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広島大学大学院教育学研究科紀要 第二部 第68号 2019 261 270 朝型 夜型の生活リズムと大学生の対人関係 今 川 真 治 2019年10月3日受理 University Students Morningness Eveningness and Their Interpersonal Relationships Shinji Imakawa Abstract: It was considered desirable for human beings to get up naturally at sunrise and fall asleep when the sun goes down. In recent years, however, life rhythms have shifted to nocturnality due to the increase in the number of 24-hour stores and the constant Internet use. Compared to working adults, junior high school students, and high school students who have a relatively regulated life, university students tend to lead irregular and rhythm-free lives. This study investigated the actual situations of university students daily life related to their living hours and examined whether the morning night life rhythm was related to their interpersonal relationships. A questionnaire survey was conducted with 184 university students to distinguish whether they were morning or evening people. The Japanese version of Home and Östberg s morningness eveningness questionnaire was used to determine each student s life rhythm. In addition, the respondents were asked about their time-related daily behaviors, such as wakeup times and bedtime, use of an alarm, frequency of late arrival to classes, physical condition and appetite for 30 minutes after getting up, and their sense of time. The university students life rhythms were categorized as 21.7 % morning people, 57.1 % day people, and 21.2 % night people. While 80% of the morning students were satisfied with their current life rhythm, 58% of the night students were not satisfied with their life rhythm. The results of the friendship scale showed that there was no relationship between life rhythm and friendship in boys. In girls, however, some differences were recognized, e.g., morning girls tended to confess their hearts and cherish