腎 (7): Renal fibrosis and anemia 1 2 Tomokazu SOUMA and Norio SUZUKI エリスロポエチン (EPO) は, 赤血球造血に必須のホルモ ンであり, 成人では尿細管間質に存在する腎 EPO 産生細胞 (r

Similar documents
<4D F736F F D20322E CA48B8690AC89CA5B90B688E38CA E525D>

第6号-2/8)最前線(大矢)

1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 花房俊昭 宮村昌利 副査副査 教授教授 朝 日 通 雄 勝 間 田 敬 弘 副査 教授 森田大 主論文題名 Effects of Acarbose on the Acceleration of Postprandial

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 松尾祐介 論文審査担当者 主査淺原弘嗣 副査関矢一郎 金井正美 論文題目 Local fibroblast proliferation but not influx is responsible for synovial hyperplasia in a mur

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

糖鎖の新しい機能を発見:補体系をコントロールして健康な脳神経を維持する

解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

結果 この CRE サイトには転写因子 c-jun, ATF2 が結合することが明らかになった また これら の転写因子は炎症性サイトカイン TNFα で刺激したヒト正常肝細胞でも活性化し YTHDC2 の転写 に寄与していることが示唆された ( 参考論文 (A), 1; Tanabe et al.

スライド 1

Untitled

Untitled

平成14年度研究報告

No146三浦.indd

く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM

Peroxisome Proliferator-Activated Receptor a (PPARa)アゴニストの薬理作用メカニズムの解明

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

RNA Poly IC D-IPS-1 概要 自然免疫による病原体成分の認識は炎症反応の誘導や 獲得免疫の成立に重要な役割を果たす生体防御機構です 今回 私達はウイルス RNA を模倣する合成二本鎖 RNA アナログの Poly I:C を用いて 自然免疫応答メカニズムの解析を行いました その結果

のと期待されます 本研究成果は 2011 年 4 月 5 日 ( 英国時間 ) に英国オンライン科学雑誌 Nature Communications で公開されます また 本研究成果は JST 戦略的創造研究推進事業チーム型研究 (CREST) の研究領域 アレルギー疾患 自己免疫疾患などの発症機構

統合失調症モデルマウスを用いた解析で新たな統合失調症病態シグナルを同定-統合失調症における新たな予防法・治療法開発への手がかり-

を行った 2.iPS 細胞の由来の探索 3.MEF および TTF 以外の細胞からの ips 細胞誘導 4.Fbx15 以外の遺伝子発現を指標とした ips 細胞の樹立 ips 細胞はこれまでのところレトロウイルスを用いた場合しか樹立できていない また 4 因子を導入した線維芽細胞の中で ips 細

遺伝子の近傍に別の遺伝子の発現制御領域 ( エンハンサーなど ) が移動してくることによって その遺伝子の発現様式を変化させるものです ( 図 2) 融合タンパク質は比較的容易に検出できるので 前者のような二つの遺伝子組み換えの例はこれまで数多く発見されてきたのに対して 後者の場合は 広範囲のゲノム

<4D F736F F D F4390B38CE3816A90528DB88C8B89CA2E646F63>

能性を示した < 方法 > M-CSF RANKL VEGF-C Ds-Red それぞれの全長 cdnaを レトロウイルスを用いてHeLa 細胞に遺伝子導入した これによりM-CSFとDs-Redを発現するHeLa 細胞 (HeLa-M) RANKLと Ds-Redを発現するHeLa 細胞 (HeL

新規遺伝子ARIAによる血管新生調節機構の解明

平成24年7月x日

研究成果報告書

の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

緒言

論文題目  腸管分化に関わるmiRNAの探索とその発現制御解析

報道発表資料 2006 年 6 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 アレルギー反応を制御する新たなメカニズムを発見 - 謎の免疫細胞 記憶型 T 細胞 がアレルギー反応に必須 - ポイント アレルギー発症の細胞を可視化する緑色蛍光マウスの開発により解明 分化 発生等で重要なノッチ分子への情報伝達

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

論文の内容の要旨

Microsoft Word - FHA_13FD0159_Y.doc

<4D F736F F D EA95948F4390B3817A938C91E F838A838A815B835895B68F F08BD682A082E8816A5F8C6F8CFB939C F

Mincle は死細胞由来の内因性リガンドを認識し 炎症応答を誘導することが報告されているが 非感染性炎症における Mincle の意義は全く不明である 最近 肥満の脂肪組織で生じる線維化により 脂肪組織の脂肪蓄積量が制限され 肝臓などの非脂肪組織に脂肪が沈着し ( 異所性脂肪蓄積 ) 全身のインス

Untitled

( 続紙 1 ) 京都大学 博士 ( 薬学 ) 氏名 大西正俊 論文題目 出血性脳障害におけるミクログリアおよびMAPキナーゼ経路の役割に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 脳内出血は 高血圧などの原因により脳血管が破綻し 脳実質へ出血した病態をいう 漏出する血液中の種々の因子の中でも 血液凝固に関

統合失調症発症に強い影響を及ぼす遺伝子変異を,神経発達関連遺伝子のNDE1内に同定した

抑制することが知られている 今回はヒト子宮内膜におけるコレステロール硫酸のプロテ アーゼ活性に対する効果を検討することとした コレステロール硫酸の着床期特異的な発現の機序を解明するために 合成酵素であるコ レステロール硫酸基転移酵素 (SULT2B1b) に着目した ヒト子宮内膜は排卵後 脱落膜 化

