土 木 学 会 論 文 集 B3( 海 洋 開 発 ), Vol. 69, No. 2, I_97-I_22, 23. 汚 濁 防 止 膜 カーテン 強 度 の 経 時 劣 化 評 価 法 に 関 する 研 究 長 尾 毅 島 田 伊 浩 2 三 吉 正 英 3 小 坂 康 之 4 力 竹 正 広 5 6 東 博 之 正 会 員 神 戸 大 学 都 市 安 全 研 究 センター( 657-85 神 戸 市 灘 区 六 甲 台 町 -) E-mail:nagao@people.kobe-u.ac.jp 2 正 会 員 ( 一 財 ) 港 湾 空 港 総 合 技 術 センター( -3 千 代 田 区 霞 ヶ 関 3-3- 尚 友 会 館 3 階 ) E-mail:shimada@scopenet.or.jp 3 ( 一 社 ) ウォーターフロント 協 会 ( 54- 東 京 都 世 田 谷 区 池 尻 2-33-6) E-mail:mm2463@mb.taiyokogyo.co.jp 4 ( 一 社 ) ウォーターフロント 協 会 ( 54- 東 京 都 世 田 谷 区 池 尻 2-33-6) E-mail:DZE562@nifty.ne.jp 5 ( 一 社 )ウォーターフロント 協 会 ( 54- 東 京 都 世 田 谷 区 池 尻 2-33-6) E-mail:m.rikitake@hakusho.co.jp 6 ( 一 社 ) ウォーターフロント 協 会 ( 54- 東 京 都 世 田 谷 区 池 尻 2-33-6) E-mail:azuma@k-akebono.co.jp 海 洋 を 主 とする 公 有 水 面 での 浚 渫 工 事 や 埋 立 工 事 等 において, 発 生 する 汚 濁 の 拡 散 を 防 止 するために 設 置 される 汚 濁 防 止 膜 は,フロート 部,カーテン 部,アンカー 等 により 構 成 され, 近 年 カーテン 部 の 再 利 用 が 進 んでいる.ポリエステル 織 物 が 一 般 に 用 いられるカーテン 部 は 経 時 劣 化 が 避 けられないことから, 設 置 期 間 に 対 応 した 劣 化 強 度 を 見 込 んで 設 計 が 行 われる.この 劣 化 強 度 は,データ 数 が 比 較 的 乏 しいことな どから, 特 に 再 利 用 品 については 従 来 かなり 安 全 側 の 設 定 が 行 われてきた. 本 研 究 では, 汚 濁 防 止 膜 カー テン 強 度 の 経 時 劣 化 評 価 法 を 構 築 することを 目 的 として, 実 海 域 における 実 験 データをはじめとする 数 多 くの 経 時 劣 化 データを 収 集 し, 設 計 に 用 いる 劣 化 強 度 関 数 を 提 案 した. Key Words : silt curtain, tensile strength, strength deterioration, reuse. はじめに 汚 濁 防 止 膜 は, 海 洋 を 主 とする 公 有 水 面 での 浚 渫 工 事 や 埋 立 工 事 等 において, 発 生 する 汚 濁 の 拡 散 を 防 止 する ために 設 置 される 構 造 物 であり, 資 源 の 有 効 利 用 や 廃 棄 物 の 減 量 に 資 する 観 点 から, 近 年 再 利 用 が 進 んでいる. 汚 濁 防 止 膜 の 基 本 構 成 は, 汚 濁 拡 散 防 止 機 能 を 有 するカ ーテン 部,カーテン 部 を 垂 直 方 向 に 安 定 させる 機 能 を 有 するフロート 部, 張 力 を 受 け 持 つテンション 部 及 び 汚 濁 防 止 膜 を 固 定 するための 係 留 部 等 により 構 成 される. これらの 部 位 のうち,フロート 部,テンション 部 等 の 経 時 劣 化 程 度 は 比 較 的 低 いが,ポリエステル 織 物 が 一 般 に 用 いられるカーテン 部 は 経 時 劣 化 の 影 響 が 非 常 に 大 き い.このため,カーテン 部 の 性 能 照 査 においては, 不 確 定 要 因 によるばらつき, 製 品 縫 合 の 影 響 に 加 えて, 経 時 による 影 響 を 考 慮 した 部 分 係 数 を 用 いて 強 度 の 評 価 が 行 われる ). 経 時 劣 化 の 影 響 を 見 込 む 部 分 係 数 は, 初 期 利 用 と 再 利 用 で 異 なる 値 が 設 定 されており,データ 数 が 比 較 的 乏 しいことなどから, 従 来, 特 に 再 利 用 品 について はかなり 安 全 側 の 設 定 が 行 われてきた. 設 置 断 面 図 アンカーロープ ウェイト 設 置 側 面 図 フロート 部 テンション 部 カーテン 部 アンカー フロート 部 テンション 部 カーテン 部 アンカーロープ アンカー 図 - 汚 濁 防 止 膜 構 造 例 I_97
