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1 英 国 競 争 法 の 執 行 手 続 日 本 の 独 占 禁 止 法 改 正 に 関 連 して 千 葉 大 学 大 学 院 専 門 法 務 研 究 科 教 授 栗 田 誠 氏 Ⅰ はじめに 本 報 告 の 対 象 は 1998 年 競 争 法 違 反 行 為 ( 日 本 の 独 占 禁 止 法 ( 以 下 独 禁 法 と 略 す )でいう 不 当 な 取 引 制 限 私 的 独 占 及 び 不 公 正 な 取 引 方 法 の 違 反 行 為 類 型 )について 公 正 取 引 庁 (OFT)が 審 査 決 定 する 手 続 及 び OFT の 決 定 に 対 する 上 訴 にかかる 競 争 上 訴 審 判 所 (CAT)の 審 理 手 続 に 限 定 され る 1. 英 国 における 競 争 法 制 度 改 革 1998 年 競 争 法 及 び 2002 年 企 業 法 の 二 つの 法 律 によって EU レベルの 競 争 法 が 整 備 された 実 体 的 には EU 競 争 法 101 条 に 相 当 する 競 争 制 限 的 協 定 の 禁 止 同 102 条 に 相 当 する 市 場 支 配 的 地 位 の 濫 用 の 禁 止 さらに 合 併 規 制 カルテルに 対 しては 重 大 なカルテル 実 行 行 為 者 に 対 する 刑 事 罰 の 導 入 市 場 調 査 という 競 争 問 題 を 包 括 的 に 調 査 し 必 要 に 応 じて 是 正 措 置 を 出 す 仕 組 み 等 よく 整 備 された 仕 組 み となっている 手 続 面 においては EU 競 争 法 の 執 行 手 続 或 いは 執 行 の 体 制 について 欧 州 人 権 条 約 の 関 係 から 見 て 問 題 があるとするのが 英 国 から 見 た 評 価 であると 思 われる 英 国 手 続 の 方 が 関 係 人 の 手 続 上 の 保 障 により 手 厚 い 仕 組 みになっていると 思 われる 2. 英 国 競 争 法 執 行 の 特 徴 英 国 競 争 法 執 行 の 大 きな 特 徴 は 一 つの 問 題 に 対 して 複 数 の 当 局 が 関 わる 仕 組 みである 1 公 正 取 引 庁 は 中 心 的 な 競 争 当 局 であり 競 争 制 限 的 協 定 及 び 市 場 支 配 的 地 位 の 濫 用 の 審 査 決 定 を 行 うほか 合 併 事 件 や 市 場 調 査 を CC に 付 託 する 同 庁 は 消 費 者 法 政 策 も 併 せて 担 当 する 2 分 野 別 規 制 当 局 ( 通 信 関 係 エネルギー 関 係 水 道 鉄 道 航 空 等 )は 所 管 する 規 制 産 業 に 対 する 1998 年 競 争 法 違 反 行 為 の 審 査 決 定 を OFT と 共 管 する 3 競 争 委 員 会 (CC)は OFT 等 の 付 託 を 受 けて 詳 細 な 合 併 審 査 市 場 調 査 を 担 当 する しかし 自 らの 判 断 で 調 査 を 開 始 する 権 限 はない 4 競 争 上 訴 審 判 所 は 競 争 制 限 的 協 定 及 び 市 場 支 配 的 地 位 の 濫 用 に 係 る OFT 等 の 決 定 に 対 する 上 訴 を 担 当 する また 合 併 事 件 の CC の 決 定 や 市 場 調 査 に 係 る CC の 命 令 の 審 査 のほか 損 害 賠 償 請 求 も 担 当 する 5 重 大 不 正 捜 査 局 (SFO)は 刑 事 司 法 組 織 の 一 部 であり OFT とともにカルテル 犯 罪 の 捜 査 訴 追 を 担 当 する 3. 日 本 における 独 禁 法 執 行 手 続 問 題 との 関 連 公 正 取 引 委 員 会 ( 以 下 公 取 委 と 略 す )の 審 判 手 続 の 関 係 では 事 前 手 続 は EU 競 争 法 と 基 本 的 に 同 じであるが 聴 聞 官 制 度 はない 事 後 手 続 は 競 争 法 専 門 の 審 判 所 による 完 全 な 再 審 理 であり EU 競 争 法 手 続 を 凌 ぎ 幅 広 い 審 査 を 行 う 仕 組 みとなっている Ⅱ 英 国 競 争 法 の 執 行 手 続 A 公 正 取 引 庁 における 審 査 決 定 OFT の 審 査 手 続 に 関 する 一 般 向 けの 解 説 資 料 について 2010 年 8 月 に 案 を 公 表 して 一 般 から 意 見 を 募 集 している(Consultation Paper) 1. 端 緒 端 緒 を 入 手 し それについて 予 備 的 な 分 析 を 加 える 審 査 のための 情 報 源 は 職 権 探 知 申 告 である カルテルについては リニエンシー 申 請 が 重 要 な 情 報 源 である 書 面 による 具 体 的 な 申 告 を 行 った 者 違 反 被 疑 行 為 によりその 利 益 が 実 質 的 に 侵 害 されるおそれがある 者 の 要 件 を 満 たす 申 告 人 は 正 式 申 告 人 として OFT の 審 査 決 定 手 続 において 特 別 の 法 的 地 位 が 付 与 される 正 式 申 告 人 は 審 査 開 始 時 に 関 係 人 に 提 供 される 情 報 と 同 様 の 情 報 の 提 供 を 受 けられることがある また 異 議 告 知 書 (SO) について 書 面 で 意 見 を 提 出 する 機 会 が 付 与 される OFT は どの 事 件 を 優 先 して 取 り 上 げるかについて 審 査 のインパクト 戦 略 的 重 要 性 リスク 審 査 リソース 等 を 考 慮 して 審 査 開 始 の 可 否 を 判 断 する 2. 審 査 正 式 に 審 査 を 開 始 し 情 報 要 求 立 入 検 査 により 必 要 な 情 報 を 収 集 して 分 析 する 違 反 事 実 の 概 要 に ついて 暫 定 的 な 結 論 が 出 る 審 査 開 始 に 際 しては 関 係 人 に 対 して 審 査 開 始 通 知 書 を 発 出 することが 1/7

