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<4D F736F F F696E74202D2097D58FB08E8E8CB1838F815B834E F197D58FB E96D8816A66696E616C CF68A4A2E >

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

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ータについては Table 3 に示した 両製剤とも投与後血漿中ロスバスタチン濃度が上昇し 試験製剤で 4.7±.7 時間 標準製剤で 4.6±1. 時間に Tmaxに達した また Cmaxは試験製剤で 6.3±3.13 標準製剤で 6.8±2.49 であった AUCt は試験製剤で 62.24±2

-119-

3. 安全性本治験において治験薬が投与された 48 例中 1 例 (14 件 ) に有害事象が認められた いずれの有害事象も治験薬との関連性は あり と判定されたが いずれも軽度 で処置の必要はなく 追跡検査で回復を確認した また 死亡 その他の重篤な有害事象が認められなか ったことから 安全性に問

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1 of 43 トレシーバ注フレックスタッチトレシーバ注ペンフィル 2.4 非臨床試験の概括評価 ノボノルディスクファーマ株式会社

2 of 43 目次 ページ 目次... 2 図目次... 4 表目次... 5 略語一覧... 6 2.4 非臨床試験の概括評価... 8 2.4.1 非臨床試験計画概要... 8 2.4.2 薬理試験... 10 2.4.2.1 効力を裏付ける薬理試験... 13 2.4.2.1.1 IR 結合プロファイル... 13 2.4.2.1.2 IGF-1R との結合... 14 2.4.2.1.3 受容体選択性... 15 2.4.2.1.4 IR の活性化... 15 2.4.2.1.5 In vitro の薬理作用... 16 2.4.2.1.6 In vivo の薬理作用... 17 2.4.2.2 副次的薬理作用... 18 2.4.2.3 安全性薬理試験... 18 2.4.2.4 薬力学的薬物相互作用... 19 2.4.3 薬物動態試験... 20 2.4.3.1 吸収... 22 2.4.3.2 分布... 22 2.4.3.3 代謝及び排泄... 23 2.4.3.4 薬物相互作用... 24 2.4.4 毒性試験... 25 2.4.4.1 一般毒性... 25 2.4.4.2 遺伝毒性... 28 2.4.4.3 がん原性... 29 2.4.4.4 生殖発生毒性... 33 2.4.4.5 幼若動物を用いた試験... 34 2.4.4.6 局所刺激性... 35 2.4.4.7 その他の毒性試験... 35 2.4.4.8 製剤中の不純物及び溶出物の安全性評価... 36 2.4.4.9 添加物の評価... 37

3 of 43 2.4.4.10 ヒトとの曝露量比較... 37 2.4.5 総合的考察及び結論... 39 2.4.5.1 概要... 39 2.4.5.2 総括... 40 2.4.6 参考文献... 41

4 of 43 図目次ページ図 2.4-1 インスリンの多様な生物作用 (A) 及びインスリンシグナル伝達カスケード (B)... 11 図 2.4-2 インスリン及び IGF-1 作用発現に関わる各種受容体... 12 図 2.4-3 皮下組織への注射から循環血中への吸収に至る過程の延長メカニズム... 13

5 of 43 表目次 ページ 表 2.4-1 薬理試験の概要... 10 表 2.4-2 IDeg:IGF-1R 及び IR との相対的な結合親和性... 15 表 2.4-3 薬物動態試験一覧... 20 表 2.4-4 IDeg の反復 s.c. 投与時及び単回 i.v. 投与時における用量補正薬物動態パラメータ (1 nmol/kg) の種間比較... 21 表 2.4-5 重要な毒性試験の一覧... 25 表 2.4-6 反復投与毒性試験の用量... 28 表 2.4-7 細胞増殖誘発能 / 代謝能比... 30 表 2.4-8 雌ラット乳腺における過形成病変及び腫瘍性病変... 32 表 2.4-9 雌ラット乳腺における BrdU の L.I.... 32 表 2.4-10 24 ヶ月有効期間及び 8 週間使用時の溶出物濃度... 37 表 2.4-11 動物 / ヒト曝露量比... 38

6 of 43 略語一覧 AUC : Area under the curve 濃度 - 時間曲線下面積 ( 特記ない限り AUC 0-inf ) BHK : Baby hamster kidney cell( 仔ハムスター腎臓細胞 ) BrdU : Bromodeoxyuridine (5-bromo-2 -deoxyuridine) ブロモデオキシウリジン(5-ブロモ-2 - デオキシウリジン ) CHO : Chinese Hamster Ovary( チャイニーズハムスター卵巣 ) CL : Body clearance( クリアランス ) C max : Maximum plasma/serum concentration( 最高血漿 / 血清中濃度 ) CNS : Central nervous system( 中枢神経系 ) COLO-205 : Human colon adenocarcinoma cells( ヒト結腸腺がん細胞 ) CYP : Cytochrome P-450( チトクローム P450) EC 50 : Effective concentration causing 50% maximal effect( 最大効果の 50% を示す濃度 ) ECG : Electrocardiogram( 心電図 ) ED 50 : Administered dose which produces 50% of the maximum possible response( 最大反応の 50% を示す投与量 ) ELISA : Enzyme-linked immunosorbent assay( 酵素免疫吸着測定法 ) EMA : European Medicines Agency( 欧州医薬品庁 ) EU : European Union( 欧州連合 ) FDA : U.S. Food and Drug Administration( 米国食品医薬品局 ) GLP : Good laboratory practice( 医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準 ) herg : Human ether-à-go-go related gene( ヒト ether-à-go-go 関連遺伝子 ) HI : Human insulin( ヒトインスリン ) HMEC : Primary human mammary epithelial cells( 初代培養ヒト乳腺上皮細胞 ) HMWP High molecular weight protein( 高分子量蛋白質 ) i.v. : Intravenous( 静脈内 ) IC 50 : Molar concentration which produces 50% of the maximum possible inhibitory response( 最 大抑制反応の 50% を示すモル濃度 ) ICH : International Conference on Harmonisation of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use( 日米 EU 医薬品規制調和国際会議 ) IGF-1 Insulin-like growth factor 1( インスリン様成長因子 -1) IGF-1R : Insulin-like growth factor 1 receptor( インスリン様成長因子 -1 受容体 ) Insulin X10 : B10Asp-human insulin(b10asp ヒトインスリン ) IR : Insulin receptor( インスリン受容体 )

7 of 43 IR-A : Insulin receptor isoform A( インスリン受容体 -A) IR-B : Insulin receptor isoform B( インスリン受容体 -B) kd : Kilo Dalton( キロダルトン ) L6-hIR : L6 myoblasts over-expressing the human insulin receptor( ヒトインスリン受容体過剰発 現 L6 筋芽細胞 ) MCF-7 : Human mammary adenocarcinoma cells( ヒト乳腺腺がん細胞 ) m-rna : Messenger RNA or messenger ribonucleic acid( メッセンジャー RNA 又はメッセンジャ ーリボ核酸 ) MTD : Maximum tolerated dose( 最大耐量 ) NOAEL : No observed adverse effect level( 無毒性量 ) NPH : Neutral protamine hagedorn PD : Pharmacodynamic( 薬力学 ) PEPCK : Phosphoenolpyruvate carboxykinase( フォスフォエノールピルビン酸カルボキシキナー ゼ ) Phe : Phenylanaline( フェニルアラニン ) PK : Pharmacokinetic( 薬物動態 ) PKB : Protein Kinase B( プロテインキナーゼ B) s.c. : Subcutaneous( 皮下 ) t ½ : Half-life( 半減期 ) TGA : Therapeutic Goods Administration (Australia)( オーストラリア保健省薬品 医薬品行政 局 ) t max : Time of maximal concentration( 最高濃度到達時間 ) Tyr : Tyrosine( チロシン ) U : Unit( 単位 ) V z : Volume of distribution (based on the terminal phase of the plasma concentration-time curve) ( 分布容積 ( 終末相血漿中濃度 - 時間曲線に基づく ))

8 of 43 2.4 非臨床試験の概括評価 2.4.1 非臨床試験計画概要特徴及び分子設計インスリンデグルデク ( 以下 IDeg) は ヒトインスリン ( 以下 HI) のアミノ酸配列のうち B 鎖 30 位のスレオニン残基を欠落させ B 鎖 29 位のリジンの ε-アミノ基にグルタミン酸をスペーサーとしてヘキサデカン二酸を結合させた構造を有する超持効型 Basal インスリンである 構造式は B29 N(ε)-hexadecandioyl-γ-L-Glu desb30 human insulin 分子式は C 274 H 411 N 65 O 81 S 6 分子量は 6104.1 である この分子構造により 毛細血管に吸収されない分子サイズで可溶性のマルチヘキサマーとして存在可能となり 一時的に注射部皮下組織にとどまる IDeg モノマーはマルチヘキサマーから徐々に解離するため IDeg は注射部皮下から緩徐にかつ持続的に循環血中に吸収されることになり 超持効型の薬物動態 ( 以下 PK) 及び薬力学的 ( 以下 PD) プロファイルを示すようになる さらに 程度はやや小さいが IDeg の構成成分である脂肪酸のアルブミンとの結合も 作用の持続化に寄与している 開発の経緯及び規制当局との協議 IDeg の非臨床開発計画は 糖尿病に対する IDeg 長期皮下投与の世界各国における承認申請を目的として 日米 EU 医薬品規制調和国際会議 ( 以下 ICH) ガイドライン 欧州医薬品庁 ( 以下 EMA) の Points to Consider Document on The Non-Clinical Assessment of the Carcinogenic Potential of Insulin Analogues 及び米国食品医薬品局( 以下 FDA) のガイドライン ( 草案 ) Diabetes Mellitus: Developing Drugs and Therapeutic Biologics for Treatment and Prevention に準拠して策定した IDeg は 吸収速度を変えることによって PK 及び PD プロファイルを変えることを意図して分子修飾を行っており 非臨床試験計画は HI と比較して有効性及び安全性が劣ることなく IDeg が超持効型の PK 及び PD 作用を発現することの評価に主眼を置いた すなわち IDeg はヒトのインスリン受容体 ( 以下 IR) に対する特異的かつ完全なアゴニストであること 及び HI と同じ作用様式 ( 受容体刺激によるシグナル伝達 ) を有していることを明確にするため 一連の in vitro 試験が実施された IDeg の血糖降下作用を証明するために ラット及びブタを用いた in vivo 薬理試験が実施された ブタの試験では IDeg の緩徐な吸収が確認され 超持効型の PK 及び PD プロファイルが示された すべての重要な安全性試験は 医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準 ( 以下 GLP) に準拠して実施した 一般毒性試験では 適切なげっ歯類及び非げっ歯類の動物種として薬理学的反応を示しかつ汎用されているラット及びイヌを選択した すべての毒性試験の投与経路はヒトの予定臨床投与経路である皮下とした IDeg の開発期間中 IDeg 製剤の処方及び原薬の製造方法の変更が行われた 最適化された最終工程で製造された IDeg 原薬を含め 開発過程における複数の製法による IDeg 原薬が非臨床試験で評価された IDeg 製剤中に含まれる不純物の安全性については非臨床試験において定量的に評価された 容器 / 施栓系からの溶出物濃度が測定された それら溶出物のヒトにおける想定曝露量が見積られ 安全性の懸念はないことが確認された IDeg 製剤で使用される添加物は 現

