RCSS ディスカッションペーパーシリーズ 第 66 号 2008 年 6 月 Discussion Paper Series No.66 June, 2008 ISSN-1347-636X 金 融 機 関 における 事 業 継 続 計 画 策 定 に 関 する 一 考 察 - 地 震 発 生 時 における BCP と BCM および 課 題 - 竹 村 敏 彦 長 岡 壽 男 RCSS 文 部 科 学 省 私 立 大 学 学 術 フロンティア 推 進 拠 点 関 西 大 学 ソシオネットワーク 戦 略 研 究 センター Research Center of Socionetwork Strategies, The Institute of Economic and Political Studies, Kansai University Suita, Osaka, 564-8680 Japan URL: http://www.rcss.kansai-u.ac.jp http://www.socionetwork.jp e-mail: keiseiken@jm.kansai-u.ac.jp tel: 06-6368-1228 fax. 06-6330-3304
金 融 機 関 における 事 業 継 続 計 画 策 定 に 関 する 一 考 察 地 震 発 生 時 における BCP と BCM および 課 題 竹 村 敏 彦 長 岡 壽 男 関 西 大 学 ソシオネットワーク 戦 略 研 究 センター 2008 年 6 月 概 要 本 研 究 は 重 要 インフラの 1 つを 担 っている 金 融 機 関 を 対 象 にして 事 業 継 続 マネジメントについて 議 論 を 行 い そこからさまざまなインプリケーションを 導 くことを 目 的 としている 特 に 事 業 継 続 性 に 影 響 を 与 える 事 故 や 事 件 は 多 々ある 中 で 昨 今 日 本 で 多 発 しており また 近 い 将 来 に 関 東 地 域 や 東 南 海 地 域 で 起 こるとされている 地 震 への 対 策 を 議 論 の 中 心 として 金 融 機 関 における 具 体 的 かつ 実 行 可 能 性 をもつ 事 業 継 続 計 画 策 定 の 在 り 方 を 本 研 究 では 提 示 する 急 速 に 進 展 した ICT 化 により 従 来 からあるコンティンジェンシープランで はカバーできないものも 多 数 出 てきている 本 研 究 ではその 点 について 考 慮 した 事 業 継 続 計 画 について 議 論 を 行 う 議 論 に 際 しては 過 去 に 起 こった 事 例 ( 阪 神 淡 路 大 震 災 や 中 越 沖 地 震 など)を 取 り 上 げて そこから 得 られる 教 訓 等 を 提 示 す るとともに 実 際 に 金 融 機 関 がとるべき 施 策 についてまとめる また 同 時 に 銀 行 業 の 経 済 における 役 割 を 鑑 みて 政 府 が 取 るべき 施 策 についても 考 える Keyword: Business Continuity Plan, Business Continuity Management, Financial Institution 関 西 大 学 ポストドクトラル フェロー E-mail: takemura@rcss.kansai-u.ac.jp 関 西 大 学 RCSS 委 嘱 研 究 員 E-mail: nagaoka@rcss.kansai-u.ac.jp 564-8680 大 阪 府 吹 田 市 山 手 町 3-3-35 関 西 大 学 経 済 政 治 研 究 所 ソシオネットワーク 戦 略 研 究 セ ンター 1
Cogitation on Making Business Continuity Plan in the Financial Institutions Toshihiko Takemura E-mail: takemura@rcss.kansai-u.ac.jp Research Center of Socionetwork Strategies, Kansai University, 3-3-35 Yamate, Suita, Osaka, 564-8680, JAPAN, Hisao Nagaoka E-mail: nagaoka@rcss.kansai-u.ac.jp Research Center of Socionetwork