VENTANA PD-L1 SP142 Rabbit Monoclonal Antibody OptiView PD-L1 SP142

ヒト脂肪組織由来幹細胞における外因性脂肪酸結合タンパク (FABP)4 FABP 5 の影響 糖尿病 肥満の病態解明と脂肪幹細胞再生治療への可能性 ポイント 脂肪幹細胞の脂肪分化誘導に伴い FABP4( 脂肪細胞型 ) FABP5( 表皮型 ) が発現亢進し 分泌されることを確認しました トランスク

Microsoft Word - 最終:【広報課】Dectin-2発表資料0519.doc

ASC は 8 週齢 ICR メスマウスの皮下脂肪組織をコラゲナーゼ処理後 遠心分離で得たペレットとして単離し BMSC は同じマウスの大腿骨からフラッシュアウトにより獲得した 10%FBS 1% 抗生剤を含む DMEM にて それぞれ培養を行った FACS Passage 2 (P2) の ASC

平成24年7月x日

<4D F736F F D F4390B388C4817A C A838A815B8358>

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 森脇真一 井上善博 副査副査 教授教授 東 治 人 上 田 晃 一 副査 教授 朝日通雄 主論文題名 Transgene number-dependent, gene expression rate-independe

STAP現象の検証の実施について

の活性化が背景となるヒト悪性腫瘍の治療薬開発につながる 図4 研究である 研究内容 私たちは図3に示すようなyeast two hybrid 法を用いて AKT分子に結合する細胞内分子のスクリーニングを行った この結果 これまで機能の分からなかったプロトオンコジン TCL1がAKTと結合し多量体を形

報道発表資料 2006 年 8 月 7 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人大阪大学 栄養素 亜鉛 は免疫のシグナル - 免疫系の活性化に細胞内亜鉛濃度が関与 - ポイント 亜鉛が免疫応答を制御 亜鉛がシグナル伝達分子として作用する 免疫の新領域を開拓独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事

37-4.indd

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 小川憲人 論文審査担当者 主査田中真二 副査北川昌伸 渡邉守 論文題目 Clinical significance of platelet derived growth factor -C and -D in gastric cancer ( 論文内容の要旨 )

2017 年 12 月 15 日 報道機関各位 国立大学法人東北大学大学院医学系研究科国立大学法人九州大学生体防御医学研究所国立研究開発法人日本医療研究開発機構 ヒト胎盤幹細胞の樹立に世界で初めて成功 - 生殖医療 再生医療への貢献が期待 - 研究のポイント 注 胎盤幹細胞 (TS 細胞 ) 1 は

グルコースは膵 β 細胞内に糖輸送担体を介して取り込まれて代謝され A T P が産生される その結果 A T P 感受性 K チャンネルの閉鎖 細胞膜の脱分極 電位依存性 Caチャンネルの開口 細胞内 Ca 2+ 濃度の上昇が起こり インスリンが分泌される これをインスリン分泌の惹起経路と呼ぶ イ

るマウスを解析したところ XCR1 陽性樹状細胞欠失マウスと同様に 腸管 T 細胞の減少が認められました さらに XCL1 の発現が 脾臓やリンパ節の T 細胞に比較して 腸管組織の T 細胞において高いこと そして 腸管内で T 細胞と XCR1 陽性樹状細胞が密に相互作用していることも明らかにな

メディカルスタッフのための白血病診療ハンドブック

関係があると報告もされており 卵巣明細胞腺癌において PI3K 経路は非常に重要であると考えられる PI3K 経路が活性化すると mtor ならびに HIF-1αが活性化することが知られている HIF-1αは様々な癌種における薬理学的な標的の一つであるが 卵巣癌においても同様である そこで 本研究で

別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

( 図 ) IP3 と IRBIT( アービット ) が IP3 受容体に競合して結合する様子

Untitled

fpj

-119-

難病 です これまでの研究により この病気の原因には免疫を担当する細胞 腸内細菌などに加えて 腸上皮 が密接に関わり 腸上皮 が本来持つ機能や炎症への応答が大事な役割を担っていることが分かっています また 腸上皮 が適切な再生を全うすることが治療を行う上で極めて重要であることも分かっています しかし

るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導

untitled

Juntendo Medical Journal

法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

学位論文の要約

報道発表資料 2007 年 4 月 30 日 独立行政法人理化学研究所 炎症反応を制御する新たなメカニズムを解明 - アレルギー 炎症性疾患の病態解明に新たな手掛かり - ポイント 免疫反応を正常に終息させる必須の分子は核内タンパク質 PDLIM2 炎症反応にかかわる転写因子を分解に導く新制御メカニ

Untitled

H29_第40集_大和証券_研究業績_C本文_p indd

ヒト慢性根尖性歯周炎のbasic fibroblast growth factor とそのreceptor

Microsoft Word - HP用.doc

博第265号

Untitled

<4D F736F F D DC58F4994C A5F88E38A D91AE F838A838A815B835895B68F FC189BB8AED93E089C82D918189CD A2E646F63>

Microsoft Word - (最終版)170428松坂_脂肪酸バランス.docx

H24_大和証券_研究業績_p indd

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 佐藤雄哉 論文審査担当者 主査田中真二 副査三宅智 明石巧 論文題目 Relationship between expression of IGFBP7 and clinicopathological variables in gastric cancer (

