資料 3-2 京都メカニズムの仕組み 1. 京都メカニズムの概要 2. 京都議定書の遵守の仕組み 3. 国内 ( 域内 ) 排出量取引制度の例 4. 海外の国内排出量取引制度と京都メカニズムのリンク
1. 京都メカニズムの概要 京都メカニズムとは 京都メカニズムの対象となるクレジット等
標以上の1-1 京都メカニズムとは 共同実施 (JI) ( 京都議定書 6 条 ) 先進国同士が共同で事業を実施し その削減分を投資国が自国の目標達成に利用できる制度 クリーン開発メカニス ム (CDM) ( 京都議定書 12 条 ) 先進国と途上国が共同で事業を実施し その削減分を投資国 ( 先進国 ) が自国の目標達成に利用できる制度 ( 国際 ) 排出量取引 ( 京都議定書 17 条 ) 先進国間で排出枠等を売買する制度 先進国 A 資金技術 先進国 B 共同の削減プロジェクト 先進国 A 資金技術 途上国 B 共同の削減プロジェクト 先進国 A 先進国 B 目削減量代金 クレジット (ERU) 削減量 クレジット () 削減量 排出割当量 2008 年からクレジット発行 2000 年以降の削減量についてクレジットが発生 2008 年から本格化 3
1-2 京都メカニズムの対象となるクレジット等 対象となるクレジット 排出枠 AAU: 各国に割り当てられる排出枠 日本は約 58 億 t-co 2 RMU: 国内吸収源活動によるクレジット 日本の発行量上限は約 2.4 億 t-co 2 ERU:JI プロジェクトにより発行されるクレジット :CDM プロジェクトにより発行されるクレジット AAU: 日本の基準年 (1990 年 ) の温室効果ガス排出量はCO 2 換算で12.35 億トン よって (12.35) 5 年 94%= 約 58 億トン RMU: 日本の森林経営による吸収量としてCOP7で合意された1,300 万 t-c/ 年 (4,767 万 t-co 2 基準年総排出量比約 3.9%) 程度の吸収量の確保を目標とする 京都議定書の目標遵守のためには AAU+RMU+ERU+ の総和 実際の排出量でなければならない 国としての総排出枠 = 初期割当量 (AAU) + 吸収量 (RMU) + JI/CDM プロジェクトで発行されたクレジットの取得分 (ERU ) ± 排出量取引による排出枠 (AAU ERU RMU) の取得 移転分 4
2. 京都議定書の遵守の仕組み 国別登録簿の仕組み 排出枠の発行 移転 償却の流れ
2-1 国別登録簿の仕組み 日本国内日本国内 初期割当量 AAU 償却 UNFCCC 事務局 海外海外 国別登録簿 取引ログ A 国登録簿 CDM クレジット発行 政府保有口座 AAU 償却口座 AAU 日本の実際の排出量 ( インベントリ ) CDM 理事会 CDM 登録簿 法人用保有口座 マッチング 途上国途上国 口座開設 事業者 事業者 CDM 事業 遵守 遵守にカウントされるのは 償却口座内の排出枠 クレジットのみ 6
第一約束期間の終2-2 排出枠の発行 移転 償却の流れ 2006 年 2007 年 2008 年 2009 年 2010 年 2011 年 2012 年 2013 年 2014 年 2015 年第一約束期間の開始初期割当量確定のための報告書の提出 (2007 年初まで ) 初期割当量の確定 AAU の発行 (58 億 t) 国別登録簿 4 月 15 日まで 2008 年の排出量 吸収量の算定 排出量 吸収量の確定 RMU*(2008 年分 ) の発行 ( 約 4,800 万 t) 調整期間 了調整期間末までに 第 1 約束期間の排出量に見合う第 1 約束期間用の排出枠 クレジットを 償却口座に移動させる必要がある 第 1 約束期間用償却口座 *RMUは毎年算定 発行するか 又は第一約束期間(5 年間 ) 分まとめて算定 発行するという二つの選択肢がある 保有口座 保有口座 ERU AAU 等 JI/CDM 事業の実施 排出量取引 ( 調整期間末まで可能 ) 7
3. 国内 ( 域内 ) 排出量取引制度 の例 EU 排出量取引制度 カナダ排出量取引制度案 米国排出量取引制度 ( 州 民間 )
