第1分野 摂食嚥下リハビリテーションの全体像 1 総 論 2 摂食嚥下のリハビリテー 椿原彰夫 ション総論 Lecturer 川崎医療福祉大学学長 学 習目標 Learning Goals Chapter 1 摂食嚥下とその障害の概念が理解できる 摂食嚥下障害の治療目的がわかる 急性期 回復期 生活

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課題名

聴覚・平衡・音声・言語又はそしゃくの機能障害の状態及び所見

はじめに Myotonic dystrophy type DM myotonia DM... DM 対象と方法 対象 DM.. ADL 方法 EHD ml g 図 嚥下造影検査評価用紙

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別記様式第 8 号 ( 第 11 条関係 ) 身体障害者診断書 意見書 ( 聴覚 平衡 音声 言語又はそしゃく機能障害用 ) 総括表 氏 名 大正 昭和 年 月 日生 ( ) 歳 平成 男 女 住所 ( ) 1 障害名 ( 部位を明記 ) 2 原因となった疾病 外傷名 交通 労災 その他の事故 戦傷

リハビリテーションを受けること 以下 リハビリ 理想 病院でも自宅でも 自分が納得できる 期間や時間のリハビリを受けたい 現実: 現実: リ ビリが受けられる期間や時間は制度で リハビリが受けられる期間や時間は制度で 決 決められています いつ どこで どのように いつ どこで どのように リハビリ

< 嚥下運動とは > 嚥下運動は, 嚥下第 1 期 ( 口腔期 第 2 期 ( 咽頭期 第 3 期 ( 食道期 の 3 期に分けられます. しかし摂食行為を考えた場合, 嚥下運動に先立ち何をどのように食べるかを判断し口腔まで食物を運ぶ先行期 ( 認知期, 食物を捕食し咀嚼し飲み込みやすい食塊 (bo

スライド 1

対応策頭部を支持できる車椅子 ( ティルト リクライニング車椅子 ) の使用や介助方法の検討をしましょう 3. 食事を楽しみにしていない 考えられる原因またはこの状態により発生する問題について意識障害 ( 服薬の影響含む ) 認知症 高次脳機能障害 摂食障害 ( 拒食症 過食症 ) 抑うつ状態 薬剤

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平成 28 年度診療報酬改定情報リハビリテーション ここでは全病理に直接関連する項目を記載します Ⅰ. 疾患別リハビリ料の点数改定及び 維持期リハビリテーション (13 単位 ) の見直し 脳血管疾患等リハビリテーション料 1. 脳血管疾患等リハビリテーション料 (Ⅰ)(1 単位 ) 245 点 2

1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( はい / ) 上記外来の名称 対象となるストーマの種類 7 ストーマ外来の説明が掲載されているページのと は 手入力せずにホームページからコピーしてください 他施設でがんの診療を受けている または 診療を受けていた患者さんを

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様式第 1 号 (2)( 第 2 条関係 ) 総括表 身体障害者診断書 意見書 聴覚 平衡 音声 言語又はそしゃく機能障害用 氏名年月日生男 女 住所 1 障害名 ( 部位を明記 ) 2 原因となった交通 労災 その他の事故 戦傷 戦災 自然災害疾病 外傷名疾病 先天性 その他 ( ) 3 疾病 外

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 庄司仁孝 論文審査担当者 主査深山治久副査倉林亨, 鈴木哲也 論文題目 The prognosis of dysphagia patients over 100 years old ( 論文内容の要旨 ) < 要旨 > 日本人の平均寿命は世界で最も高い水準であり

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カラーでわかる 顎口腔機能にかかわる解剖学 前頭骨 頭頂骨 前頭骨 側頭骨 頰骨弓 眼窩 蝶形骨大翼 後頭骨下顎窩 外耳孔 鼻腔 頰骨 下顎頭 上顎骨 筋突起 乳様突起 下顎骨 オトガイ隆起 舌骨 A 頭蓋骨正面 B 頭蓋骨側面 頭頂骨 頭頂骨 鋤骨 上顎骨 口蓋骨後鼻孔蝶形骨底部 頰骨弓 後頭骨