Strategies, Kansai University, 3-3-35 Yamate, Suita, Osaka, 564-8680, JAPAN. June, 2008 Abstract In the paper, it has aimed to discuss the business continuity management (BCM), and to lead various implications. The object is a financial institution that bears one of the critical infrastructures. Especially, the accident and the event that influences the business continuance happen frequently recently in Japan. Mainly discussing countermeasure against earthquakesassumedtohappeninkantoandtonankairegionsinthe near future, and we suggest what BCP with concrete and practicability in financial institution should be like. Keyword: Business Continuity Plan, Business Continuity Management, Financial Institution 2
1 はじめに 近 年 の 日 本 を 見 てみると 地 震 や 台 風 をはじめとする 自 然 災 害 や 人 的 ミスによる 停 電 や 各 種 システムトラブルが 相 次 いで 起 こっている これらは 事 業 継 続 に 大 きな 影 響 を 与 える 要 因 である 1 従 来 は これらに 対 しては 多 くの 企 業 がコンティンジェンシープラ ンを 策 定 していたが 2001 年 の 米 国 同 時 多 発 テロや 欧 米 における 事 業 継 続 計 画 (BCP; Business Contingency Plan) 策 定 の 動 向 を 受 けて 日 本 でも BCP 策 定 への 動 きがみ られるとともに その 必 要 性 についても 議 論 されるようになってきた 特 に 経 済 や 社 会 における 役 割 を 考 えると 重 要 インフラを 担 っている 金 融 機 関 の 対 応 は 徹 底 され ている 必 要 がある それは 自 然 災 害 などが 起 こった 時 に 金 融 機 関 が 事 業 を 継 続 で きなければその 影 響 はかなり 広 範 囲 に 広 がることが 容 易 に 想 像 できるからである 日 本 銀 行 (2007) におけるアンケート 調 査 によれば 金 融 機 関 の 80% 弱 が 業 務 継 続 体 制 を 整 備 済 みであると 回 答 しており 2004 年 の 同 様 の 調 査 と 比 べると その 割 合 は 約 10% 増 加 している これは 高 い 水 準 にあると 見 ることもできるが 逆 に 約 20%の 金 融 機 関 で 体 制 がまだ 整 備 されていないことを 意 味 している また 各 種 マニュアルの 整 備 や 訓 練 に 関 しては 十 分 な 対 策 が 必 ずしもなされていないことも 明 らかにされている 上 述 したように 重 要 インフラを 担 う 金 融 機 関 は 一 般 企 業 などと 比 較 しても 徹 底 された 対 策 が 必 要 とされるが それはまだ 十 分 なものとなっていない その 理 由 の 1 つ として 各 種 ガイドラインなどで 公 表 されている 一 般 的 な BCP 策 定 に 盛 り 込 む 内 容 項 目 が 抽 象 的 であることが 多 いために BCP 策 定 が 進 まないことが 考 えられる 実 際 に BCP 策 定 に 関 するガイドラインも 内 閣 府 経 済 産 業 省 などの 各 省 庁 日 本 銀 行 金 融 情 報 システムセンターなどと 様 々な 機 関 から 公 表 されている 本 稿 では こうした ガイドライン( 特 に 金 融 情 報 システムセンター 2001; 日 本 銀 行 2003)を 踏 まえて 金 融 機 関 