症例報告 関西理学 14: 123 128, 2014 右下肢の感覚障害により歩行時に不安定性を認めた胸髄腫瘍摘出術術後患者の一症例 實光 遼 1) 井尻朋人 1) 高木綾一 1, 2) After Surgical Removal of a Tumor from the Thoracic Spinal Cord due Gait Instability to Sensory Impairment of the Right Lower Limb: A Case Report Ryo JIKKO, RPT 1), Tomohito IJIRI, RPT, MS 1) 1, 2), Ryoichi TAKAGI, RPT, MA Abstract We report the case of a patient who had a spinal cord tumor removed, resulting in unstable gait. The unstable motion occurred during the right swing phase of walking, and started from the right mid-stance phase. Input from deep sensory receptors was impaired because of the intramedullary tumor of the thoracic spinal cord (Th10). We considered that the cause of the unstable gait was enlargement of the joint position sense of the right leg. In order to improve the patient s unstable gait, we performed physical therapy focusing on the muscle spindles of the right lower limb. Through physical therapy, the patient s unstable gait became more stable, and the sensory disorder of the right lower limb improved despite a general assessment of no change in sensory ability. In this case, focusing on high muscle spindle activity may have led to a good result. We believe that motion training is effective as it uses the conserved deep sensory mechanisms. Physical therapy for sensory impairment should be considered depending on the characteristics of sensory receptors. Key words: unstable gait, muscle spindle, characteristics of sensory receptors J. Kansai Phys. Ther. 14: 123 128, 2014 第 10 胸髄 ( 以下 :Th10) に腫瘍を罹患し歩行動作において不安定性を認めた症例を経験した 中枢神経系疾患の理学療法では深部感覚機能障害が問題となることが多く 脳や脊髄など一度損傷され回復し難い不可逆的な機能障害をどのように補償するかが今後の ADLやQOLを左右すると考える 本症例では主に Th10の後索 側索付近の髄内腫瘍を罹患し 末梢の深部感覚入力が障害されていたため 右下肢への感覚障害に対し理学療法をおこなった 感覚受容器の特性に着目し 一般的な深部感覚評価である模倣法とは異なり自動運動での深部感覚評価を実施した 模 倣法と比較し 自動運動での深部感覚評価ではある程度の関節角度の再現性を得ることができた また 治療後には関節角度の再現性が軽度改善を認めた その結果 歩行における不安定性が軽減し ADLの向上につながったため考察を踏まえ報告する なお 本論文をまとめるにあたり本症例には趣旨を説明し 同意を得た 症例は 30 歳代の女性であり 平成 X - 1 年に下肢に痺れ感が生じ歩行障害を呈した 他院を受診しTh10の胸髄腫瘍と診断され 脊髄腫瘍摘出術や放射線治療を施行された 腫瘍は除去されたものの歩行障害が残存したため 1) 喜馬病院リハビリテーション部 2) 医療法人寿山会法人本部 受付日平成 26 年 4 月 23 日受理日平成 26 年 8 月 24 日 Department of Rehabilitation, Kiba Hospital Administrative Office of Medical Corporation, Juzankai
