( 睡 眠 障 害 の 漢 方 治 療 とサプリメント 星 和 書 店, 東 京,2004 より 一 部 抜 粋 修 正 ) 不 眠 症 のためのサプリメントおよび 食 品 Anzai & Associates 安 西 英 雄 はじめに 睡 眠 は 単 なる 活 動 の 休 止 ではない 睡 眠 時 に 人 は 覚 醒 時 とは 大 きく 異 なった 生 命 活 動 を 行 う 睡 眠 に は 代 謝 の 促 進 傷 病 治 癒 の 促 進 記 憶 情 報 の 再 構 成 感 情 の 浄 化 認 識 の 深 化 など 多 くの 重 要 な 価 値 があるが 多 忙 な 現 代 生 活 ではこれらは 往 々にして 軽 視 されやすい ストレスや 生 活 の 不 規 則 さがあい まって 睡 眠 の 質 と 量 は 低 下 し 慢 性 的 な 睡 眠 不 足 の 状 態 にある 人 は 少 なくないと 思 われる 眠 りたくとも 思 うように 眠 れず それが 苦 痛 になると 不 眠 症 の 段 階 に 入 る 不 眠 は 生 活 の 質 を 低 下 さ せ 心 身 の 健 康 が 脅 かされる 不 眠 が 重 度 になるとついには 社 会 生 活 に 支 障 をきたすことにもなりかね ない 睡 眠 の 不 足 や 不 眠 症 は 軽 度 のうちに 対 応 したいものである 安 眠 のためのサプリメントとして 日 本 で 知 名 度 が 高 いのは メラトニンやカモミールなどのハーブテ ィーであろう だが 欧 米 諸 国 はもっと 多 様 なサプリメントやハーブを 安 眠 のために 活 用 している 近 年 海 外 のサプリメントが 海 外 旅 行 の 土 産 として あるいは 個 人 輸 入 などの 手 段 により 容 易 に 入 手 できるよ うになった しかしそれらを 安 全 かつ 有 効 に 使 用 するための 基 本 的 な 情 報 も 適 切 に 提 供 されているとは 言 いがたい 本 稿 では 欧 米 で 不 眠 症 に 用 いられている 主 なサプリメントを 取 り 上 げ その 背 景 科 学 的 な 根 拠 の 程 度 使 用 上 の 注 意 などについて 説 明 する 大 部 分 のハーブはサプリメントとしてばかりでなくハーブテ ィーとしても 用 いられているが ここではサプリメントに 含 める さらに 不 眠 症 に 影 響 を 与 える 可 能 性 のある 食 品 についても 解 説 する 不 眠 症 とサプリメント メラトニン バレリアン カバ セントジョンズワート ジンセン カモミール パッションフラワー ホップ レモンバーム ビタミンB 群 カルシウムとマグネシウム 5-HTP(5-ヒドロキシトリプトファン) 不 眠 症 と 食 品 不 眠 症 に 良 い 食 品 トリプトファン 含 有 食 品 ビタミン B 群 含 有 食 品 レタス 避 けたほうが 良 い 食 品 カフェイン タバコ アルコール チラミン 含 有 食 品 就 寝 前 の 食 事
1. 不 眠 症 とサプリメント メラトニン(Melatonin) メラトニンは 脳 の 松 果 腺 で 作 られるホルモンで 概 日 周 期 を 調 節 し 光 周 性 ( 日 照 時 間 の 長 さ に 関 連 した 生 物 の 季 節 行 動 )を 調 節 する 両 生 類 も 植 物 も 同 じホルモンを 作 る 不 眠 症 海 外 旅 行 時 の 時 差 症 候 群 (ジェットラグ) 夜 勤 による 睡 眠 リズム 障 害 などに 広 く 用 い られる 通 常 3mg までを 就 寝 前 に 服 用 する 米 国 ではサプリメントだが 日 本 では 未 承 認 の 医 薬 品 という 扱 い 欧 州 の 多 くの 国 で 医 薬 品 とし て 扱 われている 不 眠 症 患 者 の 睡 眠 導 入 時 間 を 短 縮 し 睡 眠 の 質 を 向 上 させるという 二 重 盲 検 データがいくつかあ るが 否 定 的 な 結 果 も 同 様 に 得 られている ベンゾジアゼピンを 長 期 間 常 用 している 