の BCP 策 定 の 在 り 方 について 議 論 を 行 う 本 稿 の 構 成 は 以 下 の 通 りである まず 次 節 で 金 融 機 関 の BCP について 求 められる 課 題 について 整 理 する 次 に 第 3 節 では 地 震 を 1 つの 例 として BCP 策 定 で 考 慮 す べきアイデアをいくつか 提 示 する そして 最 後 の 節 にて 本 稿 のまとめを 簡 単 に 与 えるとともに 今 後 の 課 題 について 議 論 を 行 う 2 金 融 機 関 における BCP の 課 題 富 永 (2006) は BCP を 災 害 などで 業 務 中 断 が 発 生 した 場 合 に 目 標 時 間 内 で 業 務 を 継 続 するための 計 画 また BCM(Business Continuity Management) は 業 務 中 断 のリスクを 分 析 し 継 続 計 画 を 策 定 して 訓 練 し 見 直 しを 行 う 管 理 体 制 と 定 義 して いる 特 に BCP は システムリスクの 領 域 について 事 前 の 対 策 を 整 備 する 安 全 対 策 と 事 故 の 発 生 直 後 から 復 旧 に 至 る 対 応 を 一 定 の 時 間 内 に 行 うコンティンジェンシープラ ンの 両 面 を 備 えた 計 画 と 考 えられる BCP とコンティンジェンシープランの 大 きな 違 1 前 者 に 起 因 するリスクはコントローすることがほぼ 不 可 能 であるものの 後 者 に 起 因 するリスクはあ る 程 度 コントロールすることが 可 能 である ただし それは 効 率 的 なマネジメントを 行 わなければ 膨 大 なコストがかかる 3
いは 復 旧 時 間 の 概 念 が 入 っているか 否 かにある 2 また BCP では 災 害 や 事 故 で 被 害 を 受 けても 取 引 先 などの 利 害 関 係 者 から 重 要 業 務 が 中 断 しないことや 中 断 しても 可 能 な 限 り 短 い 期 間 で 再 開 することが 望 まれている 言 い 換 えるとこれは BCP の 策 定 や BCM が 顧 客 の 流 出 マーケットシェアの 低 下 企 業 価 値 の 低 下 などを 防 止 する 経 営 戦 略 につながることを 暗 に 意 味 している また BCP 策 定 は 企 業 の 社 会 的 責 任 (CSR; Corporate Social Responsibility)の 側 面 からみても 必 要 なものである 3 地 震 発 生 時 における BCP と BCM および 課 題 3.1 BCP と BCM の 本 質 本 稿 では 全 てのリスクに 対 応 した BCP の 在 り 方 について 議 論 するのではなく 地 震 を 一 例 として 取 り 上 げて 実 効 性 のある BCP 策 定 に 関 するアイデアを 提 示 して 議 論 を 行 う 地 震 を 取 り 上 げる 理 由 としては 武 田 (2006) でも 議 論 されているように 東 南 海 南 海 地 域 や 関 東 地 域 直 下 型 地 震 の 発 生 確 率 が 高 まっていることや 阪 神 大 震 災 やその 他 の 地 震 からすでにいくつかの 教 訓 を 得 ていることを 考 慮 したためである 3 ま た 日 本 銀 行 (2003) でも 1) 被 災 地 等 における 住 民 の 生 活 や 経 済 活 動 の 維 持 に 寄 与 す ること 2) 決 済 面 での 混 乱 拡 大 を 抑 制 すること 3) 金 融 機 関 経 営 におけるリスクの 軽 減 に 繋 がること といった 3 点 から 地 震 による 被 災 事 例 を 検 討 することの 重 要 性 を 唱 えている 第 2 節 で 見 たように BCP には 復 旧 目 標 時 間 が 設 定 される 特 に 金 融 機 関 の 業 務 は 多 くはコンピュータシステムに 依 存 しており 被 災 時 にシステムの 稼 動 の 可 否 が 復 旧 に 至 るまでの 重 要 なポイントになる そのために 様 々ある 対 応 事 項 のうち 何 をどのタイミングですればよいかについても 考 慮 していく 必 要 があり またそれを 計 画 として 盛 り 込 んでおく 必 要 がある 4 (1) 組 織 意 思 決 定 地 震 発 生 直 後 