1 C H A PTER 第1部 脳卒中は早期の チームアプローチ で治療せよ 運動 感覚 構音障害 高次機能障害 失語 しびれ 感覚障害 片麻痺 これは 何ですか 構音障害 極める 1 臨床編 失認 あわ 麻痺した手足を早期に治療するには まずガイ ドラインを読み解け 極める 2 麻痺側肩関節の筋

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2 片脚での体重支持 ( 立脚中期, 立脚終期 ) 60 3 下肢の振り出し ( 前遊脚期, 遊脚初期, 遊脚中期, 遊脚終期 ) 64 第 3 章ケーススタディ ❶ 変形性股関節症ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

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摂食嚥下訓練 排泄訓練等を開始します SCU で行うリハビリテーションの様子 ROM 訓練 ( 左 ) と端坐位訓練 ( 右 ) 急性期リハビリテーションプログラムの実際病棟訓練では 病棟において坐位 起立訓練を行い 坐位耐久性が30 分以上となればリハ訓練室へ移行します 訓練室訓練では訓練室におい

脳卒中に関する留意事項 以下は 脳卒中等の脳血管疾患に罹患した労働者に対して治療と職業生活の両立支援を行うにあ たって ガイドラインの内容に加えて 特に留意すべき事項をまとめたものである 1. 脳卒中に関する基礎情報 (1) 脳卒中の発症状況と回復状況脳卒中とは脳の血管に障害がおきることで生じる疾患

リハビリテーション歩行訓練 片麻痺で歩行困難となった場合 麻痺側の足にしっかりと体重をかけて 適切な刺激を外から与えることで麻痺の回復を促進させていく必要があります 麻痺が重度の場合は体重をかけようとしても膝折れしてしまうため そのままでは適切な荷重訓練ができませんが 膝と足首を固定する長下肢装具を

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平成 28 年度診療報酬改定情報リハビリテーション ここでは全病理に直接関連する項目を記載します Ⅰ. 疾患別リハビリ料の点数改定及び 維持期リハビリテーション (13 単位 ) の見直し 脳血管疾患等リハビリテーション料 1. 脳血管疾患等リハビリテーション料 (Ⅰ)(1 単位 ) 245 点 2

図表 リハビリテーション評価 患 者 年 齢 性 別 病 名 A 9 消化管出血 B C 9 脳梗塞 D D' E 外傷性くも幕下出血 E' 外傷性くも幕下出血 F 左中大脳動脈基始部閉塞 排尿 昼夜 コミュニ ケーション 会話困難 自立 自立 理解困難 理解困難 階段昇降 廊下歩行 トイレ歩行 病

認定看護師教育基準カリキュラム

また リハビリテーションの種類別では 理学療法はいずれの医療圏でも 60% 以上が実施したが 作業療法 言語療法は実施状況に医療圏による差があった 病型別では 脳梗塞の合計(59.9%) 脳内出血 (51.7%) が3 日以内にリハビリテーションを開始した (6) 発症時の合併症や生活習慣 高血圧を

3 病型別 初発再発別登録状況病型別の登録状況では 脳梗塞の診断が最も多く 2,524 件 (65.3%) 次いで脳内出血 868 件 (22.5%) くも膜下出血 275 件 (7.1%) であった 初発再発別の登録状況では 初発の診断が 2,476 件 (64.0%) 再発が 854 件 (22

復習問題

背屈遊動 / 部分遊動 装具の良好な適合性 底屈制動 重心移動を容易にするには継手を用いる ただし痙性による可動域に抵抗が無い場合 装具の適合性は筋緊張の抑制に効果がある 出来るだけ正常歩行に近付けるため 痙性が軽度な場合に用いる 重度の痙性では内反を矯正しきれないので不安定感 ( 外 ) や足部外

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Part 1 症状が強すぎて所見が取れないめまいをどうするか? 頭部 CT は中枢性めまいの検査に役立つか? 1 めまい診療が難しい理由は? MRI 感度は 50% 未満, さらには診断学が使えないから 3

124 皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症

3 病型別 初発再発別登録状況病型別の登録状況では 脳梗塞合計が最も多く 3,200 件 ( 66.7%) 次いで脳内出血 1,035 件 (21.6%) くも膜下出血 317 件 ( 6.6%) であった 初発再発別の登録状況では 初発の診断が 3,360 件 (70.1%) 再発が 1,100

124 皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症 概要 1. 概要皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症 (Cerebral Autosomal Dominant Arteriopathy with Subcortical Infarct and Leukoencephalopathy

