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1. はじめに ステージティーエスワンこの文書は Stage Ⅲ 治癒切除胃癌症例における TS-1 術後補助化学療法の予後 予測因子および副作用発現の危険因子についての探索的研究 (JACCRO GC-07AR) という臨床研究について説明したものです この文書と私の説明のな かで わかりにくいと

study のデータベースを使用した このデータベースには 2010 年 1 月から 2011 年 12 月に PCI を施行された 1918 人が登録された 研究の目的から考えて PCI 中にショックとなった症例は除外した 複数回 PCI を施行された場合は初回の PCI のみをデータとして用いた

るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導

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32 子宮頸癌 子宮体癌 卵巣癌での進行期分類の相違点 進行期分類の相違点 結果 考察 1 子宮頚癌ではリンパ節転移の有無を病期判定に用いない 子宮頚癌では0 期とⅠa 期では上皮内に癌がとどまっているため リンパ節転移は一般に起こらないが それ以上進行するとリンパ節転移が出現する しかし 治療方法

博第265号

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う報告26)がみられるが Barrett 食道癌における FAK する必要がある 本研究における我々の目的は 1 の発 現 とそ の機能 に ついて の 報 告は み ら れ な い FAK の Barrett 食道癌における役割を検討すること Barrett 食道は胃食道逆流症により正常扁平上皮が

考えられている 一部の痒疹反応は, 長時間持続する蕁麻疹様の反応から始まり, 持続性の丘疹や結節を形成するに至る マウスでは IgE 存在下に抗原を投与すると, 即時型アレルギー反応, 遅発型アレルギー反応に引き続いて, 好塩基球依存性の第 3 相反応 (IgE-CAI: IgE-dependent

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ける発展が必要です 子宮癌肉腫の診断は主に手術進行期を決定するための子宮摘出によって得られた組織切片の病理評価に基づいて行い 組織学的にはいわゆる癌腫と肉腫の2 成分で構成されています (2 近年 子宮癌肉腫は癌腫成分が肉腫成分へ分化した結果 組織学的に2 面性をみる とみなす報告があります (1,

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83.8 歳 (73 91 歳 ) であった 解剖体において 内果の再突出点から 足底を通り 外果の再突出点までの最短距離を計測した 同部位で 約 1cmの幅で帯状に皮膚を採取した 採取した皮膚は 長さ2.5cm 毎にパラフィン包埋し 厚さ4μmに薄切した 画像解析は オールインワン顕微鏡 BZ-9

するものであり 分子標的治療薬の 標的 とする分子です 表 : 日本で承認されている分子標的治療薬 薬剤名 ( 商品の名称 ) 一般名 ( 国際的に用いられる名称 ) 分類 主な標的分子 対象となるがん イレッサ ゲフィニチブ 低分子 EGFR 非小細胞肺がん タルセバ エルロチニブ 低分子 EGF

ルグリセロールと脂肪酸に分解され吸収される それらは腸上皮細胞に吸収されたのちに再び中性脂肪へと生合成されカイロミクロンとなる DGAT1 は腸管で脂質の再合成 吸収に関与していることから DGAT1 KO マウスで認められているフェノタイプが腸 DGAT1 欠如に由来していることが考えられる 実際

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現し Gasc1 発現低下は多動 固執傾向 様々な学習 記憶障害などの行動異常や 樹状突起スパイン密度の増加と長期増強の亢進というシナプスの異常を引き起こすことを発見し これらの表現型がヒト自閉スペクトラム症 (ASD) など神経発達症の病態と一部類することを見出した しかしながら Gasc1 発現

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ABSTRACT

ASC は 8 週齢 ICR メスマウスの皮下脂肪組織をコラゲナーゼ処理後 遠心分離で得たペレットとして単離し BMSC は同じマウスの大腿骨からフラッシュアウトにより獲得した 10%FBS 1% 抗生剤を含む DMEM にて それぞれ培養を行った FACS Passage 2 (P2) の ASC

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H26大腸がん

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性黒色腫は本邦に比べてかなり高く たとえばオーストラリアでは悪性黒色腫の発生率は日本の 100 倍といわれており 親戚に一人は悪性黒色腫がいるくらい身近な癌といわれています このあと皮膚癌の中でも比較的発生頻度の高い基底細胞癌 有棘細胞癌 ボーエン病 悪性黒色腫について本邦の統計データを詳しく紹介し