ある 立 入 検 査 等 を 実 施 する 場 合 には その 後 の 早 い 時 期 に 審 査 開 始 通 知 書 を 発 出 する 審 査 の 手 法 は 情 報 文 書 提 出 命 令 令 状 なしの 立 入 検 査 ( 事 業 所 を 対 象 2 日 前 までの 文 書 による 通 知 ) 高 等 法 院 判 事 の 令 状 による 立 入 検 査 ( 住 居 )がある カルテルに 対 する 立 入 検 査 は 令 状 による 敷 地 内 への 立 入 現 物 の 差 し 押 さえ 現 物 の 最 長 3 ヶ 月 間 の 保 持 ができる OFT の 審 査 官 は 従 業 員 等 に 質 問 すること はできず 文 書 の 所 在 場 所 文 書 の 説 明 を 求 めることに 限 られる その 場 合 の 従 業 員 等 は 弁 護 士 の 立 会 を 求 めることができる 弁 護 士 到 着 まで 合 理 的 な 時 間 内 (30 分 或 いは 90 分 EU では 30 分 ) 捜 索 を 待 つことができる 秘 匿 特 権 対 象 は 除 かれる 法 令 違 反 の 自 認 を 求 める 回 答 を 求 めることはできず 事 実 のみ 質 問 できる 集 めた 情 報 を 分 析 して 違 反 の 有 無 を 判 断 審 査 の 過 程 で 当 事 者 に 連 絡 面 談 したりする 審 査 の 結 果 意 味 がない 場 合 には 審 査 を 打 ち 切 る 3. 異 議 告 知 書 (SO) 異 議 告 知 書 を 関 係 人 に 送 付 して 意 見 を 求 める 記 載 事 項 は OFT が 認 定 した 事 実 OFT が 提 起 する 異 議 OFT が 提 案 する 措 置 とその 理 由 秘 密 情 報 の 取 扱 いに 関 する 書 面 による 陳 述 書 面 による 陳 述 を OFT に 提 出 できる 期 限 である SO に 記 載 されていない 問 題 や 証 拠 を 決 定 において 取 り 上 げることはで きないため 記 載 内 容 は 必 然 的 に 詳 細 なものとなる 4.OFT ファイルへのアクセス 関 係 人 は SO に 記 載 されている 事 項 に 関 連 する OFT ファイルにアクセスすることができる 書 面 提 出 期 限 は 6~8 週 間 であり その 期 間 がファイルへのアクセス 可 能 な 期 間 となる 通 常 は 秘 密 情 報 や 内 部 文 書 を 除 外 した DVD が OFT から 提 供 される 5. 陳 述 意 見 は 書 面 で 提 出 する 書 面 提 出 の 際 には 当 該 書 面 に 秘 密 情 報 が 含 まれている 場 合 秘 密 情 報 が 含 まれていない 書 面 と 両 方 を 提 出 する 必 要 がある そうでない 場 合 には 秘 密 情 報 の 取 扱 い 要 求 はない ものとして 扱 われる 要 望 に 応 じて 口 頭 陳 述 もできる EU の 手 続 では 口 頭 陳 述 について 独 立 の 職 員 である 聴 聞 官 が 指 定 されるが 英 国 の 手 続 では 聴 聞 官 は 置 かれておらず 直 接 当 該 審 査 に 従 事 して いない 幹 部 職 員 が 主 宰 する 口 頭 陳 述 は 書 面 陳 述 の 後 に 関 係 人 の 要 求 により 実 施 するものであり 書 面 陳 述 のうち 特 に 強 調 したい 点 を 口 頭 で 陳 述 する 審 査 官 側 からの 質 問 が 最 後 にあるが 回 答 する 義 務 はない 6.OFT の 決 定 以 上 の 手 続 を 経 て 違 反 決 定 或 いは 違 反 なしの 決 定 を 出 す 違 反 決 定 は 極 めて 詳 細 で 数 百 頁 に 上 り 制 裁 金 賦 課 の 場 合 には 算 定 の 基 礎 について 詳 細 に 説 明 されている SO の 発 出 から 決 定 までの 期 間 制 限 はなく 尐 なくとも 半 年 から 1 年 は 必 要 である 違 反 決 定 の 命 令 を 受 けた 事 業 者 は CAT に 上 訴 でき る B 競 争 上 審 判 所 における 再 審 査 1. 概 要 違 反 決 定 を 受 けた 者 は 違 反 行 為 の 有 無 排 除 措 置 に 関 する 指 示 の 内 容 制 裁 金 の 有 無 額 について 2 ヶ 月 以 内 に CAT に 提 訴 することができる CAT における 審 理 は 完 全 な 再 審 理 であり 新 証 拠 の 採 用 証 人 尋 問 についても 寛 大 であり OFT の 決 定 を 取 り 消 すだけでなく 自 ら 判 断 を 示 し 必 要 な 措 置 を 命 じ 制 裁 金 を 増 額 することもできる 競 争 制 限 的 協 定 及 び 市 場 支 配 的 地 位 の 濫 用 については 完 全 な 再 審 査 であるのに 対 して 合 併 等 の 審 査 は 司 法 審 査 とされている 完 全 な 再 審 査 の 場 合 には 大 変 広 範 で あり OFT が 違 反 決 定 の 根 拠 を 立 証 する 必 要 がある 合 併 等 の 審 査 に 場 合 には 提 訴 する 側 が 決 定 の 違 法 を 立 証 する 必 要 がある CAT への 上 訴 により 排 除 措 置 に 関 する 指 示 の 執 行 が 停 止 されるものではな いが 制 裁 金 の 支 払 いは 猶 予 される 2.CAT の 組 織 と 権 限 CAT は 高 等 法 院 と 同 等 の 司 法 機 関 である CAT の 審 判 体 は 法 律 専 門 家 だけではなく エコノミ スト 等 の 関 連 分 野 の 専 門 家 を 含 んでいる 3.CAT の 手 続 2/7