土 木 学 会 論 文 集 B3( 海 洋 開 発 ), Vol. 69, No. 2, I_97-I_22, 23. 本 研 究 では, 汚 濁 防 止 膜 カーテン 強 度 の 経 時 劣 化 評 価 法 を 構 築 することを 目 的 として, 実 工 事 における 製 品 回 収 時 の 試 験 データや 実 海 域 における 実 験 データ 等 の 数 多 くの 経 時 劣 化 データを 収 集 し, 設 計 に 用 いる 劣 化 強 度 関 数 を 提 案 した. ) 2. カーテンの 破 断 に 関 する 現 行 の 性 能 照 査 法 カーテンの 破 断 に 関 する 性 能 照 査 は, 汚 濁 防 止 膜 技 術 資 料 ( 案 ) ) に 従 い 行 われることが 一 般 的 である. 以 下 では, 本 論 での 議 論 のために, 現 行 の 性 能 照 査 法 を 簡 単 に 紹 介 する.カーテン 部 の 性 能 照 査 は,カー テンに 作 用 する 張 力 がカーテン 強 度 を 超 えないことを 照 査 することで 行 われる. 標 準 的 な 性 能 照 査 式 は 式 ()の とおりである. 3 T C T C 3 () ここに,T 3 :3cm 幅 カーテン 強 度 (N/3cm),T C :カー テンに 作 用 する 張 力 (N/m),γ C : 部 分 係 数 である. ここで,カーテンの 強 度 試 験 はJIS L 96のストリップ 法 に 準 拠 して3cm 幅 の 試 験 体 を 対 象 に 実 施 される.この ため,3cm 幅 の 引 張 強 度 に 相 当 する 値 がカーテン 品 番 と して 与 えられ,#3,#5,#8の3 種 類 の 品 番 のカー テンが 我 が 国 では 生 産 されている.それぞれの 引 張 強 度 の 規 格 値 は2942,494,7846(N/3cm)である. 部 分 係 数 は 式 (2)により 設 定 され, 初 期 利 用 品 につい ては 表 -の 値 が 用 いられる. k C k2k (2) 3 ここに,k : 経 時 劣 化 による 影 響 を 表 す 係 数,k 2 : 不 確 定 要 因 によるばらつきを 表 す 係 数,k 3 : 製 品 縫 合 によ る 影 響 を 表 す 係 数 である. 表 - 初 期 利 用 品 に 対 する 部 分 係 数 予 定 設 置 期 間 6ヶ 月 まで 6~2ヶ 月 2~24ヶ 月 k.67 2.5 4. k 2 3. 3. 3. k 3.67.67.67 γ C 8. 2. 2. また, 再 利 用 品 については, 既 設 置 期 間 と 再 利 用 予 定 期 間 の 合 計 が24ヶ 月 までの 範 囲 で, 表 -の 初 期 利 用 品 に 対 する 部 分 係 数 のうち2~24ヶ 月 の 値 が 用 いられる. 既 設 置 期 間 と 再 利 用 予 定 期 間 の 合 計 がたとえ2ヶ 月 より 短 い 場 合 でも, 安 全 側 の 設 定 としてk =4.を 用 いること になる.これは, 汚 濁 防 止 膜 技 術 資 料 ( 案 ) ) 策 定 時 に おいて 必 ずしも 十 分 な 数 のデータが 得 られていなかった ためであるといえる. 図 -2, 図 -3にそれぞれ 汚 濁 防 止 膜 技 術 資 料 ( 案 ) ) におけるカーテンの 経 時 劣 化 データと 設 計 における 設 定 の 関 係 を 示 す. 図 -2, 図 -3において, design valueとは 経 時 劣 化 に 関 係 して 設 計 で 用 いる 値 であ り,k の 逆 数 として 示 している. 