their relationships with intimate friends, while night girls tended to refuse to be deeply involved with their friends. Key words: Life rhythm, University students, Morningness eveningness questionnaire, Timerelated daily behaviors, Interpersonal relationships キーワード 大学生の生活リズム朝型 夜型質問紙生活行動対人関係 ムの位相を24時間周期と一致させているため光がな 1 はじめに いはずの夜間に明るい光を浴びすぎると生体リズムの 時刻の手がかりのない環境で生活させると睡眠覚 位相が後退しそれが日常の生活リズムの乱れに繋が 醒リズムを含むヒトの生体リズムは体温やホルモ るという 杉田 2011 はコンビニエンスストアの ン睡眠などの位相が日々遅れ約25時間周期のリズ 店内の明るさは生体リズム位相の後退を起こすのに十 ムを示すようになる 橋本 本間 本間2007 他方 分すぎる明るさであるため店内に長くいると眠気の 地球の自転周期である24時間のサイクルで生活する私 リズムを後退させいつまでも眠くなりにくいことを たちはもっぱら朝の太陽光を浴びることによって両 指摘している 者のズレをリセットし体内のリズムを24時間周期に ヒトは本来日の出とともに起床し日が沈むと 同調させている つまりヒトは光によって生体リズ 眠りにつくという生活を送ることが望ましいとされ 261

今川 真治 るが近年24時間営業店舗の増加や高度情報化の影 原因の一つとして葛西 松本 2010 は円滑な友 響スマートフォン等の機器の長時間使用など現代 人関係を維持しようとした結果自分が我慢しても他 社会の多様化に伴って生活リズムの夜型化が進行して 人と同じであることを重視し他人と同じであること いる 一般的に 朝型生活者は心身ともに健康であり で安心感を覚える青年が多いことを挙げている うま 夜型は不健康であると考えられている 例えば夜型 く形成され維持された友人関係は青年にとって重要 生活者は朝型生活の者に比べて疲労感と不健康感を な支えとなる一方で関係が形成されなかったり悪 持ちその原因が不規則な生活にあると感じている者 化した場合には対人関係は大きなストレスの原因にな が多く 松井 古見ら1989 慢性的な睡眠不足と ると考えられる 松井 1990 は青年期における親 翌日に疲労を持ち越す傾向が顕著に強い 佐々木 高 密な友人関係には情緒の安定や社会的スキルの学習 橋 伊藤 森 黒崎1989 また夜型生活者は心 機能モデル機能の三つの機能があると述べており 理的なストレス反応を多く報告する 岸田 佐久間 青年期においてより良い対人関係を築くことは重要 竹田1999 など朝型生活よりも不健康であること な発達課題の一つであると言える を指摘する先行研究は多く見られる 一方でこれら 生活リズムにおける朝型と夜型の違いは日常の生 の考えに否定的な結果を示す先行研究もある 本多 活習慣や活動性に影響を与え友人関係をはじめとす 鈴木 城田 金子 高橋 1994 は夜型群は朝型群 る対人関係にも違いをもたらすと考えられる 特に生 よりも生活が不規則であり心身に関する愁訴が多い 活時間の同期性や個々人の時間に対する感性は他 もののそれ以外の身体症状精神症状などの精神的 者と同じ時間を共有できるかや交流の内容や場所等 心理的尺度群には朝型群との間に有意な関連を示す にも影響を与える可能性がある しかし朝型 夜型 ものはなかったとしている の生活リズムと対人関係の関連を明らかにした研究は 徳永 橋本 2002 は中学生高校生大学生 見られない 社会人における健康度や生活習慣を分析し 大学生は 本研究では大学生の生活時間に関わる日常生活の 積極的健康行動運動意図 環境食生活状況 食事 実態を調査し学生の生活リズムを分類するとともに の規則性 食品のバランス 睡眠状況 睡眠の規則性 朝型夜型の生活リズムが対人関係にどのような影響を 睡眠障害 が他の年代と比較して著しく悪く 健康度 与えうるかについて考察することを目的とする 生活習慣ともに最も望ましくない年代であることを報 告している また坂本 2009 は大学生はそれまで 2 方法 の規則正しい生活から離れ自ら決めた時間割やサー