CAT の 手 続 は 民 事 訴 訟 規 則 及 び 欧 州 連 合 一 般 裁 判 所 の 手 続 をモデルとしつつ 当 事 者 の 公 平 費 用 の 節 減 迅 速 公 平 な 心 理 を 確 保 する 見 地 から 異 なる 点 がある CAT の 手 続 は 1 早 期 の 書 面 による 開 示 2 積 極 的 な 事 件 管 理 3 厳 格 な 期 限 設 定 4 実 効 的 な 事 実 認 定 手 続 5 短 期 の 計 画 的 な 口 頭 尋 問 の5つの 基 本 原 則 により 設 計 されている 4. 証 拠 CAT の 審 理 においては 技 術 的 な 証 拠 法 則 より 全 体 的 な 公 正 さの 考 慮 が 重 要 であり 厳 格 な 証 拠 法 則 は 適 用 されない CAT の 手 続 において OFT がなすべき 違 反 行 為 の 立 証 水 準 は 公 式 には 民 事 の 水 準 で あるが 制 裁 金 の 重 大 性 にかんがみて 強 力 かつ 確 信 を 抱 くに 足 る 証 拠 が 必 要 であるとされている カルテル 事 件 では その 特 性 にかんがみ 唯 一 つの 証 拠 或 いは 完 全 な 状 況 証 拠 であっても 事 情 によっ ては 十 分 な 証 拠 と 判 断 されることがある C 裁 判 所 における 司 法 審 査 CAT の 審 決 に 対 しては 控 訴 院 に 対 して 上 訴 することができるが CAT 又 は 控 訴 院 の 許 可 が 必 要 で ある CAT の 許 可 を 得 るには 審 決 言 い 渡 しの 際 に 口 頭 で 或 いは 審 決 後 1 ヶ 月 以 内 に 書 面 で 申 し 立 て る 必 要 がある 上 訴 事 項 は 法 律 問 題 又 は 制 裁 金 事 件 についての 制 裁 金 の 額 に 限 られる Ⅲ 日 本 における 独 禁 法 執 行 手 続 問 題 への 示 唆 1. 英 国 競 争 法 と EU 競 争 法 の 執 行 手 続 の 比 較 英 国 競 争 法 は EU 競 争 法 の 仕 組 みを 実 体 面 でも 手 続 面 でも 取 り 入 れたものとなっており その 解 釈 運 用 も EU 法 のそれに 倣 うことが 明 記 されている 手 続 面 には 違 いも 残 されており 英 国 法 の 見 地 から は EU 競 争 法 の 執 行 手 続 には 重 大 な 欠 陥 があると 考 えられているようである 2. 事 前 手 続 と 事 後 手 続 の 総 体 としての 把 握 OFT における 事 前 手 続 については 詳 細 な 告 知 を 前 提 とする 聴 聞 を 受 ける 権 利 とファイルへのアクセ ス 権 の 保 障 という 欧 州 委 員 会 と 同 様 の 手 続 が 採 られている 欧 州 委 員 会 では 聴 聞 官 を 置 き その 権 限 を 拡 大 明 確 化 して 口 頭 聴 聞 の 充 実 を 目 指 してきているのに 対 し 英 国 ではそうした 動 きはない OFT の 手 続 は 糾 問 的 なものと 割 り 切 り その 後 の 司 法 審 査 を 拡 充 することでバランスをとっているようであ る CAT の 審 理 は 通 常 の 司 法 審 査 ではなく 専 門 的 能 力 のある 審 判 体 による 完 全 な 再 審 理 であり OFT の 上 級 庁 の 趣 きすらある この 点 我 が 国 の 平 成 22 年 独 禁 法 改 正 法 案 ( 以 下 改 正 法 案 と 略 す )では 簡 易 な 事 前 手 続 と 事 後 の 抗 告 訴 訟 の 組 み 合 わせを 採 用 しているが これでは 事 前 の 手 続 保 障 が 十 分 でないだけでなく 事 後 の 司 法 救 済 の 道 も 実 質 的 に 狭 まってしまうと 思 われる 3.SO 及 び 決 定 の 詳 細 度 OFT の 決 定 は 極 めて 詳 細 であり 欧 州 委 員 会 の 決 定 を 凌 ぐようである 決 定 は SO を 基 に 作 成 され るのであるから SO も 極 めて 詳 細 なものと 推 測 される 詳 細 な 事 実 認 定 経 済 分 析 や 法 的 推 論 さら に 採 るべき 措 置 が 具 体 的 に 示 されて 初 めて 関 係 人 は 的 確 に 反 論 することができ 関 係 人 の 主 張 や 提 出 証 拠 を 検 討 させることで 決 定 はさらに 強 固 なものとなる これに 対 し 公 取 委 の 排 除 措 置 命 令 は 通 例 10 頁 前 後 に 過 ぎず 事 実 認 定 が 簡 潔 であるだけでなく 効 果 要 件 にかかわる 記 述 はほとんどないのが 実 情 である