9 of 43 在市販されている皮下投与インスリン製剤で一般的に使用されているものであり 安全性上の懸念はないと考えられる 開発期間中 規制当局との協議を行い FDA 独立行政法人医薬品医療機器総合機構 カナダ保健省 (Health Canada) オーストラリア保健省薬品 医薬品行政局(TGA) EMA 及び欧州連合の加盟各国規制当局の助言を求めた

10 of 43 2.4.2 薬理試験 IDeg の薬理作用を評価するため 多種の試験を実施した ( 表 2.4-1) 表 2.4-1 薬理試験の概要 Study type Administration Species Efficacy Pharmacology Insulin receptor binding in vitro rat, pig, dog, human IGF-1 receptor binding in vitro rat, dog, human Insulin receptor signalling and kinetics in vitro human Metabolic effect (adipocyte, hepatocyte, muscle cell) in vitro rat, human Mitogenic effect (COLO205, HMEC, L6-hIR, MCF-7 cells) in vitro human Receptor selectivity in vitro various Pharmacodynamic (normal and diabetic animals) i.v. rat PK/PD s.c. pig Safety Pharmacology Effect on action potential in vitro rabbit Effect on CNS and respiration s.c. rat Effect on cardiovascular system s.c. and i.v. dog HI の生理学及び薬理学は確立しており 多様な観点から概説されている 1 簡単に述べると インス リンは多機能ホルモンであり 2 炭水化物 脂質及び蛋白質の代謝ならびに食欲の調節において中心的 な役割を果たしている

11 of 43 A B (Rhodes & White 2 から引用 ) 図 2.4-1 インスリンの多様な生物作用 (A) 及びインスリンシグナル伝達カスケード (B) 図 2.4-1 B にまとめたように インスリンは IR との特異的な結合及びその活性化を介して作用を発現する IR はそれ自身チロシンキナーゼ活性を有し 自己リン酸化及びそれに続く下流のシグナル経路を活性化する

12 of 43 IR には エクソン 11 を欠損する IR-A とエクソン 11 が保持される IR-B の 2 つのアイソフォームが存在し これらはホモ及びヘテロ二量体 (IR-A/IR-A IR-B/IR-B 又は IR-A/IR-B) を形成する さらに この 2 つの IR アイソフォームは構造的に類似するインスリン様成長因子 -1 受容体 ( 以下 IGF-1R) と結合してハイブリッド受容体を形成するが ( 図 2.4-2) 基本的にこれらハイブリッド受容体は IGF- 1R ないし IGF-2R として機能するものの インスリンとの結合親和性は極めて低いことが示されている 3 M. Pollak 4 より引用 図 2.4-2 インスリン及び IGF-1 作用発現に関わる各種受容体 糖尿病は絶対的なインスリン欠乏 (1 型 ) 又は相対的なインスリン欠乏 (2 型 ) を特徴とする疾病である 1 型糖尿病では すべての症例がインスリン補充療法を必要とし 2 型糖尿病では最終的に大多数の患者でインスリン療法が必要とされることになるものと考えられる Basal インスリンは Bolus インスリン投与と組み合わせて 1 型糖尿病の治療に用いられ 2 型糖尿病では Bolus インスリン投与又は他の糖尿病治療薬と組み合わせて使用される 5 したがって 最適な Basal インスリンとは 皮下投与された時 安定で持続性のある血糖降下作用が確実に発揮されるものであり 正常な生体における基礎分泌インスリンが示す作用プロファイルを模倣するものである このような望ましい PD プロファイルを実現するべく IDeg の創薬では作用持続性及び半減期 ( 以下 t 1/2 ) が 24 時間以上となるように HI の分子修飾が行われた Basal インスリンとして 1 日 1 回皮下投与したとき IDeg はその非常に長い t 1/2 (25 時間 ) により平坦で安定した定常状態の曝露をもたらす 超持効型作用は 特異的なリンカーと側鎖 ( 脂肪酸 ) の導入による構造的及び生物物理学的特性に起

13 of 43 因する IDeg 特有の作用持続化様式によるものである 6 製剤処方では IDeg は安定したジヘキサマー構造をとっているが 皮下組織へ投与されると製剤中の賦形剤 特に重要な成分であるフェノールが急速に消散すると 7 毛細血管に吸収されない分子容積の可溶性マルチヘキサマーが形成され一時的に皮下にとどまる マルチヘキサマーから亜鉛が徐々に拡散すると 次第に IDeg のモノマーが解離し 循環血中に緩徐に吸収される IDeg の持続化機序を図 2.4-3 に示す さらに IDeg の脂肪酸成分はアルブミンとの結合性を有することから そのことも持続化機序に寄与するものであるが マルチヘキサマー形成に比較すれば寄与の程度は小さい 図 2.4-3 皮下組織への注射から循環血中への吸収に至る過程の延長メカニズム 2.4.2.1 効力を裏付ける薬理試験以下の項では 効力 の用語は平行性を示す用量反応曲線から求めた各種生物学的パラメータの IC 50 又は EC 50 を反映するものであり HI に対する相対効力 の値は EC 50 の IDeg/HI 比を求めたものである 有効性 は用量反応プロファイルから得られた最大反応である in vitro の効力 と in vivo の効力 は明確に区別され in vitro の効力 は細胞及び生物学的検討における EC 50 に基づいて決定されたものであり in vivo の効力 は 動物試験における ED 50 に基づいて決定されたものである なお in vitro の効力 と in vivo の効力 は直接比較できないことに留意する必要がある 2.4.2.1.1 IR 結合プロファイル IDeg は in vitro の系で特異的に IR に結合することが示され 各動物種 ( ラット イヌ及びブタ ) 及 びヒトの IR との結合性は比較的一定であった IDeg は IR-A( 短いアイソフォーム ) 及び IR-B( 長い

14 of 43 アイソフォーム ) に対して同等の結合性を有することも明らかにされた IDeg に施された分子修飾により IDeg の IR 結合親和性は HI よりも低く 競合的結合曲線には右方移動がみられた 試験系のアルブミン濃度を増加させると IDeg のアルブミンとの結合能を反映して右方移動の程度は大きくなった IR との結合動態に関して HI との比較で IDeg の結合定数及び解離定数には有意差がみられなかったことから IDeg の結合動態は HI と類似していることが示唆された 2.4.2.1.2 IGF-1R との結合インスリンは構造的に IGF-1 と同族であり 構造上の同族関係はそれぞれの細胞表面受容体にも共有されている 8 通常 IR は代謝に関わる受容体と IGF-1R は成長に関わる受容体と定義される HI の IR との結合親和性は高く (IGF-1R との比較で 500~1000 倍高い ) この親和性の差は様々な方法及び生物試験系を用いて確認され 多くの研究者が報告しているところである 例えば Andersen et al. 9 は 遺伝子組み換えにより IR を発現させた BHK 細胞の IR に対する HI 結合の IC 50 は 1.9 10-9 mol/l であるのに対し クローン化 IGF-1R に対する IC 50 は 2.0 10-6 mol/l であり IR に対する結合は IGF-1R よりも 1000 倍強いことを確認している したがって 生理的なインスリン濃度では IGF-1R 結合を介したインスリン作用を示すことはないと考えられる IDeg はヒトの IGF-1R と結合するが その結合親和性は HI よりも低いことが示された 実際上 インスリンアナログの IGF-1R に対する親和性の絶対値よりも IGF-1R と IR に対する親和性の比を検討することがより適切である IGF-1R 親和性が IR 親和性よりも不均衡に増大しているインスリンアナログは細胞増殖能が増大し得るので 10, 11 IGF-1R との結合は HI よりも増加していないことが望ましい IDeg のヒト IGF-1R との相対親和性 (HI の 2%) はヒト IR との相対親和性 (HI の 13% 及び 15%) よりも低い ( 表 2.4-2) 同様に ラット及びイヌの IGF-1R との親和性も低いものであった ( 表 2.4-2) IDeg の IGF-1R との相対親和性が低いことは IGF-1R を介するシグナル伝達を示す種々の細胞株において IDeg の細胞増殖誘発能が低かったことに合致するものである (Module 2.4.2.1.5 細胞増殖反応参照 )

15 of 43 表 2.4-2 IDeg:IGF-1R 及び IR との相対的な結合親和性 Species Receptor type Albumin (%) Endpoint Affinity (relative to HI) Human Solubilised IR-A & IR-B 0 IR binding a 13 and 15% Solubilised IGF-1R 0 IGF-1R binding a 2% Human Membrane IR-A & IR-B 0.1 IR binding b 4.2 and 3.2% Membrane human IGF-1R 0.1 IGF-1R binding c 0.4% Rat Membrane IR-A & IR-B 0.1 IR binding d 2.3 and 3.0% Membrane IGF-1R 0.1 IGF-1R binding d 1.2% Dog Liver membrane IR 0.1 IR binding e 7% Membrane IGF-1R 0.1 IGF-1R binding d 0.7% Data from: a LSC 16-Feb- ; b CES 10-Jun- ; c CES 02-Feb- ; d CES101122; e CES 21-Jan 2.4.2.1.3 受容体選択性前述の in vitro の検討では IDeg は選択的なアゴニストであり IR 及び構造的に類似する IGF-1R 以外の受容体を活性化することはないことが示された 67 種の標準的な受容体及びトランスポーターの検討において IDeg は 1000 nmol/l の濃度で有意な抑制反応を示すことはなく IDeg の作用は HI と同様に IR との特異的な結合及び活性化を介して発現するものであることが示唆された 2.4.2.1.4 IR の活性化 ヒト IR を過剰に発現している L6 筋芽細胞 ( 以下 L6-hIR 細胞 ) における IR のリン酸化及びプロテ インキナーゼ B(PKB) のリン酸化の検討から示されたように IDeg の IR 活性化及び IR 活性化に続 くシグナル伝達は HI と同じであることが明らかとなった IDeg は HI と類似する典型的な用量反応曲 線を示したが HI と比較して右方移動が認められた 右方移動は IDeg の IR 結合親和性が HI よりも 低いことに合致するものである さらに IDeg は HI と同じ最大反応を示したことから IDeg は完全 な IR アゴニストであることが示され 100% の HI 有効性を示すことが明らかとなった 加えて IR を過剰に発現しているチャイニーズハムスター卵巣 (CHO) 細胞を用いた検討では 細胞増殖誘発能 12 の高いインスリンアナログ B10Asp ヒトインスリン ( 以下 Insulin X10) が示す IR シグナルの持続 は IDeg では認められなかった これらの成績を考え合わせると IDeg の作用様式は HI と同様である ことが示唆された