クルアルバイトなどの領域で自由度の大きい生活ス 2 1 調査対象と調査時期 タイルが可能になる世代であり最先端の機器や流行 広島大学に在籍する1年生から4年生までの日本人 にも敏感でそうしたスタイルを追って生活リズムを 大学生を対象とし2018年7月30日から2018年10月15 崩し睡眠の不規則化や夜型化が進行しやすい状況に 日の間に質問紙の配布と回収を行った 置かれていることを述べている 2 2 大学生はこれから社会に出る準備段階として重要 な時期であるため生活や健康に関して自己管理する ことが求められているにもかかわらず自身の生活を 管理できていない者が少なくない 中村 2004 は 調査項目 1 回答者の属性 性別学年居住形態家から大学までの所要時間 アルバイトの実態等に関する質問項目を設けた 2 朝型 - 夜型質問紙 大学生は現代社会で生活する人々の中で生活時間に 回答者の日常生活リズムと朝型 - 夜型度を明らかに 最も規制がなく不規則でリズムのない生活を送りが するためにHorne Östberg 1976 による英語 ちであり 比較的規制のある生活を送る社会人 中学生 版朝型 - 夜型質問紙を石原 宮下 犬上 福田 山崎 高校生に比べ特に睡眠の環境睡眠の質睡眠時間 宮田 1986 が翻訳した日本語版朝型 - 夜型質問紙を に関して意識を払う者が少ないことを述べている 用いた 青年期は心理的離乳の時期でもあり自身にとっ 本質問紙では回答を得点化し総得点が86-70点 て頼りになる存在や自らを打ち明ける対象は親から友 の者を 明らかな朝型 69-59点の者を やや朝型 人へと移行する そのため青年期には他の年代より 58-42点の者を 中間型 41-31点の者を やや夜型 も友人との関わりを強く求めその中で親密な友人関 30-16点の者を 明らかな夜型 と分類する ただし 係を築いていく しかし近年青年の友人関係が表面 本研究では得られたデータの分布に基づき86-56 的であることやその希薄さが指摘されている その 点の者を 朝型 55-42点の者を 中間型 41-16点 262

朝型 夜型の生活リズムと大学生の対人関係 の者を 夜型 としデータを朝型 中間型 夜型の も1年生は2 4年生よりも30分程度早かった 疲 三つのタイプに分類した れを感じて眠くなる時刻は1 3年生が0時頃であ るのに対し4年生のみ深夜1時前であった また 3 友人関係尺度 岡田 1995 の友人関係尺度を用い回答者の友人 体調が最高になる時刻は1年生と4年生が13時頃で 関係の特徴を調査した この尺度は 気遣い 尺度 6 2年生と3年生はそれより30分 1時間遅いという回 項目 ふれあい回避 尺度 6項目 群れ 尺度 5 答であった 朝型 - 夜型質問紙の回答から学年別の朝型 中間型 項目 の三つの下位尺度から成るがこれに独自の2 夜型を分類し各生活リズム型の学生の割合を図1に 項目を追加し全19項目とした 示す 4 大学生の時間に関わる生活行動と時間感覚 回答者の時間に関わる生活行動と時間感覚につい て過去半年間の遅刻 欠席の経験就寝前に翌日の 起床時間を確認するか夜に突然誘われた際に翌日の 予定を考えて断ることがあるか自身の生活リズムに 満足しているかなど日常的な行動や時間感覚に関し て回答を求めた 3 結果および考察 広島大学に在席する1年生から4年生までの日本人 大学生285人に質問紙を配布し215部を回収した 回 図1 学年別の朝型 中間型 夜型の割合 収率75.4% そのうち有効な回答が得られたのは 図からいずれの学年にも各リズム型の学生が存在 211部 有効回答率74.0% であった するが朝型と夜型に着目すると1年生と4年生は 夜型の学生よりも朝型の学生の割合が高く2年生と 3 1 朝型 - 夜型質問紙による生活リズム分析 本研究ではその目的から親元を離れて自由度の高 3年生は朝型の学生よりも夜型の学生の割合が高かっ い生活を送っていると考えられる下宿生を対象とする た 1年生で朝型の学生の割合が高かったのは1年 こととし自宅生26名とその他の居住形態1名を調査 生が受講しなければならない教養科目が1時限 8:45 対象から除外し184名を分析対象とすることにした から始まることが多いからであると考えられるが高 校生までの生活時間が習慣として残っている可能性も 1 学生の朝型夜型の実態 朝型 - 夜型質問紙の質問項目から自身の体調が最 考えられるだろう 2年生と3年生では1年生の頃 