において 安 否 確 認 や 被 害 状 況 の 確 認 などが 必 要 となる BCP の 場 合 一 部 の 部 署 や 組 織 において 対 応 することはほぼ 困 難 である そのために 部 署 を 横 断 する( 一 時 的 な) 組 織 の 形 成 や 意 思 決 定 を 行 うことができる 組 織 ( 例 えば 災 害 対 策 本 部 など)が 必 要 である 2 竹 村 長 岡 (2007) で BCP とコンティンジェンシープランの 相 違 についてまとめているので 参 照 さ れたい 3 例 えば 阪 神 大 震 災 時 における 教 訓 についてまとめているものとして 遠 藤 (1996) や Nagaoka, Ukai and Takemura (2005) などがある 4 日 本 銀 行 (2007) によれば 最 優 先 の 重 要 業 務 の 復 旧 目 標 時 間 について 金 融 機 関 の 70% 弱 が 4 時 間 以 内 と 回 答 している しかしながら そのうち 一 部 の 金 融 機 関 は 1 週 間 以 上 かかると 回 答 しているところ も 存 在 している 4
(2) 優 先 事 項 の 選 定 地 震 発 生 直 後 の 緊 急 事 態 において 限 られた 利 用 可 能 な 経 営 資 源 を 用 いて 優 先 的 に 継 続 可 能 な 少 数 の 業 務 を 特 定 する 必 要 がある こうした 業 務 には 現 金 の 支 払 や 預 入 手 形 の 取 立 や 交 換 業 務 融 資 業 務 などがある (3) マニュアル 化 教 育 訓 練 地 震 が 発 生 すると 多 くの 場 合 情 報 システムが 停 止 する その 際 情 報 システムが 復 旧 するまでは 手 作 業 による 一 時 的 対 応 が 必 要 となる そのために これらに 関 す るマニュアル 化 および 日 々の 教 育 訓 練 が 必 要 となる これは 地 震 時 に 限 らず 一 般 的 なシステムトラブルやシステム 停 止 時 の 対 応 として 必 要 であり また 有 益 なものであ る 特 に 部 分 的 な 訓 練 だけでなく 営 業 店 本 部 およびシステム 部 門 と 一 体 となった 総 合 訓 練 は 重 要 である (4) 情 報 システムのバックアップなど バックアップシステムの 整 備 やバックアップセンターの 確 保 などにより BCP の 強 化 を 図 ることができる バックアップに 関 しては 採 用 する 方 式 により 投 資 コストや 運 営 費 に 大 きな 差 が 出 る 例 えば 大 手 銀 行 が 既 に 採 用 しているミラーサイト 方 式 は 主 センターと 同 等 のシステムを 代 替 センターとして 用 意 しており 主 センターとファ イルを 同 時 更 新 していることから 即 時 復 旧 が 可 能 と 考 えられる しかし コストの 負 担 は 大 きい 一 方 で ホットサイト 方 式 では 必 要 に 合 わせて 優 先 順 位 に 応 じたシ ステムを 代 替 センターに 用 意 するものであり その 費 用 負 担 も 少 ない しかしながら 復 旧 には 少 々 時 間 がかかるものとなる バックアップセンターについても 自 営 の 場 合 は 代 替 施 設 として 利 用 する 他 に 多 目 的 に 利 用 できるものの コスト 負 担 は 大 きい もちろん 複 数 金 融 機 関 で 設 立 した 共 同 利 用 センターや 代 行 処 理 センターに 委 託 することもできる ただし 過 去 の 事 故 発 生 時 において 利 用 先 が 殺 到 した 結 果 使 用 できない 事 例 が 生 じたこともあり 委 託 先 を 事 前 に 十 分 調 査 する 必 要 があるといえる (5) 最 新 の 情 報 通 信 技 術 の 利 用 情 報 通 信 技 術 の 進 歩 に 合 わせて 有 効 なものは 適 宜 採 用 することが 望 まれる 例 え ば 衛 星 通 信 携 帯 電 話 による 安 否 確 認 システムや 地 震 予 知 情 報 システムなどは 地 震 による 被 害 を 低 減 させる 効 果 が 見 込 め 一 部 の 金 融 機 関 ではすでに 導 入 されている ところもある (6) リスクコミュニケーション 地 震 発 生 から 復 旧 に 至 る 過 程 での 広 報 活 動 は 重 要 である 適 切 な 情 報 の 共 有 により 組 織 内 外 における 不 安 感 を 拭 う 必 要 がある また 社 会 経 済 への 影 響 を 考 えて 金 5