Untitled

PowerPoint プレゼンテーション

dr

研究成果報告書

60 秒でわかるプレスリリース 2006 年 4 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 敗血症の本質にせまる 新規治療法開発 大きく前進 - 制御性樹状細胞を用い 敗血症の治療に世界で初めて成功 - 敗血症 は 細菌などの微生物による感染が全身に広がって 発熱や機能障害などの急激な炎症反応が引き起

今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

PowerPoint プレゼンテーション

J Life Sci Res 2014; 12: Osaka Prefecture University Journal of Life Science Research Online ISSN

<4D F736F F D BE391E58B4C8ED2834E C8CA48B8690AC89CA F88E490E690B62E646F63>

Untitled

HYOSHI48-12_57828.pdf

Microsoft Word CREST中山(確定版)

尿試験紙を用いたアルブミン・クレアチニン検査の有用性

Microsoft PowerPoint

2006 PKDFCJ

肝クッパ 細胞を簡便 大量に 回収できる新規培養方法 農研機構動物衛生研究所病態研究領域上席研究員山中典子 2016 National Agriculture and Food Research Organization. 農研機構 は国立研究開発法人農業 食品産業技術総合研究機構のコミュニケーショ

Transcription:

腎 2015 57(7): 1193 1199 Renal fibrosis and anemia 1 2 Tomokazu SOUMA and Norio SUZUKI エリスロポエチン () は, 赤血球造血に必須のホルモ ンであり, 成人では尿細管間質に存在する腎 産生細胞 (renal erythropoietin-producing 細胞 :REP 細胞 ) から分泌さ れる 慢性腎臓病では, 尿細管間質における筋線維芽細胞の出現 増幅による腎線維化が共通の増悪機序として知られている また, 線維化に伴って 産生不全が生じ, 腎性貧血を発症することから, 慢性腎臓病における線維化と 産生不全の関連性が示唆されてきた われわれは, これまでに蓄積してきた 遺伝子発現制御機構の知見に基づき,REP 細胞の単離解析技術を確立し,REP 細胞の細胞運命を追跡することに成功した その結果, 腎線維化病態における筋線維芽細胞の由来は REP 細胞であることを見出した また, 筋線維芽細胞に形質転換した REP 細胞では, 低酸素応答システムが破綻するために 産生不全に陥ることを明らかにした さらに, この形質転換は可逆的であり, 腎病態の改善により筋線維芽細胞が REP 細胞の性質を取り戻すことを発見した 本稿では, 腎疾患に伴う線維化および貧血発症の双方における REP 細胞の関与について, 最近の研究成果を中心に解説する REP は赤血球造血に必須の糖蛋白質ホルモンであり, 血 中の 濃度は低酸素や貧血に応答して正常時の 1,000 倍 まで上昇することが報告されている 1,2) は骨髄赤血球 前駆細胞に発現する 受容体に作用し, 細胞内にアポ *1 ノースウエスタン大学腎臓内科 心臓血管研究所 *2 東北大学大学院医学系研究科新医学領域創生分野 トーシス抑制, 増殖, 分化のシグナルを伝達することにより赤血球造血を促す 3,4) 高地居住者や高地帰還者の血液粘度が高いことや, 脱血ウサギの血清が赤血球造血を促進することなどから, の存在は 19 世紀には示唆されていた 5) しかし,1977 年に宮家らが再生不良性貧血患者の尿 2,550 L から高純度の 精製に成功し, アミノ酸配列を解明するまでに長い年月を要した 5,6) その後,1985 年に 遺伝子がクローニングされると 7), 遺伝子組換え技術による 製剤の開発が進められ, 現在までに多くの腎性貧血患者に使用されている 組換え型 製剤の成功によって, は分子生物学が臨床応用に役立つことを燦然と示してきた また, 遺伝子の発現制御解析から, 低酸素誘導性転写因子 (hypoxia inducible factor:hif) および同因子の DNA 結合配列 (hypoxia responsive element:hre) が同定され, 現在の低酸素応答機構研究の礎となった 8) が低酸素刺激に応じて腎臓で作られることは古くから知られていたが 5), さまざまな細胞で構成される腎臓において, 産生を担当する細胞の正体については, 尿細管上皮細胞, 糸球体メサンギウム細胞, 間質線維芽細胞など, 諸説が乱立していた 9) われわれは, 遺伝子の制御機構解析を進める目的で, 遺伝子の制御領域によって緑色蛍光蛋白質 (green fluorescent protein:gfp) を発現する細菌人工染色体 (bacterial artificial chromosome: BAC) レポータートランスジェニックマウス (Tg--GFP マウス ) および 遺伝子座に GFP cdna を挿入した - GFP ノックインマウス (KI--GFP マウス,Epo GFP/wt ) を樹立した 9 ~ 11) これらのマウスでは, 遺伝子を発現する細胞が同時に GFP を発現するため, 平常時は蛍光標識された細胞をほとんど観察することができないが, マウスへの瀉血や低酸素曝露によって, 多くの細胞が腎 産生細胞として可視化された その結果, 尿細管間質に存在し,