16 of 43 2.4.2.1.5 In vitro の薬理作用細胞代謝反応 : インスリンの主要な標的器官 ( 脂肪 肝臓及び筋肉 ) から得られた細胞を用いた検討で 脂肪細胞におけるグルコース取込み 脂質生成及び脂肪分解の抑制 肝細胞におけるグリコーゲン蓄積促進及び PEPCK mrna 発現の抑制ならびに筋細胞におけるグリコーゲン合成促進に関し IDeg は HI と同様の代謝作用パターンの活性化を示すことが明らかとなった 検討したすべての細胞種において IDeg には完全な有効性が認められた ( 完全な IR アゴニスト ) さらに 用量反応曲線から求めた EC 50 に基づく in vitro の効力は IDeg のアルブミンとの結合能を反映して 試験系のアルブミン濃度を増加すると減弱することが示された IDeg の相対的な in vitro の効力が HI よりも弱かったことは IDeg の IR に対する結合親和性が低いことに合致している しかしながら インスリンアナログは in vitro の効力に差異が認められたとしても同等の in vivo の有効性を示すことが報告されている 13 これは in vivo の定常状態でのインスリンアナログの血漿中濃度は IR 親和性と逆相関の関係にあり インスリンの消失はほとんど IR との結合を介して行われることを反映し 低親和性のインスリンアナログではより高い血漿中濃度を示し またその逆も成立するからである すなわち IR 親和性が低く in vitro の効力が弱い IDeg のようなインスリンアナログの消失速度は遅く 血漿中曝露が増大する結果 受容体親和性が高くかつ in vitro の効力が強いインスリンアナログと比較すると作用持続時間は長くなり 血糖降下反応全体としてはほぼ同等の効果を示す さらに IDeg のアルブミンとの結合能は血漿中濃度を増大させる IDeg の臨床試験では相対的に持続する血漿中濃度を示し 同モル用量を投与されたインスリングラルギンと類似する IDeg の血糖降下作用が認められた (NN1250-1993 試験 ) この点は インスリングラルギンを比較対照とした治療的 検証的臨床試験においても確認された (Module 2.5 参照 ) また インスリンデテミルはラットにおいて受容体を介さない分解 ( 排出 ) を受けることが示されている このことは ラットではインスリンデテミルの in vivo の効力が弱いこと及びヒトでも弱い効力がみられたことを説明するものである 14 IDeg の in vitro での細胞に対する効力が HI に比較して弱かったということは 上述のように 臨床試験で完全な in vivo の効力が認められたことと矛盾するものではない IR 親和性及び in vitro の細胞に対する効力に関して 等モル用量のインスリンアナログが IR を介して HI と同程度に排出され また 受容体を介さない機序での分解を受けることがないのであるなら HI と同じ in vivo の効力を示すものと考えられる 細胞増殖反応 : IDeg の細胞増殖反応は HI に応答して増殖する細胞を用いて検討された 試験には種々の組織を代表し種々の程度に IR 及び IGF-1R を発現する細胞ならびに腫瘍及び非腫瘍の組織から得られた細胞が用いられた 検討したすべての細胞において IDeg の細胞増殖誘発能は低く in vitro の代謝効力及び IR

17 of 43 親和性と合致した結果であった IR を発現するすべての細胞がインスリン応答性の増殖能を発現するわけではなく 特に インスリンの代謝反応を示す肝細胞 筋細胞及び脂肪細胞のような完全に分化した細胞は正常な状態では増殖しない しかしながら L6-hIR 細胞及び MCF-7 細胞ではグリコーゲン蓄積の測定が可能であり これらの細胞における IDeg の細胞増殖誘発能と代謝能の相対比は HI と類似していた 概して これらの試験から IDeg の細胞増殖作用と代謝作用のバランスは HI と変わることなく類似していることが確認された アルブミン結合の影響 : IDeg 分子のヘキサデカン二酸はアルブミンとの強い結合性を付与している この点は種々の細胞を用いた検討においてもみられており IDeg の用量反応曲線は右方移動を示し アルブミン濃度を増加させるとみかけの結合親和性又は in vitro の効力は減弱する結果となった In vivo では IDeg のアルブミンとの結合能を反映して動物及びヒトの単回及び反復投与後の循環血中では高濃度の IDeg が認められた ( 表 2.4-4) また IDeg の受容体結合親和性は相対的に低く 受容体を介した IDeg のクリアランス ( 消失速度 ) は HI よりも低くなるため このことも比較的高いレベルの血漿中曝露にある程度寄与しているものと考えられる 2.4.2.1.6 In vivo の薬理作用 IDeg の in vivo の薬理作用を評価するために ラット及びブタを用いて正常グルコースクランプ試験を実施した これらの試験は IDeg 投与後の動物の血糖値を一定 ( 正常な ) レベルに維持しながら 血糖値レベルの維持に必要な静脈内グルコース注入速度 ( 以下 GIR) を調整するものである ラットの試験 : 覚醒ラットにおいてインスリン負荷 - 正常グルコースクランプ施行下で IDeg の効力を評価した IDeg のモル当たりの効力比は Sprague Dawley( 以下 SD) 系ラットで HI の 65% Zucker 肥満ラットで HI の 47% であった これらの値は定常状態の GIR から得られたものであるが 動物種によって異なる亣絡因子 ( 非特異的クリアランスの程度の差など ) が多数存在するため 効力の種差 ( ラット ブタ及びヒト ) を直接的に比較することはできない ブタの試験 : ランドレース ヨークシャー デュロック亣雑ブタの正常グルコースクランプ試験で IDeg の皮下投与による PK/PD プロファイルを検討した 初めに IDeg 製剤中のが PK/PD プロファイルに及ぼす影響について検討し では IDeg の作用プロファイル (GIR を指標とした ) はであった これらのブタの試験結果を基に 初期臨床試験で使用された IDeg 製剤が選択された 本クランプ試験により IDeg の血糖降下作用も確認された

18 of 43 2.4.2.2 副次的薬理作用 IDeg の効力に関する in vitro の薬理試験に基づき IDeg の作用は選択的な IR の活性化を介して発現するものであり また IDeg は IR 及び構造的に類似する IGF-1R 以外の受容体を活性化しないことが示された IDeg が他の受容体を介して副次的薬理作用を発現する可能性を示唆する証拠は得られていない したがって IDeg のすべての薬理試験は 効力を裏付ける薬理試験として説明されている 2.4.2.3 安全性薬理試験ラット及び / 又はイヌを用いた一連の安全性薬理試験において 中枢神経系 心血管系及び呼吸器系の機能に及ぼす IDeg の影響が評価された また 心血管系に関する in vitro の試験として活動電位及び herg チャネル結合性に関するアッセイを行なった ラットにおける最高用量 (300 nmol/kg) 及びイヌにおける最高用量 (24 nmol/kg) は臨床用量を上回る用量であり また in vitro の試験で検討した最大濃度 (1000 nmol/l) はヒトの C max の約 357 倍であった ラットを用いた Irwin 試験では 300 nmol/kg までの用量で中枢神経系に有意な影響は認められなかった 覚醒雌性ビーグル犬において IDeg の 24 nmol/kg の単回皮下投与後 心拍数の増加傾向が認められた しかしながら 溶媒対照群との比較でこの変化には有意差は認められなかった この変化はイヌにおける血中グルコース濃度の低下に対する反応であると評価された 血圧及び心電図 ( 以下 ECG) に及ぼす影響は認められなかった 人工呼吸下で血糖値レベルを正常範囲に維持した麻酔雄性ビーグル犬に IDeg の 4 8 及び 12 nmol/kg を 2 時間にわたって静脈内に持続注入したが ECG パラメータ及び全身血行力学に対する有意な影響は認められなかった さらに ウサギ心臓のプルキンエ線維を用いた検討 (in vitro) において 1000 nmol/l の IDeg とインキュベーションした後の活動電位に影響は認められなかった herg チャネルとの結合性に関するアッセイでも 有意な IDeg(1000 nmol/l) の結合親和性は示されなかった 呼吸機能に及ぼす影響を評価するために IDeg 投与後 頭部突出型プレチスモグラフィーチャンバーにラットを最大 6 時間拘束し この間飼料は与えなかった IDeg は 3 及び 30 nmol/kg の用量では呼吸パラメータに統計学的に有意な影響はみられなかったが 300 nmol/kg では低血糖による重度の臨床症状が認められ データ収集前に 24 匹中 12 匹を中途屠殺する結果となった 残りの動物では 統計学的に有意な呼吸数の減尐及び一回換気量の増加がみられた 試験終了前に実施した高用量群動物の血糖値の測定では 重度の低血糖が認められた したがって 300 nmol/kg 投与による呼吸機能パラメータに及ぼす影響は IDeg の薬理作用である血糖降下作用と動物拘束下での摂餌不能に関係したものであると考えられる

19 of 43 概して IDeg の安全性薬理試験プログラムでは ラットで 300 nmol/kg 及びイヌで 24 nmol/kg までの投与において良好な忍容性が認められ また高用量で認められた低血糖に関連する所見を除いて問題となる所見は認められなかった 結論として 安全性薬理試験プログラムにおいて安全性上の問題は示唆されなかった 2.4.2.4 薬力学的薬物相互作用 一般的に インスリン製剤に薬力学的薬物相互作用は認められていない このことから 薬力学的 薬物相互作用に関する試験は実施しなかった

20 of 43 2.4.3 薬物動態試験 IDeg の薬物動態を評価するために各種試験を実施した ( 表 2.4-3) 表 2.4-3 薬物動態試験一覧 Toxicokinetic DRF/MTD, 4-, 13-, 26- and 52-weeks s.c. mouse b, rat, dog a Fertility c and embryo-foetal development s.c. rat, rabbit Pharmacokinetic Single dose (insulin degludec) s.c. and i.v. rat, rabbit, dog, pig Multiple dose (7-days) s.c. and i.v. rat, dog Single dose (radioactivity) s.c. and i.v. rat, dog Distribution QWBA s.c. and i.v. rat Placenta transfer s.c. rat Protein binding in vitro rat, dog, rabbit, pig, human Metabolism Hepatocytes, Cathepsin D in vitro rat, dog, human Plasma, urine c, bile c, faeces c, milk c s.c. rat, dog Excretion Urine, bile, faeces s.c. rat Milk s.c. rat a DRF/MTD, 4- and 26-week b 4- and 13-week c Rat only 薬物動態試験の結果 IDeg は皮下 ( 以下 s.c.) 投与時に持続性の薬物動態プロファイルを有することが確認された これは 薬剤の消失が吸収速度で律速されるほど吸収過程が延長したことによるものである この現象は全ての動物種で s.c. 投与時の t 1/2 が静脈内 ( 以下 i.v.) 投与時の t 1/2 より長くなる現象として観察される IDeg は蛋白質結合率が高く 比較的小さいみかけの分布容積を示す IDeg の最初の切断部位は HI と同一であり IDeg は排泄前に広範な代謝を受けることが示されている IDeg の薬物動態及び代謝に関する試験には安全性評価に用いた動物種と同じ動物種を用いて行なった さらに生物学的利用率をブタで検討した IDeg の s.c. 投与及び i.v. 投与時の薬物動態学的パラメータを表 2.4-4 に示す 非臨床の動物種及びヒトにおいて薬物動態の線形性が示されたことから 表中の全身曝露は用量補正時のものを示している