回 帰 式 は, 初 期 利 用, 再 利 用 について,それぞれ 式 (3), 式 (4)に 示 すとおりである. r exp. 436m (3) r exp. 437m (4) ここに,r: 強 度 低 下 率 ( 試 験 値 / 規 格 値 ),m: 経 過 月 である..8.6.4.2 5 5 2 25.8.6.4.2 elapsed month experiment data regression equation design value 図 -2 引 張 強 度 経 時 劣 化 ( 初 期 利 用 ) ) 5 5 2 25 elapsed month experiment data regression equation design value 図 -3 引 張 強 度 経 時 劣 化 ( 再 利 用 ) ) I_98
土 木 学 会 論 文 集 B3( 海 洋 開 発 ), Vol. 69, No. 2, I_97-I_22, 23. 3. カーテン 強 度 の 経 時 劣 化 評 価 法 の 検 討 () 収 集 データ 検 討 に 用 いたデータは, 汚 濁 防 止 膜 技 術 資 料 ( 案 ) ) 策 定 時 に 用 いた25 年 時 点 の 収 集 データ,2 新 潟 東 港 にお ける 実 海 域 実 験 データ 2),3 近 年 の 実 工 事 におけるカー テン 回 収 時 の 試 験 データの3 種 類 のデータである. 品 番 毎 の 収 集 データ 数 は 表 -2に 示 すとおりである.データ 総 数 は35であり, 汚 濁 防 止 膜 技 術 資 料 ( 案 ) ) 策 定 時 のデー タ 数 48と 比 較 すると, 本 研 究 では 非 常 に 多 くのデータを 得 たことになる. 表 -2 収 集 データ 数 #3 #5 #8 25 年 時 点 データ 8 8 2 新 潟 東 港 実 海 域 実 験 データ 2 近 年 の 実 工 事 データ 39 87 た 場 合, 実 際 のばらつき 以 上 に 残 留 強 度 のばらつきを 評 価 してしまうことになる.このため, 本 研 究 では, 残 留 強 度 比 として, 残 留 強 度 に 対 する 初 期 値 の 比 として 定 義 した 値 を 用 いる.ここで, 初 期 値 とは, 初 期 利 用, 再 利 用 の 違 いにかかわらず, 初 期 利 用 開 始 時 の 値 としている. よって 再 利 用 についても, 再 利 用 開 始 時 の 値 ではなく 初 期 の 強 度 をもとにしていることに 注 意 が 必 要 である. 2 5 5..2.3.4.5 initial strength ratio 以 上 のうち 新 潟 東 港 における 実 海 域 実 験 データは, 詳 細 は 文 献 2)に 示 されるとおりであるが, 簡 単 に 実 験 内 容 を 紹 介 しておく. 当 該 実 験 は, 新 潟 東 港 の 実 験 海 域 にカ ーテン 部 スパン( 長 さ2m,カーテン 丈 長 3m),フロ ート 部 φ4mm,および 係 留 索 を 平 成 23 年 8 月 下 旬 から 平 成 24 年 月 初 旬 まで 設 置 し, 原 則 ヶ 月 毎 に 物 理 的 特 性 試 験 を 行 うことにより, 同 一 海 域 でのカーテンの 経 年 劣 化 の 状 況 を 継 続 的 に 調 査 したものである.ただし, 経 過 5,6ヶ 月 は 積 雪 のため 欠 測 となっている. 実 験 体 は 3, 5, 8の 品 番 である. この 他 のデータについては, 海 域, 波 浪 等 の 作 用,カ ーテン 使 用 条 件 は 様 々であるが, 条 件 の 違 いによる 経 年 劣 化 への 影 響 を 議 論 できるような 詳 細 な 条 件 データは 残 されていない. 6 4 2 図 -4 初 期 強 度 比 の 頻 度 分 布.4.6.8.2 standard strength initial strength 図 -5 残 留 強 度 比 の 比 較 (2) 残 留 強 度 比 の 定 義 上 述 の 通 り 我 が 国 で 生 産 される#3,#5,#8の3 種 類 の 品 番 のカーテンの 引 張 強 度 の 規 格 値 はそれぞれ 2942,494,7846(N/3cm)である. 