蛍光免疫染色の基礎 ライフテクノロジーズジャパン株式会社 テクニカルサポート 小林英夫 The world leader in serving science 1
蛍光免疫染色の概要 タンパク質の発現の確認 タンパク質の局在性の確認 上記を細胞や組織の形態と照らし合わせて観察 固定膜の浸透処理ブロッキング 1 次抗体を加える 酵素抗体法 ( 発色 ) と比較して 両方とも高感度 多重染色が容易 長期保存は不向き 2 次抗体を加える 封入する 2
サンプルの準備 細胞の培養 6 穴プレートや 3.5cm ディッシュの底にカバーグラスを沈め その上で培養する プレート内にスライドグラスやカバーグラスが敷き詰められており そこでまとめて培養する 例 ) CultureWell Cell Culture System スライドや大型のカバーガラス上にチャンバーがついており そのまま細胞培養できるようになっている 培養後 上部のチャンバーやシリコンパッキンを剥がして 染色 観察する 例 ) Nunc Lab-Tek Chamber Slide 染色などの作業はカバーグラス上で行い 顕微鏡観察前にひっくり返してスライドグラスに載せる 3 3
固定膜の浸透処理ブロッキング 1 次抗体を加える 2 次抗体を加える 封入する 4
固定 (fixation) 細胞内の構造物やタンパク質を不動化し 生体に近い状態を保持させる 4% パラホルムアルデヒド (PFA) in PBS 室温 15 分インキュベーション PBS-glycine で3 回洗浄 各種固定剤 パラホルムアルデヒド : アミノ基を架橋することによる固定 グルタールアルデヒド : アミノ基を架橋 パラホルムアルデヒドより強固だが 自家蛍光が上がったり 抗体の反応性が変わったりすることがある アセトン アルコール : 脱水 脱脂による固定 --- 分子量の大きい物質に有効 ホルマリン : ホルマリン = 約 37% ホルムアルデヒド + 10% メタノール (10% ホルマリン溶液 約 3.7% ホルムアルデヒド + 1% メタノール ) 5
膜の透過処理 (permeabilization) 抗体等が細胞内へ浸透できるように細胞膜の透過性を亢進させる 理ともいう 0.1% Triton-X 100 in PBS ( 推奨 :0.05-0.5%) 室温 5 分インキュベーション 浸透処 各種透過剤 : Triton-X 100: 一般的に使用されている サポニンやジギトニン : Triton X よりマイルド 6
はじめてのお客様向けの製品 Image-iT Fixation/Permeabilization Kit (R37602) - 4% formaldehyde in PBS, ph=7.3 (20mL) - 0.5% Triton X-100 (20mL) - 3% BSA (10 10mL) - PBS, ph 7.4 (500mL) 7
ブロッキング (blocking) 抗体の非特異的反応を防ぐ 5~10% 血清 (2 次抗体の血清 Normal Goat Serum など ) 1~3% BSA カゼイン BlockAid Blocking Solution Image-iT FX Signal Enhancer ( 標的は荷電領域 ) 通常のブロッキング剤の代わりに用いる 通常のブロッキング剤と組み合わせる ブロッキングなし 血清を添加 Image-iT FX 8
Image-iT FX Signal Enhancer ブロッキング剤 Mouse brain cryosections Image-iT FX 処理 Image-iT FX 未処理 Mouse anti-hu C/D + HRP-Goat anti-mouse IgG + Alexa 488 - TSA kit 9
固定膜の浸透処理ブロッキング 1 次抗体を加える 2 次抗体を加える 封入する 10
一次抗体を加える 一次抗体を添加する ブロッキング剤を少量添加した PBS で希釈し サンプルに添加する 例 : PBS with 1% Normal Goat Serum 室温で 1 時間インキュベーション 4 で overnight など 多重染色を行う場合には 各抗体の宿主を変える ネガティブコントロール ( 一次抗体添加しない ) ポジティブコントロール ( 必ず染まる抗体 サンプル ) も用意する はじめて使用する抗体は 予備実験として 濃度条件を検討しておく 例 : 1:100 1:200 1:500 と濃度をふって染色し ベストの条件を決めておく ロットが変わった場合も 予備実験を行った方がよい 11
一次抗体の選択 論文などで実績がある抗体を確認する モノクローナル抗体 : クローン名 ポリクローナル抗体 : メーカー名 カタログ番号 抗体取扱メーカー各社で 該当する抗体があるかどうか探す ターゲットのタンパク質 アプリケーション (ICC, IF, IHC など ) 交差性 使用時の濃度 宿主の生物種 (mouse, rat, rabbit, goat など ) 実際 ポータルサイトで検索し アタリをつけてから探す 12
Life Technologies の抗体検索サイト 13
固定膜の浸透処理ブロッキング 1 次抗体を加える 2 次抗体を加える 封入する 14
二次抗体を加える 二次抗体 一次抗体 1 分子に対して 複数の二次抗体が結合する 蛍光標識した一次抗体を使用するよりも 高感度で検出できる 二次抗体を添加する ブロッキング剤を少量添加した PBS で希釈し サンプルに添加する 例 : PBS with 1% Normal Goat Serum 室温で 30 分 ~1 時間インキュベーション 一次抗体の宿主に合わせて二次抗体を選ぶ 15