これでは 関 係 人 は 有 効 な 主 張 ができないおそれがある 4.OFT ファイルへのアクセス 違 反 事 件 の 審 査 を 担 当 する 競 争 当 局 が 保 有 する 事 件 ファイルに 対 して 関 係 人 が 全 面 的 なアクセスを 保 障 されることは 英 国 競 争 法 においても EU 競 争 法 と 同 様 である 開 示 対 象 は 秘 密 情 報 及 び 内 部 文 書 を 除 き あらゆる 文 書 であり 競 争 当 局 側 が 選 択 することはできない そして これらは 電 子 ファ イルで 提 供 されるのが 実 務 である これに 対 して 改 正 法 案 では 当 事 者 が 閲 覧 謄 写 できる 証 拠 は 公 取 委 が 認 定 した 事 実 を 立 証 する 証 拠 に 限 定 されている 審 査 官 は 閲 覧 等 に 応 じる 証 拠 を 必 要 最 小 限 にと どめるという 選 択 が 可 能 であり 意 見 聴 取 手 続 では その 証 拠 のうち 主 要 なものを 説 明 するにすぎない そして 審 査 管 が 立 証 に 用 いない 証 拠 にはアクセスできないことになる 当 事 者 が 謄 写 できる 証 拠 は 閲 覧 した 証 拠 のうちの 自 社 分 に 限 定 される 特 に 多 くのカルテル 事 件 が 課 徴 金 減 免 申 請 によるもので あり 減 免 申 請 を 行 った 事 業 者 からの 証 拠 が 事 実 認 定 上 大 きな 役 割 を 果 たすと 考 えられるところ 謄 写 の 対 象 が 自 社 分 の 証 拠 に 限 定 されることから 実 際 に 謄 写 できる 証 拠 はほとんどないという 事 態 も 想 定 3/7

される 5. 口 頭 聴 聞 と 主 宰 者 の 独 立 性 OFT における 口 頭 陳 述 は 当 該 事 件 の 審 査 に 直 接 かかわっていない 幹 部 職 員 が 主 宰 して 行 われるもの であり 審 査 部 門 から 完 全 に 独 立 した 者 が 主 宰 する 手 続 ではなく 証 拠 調 べや 詳 細 な 弁 論 を 目 的 とする ものではない これに 対 し 欧 州 委 員 会 では 独 立 した 聴 聞 官 を 置 き その 権 限 を 明 確 化 することで 手 続 的 規 律 を 強 化 するとともに 口 頭 聴 聞 の 役 割 を 高 める 方 向 にあると 思 われる EU における 聴 聞 官 の 権 限 は 手 続 問 題 に 限 定 され 実 体 問 題 に 関 しては 中 間 報 告 書 において 非 公 式 な 見 解 を 提 示 するに とどまる (この 報 告 書 は 公 表 されない) EU における 事 前 手 続 に 対 しては 聴 聞 官 の 独 立 性 や 権 限 の 強 化 所 掌 範 囲 の 実 体 問 題 への 拡 大 対 審 型 の 事 実 認 定 の 採 用 等 の 改 革 が 提 言 されることもある 改 正 法 案 においては 意 見 聴 取 手 続 を 主 宰 する 指 定 職 員 は 現 行 法 の 意 見 を 聴 取 する 職 員 と 審 判 官 との 中 間 的 な 位 置 付 けになる 指 定 職 員 の 除 斥 に 関 する 規 定 はあるが 独 立 して 職 務 を 行 うのかどうかは 不 明 である 指 定 職 員 は 意 見 聴 取 の 主 宰 者 として 審 査 官 に 当 事 者 に 対 して 説 明 をさせ あるいは 説 明 を 求 めること 意 見 聴 取 調 書 及 び 整 理 された 事 件 の 論 点 を 記 載 した 報 告 書 を 作 成 することが 職 務 で ある 欧 州 委 員 会 の 事 前 手 続 における 聴 聞 官 が 手 続 的 観 点 からのみ 関 与 することと 比 較 して 実 体 面 に かかわる 点 で 現 行 法 の 審 判 官 に 近 いと 考 えられるが 論 点 の 整 理 にとどまり 論 点 に 関 する 意 見 の 提 示 までは 行 わないとすると 行 政 手 続 法 上 の 聴 聞 に 比 べ その 役 割 は 限 定 される また 委 員 会 は その 報 告 書 の 内 容 を 十 分 に 参 酌 しなければならないが 委 員 会 が 命 令 書 において 論 点 ごとに 具 体 的 に 判 断 やその 理 由 を 示 す 必 要 があるようには 解 されない 6. 事 後 手 続 の 審 判 体 CAT の 審 判 体 は 法 律 家 だけでなく エコノミスト 等 の 多 様 な 専 門 家 で 構 成 され 競 争 問 題 に 関 連 し た 各 分 野 横 断 的 な 専 門 性 を 発 揮 できるように 工 夫 されている (EU の 司 法 裁 判 所 や 一 般 裁 判 所 の 判 事 は すべて 法 律 家 である) この 点 も 公 取 委 の 審 判 官 について 専 ら 法 曹 資 格 者 の 就 任 が 求 められてきた 我 が 国 の 状 況 とは 異 なっている そして 改 正 法 案 は 公 取 委 の 審 判 制 度 を 全 廃 して 行 政 事 件 訴 訟 法 に 基 づく 抗 告 訴 訟 に 委 ねることとするものであり CAT のような 競 争 問 題 への 多 面 的 な 専 門 性 を 確 保 し ようとする 方 向 とは 異 なる 7.CAT による OFT 決 定 の 全 面 審 査 OFT の 違 反 決 定 に 対 する CAT の 審 査 は 全 面 的 な 再 審 理 であり 単 