21 of 43 表 2.4-4 IDeg の反復 s.c. 投与時及び単回 i.v. 投与時における用量補正薬物動態パラメータ (1 nmol/kg) の種間比較 Species s.c. administration (steady-state) i.v. administration (single dose) C max (nmol/l) t max (h) AUC 0-24h (h nmol/l) Bioavailability (%) t½ (h) t½ (h) CL (L/h/kg) Vz (L/kg) Mouse a 1.7 1 4.5 - g 3.0 - - - Rat b 3.4 3 22 >70 3.1 1.5 0.16 0.35 Rabbit c 5.8 6 122-9.3 - - - Dog d 2.2 4-7 29 >70 5.6 3.0 0.042 0.17 Pig e 1.7 1-2 12 60-80 5.5 1.0 0.052 0.079 Human f 2.1 8 38-25 - - - Mean of male and female (t max range). For further details see module 2.6.4.3. a Study No.: s.c.: 209388 (4-week), 209479 (13-week). b Study No.: s.c.: 206315 (26-week), 206539 (52-week), i.v.: 204316, 206016. c Study No.: s.c.: 206072 (2-week). d Study No.: s.c.: 205238 (4-week), 206314 (26-week), i.v.: 204317, flmn071102, 207374, 206015, 211057. e Study No.: s.c./i.v.: 204342 (all values following single-dose, AUC 0-24h = AUC). f Trial ID.: s.c.: NN1250-1993 (1-week). g Data not available. 血漿 ( ラット及びイヌ ) 又は血清 ( マウス ラット ウサギ イヌ ブタ及びヒト ) 中試料の分析法として IDeg の異なるエピトープを認識する 2 種のモノクローナル抗体を用いたサンドイッチ ELISA を用いた 本法では HI 又は他のインスリンアナログは亣差反応を示さず測定を妨害しない インスリン抗体はインスリンの薬物動態に影響する可能性がある しかしながら IDeg の場合 反復投与時において尐数のラットで抗体が認められたのみであり イヌでは抗体産生がみられなかったことから 抗体の薬物動態への影響は無視できる程度とみなされた さらに 抗体陽性動物と抗体陰性動物の血漿中曝露に差がみられなかったことから IDeg 抗体の存在は IDeg の薬物動態に影響しないことが示された IDeg の分布 代謝及び排泄に関する試験には脂肪酸鎖を 3 H で又は Tyr A14 を 125 I で標識した放射能標識体を用いた試験が含まれる 125 I で標識したペプチドでは IDeg の分子にかなり大きい原子が付加することから 受容体結合能が変化する可能性及びそれにより分布のパターンが変化する可能性がある しかしながら 125 I 標識位置を IDeg で用いたように Tyr A14 とした場合 インスリンの生物学的効力及び受容体結合親和性を変化させないことが知られている 15 また一般に 3 H の導入による薬物の分布及び代謝に対する影響はないか又は非常に限定的であるとされる したがって IDeg の分布及び代謝に関する試験において [ 125 I]-Tyr A14 -IDeg 及び [ 3 H]-IDeg を使用することは適切であると考えられる

22 of 43 2.4.3.1 吸収 IDeg の s.c. 注射部位からの吸収は良好であり ラット イヌ及びブタでの生物学的利用率は 60% を超えた IDeg の薬物動態は用量比例的であり 経時的な変化及び性差は認められなかった 循環血中への累積は低く 1 日 1 回の投与レジメ及び各動物種でみられた終末相 t 1/2 からの予想と同程度であった ( 表 2.4-4) ラット 26 週間毒性試験では予想よりも大きな累積が認められた ( 約 2 倍 ) が 52 週間毒性試験での循環血中での累積は 1~2 倍であった ラットを用いた他の試験ならびに他の動物種での試験では 累積は認められなかった ヒトでは 累積率は約 2 倍と算出されており ヒトでみられる比較的長い半減期 (25 時間 ) と投与間隔 (24 時間 ) と一致するものであった 全動物種を通じて用量に対する AUC ならびに体重に対する CL/f に概して良好な相関が認められた 用量補正した曝露がウサギでは高いことがみられたが ( 表 2.4-4) これは IDeg の血漿蛋白質 ( アルブミン ) 結合率がこの動物種では高いことによるものと考えられる みかけの分布容積は比較的低く IDeg が高い率で血漿中を循環していることが示唆された 全身クリアランスは低くラット イヌ ブタ及びヒトで同程度であった このことは IDeg の血漿蛋白質結合が高いことと一致する 2.4.3.2 分布 IDeg の分布はラットにおける放射能標識 IDeg の s.c. 投与及び i.v. 投与による試験で検討した IDeg のようなペプチドの分布及び排泄に関するデータの解釈にあたっては 困難があることが予想される IDeg はグルタミン酸スペーサーを介した脂肪酸鎖を付加したペプチド骨格から構成されており 一般にアミノ酸及び脂肪酸に代謝されるためである 完全に代謝された場合 CO 2 及び H 2 O に分解されるか 又は代謝物としてのアミノ酸及び脂肪酸が生体内の蛋白質及び脂質に再利用される このことを考慮して 遊離 125 I 又は低分子量の放射能標識代謝物もしくは生体内蛋白質及び脂質など 薬物に関連しない放射能の影響を減尐させるため 投与後比較的短時間の測定時点での分布を試験した [ 3 H]-IDeg の s.c. 投与時では 放射能は腎及び肝で最も高く ( 組織 / 血漿比 :>1) 次いで血漿 歯髄や肺のような血管の多い組織で高かった 他の組織の大部分で放射能の組織 / 血漿比は低く 0.2 未満であった 血漿 腎及び肝で放射能が高いことから放射能の相当量が血漿蛋白質に結合し 続いてインスリンの取り込み及び消失に関わる主要な器官に受容体を介して取り込まれることが支持された [ 125 I]-IDeg の i.v. 投与時では 放射能は血漿で最も高く 次いで腎及び肺で高く s.c. 投与時で認められた分布パターンが確認された 妊娠動物では 胎児血清中への分布は極めて低いことが示された ( 母動物での曝露に対し <1%) 全体として 末梢組織への IDeg の分布は低く 血清アルブミンへの結合率が高いこと及び分子量が約 6,000 の蛋白質であることから予想される通りであった 組織中放射能濃度は インスリンの受容体を介した取り込みと分解に関与する主要な器官として知られる腎及び肝 16 で最も高かった

23 of 43 表面プラズモン共鳴測定法 (SPR 法 ) 17, 18 を用いて IDeg の in vitro での血漿蛋白質結合率を測定した また 動物又はヒト血清アルブミンに対する IDeg の結合能を 各種アルブミンを結合させた Mini- Leak TM セファロースビーズ 19, 20 を用いて測定した すべての動物種で 血清アルブミンへの結合能は高く ウサギアルブミンに対する結合能が最も高かった ウサギで蛋白質結合能が高いことは ウサギでは他の動物に比べ曝露量が高い ( クリアランスが低い ) ことを説明すると考えられる ( 表 2.4-4) すべての動物種で IDeg は 99% を超える血漿蛋白質結合率に相当する血清アルブミンへの結合能を示した また 平衡透析法及び超遠心分離法を用いて蛋白質結合率を決定することを試みたが これらの手法では蛋白質結合率は評価できなかった これは蛋白質結合率が非常に高いこと及び / 又は試験器具表面への非特異的な吸着に関連するものであると考えられた 2.4.3.3 代謝及び排泄 IDeg 及び HI の代謝をヒト組織中に存在するインスリン分解酵素であるヒトカテプシン D 21 存在下の in vitro 試験で検討した 生成された代謝物は IDeg 及び HI で同一の Phe B24 -Phe B25 及び Phe B25 -Tyr B26 を切断部位とする A 1-21 -B 1-24 及び A 1-21 -B 1-25 であった このことから 2 種のインスリン分子で代謝経路が類似していることが示された ラット ウサギ イヌ及びヒト肝細胞を用いた系での試験において [ 3 H]-IDeg が広範な分解を受けることが示された ヒト肝細胞における代謝物は全てラット及び / 又はイヌ肝細胞で認められ したがって ヒト特異的代謝物は認められなかった これらの試験結果から IDeg は HI と同様に肝細胞に取り込まれた後 細胞内で分解されることが示唆された [ 3 H]-IDeg をラットに s.c. 投与し in vivo での IDeg の代謝及び排泄を検討した これらの試験の結果 IDeg が血漿中での主要な成分であること ( 総 AUC 0-12h の 46~63%) 後期測定時点ではトリチウム水が主要な成分 ( 総 AUC 0-12h の 18~33%) であることが示された さらに 2 種の血漿中代謝物 (P2 及び P3) が尐量存在すること ( 総 AUC 0-12h の 10% 以下 ) が示された 主な血漿中代謝物 (P3) は IDeg のアシル化 B 鎖であり インスリンの不活性代謝物であると同定された 22 イヌでの代謝試験では ラットと同様に IDeg が血清中の主要な成分であり 代謝物の検出は尐量のみであることが示された 以上からラット及びイヌの代謝プロファイルは類似していることが示された ラットにおいて IDeg 未変化体は尿中及び糞中に排泄されなかったが 検出可能なレベルで胆汁中に存在が認められた 放射能は 尿 糞及び胆汁を介して排泄され 主要な排泄経路は腎排泄であった 放射能は主にトリチウム水として排泄され 投与放射能の約 50% であった さらに 多種の放射能成分の排泄が観察された このことから IDeg が細胞内に取り込まれた後広範な分解を受けることが示唆された トリチウム水は IDeg のトリチウム標識脂肪酸鎖の一般的な代謝 (β 酸化 ) の結果産生される IDeg 由来の放射能の排泄は比較的緩徐であり これは トリチウム水の排泄速度が緩徐であること 23 及びおそらくは放射能標識脂肪酸の代謝物が再利用 ( 脂肪酸代謝の基質として用いられる ) されたためであると説明される