バイタル : 安静時血圧 /80-90mmhg 台心拍数 70 台 SpO₂98% 急性期病院にて頻回に起立性低血圧あり 意識レベル : JCSⅠ-2 軽度注意障害あり 運動麻痺 : BRS 上肢 Ⅱ 下肢 Ⅲ 手指 Ⅱ 感覚 : 右上下肢表在感覚軽度鈍麻 深部感覚軽度鈍麻 疼痛 :

岸和田徳洲会病院 当院では以下の研究に協力し情報を提供しております この研究は 国が定めた指針に基づき 対象となる患者さまのお一人ずつから直接同意を得るかわりに 研究の目的を含む研究の実施についての情報を公開しています 研究結果は学会等で発表されることがありますが その際も個人を特定する情報は公表し

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脳卒中医療体制検討特別委員会 Ⅰ. はじめに recombinant tissue plasminogen activator: rt-pa rt-pa J-MARS rt-pa D D Detection Dispatch Delivery Door Data Decision Drug. Act

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【案トレ】(案1)【通知案】(29年7月施行)はり師、きゅう師及びあん摩・マッサージ・指圧師の施術に係る療養費の支給の留意事項等について

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( 別紙様式 21 の 2) 患者氏名 : 男 女生年月日 ( 西暦 ) 年月日計画評価実施日年月日主治医リハ担当医 PT OT ST 診断名 障害名 ( 発症日 手術日 診断日 ): 合併症 ( コントロール状態 ): 発症前の活動 社会参加 : 日常生活自立度 : J1 J2 A1 A2 B1

幻覚が特徴的であるが 統合失調症と異なる点として 年齢 幻覚がある程度理解可能 幻覚に対して淡々としている等の点が挙げられる 幻視について 自ら話さないこともある ときにパーキンソン様の症状を認めるが tremor がはっきりせず 手首 肘などの固縮が目立つこともある 抑うつ症状を 3~4 割くらい

脳血管疾患による長期入院者の受診状況~レセプトデータによる入院前から退院後5年間の受診の分析

症例報告書の記入における注意点 1 必須ではない項目 データ 斜線を引くこと 未取得 / 未測定の項目 2 血圧平均値 小数点以下は切り捨てとする 3 治験薬服薬状況 前回来院 今回来院までの服薬状況を記載する服薬無しの場合は 1 日投与量を 0 錠 とし 0 錠となった日付を特定すること < 演習

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Microsoft Word - 01_2_【資料1】ICD最近の動向(脳卒中、認知症)170626(反映)

工内耳植込手術等に伴う聴覚 言語機能の障害を有する患者さん 顎 口腔の先天 異常に伴う構音障害を有する患者さん 運動器 上 下肢の複合損傷 脊椎損傷による四肢麻痺その他の急性発症した運動器疾患又 器疾患により 一定程度以上の運動機能及び日常生活能力の低下を来している患者 はその手術後の患者さん 関節


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地域医療連携パスの概念

リハビリテーションを受けること 以下 リハビリ 理想 病院でも自宅でも 自分が納得できる 期間や時間のリハビリを受けたい 現実: 現実: リ ビリが受けられる期間や時間は制度で リハビリが受けられる期間や時間は制度で 決 決められています いつ どこで どのように いつ どこで どのように リハビリ

脂質異常症を診断できる 高尿酸血症を診断できる C. 症状 病態の経験 1. 頻度の高い症状 a 全身倦怠感 b 体重減少 体重増加 c 尿量異常 2. 緊急を要する病態 a 低血糖 b 糖尿性ケトアシドーシス 高浸透圧高血糖症候群 c 甲状腺クリーゼ d 副腎クリーゼ 副腎不全 e 粘液水腫性昏睡

PowerPoint プレゼンテーション

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脳卒中の医療連携体制を担う医療機関等における実績調査 調査内容 平成 28 年度の実績 ( 調査内容は別紙様式のとおり ) 別紙 1: 急性期の医療機能を有する医療機関用別紙 2: 急性期及び回復期の医療機能を有する医療機関用別紙 3: 回復期の医療機能を有する医療機関用別紙 4: 維持期の医療機能

スライド タイトルなし

FLONTA Vol.2 FlowGate 2 Balloon Guide Catheter technical assistant FlowGate 2 Balloon Guide Catheter を使用した臨床経験 佐世保市総合医療センター脳神経外科 林健太郎先生 FlowGate 2 Bal