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学位論文 ( 要約 ) Downregulation of mir-15a due to LMP1 promotes cell proliferation and predicts poor prognosis in nasal NK/T-cell lymphoma ( 鼻性 NK/T 細胞リンパ腫

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糖鎖の新しい機能を発見:補体系をコントロールして健康な脳神経を維持する

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Mincle は死細胞由来の内因性リガンドを認識し 炎症応答を誘導することが報告されているが 非感染性炎症における Mincle の意義は全く不明である 最近 肥満の脂肪組織で生じる線維化により 脂肪組織の脂肪蓄積量が制限され 肝臓などの非脂肪組織に脂肪が沈着し ( 異所性脂肪蓄積 ) 全身のインス

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のつながりは重要であると考える 最近の研究では不眠と抑うつや倦怠感などは互いに関連し, 同時に発現する症状, つまりクラスターとして捉え, 不眠のみならず抑うつや倦怠感へ総合的に介入することで不眠を軽減することが期待されている このようなことから睡眠障害と密接に関わりをもつ患者の身体的 QOL( 痛

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4 月 20 日 2 胃癌の内視鏡診断と治療 GIO: 胃癌の内視鏡診断と内視鏡治療について理解する SBO: 1. 胃癌の肉眼的分類を列記できる 2. 胃癌の内視鏡的診断を説明できる 3. 内視鏡治療の適応基準とその根拠を理解する 4. 内視鏡治療の方法 合併症を理解する 4 月 27 日 1 胃

であった まず 全ての膝を肉眼解剖による解析を行った さらに 全ての膝の中から 6 膝を選定し 組織学的研究を行った 肉眼解剖学的研究 膝の標本は 8% のホルマリンで固定し 30% のエタノールにて保存した まず 軟部組織を残し 大腿骨遠位 1/3 脛骨近位 1/3 で切り落とした 皮膚と皮下の軟

33 NCCN Guidelines Version NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 非ホジキンリンパ腫 2015 年第 2 版 NCCN.or

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骨形成における LIPUS と HSP の関係性が明らかとなった さらに BMP シグナリングが阻害されたような症例にも効果的な LIPUS を用いた骨治癒法の提案に繋がる可能性が示唆された < 方法 > 10%FBS と 抗生剤を添加した α-mem 培地を作製し 新生児マウス頭蓋骨採取骨芽細胞を

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小児の難治性白血病を引き起こす MEF2D-BCL9 融合遺伝子を発見 ポイント 小児がんのなかでも 最も頻度が高い急性リンパ性白血病を起こす新たな原因として MEF2D-BCL9 融合遺伝子を発見しました MEF2D-BCL9 融合遺伝子は 治療中に再発する難治性の白血病を引き起こしますが 新しい

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汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

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学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 佐藤雄哉 論文審査担当者 主査田中真二 副査三宅智 明石巧 論文題目 Relationship between expression of IGFBP7 and clinicopathological variables in gastric cancer ( 論文内容の要旨 ) < 要旨 > Insulin-like growth factor ( 以下 IGF) はチロシンキナーゼレセプターである Insulin-like growth factor -1 receptor ( 以下 IGF-R) に結合し 腫瘍細胞の増殖や分化 新生を促す Insulin-like growth factor binding protein 7 ( 以下 IGFBP7) は様々な悪性腫瘍において IGF-dependent pathway を介して腫瘍増殖を抑制することが報告されている 一方で腺癌においては IGFBP7 の発現と その腫瘍増殖 生存率との関連は報告により異なる 本研究では胃癌における IGFBP7 と臨床病理学的因子 予後との関連についての検討を行った 当院で 原発性胃癌に対して胃切除を受けた 219 人の患者を対象とし 手術検体における IGFBP7 のタンパク発現を免疫染色にて調べた また その中の 24 症例に対し Real-time quantitative reverse transcription PCR ( 以下 qrt-pcr) 法を用いて mrna の発現量を調べた それぞれの発現と臨床病理学的因子 予後との比較を行った IGFBP7 のタンパク高発現は腫瘍深達度 (P<0.001) リンパ節転移(P=0.002) 遠隔転移または再発 (P<0.001) pstage(p<0.001) との相関を認めた また IGFBP7 のタンパク高発現群は低発現群と比較し疾患特異的生存率が有意に低く (p<0.001) Cox-Hazard 法による多変量解析にて IGFBP7 高発現 (HR 4.8 95%CI 2.1-10.6 P<0.001) が疾患特異的生存率に対する独立した予後因子であった また IGFBP7 の mrna の発現量は進行癌 (vs. 早期癌 (P=0.002)) リンパ節転移陽性 (vs. リンパ節転移陰性 (P=0.002)) 遠隔転移あるいは再発あり(vs. 遠隔転移あるいは再発なし (P=0.019)) で有意に高値であった 以上の結果より IGFBP7 の高発現は胃癌の進行に関与しており 有意な予後不良因子であった 胃癌において IGFBP7 は腫瘍増殖に関与していることが示唆された < 緒言 > 様々なチロシンキナーゼレセプターが胃癌の浸潤や転移に関与していることが報告されてきたが その中でも HER-2 レセプター拮抗剤のみが胃癌の分子標的治療薬として承認されている しかし 胃癌患者の中で HER-2 陽性であるのは 12% 程度であり 化学療法に HER2 レセプター拮抗薬を併用しても生存率は 16 カ月に過ぎない 今後胃癌に対する新しいバイオマーカーの探索は重 - 1 -

