1 はじめに 近年 中国人観光客などが大量に商品をまとめ買いをする 爆買い が話題になり 大阪市内でも 以前と比べ人の流れが変わったように感じられます また観光客のみならず 都市のグローバル化に合わせて 留学生や技能実習生といった人たちも増加してきていると感じられる方もおられるのではないでしょうか そこで 今回の ちょこっと統計 では 住民基本台帳人口等のデータをもとに 外国人人口に焦点を当ててみたいと思います 2 大阪市の外国人人口の現状 次の図 1は 平成 22 年から平成 27 年にかけての大阪市の人口 ( 日本人 + 外国人 ) と 日本人と外国人を分けてそれぞれグラフで表したものです これを見ると 大阪市の人口は近年微増傾向で推移しており 日本人の人口も同様に微増傾向であることが分かります 一方で 外国人の人口は少し様相が異なり 平成 25 年まで減少傾向にあったものの 平成 26 年からは増加に転じています 図 1 大阪市の人口 2800000 2700000 2,656,900 2,661,178 2,664,139 2,667,269 2,670,225 2,679,962 2600000 2500000 2400000 2,536,715 2,541,708 2,546,668 2,551,020 2,553,531 2,560,473 2300000 2200000 120000 110000 117,471 116,249 116,694 120,185 119,470 119,489 平成 22 年 平成 23 年 平成 24 年 平成 25 年 平成 26 年 平成 27 年 日本人 + 外国人 日本人 外国人 出典 ) 住民基本台帳 外国人登録注 ) 各年 9 月末現在では 外国人人口はなぜこのような推移になっているのでしょうか? ひとくちに 外国人人口 といっても 構成する国籍は様々で それぞれの国籍ごとに増減の傾向も異なります そこで 国籍別に平成 22 年から平成 27 年の外国人人口の推移を見ると 次の図 2のようになります 1
図 2 大阪市の国籍別外国人人口 140,000 120,000 120,185 119,470 117,471 116,249 116,694 119,489 100,000 80,000 79,659 77,921 76,057 74,089 72,224 70,842 60,000 40,000 27,556 28,436 28,276 28,225 28,977 30,344 20,000 0 12,076 12,175 12,018 12,167 12,734 13,624 894 938 1,120 1,768 2,759 4,679 平成 22 年 平成 23 年 平成 24 年 平成 25 年 平成 26 年 平成 27 年 総計 韓国及び朝鮮 中国 台湾 ベトナム その他 出典 ) 住民基本台帳 外国人登録注 ) 各年 9 月末現在 図 2を見ると 国籍別外国人人口のうち最も多い 韓国及び朝鮮 は 平成 22 年の 79,659 人から平成 27 年の 70,842 人まで一貫して減少しています 一方 中国 台湾 は平成 22 年の 27,556 人から平成 27 年の 30,344 人まで 5 年間で 2,788 人増加しており 特に平成 25 年から平成 27 年にかけては 2,119 人の増加と 人口増加が進みました また ベトナム は平成 22 年の 894 人から平成 27 年の 4,679 人まで一貫して増加しており 特に平成 25 年から平成 27 年にかけては 2,911 人の増加と 中国 台湾 を上回るペースで人口増加が進んでいます 以上のように 平成 25 年までは 韓国及び朝鮮 の減少の影響により 外国人人口全体でも減少傾向にありましたが 平成 26 年以降に増加に転じたのは 中国 台湾 や ベトナム の大幅な増加が影響し 外国人人口全体で増加に転じたことが分かります 2
3 区別の外国人人口の現状 ここからは 外国人人口のうち 中国 台湾 及び ベトナム について 特に増加幅の大きかった平成 25 年から平成 27 年にかけての増加数を 区別に見ていきたいと思います 次の図 3は 中国 台湾 の動向を 24 区マップに落とし込んだものです これを見ると 浪速区や西成区で 300 人を超える増加となっているのが目立ちます 一方で 福島区 旭区 住之江区では減少していることが分かります 図 3 外国人人口の増加数 ( 中国 台湾 ) 300 人以上 200 人以上 299 人以下 100 人以上 199 人以下 0 人以上 99 人以下 0 人未満 東淀川区 淀川区 旭区 都島区 西淀川区 福島区 北区 城東区 鶴見区 此花区 西区 中央区 東成区 港区 浪速区 天王寺区 生野区 大正区 西成区 阿倍野区 住之江区 東住吉区 平野区 住吉区 出典 ) 住民基本台帳 注 ) 平成 25 年 9 月末と平成 27 年 9 月末を比較 3
