Microsoft Word - 化学系演習 aG.docx

Similar documents
有機化合物の反応9(2018)講義用.ppt

Microsoft Word - 化学系演習 aG.docx

練習問題

官能基の酸化レベルと官能基相互変換 還元 酸化 炭化水素 アルコール アルデヒド, ケトン カルボン酸 炭酸 H R R' H H R' R OH H R' R OR'' H R' R Br H R' R NH 2 H R' R SR' R" O R R' RO OR R R' アセタール RS S

スライド 1

Microsoft Word - 問題解答.doc

木村の有機化学小ネタ 糖の構造 単糖類の鎖状構造と環状構造 1.D と L について D-グルコースとか L-アラニンの D,L の意味について説明する 1953 年右旋性 ( 偏光面を右に曲げる ) をもつグリセルアルデヒドの立体配置が

第11回配布用

Microsoft PowerPoint - 有機元素化学特論11回配布用.pptx

有機化学I 小テスト4 回答                  担当:石川勇人

有機化合物の反応10(2018)講義用.ppt

B. モル濃度 速度定数と化学反応の速さ 1.1 段階反応 ( 単純反応 ): + I HI を例に H ヨウ化水素 HI が生成する速さ は,H と I のモル濃度をそれぞれ [ ], [ I ] [ H ] [ I ] に比例することが, 実験により, わかっている したがって, 比例定数を k

2014 年度大学入試センター試験解説 化学 Ⅰ 第 1 問物質の構成 1 問 1 a 1 g に含まれる分子 ( 分子量 M) の数は, アボガドロ定数を N A /mol とすると M N A 個 と表すことができる よって, 分子量 M が最も小さい分子の分子数が最も多い 分 子量は, 1 H

有機物質 V 演習問題 以下の化合物 A O の化合物名を書きなさい Ph NH 2 A HO Ph NH 2 B HO C O NH 2 HO HN D O HO HN E N O O O Br Br N H H 2 N N OH F G H I OH O 1 OH J O O O O

PowerPoint プレゼンテーション

PowerPoint プレゼンテーション

<4D F736F F F696E74202D C8B4089BB8D8795A882CC94BD899E A>

02 配付資料(原子と分子・アルカンとアルケンとアルキン).key

Microsoft PowerPoint - D.酸塩基(2)

2004 年度センター化学 ⅠB p1 第 1 問問 1 a 水素結合 X HLY X,Y= F,O,N ( ) この形をもつ分子は 5 NH 3 である 1 5 b 昇華性の物質 ドライアイス CO 2, ヨウ素 I 2, ナフタレン 2 3 c 総電子数 = ( 原子番号 ) d CH 4 :6

スライド 1

木村の化学重要問題集 2014 解答編解説補充 脂肪族化合物 ( 有機化合物の分類を含む ) 202. 代表的なアルデヒドとカルボン酸 フェーリング反応 銀鏡反応 : アルデヒド 還元糖の検出反応 1. フェーリング反応 フェーリン

スライド 1

Microsoft Word - answer2013.doc

tnbp59-21_Web:P2/ky132379509610002944

Problem P5

酸素を含む化合物

鎖状立体制御概論 ここでは鎖状立体制御の考え方の基本をざっくりとまとめておきます 有機化学では 考え方の習得 は 図を書いて他人に説明できる ことを意味しますので 図を何回も書くことが習得の近道となります 習得 はつまるところ 体得 です 有機化学が 好き なだけではなく 上達する ことや 研究でき

Microsoft PowerPoint - プレゼンテーション1

必要があれば, 次の数値を使いなさい 原子量 O= 標準状態で mol の気体が占める体積. L 問題文中の体積の単位記号 L は, リットルを表す Ⅰ 次の問いに答えなさい 問 飲料水の容器であるペットボトルに使われているプラスチックを, 次の中から つ選び, 番号をマークしなさい ポリエチレン

木村の理論化学小ネタ 熱化学方程式と反応熱の分類発熱反応と吸熱反応化学反応は, 反応の前後の物質のエネルギーが異なるため, エネルギーの出入りを伴い, それが, 熱 光 電気などのエネルギーの形で現れる とくに, 化学変化と熱エネルギーの関

ヒーリー計算有機化学入門 ~Spartan Student Edition を使って ~ 第 2 版 Wavefunction, Inc Von Kaman Avenue, Suite 370 Irvine, CA U.S.A Wavefunction, Inc., Japa


酸化的付加 (oxidative addition)

Word Pro - matome_7_酸と塩基.lwp

CHEMISTRY: ART, SCIENCE, FUN THEORETICAL EXAMINATION ANSWER SHEETS JULY 20, 2007 MOSCOW, RUSSIA Official version team of Japan.