規 格 値 とは 実 際 の 製 品 がその 値 を 下 回 らないことを 保 証 する 値 であり, 実 際 の 初 期 強 度 と 規 格 値 の 比 ( 初 期 強 度 比 )はメーカーに よりばらつきがある. 図 -4には 今 回 検 討 に 用 いた35デ ータの 初 期 強 度 比 の 頻 度 分 布 を 示 す. 初 期 強 度 比 は.6 から.45の 範 囲 にばらついており, 平 均 値 は.9, 標 準 偏 差 は.8である. 以 降 の 検 討 に 用 いる 残 留 強 度 比 とし ては, 実 際 には 残 留 強 度 を 初 期 値 で 除 した 値 とすべきで あるが, 設 計 実 務 上 は 規 格 値 で 除 した 値 と 定 義 する 方 が 取 扱 は 簡 単 である. しかしながら,このように 初 期 強 度 比 にばらつきが 大 きい 状 態 で 残 留 強 度 比 を 規 格 値 で 除 した 値 として 設 定 し.8.6.4.2 2 4 6 8 #3 #5 #8 図 -6 強 度 経 時 劣 化 関 係 I_99
土 木 学 会 論 文 集 B3( 海 洋 開 発 ), Vol. 69, No. 2, I_97-I_22, 23. 図 -5には5-6 日 経 過 時 点 の 残 留 強 度 比 を, 規 格 値 (standard strength)に 対 する 比 で 定 義 した 場 合 と 初 期 値 (initial strength) に 対 する 比 で 定 義 した 場 合 の 比 較 を 示 した. 標 準 偏 差 は 前 者 が.45, 後 者 が.9であり, 初 期 値 に 対 する 比 とすることで 残 留 高 度 のばらつきをより 正 確 に 評 価 できるといえる. 図 -6には 全 てのデータを 対 象 に, 経 過 日 数 に 対 する 残 留 強 度 比 の 関 係 を 示 した.データは 大 きくばらついてい るが, 残 留 強 度 は- 日 程 度 経 過 の 利 用 開 始 初 期 段 階 で 急 激 に 低 下 し,その 後 徐 々に 緩 やかに 低 下 する 傾 向 に あることが 分 かる. #3.8.6.4.2 2 4 6 8.8.6.4.2 virgin reuse 2 4 6 8.8.6.4.2 virgin reuse #5 #8 2 4 6 8 virgin reuse 図 -7 品 番 及 び 初 期 再 利 用 による 強 度 経 時 劣 化 関 係 (3) 品 番 及 び 利 用 状 況 の 影 響 の 検 討 品 番 の 違 いによる 強 度 低 下 率 の 違 いや, 初 期 利 用 と 再 利 用 の 違 いによる 強 度 低 下 率 の 違 いについて 検 討 する. 図 -7に 品 番 ごとに 経 過 日 数 に 対 する 残 留 強 度 比 の 関 係 を 示 した. 図 には 初 期 利 用 (virgin), 再 利 用 (reuse)の 区 別 も 示 した. 再 利 用 品 については, 初 期 利 用 終 了 時 から 回 目 の 再 利 用 までの 保 管 日 数 は 記 録 の 残 っている 範 囲 で 2-256 日 の 範 囲 で, 平 均 85 日 であった. 上 述 のように 品 番 については#5のデータ 数 が 多 く, 他 の 品 番 のデータ はあまり 多 くない.しかしながら,(2)の 全 データを 対 象 にした 経 過 日 数 に 対 する 残 留 強 度 比 の 項 で 述 べた 傾 向 は 概 ね 全 ての 品 番 に 共 通 の 傾 向 であるといえる.このた め, 品 番 の 違 いによる 残 留 強 度 比 の 違 いは 考 慮 する 必 要 はないと 考 えられる. 次 に 利 用 状 況 による 強 度 低 下 の 違 いであるが, 図 より 分 かるように 再 利 用 のほうが 初 期 利 用 よりも 強 度 低 下 が 激 しいような 傾 向 は 認 められない.