3) 適切な薬物療法ができる 4) 支持的関係を確立し 個人精神療法を適切に用い 集団精神療法を学ぶ 5) 心理社会的療法 精神科リハビリテーションを行い 早期に地域に復帰させる方法を学ぶ 10. 気分障害 : 2) 病歴を聴取し 精神症状を把握し 病型の把握 診断 鑑別診断ができる 3) 人格特徴

症例検討 : ベッドサイド評価情報 バイタル : 安静時 血圧 /80-90mmhg 台心拍数 70 台 SpO₂98% 精神機能 : JCSⅠ-2 軽度注意障害あり B R S : 上肢 Ⅱ 下肢 Ⅲ 手指 Ⅱ 感 覚 : 右上下肢表在感覚軽度鈍麻 深部感覚鈍麻 疼 痛 : 右肩関節

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10038 W36-1 ワークショップ 36 関節リウマチの病因 病態 2 4 月 27 日 ( 金 ) 15:10-16:10 1 第 5 会場ホール棟 5 階 ホール B5(2) P2-203 ポスタービューイング 2 多発性筋炎 皮膚筋炎 2 4 月 27 日 ( 金 ) 12:4

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短期集中リハビリ入所ご案内 介護老人保健施設ウエルハウス西宮

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2009年8月17日

理学療法科学 22(1):33 38,2007 特集 脳卒中における機能障害と評価 Impairments and their Assessment in Stroke Patients 望月久 1) HISASHI MOCHIZUKI 1) 1) Department of Rehabilitat

GE ヘルスケア ジャパン 3D ASL( 非造影頭部灌流画像 ) の実践活用 IMS( イムス ) グループ医療法人社団明芳会横浜新都市脳神経外科病院画像診療部竹田幸太郎 当院のご紹介横浜新都市脳神経外科病院 ( 横浜市 青葉区 ) は 1985 年に開院し 患者さんの 満足 と 安心 を第一に考

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( 別紙様式 21 の 2) リハビリテーション実施計画書 患者氏名 : 男 女生年月日 ( 西暦 ) 年月日計画評価実施日年月日主治医リハ担当医 PT OT ST 診断名 障害名 ( 発症日 手術日 診断日 ): 合併症 ( コントロール状態 ): 発症前の活動 社会参加 : 日常生活自立度 :

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例 vs 28 例で有意差なかったが 二次エンドポイントの mrs 例 vs 24 例と有意差を認め た この研究は倫理的問題のため中止となっている AHA のガイドラインでは局所動注療法は 全体として予後改善の効果があるが静注療法と治療成績に差はなかった 静注療法と局所動注療法を比較

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書式例 (A4 サイズにて提出してください ) 日本神経学会認定更新小委員会殿 認定更新期間延長願 年月日提出 認定更新期間延長願 標記の件 下記の期間 下記研究機関に海外留学 出張いたしますので 留学先の受書 在籍証明書 ( 写 ) をそえてお届けいたします よろしくお願い申し上げます 記氏名 :

タに Wilcoxon 順位和検定 名義データにカイ二乗検定を行った 帰結の指標 (BRS FIM 運動関連 および総入院日数 ) と rfa 値の関連について まず脳出血群と脳梗塞群のそれぞれで 次に両群の総計で Spearman の順位相関解析を行った いずれの解析においても P < 0.05

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エントリーが発生 真腔と偽腔に解離 図 2 急性大動脈解離 ( 動脈の壁が急にはがれる ) Stanford Classification Type A Type B 図 3 スタンフォード分類 (A 型,B 型 ) (Kouchoukos et al:n Engl J Med 1997) 液が血管