3-1 EU 排出量取引制度 (EU-ETS) EU 域内でのキャップ & トレード方式による取引制度 2005 年 1 月から開始 発電所 石油精製 製鉄 セメント等のエネルギー多消費施設が対象 各加盟国は対象施設に EU-ETS 専用の排出枠 ()* を交付 各施設は各年終了後に 排出量と同量の を政府に提出する義務あり 各施設がこの義務を果たすために JI/CDM によるクレジット (ERU,) を使用できることとする EU 指令改正案 ( リンク指令案 ) について 現在 EU 内で調整が行われている 途上国途上国 EU-ETS EU-ETS CDM 事業 A A 国 政府 B B 国 政府 経済移行国経済移行国 他の先進国の他の先進国の国内排出量取国内排出量取引制度引制度排出枠 企業 企業 ERU ERU JI 事業 9 *とは EUの初期割当量 (AAU) に対応する形で発行される EU-ETS 内でのみ通用するEU 通貨のようなもの
3-2 カナダ排出量取引制度案 カナダ国内でのキャップ & トレード方式による取引制度 大規模排出事業者のみを対象 2008 年開始予定 政府は対象事業者に排出枠を交付 ( 原単位目標と生産量を掛け合わせ排出枠を算出 ) 対象事業者は実際の排出量と同量の排出枠等を政府に提出しなければならない 事業者は義務達成のために次の手段を活用できる : 1 他の事業者からの排出枠の購入 2 国内排出削減プロジェクトによる国内クレジットの獲得 3JI/CDM プロジェクトによるクレジット (ERU,) の獲得 途上国途上国 カナダ国内カナダ国内 政府 経済移行国経済移行国 CDM 事業 排出枠排出枠排出枠 企業制度対象 : 大規模排出事業者 排出枠 ERU 企業国内クレジット JI 事業 ERU 他の先進国の国内他の先進国の国内排出量取引制度排出量取引制度排出枠 国内排出削減プロジェクト 10
3-3 米国排出量取引制度 ( 州 民間 ) 各州 東部 10 州 NY 州知事の呼びかけで 発電所に対するキャップ & トレード方式の地域排出量取引制度の検討に参加 ニューハンプシャー州既設の火力発電所に対して2006 年 12 月末までに現排出量レベルからの削減を求めるキャップ & トレード制度を導入 マサチューセッツ州 6カ所の発電所に対して 2006 年までに 1997~99 年レベルから10% 削減を求めるキャップ & トレード制度を導入 排出権の州外からの購入も認める ( 参考 : オレゴン州 ) 新設発電所に対して排出するCO2と同量分の削減プロジェクトの実施 またはトン当たり 57セント寄付を義務づける規制を導入 ( ワシントン州でも類似制度を導入決定 ) 民間 : シカゴ気候取引 (CCX) 民間企業主導による自主的キャップ & トレード方式の排出量取引制度 2003 年 12 月より取引開始 参加企業 :IBM フォード DuPontなど企業 自治体 大学など44 団体 目標 :2003 年より基準年 (1998~2001 平均 ) から絶対量で毎年 1% ずつ段階的に削減 取引可能なクレジットは 初期割当を売却する排出枠と 削減プロジェクトから発生する削減クレジットの2 種類 削減クレジットは米国内における埋立メタン回収 森林における炭素吸収プロジェクト等と ブラジルにおける再生可能エネ 森林プロジェクトなどから獲得可能 取引量は2003.12~2004.2 末の間で約 60 万トンCO 2 ( 取引価格は $0.71~1.05/t-CO 2 ) 11 * 連邦レベルでは キャップ & トレード方式の排出量取引が マケイン上院議員とリーバーマン上院議員から提案されている
4. 海外の国内排出量取引制度と 京都メカニズムのリンク EU-ETS リンク指令案の概要 JI/CDM クレジットの EU-ETS への流入 中東欧での JI 実施の制限 国内排出量取引制度同士のリンクの可能性等