不 眠 症 患 者 の 薬 剤 からの 離 脱 を 有 意 に 促 進 したという 二 重 盲 検 の 報 告 があるが プラセボと 差 がなかったと する 報 告 もある 時 差 症 候 群 については EBM(Evidence-Based Medicine)の 総 本 山 であるコクラン 共 同 計 画 が 体 系 的 に 臨 床 論 文 のレビューを 行 い メラトニンは 時 差 症 候 群 の 予 防 と 治 療 に 著 しく 有 効 である と 報 告 している がんや 免 疫 疾 患 に 対 する 効 果 を 支 持 するデータもあるがまだ 不 十 分 である 抗 老 化 循 環 器 疾 患 の 改 善 や 予 防 うつ 病 や 季 節 性 の 感 情 障 害 への 効 果 性 機 能 障 害 への 効 果 などがうたわれてい るが いずれも 十 分 な 根 拠 がない 副 作 用 としては 胃 部 不 快 感 朝 の 疲 労 感 日 中 の 二 日 酔 い 気 分 頭 痛 頭 重 うつ 無 気 力 見 当 識 障 害 記 憶 喪 失 不 妊 発 作 失 調 の 増 加 男 性 の 性 欲 減 退 低 体 温 網 膜 障 害 女 性 化 乳 房 精 子 数 減 少 などが 報 告 されている 次 の 人 には 使 用 が 勧 められない 小 児 妊 娠 中 授 乳 中 の 女 性 うつ 病 の 人 機 械 を 扱 う 人 妊 娠 希 望 の 人 発 作 失 調 のある 人 65 歳 以 上 で 鎮 静 剤 やアルコールを 服 用 している 人 は 使 用 にあ たり 注 意 すべきである バレリアン(Valerian) Valeriana officinalis L.(オミナエシ 科 セイヨウカノコソウ)の 根 不 眠 症 に 用 いる 代 表 的 な 西 洋 生 薬 で ギリシャ ローマ 時 代 からその 薬 効 は 知 られ ヒポクラテスやガレヌスもバレリアンを 治 療 に 用 いていた 不 眠 症 全 般 に 広 く 用 いられる 日 本 や 米 国 ではサプリメント( 食 品 )だが ドイツなど 欧 州 のいくつかの 国 では 医 薬 品 として 承 認 されている ドイツの 医 薬 品 再 評 価 委 員 会 であるコミッション E が 承 認 した 適 応 症 は 不 穏 状 態 精 神 的 な 状 態 による 睡 眠 障 害
不 眠 症 に 対 するバレリアンの 効 果 を 検 討 したプラセボ 対 照 の 二 重 盲 検 試 験 がこれまで 20 近 く 行 われている おおむね 睡 眠 導 入 時 間 が 短 縮 し 睡 眠 の 質 が 改 善 するなどの 結 果 が 得 られている 効 果 発 現 は 比 較 的 遅 く 2 3 週 から 数 週 間 かかることもあるが 依 存 性 がなく 安 全 である バレリアンには 特 記 すべき 重 篤 な 副 作 用 はない まれに 胃 部 不 快 感 や 接 触 性 皮 膚 炎 がある 長 期 連 用 により 頭 痛 不 眠 散 瞳 などが 起 きることがある バレリアンは 他 の 中 枢 性 鎮 静 剤 (バルビツール 剤 ベンゾジアゼピン)の 作 用 を 増 強 する ア ルコールとの 併 用 も 勧 められない バレリアン 服 用 後 数 時 間 は 機 械 の 操 作 や 車 の 運 転 は 避 けるべ きである カバ(Kava) Piper methysticum G. Foster(コショウ 科 カバ)の 根 茎 古 くから 南 太 平 洋 の 島 々で 儀 礼 の 際 に 精 神 を 安 定 させ 意 識 を 澄 明 にする 飲 料 として 用 いられてきた 精 神 の 興 奮 緊 張 不 安 などによる 不 眠 に 用 いられる 米 国 ではサプリメントだが 日 本 では 未 承 認 の 医 薬 品 という 扱 い ドイツは 医 薬 品 として 認 めて いる コミッション E モノグラフの 適 応 症 は 精 神 的 な 不 安 ストレス 不 穏 状 態 不 安 障 害 に 対 し 10 ほどの 二 