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は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし

●電力自由化推進法案

その 他 事 業 推 進 体 制 平 成 20 年 3 月 26 日 に 石 垣 島 国 営 土 地 改 良 事 業 推 進 協 議 会 を 設 立 し 事 業 を 推 進 ( 構 成 : 石 垣 市 石 垣 市 議 会 石 垣 島 土 地 改 良 区 石 垣 市 農 業 委 員 会 沖 縄 県 農

平成24年度税制改正要望 公募結果 153. 不動産取得税

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Microsoft Word )40期決算公開用.doc

平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

第316回取締役会議案

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セルフメディケーション推進のための一般用医薬品等に関する所得控除制度の創設(個別要望事項:HP掲載用)



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2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

1 予 算 の 姿 ( 平 成 25 当 初 予 算 ) 長 野 県 財 政 の 状 況 H 現 在 長 野 県 の 予 算 を 歳 入 面 から 見 ると 自 主 財 源 の 根 幹 である 県 税 が 全 体 の5 分 の1 程 度 しかなく 地 方 交 付 税 や 国 庫 支

1 総 合 設 計 一 定 規 模 以 上 の 敷 地 面 積 及 び 一 定 割 合 以 上 の 空 地 を 有 する 建 築 計 画 について 特 定 行 政 庁 の 許 可 により 容 積 率 斜 線 制 限 などの 制 限 を 緩 和 する 制 度 である 建 築 敷 地 の 共 同 化 や

資料3 家電エコポイント制度の政策効果等について

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目 改 正 項 目 軽 自 動 車 率 の 引 上 げ 〇 国 及 び 地 方 を 通 じた 自 動 車 関 連 制 の 見 直 しに 伴 い 軽 自 動 車 の 標 準 率 が 次 のとおり 引 き 上 げられます 車 種 区 分 引 上 げ 幅 50cc 以 下 1,000 円 2,000 円

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文化政策情報システムの運用等

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スライド 1

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●幼児教育振興法案

為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設

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スライド 1

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16 日本学生支援機構

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(5) 給 与 改 定 の 状 況 事 委 員 会 の 設 置 なし 1 月 例 給 事 委 員 会 の 勧 告 民 間 給 与 公 務 員 給 与 較 差 勧 告 A B A-B ( 改 定 率 ) 給 与 改 定 率 ( 参 考 ) 国 の 改 定 率 24 年 度 円 円 円 円 ( ) 改

(1) 率 等 一 覧 ( 平 成 26 年 度 ) 目 課 客 体 及 び 納 義 務 者 課 標 準 及 び 率 法 内 に 住 所 を 有 する ( 均 等 割 所 得 割 ) 内 に 事 務 所 事 業 所 又 は 家 屋 敷 を 有 する で 内 に 住 所 を 有 し ないもの( 均 等

4. その 他 (1) 期 中 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 ( 連 結 範 囲 の 変 更 を 伴 う 特 定 子 会 社 の 異 動 ) 無 新 規 社 ( 社 名 ) 除 外 社 ( 社 名 ) (2) 簡 便 な 会 計 処 理 及 び 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 (24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 級 の 給 料 月 額 最 高 号 級 の 給 料 月 額 1 級 ( 単 位 : ) 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 8 級 9 級 1 級 135,6 185,8 222,9 261,

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PowerPoint プレゼンテーション

別 表 1 土 地 建 物 提 案 型 の 供 給 計 画 に 関 する 評 価 項 目 と 評 価 点 数 表 項 目 区 分 評 価 内 容 と 点 数 一 般 評 価 項 目 立 地 条 件 (1) 交 通 利 便 性 ( 徒 歩 =80m/1 分 ) 25 (2) 生 活 利 便

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Microsoft Word - 目次.doc

1 はじめに 計 画 の 目 的 国 は 平 成 18 年 度 に 住 生 活 基 本 法 を 制 定 し 住 まいに 関 する 基 本 的 な 計 画 となる 住 生 活 基 本 計 画 ( 全 国 計 画 )を 策 定 し 住 宅 セーフティネットの 確 保 や 住 生 活 の 質 の 向 上

国 家 公 務 員 の 年 金 払 い 退 職 給 付 の 創 設 について 検 討 を 進 めるものとする 平 成 19 年 法 案 をベースに 一 元 化 の 具 体 的 内 容 について 検 討 する 関 係 省 庁 間 で 調 整 の 上 平 成 24 年 通 常 国 会 への 法 案 提

送 信 局 を 電 気 通 信 事 業 者 に 貸 し 付 けるとともに 電 気 通 信 事 業 者 とあらかじめ 契 約 等 を 締 結 する 必 要 があること なお 既 に 電 気 通 信 事 業 者 において 送 信 局 を 整 備 している 地 域 においては 当 該 設 備 の 整 備