1194 腎線維化と腎性貧血 REP 細胞 尿細管 MF-REP 細胞 血管 血管 尿細管 細胞外基質 平常時 尿管結紮 2~3 日後 尿管結紮 2 週間後 1 REP REP 細胞は尿細管間質の線維芽細胞様細胞であり, 平常時は突起を毛細血管周囲に伸ばしている 尿管結紮によって腎障害を惹起して数日経つと,REP 細胞の形状が変化し, 血管から離れて尿細管側に移行する 腎障害が進行すると, 間質には REP 細胞由来の筋線維芽細胞 (MF-REP 細胞 ) と MF-REP 細胞が産生するコラーゲン線維などの細胞外基質が充満し, 腎線維化が進む 障害による REP 細胞の形質転換は可逆的であり, 病態環境の改善により, 元の性質を取り戻す PDGFRβ( platelet-derived growth factor receptor β) および CD73 といった線維芽細胞のマーカー因子を発現する細胞 が腎臓で 産生を担っていることが明らかとなった ( 1) 10,11) われわれは, これらの細胞を REP 細胞 と命名し, 性状解析を進めている REP 細胞は, 神経系細胞のマー カー因子である MAP2(microtubule-associated protein 2) や NFL(neurofilament light polypeptide) も発現しており, 神経 系の細胞の特質を有することが示唆されている 10,12,13) REP 胎生後期での赤血球造血は肝実質細胞からの 産生によって支持されており, 遺伝子ノックアウトマウス (Epo GFP/GFP ) は胎生 12.5 日に重篤な貧血により死亡する 14) 肝臓での 遺伝子発現は, 出生後も貧血時に誘導されるが, その発現量は REP 細胞に比べて著しく少ない 15) また, 遺伝子の転写終結点下流の領域 (hepatic enhancer: -HE) が肝臓での 遺伝子発現に必須であるが, 腎臓での 発現には関与しないことから, 肝臓と腎臓では異なる制御システムによって 産生が調節されていると考えられる 15) 欠損マウスが胎生致死となるため, 成体マウスにおける腎 産生の役割を検討することは困難であった そこでわれわれは, 前述の -HE によって を発現するトランスジーン (Tg-) を作製し, 欠損マウスに導入した ( Tg-:Epo GFP/GFP ) このマウスは, 肝臓での 産生を回復したことにより, 胎生致死を回避したものの, 成体腎での 産生能を欠損しているために, 生後 2 週以降に重篤な貧血を呈した 16) 貧血の症状は赤血球数が正常の 1/3 程度にまで低下する重篤なものであり, 製剤の投与により貧血から回復したことから, 本マウスは 欠乏性貧血のモデルマウス ( 以下,inherited super-anemic mice:isam) として有用であることがわかった ISAM は両 遺伝子座が GFP cdna に置換されているため, 本来の 産生細胞は に代わって GFP を発現する また,ISAM の慢性貧血によって 遺伝子座の転写活性が亢進しているため,GFP 発現による REP 細胞の標識効率が非常に高い そこで,2 光子顕微鏡を用いて ISAM 腎臓の生体イメージング解析を行ったところ,REP 細胞の突起が尿細管周囲の毛細血管を抱きかかえており, 形態学的に尿細管間質の周皮細胞様であることが判明した ( 図 1) 17) さらに効率良く REP 細胞を検出するために, 遺伝子の制御領域によって Cre 組換え酵素を発現するトランスジェニックマウス (-Cre マウス ) を作製した 16) Cre による遺伝子組換えが生じた細胞で tdtomato( 赤色蛍光蛋白質 ) を発現するレポーターマウス (Rosa26-tdTomato マウス ) を -Cre マウスと交配することにより, 遺伝子 (-Cre トランスジーン ) が一度でも転写活性化したことがある細胞を赤色蛍光で永久標識することが可能となった このマウスと ISAM を交配して得た複合遺伝子改変マウス ( ISAM:Rosa26-tdTomato:-Cre:ISAM-REC) で