#3のデータのよう に, 初 期 利 用 の 方 が 強 度 低 下 が 大 きい 傾 向 も 認 められる. カーテンの 再 利 用 は 資 源 の 有 効 利 用 や 廃 棄 物 の 発 生 抑 制 等 の 観 点 から 奨 励 されることであるが, 再 利 用 品 の 品 質 確 保 のためには, 汚 濁 防 止 膜 の 解 体 分 別, 運 搬, 清 掃, 保 管 等 を 適 切 に 行 う 必 要 がある ). 特 に 紫 外 線 の 照 射 に よる 材 料 劣 化 が 強 度 低 下 の 主 な 原 因 と 考 えられることか ら, 保 管 に 関 しては 直 射 日 光 の 影 響 を 受 けないように 倉 庫 で 保 管 するなどの 処 置 が 施 されており,このために 再 利 用 品 であっても 初 期 利 用 と 同 等 の 強 度 率 が 期 待 できる ものと 考 えられる. (4) 強 度 低 下 評 価 関 数 の 検 討 以 上 の 結 果 をもとに, 全 てのデータを 対 象 として, 強 度 低 下 評 価 関 数 の 検 討 を 行 う. 一 般 に, 性 能 照 査 で 用 いる 材 料 強 度 の 値 は, 安 全 性 の 余 裕 を 考 慮 して 平 均 値 よりも 低 く 設 定 される. 実 際 の 強 度 設 定 方 法 に 定 まったルールがあるわけではなく, 各 々 の 分 野 で 工 学 的 判 断 に 基 づいて 設 定 が 行 われている.た だし,ばらつきが 大 きい 場 合 はより 低 く,ばらつきが 少 ない 場 合 は 比 較 的 高 く 設 定 することが 合 理 的 である.そ の 意 味 で, 平 均 値 と 標 準 偏 差 を 用 いて 強 度 低 下 率 を 設 定 することが 合 理 的 と 考 えられる. 2.で 述 べたように, 性 能 照 査 では 経 時 による 影 響 以 外 に, 不 確 定 要 因 によるばらつき(k 2 )や 製 品 縫 合 による 影 響 (k 3 )を 別 途 考 慮 して 強 度 を 設 定 している. 両 者 による 強 度 低 下 の 割 合 は 表 -に 示 したとおりであり,k 2 k 3 =5. の 安 全 性 の 余 裕 が 設 定 されている.この 値 は 安 全 率 に 相 当 する. 従 って, 経 時 劣 化 の 影 響 については, 過 度 に 余 裕 を 設 定 する 必 要 は 無 いと 考 えられる. ばらつきのあるデータからの 強 度 設 定 法 として, 他 分 野 における 材 料 強 度 の 設 定 方 法 を 検 討 すると, 鉄 筋 コン I_2
土 木 学 会 論 文 集 B3( 海 洋 開 発 ), Vol. 69, No. 2, I_97-I_22, 23. 3) クリート 部 材 の 終 局 曲 げ 耐 力, 異 形 鉄 筋 降 伏 強 度 及 び 防 波 堤 の 滑 動 抵 抗 力 算 出 時 に 用 いる 摩 擦 係 数 4) における 設 定 は 表 -3のとおりである.ここに,は 平 均 値,は 標 準 偏 差 である. 表 より 分 かるように 各 分 野 の 設 定 には 幅 があるが, 本 研 究 ではカーテンの 経 時 劣 化 特 性 として, 上 述 の 通 り 不 確 定 要 因 や 製 品 縫 合 による 影 響 が 別 途 考 慮 されているこ とを 考 慮 し, 平 均 - 標 準 偏 差 を 強 度 の 評 価 値 の 目 標 と 考 えた. 表 -3 強 度 関 係 パラメータの 設 定 例 鉄 筋 コンクリート 終 局 曲 げ 耐 力 -.8 鉄 筋 降 伏 強 度 - 2.5 摩 擦 係 数 -.4 3 2 8 6 4 2-56 days.2.4.6.8 35-46 days.2.4.6.8 図 -8 残 留 強 度 比 頻 度 分 布 の 例 図 -6より 分 かるように 残 留 強 度 のデータは 経 過 日 数 の 短 いものが 多 いため, 同 じ 重 みで 処 理 を 行 うと 経 過 日 数 の 長 いデータが 反 映 されにくくなる.このため, 以 上 のデータが 含 まれる2 週 間 以 上 の 範 囲 での 経 過 日 数 の 刻 みで 平 均 値 および 標 準 偏 差 を 算 出 した. 図 -8に 残 留 強 度 比 頻 度 分 布 の 例 を, 図 -9に 残 留 強 度 比 の 平 均 及 び 標 準 偏 差 を 示 す. 