日腎会誌 2018;60(2): 特集 :CKD-MBD CKD 患者の骨代謝異常 Abnormal bone metabolism in CKD patients *1 *2 *3 山本卓風間順一郎成田一衛 Suguru YAMAMOTO, Junichiro KAZAMA, a

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平成25年6月14日

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299 P1NP 骨芽細胞 プロコラーゲン分解 Ⅰ 型コラーゲン TRACP-5b BAP OC ucoc OC 類骨 細胞活性化による分泌 1 増殖期 P1NP 2マトリックス形成 成熟期 3 石灰化期 OC 破骨細胞 肝臓 腎臓代謝 尿中 NTX CTX 血中 NTX コラーゲン断片 CTX α

能性を示した < 方法 > M-CSF RANKL VEGF-C Ds-Red それぞれの全長 cdnaを レトロウイルスを用いてHeLa 細胞に遺伝子導入した これによりM-CSFとDs-Redを発現するHeLa 細胞 (HeLa-M) RANKLと Ds-Redを発現するHeLa 細胞 (HeL

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

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負荷試験 検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 検体ラベル ( 単項目オーダー時 )

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ータについては Table 3 に示した 両製剤とも投与後血漿中ロスバスタチン濃度が上昇し 試験製剤で 4.7±.7 時間 標準製剤で 4.6±1. 時間に Tmaxに達した また Cmaxは試験製剤で 6.3±3.13 標準製剤で 6.8±2.49 であった AUCt は試験製剤で 62.24±2

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3. 安全性本治験において治験薬が投与された 48 例中 1 例 (14 件 ) に有害事象が認められた いずれの有害事象も治験薬との関連性は あり と判定されたが いずれも軽度 で処置の必要はなく 追跡検査で回復を確認した また 死亡 その他の重篤な有害事象が認められなか ったことから 安全性に問

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mg 8 mg X Cr 9.84 mg/ dl K 1.5 meq/l CK 24,570 U/L Mb 79,530 ng/ml Mb 230,000 ng/ ml AKI 2 IHD IHD 4 IHD