4-1 EU-ETS リンク指令案の概要 リンク指令案の主な内容 昨年 7 月に EU 委員会が公表した EU-ETS と JI/CDM クレジットをリンクするための指令案 ( リンク指令案 ) の主なポイントは以下のとおり EU-ETS の対象施設は 遵守のために JI/CDM クレジットを用いることができる JI/CDM クレジットを遵守に使おうとする者は JI/CDM クレジットを各国政府に提出し 代わりに EU-ETS 専用の排出枠 () の発行を受ける リンク指令案による影響 1JI/CDM クレジットの EU-ETS への流入 EU-ETS 対象施設による JI/CDM クレジットに対する大きな需要の発生 クレジットの EU-ETS への流入 JI/CDM クレジット への転換は不可逆的とされており 一旦 EU-ETS 内に入った JI/CDM クレジットは EU-ETS 外には出てこない ( ) 2 中東欧における JI 実施の制限 2004 年 5 月から中東欧 10 カ国が EU に新規加盟 EU-ETS にも参加 これらの国における EU-ETS 対象施設等における JI は 2004 年末までに各国政府の承認を受けない限り 実施できないというのがリンク指令原案の考え方 議定書を批准した他の先進国の国内排出量取引制度との相互認証協定を結んだ場合は は EU 外に出る (EU- ETS 指令第 25 条 ) 13
4-2 JI/CDM クレジットの EU-ETS への流入 需要発生に伴い EU-ETS に JI/CDM クレジットが流入 EU-ETS 対象施設は各国政府に JI/CDM クレジットを提出し を受領 ( これは不可逆的な交換とされている ) EU-ETS 内では が流通 各国政府は JI/CDM クレジットを確保 一旦 EU-ETS 内に入った JI/CDM クレジットは EU-ETS 外には出てこない EU-ETS C 国 A 国 B 国 E 国 D 国 ERU ERU JI 事業 経済移行国 CDM 事業 途上国途上国 14
4-3 中東欧諸国での JI 実施の制限 リンク指令案 ( 原案 ) においては EU に新規加盟する中東欧 10 カ国における JI は 2004 年末までに各国政府の承認を受けない限り EU-ETS 対象施設等においては実施できないこととされている これは ダブルカウント ( 同一の削減が 1EU-ETS と 2JI で 2 回評価され 二重の利益が生ずること ) を避けるためとされている リンク指令案原案どおりであれば 中東欧諸国における JI 実施が大きく制限されることとなるため 日本政府としても リンク指令案について EU 委員会に対し意見を述べているところ 1EU-ETS による評価 EU-ETS 内で売却 中東欧中東欧 10 10カ国を含んだカ国を含んだEU-ETS EU-ETS 対象施設 ( 発電所等 ) 排出削減分 ダブルカウントとは ERU 排出枠交付総量 排出枠 () 実際の排出量 2JI による評価 JI クレジットとして EU-ETS 外や EU 域外で売却 リンク指令案については EU 内において 4 月下旬の決着を目指して調整が行われている 中東欧諸国における JI 実施については 2004 年末までの政府承認がない場合も 2012 年までは一定の条件付きで認める方向で調整がなされている 15
4-4 国内排出量取引制度同士のリンクの可能性等 EU-ETS 指令 ( 既に成立 ) においては 相互認証協定を結べば 他の先進国 ( 議定書批准国 ) の国内排出量取引制度とリンクできることとされている このため カナダにおいては EU-ETS とのリンクが検討されている また 現在 EU 内で行われている EU-ETS のリンク指令案に関する調整においては 議定書未批准国における削減プロジェクトからのクレジットを EU-ETS で使えるようにするという案が出されている (EU 議会案 ) EU 域内排出量取引制度 15 カ国 + 中東欧 10 カ国 (2005 年 1 月 1 日 ~) 議定書未批准国での削減プロジェクト ( 例 : ロシア ) カナダ国内排出量取引制度 (2008 年開始予定 ) 議定書未批准国での削減プロジェクト ( 例 : オーストラリア ) 16