下唇口峡図 1-1 口腔の各部 摂食嚥下器官の解剖 One1 1Chapter 1 口腔の構造 口腔は呼吸器の最末端と最初の消化器を担う重要な器官であり, 摂食嚥下, 唾液による消化, 呼吸や発声などの多くの役割を果たしている. 前方を口唇 ( 上唇, 下唇 ), 側方を頬, 上方を口蓋 ( 硬口蓋

1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( / ) 上記外来の名称 ストマ外来 対象となるストーマの種類 コロストーマとウロストーマ 4 大腸がん 腎がん 膀胱がん ストーマ管理 ( 腎ろう, 膀胱ろう含む ) ろう孔管理 (PEG 含む ) 尿失禁の管理 ストーマ外

リハビリテーション歩行訓練 片麻痺で歩行困難となった場合 麻痺側の足にしっかりと体重をかけて 適切な刺激を外から与えることで麻痺の回復を促進させていく必要があります 麻痺が重度の場合は体重をかけようとしても膝折れしてしまうため そのままでは適切な荷重訓練ができませんが 膝と足首を固定する長下肢装具を

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摂食嚥下訓練 排泄訓練等を開始します SCU で行うリハビリテーションの様子 ROM 訓練 ( 左 ) と端坐位訓練 ( 右 ) 急性期リハビリテーションプログラムの実際病棟訓練では 病棟において坐位 起立訓練を行い 坐位耐久性が30 分以上となればリハ訓練室へ移行します 訓練室訓練では訓練室におい

摂食・嚥下障害 まず最初に何を見ますか?

サービス担当者会議で検討し 介護支援専門員が判断 決定するものとする 通所系サービス 栄養改善加算について問 31 対象となる 栄養ケア ステーション の範囲はどのようなものか 公益社団法人日本栄養士会又は都道府県栄養士会が設置 運営する 栄養士会栄養ケア ステーション に限るものとする 通所介護

「手術看護を知り術前・術後の看護につなげる」

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1981 年 男 全部位 C00-C , , , , ,086.5 口腔 咽頭 C00-C

かかわらず 軟骨組織や関節包が烏口突起と鎖骨の間に存在したものを烏口鎖骨関節と定義する それらの出現頻度は0.04~30.0% とされ 研究手法によりその頻度には相違がみられる しかしながら 我々は骨の肥厚や軟骨組織が存在しないにも関わらず 烏口突起と鎖骨の間に烏口鎖骨靭帯と筋膜で囲まれた小さな空隙

1,交付申請と交付事務の流れ

介護における尊厳の保持 自立支援 9 時間 介護職が 利用者の尊厳のある暮らしを支える専門職であることを自覚し 自立支援 介 護予防という介護 福祉サービスを提供するにあたっての基本的視点及びやってはいけ ない行動例を理解している 1 人権と尊厳を支える介護 人権と尊厳の保持 ICF QOL ノーマ

14栄養・食事アセスメント(2)

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ラン君 10 歳 5 2. 口腔ケアの道具 6 原因不明の歯肉炎で食事が摂れなくなった 軟らかいタイプのキャットフードに変えて食べることができるようになり 体調も戻ってきました 粘膜ケアの道具 7 残存歯のブラッシングをするための道具 8 2

老化と 摂食嚥下障害 口から食べる を多職種で支えるための視点 編著藤本篤士糸田昌隆葛谷雅文若林秀隆 Dysphagia Oral sarcopenia Presbyphagia

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今日お話しすること 1 重症心身障害児の摂食嚥下機能における問題 2 摂食嚥下機能の評価 ( 正常を知る ) 3 症例 4 まとめ

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教科課程 言語聴覚士学科 系列 開講科目名 ( 英語表記 ) 必修選択 授業形態 時間数 単位数 1 年 2 年 前期後期前期後期 講義概要 医学総論 Introduction to Medicine 必修講義 15 (1) 15 医学の目的や内容の変化 健康と病気等に関する学習を通じ 医療従事者と