要な研究課題である Insulin-like growth factor ( 以下 IGF) (IGF-I, IGF-II) はチロシンキナーゼレセプターである Insulin-like growth factor -1 receptor ( 以下 IGF-R) (IGF-1R, IGF-IIR) に結合し 腫瘍細胞の増殖や分化 新生を促す Matsubara らは IGF-1R の発現が進行胃癌患者において有意な予後不良因子であることを報告している IGF の働きを促進的 または抑制的に調節する物質として Insulin-like growth factor binding protein( 以下 IGFBP) (IGFBP1-7) が報告されている その一つのサブタイプである IGFBP7 は IGF-1 が IGF-1R に結合するのを阻害することで 腫瘍増殖を抑制することが報告されている 一方で腺癌においては IGFBP7 は IGF-dependent pathway とは別の経路で腫瘍増殖を促進することが報告されている 本研究では 胃癌における IGFBP7 の発現と臨床病理学的因子との関連についての検討を行った < 方法 > 2003 年 1 月から 2007 年 12 月まで 当院胃外科で原発性胃癌に対して胃切除を施行された 219 人を対象とした 免疫染色のための一次抗体は以下のものを使用した IGFBP7( マウスモノクローナル抗体 Santa Cruz Biotechnology U.S.A.) 免疫染色は一次抗体に結合する二次抗体 (Histofine Simple Stain MAX PO, Nichirei) を用い ジアミノベンジジンを用いて発色した 免疫染色の評価は 染色強度 (Staining intensity) を 3 段階 (0 1 2) と染色範囲 (Staining extensity) を 4 段階 (1 2 3 4) とし それらの和が 4 以上で高発現 4 未満で低発現と定義した また その中で 24 症例に対し Real-time quantitative reverse transcription PCR ( 以下 qrt-pcr) 法を用いて mrna の発現量を調べた < 結果 > IGFBP7 の高発現は 131 例 (59.8%) に認めた IGFBP7 の高発現は深達度 (P<0.001) リンパ節転移 (P=0.002) 遠隔転移または再発(P<0.001) pstage(p<0.001) との相関を認めた IGFBP7 の高発現群は低発現群と比較し疾患特異的生存率が有意に低く Cox-hazard 法を用いた多変量解析において IGFBP7 高発現は疾患特異的生存率において独立した予後因子であった (HR 4.8 95%CI 2.1-10.6 P<0.001) IGFBP7 の mrna の発現量は進行癌 (vs. 早期癌 (P=0.002)) リンパ節転移陽性(vs. リンパ節転移陰性 (P=0.002)) 遠隔転移あるいは再発あり(vs. 遠隔転移あるいは再発なし (P=0.019)) で有意に高かった < 考察 > 今回の結果から IGFBP7 のタンパク mrna の高発現は胃癌の進行に関与しており 予後不良因子であることが示唆された 同様に 食道癌 ( 腺癌 ) 大腸癌といった腺癌においても腫瘍増殖に関与することが報告されている 一方で 同じ腺癌である膵癌や大腸癌において IGFBP7 が腫瘍抑制効果を示すと報告する論文も見られる このような相反する結果の原因として IGFBP7 の発現が同一の癌腫内で異なることがあげられる Adachi らは 大腸癌においては腫瘍先進部で IGFBP7-2 -