融 庁 をはじめとする 監 督 官 庁 やマスコミへ 適 切 な 情 報 を 伝 えることも 必 要 である (7) 第 三 者 認 証 の 導 入 と 活 用 第 三 者 認 証 を 取 得 することで 策 定 している BCP の 有 効 性 をチェックすることがで き またそれがマーケットにおける 信 用 評 価 にもつながる ただし ただ 単 に 認 証 を 取 得 するだけでなく 後 述 するように PDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルで これらを 常 にチェックしていく 必 要 がある 3.2 BCP における 主 要 検 討 項 目 地 震 発 生 後 の BCP 発 動 から 全 面 回 復 までの 過 程 は 一 般 的 に1 BCP の 発 動 2 業 務 再 開 3 業 務 回 復 4 全 面 復 旧 の 4 つのフェーズに 分 けられる 各 フェーズの 主 要 検 討 項 目 として 表 1 のようなものが 考 えられる 各 フェーズでは 状 況 の 展 開 に 沿 った 組 織 的 な 対 応 が 図 られる 表 1: BCP の 主 要 検 討 事 項 フェーズ 実 施 項 目 BCP 発 動 地 震 発 生 と 被 害 の 確 認 災 害 対 策 本 部 設 置 安 否 確 認 業 務 の 影 響 バックアップの 切 替 要 否 判 断 通 信 手 段 の 確 保 基 本 方 針 決 定 優 先 順 位 と 復 旧 目 標 決 定 広 報 活 動 被 災 行 員 の 宿 泊 インフラの 被 害 状 況 確 認 金 の 確 保 二 次 災 害 の 防 止 業 務 再 開 要 員 確 保 資 源 の 確 保 代 替 店 舗 オフィス 確 保 業 務 再 開 範 囲 確 認 と 業 務 サポート 復 旧 作 業 開 始 物 流 ルート 確 保 顧 客 影 響 確 認 相 談 窓 口 業 務 回 復 業 務 継 続 状 況 確 認 復 旧 状 況 確 認 追 加 資 源 の 投 入 復 旧 の 目 処 継 続 業 務 の 拡 大 要 員 配 置 の 異 例 措 置 全 面 復 旧 復 旧 手 順 の 確 認 全 面 復 旧 と 代 替 運 用 の 縮 退 平 常 営 業 の 確 認 総 括 と BCP 見 直 し 3.3 マネジメントサイクル PDCA サイクルを 回 して より 実 効 性 のあるものに 仕 上 げるため 継 続 的 な 見 直 し と 改 善 が 必 要 である こうした 改 善 努 力 は BCP の 重 要 性 を 企 業 内 で 普 及 徹 底 させ ることになり リスク 管 理 能 力 を 向 上 させることに 繋 がる なお この 場 合 改 善 項 目 などの 評 価 について ( 外 部 ) 監 査 を 利 用 することも 重 要 である 図 1 は BCP 策 定 の 進 め 方 とマネジメントサイクルについてまとめたものである 6
図 1: BCP 策 定 とマネジメントサイクル 4 まとめ 本 稿 では まず 金 融 機 関 における BCP 策 定 および BCM の 重 要 性 について 議 論 した そして 次 に 地 震 を 1 つの 例 として BCP 策 定 で 考 慮 すべきアイデアをいくつかを 提 示 するとともにその 課 題 についても 見 てきた 日 本 銀 行 (2007) からもわかるように 全 体 的 に 見 て 金 融 機 関 の BCP 策 定 は 着 実 に 進 められているものの マニュアルの 未 作 成 や 教 育 訓 練 が 不 十 分 であるといったことからそれは 単 に 形 式 的 なものでしかないと いったことが 懸 念 される 本 稿 で 提 示 したいくつかのアイデアおよび 主 要 検 討 項 目 を 踏 まえた BCP 策 定 や BCM の 強 化 が 今 後 期 待 される BCP 策 定 や BCM におけるいくつかの 課 題 を 克 服 するために 今 後 様 々な 事 例 をも とにして 具 体 的 にそこから 得 られた 教 訓 をまとめていきたい また 本 稿 では 個 別 金 融 機 関 