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7 時間以上 8 時間未満 922 単位 / 回 介護予防通所リハビリテーション 変更前 変更後 要支援 Ⅰ 1812 単位 / 月 1712 単位 / 月 要支援 Ⅱ 3715 単位 / 月 3615 単位 / 月 リハビリテーションマネジメント加算 (Ⅰ) の見直し リハビリテーションマネジメン

問題 A 問 1. 老化に伴う口腔機能の変化で適切なものを選びなさい 1. 刺激唾液の増加 2. 咀嚼時間の短縮 3. 味覚閾値の低下 4. 最大咬合力の低下 5. 喉頭侵入頻度の減少 問 2. 間違っているものを選びなさい 1. ロコモ は 骨 + 関節 + 筋肉 の連動としての運動能力の低下を指

旨Jpn J Rehabil Med 2017;54: 特集 嚥下障害に対する新たなアプローチ û 摂食嚥下障害の CT 評価 Dysphagia Evaluation Using 320-row Area Detector CT *ø 青柳陽一郎 *ù 稲本陽子 *ø 才藤栄一 Yo

摂食嚥下障害とは のどの構造 機能と摂食嚥下障害 摂食嚥下 ( えんげ ) とは 食べ物や飲み物を口に取り込んでから飲みこむことを指す言葉で 食べ物を認識し 口に取り込み 咀嚼 ( そしゃく ) して飲みやすい状態にして 飲み込む一連の過程です 摂食嚥下機能は 神経によって制御された筋肉の動きにより

c 外傷 腫瘍切除等による顎 ( 顎関節を含む ) 口腔 ( 舌 口唇 口蓋 頬 そしゃく筋 等 ) 咽頭 喉頭の欠損等によるもの d 口唇 口蓋裂等の先天異常の後遺症による咬合異常によるもの ( 注 1) そしゃく機能の喪失 と判断する状態についてそしゃく 嚥下機能の低下に起因して 経口的に食物等

さらに, そのプロセスの第 2 段階において分類方法が標準化されたことにより, 文書記録, 情報交換, そして栄養ケアの影響を調べる専門能力が大いに強化されたことが認められている 以上の結果から,ADA の標準言語委員会が, 専門職が用いる特別な栄養診断の用語の分類方法を作成するために結成された そ

嚥下防止術と誤嚥防止術

2/12 開催時間研修会 検討会等名称研修等の目的 内容 概要等開催場所参加人員 院内外 職種等 5 平成 26 年 5 月 15 20:00~ 21:35 第 10 回薬薬連携勉強会地域保健薬局薬剤師との連携強化 院内 : 薬剤師 10 人院外 : 薬剤師 12 人 6 平成 26 年 5 月 2

通所リハビリテーションとは 介護保険で認定を受けられた要支援 要介護の方を対象に機能訓練 歩行訓練や日常生活訓練 脳への刺激で認知症予防などを目的に リハビリテーション ( 以下 リハビリ ) を行う通いのサービスです 通所リハビリテーション ( 以下 通所リハビリ ) は 利用者様が可能な限り自宅

3) 適切な薬物療法ができる 4) 支持的関係を確立し 個人精神療法を適切に用い 集団精神療法を学ぶ 5) 心理社会的療法 精神科リハビリテーションを行い 早期に地域に復帰させる方法を学ぶ 10. 気分障害 : 2) 病歴を聴取し 精神症状を把握し 病型の把握 診断 鑑別診断ができる 3) 人格特徴

長谷川 泰久著『愛知県がんセンター 頸部郭清術』サンプルpdf

リハビリテーションマネジメント加算 計画の進捗状況を定期的に評価し 必要に応じ見直しを実施 ( 初回評価は約 2 週間以内 その後は約 3 月毎に実施 ) 介護支援専門員を通じ その他サービス事業者に 利用者の日常生活の留意点や介護の工夫等の情報を伝達 利用者の興味 関心 身体の状況 家屋の状況 家

例えば行為の際に使用する ツール について 行為との関連性をわかりやすくするために イベントの p/o である行為の p/o として記述した 咀嚼する 時に使用するツールである 義歯 は 咀嚼する の p/o でありツールロールを担う として記述する オントロジーに記述する概念は 極力看護プロファイ