1 1195 A OFF-REP 細胞 ON-REP 細胞 遺伝子スイッチング 低酸素刺激 B 正常急性貧血慢性貧血 低酸素領域 OFF-REP 細胞 ON-REP 細胞 2 OFF-REP ON-REP A:REP 細胞における 産生は, 主に 遺伝子の転写レベルで制御されている 遺伝子発現は, 個々の細胞への酸素供給量に応じて ON-OFF 制御 ( 遺伝子スイッチング ) されており, 低酸素を感知した細胞が 産生を開始する B:REP 細胞は皮髄境界から皮質全域の尿細管間質に分布するが, 平常時には酸素供給量の少ない皮髄境界に存在する少数の REP 細胞のみが 産生を担っている 貧血などにより, 腎内の低酸素領域が拡大すると, 全 REP 細胞に対する ON-REP 細胞の割合が増大し, 血中 濃度を上昇させる は,Cre の発現が最大限に誘導されるため, ほぼすべての 産生能を有する細胞が tdtomato 発現によって標識された 16) その結果, 腎皮質および髄質外層の間質に存在する線維芽細胞様細胞の大部分が REP 細胞であることが判明した また, 平常時は多くの REP 細胞で 産生を休止しており (OFF-REP 細胞 ), 皮髄境界に位置する少数の REP 細胞 ( ON-REP 細胞 ) のみで 産生が担われていることがわかった 貧血や低酸素刺激に応じて, 皮質領域の REP 細胞でも 産生が開始され, 全 REP 細胞に対する ON-REP 細胞の割合が増加する ( 2) 2,16) REP 慢性腎臓病の進行に伴い, 尿細管上皮細胞の萎縮と間質線維化が生じる 線維化は組織修復における必須の過程であるが, 線維化が進行することにより組織構築が破壊され, 臓器不全に至ると考えられている 18 ~ 20) また, 間質線維化の進行に伴う腎 産生の低下が腎性貧血発症の機序となることが 1997 年にマウスを用いた解析から示唆されていた 21) われわれは,ISAM および ISAM-REC マウスを用いて, 腎線維化における REP 細胞の関与について研 究を進めている ISAM に片腎尿管結紮 (UUO) による腎障害を施したところ, 障害腎における-GFP mrna 発現量 ( 腎 産生能 ) が急激に減少した また, 施術後 2 日目には REP 細胞の多くがαSMA(α 平滑筋アクチン ) を産生する筋線維芽細胞 (myofibroblast) へと形質転換していた 13,22) 以上の結果から, 腎障害によって REP 細胞が筋線維芽細胞 MF-REP 細胞 に形質転換し, 産生能を喪失することが明らかになった ( 図 1) 23) 興味深いことに, タモキシフェン投与は, 線維化腎における 産生低下を軽減し, MF-REP 細胞からのコラーゲン産生を抑制する 13) したがって,REP 細胞を標的としたタモキシフェン投薬は腎線維化と腎性貧血を同時に治療する可能性がある 平常時の REP 細胞は尿細管間質で毛細血管を抱きかかえて存在しているが, 尿管結紮によって内皮細胞から剝離し, 尿細管側に突起を向けることが ISAM の生体イメージング解析によって明らかになった ( 図 1) 17) 尿細管の障害が周囲の細胞に波及し, 間質の線維化につながることが報告されている 24) また, 腎臓病進行時には毛細血管網が粗になるため, 腎内の虚血 低酸素状態が重篤化すると考えられている 25) したがって,REP 細胞の形態変化は腎線維化の病態を理解するうえで非常に重要な現象である

1196 腎線維化と腎性貧血 尿管結紮から 2 週間後のマウス腎臓は末期線維化に陥っており, 間質は MF-REP 細胞に占拠される すなわち,REP 細胞は線維化腎における筋線維芽細胞の主要な供給源であり, 腎線維化と腎性貧血は共に REP 細胞の異変によって生じるといえる 22,23) 臨床的にも, 糖尿病性腎症患者におけるヘモグロビン濃度と 血中濃度の積は, 慢性腎臓病のステージとよく相関する 26) の血中半減期が 4 ~ 8 時間であることからも, ヘモグロビン濃度と 血中濃度の積は, 腎間質機能不全進行の指標となると考えられる これまでに, 線維化腎における筋線維芽細胞の由来について, 間質線維芽細胞, 血管周皮細胞, 血管内皮細胞, 骨髄由来細胞, 尿細管上皮細胞などさまざまな報告がなされてきた 19,27) 血管内皮細胞, 骨髄由来細胞, 尿細管上皮細胞については, 最近の研究によって筋線維芽細胞への貢献度が非常に低いことがわかってきた 28) われわれは, 筋線維芽細胞の大部分が REP 細胞に由来することを報告しているが, 間質線維芽細胞と血管周皮細胞は PDGFRβ や CD73 といった細胞マーカー因子の発現を REP 細胞と共有しており, 局在や形態的特徴も似通っていることから, これらの細胞群は重複した集団であると考えられる 23) したがって, 線維化腎における筋線維芽細胞の大部分は,REP 細胞 ( 間質線維芽細胞および血管周皮細胞を含む細胞群 ) に由来する MF-REP 細胞である 最近, 筋線維芽細胞は, その由来だけでなく機能的にも多様性を示す細胞群であることが指摘されている 例えば, 髄質内層の筋線維芽細胞は Wnt4 を発現するが, 皮質および髄質外層の筋線維芽細胞は Wnt 4 を発現しない 29) また, 細胞外で線維形成の基質となるコラーゲン I の発現をモニタリングする遺伝子改変マウスを用いた研究から, αsma 陽性の筋線維芽細胞のなかには, コラーゲン I を産生しない細胞が 25% 含まれることが明らかとなった 30) さらに, 骨髄由来の筋線維芽細胞は増殖せず, 線維化における機能的貢献が低いのに対して,MF-REP 細胞は増殖能を有し, コラーゲン I を産生する 22,28) このことからも, 線維化腎における多様な筋線維芽細胞のなかでも,ME-REP 細胞は腎線維化に大きく関与することが理解できる REP 維持透析患者の 10% 強において, 透析導入後に 投与が不要になることから,MF-REP 細胞は環境改善により本来の 産生能を取り戻すのではないかと考えられた 31 ~ 33) そこで, われわれはマウスへの UUO 施行後 2 日目に尿管 結紮を解除する実験を行った その結果,REP 細胞は尿管結紮によって筋線維芽細胞に形質転換し, 産生能をいったんは失うものの, 結紮解除後に 産生能を取り戻し, 形態も正常化することがわかった 22) REP 細胞の形質転換には可塑性があることが明らかとなり, 腎線維化と腎性貧血を同時に治療しうる可能性が示唆された REP 細胞の可塑性を規定する分子メカニズムを明らかにするために, マウス腎臓の網羅的な遺伝子発現解析を行った その結果, 尿管結紮により動脈硬化および急性相反応シグナルが増強され, 脂肪酸代謝シグナルが低下することがわかった これらの遺伝子発現変化は, 尿管結紮解除後に元に戻ることから, 腎障害の進行と深く関係することが考えられた 22,23) 最近, 慢性腎臓病検体を用いた解析からも炎症シグナルの上昇と脂肪酸代謝シグナルの低下が報告されており 34), マウス実験で明らかにされた現象が, 慢性腎臓病の分子病態を理解するうえで有効であることが再確認された MF-REP 細胞をセルソーターを用いて単離し, 遺伝子発現様式を調べたところ, 炎症性サイトカインやケモカインを発現し, 微小環境における炎症増悪に積極的に参画していることが判明した 22) このことは,MF-REP 細胞が周囲の細胞に働きかけ, 炎症の悪循環を形成していることを意味している ( 図 1) 実際に,MF-REP 細胞では,TGFβや TNFα などの炎症シグナルによって活性化され, サイトカインやケモカインの遺伝子発現を誘導する転写因子 SMAD2/3 および NFκB(p65) が活性化している ( 3) 22) また, 腎筋線維芽細胞は, 障害を受けた細胞から放出される ダメージ関連分子パターン (damage-associated molecular patterns:damps) による刺激を受けて,IL-6 や MCP-1 を産生することが報告されている 35) そこで, 炎症シグナルへの介入による治療効果を検討するために, マウスへの尿管結紮解除後にステロイド ( デキサメタゾン ) 投与を試みたところ, 期待通りに REP 細胞の機能回復が促進された 22) 以上の結果から, 腎障害によって腎内微小環境に生じた炎症シグナルは,REP 細胞の形質転換を誘発し, 産生低下と炎症の進展を促すことがわかった また, 炎症シグナルへの介入により,REP 細胞の機能保護や再生促進につながる治療が可能であることを意味している 細胞が形質転換する際には,DNA のメチル化修飾などのエピゲノム制御系が重要な役割を果たすと考えられている 実際に, 腎線維化では TGFβが DNA メチル基転移酵素 1(DNMT1) の発現を誘導し, 病的線維化を持続させることが DNMT1 欠失マウスの解析から示された 36) また, わ