Taro-化学3 酸塩基 最新版

CERT化学2013前期_問題

有機合成化学

2011年度 化学1(物理学科)

フォルハルト法 NH SCN の標準液または KSCN の標準液を用い,Ag または Hg を直接沈殿滴定する方法 および Cl, Br, I, CN, 試料溶液に Fe SCN, S 2 を指示薬として加える 例 : Cl の逆滴定による定量 などを逆滴定する方法をいう Fe を加えた試料液に硝酸

第1回 生体内のエネルギー産生

SO の場合 Leis の酸塩基説 ( 非プロトン性溶媒までも摘要可 一般化 ) B + B の化学反応の酸と塩基 SO + + SO SO + + SO 酸 塩基 酸 塩基 SO は酸にも塩基にもなっている 酸の強さ 酸が強い = 塩基へプロトンを供与する能力が大きい 強酸 ( 優れたプロトン供与

Microsoft Word - 10生物化学2.doc

Microsoft Word -

記 者 発 表(予 定)

7-7.. 偏光 Polarized Light に対する性質 a) 光学活性 ptical Activity 鏡像異性体 : 偏光 Polarized Light に対する挙動が違う 光 偏光子 Polarizer 1 偏光 偏光子 ( 検光子 ) Not transmitted 偏光子 1 セル

細胞の構造

第1回 生体内のエネルギー産生

Microsoft Word - t30_西_修正__ doc

平成 29 年度大学院博士前期課程入学試験問題 生物工学 I 基礎生物化学 生物化学工学から 1 科目選択ただし 内部受験生は生物化学工学を必ず選択すること 解答には 問題ごとに1 枚の解答用紙を使用しなさい 余った解答用紙にも受験番号を記載しなさい 試験終了時に回収します 受験番号

2019 年度大学入試センター試験解説 化学 第 1 問問 1 a 塩化カリウムは, カリウムイオン K + と塩化物イオン Cl - のイオン結合のみを含む物質であり, 共有結合を含まない ( 答 ) 1 1 b 黒鉛の結晶中では, 各炭素原子の 4 つの価電子のうち 3 つが隣り合う他の原子との

香りがナビゲートする 有機化学 理学博士長谷川登志夫著 コロナ社 コロナ社

Chap. 1 NMR

New Color Chemosensors for Monosaccharides Based on Azo Dyes

17handout01


< F2D30315F CD8F6F A88EBF8D908EA A93FA D FC82E82E6A7464>

1 次の問い ( 問 1~ 問 5) に答えよ (23 点 ) 問 1 次の単位変換のうち, 正しいもののみをすべて含む組み合わせは どれか マーク式解答欄 1 (a) 1.0 kg = mg (b) 1.0 dl = ml (c) 1.0 g/cm 3 = 1.

内容 1. 化学結合 2. 種類と特性 3. 反応の種類 4. 反応機構 5. 高分子材料の特性 6. 高分子合成 7. 有機構造解析

Microsoft Word - 酸塩基

応用有機化学基礎論

平成 2 9 年 3 月 2 8 日 公立大学法人首都大学東京科学技術振興機構 (JST) 高機能な導電性ポリマーの精密合成法を開発 ~ 有機エレクトロニクスの発展に貢献する光機能材料の開発に期待 ~ ポイント π( パイ ) 共役ポリマーの特性制御には 末端に特定の官能基を導入することが重要だが

2017 年度一般入試前期 A 日程 ( 1 月 23 日実施 ) 化学問題 (63 ページ 74 ページ ) 問題は大問 Ⅰ Ⅳ までありますが 一部 他科目との共通問題となっています 大問 Ⅰ は 化学基礎 + 生物基礎 の大問 Ⅰ と共通の問題です 大問 Ⅱ は 化学基礎 + 生物基礎 の大問

二酸化炭素を用いる触媒的炭素 炭素結合生成反応の開発 京都大学工学研究科物質エネルギー化学専攻辻康之 1. はじめに二酸化炭素は炭素の最も高酸化状態の化合物であり, 熱力学的にも速度論的にも反応性の乏しい物質である この二酸化炭素を炭素源として触媒的に有用物質の合成に利用することが出来れば, 次世代