症例報告 (05 年老年歯科医学会学術大会発表 ) 摂食 嚥下障害の評価と訓練の実際 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科老化制御学系口腔老化制御学講座高齢者歯科学分野准教授戸原玄 69 歳女性. 原疾患はくも膜下出血 ( 平成 14 年 12 月 ). ADL は部分介助レベル. 発症後に誤嚥性


札幌鉄道病院 地域医療連携室だより           (1)

食では この発達に合わせ 料理に用いる食材や調味料の種類を徐々に増やしていく また 味覚の発達と合わせて 口腔 歯の発育もみられ 食べ方にも変化が見られる 食べ物を舌で押しつぶしたり歯茎でかんだりできるようになると 食べ物の香りや食感もより感じられるようになる 味や食感 さらには見た目や香り 音など

加算 栄養改善加算 ( 月 2 回を限度 ) 栄養スクリーニング加算 口腔機能向上加算 ( 月 2 回を限度 ) 5 円 重度療養管理加算 要介護 であって 別に厚生労働大が定める状態である者に対して 医学的管理のもと 通所リハビリテーションを行った場合 100 円 中重度者ケア体制加算

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2 片脚での体重支持 ( 立脚中期, 立脚終期 ) 60 3 下肢の振り出し ( 前遊脚期, 遊脚初期, 遊脚中期, 遊脚終期 ) 64 第 3 章ケーススタディ ❶ 変形性股関節症ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

特集 : 高齢者の栄養について考える 高齢者の嚥下障害 * keywords: 高齢者 嚥下障害 サルコペニア 谷口裕重 1) Hiroshige TANIGUCHI 真柄仁 1) Jin MAGARA 井上誠 1 )2 ) Makoto INOUE 1) 新潟大学医歯学総合病院摂食 嚥下機能回復部

言語聴覚士学科 ( 昼間 2 年制 ) 系列 開講科目名 ( 英語表記 ) 必修選択 授業形態 時間数 単位数 1 年 2 年 前期後期前期後期 講義概要 医学総論 Introduction to Medicine 必修講義 15 (1) 15 医学の目的や内容の変化 健康と病気等に関する学習を通じ

01 表紙

70 頭頸部放射線療法 放射線化学療法

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補綴歯科専門医研修プログラム作成指針 公益社団法人日本補綴歯科学会 1

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話す、食べるリハビリ ~言語聴覚士の立場から~

眼球運動が苦手な場合には以下のような手立てが有効です 字を大きくする ( 拡大コピー 拡大鏡 ) 蛍光ペンで行に色を付ける 行間をあける 列を短くする 文節で区切る 定規をあてる 聴覚からのサポート( 音声ソフト : デイジー ) また 視空間認知機能の問題としては 文字 図形の認識ができない 空間

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正誤表 正誤箇所 誤 正 医科 - 基本診療料 -35/47 注 3 診療に係る費用 ( 注 2 及び注 4に規定する加算 注 3 診療に係る費用 ( 注 2 及び注 4に規定する加算 注の見直し 当該患者に対して行った第 2 章第 1 部医学管理等の 当該患者に対して行った第 2 章第 1 部医学

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総合診療

脳卒中に関する留意事項 以下は 脳卒中等の脳血管疾患に罹患した労働者に対して治療と職業生活の両立支援を行うにあ たって ガイドラインの内容に加えて 特に留意すべき事項をまとめたものである 1. 脳卒中に関する基礎情報 (1) 脳卒中の発症状況と回復状況脳卒中とは脳の血管に障害がおきることで生じる疾患

7 対 1 10 対 1 入院基本料の対応について 2(ⅲ) 7 対 1 10 対 1 入院基本料の課題 将来の入院医療ニーズは 人口構造の変化に伴う疾病構成の変化等により より高い医療資源の投入が必要となる医療ニーズは横ばいから減少 中程度の医療資源の投入が必要となる医療ニーズは増加から横ばいにな

基本料金明細 金額 基本利用料 ( 利用者負担金 ) 訪問看護基本療養費 (Ⅰ) 週 3 日まで (1 日 1 回につき ) 週 4 日目以降緩和 褥瘡ケアの専門看護師 ( 同一日に共同の訪問看護 ) 1 割負担 2 割負担 3 割負担 5, ,110 1,665 6,

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久保:2011高次脳機能障害研修会:HP掲載用.pptx


画像問題 画像 (1~3) を見て 問題に答えなさい 画像 (1) この症例では ある特徴的な動きが見られるが それは何か選びなさい 1. 固縮 2. 振戦 3. ミオクローヌス 4. 多動 5. ディスキネジア 画像 (2) この検査で用いている器具の名前を選びなさい 1. ノーズクリップ 2.