他 1 1197 通常酸素 低酸素 REP 健常腎 障害腎 O 2 OFF-REP 細胞 O 2 PHD2 PHD1 PHD3 HIF2α PHD2 PHD1 PHD3 HIF2α ON-REP 細胞 炎症シグナルによる形質転換と酸素供給低下 低酸素刺激 SMAD NFkB PHD2 PHD1 PHD3 HIF2α ECM cytokines MF-REP 細胞 ( 筋線維芽細胞 ) 3 REP 健常腎では,PHD( 主に PHD2)-HIF2α の経路によって 遺伝子の低酸素誘導的発現が制御されている 低酸素刺激は PHD を不活性化し,HIF2α を活性化することにより, 遺伝子の転写を誘導する 障害腎では, 炎症シグナルなどにより,REP 細胞が MF-REP 細胞に形質転換する MF-REP 細胞では低酸素状態であるにもかかわらず,PHD を介して HIF が不活性化されており, 産生不全に陥る また, 炎症シグナルは MF-REP 細胞における SMAD や NFkB などの転写因子を活性化し, 細胞外基質 (extracellular matrix:ecm) やサイトカイン, ケモカイン (IL-6 や MCP-1) の発現を惹起する したがって,REP 細胞の MF-REP 細胞への形質転換は, 貧血と線維化の原因となる 腎内環境を改善させることにより,MF-REP 細胞は正常な REP 細胞に回復することが可能である れわれは,REP 細胞が MF-REP 細胞に形質転換する過程に おいて,DNMT1 および DNMT3b の遺伝子発現が上昇する ことを見出した 22) を産生しない細胞株のなかには, 遺伝子発現を抑制するために, 遺伝子領域の DNA が高度にメチル化されているものがあり 37),REP 細胞の形 質転換過程でも 遺伝子のメチル化が生じている可能 性が考えられる 今後,REP 細胞の機能回復を目的とした 治療法の開発に向けて, エピジェネティクスの観点からも REP 細胞の可塑性について理解を進める必要がある O 2 他臓器に比べ, 腎臓は低酸素状態にあるが, 病態環境下では, より重篤な低酸素状態に陥ることが腎臓病の共通増悪機序となる 25) 細胞への酸素供給が低下すると, 転写因子 HIF を中心とした低酸素応答システムが起動するが, 貧血や低酸素に応答した 産生制御系においても,HIF が主要な役割を担っている そこで,HIF を含む低酸素応答系は腎臓病の新たな治療標的として注目されている 38) 平常時には, プロリン水酸化酵素群 (prolyl hydroxylase domain enzymes) である PHD1,PHD2 および PHD3 を介して HIF が蛋白質分解されており, 活性を持たない 一方, 低酸素環境下ではプロリン水酸化酵素群が不活性化されるため,HIF が安定化し, 標的遺伝子の転写を誘導する 39) そこで, 末期腎不全患者への PHD 阻害薬の投与が検討され, 期待通りに腎 産生を増加させるという結果が得られた 40) われわれは, 慢性貧血 低酸素状態にある ISAM の解析を通して, 腎障害に伴って腎内低酸素が重篤化するものの,HIF の標的遺伝子の多くが著しく発現抑制されることを見出した 17) この結果は, 腎障害による炎症性線維化環境は, 腎内への酸素供給を低下させつつも,HIF 活性を抑制することにより病態を増悪化させることを示唆している MF-REP 細胞における 産生抑制においても,HIF の不適切な不活性化によって 遺伝子発現が抑制されていると考え, 遺伝子改変マウスを用いた解析を行った 前述した -Cre マウスを用いて,REP 細胞特異的に PHD1, PHD2 および PHD3 を単独または同時に欠失させたところ, PHD2 を欠失した REP 細胞は恒常的に を産生することがわかった ( 図 3) また, 腎障害による REP 細胞の形質転換には, プロリン水酸化酵素群欠失の影響が認められなかったが,MF-REP 細胞における 産生の抑制が著しく軽減された 17) これらの知見によって, 炎症シグナル下における PHD を介した不適切な HIF 分解が MF-REP 細胞における 産生低下の主要機序であることが理解された ( 図 3) REP 細胞の形質転換および機能不全が腎線維化と貧血の共通の機序であるということが明らかになった また, REP 細胞の形質転換は可逆的であり, 一度喪失した本来の機能 ( 産生能 ) を回復できることがわかった さらに,