<905694BD899E834A815B E786C7362>

研究成果報告書(基金分)

7.6.2 カルボン酸の合成 è 酸化による合成 { 第一アルコールまたはアルデヒドの酸化 R Ä C 2 Ä! R Ä C Ä! R Ä C (7.104) [ 例 ]1-プロパノールを硫酸酸性の条件で二クロム酸カリウムを用いて酸化する 3C 3 C 2 C 2 + 2Cr 2 2Ä

Site-Selective Radical C-H/C-C Conversion via Decatungstate Photocatalysis

Untitled

) 第八条第一項第三号の規定に基づき法第二条第二項各号又は第三項各号のいずれにも該当しな いと認められる化学物質その他の同条第五項に規定する評価を行うことが必要と認められないものとして厚生労働大臣経済産業大臣及び環境大臣が指定する化学物質は次の表の左欄に掲げる化学物 質の分類ごとにそれぞれ同表の右欄

Untitled

1. 構造式ファイルの作成について 平成 31 年度からの少量新規化学物質の申出には電子データ ( ML ファイル形式 ) の提出が必要となります 本講演資料における 構造式ファイル は ML ファイルのことを指しています 経済産業省推奨構造式描画ソフトウェア以下のソフトウェアを用いて ML ファイ

<4D F736F F D B82C982C282A282C482512E646F63>

田耕氏 ) 永 学位の種類 薬 なが 186 ),7学博たいち士 学位記番号論 \ 薬 - 一博.A. 第 1 2 号 学位授与の日付昭和,39 年 9 月 2 9 日 学位授与 oj 要件 学位論文題目 学位規則第 5 粂第 2 項該当 チオヒドロキザム酸の金属キレートに関する研究 ( 主査 )

無機化学 II 2018 年度期末試験 1. 窒素を含む化合物にヒドラジンと呼ばれる化合物 (N2H4, 右図 ) がある. この分子に関し, 以下の問いに答えよ.( 計 9 点 ) (1) N2 分子が 1 mol と H2 分子が 2 mol の状態と, ヒドラジン 1 mol となっている状態

有機合成化学

図 2 ブタンの回転異性体に少しずつ回転させると, ポテンシャルエネルギーは 4 で極小となり,5 で極大となり 180 度回転した 6 (=2) で最小となる この間, ポテンシャルエネルギーは連続的に変化する 3 と 6 のエネルギー差は室温で約 26.4 kj/mol で, この程度の違いでは

<4D F736F F D20914F8AFA8AFA96968E8E8CB15F89F0939A97E12E646F6378>

4. 炭素 炭素多重結合 不飽和炭化水素 4.1. C=C 結合 2p 2p z 4-1 2p z 2s 2p z 混成 sp 2 混成軌道 σ 結合を作る C σ π Trigonal 正三角形 + C C π 軌道 2p z 2p z C: sp 2 sp 2 : C π 電子の非局在化 安定化

Dr, Fujita

第 14 章 l 到 達 目 標 l 共 役 ジエンの 性 質 及 びアルケンとの 相 違 点 に ついて 説 明 できる l 化 学 反 応 で 用 いられる 速 度 支 配 熱 力 学 支 配 という 用 語 の 意 味 を 説 明 できる l Diels-Alder 反 応 の 特 徴 を 具

改訂履歴 2018/7/30 Ver.1.0 公開 2018/10/02 Ver.1.1 公開 ( 図表 1.1 Marvin JS のダウンロード 利用先 URL を追記 )

Microsoft PowerPoint - siryo7

< イオン 電離練習問題 > No. 1 次のイオンの名称を書きなさい (1) H + ( ) (2) Na + ( ) (3) K + ( ) (4) Mg 2+ ( ) (5) Cu 2+ ( ) (6) Zn 2+ ( ) (7) NH4 + ( ) (8) Cl - ( ) (9) OH -

H27看護化学-講義資料13rev

有機薄膜太陽電池用材料の新しい合成法を開発

Microsoft PowerPoint - 有機基礎1_14_7.ppt [互換モード]

化学 1( 応用生物 生命健康科 現代教育学部 ) ( 解答番号 1 ~ 29 ) Ⅰ 化学結合に関する ⑴~⑶ の文章を読み, 下の問い ( 問 1~5) に答えよ ⑴ 塩化ナトリウム中では, ナトリウムイオン Na + と塩化物イオン Cl - が静電気的な引力で結び ついている このような陽イ