124 實光遼, 他 1 a. 治療前は右遊脚期での右足部クリアランス低下による右後方への転倒傾向を認めた b. 右立脚期を通して右股関節外転位であり 右立脚中期から後期では急激な右膝関節伸展が生じ 右股関節屈曲し体幹の軽度前傾が生じた 続く 右立脚後期に右股関節外転し体幹の右側方傾斜がみられ右側方への不安定性がみられた場面である c. 右立脚初期から中期で右股関節内転が大きい時に 続く右立脚中期から後期で右側方への不安定性が大きく生じていた場面である 平成 X 年にリハビリテーション目的にて当院外来での理学療法開始となった 本症例は主婦であり 家屋内での移動の必要性が高かった 主訴は 杖なしで安全に歩きたい であり ニードを屋内独歩の実用性 とくに安全性獲得とした 本症例の独歩は動作に一貫性が乏しく不安定であり 右後方への転倒傾向を呈し安全性 安定性の低下を認めていた その最も特徴的であった場面としては 右遊脚期で右足部のクリアランス低下がみられ 右足部が床に引っかかり右後方への転倒傾向がみられた場面であった ( 図 1a) そのとき 体幹は右側方傾斜した状態であった 前の相である右立脚中期から後期では急激な右膝関節伸展が生じ 右股関節屈曲し体幹の軽度前傾が生じた 続く 右立脚後期に右股関節外転し体幹の右側方傾斜がみられ右側方への不安定性がみられた ( 図 1b) 本症例は右立脚中期から後期において 右股関節内転が生じる場面や外転が生じる場面があり前額面上で不安定であった とくに右立脚初期から中期において 右股関節内転角度が大きいときに右立脚中期から後期での不安定性が強く 生じていた ( 図 1c) また そのときに右足部の床への引っ掛かりが多く観察された また 一貫して左立脚期では不安定性はとくに観察されなかった 以上の動作観察より 本症例の歩行動作において 右遊脚期での右足部クリアランス低下による右後方への転倒傾向を呈した場面が 最も安全性低下をきたす場面として捉えた しかし 先述したように右立脚中期から後期が安定しておこなえていた場合は 左右の立脚時間など差はあるものの ある程度安定して歩行動作をおこなえていたことから 転倒傾向を呈した右遊脚期の前相にあたる右立脚期に着目した 本症例の独歩の問題点を 右立脚中期から後期 右立脚後期 右遊脚期の相ごとに分けて考え 問題点を仮説した まず 右立脚中期から後期で右膝関節が急激に伸展位となり右股関節屈曲し体幹軽度右前傾が生じた これについての問題点は 右膝関節伸展筋力低下や膝関節周囲筋の筋緊張亢進や低下 膝関節の深部感覚 足底表在感覚鈍麻などを問題点と仮説した 続いて 右立脚後期において右股関節外転し右側方に不安定性を呈した問題点については 右股関節外転筋力低下や右股関節周囲筋の筋緊張低下 右股関節の深部感覚などの問題点を考えた 加えて 右立脚初期から中期で右股関節内転角
右下肢の感覚障害により歩行時に不安定性を認めた胸髄腫瘍摘出術術後患者の一症例 125 2 右膝関節に対して自動運動にて深部感覚評価をおこなった 方法は まず検査者がランダムに決定した位置まで 被験者が閉眼で右下肢を自動運動で動かす その後 左下肢で角度を模倣させる これを 5 回実施した 度が大きいときに 続く右立脚中期から後期で右膝関節の急激な伸展や右股関節外転が多くみられた これについては 右立脚初期から中期で右股関節内転角度が大きくなることで右下肢への荷重量が増大すると考えられた その際 右下肢の深部感覚入力が乏しいことで左下肢への体重移動をうまくおこなえずに右遊脚期へ移行することとなり 右遊脚期での右足部クリアランス低下による転倒傾向につながったのではないかと仮説をたてた また 右遊脚期での右足部クリアランス低下は 右足関節底屈筋力低下や右足関節底屈筋筋緊張亢進 低下 右足底表在感覚鈍麻などの問題点により 