24 of 43 結論として IDeg の最初の切断部位は HI と同一であった 動物種を通じて代謝経路は類似しており 排泄前に広範な分解を受けるものであった 2.4.3.4 薬物相互作用非臨床試験の結果 IDeg は薬物相互作用の可能性が低いことが示された 一般的な高蛋白質結合性薬剤である イブプロフェン ワルファリン アセチルサリチル酸及びサリチル酸 繁用される糖尿病治療薬であるメトホルミン シタグリプチン グリメピリド及びリラグルチドならびにパルミチン酸 オレイン酸及びリノール酸が臨床使用時薬剤濃度又は生理的濃度において IDeg のヒト血清アルブミンへの結合に対して影響しないことが示された IDeg のヒト血漿中濃度 (<10 nmol/l) は血漿中アルブミン濃度 (0.6 mmol/l=600,000 nmol/l) に比して非常に低く IDeg は循環血中のアルブミン分子の 0.01% を占有するにすぎないため IDeg がアルブミン結合する薬剤を競合的に排除する可能性は低いと考えられた これらの知見から 蛋白質結合に関連する相互作用はほとんどないと考えられる ラットに IDeg を投与した場合の各 CYP 分子種の発現への影響はないか又は軽度 (2 倍未満 ) であった IDeg の影響は全て NPH インスリンの場合と同様であった したがって ラットにおける CYP 分子種への影響は臨床的に問題とならないと考えられた 一般に蛋白質はヒト CYP 分子に対する阻害剤として記述されておらず IDeg が細胞内で CYP が存在する小胞体に分布する可能性は低い したがってヒト CYP 分子種に対する IDeg の阻害作用は検討していない

25 of 43 2.4.4 毒性試験 2.4.4.1 一般毒性 IDeg の一般毒性は ラット及びイヌの単回皮下投与試験 ラット及びイヌの反復皮下投与試験 ( それぞれ 52 及び 26 週間まで ) により評価した ( 表 2.4-5) 26 週間より長期の試験では インスリンの薬理作用に起因すると考えられる影響と IDeg の毒性作用の可能性が考えられる影響を区別できるように NPH インスリン製剤 ( 遺伝子組換え ) を比較対照に用いた 表 2.4-5 重要な毒性試験の一覧 Study type and duration Route of administration Species Single-dose toxicity s.c. Rat and dog a Repeat-dose toxicity 4 week s.c. Rat and dog 26 week s.c. Rat and dog 52 week including carcinogenicity assessment s.c. Rat Reproductive and developmental toxicity studies Fertility s.c. Rat Embryo-foetal development s.c. Rat and rabbit Pre- and post-natal development s.c. Rat Local tolerance Early development drug product and to be marketed drug product s.c. Pig/Minipig To be marketed drug product i.m., i.v., i.a. Rabbit a Integrated part of maximum tolerable dose study (204317); this study was conducted as a non-glp activity. 健康で正常血糖の動物に対するインスリン投与により 死亡もしくは動物愛護の観点からの安楽死処置に至る可能性がある低血糖のリスクが考えられた 低血糖及び低血糖に起因する死亡はインスリンの薬理作用の結果であり 毒性作用ではなく 過剰ではあるが予測可能な薬理作用である したがって IDeg の無毒性量 ( 以下 NOAEL) は過剰な薬理作用に起因するもの以外に有害作用が認められない用量であると推察した

26 of 43 単回投与毒性 IDeg 単回 s.c. 投与後の急性毒性をラットでは標準的な単回投与毒性試験で イヌでは最大耐量 (MTD) 試験の一部として評価した ラットでは 24000 nmol/kg の単回 s.c. 投与に対する良好な忍容性を示し 死亡は認められなかった イヌでは 30 nmol/kg の単回 s.c. 投与に対する良好な忍容性を示し 死亡は認められなかった 反復投与毒性ラットでは 4 26 及び 52 週間試験を実施した 4 及び 26 週間試験では Wistar 系ラットを使用し 26 週間試験では 4 週間の回復試験も実施した 52 週間試験の目的は IDeg の慢性毒性の評価及びがん原性リスクの評価の 2 項目であり がん原性リスク評価のため EMA ガイダンス Points to consider document on the non-clinical assessment of the carcinogenic potential of insulin analogues (CPMP/SWP/372/01) に従い 最も適切な系統であると考えられる SD 系ラットを使用した SD 系雌性ラットは自然発生乳腺腫瘍の好発系であるため 乳腺腫瘍プロモーション活性の評価に適切な系統であると考えられているイヌでは 4 及び 26 週間試験を実施した 26 週間試験では 4 週間の回復期間も設定した 各試験における用量は表 2.4-6 に要約した ラット及びイヌの 26 週間試験ならびにラットの 52 週間試験では低血糖症状及び低血糖に起因する死亡が認められたことから IDeg 及び / 又は比較対照である NPH インスリンの用量を試験期間中に減量した 用量の減量が必要であったことは 当初の用量が MTD に近いもしくはそれ以上であったことを示すものである IDeg 又は比較対照である NPH インスリンを投与したラット及びイヌでは 血糖は用量依存的に低下し ラットでは 40 nmol/kg/ 日以上の イヌでは 8 nmol/kg/ 日以上の用量で低血糖症状及び低血糖に起因する死亡が認められた ラットと比較し イヌの忍容性は低く より低い用量の IDeg 投与で低血糖症状が認められた ラット及びイヌのインスリンに対する忍容性の差異は既知であり IDeg の非臨床試験で比較対照に用いた HI 製剤投与群 ならびに インスリンリスプロ インスリングルリジン インスリンデテミル インスリンアスパルト及びインスリングラルギンといった他のインスリンアナログ製剤でも認められている 24, 25, 26, 27, 28, 29 IDeg 又は NPH インスリンを投与した動物では 血糖に対する影響により 体重増加量及び摂餌量の高値 臨床検査における各種パラメータの変動ならびに肝臓重量の低値及び肝グリコーゲンの減尐といった代償的な適応性変化が認められた 体重増加量及び摂餌量の高値はラットの 4 週間試験ならびにイヌの 4 及び 26 週間試験の高用量群で認められた 臨床検査の幾つかのパラメータでは 代償性の代謝変化を示唆する所見が IDeg 及び NPH インスリンの主として 40 nmol/kg/ 日以上の用量で同様に認められた すなわち 血漿中肝酵素 蛋白質及び尿

27 of 43 素の低値ならびに尿中ケトン体の高値である さらにラットでは 脱水を示唆するヘモグロビン濃度 (Hb) 及びヘマトクリット値 (Hct) の高値が認められた イヌでは 26 週間試験で散発的な変化として 雌で単球数及び平均赤血球ヘモグロビン濃度 (MCHC) の低値が 雄でトリグリセリドの低値が認められた これらの変化は 雌雄いずれか片方の性で 1 時点でのみ認められており用量相関性がないことから 偶発的で毒性学的意義は低いものと考えられた また ラット又はイヌで認められた変化はいずれも回復性を示した IDeg を投与した全動物で全身曝露が確認された IDeg 抗体は 尐数のラットで散発的に認められ イヌでは検出されなかった ラットでは IDeg 投与動物及び NPH インスリン投与動物で肝臓重量の減尐がみられたが イヌではこのような影響は認められなかった ラットでみられた肝臓重量の減尐と合致する インスリンの血糖降下作用に対する代償的な反応と考えられるグリコーゲン減尐が ラット及びイヌの肝臓の病理組織学的検査で認められた 注射部位の炎症反応及び出血が全投与群で認められたが 溶媒対照群と比較し差異は認められなかった 肝臓及び投与部位におけるこれらの変化は回復性を示した この他に ラット及びイヌの剖検及び病理組織学的検査では 投与に関連した変化は認められなかった 結論として いずれのラット及びイヌの反復投与毒性試験においても ヒトへの長期投与時の安全性上の懸念は示唆されなかった 健康で正常血糖の動物に対する IDeg 投与により 血糖値は正常な生理学的レベル以下に低下し 低血糖症状及び低血糖に起因する死亡が認められた これらの所見は ラット及びイヌにおける用量規制因子となった さらに血糖に対する影響により 体重増加量及び摂餌量の高値 臨床検査における各種パラメータの変動ならびに肝臓重量の低値及び肝グリコーゲンの減尐といった代償的な適応性変化が認められた 認められた変化はいずれも NPH インスリン投与群でも同様の性質及び重篤度で認められており回復性を示したことから インスリンの薬理作用に関連するものであり未知の毒性作用ではないと考えられた したがって IDeg を最長期間投与した試験における NOAEL は最高用量 すなわちラットで 60 nmol/kg/ 日 イヌで 8 nmol/kg/ 日であると推察された これらの NOAEL を動物 / ヒト曝露量比の算出に用いた

表 2.4-6 反復投与毒性試験の用量 28 of 43 Species / duration (study no.) Treatment Dose (nmol/kg/day) Wistar rat 4-week (205239) Day 1-28 Vehicle 0 Insulin degludec - low 25 Insulin degludec - mid 150 Insulin degludec - high 250 Wistar rat 26-week (206315) Day 1-129 Day 130 - end Vehicle 0 0 Insulin degludec - low 20 20 Insulin degludec - mid 50 50 Insulin degludec - high 125 125 NPH insulin 80 50 Sprague Dawley rat 52-week (206539) Day 1-75 Day 76-224 Day 225 - end Vehicle 0 0 0 Insulin degludec - low 20 20 20 Insulin degludec - mid 65 50 40 Insulin degludec - high 100 80 60 NPH insulin 65 50 40 Beagle dog 4-week (205238) Day 1-28 Vehicle 0 Insulin degludec - low 4 Insulin degludec - mid 8 Insulin degludec - high 12 Beagle dog 26-week (206314) Day 1-47 Day 48-107 Day 108 - end Vehicle 0 0 0 Insulin degludec - low 4 4 4 Insulin degludec - mid 8 8 8 Insulin degludec - high 12 10 8 NPH insulin 8 8 8 2.4.4.2 遺伝毒性 IDeg はバイオテクノロジー応用医薬品であることから ICH S6 ガイドラインに従い遺伝毒性試験は実施しなかった また IDeg の各構成要素 (desb30 ヒトインスリン グルタミン酸 1,16-ヘキサデカン二酸 ) はいずれも変異原性を有さないと考えられる グルタミン酸は食品添加物に広く使用されており変異原性は評価済みで Ames 試験 in vitro 染色体異常試験の結果は陰性である 30 ヘキサデカン二酸は長鎖ジカルボン酸 ( 脂肪酸 ) であり 一般的に脂肪酸は変異原性を有さないと考えられている 31