1章-1 責了.indd

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公的医療保険が対象とならない治療 投薬などの費用 ( 例 : 病院や診療所以外でのカウンセリング ) 精神疾患 精神障害と関係のない疾患の医療費 医療費の自己負担ア ) 世帯 ( 1) における家計の負担能力 障害の状態その他の事情をしん酌した額 ( しん酌した額が自立支援医療にかかった費用の 10

Ⅰ 通所リハビリテーション業務基準 通所リハビリテーションのリハビリ部門に関わる介護報酬 1. 基本報酬 ( 通所リハビリテーション費 ) 別紙コード表参照 個別リハビリテーションに関して平成 27 年度の介護報酬改定において 個別リハビリテーション実施加算が本体報酬に包括化された趣旨を踏まえ 利用

5 月 25 日 2 口 腔 咽 頭 唾 液 腺 の 疾 患 2 GIO: 口 腔 咽 頭 唾 液 腺 の 疾 患 を 理 解 する SBO: 1. 急 性 慢 性 炎 症 性 疾 患 を 説 明 できる 2. 扁 桃 の 疾 患 を 説 明 できる 3. 病 巣 感 染 症 を 説 明 できる 4

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SBOs- 3: がん診断期の患者の心身の特徴について述べることができる SBOs- 4: がん治療期 ; 化学療法を受けている患者の心身の特徴について述べることができる SBOs- 5: がん治療期 ; 放射線療法を受けている患者の心身の特徴について述べることができる SBOs- 6: がん治療期

改定事項 基本報酬 1 入居者の医療ニーズへの対応 2 生活機能向上連携加算の創設 3 機能訓練指導員の確保の促進 4 若年性認知症入居者受入加算の創設 5 口腔衛生管理の充実 6 栄養改善の取組の推進 7 短期利用特定施設入居者生活介護の利用者数の上限の見直し 8 身体的拘束等の適正化 9 運営推

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リポート 3 KTSM in 広島 実技セミナーアドバンスドコース in 広島 平成 25 年 12 月 14 日 ( 土 ) に口から食べる幸せを守る会第 2 回実践セミナーを日本赤十字広島看護大学にて開催いたしました この実践セミナーは 生命を育む根幹であり 人間が幸せに生きるための基本的な権利

300426_02(改正後全文) 身体障害認定要領

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Ⅱ-3( 患者の視点等 / リハビリテーションの推進 )-1 回復期リハビリテーション病棟における アウトカムの評価 第 1 基本的な考え方 骨子 Ⅱ-3(1) 回復期リハビリテーション病棟において アウトカムの評価を行い 一定の水準に達しない保険医療機関については 疾患別リハビリテーション料の評価