公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

平成22年度

m07 北見工業大学 様式①

小 売 電 気 の 登 録 数 の 推 移 昨 年 8 月 の 前 登 録 申 請 の 受 付 開 始 以 降 小 売 電 気 の 登 録 申 請 は 着 実 に 増 加 しており これまでに310 件 を 登 録 (6 月 30 日 時 点 ) 本 年 4 月 の 全 面 自 由 化 以 降 申

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別 紙 第 号 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 議 案 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 を 次 のように 定 める 平 成 26 年 2 月 日 提 出 高 知 県 知 事 尾

別紙3

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 三郷市市街化調整区域の整備及び保全の方針(案)

社会保険加入促進計画に盛込むべき内容

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

科 売 上 原 価 売 上 総 利 益 損 益 計 算 書 ( 自 平 成 26 年 4 月 1 日 至 平 成 27 年 3 月 31 日 ) 目 売 上 高 販 売 費 及 び 一 般 管 理 費 営 業 利 益 営 業 外 収 益 受 取 保 険 金 受 取 支 援 金 補 助 金 収 入 保

検 討 検 討 の 進 め 方 検 討 状 況 簡 易 収 支 の 世 帯 からサンプリング 世 帯 名 作 成 事 務 の 廃 止 4 5 必 要 な 世 帯 数 の 確 保 が 可 能 か 簡 易 収 支 を 実 施 している 民 間 事 業 者 との 連 絡 等 に 伴 う 事 務 の 複 雑

私立大学等研究設備整備費等補助金(私立大学等

情 報 通 信 機 器 等 に 係 る 繰 越 税 額 控 除 限 度 超 過 額 の 計 算 上 控 除 される 金 額 に 関 する 明 細 書 ( 付 表 ) 政 党 等 寄 附 金 特 別 控 除 額 の 計 算 明 細 書 国 庫 補 助 金 等 の 総 収 入 金 額 不 算 入 に 関

は し が き

預 金 を 確 保 しつつ 資 金 調 達 手 段 も 確 保 する 収 益 性 を 示 す 指 標 として 営 業 利 益 率 を 採 用 し 営 業 利 益 率 の 目 安 となる 数 値 を 公 表 する 株 主 の 皆 様 への 還 元 については 持 続 的 な 成 長 による 配 当 可


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03 平成28年度文部科学省税制改正要望事項

<重要な会計方針及び注記>

4 松 山 市 暴 力 団 排 除 条 の 一 部 風 俗 営 業 等 の 規 制 及 び 業 務 の 適 正 化 等 に 関 する 法 律 等 の 改 正 に 伴 い, 公 共 工 事 から 排 除 する 対 象 者 の 拡 大 等 を 図 るものです 第 30 号 H H28.1

Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 1 人

市 町 村 税 の 概 況 市 町 村 税 の 概 況 は 平 成 25 年 度 地 方 財 政 状 況 調 査 平 成 26 年 度 市 町 村 税 の 課 税 状 況 等 の 調 及 び 平 成 26 年 度 固 定 資 産 の 価 格 等 の 概 要 調 書 等 報 告 書 等 の 資 料 に

定款  変更

目 次 高 山 市 連 結 財 務 諸 表 について 1 連 結 貸 借 対 照 表 2 連 結 行 政 コスト 計 算 書 4 連 結 純 資 産 変 動 計 算 書 6 連 結 資 金 収 支 計 算 書 7

第5回法人課税ディスカッショングループ 法D5-4

Microsoft Word - H24様式(那珂市版).doc

損 益 計 算 書 自. 平 成 26 年 4 月 1 日 至. 平 成 27 年 3 月 31 日 科 目 内 訳 金 額 千 円 千 円 営 業 収 益 6,167,402 委 託 者 報 酬 4,328,295 運 用 受 託 報 酬 1,839,106 営 業 費 用 3,911,389 一

Taro-01 議案概要.jtd

損 益 計 算 書 ( 平 成 25 年 10 月 1 日 から 平 成 26 年 9 月 30 日 まで) ( 単 位 : 千 円 ) 科 目 金 額 営 業 収 益 304,971 営 業 費 用 566,243 営 業 総 損 失 261,271 営 業 外 収 益 受 取 利 息 3,545

共 通 認 識 1 官 民 較 差 調 整 後 は 退 職 給 付 全 体 でみて 民 間 企 業 の 事 業 主 負 担 と 均 衡 する 水 準 で あれば 最 終 的 な 税 負 担 は 変 わらず 公 務 員 を 優 遇 するものとはならないものであ ること 2 民 間 の 実 態 を 考

能勢町市街化調整区域における地区計画のガイドライン

災害時の賃貸住宅居住者の居住の安定確保について

新 市 建 設 計 画 の 変 更 に 係 る 新 旧 対 照 表 ページ 変 更 後 変 更 前 表 紙 安 中 市 松 井 田 町 合 併 協 議 会 安 中 市 松 井 田 町 合 併 協 議 会 平 成 27 年 3 月 変 更 安 中 市 6 2. 計 画 策 定 の 方 針 (3) 計