重 盲 検 試 験 が 行 われ カバの 効 果 がプラセボに 対 し 有 意 に 優 れてい ること あるいは 通 常 の 抗 不 安 剤 の 効 果 と 差 がないことが 報 告 されている コクラン 共 同 計 画 も カバは 不 安 障 害 に 対 しプラセボよりも 有 効 のようである と 報 告 している 妊 娠 中 授 乳 中 内 因 性 うつ 病 の 患 者 には 禁 忌 長 期 連 用 すると 皮 膚 髪 爪 などが 一 時 的 に 黄 色 くなることがある そのような 場 合 は 使 用 を 中 止 する 中 枢 性 の 薬 剤 (アルコール バルビツール 剤 その 他 の 向 精 神 薬 など)の 作 用 を 増 強 する 可 能 性 がある 医 師 の 指 示 無 く 3 ヶ 月 以 上 連 用 しないこと 機 械 操 作 や 運 転 における 運 動 反 射 や 判 断 に 影 響 を 与 えることがある 備 考 カバを 継 続 服 用 して 重 度 の 肝 障 害 を 起 こしたとされる 例 が 世 界 で 数 十 例 報 告 され 2001 年 末 か ら 世 界 のいくつかの 国 は 販 売 禁 止 などの 措 置 をとった 米 国 は 消 費 者 と 医 療 専 門 家 に 向 けて 警 報 を 発 し 日 本 は 行 政 内 部 で 注 意 を 喚 起 する 通 知 を 出 した( 日 本 では 市 販 されていないため) 詳 細 に 検 討 すると 大 部 分 の 副 作 用 症 例 において 情 報 が 不 十 分 で カバとの 因 果 関 係 が 必 ずしも 明 らかではないらしいし この 10 年 間 に 欧 州 で 販 売 された 量 (2 億 5000 万 回 の 服 用 分 )と 比 較 す ると 頻 度 は 極 めて 低 い とはいえ 服 用 に 際 しては 上 記 のことを 意 識 におくべきである セントジョンズワート(St. John s Wort) Hypericum perforatum L.(オトギリソウ 科 セイヨウオトギリソウ)の 地 上 部 ローマ 時 代 から 病 気 や 邪 悪 なものを 遠 ざける 力 があると 信 じられ 感 染 症 やうつ 不 安 不 眠 などに 用 いられてき
た 聖 ヨハネの 祭 日 (6 月 24 日 ) 頃 に 花 が 満 開 になるので 聖 ヨハネの 植 物 という 名 がついたとさ れる 気 持 ちの 落 ち 込 みによる 不 眠 に 用 いられる 日 本 と 米 国 ではサプリメント( 食 品 )だがドイツは 医 薬 品 として 承 認 し うつ 病 に 対 しては 現 代 薬 よりセントジョンズワートのほうを 繁 用 している コミッション E モノグラフの 適 応 症 は 内 用 剤 として: 精 神 自 律 神 経 系 の 障 害 うつ 状 態 不 安 精 神 不 穏 に 油 性 製 剤 は 消 化 不 良 に 外 用 剤 として: 油 性 製 剤 は 打 撲 傷 筋 肉 痛 第 1 度 火 傷 に 30 ほどの 二 重 盲 検 試 験 が 行 われており 軽 度 から 中 等 度 のうつ 病 への 効 果 が 確 認 されている しかもプロザックやイミプラミンなどの 抗 うつ 剤 と 有 効 性 に 統 計 的 に 差 が 無 く 副 作 用 が 少 ない という 結 果 も 得 られている だが 最 近 行 われた 重 度 のうつ 病 に 対 する 二 重 盲 検 試 験 では 有 効 性 が 示 せなかった コクラン 共 同 計 画 は セントジョンズワートは 軽 症 からやや 重 度 のうつ 病 に 対 し プラセボより 有 効 だという 根 拠 がある 他 の 抗 うつ 薬 と 同 程 度 に 有 効 であるというには 根 拠 が 足 りない としている 通 常 の 使 用 をする 限 り 認 めるべき 副 作 用 は 報 告 されていない タンニン 分 が 含 まれるので 胃 部 不 快 感 を 引 き 起 こすことがある 野 生 のセントジョンズワートを 大 量 に 