の BCP 策 定 について 議 論 を 行 ってきたが 金 融 業 が 重 要 インフラであることを 鑑 みると 業 界 全 体 での 取 組 み(CIIP; Critical Information Infrastructure Protection) についても 考 えていく 必 要 がある それについては 今 後 の 課 題 としたい 5 5 岩 下 (2005) において 個 別 金 融 機 関 で BCP 策 定 だけでなく 業 界 レベルの BCP(CIIP) 策 定 の 必 要 性 についても 議 論 されている なお CIIP については 内 閣 官 房 情 報 セキュリティセンター(NISC; National Information Security Center)(http://www.nisc.go.jp)にある 情 報 を 参 照 されたい 7
追 記 本 稿 は 竹 村 が 財 団 法 人 大 川 情 報 通 信 基 金 2007 年 度 研 究 助 成 の 研 究 課 題 日 本 にお ける 情 報 セキュリティ 対 策 の 現 状 と 経 済 分 析 ( 研 究 代 表 者 竹 村 敏 彦 ) 長 岡 が 文 部 科 学 省 の 科 学 研 究 費 補 助 金 交 付 課 題 金 融 パニックシミュレーション 実 験 - 妥 当 なミク ロ 金 融 政 策 の 構 築 - ( 課 題 番 号 19653027 萌 芽 研 究 研 究 代 表 者 鵜 飼 康 東 )の 助 成 を 受 けて 行 った 研 究 成 果 である また 本 稿 は 2008 年 5 月 28 日 の 横 浜 商 科 大 学 に 於 ける 第 56 回 日 本 情 報 経 営 学 会 全 国 大 会 で 発 表 した 金 融 機 関 における 事 業 継 続 計 画 策 定 の 在 り 方 について を 加 筆 修 正 したものである 討 論 者 である 松 井 明 太 氏 ( 株 式 会 社 ちもと)とセッションの 司 会 である 佐 々 木 宏 氏 ( 立 教 大 学 教 授 )から 有 益 な 助 言 をいただいた また 鵜 飼 康 東 氏 ( 関 西 大 学 ソシオネットワーク 戦 略 研 究 センター センター 長 )からも 貴 重 なコメント を 頂 いた ここに 記 して 謝 意 を 表 したい もちろん 残 る 誤 りは 全 て 筆 者 の 責 に 帰 す ものである 参 考 文 献 [1] 岩 下 直 行 (2005) 金 融 ビジネスにおける BCP の 現 状 と 課 題 - 個 社 レベルの BCP から 業 界 レベルの BCP(=CIIP)へ (http://www.imes.boj.or.jp/security/) [2] 遠 藤 勝 裕 (1996) 阪 神 大 震 災 - 日 銀 神 戸 支 店 長 の 行 動 日 記 - 日 本 信 用 調 査. [3] 金 融 情 報 システムセンター (2001) 金 融 機 関 におけるコンティンジェンシープラ ン 策 定 のための 手 引 書 財 経 詳 報 社. [4] 武 田 文 男 (2006) 日 本 の 災 害 危 機 管 理 ぎょうせい. [5] 竹 村 敏 彦 長 岡 壽 男 (2007) 企 業 価 値 を 高 める 事 業 継 続 計 画 の 提 案 -システムリス クを 中 心 とした 議 論 - RCSS Discussion Paper Series( 関 西 大 学 ), No57. [6] 富 永 新 (2006) 金 融 機 関 の 業 務 継 続 強 化 に 向 けた 課 題 と 対 応 日 本 銀 行 金 融 機 構 局. [7] 日 本 銀 行 (2003) 金 融 機 関 における 業 務 継 続 体 制 の 整 備 について 日 本 銀 行. [8] 日 本 銀 行 (2007) 業 務 継 続 体 制 の 整 備 状 況 に 関 するアンケート(2006 年 12 月 ) 調 査 結 果 日 本 銀 行 金 融 機 構 局. [9] Nagaoka H., Y. Ukai and T. Takemura (2005) Information System Strategy of Nationwide Banks Economic Analysis of Information System Investment in Banking Industry, Springer, 29-52. 8