課 税 ベ ー ス の 拡 大 等 : - 租 税 特 別 措 置 の 見 直 し ( 後 掲 ) - 減 価 償 却 の 見 直 し ( 建 物 附 属 設 備 構 築 物 の 償 却 方 法 を 定 額 法 に 一 本 化 ) - 欠 損 金 繰 越 控 除 の 更 な る 見 直 し ( 大

3 独 占 禁 止 法 違 反 事 件 の 概 要 (1) 価 格 カルテル 山 形 県 の 庄 内 地 区 に 所 在 する5 農 協 が, 特 定 主 食 用 米 の 販 売 手 数 料 について, 平 成 23 年 1 月 13 日 に 山 形 県 酒 田 市 所 在 の 全 国 農 業 協

質 問 票 ( 様 式 3) 質 問 番 号 62-1 質 問 内 容 鑑 定 評 価 依 頼 先 は 千 葉 県 などは 入 札 制 度 にしているが 神 奈 川 県 は 入 札 なのか?または 随 契 なのか?その 理 由 は? 地 価 調 査 業 務 は 単 にそれぞれの 地 点 の 鑑 定

4 調 査 の 対 話 内 容 (1) 調 査 対 象 財 産 の 土 地 建 物 等 を 活 用 して 展 開 できる 事 業 のアイディアをお 聞 かせく ださい 事 業 アイディアには, 次 の 可 能 性 も 含 めて 提 案 をお 願 いします ア 地 域 の 活 性 化 と 様 々な 世

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 2 年 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 ( 注 ) 給 料 月 額 は 給 与 抑 制 措 置 を 行 う 前 のものです ( 単 位 : ) 3 職 員 の 平 均 給 与 月

(2) 簡 便 な 会 計 処 理 及 び 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 該 当 事 項 はありません (3) 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 作 成 に 係 る 会 計 処 理 の 原 則 手 続 表 示 方 法 等 の 変 更 当

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事 業 概 要 利 用 時 間 休 館 日 使 用 方 法 使 用 料 施 設 を 取 り 巻 く 状 況 や 課 題 < 松 山 駅 前 駐 輪 場 > JR 松 山 駅 を 利 用 する 人 の 自 転 車 原 付 を 収 容 する 施 設 として 設 置 され 有 料 駐 輪 場 の 利 用

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2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

再 生 可 能 エネルギー 等 導 入 推 進 基 金 事 業 計 画 書 ( 各 年 度 計 画 書 ) ( 事 業 計 画 の 概 要 ) 計 画 の 名 称 京 都 府 地 球 温 暖 化 対 策 等 推 進 基 金 計 画 の 期 間 交 付 対 象 京 都 府 府 内 市 町 村 民 間

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Transcription:

地 方 創 生 とエネルギー 自 由 化 で 立 ち 上 がる 地 域 エネルギー 事 業 ドイツ シュタットベルケからの 示 唆 と 地 域 経 済 への 効 果 創 発 戦 略 センター シニアマネジャー 瀧 口 信 一 郎 目 次 1.はじめに 2. 政 策 的 背 景 3. 海 外 先 行 事 例 4. 日 本 でも 進 む 地 域 エネルギー 事 業 5. 地 方 創 生 とエネルギー 政 策 に 与 える 効 果 6. 事 業 実 現 に 向 けた 必 要 施 策 (1) 公 共 によるインフラ 整 備 (2) 需 要 家 接 続 義 務 による 事 業 化 (3) 自 治 体 から 経 営 的 に 独 立 した 事 業 体 (4) 低 コストの 燃 料 調 達 (5) 再 生 可 能 エネルギーの 熱 利 用 (6) 系 統 の 利 用 条 件 整 備 J R Iレビュー 2015 Vol.7, No.26 97