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C H A PTER 第部 脳卒中は早期の チームアプローチ で治療せよ 運動 感覚 高次機能障害 失語 しびれ 片麻痺 これは 何ですか 極める 失認 あわ 麻痺した手足を早期に治療するには まずガイ ドラインを読み解け 極める 2 麻痺側肩関節の筋緊張が低くても積極的に荷重 頭痛 する 意識障害 その他 嘔気 嘔吐 極める 3 歩行練習では 遊脚期ではなく立脚期に焦点を あてる 極める 4 チーム医療で治療を成功に導く 図 脳卒中でよくみられる症状 文献 より このほかに 歩行障害 運動失調 めまい 嚥下障害などがある 極める 麻痺した手足を早期に治療するには まずガイドラインを読み解け 脳卒中 脳血管障害 それは読んで字のごとく脳血管が破綻すること であり 脳梗塞 脳出血 くも膜下出血などによって運動麻痺だけでなく感覚障 害や高次脳機能障害といった後遺症が生じやすく 日常生活動作 activity of daily living ADL や復職に大きな支障をきたします 図 図 2 脳卒中 は皆さんにはお馴染みの疾患だと思いますが 頑張っても 頑張っても 回復さ せることがなかなか難しい疾患ですよね 002 高次脳機能障害 認知症 失語 失認 失行 半側空間無視 記憶障害 など 嚥下障害 運動障害 対側の片麻痺 痙縮 拘縮 肩関節の亜脱臼 うつ状態 排泄状態 対側半身 しびれ 痛み 図2 脳梗塞の主な後遺症 文献 より 脳卒中を発症すると 急性期を過ぎても何らかの症状が残る可能性がある 機能回 復 機能維持のためのリハビリテーションが重要である 日々 そんなモンスターのような疾 第章 脳卒中は早期のチームアプローチで治療せよ 0 0 3

C H A PTER 第部 脳卒中は早期の チームアプローチ で治療せよ 運動 感覚 高次機能障害 失語 しびれ 片麻痺 これは 何ですか 極める 失認 あわ 麻痺した手足を早期に治療するには まずガイ ドラインを読み解け 極める 2 麻痺側肩関節の筋緊張が低くても積極的に荷重 頭痛 する 意識障害 その他 嘔気 嘔吐 極める 3 歩行練習では 遊脚期ではなく立脚期に焦点を あてる 極める 4 チーム医療で治療を成功に導く 図 脳卒中でよくみられる症状 文献 より このほかに 歩行障害 運動失調 めまい 嚥下障害などがある 極める 麻痺した手足を早期に治療するには まずガイドラインを読み解け 脳卒中 脳血管障害 それは読んで字のごとく脳血管が破綻すること であり 脳梗塞 脳出血 くも膜下出血などによって運動麻痺だけでなく感覚障 害や高次脳機能障害といった後遺症が生じやすく 日常生活動作 activity of daily living ADL や復職に大きな支障をきたします 図 図 2 脳卒中 は皆さんにはお馴染みの疾患だと思いますが 頑張っても 頑張っても 回復さ せることがなかなか難しい疾患ですよね 002 高次脳機能障害 認知症 失語 失認 失行 半側空間無視 記憶障害 など 嚥下障害 運動障害 対側の片麻痺 痙縮 拘縮 肩関節の亜脱臼 うつ状態 排泄状態 対側半身 しびれ 痛み 図2 脳梗塞の主な後遺症 文献 より 脳卒中を発症すると 急性期を過ぎても何らかの症状が残る可能性がある 機能回 復 機能維持のためのリハビリテーションが重要である 日々 そんなモンスターのような疾 第章 脳卒中は早期のチームアプローチで治療せよ 0 0 3

第部 表 BAD 患者へのリハビリテーション 患者 82 歳男性 身長 66. 0cm 体重 50.kg BMI8. 2 リハビリテーション開始時の理学療法評価 バイタル 血圧 57/89 mmhg 心 拍数 83 回/分 SpO2 95 7 随意性 上肢 BRS Ⅰ 下肢 BRS Ⅱ 2 意識 JCS 3 0 8 脳神経 右顔面神経麻痺と 3 深部腱反射 消失 減弱 診断名 branch atheromatous disease BAD 現病歴 某日 6 時 40 分に右上肢の脱力を自覚したため近医で CT 検査 を行ったが 脳卒中 脳梗塞 の所見はなかった 図 9 しかし 近医は本 症例が脳卒中の可能性が高く MRI などの詳細な検査が必要と判断し 当 院に救急搬送された 9 呼吸機能 痰の貯留多い 4 感覚 軽度鈍麻 8/0 0 バーセルインデックス 0/00 点 5 筋緊張 弛緩 mrs 5 6 筋力 上肢 MMT 0 下肢 MMT 2 2 SIAS 35/76 点 JCS Japan coma scale 日本昏睡尺度 MMT manual muscle test 徒手筋力テ スト BRS Brunnstrom recovery stage mrs modified Rankin scale SIAS stroke impairment assessment set 搬送時の神経学的所見では 意識レベル JCS と右不全片麻 痺 上肢徒手筋力テスト manual muscle test MMT 2 下肢 MMT 3 であり MRI 画像から左基底核でのラクナ梗塞と診断された 血栓溶解療 確認され BAD と診断された 図 9 National Institute of Health Stroke Scale NIHSS 2/42 点であった 法 r-tpa の適応はなく 同日 9 時 0 分から抗凝固療法や抗血小板療法 リハビリテーション開始時の理学療法評価は 表 の通りであった などの急性期治療が開始された 既往歴 脊髄小脳変性症 高血圧 認知症 受診翌日にと右片麻痺の進行 上肢 MMT 0 下肢 MMT が確認された MRI で 左内包後脚 放線冠の脳梗塞の増悪を示す所見が 理学療法経過 受診当日 6 時 40 分 発症 受診 受診翌日 6 時 リハビリテーション開始 図 0-a 受診 4 日後 脳卒中地域連携パスを運用 受診 7 日後 一般病室 ギャッジアップ 図 0-b 受診 5 日後 リハビリテーション室 端座位 図 0-c 受診 27 日後 平行棒内立位練習 図 0-d 受診 35 日後 リハビリテーション専門病院へ転院 まとめ 発症翌日に麻痺が増悪した BAD 症例を紹介しました 本症例の 受診当日 ように病態が不安定な場合 リスク管理上 バイタルサインなどの状態が 安定するまでは安静臥床となることが多いです しかし それでは廃用症 候群の進行に加えて 麻痺がさらに増悪することもあります 本症例では 患者にかかわるスタッフが情報を共有することでリスク管 理を徹底することができ 発症翌日から積極的なリハビリテーションを実 施して スムースにリハビリテーション専門病院への転院へと進めること 受診翌日 ができました MRI 画像結果 発症当初の MRI 画像では放線冠にラクナ梗塞であったが 翌日には病巣が拡大している 0 2 第章 脳卒中は早期のチームアプローチで治療せよ 0 3