32 1 BRONJ BRONJ II BRONJ BRONJ 4 BP BRONJ 6 1 III BP BRONJ

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日腎会誌 2018;60(2): 126 132. 特集 :CKD-MBD CKD 患者の骨代謝異常 Abnormal bone metabolism in CKD patients *1 *2 *3 山本卓風間順一郎成田一衛 Suguru YAMAMOTO, Junichiro KAZAMA, and Ichiei NARITA はじめに 慢性腎臓病 (chronic kidney disease:ckd) では骨折の頻 度が増加するが, その大きな原因の一つが頻発する骨代謝異常である その機序として CKD に伴う骨ミネラル代謝異常 (CKD-mineral bone disorder:ckd-mbd) のほか,CKD 固有の因子で増悪する骨粗鬆症 ( 尿毒素症性骨粗鬆症 ) などもあげられる CKD-MBD を中心とする治療法の進歩のためか, 近年, 骨折の頻度は減少傾向にあるとする報告もあるが, いまだ十分には解決されていない CKD による骨回転異常 骨では絶え間なく骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収が繰り返されている 正常な骨代謝では骨芽細胞, 破骨細胞の分化調節と活性がコントロールされ, 骨形成と骨吸収のバランスが一定に保たれる 骨芽細胞は間葉系幹細胞から分化される際に Runx2, OSX, ATF4, PPARγなどの転写因子,BMP,Wnt,Notch シグナルなどが関連し, Wnt/β- カテニン系では骨細胞から分泌される Sclerostin や Dickkopf1 などが Wnt と LRP5/6 との反応を抑制されながら骨芽細胞の成熟, 分化に関連する 1,2) また, 単球 マクロファージ系の破骨細胞前駆細胞が多核成熟破骨細胞に分化する際に, 主にサイトカイン M-CSF (macrophage colonystimulating factor) と RANKL(receptor activator of nuclear factor-κ ligand) が重要な役割を果たす M-CSF は破骨細胞前駆細胞の M-CSF 受容体に作用して前破骨細胞への分化に *1 新潟大学医歯学総合病院血液浄化療法部, *2 福島県立医科大学腎臓高血圧内科, *3 新潟大学医歯学総合研究科腎研究センター腎 膠原病内科学 関連する 一方,RANKL は破骨細胞分化の各ステージを支持 促進する 副甲状腺ホルモン (parathyroid hormone: PTH), 活性型ビタミン D 1,25(OH)2D, IL-6 などのホルモン, サイトカインは骨芽細胞など間葉系細胞に作用して RANKL の発現を誘導し破骨細胞分化を促進する 2,3) 上記の骨細胞および破骨細胞分化による骨形成と骨吸収のカップリングには骨に埋め込まれた TGF-β1(transforming growth factor-β1), IGF-1(insulin-like growth factor-1) が骨吸収の際に放出されるほか, 破骨細胞が活性化する際に S1P (sphingosine-1-phosphate), セマフォリン 4D などの液性因子の分泌が骨芽細胞分化を誘導することが報告された これらの骨代謝が正常に行われれば骨強度が維持されるが,CKD では一般的リスクファクターのほか, 二次性副甲状腺機能亢進症をはじめ病態固有の原因により骨代謝が障害され骨脆弱性誘導の一因となる 近年の基礎研究では, 腎障害ラットに高リン食を使用すると骨密度の低下と皮質骨の多孔化を認めたが, 骨組織では骨形成マーカーであるオステオカルシンや Runx2, 骨吸収マーカーの cathepsin K および Wnt 阻害の Sfrp1 と Dikkopf1 の増加を認めた 4) 骨芽細胞 UMR106-01 は PTH と反応すると Wnt 経路を阻害する Sfrp1, Sfrp4 と Dikkopf1 の発現低下を認めたが,fibroblast growth factor 23 (FGF23) と Klotho を共に反応させるとそれらの発現が増強された 4) また, 骨細胞由来の Klotho による骨代謝への影響を検討した研究では, 骨細胞の Klotho 発現を減少させたマウスでは骨形成が促進され, 骨量が増加し,Runx2,I 型コラーゲンの増加と Dikkopf1 の低下を認めた 5) これらの研究から, 腎障害による骨形成障害の一因として骨細胞由来の FGF23/Klotho が Wnt 経路を阻害することによることが明らかにされた CKD で増加する PTH は骨回転の維持に必要であるが, 過剰に分泌されると高回転骨となる CKD, 特に透析患者