29 of 43 2.4.4.3 がん原性 IDeg のようなバイオ医薬品においては 標準的な 2 年間投与がん原性試験は一般的に不適当であると考えられる (ICH S6 ガイドライン ) 32 インスリンはグルコース 蛋白質及び脂質代謝の調整ならびに細胞増殖作用など 複数の作用をもつホルモンとして広く知られていることから がん原性は in vitro 試験結果及び in vivo 試験結果からの包括的な評価を行なった 包括的な各種 in vitro 試験では IDeg と HI を比較した EMA ガイダンスである Points to Consider Document on Assessment of the Carcinogenic Potential of Insulin Analogues (CPMP/SWP/372/01) で推奨されているように 細胞増殖因子である IGF-1 又は Insulin X10 が比較対照群に適切であると考えられたことから これらで処理する群を設定した IDeg の in vivo でのがん原性はラット及びイヌを用いたすべての重要な反復投与毒性試験における過形成病変及び腫瘍性病変の発現頻度の評価結果から考察した さらに in vivo でのがん原性については 雌雄の SD 系ラットを用いた 52 週間試験で詳細な観察を行なった IDeg のがん原性評価に関する非臨床 in vitro 試験及び in vivo 試験のデータならびに背景データ及び文献情報から行なった考察を以下に示す In vitro でのがん原性評価受容体結合に関する試験 : 総合的な受容体結合に関するデータから IDeg は IR アイソフォーム IR- A 及び IR-B のいずれとも同程度の親和性で結合するが HI と比較すると親和性は低い IDeg の IR 結合動態は HI と変わりなく IR からのシグナル伝達の延長を示唆するものではなかった IDeg は HI と同一のシグナル伝達カスケードを惹起し HI と同じ最大反応を示す IR に対する完全なアゴニストであった IDeg の IGF-1R に対する親和性は IR に対する親和性よりも低い 表 2.4-2 に示した通り IDeg の IGF-1R に対する相対親和性 (HI との比較 ) は いずれの試験系においても一貫して IR に対する相対親和性よりも低いものであった 以上の通り IDeg の受容体結合に関する試験結果は IDeg でみられる分子修飾は IGF-1R 親和性の亢進や IR からのシグナル伝達の延長を惹起しないことを示しており IDeg の安全性プロファイル全般に関する懸念はないものと考えられた 代謝及び細胞増殖反応 :In vitro での細胞増殖誘発能 / 代謝能比を求めるため 古典的なインスリン標的細胞 ( 脂肪細胞 肝細胞及び筋細胞 ) における IDeg の HI に対する相対代謝能を算出した HI に対する相対細胞増殖誘発能は 腫瘍性及び非腫瘍性の様々な組織由来の IR 及び IGF-1R が様々な発現レベルにある細胞種を用いて検討した ( 表 2.4-7) すべての細胞増殖誘発能検討試験では Insulin X10 及び IGF-1 を比較対照とした

表 2.4-7 Assay a 細胞増殖誘発能 / 代謝能比 Albumin (%) Endpoint Potency relative to HI (%) Metabolic potency Rat hepatocytes 0 Glycogen accumulation 21 Rat hepatocytes 0.1 Glycogen accumulation 10 Rat hepatocytes 0.1 PEPCK mrna expression 13.4 Rat muscle cells 0.1 Glycogen synthesis 3.9 Human muscle cells 0.1 Glycogen synthesis 4.4 L6-hIR 0.1 Glycogen synthesis 11.5 MCF-7 0 Glycogen synthesis 7.7 Mitogenic potency COLO-205 0 DNA synthesis 5.4 HMEC 0 DNA synthesis 6.6 L6-hIR 0 DNA synthesis 9.6 MCF-7 0 DNA synthesis 8.5 30 of 43 Range (%) 4 21% 5 10% a Only assays using similar low human serum albumin ( 0.1%) are included, to allow comparison under similar assay conditions. Data obtained form numerous studies. For further details please see 2.6.2, section 2.6.2.2.2 and 2.6.2.2.3. 主として HI に反応性を示すが IGF-1 には殆ど反応性を示さない L6-hIR 細胞を用いたアッセイ結果と IGF-1 に高い反応性を示す MCF-7 細胞を用いたアッセイ結果により IDeg の代謝能と細胞増殖誘発能の直接的な比較が可能である これらのアッセイで得られた相対細胞増殖誘発能 / 相対代謝能の比はそれぞれ 0.83 及び 1.1 であった アッセイで通常認められるバラツキを考慮するとこれらは 1 と変わりなく HI と類似していることが示されている 包括的な細胞増殖誘発能 / 代謝能の比は IDeg の相対細胞増殖誘発能 (HI の 5~10%) と相対代謝能 (HI の 4~21%) を比較して求めた これらの試験結果から IDeg の代謝作用と細胞増殖作用のバランスは HI と類似していることが示唆された In vivo でのがん原性評価 IDeg の in vivo でのがん原性はラット及びイヌを用いたすべての重要な反復投与毒性試験における過形成及び腫瘍性病変の評価結果から考察した さらに in vivo でのがん原性については 雌雄の SD 系ラットを用いた 52 週間試験で詳細な観察を行なった 当該試験では 5-ブロモ-2 -デオキシウリジン ( 以下 BrdU) の細胞内取り込みを指標として雌動物の乳腺細胞増殖を評価した ラット 52 週間反復投与毒性試験は ICH S6 ガイドライン及び EMA ガイダンス Points to consider document on the non-clinical assessment of the carcinogenic potential of insulin analogues (CPMP/SWP/372/01) ならびに EMA 及び FDA から受領した試験計画書レビューコメントに従って計画した 動物は SD 系ラットを用いた 持続性の作用を有することから比較対照として適切であると考えられる NPH インスリンを投与する群も設定した 持効型インスリンアナログであるインスリングラルギン ( ランタス ) 及びインスリンデテミル ( レベミル ) の非臨床安全性試験

31 of 43 でも NPH インスリンは本試験と同様に比較対照に用いられている EMA ガイドラインである Points to consider document on assessment of the carcinogenic potential of insulin analogues では すべての試験に陽性対照として Insulin X10 を含めることを考慮すべきであるとされている SD 系ラットにおける自然発生乳腺腫瘍発現頻度には十分な背景データがあることと Insulin X10 に対する反応性はよく知られていることから 試験系を評価するための陽性対照として Insulin X10 を必要としないと判断した さらに Insulin X10 は速効型のインスリンアナログであり 忍容性を示す用量及び PK プロファイルが IDeg とは大きく異なるため 陽性対照として適切ではないと考えられた 病理組織学的検査は EMA ガイダンス Note for guidance on carcinogenic potential (CPMP/SWP/2877/00) 及び米国毒性病理学会 (STP) で推奨されている 33 すべての器官について全動物を対象に実施した IDeg の乳腺細胞増殖誘発能を in vivo での BrdU の細胞内取り込み 無作為サンプリング 立体再構築手法による細胞数計測など 最新の手法を用いて検討した 34 当該試験は以下に示した通り IDeg のがん原性評価に適していると判断するための重要な基準を満たしている 適切な曝露 : 低血糖に起因する死亡を避けるため 2 回の用量の減量が必要であったことから MTD 相当の用量で投与されている 適切な評価を可能とする投与期間終了時点における生存動物数 : 試験終了時点で 25 匹 / 性 / 群を超える生存動物数であった 日本人における適切な曝露量マージン : ラットにおける曝露量は AUC 及び C max でそれぞれ日本人における曝露量の 17 及び 44 倍であった (Module 2.4.4.10 参照 ) 溶媒対照群及び HI 投与群における雌乳腺腫瘍の発現頻度 : 過去の試験及び背景データと同様の値であった NPH インスリンの in vivo 乳腺組織細胞増殖に対する影響 : 過去の試験と同様であった SD 系ラットを用いた 52 週間試験では全動物の病理組織学的検査を実施したが IDeg のがん原性を示唆する所見は認められなかった (Module 2.6.7.7.C) 雌動物の乳腺は特に重点的に評価したが IDeg 投与動物では過形成や良性又は悪性の腫瘍の発現頻度に投与に関連した高値は認められなかった ( 表 2.4-8) 乳腺腫瘍の発現頻度は 溶媒対照群で 13% NPH インスリン投与群で 14% であり 溶媒対照群の背景データ範囲 (0~30%) 内にあり かつ HI の過去の試験結果の範囲 (0~55%) 内であった (Module 2.6.7.7.C) したがって NPH インスリン投与による腫瘍発現頻度は雌性 SD 系ラットで実施した過去の試験結果と一致するものであった

表 2.4-8 雌ラット乳腺における過形成病変及び腫瘍性病変 32 of 43 Treatment Vehicle Insulin degludec NPH insulin Dose (nmol/kg/day) 0 20 65/50/40 100/80/60 65/50/40 Number examined 40 40 40 50 50 Hyperplasia 1 1 3 0 4 Benign tumours Fibroadenoma 1 3 0 0 4 Malignant tumours Fibrosarcoma 0 1 0 0 0 Adenocarcinoma 4 2 0 0 3 Malignant mixed 0 1 0 0 0 Tumour bearing animals a Number (%) a Combined benign and malignant tumours. 5 (13%) 7 (18%) 0 (0%) 0 (0%) 7 (14%) IDeg 投与群の BrdU の labelling index( 以下 L.I.) は溶媒対照群 NPH インスリン投与群と同程度であった したがって IDeg は細胞増殖を誘発しないことが示された ( 表 2.4-9) NPH インスリン投与群における成績は 過去の試験で雌性 SD 系ラットへの 26 及び 52 週間投与により乳腺細胞増殖誘発は認められなかった結果 35 と一致するものであった 表 2.4-9 雌ラット乳腺における BrdU の L.I. Treatment Vehicle Insulin degludec NPH insulin Dose (nmol/kg/day) 0 20 65/50/40 100/80/60 65/50/40 Number examined 33 30 32 27 35 BrdU LI ratio a 1 1.12 0.92 0.96 1.31 b a Ratio of geometric means adjusted for oestrous cycle stage for insulin degludec groups vs. vehicle. b This ratio was not presented in study report but calculated based on data present in the report. 非臨床 in vivo 試験プログラムを総合的に評価すると IDeg をイヌ及びラットでそれぞれ 26 及び 52 週間までの期間投与したが 過形成病変及び腫瘍性病変発現頻度に投与による影響は認められなかっ た 総合的ながん原性評価 IR 及び IGF-1R に対する特性解析 受容体下流のシグナル伝達 主要な標的組織における代謝への影響ならびに腫瘍細胞及び非腫瘍細胞における細胞増殖誘発能といった in vitro 特性解析に基づく総括として IDeg の分子薬理学的特性に安全性上の懸念は認められなかった IDeg の細胞増殖誘発能 / 代謝能比は HI と同様であり これら 2 つの主要な生物活性のバランスは IDeg と HI で類似していることが示された