右立脚後期での蹴りだしがおこなえないために生じるのではないかと仮説した 以上の問題点の仮説より 検査 測定をおこなった 関節可動域 ( 以下 ROM) 検査や徒手筋力検査 ( 以下 MMT) では著明な制限や低下を認めなかった 触診による筋緊張検査では 右側の大殿筋下部線維 中殿筋 内側広筋 外側広筋 大腿二頭筋 内側腓腹筋に筋緊張低下を認めた 10 m 歩行は17 秒 左下肢を前にしたマン肢位保持は 2 秒 右足底表在感覚検査はとくに前足部で重度鈍麻 深部感覚検査は右股関節 膝関節 足関節の全てで0/5であった しかし 深部感覚検査の中でも運動覚検査において なんとなく動かしていることがわかる との訴えがあった また 本症例は立位姿勢やその他さまざまな動作で右股関節軽度屈曲位 膝関節軽度屈曲位 足関節軽度背屈位であった Burgessら 1) は 深部感覚入力において 膝関節軽度屈曲位での関節周囲の感覚受容器 ( 関節包のルフィニ小体 靭帯のゴルジ腱器官 骨膜のパチニ小体など ) の興奮はわずかであり 大半が最大伸展位あるいは屈曲位で興奮したと報告している このことより 本症例では膝関節伸展位では筋紡錘以外の深部 感覚受容器がとくに多く興奮するが それを認知できず不安定となると考えられた しかし 筋活動が生じる膝関節屈曲位の方が筋紡錘からの深部感覚入力が多くなり安定した姿勢を保持できるのではないかと考えた よって 本症例では筋活動を生じさせることで筋紡錘からの深部感覚入力を大きくし 下肢の深部感覚を補償しようとしているのではないかと考えた そこで 筋活動による感覚入力を評価するために 図 2 に示した方法で評価をおこなった 方法は まず検査者がランダムに決定した位置まで 被験者が閉眼で右下肢を自動運動で動かした その後 左下肢で角度を模倣させた この評価を5 回実施した 結果は2/5と障害はされているものの ある程度の再現性は得られていた 本症例は右膝関節 股関節に深部感覚鈍麻 右足底に表在感覚鈍麻をきたしており そのために歩行動作が不安定となっていると考えた まず 右立脚中期から後期において 右膝関節の深部感覚鈍麻と右足底前足部の表在感覚鈍麻により前足部に荷重が困難になることで 右膝関節が急激に伸展すると考えた 右膝関節周囲筋の筋活動が減少することで 筋収縮による筋紡錘からの深部感覚入力が乏しくなり 右下肢の状況を把握することが困難になったことで 急激な膝伸展位を呈したと考えた 加えて 右立脚後期でも右股関節周囲筋の筋活動が小さくなり 筋収縮による筋紡錘からの感覚入力が少なくなっていくことで右股関節周囲筋からの深部感覚入力が乏しくなり より右下肢の状態の把握が困難になっていたと考えた これらの問題点により 右下肢の状態の把握が困難になっているため左下肢への体重移動がうま
126 實光遼, 他 くおこなえず 右股関節外転または内転し右側方に不安定性を呈したと考えた 続く右遊脚期では 右立脚後期で体幹が右側方傾斜したまま右遊脚期に移行することで 右足部のクリアランス低下を招き転倒傾向を呈したのではないかと考えた よって本症例では 右下肢筋の筋活動をより促し筋紡錘からの深部感覚入力を補償することで 右立脚中期から後期での右膝関節の急激な伸展という現象を制動でき かつ右股関節が安定することで 右遊脚期の足部クリアランスが向上し不安定性が軽減するのではないかと考えた 理学療法は 本症例の右下肢筋の筋紡錘からの感覚入 力を促し深部感覚鈍麻を補償して 右側方への不安定性 を改善することを目的とした またそのために 下肢関 節運動により運動を学習し それが歩行動作にフィード バックされることを目的とした まず開放運動連鎖 (open kinetic chain: 以下 OKC) から筋活動を高め下肢の筋活 動を意識させることを目的におこなった OKC での運動 から開始した理由としては 運動学習には認知段階 連 合段階 自動化段階がある 2) とされている しかし 本 症例のように下肢関節の深部感覚が大きく鈍麻してい る症例に対しては閉鎖運動連鎖 (closed kinetic chain : 以 下 CKC) での運動課題は難易度が高い治療と判断した そのため まず CKC での認知段階の準備として 単関節 ごとに動かし 単関節ごとの運動課題によって深部感覚 入力をおこなった その後に 認知段階や連合段階とし て CKC での運動につなげ ステップ動作等での学習をは かった それらの治療をおこなった後 