高だと思われる生活リズムを考えた時の起床時刻と就 に比べて自身で自由に選択する授業が増えるため意 寝時刻疲れを感じて眠くなる時刻1日のうちで最 図して1時限の授業を避けることも可能となる また も体調が良い時刻の4項目について学年別に平均時 大学生活に慣れ多くの学生がアルバイトを始める 刻を算出し表1に示す など生活のパターンに変化が現れる 飲酒が可能な 年齢になり夜遅くまで友人と遊ぶなど朝の時間に 表1 生活時間に関わる事象の平均時刻 縛られずに行動する者も増えることが考えられる ま た4年生で朝型の学生の割合が高い理由のひとつと して就職活動や卒業研究のためのゼミなどの活動が 本格化することによって日常生活時間の再規格化が 起こることも考えられるだろう 2 朝型夜型別にみた大学生の生活行動 自身の体調が最高だと思われる生活リズムを考えた 時の起床時刻と就寝時刻 疲れを感じて眠くなる時刻 起床時刻について2年生3年生4年生は8時 前後に起床すると回答しているのに対し1年生の平 1日のうちで最も体調が良い時刻について朝型と夜 型の学生それぞれの回答の平均時刻を表2に示す 均起床時刻は7時18分であり他の学年の学生よりも 30分以上早いことがわかった また就寝時刻に関して 263

今川 表2 真治 朝型 夜型と生活に関わる事象の平均時刻 朝型の学生の起床時刻の回答平均は午前7時8分 夜型の学生は8時35分であり両者には1時間27分の 図2 差があった また就寝の平均時刻は朝型の学生が 起床時に目覚まし時計に頼る程度 夜型の学生は全員が目覚まし時計に頼っており 23時32分夜型の学生が24時41分で1時間9分の差 があった 自分の好みや体調に合わせて思い通りに1 93%が とても頼る と回答した 他方朝型の学生 日のスケジュールを組むことができる場合朝型の学 でも85%の学生が目覚まし時計に頼ると回答したもの 生は早朝に起床して午前から活動することを志向する の とても頼る と回答した学生の割合は46%に留 ため 夜は早めに就寝すると回答するのだろう 他方 まった 日常的に朝型の学生は起床することに困難 夜型の学生は夜遅くまで活動することを希望するた を感じることが少なく特定の起床時刻を定められた め 起床時刻が遅くなる傾向があるのだと考えられる としてもそれに対する対応力があることを自覚して 上記のデータから両者の平均睡眠時間を比較する いるものと思われる 他方夜型の学生は起床行動に と朝型の学生は7時間36分夜型の学生は7時間56 関して日常的に困難を感じているかあるいは起床に 分であり夜型の方が20分長かった 総務省による おいて失敗した経験をより多く持っておりそれが 2016年の社会生活基本調査 総務省統計局2017 に より強く目覚まし時計に頼る傾向に繋がったものと考 よると15 19歳男女の平均睡眠時間は7時間40分で えられる 普段目が覚めてから容易に起きることができる あり20 24歳男女では7時間58分であった このこ とから広島大学の学生の睡眠時間は朝型夜型とも かどうか を尋ねた結果を図3に示す に平均的なものであると言えるであろう 夜疲れを感じて眠くなると予想する時刻は朝型 の学生では平均22時43分夜型の学生では平均25時17 分であり両者には2時間34分の差があった この結 果から朝型の学生はその日のうちに眠くなることを 自覚するのに対し夜型の学生は25時を過ぎないと眠 気を自覚できないのではないかと考えられる 1日のうちで体調が最高となると予想された時 刻は朝型の学生では平均10時44分夜型の学生では 平均15時48分であり両者には5時間4分の差があっ た この結果は朝型の学生は起床後3時間36分で活 図3 目が覚めたあと容易に起きられるか 動的な状態になれる一方で夜型の学生は起床から7 時間13分経たないと体調が最高にならないことを意味 朝型の学生の95%が容易 大変 + 割に に起きるこ する 上述のように睡眠時間の差は20分程度しかな とができると回答した一方で夜型の学生で容易に いが両者の起床時刻と就寝時刻には1時間以上の差 起きることができると回答した学生は25%にとどまっ があり結果として朝型の学生は午前中から活動的 た 平井 神川 1999 は夜型生活者は夜型の生 であるのに対し夜型の学生は夕方近くまで調子が出 活リズムを日常的に送ることで生体リズムにずれが起 ないと自覚していることが明らかとなった こり起床後も疲労感が取れておらず寝起きがすっ 朝ある特定の時刻に起きなければならない時 きりしないさらには日常的にだるさを感じることを どの程度目覚まし時計に頼るか を尋ねた結果を図2 指摘した このことから夜型の学生は朝型の学生 に示す より睡眠時間は若干長いものの睡眠の質が良くない などの理由で疲労感が取れず目が覚めてからもなか 264

