資料 -6 東北地域における物流環境変化への対応検討 トラックドライバー不足が東北地域の物流に及ぼす影響の検討 平成 29 年 3 月 27 日 1
1. トラックドライバー不足の検討に至る経緯 トラックドライバーの取り巻く情勢 トラック業界においては 平成 2 年の規制緩和により新規参入が増大 以降長年にわたる供給過多により競争が激化 安全 環境問題への規制強化とこれによる輸送料金の増加など 物流事業者の経営悪化 ( ドライバー賃金の低水準化 ) これによりトラックドライバーの担い手が不足することが産業界で懸念されるようになる 検討内容 ドライバー不足が東北地域の物流に どのような影響をもたらすかを検討する ちなみに既往調査などでは地域別の影響を考察したものは少ない 2
2. トラックドライバー数の推移と国内貨物輸送について ドライバー数 ( 全国 )( 万人 ) ドライバー数 ( 東北 )( 千人 ) トラックドライバー数の推移 平成 2 年の規制緩和により新規事業者が増えたため 平成 12 年まではトラックドライバー数が増加している 平成 12 年以降は 物流事業者などの収益性の低下および厳しい労働環境からトラックドライバー数が減少している 国内貨物輸送( トンキロ ) の推移 平成 12 年以降はトラックドライバー数が減少傾向にあるが 国内貨物輸送トンキロ ( 自動車 ) は平成 19 年度まで増加している 自動車輸送の大型化および長距離化が進展 平成 22 年度以降は復興需要などにより建設関連貨物の輸送量が増加した 建設関連貨物を輸送するダンプトラック ( 自動車 ) は輸送距離が短くトンキロベースで減少傾向となったが 輸送距離が長い海運ではトンキロベースが増加傾向を示した 長距離輸送における海上輸送の優位性発揮 120 100 80 70,749 84,434 98,650 100,630 90,329 82,560 120 100 80 ( 億トンキロ ) 4000 3500 3000 2500 2000 1500 1000 鉄道海運自動車航空 500 60 40 20 0 979,996 973,442 881,348 838,269 725,760 784,200 昭和 60 年 平成 2 年 平成 7 年 平成 12 年 平成 17 年 平成 22 年 全国 ( 左軸 ) 東北 ( 右軸 ) 図 1 東北地域におけるドライバー数の推移 60 40 20 0 0 S35 40 45 50 55 60 H3 8 10 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 (%) 国内貨物輸送機関分担率 ( トンキロベース ) ( 年度 ) 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 図 2 国内貨物輸送トンキロの推移 S35 40 45 50 55 60 H3 8 10 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 ( 年度 ) 自動車鉄道航空海運 図 3 国内貨物輸送機関分担率 ( トンキロベース ) 3
3. ドライバー不足の現状把握 ( 運送事業者へのヒアリング ) 各県におけるトラック事業者へのヒアリング結果 対象者 東北 7 県のトラック運送事業者 (7 者 ) トラック事業者からの主な意見 荷主の輸送オファーをお断りせざるを得ない場面も発生しており 現状において飽和状態にあると言える 雇用延長しているベテラン世代は今後 5 年以内にほぼ退職してしまうため 若年ドライバーが確保できなければ 日帰り困難な 300km を超える長距離輸送において支障を来す 300km を超える長距離輸送において スピードの要求される貨物 ( 農産品 ) はトラック輸送から他モードへシフトさせにくく ドライバー不足の影響を最も受けやすい 復興工事関係の運賃収入が良いため 工事用ダンプトラックにドライバーが流れている ( 東北地域におけるドライバー不足の要因 ) ハローワークや求人誌などに求人情報を載せても問合せが殆どない状況である 運送会社の中で大型免許を持っている事務員を乗務させたり ベテランドライバーを 65 歳まで雇用延長するなどの事例あり 4