要 約 1. 自 治 体 主 導 で 地 域 のエネルギー 事 業 を 創 造 する 動 きが 全 国 で 広 がっている 地 域 の 生 活 に 不 可 欠 な エネルギーを 核 にして 地 域 の 経 済 や 雇 用 エネルギーセキュリティの 強 化 につなげようとする 動 き である エネルギー 自 由 化 に 向 けた 民 間 企 業 の 参 画 が 事 業 をより 具 体 的 なものとする 2. 地 域 エネルギー 事 業 の 周 辺 では 文 字 通 り 地 域 と エネルギー という 二 つのキーワードで 日 本 の 将 来 を 左 右 する 政 策 が 動 いている 一 つ 目 は 地 方 創 生 であり 二 つ 目 は 電 力 ガスの 小 売 全 面 自 由 化 と 再 エネ 特 措 法 見 直 しをめざす エネルギー 政 策 改 革 である 3.ドイツでは1990 年 代 から 日 本 に 先 行 して 行 われたEUの 電 力 とガスの 自 由 化 でRWE E.ONといった 世 界 最 大 級 の 電 力 会 社 を 生 み 出 した 一 方 で シュタットベルケという 小 規 模 の 地 域 エネルギー 会 社 が 自 由 化 のなかでも 自 己 電 源 ベースで 小 売 りシェアが2 割 程 度 市 場 からの 調 達 を 含 む 小 売 全 体 では5 割 弱 のシェアを 持 つ シュタットベルケは 電 力 のみならず ガス 熱 供 給 水 交 通 など 地 域 にお ける 生 活 サービスを 提 供 しており 地 域 に 貢 献 し 地 域 になくてはならない 存 在 となっている 4. 日 本 でも 地 域 経 済 活 性 化 エネルギーセキュリティ 向 上 を 目 的 に 地 域 エネルギー 事 業 を 実 現 する 動 きが 進 んでいる 人 口 20 万 人 程 度 の 都 市 での 事 業 展 開 を 想 定 し 鳥 取 市 を 対 象 に 試 算 したところ 年 間 30 億 円 弱 15 年 間 で430 億 円 超 の 経 済 波 及 効 果 を 生 み 出 し 年 間 160 名 程 度 15 年 間 でのべ2,500 名 弱 の 雇 用 を 生 み 出 すことがわかった 道 路 建 設 など 公 共 工 事 の 一 時 的 な 効 果 と 比 べ 地 域 の 事 業 により 持 続 的 に 資 金 循 環 が 創 出 されることが 地 域 エネルギー 事 業 の 強 みである これが 仮 に 全 国 100の 自 治 体 に 広 がれば 15 年 間 で4 兆 円 強 25 万 人 弱 の 雇 用 を 生 み 出 す 5. 地 域 エネルギー 事 業 は 地 方 創 生 とエネルギー 政 策 の 分 野 で 国 の 政 策 推 進 を 後 押 しするものとなる 地 方 創 生 では 1 地 域 への 経 済 波 及 効 果 2 人 材 育 成 3 全 国 展 開 の 容 易 さといった 特 性 を 持 つ 一 方 エネルギー 政 策 において 1 地 域 における 再 生 可 能 エネルギーの 推 進 2 需 給 一 体 型 マネジメン トによる 省 エネの 実 現 という 効 果 をもたらす 6. 地 域 エネルギー 事 業 を 立 ち 上 げるためには これまで 十 分 とはいえなかった 熱 利 用 を 促 し 分 散 型 エネルギーシステムを 導 入 しやすくする 政 策 が 必 要 である そのためには 1 公 共 によるインフラ 整 備 2 需 要 家 接 続 義 務 による 事 業 化 3 自 治 体 から 経 営 的 に 独 立 した 事 業 体 4 低 コストの 燃 料 調 達 5 再 生 可 能 エネルギーの 熱 利 用 6 系 統 の 利 用 条 件 整 備 についての 推 進 方 策 が 求 められる 98 J R Iレビュー 2015 Vol.7, No.26

地 方 創 生 とエネルギー 自 由 化 で 立 ち 上 がる 地 域 エネルギー 事 業 1.はじめに 2011 年 の 東 日 本 大 震 災 以 来 自 治 体 が 中 心 となって 地 域 のエネルギーセキュリティを 担 保 するための エネルギー 事 業 が 各 地 で 検 討 されてきた 2012 年 に 始 まった 固 定 価 格 買 取 制 度 は 地 域 資 源 である 再 生 可 能 エネルギーの 利 用 を 促 進 し 地 域 でのエネルギー 事 業 の 可 能 性 を 広 げてきた 2016 年 に 電 力 の 小 売 全 面 自 由 化 を 迎 える 電 力 システム 改 革 は 収 益 機 会 を 狙 う 民 間 企 業 の 参 画 を 後 押 しすることになろう 地 域 エネルギー 事 業 は 地 域 の 生 活 や 経 済 活 動 に 欠 かせないエネルギーを 自 律 的 に 賄 う 枠 組 みによっ て 地 域 経 済 の 基 盤 を 創 出 する 活 動 となる 以 下 では 地 域 エネルギー 事 業 について 行 政 サービスの 向 上 地 域 資 源 の 活 用 や 地 元 雇 用 創 出 による 地 域 活 性 化 エネルギーの 利 用 効 率 やセキュリティの 向 上 といった 意 義 を 確 認 し その 実 現 に 向 け 必 要 となる 施 策 を 提 案 する 2. 政 策 的 背 景 地 域 エネルギー 事 業 の 周 辺 では 文 字 通 り 地 域 と エネルギー の 二 つをキーワードとした 政 策 的 な 動 きがある( 図 表 1) これらは 長 期 的 視 点 で 取 り 組 むべき 日 本 の 将 来 を 左 右 する 政 策 テーマであ るため 地 域 エネルギー 事 業 は 継 続 的 に 政 策 の 影 響 を 受 けることになる 地 域 に 関 して 現 政 権 は 地 方 創 生 を 最 重 要 政 策 の 一 つに 位 置 付 けている 人 口 急 減 超 高 齢 化 というわが 国 が 直 面 する 大 きな 課 題 に 対 し 政 府 一 体 となって 取 り 組 み 各 地 域 がそれぞれの 特 徴 を 活 かした 自 律 的 で 持 続 的 な 社 会 を 創 生 することを 目 指 し 魅 力 あふれる 地 方 を 創 生 し 地 方 への 人 の 流 れを 作 ることを 目 的 としている 地 方 創 生 が 求 められる 背 景 には 本 格 的 な 人 口 減 少 を 目 前 に 工 場 の 撤 退 や 公 共 工 事 の 縮 小 で 地 域 の 収 益 を 生 み 出 す 力 が 弱 まっていることがある 現 状 すでに 国 家 財 政 への 依 存 度 の 高 い 地 方 がさらなる 衰 退 に 直 面 すれば すでに 火 の 車 状 態 にある 国 家 財 政 への 悪 影 響 は 避 けられない 地 域 再 生 は 地 方 のみならず 国 家 全 体 の 課 題 で 国 を 挙 げての 地 方 創 生 が 求 められている エネルギー に 関 しては 半 世 紀 ぶりの 大 改 革 が 行 われている 電 力 とガスのシステム 改 革 が 一 体 で 進 められており 2016 年 には 電 力 の 小 売 全 面 自 由 化 2017 年 にはガスの 小 売 全 面 自 由 化 が 実 施 される 同 時 に 再 エネ 特 措 法 いわゆる 再 生 可 能 エネルギーの 固 定 価 格 買 取 制 度 は 制 度 開 始 から2 年 が 過 ぎ J R Iレビュー 2015 Vol.7, No.26 99