朝型 夜型の生活リズムと大学生の対人関係 なか起きることができないのではないか考えられる 普段の起床後30分間の目覚め具合の程度 を尋ね た結果を図4に示す 図6 起床後30分間の食欲の程度 図から夜型の学生よりも朝型の学生の方が食欲 があると回答した学生の割合が高く食欲があると回 図4 答した夜型の学生は12%のみであった 前述の寝起き 起床後30分間の目覚め具合 の悪さすなわち身体的な目覚めの悪さは目覚め 朝型の学生では92%が目覚めていると回答してお たあとの食欲等のホメオスタシスの充足欲求にも悪影 り33%の学生は しっかり目覚めている と回答し 響を与えていると考えられる NakadeTakeuchi た 一方夜型の学生のうち53%は あまり目覚めて Kurotani & Harada 2009 は朝食摂取は睡眠覚醒 いない と回答しており目覚めていると自覚してい リズムと関連が深く体内リズムの同調因子として重 た学生は44%にとどまった この結果から夜型の学 要であることを報告し伊藤 中井 杉浦 1998 は 生よりも朝型の学生の方が起床後すぐから活動的で 入床時刻が遅く起床時刻も遅い夜型生活者に朝食欠食 あることがうかがえる 率が有意に高いことを報告している 朝型の学生は 起床後30分間のけだるさの程度 を尋ねた結果を 生体リズムの調整が良好であるため朝から食欲があ るのに対し夜型は就寝時刻が遅いことで起床時刻 図5に示す が遅くなることを含め朝食を摂らない生活パターン になりがちで結果的に生活リズム全体の乱れにつな がっていることが考えられる 次の日に全く予定がない場合寝る時刻をいつも と比べてどうするか を尋ねた結果と 寝るのがい つもより遅くなったが翌朝は特定の時刻に起きる必 要がない場合起床時刻をどうするか を尋ねた結果 をそれぞれ図7と図8に示す 図5 起床後30分間のけだるさの程度 夜型の学生の96%が とてもけだるい または ど ちらかといえばけだるい と回答した さらに と ても爽快 と回答した者はいなかった 他方朝型 の学生で とてもけだるい と回答した者はおらず 69%が 爽快 と回答した この結果から夜型の学 生は朝型の学生よりも睡眠の質が悪いことが予想さ れそれが寝起きの悪さにつながり目覚めてからも 図7 予定のない日の前夜に就寝を遅らせるか 倦怠感を感じることが多いのであとうと考えられる 図7から朝型の学生には いつもと同じ か 遅 普段の起床後30分間の食欲の程度 を尋ねた結 果を図6に示す くしても1時間以内 と回答した学生が合わせて67% いたが夜型の学生のほとんどが1時間以上遅らせる 265

今川 真治 朝型の学生で最も多かった回答は 8 10時 54% であったのに対し 夜型の学生では 15 17時 48% であった 前掲の表2から1日のうちで体調が最高 となる時刻の平均が朝型の学生は10時44分夜型の 学生は15時48分であることから朝型夜型ともにそ れぞれ最も体調が良いと思われる時間を選択していた ことになる さらに夜型では 19 21時 を選択し た学生が25%もおり大学における学習には不適応で あるといえよう 図8 朝型夜型と 過去半年間の寝坊による授業の遅刻ま 就寝が遅かった翌朝の起床時刻と行動 たは欠席の頻度 との関係についての結果を図10に示 と回答し 2時間以上遅くする と回答した学生が す 53%もいた また図8から就寝が遅くなっても朝 型の学生の23%はいつもの時刻に目覚めると回答した のに対し夜型の学生でいつもの時刻に目覚めると回 答した者はいなかった 逆に いつもの時刻より遅 くまで目覚めない と回答した学生は朝型では15% のみであったのに対し夜型の学生では60%と多かっ た これらの結果から朝型の学生は決まった時間に起 床することが習慣化しており夜型に比べて起床時間 が大幅にずれることが少ないと考えられる 一方夜 型の学生は 普段の睡眠不足を休日で補おうとしたり 図10 朝型夜型と過去半年間の遅刻 欠席の頻度 翌日に予定がないことで夜更かしをし起床時刻を大 幅にずらすことが日常的にあるなど翌日の予定の有 朝型の学生で遅刻や欠席を