山本卓他 2 名 127 表 1 透析患者の骨形成速度と骨代謝マーカー 骨形成速度 低 正常 高 基準値 ipth(pg/ml) 68.2[23.2 ~ 186.3] 180.7[50.0 ~ 717.9] 382.6[139.5 ~ 865.5] 15.0 ~ 65.0 BAP(U/L) 28.2[18.0 ~ 46.2] 33.7[60.0 ~ 118.0] 63.3[42.3 ~ 116.8] 11.6 ~ 42.7 P1NP(ng/mL) 348.3[183.1 ~ 599.6] 483.7[207.1 ~ 786.4] 787.0[523.7 ~ 992.2] 13.9 ~ 85.5 BAP:bone-specific alkaline phosphatase,ipth:intact parathyroid hormone,p1np:n-terminal domain of the propeptide of procollagen I 値は中央値 [ 四分位範囲 ] ( 文献 6 より引用, 改変 ) では正常より高値の PTH が正常骨代謝を維持するために必要である Sprague らは透析患者 492 例の骨組織所見と血清 PTH 値の関連を横断的に観察した 6) 骨形成速度(bone formation rate/bone surface) が低値 (289 例 ), 正常 (120 例 ) そして高値 (83 例 ) の intact PTH 値はそれぞれ 68.2 (23.2 ~ 186.3), 180.7 (50.0 ~ 717.9), そして 382.6 (139.5 ~ 865.5) pg/ml であった (PTH 基準値 15.0 ~ 65.0 pg/ml) 6) ( 表 1) また低骨形成, 高骨形成は PTH <103.8 pg/ml と >323.0 pg/ ml でおよそ区別された 6) 基礎研究では PTH 抵抗性のメカニズムの一端がわが国を中心に解明されている 7) 副甲状腺摘出術ラットに正常量の PTH を注射することでミネラル代謝の影響を受けないモデルが作製された そこに種々の程度の腎摘出術を行うと, 腎障害の程度に相関して骨形成速度が低下, 骨芽細胞面の減少と, 骨芽細胞面に PTH 受容体の発現低下を認めた それら腎障害による骨形成障害は PTH の補充の増加により改善した 8) PTH 抵抗性を増大させる原因の一つに尿毒症物質の影響が示唆されている p-クレシル硫酸は PTH による骨芽細胞 cyclic adenosine3,5 monophosphate と reactive oxygen species の産生を抑制し, プロベネシドで p-クレシル硫酸と organic anion transporter 3 の反応を阻害するとその作用は減弱した 9) その原因として p-クレシル硫酸による骨芽細胞の成熟抑制とこれに伴う PTH 受容体の発現抑制,JNK/p38 MAPK 経路の活性が示された 9) 現実的に CKD 患者全般の骨組織を病理学的に評価することは難しく,KDIGO ガイドラインでは, 予期せぬ骨折, 難治性の高カルシウム血症, 二次性副甲状腺機能亢進症治療に非典型的な反応を示す場合, 骨軟化症の疑い, 標準的治療にもかかわらず骨密度が低下していく症例などに限って骨生検の実施を考慮するよう記されている 10) そのため CKD 患者の骨代謝異常を推定するためには,PTH 抵抗性も考慮して, いくつかの骨代謝マーカーが臨床で用いられている PTH は実臨床で骨回転を把握する最もエビデンスが あり汎用性のある骨代謝マーカーであるが, それ以外の骨代謝マーカーには骨型アルカリホスファターゼ (bone-specific alkaline phosphatase:bap), tartrate-resistant acid phosphatase 5b(TRACP-5b), I 型プロコラーゲン-N-プロペプチド ( N-terminal domain of the propeptide of procollagen I: P1NP),I 型コラーゲン-C-テロペプチド (C-telopeptide of type I collagen:ctx) などがあげられる 11) BAP は骨形成過程で骨芽細胞から産生される 作用としてピロリン酸塩を不活化させることで骨石灰化を促進する BAP は透析患者の骨折との関連が報告される 12) とともに心血管病, 生命予後にも関連する 13,14) 前述した透析患者の骨組織と骨代謝マーカーとの関連についての検討では, 骨形成速度が低値, 正常, そして高値の BAP 値はそれぞれ 28.2(18.0 ~ 46.2), 33.7 (60.0 ~ 118.0), そして 63.3 (42.3 ~ 116.8)U/ L であった ( 表 1) 6) また低骨形成, 高骨形成は BAP <33.1 U/L と > 42.1 U/L でおよそ区別された 6) P1NP は骨を構成するプロコラーゲン I が骨芽細胞から産生された後の成熟過程で切断され血中に放出された N 末端フラグメントであり骨形成マーカーである P1NP は健常者で 3 量体を形成している場合が多い (intact P1NP) が,CKD 患者では単量体として存在している割合が高い 透析患者の骨形成速度が低値, 正常そして高値の P1NP 値はそれぞれ 348.3(183.1 ~ 599.6), 483.7(207.1 ~ 786.4) そして 787.0(523.7 ~ 992.2)ng/ ml であり ( 表 1), 低骨形成, 高骨形成は P1NP< 498.9 ng/ ml と >621.1 ng/ml でおよそ区別された 6) CTX は破骨細胞のみが持つ蛋白分解酵素 cathepsin K によって切断された I 型コラーゲンの C 端フラグメントであり, したがって特異的な破骨細胞活動の証左, すなわち骨吸収マーカーであるとされる しかし, サーカディアンリズムがあること, 腎機能に代謝が依存することから,CKD 患者での測定は強くは勧められない 一方,TRACP-5b は活性化した破骨細胞から産生される酵素で骨吸収マーカーとなる 実験的に RANKL によって破骨細胞様細胞から産生される TRACP-