食 べた 家 畜 が 光 過 敏 症 に なることがあり したがって 皮 膚 の 敏 感 な 人 は 直 射 日 光 に 注 意 すべきである セントジョンズワートは 薬 物 代 謝 酵 素 であるチトクロームP450( 特 にサブタイプの CYP3A4 と CYP1A2)を 誘 導 し 多 くの 薬 剤 の 代 謝 に 影 響 を 及 ぼす したがって 他 の 薬 剤 との 併 用 は 基 本 的 に 避 けるべきである ジンセン(Ginseng) Panax ginseng C.A.Meyer(ウコギ 科 オタネニンジン)の 根 わが 国 では 薬 用 人 参 朝 鮮 人 参 高 麗 人 参 などと 呼 ばれ 古 くから 滋 養 強 壮 抗 ストレスに 用 いられてきた 調 製 法 の 違 いによって 紅 参 あるいは 白 参 と 呼 ばれることもある アジアの 国 々ばかりでなく 欧 米 でもその 薬 効 は 良 く 知 られており 最 も 古 い 最 もよく 研 究 された 薬 用 植 物 のひとつである 心 身 の 疲 労 やストレスによる 不 眠 に 用 いられる ジンセンは 日 本 では 医 薬 品 にもサプリメントにも 使 われている 米 国 ではサプリメント ドイ ツは 医 薬 品 として 承 認 コミッション E モノグラフの 適 応 症 は 疲 労 衰 弱 仕 事 の 能 率 や 集 中 力 の 衰 え 病 後 回 復 期 の 強 壮 剤 20 ほどのプラセボ 対 照 二 重 盲 検 試 験 が 様 々な 適 応 症 について 行 われているが 有 効 とする 報 告 と 無 効 とするものが 相 半 ばしており 一 定 の 結 果 は 得 られていない 睡 眠 障 害 への 薬 効 評 価 を 主 目 的 とした 試 験 は 行 われていない 関 連 のあるものとしては QOL ( 生 活 の 質 )の 改 善 を 検 討 した 二 重 盲 検 試 験 が 10 ほどあり おおむね 有 意 な 改 善 を 報 告 している しかし 若 い 健 常 人 への 心 理 的 な 作 用 を 検 討 した 二 重 盲 検 試 験 では 影 響 は 全 く 見 られなかった
中 枢 興 奮 作 用 が 現 れ 不 眠 になることがあるので 午 前 中 に 服 用 するのが 良 い 長 期 連 用 高 用 量 の 使 用 やカフェインとの 併 用 によって 血 圧 上 昇 がみられることがある 東 洋 医 学 においても 体 力 の 充 実 した 人 へのジンセンの 投 与 は 注 意 することとされている アメリカニンジン 田 七 人 参 竹 節 人 参 は 上 に 述 べたジンセンと 同 じウコギ 科 Panax 属 の 植 物 で 種 が 異 なる シベリアニンジンはウコギ 科 Eleutherococcus(Acanthopanax) 属 の 植 物 それぞれ 少 しずつ 薬 効 は 異 なる 不 眠 に 用 いることがあるがジンセン 同 様 に 午 前 中 の 服 用 が 奨 められる カモミール(Chamomile) Matricaria recutita L.(キク 科 カミツレ)の 頭 花 ジャーマンカモミールとも 呼 ばれる 神 経 障 害 消 化 器 疾 患 鼻 のどの 炎 症 月 経 障 害 などに 古 くからお 茶 として あるいは 浴 槽 に 入 れるなど して 用 いられてきた 不 眠 多 くはハーブティーとして 用 いる 日 本 と 米 国 ではサプリメント( 食 品 )だがドイツは 医 薬 品 として 承 認 コミッション E モノグ ラフの 適 応 症 は 外 用 剤 として: 皮 膚 粘 膜 口 腔 肛 門 性 器 部 の 炎 症 や 感 染 内 用 剤 として: 消 化 管 のれん 縮 炎 症 不 眠 や 鎮 静 などの 用 途 では 承 認 されていないことは 着 目 すべきであろう 消 化 器 系 疾 患 抗 炎 症 創 傷 治 癒 などの 二 重 盲 検 試 験 はあるが 不 眠 を 対 象 とした 二 重 盲 検 試 験 は 報 告 