歩行動作を実施 し無意識下での自動化段階につなげることを目的とした OKC での治療方法としては 端座位や臥位で股関節 膝 関節 足関節の自動介助運動や自動運動 抵抗運動を実 施した このとき 活動している筋に対してのタッピン グや 単関節ごとに動かしていることが知覚できている かを確認しながら実施した 続いて CKC での理学療法を 実施した CKC での治療の目的としては 右立脚中期か ら後期で右股関節 膝関節を軽度屈曲位のまま動作をお こない 右下肢の深部感覚入力が筋活動増大により多く なるように学習をはかった その CKC での治療の方法と して 右前足部にテーピングを貼った状態でウエイトシ フトやステップなどで促した 右前足部にテーピングを 貼ったことについては CKC で前足部荷重下における運 動の認識を外部刺激で補助し 歩行動作における足底圧 中心 ( 以下 COP) を後足部から前足部へ改善させる目 的で実施した 今回感覚入力にテーピングを用いて理学 療法を施行したのは 動作場面でも用いることが可能と 考えたためである 3 治療後では右遊脚期での右足部の床への引っ掛かりが消失し 独歩での安全性の向上を認めた 歩行動作を通して動作に一貫性が得られ 安全性の向 上が得られた 本症例の特徴的な動作であった右立脚中 期から後期での右膝関節の急激な伸展は改善し 右膝関 節軽度屈曲位のままであった 続く右立脚後期でも 右 股関節外転による体幹の右側方不安定性は軽減し 右立 脚期を通して安定していた 右遊脚期でも右足部の床へ の引っ掛かりが消失し 独歩での安全性の向上を認めた ( 図 3) 立位姿勢も股関節 膝関節が屈曲位から伸展位 に近づいた姿勢となった その結果 触診による筋緊張 検査では低下していていた右側の大殿筋下部線維 中殿 筋 内側広筋 外側広筋 大腿二頭筋 内側腓腹筋に軽 度の改善を確認した 10 m 歩行は 17 秒から 15 秒と 2 秒 短縮し 左下肢前のマン肢位保持は 2 秒から 8 秒となり 6 秒延長し改善がみられた 右足底表在感覚は前足部で 1/10 から 2/10 右下肢の深部感覚検査では 0/5 と大きな変 化はみられなかった しかし 右下肢の自動運動にて目 標角度を設定し 左下肢で角度を再現させた深部感覚評 価では 2/5 から 3/5 と軽度の改善がみられた
右下肢の感覚障害により歩行時に不安定性を認めた胸髄腫瘍摘出術術後患者の一症例 127 本症例は 歩行動作において右立脚後期で右側方への不安定性と 右遊脚期で右足部クリアランス低下を呈していた 右下肢の深部感覚鈍麻に着目し治療をおこなった結果 右立脚後期での右側方への不安定性と 右足部クリアランス低下が軽減した この背景として 検査上 右下肢の深部感覚鈍麻や右前足部の表在感覚鈍麻は残存していた 股関節 膝関節周囲筋は立脚初期から中期にかけて筋活動が高まり 立脚中期から後期にかけては筋活動が小さくなっていくと報告されている 3) また Latash 4) は動作中において 関節受容器は深部感覚を知覚しているものの 他の受容器を含めたすべての深部感覚のなかで 大きな割合を占めているわけではないと報告している これらのことから 関節受容器よりも筋の張力による筋紡錘からの感覚入力は深部感覚の大きな割合を占めると考えられる 右立脚中期から後期で右股関節 膝関節を軽度屈曲位のままで歩行したことで 右股関節 膝関節周囲の筋活動を右立脚後期でも維持し 深部感覚を得られたのではないかと考えられる また 大久保ら 5) は 足底部からの情報を増加させたときの立位姿勢制御に及ぼす影響について検討した その結果 足底の表在感覚を増加させた場合の方が立位姿勢は安定したと報告している 本症例は 右下肢深部感覚鈍麻に加えて 右前足部の表在感覚が鈍麻しており それにより本来右立脚中期から後期で必要な前足部へのCOPの移動が困難な状態であった 右前足部の表在感覚鈍麻が後足部荷重につながり 右膝関節の急激な伸展を助長し右立脚中期から後期で前足部への COPの移動を阻害している要因の一つであると考えた この COPの問題を改善させるためにテーピングを用いて治療をおこなった テーピングの表在感覚入力による効果が深部感覚入力に与えた影響については 奈良ら 6) の報告によると 皮膚感覚については全く位置感覚に関与しないとは言い切れないが あるとしても副次的なものであり精度も低いであろうと報告している このことにより 