なる 司 法 審 査 ではない 違 反 行 為 の 存 在 についての 立 証 責 任 は OFT にあるとされ 刑 事 の 立 証 基 準 に 近 い 高 度 な 立 証 が 求 められてい る これに 対 し 欧 州 委 員 会 の 決 定 に 対 する 一 般 裁 判 所 の 審 査 は 判 例 上 複 雑 な 経 済 問 題 や 技 術 的 な 評 価 に 対 しては 欧 州 委 員 会 の 裁 量 を 尊 重 し 明 白 な 誤 りや 権 限 の 濫 用 の 有 無 を 審 査 するものとし 欧 州 委 員 会 の 判 断 の 代 置 はしないとする 態 度 を 採 っている 改 正 法 案 では 公 取 委 の 命 令 に 係 る 司 法 審 査 は 一 般 の 行 政 処 分 と 同 じ 取 扱 いとし 行 政 事 件 訴 訟 法 に 定 める 抗 告 訴 訟 によることとしている その 結 果 行 政 事 件 訴 訟 法 上 執 行 不 停 止 が 原 則 であること 原 告 に 処 分 の 違 法 性 の 立 証 責 任 があること 被 告 ( 公 取 委 )が 提 出 を 求 められる 証 拠 の 範 囲 は 狭 くなり 原 告 の 主 張 に 応 じて 提 出 できること 裁 量 処 分 では 処 分 庁 の 第 一 次 的 判 断 が 尊 重 される ( 判 断 代 置 はしない) こととなる 抗 告 訴 訟 における 裁 量 処 分 の 司 法 審 査 の 仕 組 みを 前 提 とする 場 合 に 司 法 審 査 の 行 方 は 処 分 の 違 法 性 を 主 張 立 証 するための 手 掛 かりを 原 告 ( 事 業 者 ) がどれだけ 入 手 できるかに 依 存 する 詳 細 な 事 実 認 定 や 証 拠 の 引 用 を 欠 き 具 体 的 な 理 由 が 提 示 されない 命 令 に 対 して 原 告 が 公 取 委 が 保 有 する 証 拠 への 十 分 なアクセスを 欠 いたまま そ の 違 法 性 を 的 確 に 主 張 立 証 できるとは 限 らない 8. 審 査 段 階 における 手 続 的 保 障 OFT の 手 続 について 審 査 開 始 通 知 書 の 発 出 立 入 検 査 等 における 弁 護 士 の 立 会 原 物 の 留 置 期 限 の 設 定 は 参 考 になると 思 われる 日 本 で 特 に 問 題 になる 供 述 聴 取 の 際 の 弁 護 士 立 会 供 述 調 書 のコピー 提 供 については 審 査 手 法 の 違 いから 英 国 では 問 題 になっていないようであるが 文 書 の 説 明 を 求 め られた 場 合 には 弁 護 士 の 立 会 を 求 めることができるとされている いろいろな 点 で 英 国 の 手 続 及 び EU の 手 続 は 日 本 の 手 続 とは 異 なり 参 考 になる 面 もあると 思 われる 改 正 法 案 は 簡 単 な 事 前 審 査 簡 単 な 事 後 の 司 法 審 査 であり 関 係 人 の 手 続 的 保 障 の 面 独 禁 法 の 解 釈 論 の 発 展 とその 前 提 にある 正 し い 事 実 認 定 を 適 格 に 行 っていく 上 では 手 続 的 に 不 十 分 な 面 があると 考 えられる 4/7

2 韓 国 独 禁 法 における 違 反 事 件 処 理 手 続 日 本 の 独 占 禁 止 法 改 正 に 関 連 して 名 古 屋 経 済 大 学 法 学 部 教 授 中 山 武 憲 氏 はじめに 韓 国 と 日 本 の 独 禁 法 は 韓 国 に 独 特 の 財 閥 に 関 する 特 別 の 規 定 を 置 く 他 は 非 常 に 類 似 している そ れにもかかわらず 運 用 は 大 きく 異 なるという 特 徴 がある 韓 国 独 禁 法 の 具 体 的 内 容 は 施 行 令 に 規 定 されている 日 本 独 禁 法 は 不 公 正 取 引 でも 市 場 との 関 係 を 重 視 するが 韓 国 では 社 会 正 義 道 徳 秩 序 を 重 視 し 不 公 正 取 引 について 競 争 への 影 響 をさほど 重 視 しないため 結 果 として 不 公 正 取 引 が 私 的 紛 争 的 性 格 を 帯 びることとなり 調 停 という 制 度 が 生 まれることともなる 1. 公 取 委 の 組 織 と 事 件 処 理 (1) 公 取 委 における 全 員 会 議 と 小 会 議 委 員 長 副 委 員 長 各 1 名 を 含 む 5 名 の 常 任 委 員 と 4 名 の 非 常 任 委 員 との 計 9 名 の 委 員 から 構 成 され る 同 委 員 会 の 会 議 は 委 員 全 員 で 構 成 される 全 員 会 議 と 常 任 委 員 1 名 を 含 む 3 名 の 委 員 で 構 成 される 小 会 議 とに 区 分 され 5 以 内 の 小 会 議 が 設 けられている 全 員 会 議 は 政 策 の 立 案 遂 行 等 の 行 政 的 事 務 の 他 一 定 規 模 以 上 のカルテル 等 財 閥 系 政 府 系 外 資 系 等 の 各 事 業 者 の 一 定 の 違 反 行 為 一 定 の 告 発 事 件 異 議 申 立 事 件 など 重 要 な 事 件 を 所 管 する 小 会 議 は 全 員 会 議 で 所 管 する 以 外 の 事 項 を 所 管 し 現 実 に 取 り 扱 う 業 務 のほとんどすべては 違 反 事 件 関 係 である (2) 審 査 官 及 び 審 判 管 理 官 等 全 員 会 議 及 び 小 会 議 における 