支持療法 アロキシ day1:0.75mg デキサート day1:9.9mg デカドロン day2-3:8mg 制吐薬適正使用ガイドライン中等度リスク
レジメン情報から投与量の鑑査 アバスチン 5mg/kg 50kg=250mg 身長 160cm 体重 50kg 体表面積 1.5 m2 実際の処方 250mg レボホリナート 200mg/ m2 1.5m2 =300mg エルプラット 85mg/ m2 1.5m2 =127.5mg 5-FU(bolus) 400mg/ m2 1.5m2 =600mg 5-FU( 持続 ) 2400mg/ m2 1.5m2 =3600mg 300mg 125mg 600mg 3600mg 体重の確認をお願いします
投与基準値の鑑査
適応の原則 ( 大腸癌治療ガイドラインより抜粋 ) 主要臓器機能が保たれている ( 下記の 1~3 は投与の目安 ) 1. 骨髄 : 白血球 >3500/μL, 血小板 >10 万 /μl 2. 肝機能 : 総ビリルビン<2.0mg/dL, AST/ALT<100IU/L 3. 腎機能 : 血清クレアチニン : 施設基準値上限以下 2 コース目以降の投与可能条件 投与予定日の検査値好中球 1500/μL, 血小板 7.5 万 /μl 尿蛋白 :1+ 以下 mfolfox6 法 XELOX 法投与開始 減量基準 監修 兵頭一之介アバスチン適正使用ガイド
来局 1 1 コース目 day1 処方箋とお薬手帳シールから化学療法施行患者であることを確認 体重 検査値 併用薬 職業 家族歴などの患者情報確認 特にワルファリンは注意! 投与量の確認 (HPを参照) 治療スケジュールや病院薬剤師が服薬指導に用いた説明書を HP から確認 支持療法薬の内服方法や生活上の注意事項など理解が不足している部分を中心に服薬指導 確認したい内容がある時は薬剤部にご連絡を
来局 2 2 コース目 day1 デカドロン (0.5mg) 16 錠 1 日 2 回朝 昼食後 2 日分 点滴翌日から2 日間 オルメサルタン (10) 1 錠 1 日 1 回朝食後 14 日分 患者 ) 前回言われた通りに血圧の記録をつけているのですが ここのところ高いのが続いていて 先生が薬を追加するっておっしゃってました 薬剤師 ) 血圧のお薬オルメサルタンが追加になっています アバスチンによって血圧が上がったことが推測されます よろしければ 血圧の記録をみせていただけませんか?
アバスチンによる高血圧の発現時期 投与開始後 4 週以内に多く発現 アバスチン適正使用ガイド
アバスチン国内臨床試験における高血圧発現時の休薬 中止規定 アバスチン適正使用ガイド
来局 2(2 コース目 ) 以降 処方箋とお薬手帳シール 薬歴 前回の指導記録を確認 休薬期間 スケジュールの確認 (HP 参照 ) 体重の変化 検査値 血圧 新規追加薬剤の確認 出現している副作用の確認とモニタリング 新規追加薬剤について 支持療法薬の内服方法 生活上の注意事項など理解が不足している部分を中心に服薬指導 対応が不十分と思われる副作用について 確認 共有したい事項があれば薬剤部に連絡を
来局 3 患者 ) 今日は血液の数値が低いみたいで点滴中止になってしまいました 処方はオルメサルタンのみ 項目 結果 検査日 項目 結果 検査日 WBC L 1200 /μl 12/8 T-Bil 0.5 mg/dl 12/8 Neu 38 % 12/8 Alb L 3.2 g/dl 12/8 Hb 12.8 g/dl 12/8 Cr 0.72 mg/dl 12/8 Plt 30 10^4/μL 12/8 K 4.1 meq/l 12/8 CK 48 U/L 12/8 CRP 0.25 mg/dl 12/8 AST 17 U/L 12/8 HbA1c 5.4 %(NGSP) 11/10 ALT 13 U/L 12/8 PT(INR) 0.90 INR 10/27 白血球 1200/μL 好中球 456/μL Grade 3 Grade 4 薬剤師 ) 今日は白血球と好中球が低いため点滴が中止になったんだと思います 免疫力が極めて低い状態なので手洗いやうがい マスクの着用などしっかり行ってくださいね 38 度以上の熱がでたときなどは早めに病院に連絡してください