128 CKD 患者の骨代謝異常 5b は細胞の大きさと数に関連する 15) TRACP-5b 測定は腎機能に影響されず, 透析患者にも使用できる CKD による骨強度低下 : 尿毒症性骨粗鬆症 CKD は骨強度を低下させると考えられている 骨強度は骨量と骨質で規定されているため, 骨量だけでなく骨質も異常が生じた結果, 骨強度が低下し骨折のリスクが増大する一因となる 臨床的には CKD 患者の骨密度の低下は腎機能障害の程度と相関することが古くから知られている 16) 透析患者の皮質骨と海綿骨の骨量の変化を 2 年間観察すると, 定量的 CT で測定した大腿骨の総骨密度の変化は-5.9% であり, 皮質骨は-10.0%, 海綿骨は +5.9% であった 17) 骨量の低下は透析期間が短い患者, 調査開始時の骨密度が高値の患者でより大きく現われた 17) これは主に PTH の骨作用を反映していると考えられるが, この報告の研究対象はわが国の感覚では副甲状腺機能亢進 高回転骨の症例が多く, 透析患者一般に当てはまる知見であるかどうかはわからない しかし, わが国から報告された検討では, 骨密度低下は透析患者で骨折の発症に関連があることが報告され 12),KDIGO ガイドラインでも骨密度の評価の重要性が強調されている 10) 骨密度測定の重要性が強調された一方で, 骨量が低下した際の治療方針は確立されておらず, ガイドラインにも記載はない 骨質を評価する臨床検査は現時点で一般的でないが, いくつかの基礎および臨床研究から骨質異常は骨量と同等あるいはそれ以上に CKD で低下する骨強度に大きく影響していることが示唆されている マイクロフォーカス三次元 X 線 CT で CKD 患者骨組織を解析すると, 海綿骨量は骨形成や石灰化に関連せず骨梁の接続性に関連していた 18) 海綿骨スコアは二重エネルギー X 線吸収測定法の画像における各画素の濃度変動を表わすテクスチャー指標で, 骨微細構造の簡便な評価法として普及が進められている 40 歳以上の症例 1,426 例 (egfr < 60 ml/ 分 /1.73 m 2,199 例 ) を 4.7 年間観察したところ, 腰椎の海綿骨スコアの低下は CKD 患者で骨折の増加と関連した 19) 基礎研究では, 腎障害ラットモデルの大腿骨骨密度は軽度低下を認めるのみであったが, 骨動的粘弾性は腎機能障害に伴い大きく低下した 20,21) さらに大腿骨皮質骨の化学組成をラマン分光で測定すると, ペントシジン / マトリックス比が増加し, ミネラル / マトリックス比, 酵素性架橋および結晶化度が減少した 一方で, あらかじめ副甲状腺摘出術を行って PTH が増加しない腎障害モデルではペントシジン / マトリックス比の増加と結晶化度の減少 を認めた また, 荷重骨のアパタイト配向性の乱れも腎障害モデルに特異的であった 22) この腎障害ラットモデルに経口吸着炭薬 AST-120 を使用すると, 血中インドキシル硫酸値の低下とともに骨動的粘弾性は部分的に回復した 21) ことから,CKD による骨強度の低下は骨 ミネラル代謝異常のみでは説明できず, 尿毒症物質など他の CKD に関連した要因があると考えられる これらの多彩な要因が複雑に関与して骨強度を低下, 骨粗鬆症を増悪させる病態を 尿毒症性骨粗鬆症 と称する ( 図 ) 23) これまで CKD-MBD 治療が CKD 患者の骨折イベントを減少させる主要な治療と考えられてきたが,CKD 患者の骨強度異常のメカニズムがより詳細に解明されることで尿毒症性骨粗鬆症の重要性が認識されるのではないかと考える CKD 患者の骨折 CKD 患者の骨代謝異常の臨床的アウトカムの一つが骨折である CKD 患者, 特に透析患者の骨折の頻度は一般人口と比較して多いことが国内外の臨床研究で明らかになっている 24,25) わが国の透析患者の骨折発症頻度は他国と比較して低いという意見もあり 25), 近年, 女性透析患者の骨折発症頻度が減少しているものの 26), いまだ十分改善しているとはいえない 骨折は患者の QOL や ADL を損なうだけでなく生命予後に影響することから 25),CKD 患者の骨折予防対策に取り組む必要があり, そのためには CKD- MBD, 尿毒症性骨粗鬆症を含めた骨異常と多くの脆弱性骨折の直接的な引き金となる転倒を誘発するフレイル / サルコペニアなど総合的な治療介入が重要となる CKD-MBD における血清リン, カルシウムおよび PTH 値のターゲットは心血管イベントとそれらの結果としての死亡を改善するべく各ガイドラインで提案されているが, それらに介入した結果, もう一つのアウトカムである骨折リスクも低下するというエビデンスはない 臨床的に血清カルシウム, リン値は骨折の発症に関連がないという報告が多い 27,28) PTH は 300 pg/ml 周辺で大腿骨, 脊椎骨折の発症リスクが少ない 27), あるいは PTH 150 ~ 300 pg/ml と比較して 900 pg/ml 以上であらゆる骨折の相対危険度が 1.72 (1.02 ~ 2.90) に増えるという報告 28) があるが, 一方で PTH と骨折の発症は関連がないという報告 29) もあり一定の見解が得られていない いずれにせよ,CKD 患者の絶対的な骨折リスクの高さに比較すれば, その影響は軽微であると結論せざるをえない 治療介入では Evaluation of cinacalcet HCL therapy to lower cardiovascular events(evolve) 研究