していない と回答し 無によって睡眠の時間帯の変動が大きい 睡眠不足を た学生は半数以上 54% にのぼり 週23回 の 自覚しその解消のために 休日に寝溜めする とい 高頻度と回答した学生はいなかった 他方夜型の学 う人もいるが睡眠時間を普段より長く確保したとし 生では15%の学生が 週23回 と回答し して ても太陽の光を浴びる時間が遅いと体内リズムが後 いない と回答した学生の割合は22.5%にとどまった ろ倒しになるため体内時計のずれが修正できないこ この結果から夜型の学生は朝型の学生よりも寝坊 とを自覚する必要があるだろう による遅刻や欠席の頻度が高いことがわかった 精神的に疲れる上2時間もかかるテストを受け 前述のように朝型の学生は朝目が覚めてから容易 て最高の成績を取りたい時どの時間帯を選ぶか を に起きることができ起床後30分間の目覚め具合が良 尋ねた結果を図9に示す く午前中から活動的であるため寝坊が少ないこと が考えられる 一方夜型の学生は就寝時刻が遅いた めに起床時刻が遅くなり目覚めも悪く起床してか ら体調が最高となるまでに約7時間程度かかること も相まって起床しても迅速な行動ができず寝坊に よる遅刻や欠席が多いことに繋がるのではないだろう か 朝型夜型と 自身の生活リズムに満足しているか との関係についての結果を図11に示す 朝型の学生の80%は現在の自分の生活リズムに満足 しており まったく満足していない と回答した学 図9 テストで最高の成績を取りたいときに 選択する時間帯 生は一人もいなかった 他方夜型の学生は現在の 自分の生活リズムに満足していない学生の割合が58% であり満足している学生は42%に留まった 自由記 266

朝型 夜型の生活リズムと大学生の対人関係 ところすべての下位尺度において生活リズムの主 効果は認められなかったがいずれの下位尺度におい ても平均得点は朝型が最も高かった 表3 図11 朝型夜型と自身の生活リズムへの満足度 生活リズムと友人関係尺度の平均得点 (SD) 次に男女別に朝型の下位尺度得点と夜型の下位 述の回答として生活リズムに満足している朝型の学 尺度得点の差を検討した 男子 表4女子 表5 生は 朝起きてご飯をしっかり食べて大学に行け ている 自分の思い通りの時間の使い方ができてい 表4 男子の生活リズムと友人関係尺度得点 (SD) 表5 女子の生活リズムと友人関係尺度得点 (SD) る 寝起きが良く 日中はしっかり活動できている 毎日決まった時間に睡眠食事ができている など を挙げた 逆に朝型の学生が自分の生活リズムに満足 していない理由としては もう少しテキパキ動いて 夜早く寝たり余裕を持ちたい 実習と勉学で寝不 足だから があった このことから朝食をしっかり 摂り日中に活動的であったり自分に合った時間の 使い方ができている朝型の学生は自分の生活リズム に満足しているとわかった 一方夜型の学生が自分の生活リズムに満足してい ない理由として 朝起きられず遅刻が多い 夜 更かしが多く日中に眠くなる 起床時刻が遅く 時間を無駄にしていることが多い 不規則な生活で あると思うから などを挙げ自分の生活リズムの欠 点を理解していることが明らかとなった 他方夜型 各下位尺度得点の平均値の差を検定したところ男 の学生で自分の生活リズムに満足しているものが挙げ 子では朝型の学生と夜型の学生の間に有意な差は認 た理由としては 自分の好きなように時間を使えて められなかった 一方女子では気遣い尺度について いるから という意見が多かった しかし夜型の4 朝型の得点と夜型の得点の間に有意な差が認められ 年生で 本当はもっと早く起きて早く寝る方がいい t=2.65, p<0.05 朝型の女子の方が夜型の女子より とは思うが日中に特に予定がないので困ってはいな も気遣い尺度得点が高かった 女子においては夜型 い という意見もあった の女子よりも朝型の女子の方が 相手に気をつかう 以上の結果から朝型夜型の生活リズムにかかわら ず自分の思い通りの時間の使い方ができている学生 相手を 傷つけないようにする といった傾向がある ことが明らかとなった は自分の生活リズムに満足していると言えるであろ また表5からその差は有意ではなかったものの う しかしながら夜型の学生の中には朝の時間を 触れ合い回避尺度については朝型の女子よりも夜型の 無駄にしているため有意義に時間を使いたいという 女子の方が平均得点が高かった このことから夜型 意識がありながらも夜更かしをしてしまい朝起き 女子は朝型の女子よりも友人との深い関わりを拒否 られないという悪循環から抜け出せず自分の生活リ する傾向があり躁的防衛が低く他者からの評価に ズムに満足していないものも少なくなかった 過敏である 岡田1995 ことが考えられる 3 2 生活リズムと大学生の友人関係 するようにしているか の関係について尋ねた結果を 朝型夜型と 約束や待ち合わせ時刻の何分前に到着 友人関係尺度の下位尺度の平均得点について生活 図12に示す リズム間の差を検討した 表3 分散分析を行った 267