されていない キク 科 の 植 物 にアレルギー 反 応 を 示 す 人 花 粉 症 の 人 には 過 敏 反 応 を 引 き 起 こすことがあり 注 意 すべきである 水 酸 化 クマリンを 含 有 するためワーファリンとの 併 用 には 注 意 すべきである ベンゾジアゼピ ンやアルコールとの 併 用 も 避 けるべきである 名 前 の 似 たローマンカモミール(Chamaemelum nobile)はコミッション E の 再 承 認 が 得 られな かった パッションフラワー(Passion Flower) Passiflora incarnate L.(トケイソウ 科 チャボトケイソウ)の 地 上 部 アメリカ 大 陸 が 原 産 でアス テカ 文 明 の 頃 から 鎮 静 不 眠 などに 用 いられてきた スペイン 人 によって 花 の 美 しさと 薬 効 が 欧 州 に 伝 えられ 広 まった 花 の 形 状 がキリストの 受 難 (パッション)を 連 想 させるのでその 名 がつ いたという 不 眠 日 本 と 米 国 ではサプリメント( 食 品 )だがドイツは 医 薬 品 として 承 認 コミッション E モノグ ラフの 適 応 症 は 精 神 的 な 不 穏 状 態
パッションフラワーは 他 の 生 薬 と 配 合 して 用 いられるため 単 味 生 薬 での 臨 床 試 験 データは 少 ない 単 味 生 薬 としては 全 般 性 不 安 障 害 に 対 しオキサゼパムと 差 のない 有 効 性 を 示 したという 二 重 盲 検 試 験 がある またクロニジンによる 麻 薬 からの 離 脱 療 法 においてパッションフラワーの 併 用 が 有 用 であるという 二 重 盲 検 データもあり 中 枢 性 の 作 用 があることは 確 かなようである バレリアンなど 他 の 生 薬 との 配 合 で 不 安 を 伴 う 適 応 障 害 に 対 する 二 重 盲 検 試 験 を 行 い プラセボ より 優 れていたとするデータもある 通 常 の 用 法 用 量 において 特 に 注 意 すべきことは 認 められていない ホップ(Hops) Humulus lupulus L.(クワ 科 ホップ)の 球 果 歴 史 的 に 欧 州 で 健 胃 剤 として また 不 眠 症 にはお 茶 として 飲 んだり 乾 燥 ホップを 枕 に 詰 めるなどして 用 いられてきた 不 眠 日 本 や 米 国 ではサプリメント( 食 品 )だがドイツは 医 薬 品 として 承 認 コミッション E モノグ ラフの 適 応 症 は 不 穏 状 態 不 安 睡 眠 障 害 などの 気 分 障 害 ホップ 単 独 での 二 重 盲 検 試 験 データはなく バレリアンとの 併 用 で 効 果 があったという 報 告 が ある ビール 醸 造 でホップ 粉 に 接 する 機 会 の 多 い 労 働 者 には 過 敏 症 が 見 られることがある ビールを 飲 めばホップが 摂 取 できるが 同 時 にアルコールが 安 眠 を 妨 げるので 勧 められない レモンバーム(Lemon Balm) Melissa officinalis L.(シソ 科 メリッサ)の 葉 コウスイハッカ セイヨウヤマハッカとも 呼 ばれ る 不 眠 日 本 と 米 国 ではサプリメント( 食 品 )だがドイツは 医 薬 品 として 承 認 コミッション E モノグ ラフの 適 応 症 は 精 神 的 な 睡 眠 障 害 機 能 性 の 消 化 器 疾 患 古 くから 鼻 やのどの 炎 症 頭 痛 発 熱 インフルエンザ 歯 痛 鼓 腸 発 汗 促 進 鎮 静 不 眠 などに 用 いられた レモンに 似 た 香 味 を 好 んで 食 用 のスパイスとしても 用 いられる 不 眠 症 に 対 する 二 重 盲 検 試 験 は 行 われていない アルツハイマー 病 や 重 度 の 痴 呆 症 患 者 に 対 し 認 知 機 能 や 動 揺 を 改 善 したという 二 重 盲 検 試 験 がいくつかある 若 い 健 常 人 の 気 分 記 憶 集 中 力 をプラセボより 有 意 に 改 善 したとする 報 告 もある