第部 C O L U M N 8 自主練習と家族指導. パ ーキンソン病 PD とパーキンソン症候群 PD-syn の違いを理解してリハビリテーションに活かせる の PD-syn 患者に 姿勢を直す指導と 2. 直立できるだけ 四つ這い練習の指導の両方を行える の指導で 実用性のある立ち上 3. 膝を使った立ち上がり がり動作の指導ができる など 歩行 αの実 4. 歩いて車イスの前まで行って座る 用的な動きを指導できる 通常の臨床場面だけでなく 退院時に には 顔が患者の膝や足関節よりも前方 自主練習や介助の仕方 のアドバイス へ位置するようにします 慣れないうち を求められることがあります その時に は 右足関節を歩手前に引きます は できるだけ簡単なことを指導するよ うにしています 難しいことでは正確に 3 移乗動作 できない可能性があるし 長続きもしな 右側への移乗動作が安全です 立ち上 いからです そこで 普段私が行ってい がり動作同様 前傾姿勢によって重心を る基本動作や杖の使用法などの ADL 指 前方に移動させますが その際に 右足 導について 脳卒中による左片麻痺患者 関節を 歩手前に引きます 中途半端な を想定し あくまでも基本的で安全な動 姿勢で方向転換せず しっかりとした立 作方法を紹介します 位姿勢になってから 反時計回りで殿部 をベッドに向けます 図 0 起き上がり動作 左上肢を右上肢で患者自身の前にもっ 文献 4 杖の使い方 てくることで 置き去りにならないよう 杖が左下肢を補ってくれることを理解 にします 同様に左下肢を右下肢で下か してもらいます したがって 杖と左下 ら支えるようにしながら右側へもってき 肢は一緒に前に出すことをすれば 間違 第 53 回 日本老年医学会学術集会記録 教育講 ます 右肘を着くようにしながら起き上 うことはありません 図 がります うまく行かない場合はコラム 実際の臨床では麻痺側上下肢の機能 4 Nisitani S, Miyoshi H, Katsuoka Y. Extensive delayed brain atrophy after 9 の方法も参考にしてください 図 8 回復や強化のために リスクに配慮しな 2 立ち上がり動作 極める 3 する時があります しかし 患者 家族 水野美邦編 神経内科ハンドブック 鑑別診断と治療 医学書院 20. 2 武山博文 高橋牧郎 高橋良輔 第 38 回内科学の展望 て 難治性内科疾患の克服に向け 2 パーキンソン病とパーキンソン症候群 日本内科学会雑誌 20 00. 3 犬塚 貴 高齢期のパーキンソン病 演 日老医誌 20 48 66-8. resuscitation in a patient with multiple system atrophy. Front Neurol 208 8 754. 5 Rocchi L, Chiari L, Horak FB. Effects of deep brain stimulation and levodopa on postural sway in Parkinson s disease. J Neurolog Neurosurg Psychiatry 2002 73 267-74. 6 上田 敏監 伊藤利之 大橋正洋 千田富義ほか編 標準リハビリテーション医学 第 3 版 医学書院 202 がら上記指導内容を逆の動作方法で指導 立ち上がり動作がうまくできない時 への指導の際には まずは安全で基本的 は 重心が後方に残っていることが多い な方法を身につけてもらうことが重要で です まずは浅く座るようにします お す じぎをするように上半身を前傾させる際 7 砂原茂一著 リハビリテーション 岩波新書 995. 図8 起き上がり動作 左片麻痺患者 緑色 麻痺側 0 5 0 重心が後方 第3章 重心が前方 立ち上がり動作 パーキンソン症候群の動作指導は姿勢矯正がポイント 0 5