4. トラックドライバー需給の将来予測 トラックドライバー ( 大型自動車 ) の供給量は 2015 年から 2025 年までに 2 割ほど減少する予測となっている 全体に対する 50 歳以上のトラックドライバーの割合は 2015 年から 2025 年までに 17% 増加する予測となっている 需要量と供給量を比較すると 2020 年までに需要量に対して 1 割のドライバーの供給量が不足する予測となっている 労働力確保と輸送の効率化に向けた対策は喫緊の課題と推測する トラックドライバー ( 大型自動車 ) 供給量の将来予測 (2015 年 ) 合計人数 :367,897 :357,897 人 2% 2015 年 2025 年 65 歳以上 60~64 歳 55~59 歳 50~54 歳 45~49 歳 40~44 歳 35~39 歳 30~34 歳 25~29 歳 0% 2% 7% 10% 14% 15% 16% 16% 50 歳以上全体の 47% 18% 20~24 歳 ( 人 ) 0 20,000 40,000 60,000 80,000 65 歳以上 60~64 歳 55~59 歳 50~54 歳 45~49 歳 40~44 歳 35~39 歳 30~34 歳 25~29 歳 20~24 歳 トラックドライバー ( 大型自動車 ) 供給量の将来予測 2 割減 (2025 年 ) 合計人数 :287,396 人 2% 0% 1% 5% 10% 9% 11% 19% 18% 25% ( 人 ) 0 20,000 40,000 60,000 80,000 図 4 トラックドライバー ( 大型自動車 ) 供給量の将来予測 (2015 年 ) 図 5 トラックドライバー ( 大型自動車 ) 供給量の将来予測 (2025 年 ) 表 1 トラックドライバー数の過不足 2010 年度 2020 年度 2030 年度 需要量 993,765 人 1,030,413 人 958,443 人 供給量 964,647 人 924,202 人 872,497 人 過不足 29,118 人 (2.9%) 106,211 人 (10.3%) 85,946 人 (9.0%) 50 歳以上全体の 64% 出典 : 公益社団法人鉄道貨物協会 平成 25 年度本部委員会報告書 5
5. ドライバー不足における輸送の効率化への取組について トラックトライバー不足における輸送を効率化するための各機関の取組については以下の通り 分類内容 隊列走行主体 : 国立研究開発法人新エネルギー 産業技術総合開発機構 (NEDO) トラックを隊列走行することにより走行中の空気抵抗低減による車両の省エネ化と交通流改善による渋滞の低減を実現する ダブル連結トラック主体 : 国土交通省道路局 1 台で通常の大型トラック2 台分の輸送が可能な ダブル連結トラック の導入を目指す 陸上輸送 中継輸送実験主体 : 国土交通省道路局 高速道路のSA PAを活用した中継輸送実験 ( 群馬県 - 三重県への輸送の中継地である清水 PAでドライバーを交代 ) 中継輸送施設整備 輸送の効率化のために ターミナル機能や中継輸送のハブ機能を持った物流施設の整備 高速道路整備 東日本大震災からの復興のため 三陸道路などの高規格道路整備が進展 コンテナラウンドユース 輸入に用いた後の空コンテナを港湾に戻さず輸出に転用するもので 輸入者から輸出者に直接輸送したりすることで 空コンテナ輸送を削減する仕組み 海上輸送 新規航路開設 ( モーダルシフト ) 主体 : 川崎近海汽船株式会社 宮古- 室蘭航路の開設フェリー航路の開設 ( 予定 ) 大分- 清水航路開設 RORO 船航路の開設 コンテナヤード整備 計画 東北各港湾( 仙台塩釜港 小名浜港 酒田港 釜石港 ) のコンテナ取扱量が過去最高 仙台塩釜港 八戸港 酒田港などのコンテナヤードの拡張整備 計画 モーダルシフト RORO 船による農産品輸送実証実験 主体 : 青森県 鉄道輸送 モーダルシフト キリンビールとアサヒビールの製品共同輸送 キャノンとダイキン工業の共同輸送 ネスレ日本の鉄道輸送量を2 倍に増加 6