見 直 しが 進 んでいる 想 定 以 上 に 申 し 込 みが 殺 到 したため 2015 年 度 に 国 民 負 担 を 高 めるメガソーラー の 電 力 買 取 価 格 は27 円 にまで 下 げられる 自 由 化 と 並 行 して 再 生 可 能 エネルギー 政 策 も 転 換 期 を 迎 えて いる 3. 海 外 先 行 事 例 日 本 の 地 域 エネルギー 事 業 を 考 えるにあたり 海 外 の 先 行 事 例 としてドイツに 注 目 する ドイツに 注 目 する 一 つ 目 の 理 由 は ドイツが 1990 年 代 以 降 のEUの 電 力 とガスの 自 由 化 のなかで RWE E.ON といった 世 界 最 大 級 の 電 力 会 社 を 生 み 出 した 競 争 市 場 だからである ドイツではRWE E.ONがイギリ スなど 海 外 市 場 にも 進 出 する 一 方 で スウェーデンのヴァッテンフォールが 四 大 電 力 会 社 の 一 角 を 占 め るなど 市 場 のグローバル 化 が 進 んだ 日 本 が2016 年 の 電 力 小 売 全 面 自 由 化 2017 年 のガス 小 売 全 面 自 由 化 を 迎 えるうえで ドイツの 経 験 は わが 国 に 重 要 な 示 唆 を 与 えるものとなろう もっとも ドイツではグローバル 化 した 巨 大 電 力 会 社 が 市 場 のすべてを 席 巻 したわけではなく シュ タットベルケという 地 域 エネルギー 会 社 が 依 然 として 電 力 サプライヤーの 一 角 を 占 めている( 図 表 2) そこがまさにドイツに 注 目 する 二 つ 目 の 理 由 である 大 電 力 が 割 拠 する 競 争 市 場 のなかで シュ タットベルケ という 小 規 模 な 地 域 エネルギー 会 社 が 自 己 電 源 による 小 売 で20% 近 いシェアを 保 持 して いる 市 場 からの 調 達 を 含 めた 小 売 シェアは46%に 上 る 自 由 化 開 始 時 点 では シュタットベルケの 衰 退 を 予 想 する 声 もあったが 今 なお 生 き 残 っている 競 争 市 場 のなかで なぜ 地 域 のエネルギー 会 社 が 顧 客 から 支 持 されるのか シュタットベルケとはどのような 事 業 体 であるのかを 理 解 することは 今 後 の 日 本 のエネルギー 市 場 を 考 えるうえでも 重 要 と 言 えよう シュタットベルケとは 各 地 域 に 本 拠 を 構 え 電 力 のみならず ガス 熱 供 給 水 道 公 共 交 通 通 信 など 様 々な 生 活 インフラサービスを 提 供 する 会 社 である 自 治 体 がドイツの 法 律 上 拒 否 権 を 行 使 でき る25% 以 上 の 出 資 を 行 うのが 一 般 的 である 自 治 体 の 持 分 が100%の 場 合 もあるが 経 営 に 関 しては 自 治 体 から 独 立 した 体 制 を 有 し 人 材 も 独 自 採 用 となっている シュタットベルケは 産 業 革 命 後 エネ 100 J R Iレビュー 2015 Vol.7, No.26