33 of 43 SD 系ラットを用いた 52 週間試験では全動物の病理組織学的検査を実施したが IDeg のがん原性を示唆する所見は認められなかった BrdU の細胞内取り込みを指標とした時に雌動物で投与に関連した乳腺細胞増殖は認められなかった IDeg をイヌ及びラットでそれぞれ 26 及び 52 週間までの期間投与したが 過形成病変及び腫瘍性病変の発現頻度に投与による影響は認められなかった IDeg のがん原性評価のための in vitro 及び in vivo 非臨床評価では いずれの試験結果も IDeg のがん原性リスクが HI と同程度であることを支持するものであった 2.4.4.4 生殖発生毒性 IDeg の生殖発生毒性試験は ICH S5A ガイドラインに従い 受胎能 胚 胎児発生及び出生前 出生後の発生についてラット又はウサギを用いて検討した ( 表 2.4-5) 用量は予備的な試験の結果を参考に選択した 薬理作用による母動物の血糖降下が用量規定因子であった 全ての試験で NPH インスリンを投与する比較対照群を設定した ラット受胎能及び胚 胎児発生に関する重要な試験ならびにラット出生前及び出生後の発生に関する重要な試験では 20 80 及び 125 nmol/kg/ 日の用量で IDeg を投与した ウサギ胚 胎児発生に関する重要な試験では 5 10 及び 20 nmol/kg/ 日の用量で IDeg を投与した ラットでは 雌雄動物に 125 nmol/kg/ 日までの用量で IDeg を亣配前から投与を開始し 雌動物では引き続き妊娠期間でも投与を継続したが 亣配能 生殖能もしくは胚 胎児の生存又は発育に対する影響は認められなかった IDeg の 80 及び 125 nmol/kg/ 日投与群では 溶媒対照群と比較し骨格異常の発現頻度高値がみられたが NPH インスリン投与群よりも低く背景データの範囲内であった ウサギでは 20 nmol/kg/ 日までの用量で IDeg を妊娠期間に投与したが 胚 胎児の生存 発育及び発達ならびに軽度骨格異常の発現頻度は背景データの範囲内であった 妊娠期間の低血糖が骨形成を含む胎児発達に影響を及ぼすこと その影響の種類及び程度は低血糖症状の程度及び持続時間に大きく依存することはよく知られている 36, 37, 38, 39, 40, 41 したがって IDeg を投与した正常血糖ラットで認められた骨の変化は母動物の低血糖に起因するものであり 比較対照とした NPH インスリン投与群でも同様の骨の変化が同程度の頻度で認められていることからこのことは支持される IDeg を 80 及び 125 nmol/kg/ 日の用量で NPH インスリンを 80 nmol/kg/ 日の用量で妊娠期間 ~ 哺育期間のラットへ投与したが 母動物の死亡が分娩時に認められた 低血糖症状がこれらの死亡例のほとんどすべてに共通する要因であり 周産期の休薬により低血糖症状及び死亡は認められなくなった 分娩直前の生理学的に摂餌量が減尐する時期に インスリンによる低血糖が重なったことが死因であると考えられた 周産期にラットでは摂餌量が減尐することが知られている 42 出産率 妊娠期間及び着床後胚生存率に IDeg 投与による影響はみられなかったが 出生率ならびに出生児の出生直後生存率 出生時体重及び体重増加量に対する影響が認められた NPH インスリン投与群においても おそらく作用持続時間が IDeg よりも短いため より軽度ではあるが出生率及び出生

34 of 43 児体重増加量に対する影響が認められた また IDeg の 125 nmol/kg/ 日投与群では 外見的に明らかに授乳されていない 及び / 又は 胃内に母乳が殆ど無いことが剖検で確認された出生児数の高値が認められた 妊娠期間及び哺育期間における IDeg の長期間の血糖降下作用が 母動物の代謝 すなわち母乳産生にも影響を及ぼした可能性が考えられた IDeg 投与群の母動物では哺育期間における摂餌量が有意に低値を示したことと 体重に対する軽度の影響が認められたことからも この考察は支持される IDeg の 125 nmol/kg/ 日投与群では溶媒対照群と比較し哺育 1~14 日の平均出生児体重増加量に有意な低値が認められた しかしながら 出生児が飼料を摂取し始め 母動物の母乳産生への依存が低下し始めた離乳前の 1 週間で この変化は回復性を示した 自発運動測定及び学習試験では 出生児の反射能及び動作に被験物質投与による影響は認められなかった IDeg の 125 nmol/kg/ 日投与群の雄では亀頭包皮分離の平均日齢が軽度延長したが 亀頭包皮分離日における体重は溶媒対照群と同等であった 哺育期間における母動物の摂餌量の低値は出生児の体重増加量の低値を惹起し このことに関連する二次的な影響として性成熟の遅延がみられたものであり 毒性作用ではないと考えられた ラット雄出生児の性成熟到達日は 母動物の妊娠期間及び哺育期間における摂餌量と大きく相関し 43 出生後早期の摂餌制限やハンドリングによるストレスにより遅延する可能性がある 44, 45, 46 といわれている 雌出生児の性成熟の平均日齢及び平均体重に被験物質投与による影響は認められなかった 性成熟した F 1 動物を亣配させたが F 0 動物への投与による F 1 雌雄動物の生殖能及び胎児に対する影響は認められなかった したがって 母動物の摂餌量及び体重の低値ならびに周産期における死亡 出生率及び生存率の低値 出生児の体重の低値及び亀頭包皮分離の遅延はいずれも 薬理作用が母動物の血糖値に及ぼす影響を介した二次的な影響であると考えられた NPH インスリン投与群においても同様の影響が認められていることからこのことは支持される 結論として IDeg の生殖発生毒性は非臨床試験プログラムで適切に評価されたと考えられる 観察された影響は インスリンの薬理作用に関連し毒性学的意義の低いものであると考えられた NPH インスリン投与群でも同様の影響が認められていることからこのことは支持される なお そのうちいくつかの影響は IDeg 投与群のラットでより強く発現しているが IDeg は NPH インスリンよりも薬理作用 ( 血糖降下作用 ) の持続時間が長いことに関連していると考えられる 2.4.4.5 幼若動物を用いた試験インスリンの小児及び成人における生理学及び薬理学はいずれも既知であることから 幼若動物を用いた毒性試験により新たな知見は得られないものと考えられた 一般的に 毒性試験では投与開始時に思春期前後の動物が用いられる したがって IDeg では幼若動物を用いた試験は実施していないが このことは EMA の小児委員会 (PDCO:Paediatric Committee) は了承済みであり FDA とも協議済みである

35 of 43 2.4.4.6 局所刺激性 s.c. 投与部位における局所刺激性を開発初期製剤ではブタを 上市予定製剤ではミニブタを用いて検討した ( 表 2.4-5) 上市予定製剤の溶媒には フェノール m-クレゾール及びグリセロールが含まれる 開発期間中に製剤処方が変更され 開発初期製剤に含まれるリン酸ナトリウム及び塩化ナトリウムを使用しなくなった IDeg の 600 nmol/ml 及び 1200 nmol/ml 製剤の単回 s.c. 投与部位では投与後 2 及び 5 日の観察で軽度の炎症反応が認められた 投与部位反応は 溶媒投与部位と比較し同程度 NPH インスリン投与部位と比較し同程度又はより軽度であった また 600 及び 1200 nmol/ml の処方間で投与部位反応に差異は認められなかった 開発期間中の処方変更は局所刺激性に影響を及ぼすものではなかった 上市予定製剤の強制劣化品及び非劣化品を比較した反復投与毒性試験では 炎症反応 壊死及び出血といった投与部位反応が 溶媒対照群を含む全試験群で認められた IDeg 投与群及び溶媒投与群で認められた反応は同様であり IDeg ではなく 投与手技又は溶媒に起因するものと考えられた また 強制劣化による局所刺激性への明確な影響は認められなかった 上市予定製剤をウサギの筋肉内 静脈内及び動脈内へ単回投与し 誤投与時の局所刺激性を検討した その結果 投与部位の局所反応は軽度であり 溶媒投与部位及び NPH インスリン投与部位で認められたものと同程度であった したがって IDeg を筋肉内 静脈内又は動脈内へ誤投与した時に 低血糖以外に安全性上の懸念はないものと考えられた 結論として IDeg 投与部位局所の組織反応は軽度であり 溶媒及び NPH インスリン投与部位と同程度であり 予定臨床投与経路である s.c. 投与時ならびに筋肉内 静脈内又は動脈内への誤投与時のいずれの場合も 低血糖以外に安全性上の懸念はないものと考えられた また IDeg の 600 nmol/ml(100 単位 /ml) 及び 1200 nmol/ml(200 単位 /ml) の 2 処方間で投与部位反応に差異は認められなかった 2.4.4.7 その他の毒性試験本剤の開発期間中に第 2 のげっ歯類動物種における長期投与試験の必要性を検討した その一環として 長期投与試験の予備的試験 ( 重要でない試験 ) である CD-1 系マウスを用いた 4 及び 13 週間試験を実施した しかしながら 細胞増殖誘発能の亢進やその他の懸念を示唆する所見は一連の非臨床試験において認められなかった (Module 2.4.4.3 参照 ) したがって 非臨床試験プログラムは十分であり マウス in vivo 試験の追加実施は不要であると考えられた なお マウスにおける IDeg 投与に起因する変化は NPH インスリン投与に起因する変化と概して同様であり 他の毒性試験に用いた動物種で認められた所見と一致するものであった したがって インスリンの薬理作用に関連するもので 毒性学的意義の低いものであると考えられた

36 of 43 2.4.4.8 製剤中の不純物及び溶出物の安全性評価 目的物質由来不純物不純物 不純物及び 関連物質といった 3 種の不純物及び関連物質を原薬規格に 設定した さらに ( 以下 ) も規格に設定した いずれの不純物も IDeg 由来の ものである (Module 2.3.P.5 参照 ) 不純物は IDeg の開発期間に実施した非臨床試験において評価済みであると考えられる さらに 保存中及び使用時 (in use) に生じる可能性のある製剤由来不純物を評価するため IDeg (100 単位 /ml 容器は Penfill 3mL を使用 ) の強制劣化品 ( で ヶ月間保管 ) 及び非劣化品を Wistar 系ラットに 4 週間反復 s.c. 投与し 毒性プロファイルを比較する試験を実施した 試験の結果 インスリンの薬理作用に起因するもの以外の有害作用は認められなかった 強制劣化品投与群及び非 劣化品投与群の間では 摂餌量 血液学的検査 血液生化学的検査及び器官重量に軽度の相違が認め られた これらの相違はいずれも軽度のものであり 概して雌雄いずれか片方の性でのみ認められて いることから偶発的なものであると考えられた また 強制劣化品投与群及び非劣化品投与群の間で 投与部位反応に明確な差異は認められなかった 以上の通り 強制劣化品及び非劣化品の間で毒性学 的意義のある差異は認められなかった 不純物はアミノ酸 脂肪酸及び糖成分からなるため 不純物の遺伝毒性試験は実施しなかった また IDeg の各構成成分に関しても変異原性を有しないものと考えられた (Module 2.4.4.2 参照 ) 製剤中に認められた不純物はいずれも非臨床試験において評価されている 不純物 不純物及び関連物質は 使用時の規格 (Module 2.6.7.16.C 参照 ) とで はで 非臨床試験に用いた製剤中に含有されている これら 3 種の不純物及びの動物における NOAEL 投与時の曝露量は日本人集団に対する曝露量の倍である したがって 使用時の規格の安全性は十分に評価済みであり 妥当なものであると考える その他の不純物製造工程由来不純物は検出されなかった IDeg の 100 単位 /ml 製剤の 24 ヶ月の有効期間及び 8 週間の使用時における容器 / 施栓系からの溶出物含有量を測定した (Module 3.2.P.2.4) IDeg 用量として 200 単位 / 日に相当する 100 単位 /ml 製剤の 2 ml 投与を仮定して 患者に対して考えられる各溶出物の最高曝露量を算出した ( 表 2.4-10) 200 単位 / 日は各国の治療効果確認試験で用いられた中でも最高に近い用量であり IDeg 用量が最も高かった試験 (NN1250-3582 試験 ) において 95% を超える患者が 200 単位 / 日以下であった