6. 輸送効率化に向けた東北での取組事例 ( 自動車輸送 ) 近物レックス 平成 28 年 12 月に東北エリアの拠点ターミナルとなる福島県本宮市に開設 ( 東北自動車道 本宮 IC から約 3km に位置し 国道 4 号線にも近接する好立地条件 ) 幹線輸送のためのターミナル機能と 首都圏への輸送のハブ機能を担う 日本梱包運輸倉庫 平成 28 年 3 月に岩手県北上市に北上営業所を開設 ( 東北自動車道 北上金ヶ崎 IC から約 3km に位置し 国道 4 号線にも近接する好立地条件 ) 自動車関連 農業機械などの保管 加工 輸送などを行い 全国配送の拠点となる 輸送効率化のために全国導入しているフルトレーラ ( 全長 21m) の拠点ターミナルとしても位置づけられる 北上 JCT 図 6 近物レックス ( 株 ) 出典 : 物流ニッポン 2016 年 7 月 11 日付 郡山 JCT 図 7 日本梱包運輸倉庫 ( 株 ) 出典 : 日本梱包運輸倉庫 ( 株 ) HP より 出典 :JAF HP より 7
7. 輸送効率化に向けた取組事例 ( 海上輸送 ) 新規内航航路開設 2016 年 10 月 川崎近海汽船 はトラックドライバー不足への対応等として 大分港と清水港を結ぶ新規の内航 RORO 船航路を就航させた 新規フェリー航路開設 ( 予定 ) 川崎近海汽船 は 2018 年 6 月を目途に室蘭港と宮古港を結ぶ新規のフェリー航路を就航させることを 2016 年 3 月に発表した 室蘭 北王丸 (RORO 船 ) 出典 : 川崎近海汽船 HP より 清水 宮古 シルバークイーン ( フェリー ) 出典 : シルバーフェリー HP より 大分 室蘭 - 宮古フェリー航路選定理由 1 整備が進められている三陸沿岸道路 宮古盛岡横断道路の早期開通により 宮古港から岩手県各地 仙台 首都圏等へのアクセスが向上 2 トラック事業者からドライバーがフェリー乗船中に充分な休息がとれるよう 10 時間で結ぶ新たな航路開設の要望あり 宮古港 ~ 室蘭港は航海時間が 10 時間 1 日 1 往復が可能な最適航路 3 宮古港 室蘭港とも近隣に国立公園など観光資源が非常に豊富で旅客需要が期待 図 8 九州 東京の場合の輸送ルート比較 出典 : 川崎近海汽船 HP より 8
8. 海上コンテナの陸上輸送における物流効率化の提案 コンテナ取扱量の増加が進展している東北港湾においては 港湾周辺道路における交通渋滞の発生が懸念される 交通渋滞によりトラックドライバーの拘束や物流の停滞などが引き起こされる 海上コンテナの陸上輸送の更なる効率化を進めるために 近年各地域で取り組まれているコンテナラウンドユース ( 以後 CRU) について 東北地域への展開の可能性を検討したい CRU とは輸入に用いた後の空コンテナを港に戻さず輸出に転用するもので 輸入者から輸出者に直接輸送したり 近隣のインランドコンテナデポ ( 以降 ICD) を活用したりすることによって 空コンテナ輸送を削減する仕組みのこと 通常の海上コンテナ輸送 実入りコンテナ 空コンテナ 輸入者 CRU 実施後の海上コンテナ輸送 ( 例 ) 実入りコンテナ 輸入者 CRU の先進事例 つくば ( 茨城県 ) における CRU 連絡先 : みなと運送 宇都宮 ( 栃木県 ) における CRU 連絡先 : 宇都宮国際貨物ターミナル 太田市に及びその周辺地域 ( 群馬県 ) における CRU 連絡先 : 太田国際貨物ターミナル 港 港 港 内陸間の空コンテナ輸送を削減 空コンテナ 伏見 ( 京都府 ) における CRU 連絡先 : 郵船港運 空コンテナ 実入りコンテナ 輸出者 実入りコンテナ 輸出者 白河 ( 福島県 ) における CRU 連絡先 : 日本通運郡山支店 野州 ( 滋賀県 ) における CRU 連絡先 : 日本通運大津支店 図 9 コンテナラウンドユース (CRU) のイメージ図出典 : コンテナラウンドユース推進の手引きより 出典 : コンテナラウンドユース推進の手引きより 9
参考 CRU 先進事例 太田国際貨物ターミナル (OICT) 宇都宮国際貨物ターミナル (UICT) 阪神インランドコンテナデポ滋賀みなくち (ICD) みなと運送株式会社つくば支店 出典 : コンテナラウンドユースの実態調査とモデル作成 の資料に基づき 最新情報を追加して作成 10