三重大学工学部

酢酸エチルの合成

Microsoft PowerPoint - presentation2007_03_acid-base.ppt

PowerPoint プレゼンテーション

平成20年度 神戸大学 大学院理学研究科 化学専攻 入学試験問題

木村の理論化学小ネタ 緩衝液 緩衝液とは, 酸や塩基を加えても,pH が変化しにくい性質をもつ溶液のことである A. 共役酸と共役塩基 弱酸 HA の水溶液中での電離平衡と共役酸 共役塩基 弱酸 HA の電離平衡 HA + H 3 A にお

東京理科大学 Ⅰ 部化学研究部 2015 年度春輪講書 シクロデキストリンを用いた 包接化合物の生成 水曜班 Ikemura, M.(2C),Ebihara, K.(2C), Kataoka, T.(2K), Shibasaki,K.(2OK),Tsumeda,T.(2C),Naka,A.(2OK)

<4D F736F F F696E74202D20974C8B4089BB8D8795A882CC97A791CC8D5C91A24850>

文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究 ( 平成 23~27 年度 ) 領域略称名 : 有機分子触媒 領域番号 :2304 有機分子触媒による未来型分子変換 News Letter No Aug. 研究紹介 キラルブ

上原記念生命科学財団研究報告集, 29 (2015)

Transcription:

有機化学反応の基礎 (4) 脱離反応 (1) 脱離反応 (E1 と E2 反応 )--- ハロゲン化アルキルの例脱離生成物と安定性原子上のプロトン () と電気陰性度の大きな原子を含む脱離基が脱離し π 結合を形成する 脱離基 Xの結合している炭素 (α 位 ) とその隣の炭素 (β 位 ) からXが脱離するので β 脱離とも呼ばれる ザイツェフ則 ( セイチェフ則 ): 多置換アルケン ( 安定性が高い ) が主生成物となるとき 通常起こる反応である ホフマン則 : 置換数の少ないアルケンが主生成物となるとき かさ高い塩基 (t-ブトキシア二オン) の使用 環状化合物での脱離 アンモニウム塩の脱離など a b 2-bromobutane b a ザイツェフ ( 二置換 ) ホフマン ( 一置換 ) アルケンの置換数と安定性 ( アルケンプリントの再掲 ) 同様な構造であれば 置換数の大きなアルケンが安定である 無置換一置換二置換三置換四置換 不安定 安定 E1 反応 = 1 次反応 δ δ - 2 2 2-bromo-2-methylbutane 2 カルボカチオン中間体 b 2 2 ホフマン ( 副生成物 ) b 2 a a ザイツェフ ( 主生成物 ) エネルギー 活性化エネルギー 出発物 2 遷移状態 E 1 中間体 2 反応熱 遷移状態 E 2 反応の進行度 活性化エネルギー 生成物 45 E1 反応の特徴酸性または中性条件下で起こりやすい反応速度 :v = k[ 基質濃度 ] ( 基質濃度だけに依存する一次反応 ) カルボカチオン生成が律速段階だから活性化エネルギー E 1 > E 2 反応の起こりやすさ : 級 >2 級 >1 級 ( カルボカチオンの安定性 ) 中間体が存在する2 段階反応である主生成物 :

E2 反応 = 2 次反応 δ δ - a 2 2-bromobutane b 2 5 a b Na 2 5 trans-but-2-ene 2 5 アンチの関係 ( 脱離できる ) a Na 2 5 b アンチの関係にない b trans-but-2-ene 覚えておくべき塩基 手前を左に 120 回転 小塩基性大 Na Na 2 K( ) NaN 2 2 5 b a アンチ脱離 Na 2 5 a cis-but-2-ene エネルギー 出発物 2 遷移状態 2 活性化エネルギー 反応熱 反応の進行度 生成物 E2 反応の特徴塩基性条件下で起こりやすい反応速度 :v = k[ 基質濃度 ] [ 塩基試薬 ] (2つの濃度に依存する二次反応) 反応の起こりやすさ : 級 >2 級 >1 級 ( 反応する炭素の立体障害 )* 強塩基使用で1 級でも進行する中間体が存在しない1 段階反応である主生成物 : 脱離基はアンチの関係 ( ) 鎖状化合物はザイツェフ則に従うが * S N 2 反応が起こらないときに E2 反応が起こる ( エーテルの合成を再度 考える ) エーテルの合成 ( ウィリアムソンのエーテル合成 p.25) アルコキシドイオン (R - ) は 1 級ハロゲン化アルキルへの S N 2 反応で進行し エーテルを生成する I S N 2? S N 2 I E2 I 46