今回の右前足部へのテーピングアプローチが 大きく深部感覚改善につながったとは考えにくいと推察する しかし 右前足部にテーピングを貼り CKCでの治療場面において 前足部荷重下での運動の認識を補助し学習した結果 歩行動作における COPが改善されたと考えられる そのため 表在感覚に対するテーピングによるアプローチの併用により COP のコントロールをおこないやすくし 歩行動作の改善につながったと考えられた 今回 深部感覚評価のために実施した自動運動での評価は 他動運動と自動運動における関節角度の再現の違いを評価し どの感覚受容器に対して主にアプローチしていくのかを決定するために実施した また この評価 は一般的な深部感覚検査である模倣法や口頭法と比較し右下肢の運動を自動でおこなうため 筋活動による筋紡錘からの入力が より反映されやすいのではないかと考え評価をおこなった 少し方法は異なるが 過去にいくつか自動運動と他動運動との関節角度の再現精度を比較した研究がなされている 佐々木ら 7) は 一側下肢の自動運動による設定角度の再現は他動運動による再現よりも誤差が低値を示したと報告している また その機序は α-γ 連関による主動筋の筋紡錘からの深部感覚情報を手がかりとして誤差修正を図ったものであると推察している また 一般的な模倣法などの他動運動での評価と比較しても 設定角度を再現する主動筋の筋紡錘は関節位置覚の精度に強く関与するという可能性が示唆されたと報告している 本症例での深部感覚評価は 他動運動である模倣法での評価では治療前は 0/5であるのに対して 自動運動での評価では治療前 2/5であった 治療後では模倣での評価は0/5 自動運動での評価は 3/5であった この自動運動での深部感覚評価が改善された要因としては 筋緊張が軽度改善したためと考えられる OKC や CKCでの理学療法で 右立脚中期から後期でとくに右股関節 膝関節周囲筋の筋活動の向上を求めた結果 姿勢保持や歩行動作場面で筋紡錘の活動が高まり改善されたためと推察される これらの評価結果より 本症例においては他動運動での関節受容器からの深部感覚の知覚は困難でも 自動運動での筋紡錘からの深部感覚の知覚はある程度可能であったことが推察される ヒトの随意運動では 筋紡錘は筋長の微細な変化を検出することが示されている 8) ことからも 本症例は筋紡錘からの深部感覚を自動運動にて知覚することは可能であったことが推察される つまり 今回実施した自動運動での深部感覚評価は 筋紡錘からの情報を大きくした深部感覚評価になりえるのではないかと考えられた 胸髄腫瘍 (Th10) を罹患し 歩行における右遊脚期で右後方への転倒傾向を呈する症例を担当した 右下肢の深部感覚鈍麻に対する治療を 右下肢立脚中期から後期にかけて膝関節および股関節屈曲位でおこない 筋活動を維持することで筋紡錘からの深部感覚入力が多くなるように促した その結果 鈍麻していた右下肢の深部感覚を補償でき 転倒傾向が軽減したのではないかと考えられる 本症例では さまざまな深部感覚受容器のなかでも 筋紡錘にアプローチをおこなったことにより 歩行動作における転倒傾向が改善された可能性が考えられた 今後 感覚障害に対する理学療法として さまざまな感覚受容器の特性も考慮したうえでのアプローチが必要である
128 實光遼, 他 1) Burgess PR, et al.: Characteristics of knee joint receptors in the cat. J Physiol 1203: 317 335, 1969. 2) 冷水誠 : フィードバックに配慮した歩行トレーニング. 理学療法 29: 770 771, 2012. 3) 中村隆一 他 : 基礎運動学, 第 6 版.pp374 382,pp368 370, 医歯薬出版,2003. 4) Latash ML( 著 ) 道免和久 ( 監訳 ): 運動神経生理学講義. pp54 55, 大修館書店,2002. 5) 大久保仁 他 : 足蹠圧受容器が重心動揺に及ぼす影響について. 耳鼻臨床 72: 1553 1562, 1979. 6) 奈良勲 他 : 姿勢調節障害の理学療法, 第 2 版.pp83 84, 医歯薬出版,2012. 7) 佐々木賢太郎 他 : 再現方法の違いが膝関節位置覚の精度に及ぼす影響. 保健医療学雑誌 3: 65 68, 2012. 8) 辻井洋一郎 : 筋感覚研究の展開.pp345 380, 協同医書出版, 2003.