山本卓他 2 名 129 CKD 特異的異常 検査値異常 骨異常 尿毒症性骨粗鬆症 血管石灰化 全身性ミネラル代謝異常 図尿毒症性骨粗鬆症の概念 CKD 患者の骨脆弱性は全身性ミネラル代謝異常による骨異常のほか, 尿毒症物質など CKD に特異的な因子により骨粗鬆症が増悪する ( 尿毒症性骨粗鬆症 ) ( 文献 22 より引用, 改変 ) でカルシウム受容体作動薬シナカルセトの骨折に与える影響が調査された Intention to treat 解析では, シナカルセト使用群のあらゆる骨折発症減少効果を調査全体では認めなかったが,65 歳以上の透析患者内では有意な減少効果を認めた また,Lag-censoring 解析で介入群のシナカルセト内服中止例, 非介入群の同薬使用例, あるいは副甲状腺摘出術例を除いて解析すると, シナカルセトの骨折発症減少の効果を認めた 30) また, 副甲状腺摘出術を行った透析患者は非施行例と比較して大腿骨骨折発症リスクが低下した 31) また, 透析アミロイドーシスに関連する骨囊胞が原因となる大腿骨骨折症例が報告されている 32) 透析アミロイドーシス発症例でβ 2 -ミクログロブリン吸着カラムを使用すると関節症状の軽快のほか, 骨囊胞の縮小が少数例で報告されたが 33), 透析アミロイドーシス治療による骨折抑制効果を示した報告はない 透析アミロイドーシスに関連する骨折は, 病態生理学的には CKD-MBD にも先述の尿毒症性骨粗鬆症にも相当しない, 第三の CKD 関連骨折メカニズムによるものであるといえよう 以上の結果から, CKD-MBD 管理は骨折予防に重要であるかもしれないが, 少なくともそれだけで CKD 患者の一般人口と比較した骨折リスクが解消されるとは考えにくい 一方, 現状の骨粗鬆症治療薬は CKD 患者, 特に透析患者への有効性と安全性に関する報告があまりにも少ない ( 表 2) 34) 血液透析患者で血清 PTH が 1,000 pg/ml 以上の症例に抗 RANKL 抗体であるデノスマブを 6 カ月使用したところ, 大腿骨, 腰椎の骨密度がそれぞれ 23.7%,17.1% 増加した 35) 骨量増加効果はありそうであるが, 血清カルシウムを減少させることによる PTH 増加作用もあり, 過度な変動には注意したい PTH1-34 製剤であるテリパラチドを PTH 60 pg/ml 未満の血液透析患者に使用したところ, 腰椎骨密度の増加を認めた 36) しかし, この研究では有害事象による中止例も多く, 安全性の確認が必要である 活性型ビタミン D 製剤エルデカルシトールを閉経後女性の血液透析患者に使用すると, ベースラインの低骨密度症例で骨密度の増加を認めた 37) 活性型ビタミン D は骨粗鬆症治療のほか PTH 低下作用もあり, 効果については今後知見の積み重ねが必要であるが, 使用しやすい治療であると思われる いずれの骨粗鬆症治療薬も不完全なサロゲートマーカーである骨密度への影響を調査したもので, 直接的なアウトカムである骨折に関する検証はない そのほか, 血液透析患者で intact PTH 値 >180 pg/ml かつ / または活性型ビタミン D 製剤と活性型ビタミン D アナログ製剤を使用して