今川 図12 真治 待ち合わせ時刻の何分前に到着するか 図14 友人と時間感覚が合わず悩むことがあるか 朝型の学生は72%が 5 10分前 と回答してお た 朝型の学生は自分の行動時間よりも相手の行動 り 時間ちょうど と回答した学生の割合は13%で 時間が遅い時に 時間感覚が合わない と感じ悩む あった 一方夜型では50%の学生が 時間ちょう ことがあることがわかった ど と回答し 5 10分前 48% を上回った こ の結果から夜型の学生よりも朝型の学生の方が友 4 まとめ 人や他者との約束や待ち合わせに早めに到着するよう 行動していることがわかった 回答者を日本語版朝型 - 夜型質問紙によって分類し 朝型夜型と 夜突然誘われた時翌日の予定を考慮 たところ朝型は21.7%中間型57.1%夜型21.2%と して断ることがあるか の関係について尋ねた結果を いう構成割合でありこの結果は先行研究と類似し 図13に示す たものであった 時間に関わる行動について朝型と夜型別の学生の 行動傾向を比較した 両者の睡眠時間はいずれも15 24歳の日本の男女の平均睡眠時間と大差なく睡眠 時間の差は20分程度しかなかった しかしながら起 床時刻と就寝時刻は朝型の学生と夜型の学生の間に 1時間以上の差があり特に体調が最も良い時刻に は5時間4分もの差があった 朝型の学生は起床 してから3時間36分後 午前11時前 には体調が最も 良い状態となり午前中から活動的であるのに対し 夜型の学生は起床してから体調が最高となるまでに 図13 7時間以上 午後4時前 かかるため夕方近くまで 夜突然の友人からの誘いを断ることがあるか 調子が出ないことがわかった 朝型の学生で よくある と回答した学生は23%お 目が覚めてから容易に起きることができるか や り断ることが ない と回答した学生は2%のみで 起床後30分間の目覚め具合 起床後30分間のけだ あった 他方夜型の学生で断ることが よくある るさの程度 を質問したところ朝型の学生は 容 者は14%に過ぎず 稀にある と ない を合わせた 易である 目覚めている 爽快 と回答した学生 ほとんど断ることがない学生の割合は31%に上った 朝型夜型と 友人と時間感覚が合わず悩むことが が多かった 一方夜型の学生には 容易でない あまり目覚めていない けだるい と回答した学 生が多く両者の間には睡眠習慣に違いがあることが あるか の関係について尋ねた結果を図14に示す 朝型夜型ともに ない と回答した学生の割合の 分かった 石原ら 1986 は大学生の睡眠に関して 方が高かったが 朝型の学生の28%が ある と回答し 自己評価による入眠潜時起床時の気分睡眠に対す 夜型 17% よりもその割合が高かった 朝型の学生 る充足感昼寝の頻度および長さ1カ月あたりの徹 で ある と回答したものに具体的なエピソードを書 夜の回数において朝型と夜型との間に有意な差を認 いてもらったところ 友人の起床時刻が遅い 合 めた 入眠潜時は夜型の方が長く起床時の気分およ 宿の時自分は寝たいのに周りがうるさかった 待 び睡眠時間に対する充足感も夜型の方が悪かったこと ち合わせ時間に平気で遅刻する人がいる などを挙げ を報告している 本調査の結果はこれらと類似してお 268