平 均 は 経 過 日 数 に 伴 い 減 少 するが, 標 準 偏 差 は2 日 程 度 までの 範 囲 では. 程 度 と 小 さいが,それ 以 上 の 経 過 日 数 では.5 程 度 に 増 加 する. なお 図 -8では 経 過 日 数 の 長 い 範 囲 の 例 として35-46 日 経 過 の8 週 間 のデータを 示 しているが,これは 経 過 日 数 が 長 い 範 囲 ではデータ 数 が 乏 しいためである. 経 過 日 数 の 短 い 範 囲 についても 同 じ 条 件 で 比 較 するためにデータ 数 は 豊 富 であるものの-56 日 経 過 の8 週 間 のデータを 示 し ている.このため 図 -8の 整 理 がそのまま 図 -9に 反 映 され ているわけではないことに 注 意 をしておく..8.6.4.2 2 4 6 8 mean mean-standard deviation proposed design mannual(virgin) design mannual(reuse) 図 - 強 度 劣 化 関 数.8.6.4.2 2 4 6 8 mean standard deviation 図 -9 残 留 強 度 比 の 平 均 及 び 標 準 偏 差 このように 整 理 された 平 均 - 標 準 偏 差 の 目 標 値 に 対 す る 評 価 式 として, 目 標 値 の 大 半 をカバーするものとして 様 々な 関 数 の 適 合 性 を 検 討 した 結 果 として, 式 (3)が 得 られた. 図 -に 示 す 提 案 式 は 式 (3)である. r d (3) ここに,r: 残 留 強 度 比,d: 経 過 日 数 ( 日 )である. 提 案 式 と 現 行 設 計 法 ) を 比 較 すると, 経 過 日 数 が6 日 程 度 以 下 の 期 間 では,8 日,36 日 程 度 では 現 行 設 計 法 の 初 期 利 用 の 強 度 評 価 と 提 案 式 は 概 ね 一 致 する.しかし ながら,それ 以 外 の 期 間 では 提 案 式 の 方 が 高 い 強 度 を 与 える. 再 利 用 品 については, 現 行 設 計 法 では 非 常 に 安 全 側 に 一 定 の 強 度 で 設 定 されているが, 提 案 式 では 初 期 利 I_2
土 木 学 会 論 文 集 B3( 海 洋 開 発 ), Vol. 69, No. 2, I_97-I_22, 23. 用 と 再 利 用 で 同 じ 強 度 評 価 となるため, 通 算 の 経 過 日 数 が 短 い 範 囲 では 現 行 設 計 法 よりも 高 い 強 度 評 価 となる. 逆 に 経 過 日 数 が6 日 以 上 の 極 めて 長 い 期 間 の 場 合 は, 提 案 式 の 方 が 低 い 強 度 評 価 となる. 本 研 究 では 上 述 のように 現 行 設 計 法 策 定 時 よりも 多 く のデータを 収 集 するとともに, 強 度 評 価 法 も 根 拠 のある 判 断 に 基 づいたものであるため, 現 行 設 計 法 よりも 合 理 的 な 強 度 劣 化 の 評 価 式 が 得 られたと 考 えられる. タが 含 まれる2 週 間 以 上 の 範 囲 で 経 過 日 数 の 刻 んで 平 均 値 および 標 準 偏 差 を 算 出 した. 平 均 は 経 過 日 数 に 伴 い 減 少 するが, 標 準 偏 差 は2 日 程 度 までの 範 囲 では. 程 度 と 小 さいがそれ 以 上 の 経 過 日 数 では.5 程 度 に 増 加 する. 目 標 値 に 対 する 評 価 式 を 提 案 した. 3 品 番 の 差 による 違 いはほぼ 無 視 できると 考 えられる. また, 再 利 用 による 強 度 低 下 は, 特 に 考 慮 する 必 要 はな いと 考 えられる. 4. まとめ 本 研 究 は, 汚 濁 防 止 膜 カーテン 強 度 を 対 象 に, 実 工 事 における 製 品 回 収 時 の 試 験 データや 実 海 域 における 実 験 データ 等 の 数 多 くの 経 時 劣 化 データを 収 集 し, 設 計 に 用 いる 劣 化 強 度 関 数 を 提 案 した. 本 研 究 による 主 な 知 見 は 以 下 の 通 りである. 