通 常 の 使 用 をする 限 り 特 に 注 意 点 は 見 当 たらない ビタミンB 群 (Vitamin B) 近 頃 では 一 昔 前 のようにはっきりしたビタミン 欠 乏 症 が 現 れることは 少 ないが 必 要 とされる ビタミンを 毎 日 の 食 事 でまんべんなく 摂 取 することはけして 容 易 なことではない 食 材 自 体 のビ タミン ミネラル 含 量 が 2 30 年 前 に 比 較 するとかなり 低 下 しており 食 生 活 の 偏 りがそれに 輪 を かけている その 結 果 潜 在 的 なビタミン 不 足 を 生 じ 心 身 に 不 調 を 来 たしている 人 は 少 なくないと 思 われる ビタミンB 群 は 生 体 の 様 々な 働 きに 深 く 関 与 しているので その 不 足 の 影 響 は 多 方 面 に 現 れる 精 神 神 経 系 に 対 しては 自 律 神 経 系 や 脳 機 能 の 失 調 を 引 き 起 こし その 結 果 睡 眠 に 悪 影 響 を 与 えて いることがある ビタミンBB1 B 6B BB12 ナイアシン パントテン 酸 などの 服 用 は ビタミン 不 足 によるそれらの 症 状 を 改 善 し 安 眠 を 促 進 する ビタミン B 群 は 人 によっては 気 分 を 高 揚 させるので 朝 のうちに 服 用 すべきである カルシウムとマグネシウム(Calcium, Magnesium) カルシウムもマグネシウムも 神 経 の 興 奮 を 鎮 め 精 神 を 安 定 させる 作 用 がある 不 足 すると 神 経 過 敏 情 緒 不 安 定 不 眠 とともに 筋 肉 のけいれんや 硬 直 などをもたらすことがある 日 本 人 の 平 均 カルシウム 摂 取 量 は 一 日 所 要 量 を 大 きく 下 回 っている カルシウムとマグネシウ ムを 補 うことで 神 経 が 休 まり 安 眠 を 促 進 する 効 果 がある 5-HTP(5-ヒドロキシトリプトファン) 5-HTP は 日 本 では 未 承 認 医 薬 品 という 扱 いを 受 ける 5-HTP は 体 内 で 代 謝 されてセロトニンに 変 わる セロトニンは 松 果 腺 で 2 段 階 を 経 てメラトニンになる このため 5-HTP はうつ 状 態 を 改 善 し 睡 眠 効 果 もあるとされている 高 用 量 の 5-HTP は 末 梢 でセロトニンに 変 わり セロトニン 過 剰 による 副 作 用 ( 悪 心 嘔 吐 食 欲 不 振 下 痢 呼 吸 困 難 瞳 孔 拡 大 過 敏 反 射 筋 運 動 の 失 調 かすみ 目 など)を 招 く 欧 州 で は 5-HTP を 投 与 するときは 末 梢 でのセロトニンへの 転 換 を 阻 害 するカルビドパと 必 ず 併 用 する こととされている 以 上 から 安 易 に 5-HTP をサプリメントとして 服 用 することは 勧 められない 2. 不 眠 症 と 食 品 不 眠 症 には 温 かいミルクを 就 寝 前 に 飲 むのが 良 いと 言 われる また 寝 酒 やナイトキャップと 称 してア ルコールを 摂 ることも 一 般 に 広 く 行 われているが これらは 本 当 に 不 眠 症 に 良 いのだろうか 本 節 では 睡 眠 と 食 品 の 関 係 について 述 べる 1) 不 眠 症 に 良 い 食 品 トリプトファン 含 有 食 品 必 須 アミノ 酸 の 一 つであるトリプトファンは 体 内 に 吸 収 されると 脳 に 運 ばれ 代 謝 されてセロ トニンに 変 わる セロトニンは 鎮 痛 鎮 静 作 用 があり 松 果 腺 でさらに 代 謝 されてメラトニンに なるので 催 眠 効 果 がある したがってトリプトファンを 多 く 含 む 食 品 を 摂 るのは 安 眠 のために 良 い トリプトファンはミルク チーズ 卵 黄 バナナ ナッツ 類 などのタンパク 質 の 豊 富 な 食 品 に