違 反 事 件 の 審 理 を 審 判 と 呼 ぶ ア 審 査 官 審 査 官 は 事 前 審 査 から 審 査 の 最 終 段 階 にいたる 一 連 の 審 査 手 続 を 行 い 当 該 事 件 を 担 当 する 局 長 審 判 管 理 官 又 は 地 方 事 務 所 長 がこれに 就 く これらのうち 審 判 管 理 官 は 異 議 申 立 事 件 において 審 査 官 を 務 める 公 取 委 事 務 処 には 現 在 5 局 おかれているが これらのうち 市 場 監 視 局 及 びカルテル 調 査 局 の 各 課 において 行 政 的 事 務 の 他 独 禁 法 違 反 事 件 をも 担 当 している したがって 審 査 官 には これら の 局 の 局 長 と 5 つの 地 方 事 務 所 長 が 就 くこととなる イ 審 判 管 理 官 審 判 管 理 官 は 各 会 議 の 審 議 準 備 手 続 及 び 審 議 において これらの 活 動 を 補 佐 し 法 理 その 他 の 事 項 に 関 して 意 見 を 述 べる また 異 議 申 立 事 件 においては 審 査 官 を 務 める 審 判 管 理 官 の 下 には 審 判 総 括 担 当 官 競 争 審 判 担 当 官 等 5 つの 担 当 官 がおかれ 更 にその 下 に 所 要 の 職 員 が 置 かれている ウ 幹 事 幹 事 は 各 会 議 における 業 務 を 統 括 するため 各 会 議 ごとに 1 名 おかれ 審 判 管 理 官 の 下 にある 審 判 総 括 担 当 官 又 は 書 記 官 がこれに 就 く 2. 調 査 及 び 審 査 手 続 (1) 事 前 審 査 韓 国 独 禁 法 において 違 反 事 件 の 処 理 は 公 取 委 が 事 件 の 端 緒 に 接 するところから 始 まる 事 務 処 長 は 違 反 の 疑 いがあるときは 審 査 官 に 事 前 審 査 をさせる 審 査 を 担 当 する 部 署 は 各 局 各 課 更 には 地 方 事 務 処 に 分 かれており 例 えば 市 場 支 配 的 地 位 濫 用 事 件 は 市 場 監 視 局 市 場 監 視 総 括 課 が 製 造 業 等 のカルテル 事 件 はカルテル 調 査 局 カルテル 調 査 課 が 担 当 する 事 前 審 査 の 結 果 なお 違 反 の 疑 いが 認 め られれば 審 査 官 は 委 員 長 に 対 して 事 件 審 査 着 手 報 告 を 行 う (2) 調 査 事 件 審 査 着 手 報 告 がなされた 後 は 審 査 官 の 下 の 担 当 官 は 法 に 定 められた 権 限 を 行 使 するなどして 当 該 事 件 の 調 査 を 行 う これらの 権 限 とは 出 頭 意 見 の 聴 取 鑑 定 報 告 及 び 資 料 等 の 提 出 の 各 命 令 並 びに 立 入 検 査 の 各 権 限 である 調 査 が 終 了 したときは 審 査 官 は 審 査 報 告 書 を 作 成 する 3. 審 議 手 続 (1) 審 議 前 の 検 討 5/7

(ア) 審 査 報 告 書 の 作 成 後 審 査 官 は 証 拠 資 料 を 添 えて 同 報 告 書 を 各 会 議 に 提 出 するとともに 被 審 人 へも 送 付 し これに 対 する 意 見 を 審 判 管 理 官 へ 提 出 するよう 通 知 する その 際 営 業 秘 密 等 に 属 する 証 拠 資 料 は 送 付 の 対 象 から 除 外 されるが 被 審 人 がこれらの 閲 覧 複 写 を 欲 するときは 委 員 会 に 対 し て これを 認 めるよう 求 めることができる なお 小 会 議 案 件 ( 告 発 事 件 及 び 課 徴 金 納 付 事 件 を 除 く) に ついては 被 審 人 に 対 して 審 査 官 措 置 意 見 を 受 諾 するか 否 かを 尋 ねることとされており 被 審 人 がこ れを 受 諾 するときは 略 式 手 続 として 各 会 議 の 書 面 審 議 に 付 される (イ) 審 査 報 告 書 が 提 出 された 後 事 案 が 全 員 会 議 の 所 管 である 場 合 は 同 会 議 の 議 長 ( 委 員 長 ) は 常 任 委 員 のうち 1 名 を 当 該 事 件 の 主 審 委 員 に 指 定 する 次 いで 全 員 会 議 における 主 審 委 員 及 び 小 会 議 における 議 長 ( 常 任 委 員 ) は それぞれ 当 該 事 件 を 審 議 に 付 すことが 可 能 であるか 否 かにつき 事 前 に 検 討 し 不 備 があれば 当 該 審 査 官 に 補 完 を 命 ずる (2) 審 議 準 備 手 続 その 後 各 会 議 の 議 長 は 被 審 人 の 意 見 書 が 提 出 された 後 審 議 を 効 率 的 かつ 集 中 的 に 進 めるため 必 要 があると 認 めるときは 事 件 を 審 議 準 備 手 続 に 付 す 同 手 続 は 書 面 により 又 は 期 日 を 開 いて 行 われ 審 査 官 及 び 被 審 人 は ここにすべての 主 張 及 び 証 拠 を 提 出 しなければならない 主 審 委 員 及 び 小 会 議 の 議 長 は 審 判 管 理 官 の 補 佐 を 受 けて 手 続 を 行 うが 他 の 委 員 も 意 見 を 提 示 し 期 日 において 審 査 官 及 び 被 審 人 と 質 疑 を 行 う 審 議 準 備 期 日 は 主 張 及 び 証 拠 を 整 理 し 争 点 を 明 らかにするため 必 要 がある 場 合 に 審 