130 CKD 患者の骨代謝異常 薬物 表 2 CKD 患者に対する骨粗鬆症治療薬 保存期腎不全 egfr 35 ml/ 分 /1.7 3m 2 egfr<35 ml/ 分 /1.7 3m 2 透析 (CKD ステージ 5D) L-アスパラギン酸カルシウム 使用回避 (C) 使用回避 (C) ( 要カルシウム濃度チェック ) アルファカルシドール, カルシトリオール エルデカルシトール SERM( ラロキシフェン, バゼドキシフェン ) 病態に応じ使用量を変更 (A) 血清カルシウム濃度上昇に特に注意 (B) ビスホスホネート薬 アレンドロネート 使用回避 (C) (egfr<35 は使用回避 ) エルカトニン リセドロネート (egfr<30 は使用回避 ) ミノドロン酸 エチドロネート イバンドロネート 使用回避 (C) 通常投与量可能 (A) 使用回避 (C) デノスマブ( 重度の腎障害患者は低カルシウム血症を起こす恐れが強い ) 副甲状腺ホルモン薬 A: 通常投与量可能,B: 注意して投与,C: 投与不可, その他の薬物は注意情報なし ( 文献 33 より引用 ) いた患者を前向きに検討すると, アンジオテンシン変換酵素阻害薬 / アンジオテンシン II 受容体拮抗薬を使用していた患者群は非使用群と比較して骨折のリスクが低下したこと 38), 低重炭酸血症を伴う患者群で骨折のリスクが増大したこと 39) が報告されており, レニン アンジオテンシン系や代謝性アシドーシスへの介入による透析患者の骨折改善の可能性が示唆された おわりに CKD 患者の骨代謝異常は, 二次性副甲状腺機能亢進症や尿毒症物質の作用などにより複合的な病態を示す 近年の研究成果からガイドラインで国際的な見識がまとめられ, CKD-MBD 治療と骨粗鬆症対策が CKD 患者の骨にアプローチする主な骨折予防対策になりそうである CKD 患者, 特に透析患者への骨粗鬆症治療薬の効果と安全性のエビデンスが蓄積され, 骨粗鬆症治療が積極的に行われるようになること, フレイル / サルコペニア対策で転倒予防を行うことなど, 総合的に対応することで骨折頻度がさらに減少するのではないかと期待したい 利益相反自己申告 : 申告すべきものなし 文献 1. Lin DPL, Carnagarin R, Dharmarajan A, Dass CR. Transdifferentiation of myoblasts into osteoblasts - possible use for bone therapy. J Pharm Pharmacol 2017;69 (12): 1661-1671. 2. 竹田秀. 骨代謝の調節機構. 日腎会誌 2014;56 (8):1188-1195. 3. Park JH, Lee NK, Lee SY. Current understanding of RANK signaling in osteoclast differentiation and maturation. Mol Cells 2017;40 (10): 706-713. 4. Carrillo-Lopez N, Panizo S, Alonso-Montes C, Roman-Garcia P, Rodriguez I, Martinez-Salgado C, Dusso AS, Naves M, Cannata- Andia JB. Direct inhibition of osteoblastic Wnt pathway by fibroblast growth factor 23 contributes to bone loss in chronic kidney disease. Kidney Int 2016;90 (1): 77-89. 5. Komaba H, Kaludjerovic J, Hu DZ, Nagano K, Amano K, Ide N, Sato T, Densmore MJ, Hanai JI, Olauson H, Bellido T, Larsson TE, Baron R, Lanske B. Klotho expression in osteocytes regulates bone metabolism and controls bone formation. Kidney Int 2017;92 (3): 599-611. 6. Sprague SM, Bellorin-Font E, Jorgetti V, Carvalho AB, Malluche HH, Ferreira A, D'Haese PC, Drueke TB, Du H, Manley T, Rojas E, Moe SM. Diagnostic accuracy of bone turnover markers and bone histology in patients with CKD treated by dialysis. Am J Kidney Dis 2016;67 (4): 559-566. 7. Fukagawa M, Kazama JJ, Shigematsu T. Skeletal resistance to pth as a basic abnormality underlying uremic bone diseases. Am J

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