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第1分野 摂食嚥下リハビリテーションの全体像 1 総 論 摂食嚥下のリハビリテー 椿原彰夫 ション総論 Lecturer 川崎医療福祉大学学長 学 習目標 Learning Goals 1 摂食嚥下とその障害の概念が理解できる 摂食嚥下障害の治療目的がわかる 急性期 回復期 生活期の流れが把握できる 摂食嚥下障害のチーム医療の重要性がわかる 摂食 嚥下 摂食嚥下障害とは何か e ラーニング スライド 摂食 とは食べる過程のすべてをいい 口のなかに食物を取り込んで 捕食 噛み砕き 咀嚼 飲 み込んで 嚥下 胃のなかへ送り込むという一連の動作を意味している このうち 嚥下 えんげ とは 食物をゴクンと飲み込む反射様の運動とそれに引き続く食道の蠕動 ゼンドウ 運動とからなる 日本摂食嚥下リハビリテーション学会では平成 6 年 4 月から食べる過程の全般を 摂食嚥下 ナカマル 省略 という用語に統一することとなった 咀嚼や嚥下などの食べる機能の障害は 摂食嚥下障害 と命 名されるが 摂食障害 とよばれることはない それは精神疾患である拒食症や過食症のことが摂食 障害と定義されているからである 摂食嚥下障害 は簡略化して 嚥下障害 ともよばれているが 嚥 下 の機能のみが障害されているものを嚥下障害とよぶのではないことに注意してほしい 捕食や咀嚼 の障害がある患者も含んでいる 英語では dysphagia とよばれる Chapter 1 の確認事項 e ラーニング スライド 対応 1 摂食 嚥下 と摂食嚥下障害の定義について理解する 摂 食嚥下障害と 正常 との境界は存在するのか e ラーニングスライド3 健康な人でも高齢になるにしたがい 摂食時にむせることがある しかし 生活にまったく支障のな いこのような人々を 摂食嚥下障害 と診断するようなことはない 健常者に対して嚥下造影を行っ た研究では 50 歳未満の 3 人に 1 人 50 歳以上の 3 人に 人で 瞬間的に造影剤入りの液状食品が喉頭 前庭のなかに侵入する所見が認められるとの報告がある 図 1 したがって 摂食嚥下障害と 正常 との境界は決して明らかなものではなく 連続的な状態であるといえる 臨床的には 摂食嚥下障害が 存在する しないの 群に分類することが重要なのではなく 障害の程度を考慮して治療の必要性を検 討し 障害に合わせた治療方法を選択することが重要となる 疫学研究等において 摂食嚥下障害の有 無を識別する必要性がある場合には その定義を明らかにすべきである 一般的に 重症度分類を用い ることによって 生活上において問題となる摂食嚥下障害を区分する手法が採られている 16

医師 歯科医師による診察 問題点の把握 POMR 理学療法士 作業療法士 言語聴覚士 看護師 介護士 歯科衛生士 栄養士 医師 歯科医師による検査 コメディカルの同席 評価 ゴール カンファレンス 障害のメカニズムは 機能的ゴールの予測 治療方針 内容の決定 間接訓練 直接訓練 身体的訓練 口腔ケア 段階的嚥下調整食の選択 在宅指導 図4 問題点ごとに指示を行う 回復期リハビリテーション Chapter 8 の確認事項 e ラーニング スライド 9 対応 1 回復期における摂食嚥下リハビリテーションの流れを理解する 9 摂 食機能療法の効果に関する多施設共同研究 3 e ラーニングスライド10 11 日本摂食嚥下リハビリテーション学会によって 摂食機能療法の効果に関する多施設共同研究が行わ れた 摂食嚥下障害を認める脳血管障害患者を対象として 摂食機能療法を行った患者 介入群 と行 っていない患者 非介入群 の変化について比較した 機能障害レベルの評価である臨床的重症度分類 才藤ら を使用したところ 図 5 介入群では治療開始前に比較して治療終了時に点数の著明な改善が 認められた しかし 非介入群では 3 か月間の身体的リハビリテーションの前後に統計的有意な変化は 認められなかった また 能力障害レベルの評価である摂食状況レベル 藤島ら を使用した場合も同様で 介入群では 治療開始前に比較して治療終了時に点数の著明な改善が認められた 図 6 しかし 非介入群では 3 か 月間の身体的リハビリテーションの前後に統計的有意な変化は認められなかった 以上の結果から 摂 食機能療法は脳血管障害患者の摂食嚥下障害の治療として有効であると考えられる この研究は EBM の観点からエビデンスレベルはⅡa に相当する 10 生 活期にある患者の状態は常に一定ではない e ラーニングスライド1 回復期を終え生活期にある患者の摂食嚥下機能は 決して常に一定ではない 生き甲斐のある生活や 摂食への意欲 体力の向上などによって 摂食嚥下機能が改善する可能性は少なくない 逆に 摂食量 0