査 官 及 び 被 審 人 双 方 の 出 席 の 下 に 開 かれ 公 開 で 行 われる 同 手 続 においては 証 拠 調 べ 鑑 定 等 も 行 われる 以 上 の 手 続 により 事 実 関 係 主 張 及 び 証 拠 並 びに 争 点 が 明 らかになれば 審 判 管 理 官 は 争 点 等 を 整 理 した 審 議 準 備 手 続 結 果 報 告 書 を 作 成 し 同 手 続 終 了 後 これを 審 査 官 及 び 被 審 人 に 送 付 する (3) 審 議 付 議 (ア) 各 会 議 の 議 長 は 1 審 査 報 告 書 に 対 する 被 審 人 の 意 見 書 が 提 出 された 場 合 はその 日 から 2 審 議 準 備 手 続 が 行 われた 場 合 はその 終 了 した 日 から 3 前 記 意 見 書 が 提 出 されない 場 合 は 一 定 期 間 経 過 後 か ら 30 日 以 内 に 当 該 事 件 を 審 議 に 付 さなければならない 審 議 は 期 日 を 開 いて 審 判 廷 において 行 われ る 審 議 は 1 回 で 終 了 することが 予 定 されており 2 回 以 上 行 われる 場 合 は 1 新 たな 主 張 又 は 証 拠 資 料 が 提 出 されたとき 2 参 考 人 等 の 陳 述 に 信 濃 性 が 欠 け 又 は 事 実 関 係 が 複 雑 であって 争 点 が 多 いとき 及 び3その 他 2 回 以 上 の 審 議 が 必 要 であると 認 められるときに 限 られる また 必 要 があるときは 事 件 を 審 議 準 備 手 続 に 差 戻 し 同 手 続 を 再 開 させることができる 審 議 は 審 査 官 及 び 被 審 人 双 方 出 席 の 下 に 行 われ 必 要 に 応 じて 参 考 人 その 他 の 者 も 参 加 させることができる 審 議 においては 審 査 官 によ る 審 査 結 果 の 要 旨 の 陳 述 被 審 人 の 意 見 陳 述 審 議 準 備 手 続 を 行 った 場 合 は 審 判 管 理 官 による 結 果 の 要 旨 の 報 告 委 員 による 審 査 官 又 は 被 審 人 への 質 問 審 査 官 及 び 被 審 人 相 互 の 質 問 証 拠 調 べ 参 考 人 尋 問 鑑 定 等 が 行 われる 議 長 は 審 査 官 又 は 被 審 人 の 陳 述 が 既 に 行 ったものと 重 複 する 場 合 等 には こ れを 制 限 することができ また 営 業 秘 密 等 を 含 む 事 項 についての 発 言 があるときは 一 定 の 手 続 の 下 関 係 者 の 一 時 退 場 等 の 措 置 が 採 られる これらが 終 了 した 後 審 査 官 の 意 見 陳 述 があり 最 後 に 被 審 人 の 最 終 意 見 陳 述 が 行 われる また 事 実 誤 認 法 令 解 釈 若 しくは 適 用 の 錯 誤 又 は 新 たな 事 実 若 しく は 証 拠 の 発 見 があったときは 各 会 議 は 審 査 官 に 再 審 査 を 命 ずる (イ) 以 上 のような 制 度 の 下 2008 年 の 運 用 状 況 についてみれば 全 員 会 議 37 回 小 会 議 110 回 計 147 回 の 会 議 が 開 催 され 953 件 の 案 件 が 審 議 されている これらのうち 全 員 会 議 における 審 議 案 件 に ついてみれば 独 禁 法 を 含 む 公 取 委 所 管 の 各 法 律 及 び 施 行 令 の 改 正 案 の 検 討 これらの 法 律 に 基 づく 各 種 告 示 規 則 指 針 等 の 制 定 改 正 等 の 行 政 的 事 案 もかなりあるが 件 数 の 圧 倒 的 多 数 は 違 反 事 件 に 関 するものである 4. 措 置 の 種 類 と 内 容 (1) 違 反 行 為 に 対 する 措 置 (ア) 審 議 の 結 果 違 反 が 認 定 されれば 告 発 是 正 命 令 課 徴 金 納 付 命 令 是 正 勧 告 又 は 警 告 等 の 措 置 が 採 られる これらのうち 告 発 は 告 発 基 準 において 点 数 制 により 詳 細 に 定 める 一 定 の 基 準 を 超 えた ものに 対 して 行 なわれる 是 正 命 令 は 違 反 行 為 の 是 正 等 を 命 ずる 行 政 処 分 であり 違 反 に 対 する 措 置 の 中 核 となるものである 課 徴 金 は すべての 違 反 行 為 が 対 象 となる 是 正 勧 告 は 事 件 が 軽 微 である 場 合 等 に 行 われる 2008 年 までの 10 年 間 独 禁 法 についての 是 正 勧 告 は 1 件 もなかったが 2009 年 には 9 件 行 われている 警 告 は 法 的 措 置 ではなく 行 政 指 導 の 一 種 であるが その 運 用 基 準 は 規 則 に 詳 6/7