多重染色を行う場合の抗体の選択 ( 失敗例 ) もし同じ生物種を用いたら 全部同じ色に染まってしまう 抗 -XX 抗体 (mouse IgG) 抗 -YY 抗体 (mouse IgG) Alexa 488 抗 -mouse IgG 二次抗体 Alexa 568 抗 -mouse IgG 二次抗体 生物種が違っていても交差してしまうことがある 抗 -XX 抗体 (mouse IgG) 抗 -YY 抗体 (rat IgG) Alexa 488 抗 -mouse IgG 二次抗体 Alexa 568 抗 -rat IgG 二次抗体 16
二次抗体の製造過程 ( アフィニティ精製と交差吸着 ) anti-mouse 抗体を含む血清 anti-mouse 抗体 (mouse IgG カラムに結合したもの ) Mouse IgG Rat IgG 二次抗体 アフィニティ精製 交差吸着 ( 交差吸収 ) (rat IgG に結合しなかったもの ) 17
二次抗体 highly cross adsorbed Cat. No. 抗体 宿主吸着操作 ( 吸収操作 ) 蛍光標識 A11001 Anti-mouse IgG Goat Human IgG and serum Alexa 488 A11029 Anti-mouse IgG *highly cross adsorbed* Goat Bovine, goat, rabbit, rat and human IgG and human serum A11059 Anti-mouse IgG Donkey Bovine, chicken, goat, guinea pig, hamster, horse, human, rabbit, rat, and sheep serum Alexa 488 Alexa 488 A11059 Anti-mouse IgG Rabbit Human serum Alexa 488 A11059 Anti-mouse IgG Chicken Human serum and Rabbit serum Alexa 488 18
蛍光色素とスペクトル Alexa Fluor 594 励起スペクトル 蛍光スペクトル http://www.lifetechnologies.com/spectraviewer 19
蛍光シグナルの漏れ込み (Crosstalk) Alexa Fluor 594 の蛍光シグナル ローダミンフィルター Cy5 フィルター http://www.lifetechnologies.com/spectraviewer 20
蛍光色素の選択 定番の組合せ (1) 青色 : DAPI 緑色 : Alexa Fluor 488 (FITC チャンネル ) 赤色 : Alexa Fluor 594 (XRITC/Texas Red チャンネル ) 定番の組合せ (2) 青色 : DAPI 緑色 : Alexa Fluor 488 (FITC チャンネル ) 橙色 : Alexa Fluor 555 (TRITC/ ローダミンチャンネル ) 赤外 : Alexa Fluor 647 (Cy5 チャンネル ) 実際のサンプルや蛍光顕微鏡によって色素の組合せは異なる場合がある コントロールサンプルを用いて漏れ込みの有無を確認することが重要 21
固定膜の浸透処理ブロッキング 1 次抗体を加える 2 次抗体を加える 封入する 22
封入 (mounting) 核染色も含め 染色処理の終わったカバーグラスをスライドグラスに載せる ( あるいは処理の終わったスライドグラスにカバーグラスを載せる ) スライドグラスに封入剤を垂らす マウント液 : PBS グリセロール ポリビニルアルコール (PVA) 褪色防止効果のある封入剤 核染色試薬 DAPI を含む場合もあり カバーグラスを被せる 泡が入らないように カバーグラスが動かないよう 4 隅だけ あるいは 4 辺全てをマニキュア等で固定する *DAPI: 核の対比染色用試薬 23
褪色防止効果をもった封入剤 ProLong 褪色防止用封入剤の光褪色防止効果固定したHeLa 細胞を fluorescein 標識ファロイジンで染色し ProLong Diamond 試薬 ProLong Gold 試薬 または50% PBS/ グリセロール中にマウントした 画像の取得は 12 秒間隔で 20 倍の対物レンズを使用して 一般的な100ワット水銀アーク灯からの連続照射を用いて行った 弊社ではProLong シリーズ SlowFade シリーズを用意しております 24
褪色しにくい蛍光色素 Alexa Fluor シリーズ Fluorescein Alexa Fluor 488 Alexa Fluor の特徴 明るい ( 高感度 ) 褪色しにくい 25
褪色しにくい蛍光色素 Alexa Fluor シリーズ 26
顕微鏡観察 画像取得 各チャンネルでモノクロで撮影 画像を重ね合わせる 疑似色をつける 操作がとても簡単な EVOS FL 蛍光顕微鏡 27
まとめ まとめ 細胞の蛍光免疫染色の基本的な流れをご説明いたしました 検討課題 抗体の性能 各試薬の濃度 インキュベーション時間 パラホルムアルデヒドの劣化 ブロッキング剤の検討 励起光による褪色 実習 ( ハンズオントレーニング ) も行っております お気軽にご参加ください インターネットにて ライフテクノロジーズセミナー で検索! 28
ご清聴ありがとうございました 本セミナー終了後 ご不明な点などがございましたら テクニカルサポートまでご連絡ください 電話 0120-477-392 E-mail jptech@lifetech.com Web http://www.lifetechnologies.com/ 実習 ( ハンズオントレーニング ) も行っております お気軽にご参加ください インターネットにて ライフテクノロジーズセミナー で検索! 29