の発現が高いことが多く 同じ癌腫内で不均一な発現を示すことを報告している また IGF-dependent pathway を介して腫瘍増殖を抑制する以外に 腫瘍の増殖を促す経路があるのではないかと考えられている Adachi らは IGFBP7 の高発現を腫瘍内とその付近の小血管に認めることから 腫瘍増殖に伴う血管新生に関与するのではないかと報告している Liu らは IGFBP7 のタンパク mrna の低発現が胃癌の進行を抑制し 予後不良因子であるという 我々の研究とは反対の結果を示している これには前述の理由以外に いくつかの理由が考えられる 胃癌がもともと不均一な性質を持っている 実際 チロシンキナーゼレセプターのタンパク発現が単一の癌腫内で異なるという報告が散見され 本研究でも免疫染色において不均一な発言を認めた また qrt-pcr の primer や免疫染色に用いた IGFBP7 の抗体 染色方法が異なることが挙げられる また Liu らの報告に比べ本研究の対象症例では早期胃癌の占める割合が高く 進行度の分布に違いがある < 結論 > 本研究の結果より IGFBP7 の高発現は胃癌の進行に関与しており 予後不良因子であることが示唆された - 3 -

論文審査の要旨および担当者 報告番号甲第 4899 号佐藤雄哉 論文審査担当者 主査田中真二 副査三宅智 明石巧 ( 論文審査の要旨 ) 1. 論文内容本論文は胃癌における insulin-like growth factor binding protein 7 (IGFBP7) の発現と臨床病理学的因子との関連についての論文である 2. 論文審査 1) 研究目的の先駆性 独創性 IGFBP7 は IGF-dependent pathway を抑制する以外に間質反応等を介して腫瘍増殖を促進することが報告されており 申請者は IGFBP7 発現について 胃癌 219 症例における免疫染色所見と臨床病理学因子 予後との関連について解析を行っており その着眼点は評価に値するものである 2) 社会的意義本研究で得られた主な結果は以下の通りである 1. 2003 年 1 月から 2007 年 12 月まで 当院胃外科で原発性胃癌に対して胃切除を施行された 219 人を対象とした 2. IGFBP7 の高発現は 131 例 (59.8%) に認めた IGFBP7 の高発現は深達度 (P<0.001) リンパ節転移 (P=0.002) 遠隔転移または再発(P<0.001) pstage(p<0.001) との相関を認めた 3. IGFBP7 の高発現群は低発現群と比較し疾患特異的生存率が有意に低く Cox-hazard 法を用いた多変量解析において IGFBP7 高発現は疾患特異的生存率において独立した予後因子であった (HR 4.8 95%CI 2.1-10.6 P<0.001) 4. IGFBP7 の mrna の発現量は進行癌 (vs. 早期癌 (P=0.002)) リンパ節転移陽性(vs. リンパ節転移陰性 (P=0.002)) 遠隔転移あるいは再発あり(vs. 遠隔転移あるいは再発なし (P=0.019)) で有意に高かった 以上のように申請者は IGFBP7 が胃癌の疾患特異的生存率の独立規定因子であることを明らかにしている これは臨床的にも極めて有用な研究成果であると言える 3) 研究方法 倫理観 研究には本学医学部附属病院で根治切除がなされた原発性胃癌 219 症例が用いられ 切除標本 の IGFBP7 免疫染色所見と臨床病理学的因子の相関を調べている 十分な病理組織学的知識 ( 1 )

技術 臨床的知見のもとに遂行されており 申請者の研究方法に対する知識と技術力が十分に高いことが示された また 本学医学部倫理審査委員会の承認を得ており 本研究が十分な準備の上に行われてきたと考えられる (831: 消化器癌および胃癌の発生と進展 治療効果 予後に関わる因子の解析 ) 4) 考察 今後の発展性申請者は 本研究結果によって IGFBP7 が胃癌の根治切除後の予後予測バイオマーカーのひとつとなる可能性を考察している これは先行研究と照らし合わせても極めて妥当な考察であり 今後の研究にてさらに発展することが期待される 3. その他特記事項なし 4. 審査結果論文審査の内容を踏まえ 本論文は博士 ( 医学 ) の学位申請に値する十分な価値があるものと認められた ( 2 )