1198 腎 化と腎 血 REP 細胞が 産生能を失う原因として, 炎症シグナルに よる低酸素応答系の破綻が主要な機序と考えられた 以上の成果は, 腎内微小環境の改善などにより,REP 細胞の生理的機能回復を図る治療法の開発につながるものと期待される 利益相反自己申告 : 申告すべきものなし 1. Bunn HF. Erythropoietin. Cold Spring Harb Perspect Med 2013; 3:a011619. 2. Suzuki N. Erythropoietin gene expression:developmental-stage specificity, cell-type specificity, and hypoxia inducibility. Tohoku J Exp Med 2015; 235:233 240. 3. Suzuki N, Mukai HY, Yamamoto M. In vivo regulation of erythropoiesis by chemically inducible dimerization of the erythropoietin receptor intracellular domain. PLoS One 2015; 10: e0119442. 4. Suzuki N, Suwabe N, Ohneda O, Obara N, Imagawa S, Pan X, Motohashi H, Yamamoto M. Identification and characterization of 2 types of erythroid progenitors that express GATA-1 at distinct levels. Blood 2003; 102:3575 3583. 5. 河北誠, 宮家隆次. エリスロポエチン物語 - 純化の歩みと遺伝子クローニングへの道のり-. 臨床血液 2013;54: 1615 1624. 6. Miyake T, Kung CK, Goldwasser E. Purification of human erythropoietin. J Biol Chem 1977;252:5558 5564. 7. Jacobs K, Shoemaker C, Rudersdorf R, Neill SD, Kaufman RJ, Mufson A, Seehra J, Jones SS, Hewick R, Fritsch EF, Kawakita M, Shimizu T, Miyake T. Isolation and characterization of genomic and cdna clones of human erythropoietin. Nature 1985; 313:806 810. 8. Semenza GL, Nejfelt MK, Chi SM, Antonarakis SE. Hypoxiainducible nuclear factors bind to an enhancer element located 3' to the human erythropoietin gene. Proc Natl Acad Sci USA 1991; 88:5680 5684. 9. Suzuki N, Obara N, Yamamoto M. Use of gene-manipulated mice in the study of erythropoietin gene expression. Methods Enzymol 2007;435:157 177. 10. Obara N, Suzuki N, Kim K, Nagasawa T, Imagawa S, Yamamoto M. Repression via the GATA box is essential for tissue-specific erythropoietin gene expression. Blood 2008;111:5223 5232. 11. Pan X, Suzuki N, Hirano I, Yamazaki S, Minegishi N, Yamamoto M. Isolation and characterization of renal erythropoietin-producing cells from genetically produced anemia mice. PLoS One 2011; 6:e25839. 12. Suzuki N, Hirano I, Pan X, Minegishi N, Yamamoto M. Erythropoietin production in neuroepithelial and neural crest cells during primitive erythropoiesis. Nat Commun 2013;4:2902. 13. Asada N, Takase M, Nakamura J, Oguchi A, Asada M, Suzuki N, Yamamura K, Nagoshi N, Shibata S, Rao TN, Fehling HJ, Fukatsu, Minegishi N, Kita T, Kimura T, Okano H, Yamamoto M, Yanagita M. Dysfunction of fibroblasts of extrarenal origin underlies renal fibrosis and renal anemia in mice. J Clin Invest 2011; 121:3981 3990. 14. Wu H, Liu X, Jaenisch R, Lodish HF. Generation of committed erythroid BFU-E and CFU-E progenitors does not require erythropoietin or the erythropoietin receptor. Cell 1995;83:59 67. 15. Suzuki N, Obara N, Pan X, Watanabe M, Jishage K, Minegishi N, Yamamoto M. Specific contribution of the erythropoietin gene 3' enhancer to hepatic erythropoiesis after late embryonic stages. Mol Cell Biol 2011; 31:3896 3905. 16. Yamazaki S, Souma T, Hirano I, Pan X, Minegishi N, Suzuki N, Yamamoto M. A mouse model of adult-onset anaemia due to erythropoietin deficiency. Nat Commun 2013;4:1950. 17. Souma T, Nezu M, Nakano D, Yamazaki S, Hirano I, Sekine H, Dan T, Takeda K, Fong GH, Nishiyama A, Ito S, Miyata T, Yamamoto M, Suzuki, N. Erythropoietin synthesis in renal myofibroblasts is restored by activation of hypoxia signaling. J Am Soc Nephrol 2015; in press 18. Quaggin SE, Kapus A. Scar wars:mapping the fate of epithelialmesenchymal-myofibroblast transition. Kidney Int 2011;80: 41 50. 19. Mack M, Yanagita M. Origin of myofibroblasts and cellular events triggering fibrosis. Kidney Int 2015; 87:297 307. 20. Friedman SL, Sheppard D, Duffield JS, Violette S. Therapy for fibrotic diseases:nearing the starting line. Sci Transl Med 2013; 5:167sr1. 21. Maxwell PH, Osmond MK, Pugh CW, Heryet A, Nicholls LG, Tan CC, Doe BG, Ferguson DJP, Johnson MH, Ratcliffe PJ. Identification of the renal erythropoietin-producing cells using transgenic mice. Kidney Int 1993; 44:1149 1162. 22. Souma T, Yamazaki S, Moriguchi T, Suzuki N, Hirano I, Pan X, Minegishi N, Abe M, Kiyomoto H, Ito S, Yamamoto M. Plasticity of renal erythropoietin-producing cells governs fibrosis. J Am Soc Nephrol 2013; 24:1599 1616. 23. Souma T, Suzuki N, Yamamoto M. Renal erythropoietin-producing cells in health and disease. Front Physiol 2015;6:167. 24. Grgic I, Campanholle G, Bijol V, Wang C, Sabbisetti VS, Ichimura T, Humphreys BD, Bonventre JV. Targeted proximal tubule injury triggers interstitial fibrosis and glomerulosclerosis. Kidney Int 2012; 82:172 183. 25. Nangaku M. Chronic hypoxia and tubulointerstitial injury:a final common pathway to end-stage renal failure. J Am Soc Nephrol 2006; 17:17 25. 26. Inomata S, Itoh M, Imai H, Sato T. Serum levels of erythropoietin as a novel marker reflecting the severity of diabetic nephropathy. Nephron 1997; 75:426 430. 27. Boor P, Floege J. The renal (myo-)fibroblast:a heterogeneous group of cells. Nephrol Dial Transplant 2012;27:3027 3036. 28. Lebleu VS, Taduri G, O'Connell J, Teng Y, Cooke VG, Woda C, Sugimoto H, Kalluri R. Origin and function of myofibroblasts in