地 方 創 生 とエネルギー 自 由 化 で 立 ち 上 がる 地 域 エネルギー 事 業 ルギー 需 要 が 急 増 した160 年 ほど 前 に 地 域 が 自 律 的 に 生 活 や 産 業 のイ ンフラを 整 備 するために 設 立 された 事 業 体 に 起 源 を 持 つ 中 世 の 城 を 中 心 とした 地 域 国 家 の 集 まりという 歴 史 を 有 し 地 域 の 自 治 を 尊 重 するド イツの 分 権 的 な 構 造 を 反 映 した 事 業 体 といえる( 図 表 3) シュタット ベルケの 数 は2013 年 時 点 で1,422に 上 り 電 力 事 業 を 手 がけるシュタッ トベルケは900を 超 える シュタットベルケは 地 域 経 済 や 雇 用 の 受 け 皿 として 大 きな 存 在 感 を 示 し 地 域 の 資 金 循 環 の 起 点 と もなっている デュイスブルグ 市 のシュタットベルケの 試 算 によれば 大 手 電 力 会 社 から 顧 客 が1ユー ロの 電 力 を 買 った 場 合 地 域 内 に 循 環 する 資 金 は11セント( 約 10%)にとどまるが シュタットベル ケ デュイスブルグから 買 った 場 合 には29セント( 約 30%)が 地 域 内 に 循 環 するとされている すなわ ち 大 手 電 力 会 社 が 電 力 を 買 うのに 比 べ 電 力 販 売 額 の20%に 相 当 する 資 金 が 地 域 内 の 資 金 循 環 に 加 わ ることとなる 地 域 内 から 人 材 や 事 業 に 必 要 な 資 源 を 調 達 することで 地 域 内 の 資 金 循 環 を 押 し 上 げて いる シュタットベルケはドイツ 全 体 に 展 開 しているため ドイツ 全 体 での 経 済 効 果 は 無 視 できない ドイ ツのシュタットベルケ 全 体 のエネルギーの 売 上 は2013 年 約 11 兆 円 (795 億 ユーロを1ユーロ140 円 で 換 算 )で そのうち 電 力 部 門 の2 兆 円 程 度 (ドイツの 電 力 小 売 市 場 10 兆 円 超 の20%)におよび ガス 事 業 J R Iレビュー 2015 Vol.7, No.26 101

と 熱 事 業 の 小 売 売 上 4 兆 円 を 加 えると6 兆 円 程 度 まで 膨 れる この6 兆 円 の20%が 地 域 に 循 環 している ことから 地 域 経 済 の 押 し 上 げ 効 果 は1.2 兆 円 となる シュタットベルケが 普 及 すれば これだけの 資 金 が 定 常 的 に 地 域 内 に 循 環 することになる( 図 表 4) 雇 用 で 見 ると 10 万 人 を 超 える 従 業 員 を 抱 えて いる このようにシュタットベルケは 地 域 のため という 経 営 理 念 のもと 地 域 の 経 済 と 雇 用 双 方 で 多 大 な 貢 献 を 果 たし 自 由 化 された 市 場 での 独 自 の 地 位 を 確 保 している ハイデルベルグ 市 のシュタットベルケも バイオマスなどの 地 域 資 源 を 活 用 して 資 金 の 地 域 内 循 環 を 増 やし 地 域 の 雇 用 を 生 み 出 している そのうえ エネルギー 事 業 が 生 み 出 した 収 益 で 公 共 交 通 事 業 の 費 用 を 補 い 生 活 インフラも 支 えている 観 光 都 市 であるハイデルベルグ 市 でケーブルカーなど 公 共 交 通 運 営 を 支 えることは 市 の 価 値 向 上 の 効 果 も 大 きい こうした 地 域 貢 献 が 地 域 の 需 要 家 からの 認 知 度 を 高 め 支 持 の 獲 得 につながっている シュタットベ ルケ ハイデルベルグは 大 手 電 力 会 社 より1 2% 高 い 値 段 で 電 力 販 売 することもあるが 市 内 の 電 力 市 場 占 有 率 は 高 い ハイデルベルグ 大 学 の 学 生 をはじめ 地 域 への 貢 献 を 重 視 する 住 民 が 多 いという 地 域 特 性 も 手 伝 って 84%の 需 要 家 がシュタットベルケ ハイデルベルグから 電 力 を 買 っている( 図 表 5) シュタットベルケは 地 域 に 根 付 くことで 需 要 家 を 囲 い 込 む 地 域 ドミナント 戦 略 を 取 っている シュ タットベルケ ハイデルベルグは 家 庭 向 けに 省 エネ 家 電 のリース 制 度 を 用 意 したり 省 エネ 診 断 サー ビスを 行 うなど 顧 客 向 けサービスを 行 うことで 地 域 の 顧 客 囲 い 込 みにつなげている 地 域 の 顧 客 事 情 を 徹 底 的 に 理 解 して 複 数 のサービスで 顧 客 接 点 を 強 化 するとともに 地 域 への 貢 献 度 をアピールし 地 域 密 着 企 業 として 地 域 でのブランド 力 を 高 めている 一 方 シュタットベルケは 熱 利 用 によってエネルギーと 地 域 資 源 の 利 用 効 率 を 高 め コスト 競 争 力 向 上 を 図 っている 例 が 多 い 既 設 の 熱 導 管 を 活 用 して 廃 棄 物 やバイオマスの 熱 利 用 を 進 め 電 力 と 熱 を バランスよく 供 給 する 事 業 形 態 を 取 っている 熱 供 給 を 重 視 してきたドイツのエネルギー 政 策 により 整 備 された 熱 導 管 が シュタットベルケの 経 営 戦 略 を 支 える 重 要 なインフラとなっている 102 J R Iレビュー 2015 Vol.7, No.26