汚 濁 防 止 膜 カーテンの 残 留 強 度 は 経 過 日 数 の 増 加 に 伴 って 低 下 する. 本 研 究 では 強 度 の 低 下 割 合 を 示 す 残 留 強 度 比 として, 残 留 強 度 と 規 格 値 の 比 ではなく, 残 留 強 度 と 初 期 値 の 比 を 用 いた.これは, 汚 濁 防 止 膜 カーテンメ ーカーの 製 品 毎 の 初 期 値 と 規 格 値 の 関 係 にばらつきがあ るためである. 2 設 計 では 経 時 による 影 響 以 外 に, 不 確 定 要 因 によるば らつきや 製 品 縫 合 による 影 響 などを 別 途 考 慮 して 強 度 を 設 定 している.ばらつきのあるデータからの 設 定 法 とし て, 他 分 野 における 材 料 強 度 の 設 定 方 法 を 参 考 に 平 均 - 標 準 偏 差 を 強 度 の 評 価 値 の 目 標 と 考 えた. 以 上 のデー 謝 辞 : 本 研 究 の 取 りまとめにあたり, 汚 濁 防 止 膜 再 利 用 カーテン 強 度 証 明 基 準 作 成 検 討 委 員 会 ( 委 員 長 : 新 井 洋 一 特 定 非 営 利 活 動 法 人 リサイクルソリューション 理 事 長 )の 委 員 の 方 々より 貴 重 な 意 見 を 頂 きました.ここに 記 して 感 謝 します. 参 考 文 献 ) 港 湾 空 港 建 設 技 術 サービスセンター: 汚 濁 防 止 膜 技 術 資 料 ( 案 ),28. 2) 島 田 伊 浩, 新 井 洋 一, 長 尾 毅, 三 吉 正 英, 山 本 直 文, 岡 本 直, 石 坂 修, 須 藤 彰 二 : 汚 濁 防 止 膜 の 経 過 月 数 による 強 度 劣 化 に 関 する 実 海 域 実 験, 土 木 学 会 論 文 集 B3( 海 洋 開 発 ), Vol. 69(23), No. 2, 投 稿 中. 3) 長 尾 毅 :ケーソン 式 防 波 堤 の 終 局 曲 げ 安 全 性 照 査 に 関 する 信 頼 性 設 計 手 法 の 提 案, 土 木 学 会 論 文 集 No.696,Ⅰ-58,pp.73-84,22. 4) 長 尾 毅 :ケーソン 式 防 波 堤 の 外 的 安 定 に 関 する 信 頼 性 設 計 法 の 適 用, 土 木 学 会 論 文 集 No.689,Ⅰ-57, pp.73-82,2. A STUDY ON EVALUATION METHOD OF STRENGTH DETERIORATION FOR SILT CURTAIN Takashi NAGAO, Yoshihiro SHIMADA, Masahide MIYOSHI, Yasuyuki KOSAKA, Masahiro RIKITAKE and Hiroyuki AZUMA This study aims at proposing the new evaluation method of strength deterioration for silt curtain. As strength deterioration is inevitable for silt curtain and there exist many uncertain factors regarding strength of silt curtain, present design method evaluates stregth deterioration on the very conservative side especially for reuse curtain. Authors collected 35 datum on strength deterioration for silt curtain from experiments after construction works and field experiment results. Authors proposed an equation for the evaluation of strength deterioration for silt curtain based on the statistical data analysis. I_22