次に図 4 で 外国人人口のうち ベトナム の動向について見ると 生野区や西成区で 300 人を超える増加となっており 次いで浪速区が 200 人を超える増加となっています また 中 国 台湾 とは違い 減少した区はありませんでした 図 4 外国人人口の増加数 ( ベトナム ) 300 人以上 200 人以上 299 人以下 100 人以上 199 人以下 0 人以上 99 人以下 0 人未満 東淀川区 淀川区 旭区 西淀川区 福島区 北区 都島区 城東区 鶴見区 此花区 西区 中央区 東成区 港区 浪速区 天王寺区 生野区 大正区 西成区 阿倍野区 住之江区 東住吉区 平野区 住吉区 出典 ) 住民基本台帳 注 ) 平成 25 年 9 月末と平成 27 年 9 月末を比較 4
4 外国人人口の増減の理由 ここまで 大阪市区における外国人人口の増減といった現状について見てきましたが ここか らは理由についても触れてみたいと思います (1) 外国人人口のうち 韓国及び朝鮮 の減少について大阪市の 韓国及び朝鮮 は平成 22 年から平成 27 年の間 一貫して減少していましたが 日本全体で見ても次の表 1のとおり 韓国及び朝鮮 の人口 ( 全国 ) は同様に減少しています その原因として まず 帰化 が考えられます そこで 法務省民事局の帰化に関する全国のデータを見ると 平成 22 年から平成 26 年までの5 年間の 韓国 朝鮮 の帰化許可者数は 26,980 人と 韓国 朝鮮 の人口減少 (64,759 人 ) の4 割以上は帰化によるものと言えます ただ 帰化許可者数は平成 22 年の 6,668 人から平成 26 年の 4,744 人まで 減少傾向にあります 次に考えられるのは 高齢化に伴う自然減 です 次の表 2のように 韓国 朝鮮 の高齢化率 (65 歳以上の高齢者人口の割合 ) は 外国人の 16.6% はもちろん 日本人の 25.2% と比べても高く 高齢化に伴う自然減少が大きいものと考えられます 高齢化率は今後も高水準で推移すると予想され その結果として減少傾向も続くと考えられます 表 1 韓国 朝鮮 の帰化許可者数 人口の推移 ( 国 ) 韓国 朝鮮 の人口 ( 全国 ) 韓国 朝鮮 の帰化許可者数 平成 22 年 565,989 6,668 平成 23 年 545,401 5,656 平成 24 年 530,048 5,581 平成 25 年 519,740 4,331 平成 26 年 501,230 4,744 出所 ) 在留外国人統計 ( 旧登録外国人統計 )( 法務省 ) 法務省民事局 注 ) 人口は各年 6 月末現在 帰化許可者数は暦年の人数 表 2 年齢別人口 ( 大阪市 ) 総数 0~14 歳 15~24 歳 25~34 歳 35~44 歳 45~54 歳 55~64 歳 65 歳 ~ 高齢化率 日本人 2,560,473 300,402 238,777 342,328 396,972 350,766 285,280 645,948 25.2% 外国人 119,489 7,777 16,036 25,882 18,219 16,989 14,708 19,878 16.6% うち韓国 朝鮮 70,842 3,858 5,711 8,585 10,240 11,583 12,191 18,674 26.4% 出典 ) 住民基本台帳 注 ) 平成 27 年 9 月末現在 5
(2) 外国人人口のうち 中国 台湾 及び ベトナム の増加について 中国 台湾 及び ベトナム は 韓国及び朝鮮 とは対照的に大きく増加していました その背景を探るため 法務省の在留外国人統計から 在留資格別に在留外国人数を見てみます 次の表 3を見ると 中国 台湾 ベトナム ともに 在留資格のうち 留学 技能実習 が多いことが見て取れます 特に ベトナム では 在留資格のうち 留学 と 技能実習 とで在留資格全体の7 割以上を占めています 次の表 4は 表 3と同じく在留外国人統計をもとに 在留資格別に在留外国人数を平成 21 年と平成 26 年で比較したものです これを見ると 在留資格のうち 留学 は 68,616 人の増加 技能実習 は 167,626 