ザイツェフ則 vs ホフマン則 --- 環状化合物では要注意! E2 脱離はアンチ脱離なので シクロヘキサンのいす形では になる a a b Na2 5 ー > ザイツェフホフマン アンチの関係 b ( 主生成物 ) ( 副生成物 ) cis-1-bromo-2-methylcyclohexane Na 2 5 ー ホフマン アンチの関係 ( 主生成物 ) trans-1-bromo-2-methylcyclohexane ホフマン則で進行する反応 1) かさ高い塩基を用いるとホフマン則に従う (t-bu ーを塩基として使用したとき ) b a 立体反発大 2-bromobutane 立体反発小 K( ) 主に a を経由 2 ホフマン ( 主生成物 ) ザイツェフ ( 副生成物 ) 2) 4 級アンモニウム塩の反応 (p.401-402) アミンは過剰量のハロゲン化アルキルと反応して を生じ 塩基性条件下でホフマン脱離する 2 I N 2 ( 過剰量 ) 2 N( ) I Ag 2 2 ( 加熱 ) 2 N( ) 2 2 N( ) 2 4 級アンモニウム塩 アンモニウム塩の脱離がホフマン則に従うのは E1cb(E1 conjugate base) 反応を経るためと考えられている ( 注 ) マクマリー p.401 では E2 機構で 他では立体的要因で説明している場合もある b a 2 主に a を経由 N ホフマン ( 主生成物 ) N < 共役塩基 (conjugate base) N N ザイツェフ ( 副生成物 ) 47

脱離基と脱離生成物 ( ザイツェフ vs ホフマン ) X Na 2 X ザイツェフ ホフマン I 81 19 72 28 l 67 F 0 70 N( ) 2 98 (2) 脱離反応 (E1vs E2 反応 )--- アルコールの例 脱離基の善し悪し ( 求核置換反応の再掲 ) Nu δ S N 2 δ X Nu X 強酸の共役塩基は優れた脱離基である ( 弱塩基だから ) 反応性大 脱離基 (X ー ) S N 2 での反応性 N 2 F l I <1 1 200 10000 0000 の脱離基は つまり アルコールの E2 反応は進行しない 一方 E1 反応では 良い脱離基をもつので容易に進行する δ S N 1 or E1-2 共役酸は強酸 ( ) S N 1 E1 () 主生成物の意味を考える (S N vs E 反応 )(p.226) 実際の反応では S N 1 反応とE1 反応は競合して起こり いずれか一方のみ起こすのは困難である すなわち E1 反応の最も優れた脱離基は S N 1 反応の最も優れた脱離基でもあり 通常置換生成物と脱離生成物の混合物が得られる l 64%(S N 1) 6%(E1) 48

チェック問題! 問 1 次の化合物は 何級ハロゲン化物 あるいは何置換アルケンかを答えなさい 2 l I 問 2 以下の記述に関して 正しいものには を 誤っているものには をつけ正しく直しなさい (a) ハロゲン化アルキルを E2 反応の反応速度の速くなる順に並べると ハロゲン化メチル 第一級ハロゲン化物 第二級ハロゲン化物 第三級ハロゲン化物の順になる ( ) (b) E1 反応によるアルコールの酸による脱水は 第三級アルコールの方が第二級アルコールより起こりやすい ( ) (c) アルコールの脱水反応は 酸でも塩基でも容易に起こる ( ) (d) E1 反応では鎖状化合物でも環状化合物でも ザイツェフ則に従うアルケンを生じる ( ) (e) E2 反応では鎖状化合物でも環状化合物でも ザイツェフ則に従うアルケンを生じる ( ) (f) E2 反応では 触媒として一般に酸が用いられるアンチ脱離 ( トランス脱離 ) である ( ) (g) 反応 A と反応 B のうち 生成物の合成法として適切なのは反応 A である ( ) l Na 2 Na 2 反応 A l 反応 B (h) 右に示す化合物にエトキシドイオンや t-ブトキシドイオンを用いて脱離反応を行うと 主生成物として 2-methylbut-2-ene が得られる ( ) 2 (i) メトキシドイオンよりエトキシドイオンの方が強塩基なのは アルキル基が電子供与性基だからである ( ) (j) ナトリウムメトキシドはメタノールを Na と反応させることで得られる ( ) (k) 以下の化合物は第 1 級ハロゲン化合物であるが 強塩基を用いることで E2 機構によりアルケンを生じる ( ) 2 2 (l) 次の反応の主生成物は A である ( ) N() I Ag 2, 2 加熱 2 A B 49