細 に 定 められている (イ) 韓 国 独 禁 法 における 最 近 2 ヵ 年 の 措 置 類 型 別 運 用 状 況 は 次 のとおりである 告 発 :12/5 是 正 命 令 :676/407 課 徴 金 :(315)/(100) 警 告 等 :267/464 ( 単 位 件 課 徴 金 の 件 数 は 告 発 及 び 是 正 命 令 の 内 数 数 値 左 は 2007 年 右 は 2008 年 ) これと 同 じ 期 間 における 我 が 国 独 禁 法 の 運 用 状 況 は 次 のとおりである 法 的 措 置 :24/17 警 告 :10/4 注 意 :88/87 以 上 から 明 らかとなる 事 実 は 独 禁 法 の 運 用 における 日 韓 両 国 の 驚 異 的 とさえ 言 える 差 異 である (2) 異 議 申 立 及 び 訴 の 提 起 公 取 委 の 処 分 に 対 して 不 服 がある 者 は 同 委 員 会 に 対 して 異 議 の 申 立 を 行 うことができ 又 はソウル 高 等 裁 判 所 に 直 ちに 不 服 の 訴 を 提 起 することができる ア 異 議 申 立 (ア) 異 議 申 立 事 件 においては 審 判 管 理 官 が 審 査 官 を 務 め 審 査 官 意 見 を 記 載 した 審 査 報 告 書 を 作 成 して これを 全 員 会 議 に 提 出 する 裁 決 は 口 述 審 議 により 行 われるが 新 たな 主 張 又 は 資 料 が 提 出 さ れない 場 合 等 には 書 面 審 議 により 行 われる (イ) 最 近 3 ヵ 年 の 異 議 申 立 事 件 について その 処 理 状 況 は 次 のとおりである( 公 取 委 所 管 の 全 事 件 ) 棄 却 :72.3 一 部 認 容 :16.9 認 容 :7.4 却 下 :0.7 取 下 げ:2.7 韓 国 公 取 委 では 異 議 申 立 は 被 審 人 にとり 費 用 がかからず 迅 速 に 結 論 が 得 られるものの 高 い 棄 却 率 の 故 に 不 要 の 制 度 であると 思 われかねないとし 一 方 委 員 会 の 立 場 からは 訴 訟 になった 場 合 に 備 え 再 考 のよい 機 会 であるとしている イ 訴 の 提 起 公 取 委 の 処 分 に 対 する 不 服 の 訴 は ソウル 高 等 裁 判 所 の 専 属 管 轄 とされ 公 取 委 におけるこれに 関 す る 業 務 は 審 判 管 理 官 の 下 の 訟 務 担 当 官 を 中 心 に 行 われる 最 近 3 ヵ 年 の 確 定 判 決 について 公 取 委 の 勝 敗 訴 率 は 次 のとおりである( 公 取 委 所 管 の 全 事 件 ) 全 部 勝 訴 :63.3 一 部 勝 敗 訴 :20.0 全 部 敗 訴 :16.7 韓 国 公 取 委 では 不 服 の 訴 においても 被 審 人 側 が 新 たな 補 完 証 拠 法 理 論 経 済 分 析 資 料 等 を 提 出 してくる 状 況 にあり これに 適 切 に 対 応 しているものの 証 拠 収 集 人 事 異 動 予 算 の 面 での 限 界 ない し 困 難 があるとしている( 実 質 的 証 拠 法 則 はない) 結 び 和 が 国 制 度 及 び 運 用 と 比 較 して 韓 国 独 禁 法 は わが 国 独 禁 法 と 比 較 して ほぼ 同 様 の 実 体 規 定 にもかかわらず 事 件 処 理 において 極 端 な 差 異 がある その 原 因 については 競 争 の 実 質 的 制 限 及 び 公 正 競 争 阻 害 性 の 認 定 における 両 国 の 寛 厳 の 差 異 その 背 景 にある 両 国 の 国 民 性 文 化 的 特 性 の 差 異 等 さまざまな 要 因 が 考 えられるが 事 件 処 理 手 続 の 面 からみるならば 次 の 点 を 指 摘 しうるように 思 われる 第 一 に 審 査 実 務 の 面 では 違 反 事 件 の 処 理 は 我 が 国 では 行 政 政 策 部 門 とは 別 に これのみを 担 当 する 審 査 局 が 行 うのに 対 し 韓 国 では 各 局 各 課 が 行 政 政 策 的 業 務 と 併 せて 行 っている 例 えば カルテル 調 査 局 カルテル 総 括 課 では カルテル 規 制 政 策 の 策 定 等 の 行 政 的 業 務 とともに 公 共 部 門 の 入 札 談 合 をはじめとする 違 反 事 件 ソウル 地 方 事 務 所 総 括 課 では 予 算 人 事 広 報 等 の 行 政 的 業 務 ととも に 公 共 事 業 者 の 不 公 正 取 引 行 為 事 件 及 び 事 業 者 団 体 違 反 事 件 をも 担 当 している 私 の 我 が 国 公 取 委 での 実 務 経 験 に 照 らせば 我 が 国 の 行 政 政 策 部 門 と 審 査 部 門 の 非 連 続 性 は 審 査 部 門 に 一 種 独 特 の 風 土 を 生 ぜしめ 事 件 に 極 めて 厳 正 かつ 慎 重 に 対 応 させることとなり これがややもす れば 違 反 の 認 定 に 消 極 的 に 作 用 することとなるように 思 われる 一 方 韓 国 における 行 政 政 策 部 門 と 審 査 部 門 の 連 続 性 は 違 反 事 案 と 言 えども これを 行 政 的 事 案 の 延 長 線 上 のものとし 事 件 として 積 極 的 に 処 理 していくことになるものと 思 われる 第 二 に 審 判 実 務 の 面 では 我 が 国 では 裁 判 に 類 似 する 審 判 制 度 の 下 で 極 めて 慎 重 な 審 理 が 行 われる のに 対 し 韓 国 では 日 本 のような 審 判 制 度 はなく 審 判 と 称 されることもある 全 員 会 議 又 は 小 会 議 で 原 則 1 回 の 審 議 が 行 われるのみである このことも 事 件 処 理 件 数 の 多 寡 に 影 響 しているように 思 われる いずれにせよ 日 韓 両 国 は 同 様 の 法 制 を 有 するにかかわらず さまざまな 要 因 が 総 合 されて 事 件 処 理 において 極 めて 対 照 的 な 様 相 を 呈 している 7/7