含 まれる ミルクはトリプトファンだけでなくカルシウムも 豊 富 に 含 むので 就 寝 前 のカップ 1 杯 の 温 かいミルクは 良 い 鎮 静 効 果 が 期 待 できる 熟 成 したチーズには 安 眠 を 妨 げるチラミンが 含 まれるので 熟 成 させないカッテージチーズが 良 い 精 製 されていない 全 粒 粉 のパンや 全 粒 穀 物 などの 炭 水 化 物 とともに 摂 取 するとトリプトファン の 吸 収 が 良 くなる ビタミンB 群 含 有 食 品 ビタミン B 群 は 炭 水 化 物 のエネルギー 代 謝 に 重 要 なだけでなく 神 経 系 の 働 きを 助 け 精 神 を 安 定 化 させる 作 用 がある ビタミン B 群 を 多 く 含 む 食 品 は 下 記 の 通 り ビタミンBB1: 小 麦 胚 芽 ヒマワリの 種 ゴマ マイタケ 豚 肉 など ビタミンBB6:ニンニク パセリ 小 麦 胚 芽 ヒマワリの 種 など ビタミンBB12:アマノリ カタクチイワシ アサリ シジミ 赤 貝 など ナイアシン:マイタケ タラコ カツオ ピーナツなど レタス レタスの 睡 眠 作 用 は 欧 米 では 古 くから 知 られている 茎 を 切 った 時 に 出 る 乳 のような 白 い 液 体 はラクチュカリウムと 呼 ばれ 1900 年 前 後 の 英 米 の 薬 局 方 には 鎮 静 鎮 痛 剤 として 掲 載 され ア ヘンの 代 用 品 として 用 いられていた 活 性 成 分 はセスキテルペンのラクトンであるラクチュシン 酸 やラクチュコピクリンなど 葉 よりも 茎 に 多 く 含 まれるのでジュースにすれば 摂 りやすい 2) 避 けたほうが 良 い 食 品 眠 気 を 追 い 払 うためにコーヒーを 飲 むことは 世 界 中 で 広 く 行 われており カフェインに 覚 醒 作 用 があ ることは 良 く 知 られているが その 他 にも 安 眠 のためには 避 けたほうが 良 い 食 品 群 がある 次 に 記 すよ うなものは 神 経 を 刺 激 し 安 眠 を 妨 げるので できるだけ 避 けるべきであろう カフェイン カフェインは 中 枢 神 経 系 を 刺 激 して 活 動 性 を 高 め 精 神 に 高 揚 感 を 与 え 意 識 を 覚 醒 させる ま た 利 尿 効 果 があり 就 寝 前 に 摂 取 すると 夜 間 に 尿 意 を 催 すことにもなるので 安 眠 のためには 原 則 として 避 けるべきである カフェインに 対 する 感 受 性 には 個 人 差 が 大 きく 夜 だけ 避 ければよい 人 もあれば 完 全 にカフェインを 絶 ったほうが 良 い 人 もある カフェインを 含 むものはコーヒーや 紅 茶 緑 茶 だけではない チョコレート コーラなどのソ フトドリンク 疲 労 回 復 のドリンク 剤 にはかなりのカフェインが 含 まれる 風 邪 薬 ダイエット 食 品 鎮 痛 剤 にもカフェインが 含 有 されていることがある タバコ タバコに 含 まれるニコチンは 体 内 に 吸 収 されると 速 やかに 神 経 系 のニコチン 性 アセチルコリ ン 受 容 体 に 結 合 し 中 枢 および 末 梢 神 経 に 複 雑 な 作 用 を 現 す 神 経 を 興 奮 させ 適 度 な 覚 醒 感 や 集 中 感 をもたらしたり 逆 に 過 度 の 緊 張 を 抑 制 しリラックスさせるので それが 快 感 となり 喫 煙 が 習 慣 化 し 依 存 性 を 形 成 しやすい ニコチンへの 依 存 性 は 安 眠 を 妨 げる 就 寝 前 の 最 後 の 喫 煙 の 後 血 中 のニコチンレベルは 急 速 に 低 下 し 禁 断 症 状 が 現 れる 神 経 が 不 穏 になり 睡 眠 は 浅 くなり 早 朝 に 目 覚 めてしまう ヘビー スモーカーの 場 合 には 睡 眠 の 初 期 ステージで 覚 醒 してしまうこともある