問 以下の反応において trans ブタ 2 エンを合成するための最も適した出発物 A はどれか 1つ選べ 2 Na 出発物 A 2 l 2 l l 1 2 4 5 問 4 E2 脱離の生成物として 正しいものはどれか 1 つ選べ 2 Na 1 2 4 5 問 5 次の 1)~2) の反応において ハロゲン化アルキルは主にどの反応を受けるか 1 求電子付加 2 求核付加 求電子置換 4 求核置換 5 脱離 1) NaN 2 2) ( ) 問 6 次の E2 反応に関する記述のうち 正しいのはどれか 2つ選べ (101-102) 2 Na 2 A B 1 カルボカチオン中間体を経由する 2 脱離すると とがシン ( シンペリプラナー ) の関係となる立体配座から進行する 反応速度は 化合物 A の濃度及びエトキシドイオンの濃度の両者に比例する 4 出発物質として化合物 A のエナンチオマーを用いると 化合物 B の幾何異性体が主生成物として得られる 5 化合物 B は Saytzeff( ザイツェフ セイチェフ ) 則に従った生成物である 問 7 シクロヘキサンの誘導体 A, B 及びその E2 反応に関する生成物 と D に関する記述のうち 正しいのはどれか 2つ選べ (94-9) 1 A と B は エナンチオマーの関係にある 2 A の安定ないす形配座において l 基はアキシアルに配置する A をエタノール中で ナトリウムエトキシドを用いて E2 反応を行うと 主としてアルケン が得られ D はほとんど得られない 4 エタノール中での ナトリウムエトキシドによる E2 反応速度を比較すると A > B となる ( ) 2 ( ) 2 ( ) 2 ( ) 2 l l A B D 50

有機化学の基礎 ( 再掲 ) 反応の種類 1. 反応の種類 ( 全体的なまとめ ) a. 置換反応 入れ替わり R 入れ替わり R 求電子置換 R X Nu 求核置換 R Nu 1. 求電子置換反応 ( 芳香族化合物の置換反応はほとんどが該当する ) 2. 求核置換反応 (S N 反応 nucleophilic substitution reaction) a)s N 1 反応 反応速度は原料の濃度だけ (1 分子 ) に依存 級基質で起こり易いカルボカチオン中間体 ラセミ化 b) S N 2 反応 反応速度は原料と試薬の両方の濃度 (2 分子 ) に依存 1 級基質で起こり易い立体反転 b. 脱離反応 ( 隣同士の炭素から X が脱離する ) X E1 脱離反応 2 X B 2 X E2 脱離反応 2 1.E 反応 elimination reaction アルケンが生成 2. ザイツェフ則とホフマン則 ( アルケンが生成するとき ) 付加反応では全く関係しない ザイツェフ則は多置換アルケンが生成するという経験則 ( 反意語がホフマン則 ).E1 反応 反応速度は原料の濃度だけ (1 次反応 ) に依存 級基質で起こり易い 中性及び酸性条件下で進行 カルボカチオン中間体を経る ザイツェフ則に従う 4.E2 反応 反応速度は原料と試薬の両方の濃度 (2 次反応 ) に依存 塩基性条件下で進行 級基質で起こり易い ( 強塩基条件では 1 級基質でも進行する ) アンチ脱離 ザイツェフ則に従うが環状基質ではザイツェフ則に従わない場合があるかさ高い塩基 [( ) ] の使用や4 級アンモニウム塩の脱離反応はホフマン則に従う c. 付加反応 マルコフニコフ付加 2, RR( 過酸化物 ) 反マルコフニコフ付加 2 1. アルケンやアルキンへの求電子付加反応 ( マルコフニコフ則と反マルコフニコフ則 ) 通常はマルコフニコフ則に従う アルケンのヒドロホウ素化(B ) は反マルコフニコフ則に従う ( シン付加でもある ) 2. カルボニル化合物への求核付加反応 ( 今回以降の講義で ) d. 転位反応 ( バイヤービリガー転位 クライゼン転位など Advanced 項目 ) バイヤービリガー転位 クライゼン転位 (m-クロロ過安息香酸) 51

~ Memo ~ 2016 version reated by Yakukagaku 52