と筋群 大角 顎筋 顎二腹筋 前腹 小角 茎突筋 顎二腹筋 後腹 体 前上面 甲状筋 小角 胸骨甲状筋 胸骨筋 大角 肩甲筋 上腹 下腹 体 正中矢状断を左から 左から 三叉神経支配 舌下神経支配 顎筋縫線 顎筋 顎二腹筋 前腹 顔面神経支配 オトガイ筋 茎突筋 顎二腹筋 後腹 肩甲筋 甲状筋 胸骨筋 胸骨甲状筋 顎筋 下顎骨 後上面 前面 左の胸骨筋は一部切除 図4 1 と筋群 舌 骨 e ラーニング スライド13 は 下顎と咽頭の間に存在する U 字形をした骨である 図 4 上 は他の骨との関節構造を もたず 前方は顎二腹筋前腹 顎筋 オトガイ筋で下顎に 後方は顎二腹筋後腹 茎突筋 で側頭骨の後外側壁 乳様突起 茎状突起 に付着し 前後からハンモック状に吊り下げられている形 となっている 下方は甲状筋 甲状靱帯によって喉頭とつながっており が前上方に挙上 すると喉頭も前上方に挙上する 筋はより上方に位置する上筋群 顎二腹筋 茎突舌筋 顎筋 オトガイ筋 下方に位置する下筋群 胸骨筋 肩甲筋 胸骨甲状筋 甲 状筋 に分けられる Chapter 1 の確認事項 e ラーニング スライド 13 対応 1 と筋群の解剖学的特性を理解する 9

第1分野 摂食嚥下リハビリテーションの全体像 3 原因と病態 摂食嚥下各期の障害 6 Lecturer 薛 克良 特定医療法人順和長尾病院 リハビリテーション部部長 学習目標 Learning Goals 摂食嚥下各期の障害 原因と病態 がわかる 本章では 5 期モデル 1 参照P.44 をもとに摂食嚥下各期の概念 機能 役割 病態を解説する 先行期の障害 e ラーニング スライド4 意識障害 認知症 情動障害 知的障害 高次脳機能障害などが存在すると先行期の障害として現れ る また 不随意運動や姿勢障害などによる食事動作の問題も含まれる 表 1 大脳劣位半球障害の半側空間失認は 左側の見落としによる食事の食べ残しや 常に頸部が右を向き 姿勢が崩れやすいことによる 右回旋で左側傾になりやすい 嚥下運動への悪影響がある 大脳優位半球障害で現れやすい観念失行は 道具の使用手順がわからなくなり 食器の使用が困難に なることがある 摂食障害の拒食症は 意識障害がないにもかかわらず食物をみてもまったく反応しな かったり スプーンなどで食物を口に近づけても開口しないことがある Chapter 1 の確認事項 e ラーニング スライド 4 対応 1 先行期に生じる問題と代表的な先行期障害を理解する 準備期の障害 表 e ラーニング スライド6 顔面神経麻痺などの口唇の麻痺で口唇の閉鎖障害は起こるが 脳血管障害などによる中枢性麻痺の場 合は協調運動が悪く とり込み時は口唇を閉じることができても 咀嚼時にこぼれ出てしまう さらに ストローでの液体摂取の場合はストローと口唇との間に隙間をつくらないようにしなければならないう え 陰圧に耐える必要がある また 通常 口腔粘膜や舌の表面 咀嚼筋など咀嚼に関する器官に分布する感覚神経が働いて 咀嚼 中の食塊の状態などの情報を脳に送り 咀嚼動作や舌の細かな動きを調節している これが困難な場 合 たとえば固形物に対する すりつぶし咀嚼 やゼリーやペースト状のものに対する 押しつぶし咀 嚼 などの判断に支障をきたし 食塊形成に影響が出る さらに 咀嚼運動 食塊形成がうまくできないと 食塊が口のなかでバラバラに広がってしまい う まく次の 送り込み につなげることができない また 嚥下時には食物を丸のみすることになる さ らに咀嚼 食塊形成中は味覚を感じる過程でもあるため これができないと食物の味を感じることも障 害される このような食塊形成の障害は舌の機能障害が強い疾患 たとえば仮性球麻痺や筋萎縮性側索 硬化症 舌腫瘍の術後などに特徴的にみられる 46