第部 C O L U M N 8 自主練習と家族指導. パ ーキンソン病 PD とパーキンソン症候群 PD-syn の違いを理解してリハビリテーションに活かせる の PD-syn 患者に 姿勢を直す指導と 2. 直立できるだけ 四つ這い練習の指導の両方を行える の指導で 実用性のある立ち上 3. 膝を使った立ち上がり がり動作の指導ができる など 歩行 αの実 4. 歩いて車イスの前まで行って座る 用的な動きを指導できる 通常の臨床場面だけでなく 退院時に には 顔が患者の膝や足関節よりも前方 自主練習や介助の仕方 のアドバイス へ位置するようにします 慣れないうち を求められることがあります その時に は 右足関節を歩手前に引きます は できるだけ簡単なことを指導するよ うにしています 難しいことでは正確に 3 移乗動作 できない可能性があるし 長続きもしな 右側への移乗動作が安全です 立ち上 いからです そこで 普段私が行ってい がり動作同様 前傾姿勢によって重心を る基本動作や杖の使用法などの ADL 指 前方に移動させますが その際に 右足 導について 脳卒中による左片麻痺患者 関節を 歩手前に引きます 中途半端な を想定し あくまでも基本的で安全な動 姿勢で方向転換せず しっかりとした立 作方法を紹介します 位姿勢になってから 反時計回りで殿部 をベッドに向けます 図 0 起き上がり動作 左上肢を右上肢で患者自身の前にもっ 文献 4 杖の使い方 てくることで 置き去りにならないよう 杖が左下肢を補ってくれることを理解 にします 同様に左下肢を右下肢で下か してもらいます したがって 杖と左下 ら支えるようにしながら右側へもってき 肢は一緒に前に出すことをすれば 間違 第 53 回 日本老年医学会学術集会記録 教育講 ます 右肘を着くようにしながら起き上 うことはありません 図 がります うまく行かない場合はコラム 実際の臨床では麻痺側上下肢の機能 4 Nisitani S, Miyoshi H, Katsuoka Y. Extensive delayed brain atrophy after 9 の方法も参考にしてください 図 8 回復や強化のために リスクに配慮しな 2 立ち上がり動作 極める 3 する時があります しかし 患者 家族 水野美邦編 神経内科ハンドブック 鑑別診断と治療 医学書院 20. 2 武山博文 高橋牧郎 高橋良輔 第 38 回内科学の展望 て 難治性内科疾患の克服に向け 2 パーキンソン病とパーキンソン症候群 日本内科学会雑誌 20 00. 3 犬塚 貴 高齢期のパーキンソン病 演 日老医誌 20 48 66-8. resuscitation in a patient with multiple system atrophy. Front Neurol 208 8 754. 5 Rocchi L, Chiari L, Horak FB. Effects of deep brain stimulation and levodopa on postural sway in Parkinson s disease. J Neurolog Neurosurg Psychiatry 2002 73 267-74. 6 上田 敏監 伊藤利之 大橋正洋 千田富義ほか編 標準リハビリテーション医学 第 3 版 医学書院 202 がら上記指導内容を逆の動作方法で指導 立ち上がり動作がうまくできない時 への指導の際には まずは安全で基本的 は 重心が後方に残っていることが多い な方法を身につけてもらうことが重要で です まずは浅く座るようにします お す じぎをするように上半身を前傾させる際 7 砂原茂一著 リハビリテーション 岩波新書 995. 図8 起き上がり動作 左片麻痺患者 緑色 麻痺側 0 5 0 重心が後方 第3章 重心が前方 立ち上がり動作 パーキンソン症候群の動作指導は姿勢矯正がポイント 0 5