人の増加となりました 国籍別に見ると 中国 台湾 では 技能実習 が 100,102 人 留学 が 18,730 人の増加 ベトナム では 技能実習 が 34,039 人 留学 が 29,252 人の増加となっています 技能実習制度は 我が国が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため 技能 技術又は知識の開発途上国等への移転を図り 開発途上国等の経済発展を担う 人づくり に協力することを目的に 平成 22 年 7 月に施行されました このことが 中国 台湾 及び ベトナム が増加した大きな要因になっていると考えられます 表 3 国籍 地域別在留資格 ( 在留目的 ) 別在留外国人 ( 国 ) 総数 中国 台湾 韓国及び朝鮮 フィリピンブラジルベトナム米国タイ 総数 2,121,831 694,974 501,230 217,585 175,410 99,865 51,256 43,081 うち永住者 677,019 232,025 65,711 115,857 111,077 12,813 15,503 18,273 うち特別永住者 358,409 2,371 354,503 47 28-746 10 うち留学 214,525 113,085 15,765 1,013 585 32,804 2,570 3,818 うち技能実習 167,626 100,102 9 12,721 9 34,039 1 4,923 うち定住者 159,596 28,239 7,636 43,997 44,559 5,450 1,155 3,827 うち日本人の配偶者等 145,312 40,493 15,134 29,150 15,565 1,880 8,741 7,411 うち家族滞在 125,992 64,054 13,075 2,332 395 3,913 3,849 625 うち人文知識 国際業務 76,902 38,016 10,345 1,290 97 1,482 6,582 653 うち教育 10,141 97 88 332 23 2 5,330 1 出典 ) 在留外国人統計 ( 法務省 ) 注 ) 平成 26 年 12 月末現在 6
表 4 国籍 地域別在留資格 ( 在留目的 ) 別在留外国人の 5 年前からの増加 ( 国 ) 総数 中国 台湾 韓国及び朝鮮 フィリピンブラジルベトナム米国タイ 総数 64,290 14,456 77,265 5,869 92,046 58,865 893 395 うち永住者 143,547 75,730 9,540 31,450 5,151 3,626 2,795 4,390 うち特別永住者 51,156 447 51,068 2 6-183 2 うち留学 68,616 18,730 4,042 398 220 29,252 258 1,162 うち技能実習 167,626 100,102 9 12,721 9 34,039 1 4,923 うち定住者 62,175 5,412 986 6,866 56,691 397 363 295 うち日本人の配偶者等 76,611 16,017 5,918 16,877 27,878 53 399 1,702 うち家族滞在 10,911 8,414 5,458 198 56 2,647 1,575 3 うち人文知識 国際業務 7,507 3,806 1,383 339 6 985 128 240 うち教育 12 7 6 215 14 1 24 1 出典 ) 在留外国人統計 ( 法務省 ) 注 ) 平成 21 年 12 月末と平成 26 年 12 月末を比較 5 おわりに ここまで取り上げたデータを振り返ると 近年の大阪市の外国人人口は 韓国及び朝鮮 の帰化や高齢化などによる減少を 中国 台湾 や ベトナム 等の国籍の増加で補っている構図になっていることが見て取れます なお 今回は住民基本台帳人口等を資料として 外国人人口について見てきました 住民基本台帳人口は 住民登録をしている人の数ですので 大阪市に住民登録をせずに市内に住んでいる人はカウントされませんし 逆に大阪市に住民登録をしていれば市内に住んでいなくてもカウントされます よって実際に市内に住んでいる人の数を知りたい場合は 国勢調査人口を資料として見る必要があります 昨年の秋に皆さんにご協力いただいた平成 27 年国勢調査の結果は 本年 2 月に 人口や世帯の総数を集計した速報が 10 月には 国籍別などに詳細に集計した確報が公表予定になっています 興味を持っていただいた方は 是非 そちらの結果も併せてご覧ください 7