地 方 創 生 とエネルギー 自 由 化 で 立 ち 上 がる 地 域 エネルギー 事 業 ドイツが 世 界 最 高 レベルの 再 生 可 能 エネルギー 導 入 国 である 背 景 には 電 力 と 熱 の 二 つのインフラで 再 エネを 柔 軟 に 使 い 分 けられる 事 業 環 境 がある ドイツは 石 油 価 格 が 高 騰 した1970 年 代 にエネルギー セキュリティの 向 上 を 図 り 地 球 温 暖 化 への 注 目 が 高 まった2000 年 代 には 二 酸 化 炭 素 の 排 出 抑 制 を 目 的 に 熱 導 管 の 整 備 を 進 めた こうしたインフラにより 小 規 模 でも 高 い 効 率 が 得 られるエネルギーの 熱 利 用 が 普 及 したのである 結 果 として ドイツではバイオマスの 熱 利 用 は 再 生 可 能 エネルギーの 約 6 割 を 占 める( 図 表 6) シュタットベルケは 電 力 と 熱 を 使 い 分 けることで 大 電 力 会 社 に 対 する 競 争 力 を 維 持 している 4. 日 本 でも 進 む 地 域 エネルギー 事 業 日 本 でも 地 域 エネルギー 事 業 を 立 ち 上 げるための 動 きがみられる 総 務 省 の 分 散 型 エネルギーイン フラ 事 業 では 2013 年 度 に31 自 治 体 が 基 礎 調 査 を 行 い 2014 年 度 には 事 業 の 実 現 性 が 高 い14 自 治 体 が 事 業 計 画 を 策 定 した いずれも 地 域 内 の 需 要 の 核 に 設 置 した 安 定 電 源 や 熱 利 用 設 備 を 基 盤 に 地 域 の 再 生 可 能 エネルギーを 組 み 入 れ 自 律 性 の 高 いエネルギーの 仕 組 みを 構 築 しようとするものである( 図 表 7) 防 災 融 雪 廃 棄 物 処 理 などにかかわる 行 政 コスト 削 減 観 光 林 業 農 業 の 振 興 コンパクトシティ 化 による 市 街 地 活 性 化 離 島 におけるエネルギーの 自 律 性 向 上 などの 観 点 から 地 域 にとって 意 義 が 高 い 事 業 といえよう 地 域 エネルギー 事 業 は 熱 導 管 など 地 域 のインフラ 整 備 や 地 域 毎 の 事 業 体 の 組 成 が 必 要 であるため 自 治 体 が 主 導 してエネルギー 需 要 供 給 システム 事 業 体 制 の 形 成 事 業 収 支 等 を 行 うことになる そ の 際 以 下 のポイントが 重 要 となる 1 公 共 施 設 による 固 い( 変 動 リスクが 少 ない) 需 要 と 民 間 需 要 の 取 り 込 み 公 共 施 設 など 重 要 施 設 にコージェネレーションやバイオマスボイラーの 分 散 型 エネルギーシステ ムを 設 置 し 熱 の 徹 底 利 用 を 図 る 公 共 施 設 の 需 要 を 核 にして 民 間 施 設 に 展 開 する 2 公 的 な 熱 導 管 インフラの 整 備 長 期 の 投 資 回 収 を 可 能 とする 熱 導 管 の 整 備 J R Iレビュー 2015 Vol.7, No.26 103