朝型 夜型の生活リズムと大学生の対人関係 り夜型の生活は睡眠の質が良くないことやそのた 人との約束や待ち合わせに遅れないように時間に余 めに疲労感が取れず容易に起きることができないこ 裕を持って行動していることが考えられる 朝型の学 とを示唆した 生の時間に対する感覚は性格特性との関連も想定さ 翌日全く予定がない場合寝る時刻をいつもと れるため 更なる追求が必要であろう またそれゆえ 比べてどうするか と 寝るのがいつもより遅くなっ 朝型の学生にとって夜型の学生に特徴的と言える時 たが翌朝は特定の時刻に起きる必要がない場合起 間感覚のルーズさはそのような学生と友人関係を結 床時刻はどうするか という質問において朝型の び交際をしていく上で悩みの元となってしまう可能 学生は いつもと同じ や 遅くしても1時間以内 性も示唆された と回答した学生が多く予定の有無にかかわらず就 本研究は平成30年度広島大学教育学部卒業生内藤 寝時刻や起床時刻を変更しないことが分かった その ため 睡眠時間帯が大幅にずれることが少ない 一方 沙綾の卒業研究の収集データを元に作成したものであ 夜型の学生には 就寝時刻を 2時間以上遅くする や る いつもの時刻より遅くまで目覚めない と回答した 学生が多かった このことから夜型の学生は予定の 引用文献 有無によって睡眠時間帯を変更することが多く朝型 の学生よりも睡眠リズムを乱しやすいことが明らかと 橋本聡子 本間さと 本間研一. (2007). 睡眠と生体リ なった ズム. 日薬理誌, 129, 400-403. 竹内 犬上 石原 福田 2000 は学生から社会 平井美穂 神川康子. (1999). 子どもたちの生活リズム 人への移行時における若者の睡眠覚醒パターンを分析 の実態とその問題点. 富山大学教育学部研究論集, 2, した その結果環境が自由なほど就床時刻は遅延し 3-42. がちで大学生活はそのひとつの例であり大学生活 本多正喜 鈴木庄亮 城田陽子 金子鈴 高橋滋. (1994). における不規則で夜型のパターンが習慣化すること 朝型 夜型における自覚的健康度に関する研究. 民 で社会人生活に移行した際規則的な生活に適応で 族衛生, 60, 531-537. きず不眠などの睡眠問題を引き起こす可能性がある Horne & Östberg. (1976). A self-assessment ことを指摘している 本研究の結果からも規則的な questionnaire to determine morningness- 睡眠リズムを持った生活を送ることの必要性が示唆さ eveningness in human circadian rhythms. Int. J. れた Chronobiol., 4, 97-110. また朝型の学生の80%が現在の生活リズムに満足 石原金由 宮下彰夫 犬上牧 福田一彦 山崎勝男 している一方夜型の学生では58%が現在の生活リ 宮田洋. (1986). 日本語版朝型 夜型質問紙による調 ズムに満足していなかった それぞれの個別的理由を 査結果. 心理学研究, 57, 87-91. みると朝型夜型の生活リズムにかかわらず自分の 伊藤千代子 中井芳 杉浦静子. (1998). 朝食欠食と睡 思い通りの時間の使い方ができている学生は自分の生 眠状況との関連に関する研究. 三重県立看護大学紀 活リズムに満足しており夜型の学生は 朝の時間 を無駄にしている 時間をもっと有意義に使いたい 要, 2, 95-98. 葛西真記子 松本麻里. (2010). 青年期の友人関係にお という意識はあるもののなかなか睡眠習慣を変える ける同調行動 同調行動尺度の作成. 鳴門教育大 ことができていないことが分かった 学研究紀要, 25, 189-203. 友人関係尺度の下位尺度得点について男女別に検 岸田典子 佐久間章子 竹田範子. (1999). 夜型化生活 討したところ男子では朝型と夜型の生活リズムと が女子大学生の食生活 健康状態に及ぼす影響 季 友人関係には関連がみられなかった 他方女子では 節別比較. 広島女子大学生活科学部紀要, 5, 47-58. 気遣い尺度について朝型の学生と夜型の学生の間に有 松井知子 古見耕一 角田透 松本一弥 照屋浩司 意な差が見られるなど生活リズムの違いが友人関係 田村ひろみ 竹前健彦. (1989). 学生の健康管理に関 の違いとなって現れる可能性が示唆された する研究 生活習慣と朝 - 夜型生活リズムとの関連 朝型の学生には友人との約束や待ち合わせ時刻の. 杏林医会誌, 20, 447-454. 5 10分前には到着するようにしている学生が多いの 松井豊. (1990). 青年期における友人関係. ( 斉藤耕二 に対して夜型の学生は時間ちょうどに到着するよ 菊池章夫編著. 社会化の心理学ハンドブック, 川島 うにしている学生が多かった 朝型の学生と夜型の学 書店, 283-296.) 生の間には時間感覚に違いがあり朝型の学生は友 Nakade, Takeuchi, Kurotani & Harada. (2009). Effects 269