37 of 43 表 2.4-10 24 ヶ月有効期間及び 8 週間使用時の溶出物濃度 Compound CAS number(s) Maximal concentration (µg/ml) Worst case patient exposure a (µg/day) a Patient using 200 U/day ~ 2 ml of the insulin degludec 100 U/mL formulation. b Depending on isomeric form. 溶出物の安全性評価は Module 2.6.6.10 に記した 結論として 患者に対する溶出物の曝露は安全性 上のリスクを有せず 容器 / 施栓系は使用に適したものであると考えられた 2.4.4.9 添加物の評価防腐剤としてフェノール及び m-クレゾール 等張化剤としてグリセロールを含有する溶媒を使用し IDeg を製剤化した また インスリンのジヘキサマー形成のため酢酸亜鉛を添加した IDeg の上市予定処方は ラット 52 週間反復投与試験 非劣化品と強制劣化品を比較したラット 4 週間反復投与毒性試験 マウス 4 週間反復投与毒性試験 マウス 13 週間反復投与毒性試験 ラット出生前及び出生後の発生ならびに母体の機能に関する試験 ウサギ局所刺激性試験及びミニブタ局所刺激性試験で使用された フェノール m-クレゾール グリセロール及び亜鉛は既知の添加物であり インスリンアスパルト インスリンデテミル インスリングラルギン及びインスリングルリジンといった市販されている皮下注射用インスリン製剤中に IDeg 製剤と同程度もしくはより高濃度含有されている 47, 48, 49, 50 予定されている用法 用量で IDeg 製剤を投与した時の各添加物のヒトにおける曝露量は 市販されているインスリン製剤投与時の曝露量を超えるものではない また IDeg の毒性試験では 全身性の毒性作用は認められず 軽度の投与部位反応がみられたのみであることから IDeg 処方に含有される添加物は安全であると考えられた 2.4.4.10 ヒトとの曝露量比較 各動物種で最長期間投与した毒性試験における NOAEL 投与時の曝露量 すなわち定常状態における AUC 0-24h 及び C max を 日本人 1 型糖尿病患者が参加した第 3 相試験 (NN1250-3585 試験 ) 及び日本人 2

38 of 43 型糖尿病患者が参加した第 3 相試験 (NN1250-3586 試験 ) で得られた日本人集団の平均臨床用量である 0.26 単位 /kg/ 日投与時のヒト曝露量と比較した 各試験における曝露量は毒性試験の概要 Module 2.6.6.10 表 2.6.6-21 に示した 動物 / ヒト曝露量比は下記の通り算出された ( 表 2.4-11) 表 2.4-11 動物 / ヒト曝露量比 Rat Dog Rabbit Study type AUC (0-24) C max AUC (0-24) C max AUC (0-24) C max Repeated dose toxicity a 17 44 4.3 5.2 - - Carcinogenicity b 17 44 - - - - Reproduction toxicity c 16 52 - - 31 45 a Study no: 206539 (rat), 206315 (dog). b Study no: 206539. c Study no: 206075, 206076, 208335, 208336 (rat), 206073, 206074 (rabbit); Human exposure calculated from NN1250-1996 (PK) and NN1250-3585/NN1250-3586 (clinical dose in Japanese sub-population) 過剰な薬理作用に起因するもの以外の有害作用が認められなかった用量を NOAEL と推察した IDeg を最長期間投与した試験 ( ラットで 52 週間 イヌで 26 週間 ) ではインスリンの薬理作用に起因する影響のみが認められたことから 当該試験における NOAEL は最高用量 すなわちラットで 60 nmol/kg/ 日 イヌで 8 nmol/kg/ 日であると推察された これらの NOAEL を動物 / ヒト曝露量比の算出に用いた MTD に近いもしくはそれ以上の用量で IDeg を動物へ投与した時の動物 / ヒト曝露量比が算出された この動物 / ヒト曝露量比は算出可能な最大値であると考えられる イヌ / ヒト曝露量比は低かったが それ以外の試験では AUC 0-24h で 16 以上 C max で 44 以上と 十分な曝露量比が得られた イヌはラットよりも忍容性が低く より低い用量で低血糖症状を示し イヌ / ヒト曝露量比が低くなることは 過去のインスリン製剤の試験結果からよく知られている

39 of 43 2.4.5 総合的考察及び結論 2.4.5.1 概要 In vitro の薬理試験において IDeg はヒトの IR と特異的に結合し HI と同様の薬理作用を示した すべての試験系において IDeg は完全な作用を有する ( 完全な IR アゴニストである ) ことが確認された IDeg のヒト IGF-1R との相対親和性はヒト IR との相対親和性よりも低かった IR との結合が弱いことに合致して IDeg の in vitro の細胞増殖誘発能は HI よりも低かった さらに IDeg の細胞増殖誘発能と代謝能の比は HI と類似しており IDeg の代謝作用と増殖作用のバランスは HI と類似していることが示唆された IDeg は緩徐かつ持続的に注射部位から循環血中に吸収されるため IDeg は超持効型の薬物動態プロファイルを示した 分布容積は小さく 蛋白質結合率が高いこと及び組織中への取り込みが低いことと一致する 薬物動態学的特徴は動物種間で一致しており 用量比例的曝露を示した 薬物動態に性差及び経時的変化はみられなかった IDeg の最初の切断部位は HI でみられるものと同一であった IDeg は排泄前に広範な分解を受け 代謝物のパターンは動物種間で類似していた IDeg の消失は HI の消失と類似していた このことは 検証的臨床試験で観察された完全な in vivo 代謝能によりさらに支持される 同時に 受容体非介在性の分解は寄与率の低い代謝系であることが示唆されている CYP 及び蛋白質結合に関連する薬物相互作用の可能性は低いと考えられる 安全性薬理試験では安全性上の懸念は認められなかった 安全性薬理試験では IDeg に対する良好な忍容性が認められ 最高用量群 ( ラットでは 300 nmol/kg イヌでは 24 nmol/kg) で認められた低血糖以外に変化はみられなかった IDeg の単回及び反復投与毒性試験は 薬理反応を示す 2 種の動物 すなわちラット及びイヌを用いて実施した 健康で正常血糖のラット及びイヌに対する IDeg 投与により 血糖値は正常な生理学的レベル以下に低下し 低血糖症状及び低血糖に起因する死亡が認められた さらに 血糖に対する影響により 体重増加量及び摂餌量の高値 臨床検査における各種パラメータの変動ならびに肝臓重量の低値及び肝グリコーゲンの減尐といった代償的な適応性変化が認められた これらの変化は比較対照とした NPH インスリン投与群でも同様の性質及び重篤度で認められていることから インスリンの薬理作用に関連するものであり毒性学的意義は低いと考えられた IDeg 抗体は 尐数のラットで散発的に認められたが イヌでは検出されなかった ラットでは IDeg 曝露が明らかであり 血糖降下作用に対する影響が認められなかったことから ラットにおける抗体産生は試験結果に影響を及ぼすものではなかった SD 系ラットを用いた 52 週間試験において全動物の病理組織学的検査を実施した結果 IDeg のがん原性を示唆する所見は認められなかった 雌動物の乳腺は特に重点的に評価したが IDeg 投与動物では溶媒対照群動物と比較し 過形成や良性又は悪性の腫瘍の発現頻度に投与に関連した増加は認めら

40 of 43 れなかった また BrdU の細胞内取り込みを指標とした時に雌の乳腺細胞増殖は認められなかった IDeg をイヌ及びラットでそれぞれ 26 及び 52 週間までの期間投与したが 過形成病変及び腫瘍性病変の発現頻度に投与による影響は認められなかった IDeg が細胞増殖に及ぼす影響を検討した in vitro 及び in vivo 非臨床試験の結果は いずれも IDeg のがん原性リスクは HI を超えるものではないという結論を示す又は支持するものであると考えられた 生殖発生毒性試験では 亣配能 生殖能 出産率 妊娠期間 着床後胚生存率 胚 胎児の生存又は発育ならびに出生児の発達及び繁殖能に対する影響は認められなかった 母動物の摂餌量及び体重の低値ならびに低血糖に起因する周産期の死亡 出生率及び出生時生存率の低値ならびに出生児の体重及び生存率の低値 骨格変化及び亀頭包皮分離の遅延はいずれも 薬理作用が母動物の血糖値に及ぼす影響を介した二次的な影響であると考えられた NPH インスリン投与群においても同様の影響が認められていることからこのことは支持される なお そのうちいくつかの影響は IDeg 投与群のラットでより強く発現しているが IDeg は NPH インスリンよりも薬理作用 ( 血糖降下作用 ) の持続時間が長いことに関連していると考えられる ブタ又はミニブタを用いた試験ならびに重要な反復投与毒性試験の一部として 単回及び反復 s.c. 投与後の投与部位局所の組織反応を検討した また ウサギの筋肉内 静脈内及び動脈内へ単回投与し 投与部位局所の組織反応を検討した IDeg 投与部位局所の組織反応は軽度であり 溶媒投与部位及び NPH インスリン投与部位で認められたものと同程度であった したがって IDeg を予定臨床投与経路である皮下へ投与した時 もしくは 筋肉内 静脈内又は動脈内へ誤投与した時に 低血糖以外に安全性上の懸念はないものと考えられた IDeg 製剤に含まれる添加物は既知の物質で 市販されているインスリン皮下注射用製剤中に IDeg 製剤と同程度もしくはより高濃度含有されている 目的物質由来不純物の安全性は非臨床試験プログラムで適切に評価されたと考えられる 非臨床安全性試験では全身性の毒性作用はみられず 軽度の局所反応が認められたのみであったことから 不純物及び添加物は安全であると考えられた 容器 / 施栓系からの溶出物濃度を測定し 患者で想定される曝露量を検討したが 安全性上の懸念はないものと考えられた 2.4.5.2 総括 IDeg はヒト IR に対する特異的で完全なアゴニストで HI と同様の作用機序を有することが示された 単回及び反復投与毒性試験 生殖発生毒性試験 局所刺激性試験及びがん原性リスクの評価結果に基づくと IDeg のヒトへの長期 s.c. 投与に際しての安全性上の懸念は 非臨床試験プログラムでは認められなかった 非臨床試験プログラムでは 既知のインスリンの薬理作用に起因する所見がみられたが インスリンの過剰な薬理作用 ( 低血糖 ) に起因するもの以外に有害作用は認められなかった 非臨床試験により IDeg に施された分子修飾によっても代謝作用及び安全性のプロファイルは HI と比較して変わらないことが示された

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