1 1199 kidney fibrosis. Nat Med 2013; 19:1047 1053. 29. DiRocco DP, Kobayashi A, Taketo MM, McMahon AP, Humphreys BD. Wnt4/β-catenin signaling in medullary kidney myofibroblasts. J Am Soc Nephrol 2013; 24:1399 1412. 30. Lin SL, Kisseleva T, Brenner DA, Duffield JS. Pericytes and perivascular fibroblasts are the primary source of collagen-producing cells in obstructive fibrosis of the kidney. Am J Pathol 2008; 173:1617 1627. 31. Takeda A, Toda T, Shinohara S, Mogi Y, Matsui N. Factors contributing to higher hematocrit levels in hemodialysis patients not receiving recombinant human erythropoietin1. Am J Kidney Dis 2002;40:104 109. 32. Kuo CC, Lee CT, Chuang CH, Su Y, Chen JB. Recombinant human erythropoietin independence in chronic hemodialysis patients:clinical features, iron homeostasis and erythropoiesis. Clin Nephrol 2005;63:92 97. 33. Schwartz DI, Pierratos A, Richardson RM, Fenton SS, Chan CT. Impact of nocturnal home hemodialysis on anemia management in patients with end-stage renal disease. Clin Nephrol 2005; 63:202 208. 34. Kang HM, Ahn SH, Choi P, Ko YA, Han SH, Chinga F, Park AS, Tao J, Sharma K, Pullman J, Bottinger EP, Goldberg IJ, Susztak K. Defective fatty acid oxidation in renal tubular epithelial cells has a key role in kidney fibrosis development. Nat Med 2015; 21:37 46. 35. Campanholle G, Mittelsteadt, K, Nakagawa S, Kobayashi A, Lin SL, Gharib SA, Heinecke JW, Hamerman JA, Altemeier WA, Duffield JS. TLR-2/TLR-4 TREM-1 signaling pathway is dispensable in inflammatory myeloid cells during sterile kidney injury. PLoS One 2013; 8:e68640. 36. Bechtel W, McGoohan S, Zeisberg EM, Muller GA, Kalbacher H, Salant DJ, Muller CA, Kalluri R, Zeisberg M. Methylation determines fibroblast activation and fibrogenesis in the kidney. Nat Med 2010; 16:544 550. 37. Yin H, Blanchard KL. DNA methylation represses the expression of the human erythropoietin gene by two different mechanisms. Blood 2000; 95:111 119. 38. Nangaku M, Rosenberger C, Heyman SN, Eckardt KU. Regulation of hypoxia-inducible factor in kidney disease. Clin Exp Pharmacol Physiol 2013; 40:148 157. 39. Koury MJ, Haase VH. Anaemia in kidney disease:harnessing hypoxia responses for therapy. Nat Rev Nephrol 2015;11: 394 410. 40. Bernhardt WM, Wiesener MS, Scigalla P, Chou J, Schmieder RE, Gunzler V, Eckardt, KU. Inhibition of prolyl hydroxylases increases erythropoietin production in ESRD. J Am Soc Nephrol 2010; 21:2151 2156.