( 参考 ) 骨髄機能の Grade 分類 骨髄機能 Grade 1 2 3 4 白血球減少 好中球減少 貧血 (Hb) 血小板減少 <LLN- <3000- <2000- <1000/mm 3 3000/mm 3 2000/mm 3 1000/mm 3 <LLN- <1500- <1000- <500/mm 3 1500/mm 3 1000/mm 3 500/mm 3 10.0g/dL 8.0g/dL 6.5g/dL 生命を脅かす 2.5 万 /mm 3 <2.5 万 /mm 3 LLN: 施設基準値下限 肝 腎機能 Grade 1 2 3 4 AST 増加 ALT 増加 血中ビリルビン増加 - 有害事象共通用語規準 v4.0 日本語 JCOG/JSCO 版 - 3.0xULN 1.5xULN 5.0xULN 3.0xULN 20.0xULN <LLN- <10.0- <8.0- <LLN- <7.5- <5.0-7.5 万 /mm 3 5.0 万 /mm 3 >ULN- >3.0- >5.0- Common Terminology Criteria for Adverse Events >20.0xULN v4.0 (CTCAE) 3.0xULN 5.0xULN 20.0xULN >ULN- >3.0- >5.0- >ULN- >1.5- >3.0-10.0xULN >20.0xULN >10.0xULN
来局 4 3 コース目 day1 患者 ) 今日は点滴できました! 12 シダイ タロウ 市大 太郎 60 22 3 アバスチン 100% レボホリナート 100% エルプラット 75% 5-FU(bolus) 75% 5-FU( 持続 ) 83% 減量されていることを確認! ( 減量の割合は個々で異なることあり )
来局 7 6 コース目 day1 患者 ) このところしびれが強くなってきました エルプラットによる末梢神経障害の可能性 デカドロン (0.5mg) 16 錠 1 日 2 回朝 昼食後 2 日分 点滴翌日から2 日間 オルメサルタン (10) 1 錠 1 日 1 回朝食後 14 日分 リリカ (75) 1Cap 1 日 1 回寝る前 14 日分 薬剤師 ) 今回からしびれのお薬が追加になっています しびれの状態について詳しく教えてください
エルプラットによる末梢神経症状急性の末梢神経症状 投与直後 ~2 日以内に発現 一過性の感覚異常または知覚不全 咽頭喉頭の絞扼感 低温または冷たいものへの曝露により誘発 悪化 具体的な症状 しびれ 刺すような痛み 手や前腕の痙攣 構語障害 喉が締め付けられるような感覚 呼吸困難感 ( 咽頭喉頭感覚異常 ) 持続性の末梢神経症状 遅発性 蓄積性で累積投与量依存的に発現 悪化すると感覚性の機能障害があらわれることがある 具体的な症状 文字を書きにくい ボタンをかけにくい 飲み込みにくい 歩きにくい など
末梢神経障害の評価基準 患者さんの Grade は?? 当該サイクル中に消失しない Grade2 や 8 日以上継続する Grade3 を認めた場合 エルプラットの 1 段階減量 or 休薬を考慮 Grade1 以下に回復後に再開を考慮 mfolfox6 法 XELOX 法投与開始 減量基準 監修 兵頭一之介
リリカの用法 用量 腎機能に要注意! 60 歳男性 体重 :50kg Cr=0.72 推測 CCr(Cockcroft-Gault) =(140-60) 50/72/0.72= 77.2 ml/min
当院における大腸がん化学療法の実施状況 2015.10.5~2015.11.4 全 140 件 ( 実施 :124 件 中止 :16 件 ) 入院 ( 進行 再発 ) 1 件 (0.7%) 中止 1FOLFOX(adj) 15 件 (10.7%) 2XELOX(adj) 13 件 (9.3%) 外来 ( 補助 ) 43 件 (30.7%) 16 件 (11.4%) 外来 ( 進行 再発 ) 80 件 (57.1%) 1FOLFOX+BV 37 件 (26.4%) 2FOLFIRI+BV 14 件 (10%) 大腸がんの化学療法はほぼ 100% が外来で実施 薬薬連携が重要
横浜市南区地域におけるがん化学療法薬薬連携モデル 薬剤部 HP レジメン情報 レジメン説明書 消化器下部 : 月 木 カンファレンス 外来化学療法室 お薬手帳シール 地域薬局薬剤師 病院薬剤師 フィードバック 診察 検査値情報 継続モニタリング 次回の治療に反映
まとめ 大腸がんの化学療法はほぼ 100% が外来で実施 病院薬剤師が面談を実施できているのは主に初回 レジメン変更時のみで 副作用モニタリングなどが十分にできていない現状 大腸がんの化学療法を有効かつ完全に実施するためには 病院薬剤師と薬局薬剤師の強固な連携が大切