アルコール 一 般 にアルコールは 眠 りを 誘 うと 信 じられており 寝 酒 が 習 慣 になっている 人 も 少 なくない 確 かにアルコールは 吸 収 されると 脳 に 達 し 脳 幹 網 様 体 を 抑 制 するので 神 経 の 緊 張 は 解 かれ 入 眠 しやすくなる しかしアルコールの 代 謝 産 物 であるアセトアルデヒドの 血 中 濃 度 が 高 まるとア ドレナリンの 放 出 を 促 して 神 経 が 不 穏 になり REM の 深 い 睡 眠 の 時 間 は 短 くなる また 寝 汗 をか いたり 利 尿 作 用 により 尿 意 を 催 すなど 安 眠 が 妨 げられ 早 朝 覚 醒 を 促 す さらに 飲 酒 が 習 慣 になると 耐 性 が 生 じ より 多 量 に 飲 まないと 入 眠 しにくくなる 進 行 してア ルコール 依 存 症 になると 不 眠 の 程 度 がさらにひどくなり 深 い 睡 眠 にはほとんど 入 れず 夜 中 に 何 度 も 目 を 覚 ます 中 途 覚 醒 が 多 くなる したがってアルコールは 不 眠 症 の 対 策 には 不 適 である 少 なくとも 就 寝 の 2 3 時 間 前 はアルコールを 飲 むべきでない チラミン 含 有 食 品 チラミンはアミノ 酸 のチロシンが 代 謝 されてできるモノアミンで ノルアドレナリンの 遊 離 を 促 進 し 交 感 神 経 を 刺 激 する チラミンは 熟 成 したチーズ(チェダー カマンベール ブルー パ ルメザン モッツァレラ ゴーダチーズなど) 赤 ワイン ビール 鶏 のレバー チョコレート ニシンの 酢 漬 け ナス ホウレンソウ トマトなどに 含 まれるので 不 眠 の 人 はこれらの 食 品 を 夕 食 に 摂 るのは 控 えたほうが 良 いかもしれない 3) 就 寝 前 の 食 事 就 寝 前 に 過 食 すると 消 化 器 系 に 負 担 がかかり 安 眠 が 妨 げられる しかし 空 腹 のまま 就 寝 すると 血 糖 値 を 維 持 するため 副 腎 からアドレナリンが 分 泌 され 神 経 を 興 奮 させるので それも 好 ましくない 空 腹 を 抑 えるためクッキーやケーキのような 精 製 された 糖 分 を 就 寝 前 に 摂 ると 血 糖 値 は 急 上 昇 した 後 低 下 する この 血 糖 低 下 がアドレナリン 分 泌 の 引 き 金 となるので 逆 効 果 となる 全 粒 粉 のパンなどの ような 精 製 されていない 炭 水 化 物 は 睡 眠 中 も 血 糖 値 を 適 度 な 水 準 に 保 つことができ 同 時 にトリプトフ ァンの 吸 収 を 良 くして 脳 内 セロトニンの 濃 度 を 高 めるので 安 眠 のために 良 い おわりに 不 眠 症 の 対 策 としては 早 寝 早 起 きを 習 慣 化 すること 朝 の 外 光 を 浴 び 適 度 な 運 動 をすること 就 寝 前 にリラックスすることなどが 基 本 であるが サプリメントや 食 品 はそれを 助 けることができる これ らを 上 手 に 活 用 すれば 医 薬 品 や 医 師 の 助 けが 必 要 になる 前 に 自 らの 手 で 自 らの 体 調 を 整 えることが できるかも 知 れない 本 稿 が 安 眠 を 求 める 人 への 参 考 になれば 幸 いである 参 考 文 献 1) PDR for Nutritional Supplements, First Edition. Montvale, NJ: Medical Economics Company, Inc., 2001 2) Blumenthal M, et al.: The Complete German Commission E Monographs, Therapeutic Guide to Herbal Medicines. Austin, TX: American Botanical Council, 1998 3) PDR for Herbal Medicines, Second Edition. Montvale, NJ: Medical Economics Company, Inc., 2000