3 官 民 協 働 の 事 業 体 制 核 となる 需 要 需 給 双 方 のステークホルダーをコーディネートする 自 治 体 およびエネルギー 事 業 のノウハウを 持 つ 民 間 企 業 が 事 業 成 立 の 要 件 であり なかでも 官 民 協 働 体 の 形 成 が 不 可 欠 で ある 地 域 エネルギー 事 業 は 地 域 に 本 社 を 置 き 地 域 資 源 を 活 用 と 地 域 人 材 の 雇 用 を 図 りつつ 地 域 内 外 か ら 投 資 を 呼 び 込 むことで 地 域 に 大 きな 経 済 的 なメリットを 生 み 出 す 日 本 各 地 に 存 在 する20 万 人 規 模 の 都 市 (10 万 人 から30 万 人 の 人 口 規 模 の 自 治 体 は 全 国 に 約 200)で 地 域 エネルギー 事 業 を 立 ち 上 げると 仮 定 し 地 域 に 及 ぼす 経 済 と 雇 用 の 効 果 を 試 算 した ここでは 地 域 エネルギー 事 業 の 計 画 策 定 に 取 り 組 む 鳥 取 市 の 分 析 例 を 示 す( 注 1) 鳥 取 市 外 にも 影 響 が 及 ぶため 鳥 取 県 の 産 業 連 関 表 ( 注 2)を 用 い ている( 図 表 8) ここでの 試 算 は 以 下 の 条 件 を 前 提 としている 電 力 販 売 は ドイツのシュタットベルケを 参 考 に 小 売 のシェア20%を 目 安 とし 2030 年 の 時 点 で4 万 人 の 住 民 ( 全 住 民 の 約 20%)が 地 域 エネルギー 事 業 の 顧 客 になると 仮 定 した( 注 3) 加 えて 公 共 施 設 や 参 画 する 事 業 者 が 関 係 する 業 務 用 ビルなど 10,000kW 程 度 が 需 要 家 になると 仮 定 する( 注 4) この 結 果 2030 年 の 電 力 の 売 上 は 約 20 億 円 2016 年 から2030 年 まで15 年 間 平 均 売 上 は10 億 円 となる 一 方 電 力 の80%がコージェネレーションで 供 給 され ( 注 5) 熱 電 比 率 を50%と 仮 定 すると 熱 の 売 上 は2016 年 から2030 年 までの 年 平 均 で3.7 億 円 となる( 注 6 ) すなわち 人 口 20 万 人 程 度 の 地 域 の 地 域 エネルギー 事 業 会 社 が 地 域 に 本 社 を 置 き 設 備 を 設 置 して 電 力 や 熱 を 供 給 することで 毎 年 約 14 億 円 の 直 接 的 な 経 済 効 果 が 生 まれる 設 備 投 資 としては 市 内 や 周 辺 地 域 におけるバイオマス 発 電 小 水 力 発 電 コージェネレーションの 設 備 投 資 や 熱 導 管 など5 億 円 近 く 104 J R Iレビュー 2015 Vol.7, No.26

地 方 創 生 とエネルギー 自 由 化 で 立 ち 上 がる 地 域 エネルギー 事 業 が 発 生 する( 注 7) 熱 電 併 給 に 加 え 需 要 家 の 効 率 的 なエネルギー 利 用 を 促 すため 需 要 サイドの 省 エ ネサービスを 行 うと1 億 円 程 度 の 省 エネ 設 備 投 資 につながる 以 上 から 直 接 的 な 経 済 効 果 の 合 計 は 約 19 億 円 となる この 直 接 効 果 は6 億 円 程 度 の 一 次 波 及 効 果 ( 県 内 生 産 誘 発 効 果 )を 生 み 出 す 例 えば 化 石 燃 料 の 一 部 を 森 林 バイオマスに 代 えることで 林 業 にプラスの 効 果 を 及 ぼす ここでは 燃 料 の12%がバイオマス になると 想 定 した( 注 8) また 地 域 エネルギー 会 社 の 設 備 投 資 は 建 築 電 気 工 事 土 木 工 事 への 波 及 効 果 を 生 み 出 す これらは 最 終 的 に 地 域 のサービス 業 への4 億 円 程 度 の 二 次 波 及 効 果 ( 県 内 生 産 誘 発 効 果 )につながる 直 接 効 果 一 次 波 及 効 果 二 次 波 及 効 果 を 合 わせると 鳥 取 市 や 周 辺 自 治 体 に 年 間 で30 億 円 弱 15 年 間 で430 億 円 超 の 経 済 波 及 効 果 を 生 み 出 すことになる( 図 表 9) エネルギー 供 給 省 エネ ( 図 表 9) 地 域 エネルギー 事 業 の 経 済 波 及 効 果 ( 生 産 誘 発 効 果 ) 直 接 効 果 一 次 波 及 効 果 二 次 波 及 効 果 ( 県 内 生 産 誘 発 効 果 ) ( 県 内 生 産 誘 発 効 果 ) 1 年 間 合 計 ( 億 円 ) 15 年 間 合 計 ランニング 13.2 4.4 1.9 19.5 292.5 設 備 投 資 4.7 1.5 1.4 7.6 114.4 ランニング 0.3 0.1 0.2 0.6 8.8 設 備 投 資 0.8 0.3 0.3 1.3 19.7 合 計 19.1 6.3 3.7 29.0 435.3 ( 資 料 ) 日 本 総 合 研 究 所 作 成 ( 注 ) 設 備 投 資 については 直 接 効 果 一 次 波 及 効 果 二 次 波 及 効 果 は 15 年 間 の 効 果 として 算 出 した すなわち 産 業 連 関 分 析 上 の 数 値 を15 分 の1にして1 年 間 の 数 字 を 算 出 した 雇 用 効 果 で 見 ると 地 域 エネルギー 事 業 で80 名 程 度 一 次 波 及 効 果 の 事 業 で50 名 程 度 二 次 波 及 効 果 のサービス 業 で30 名 程 度 合 計 160 名 程 度 15 年 間 でのべ2,500 名 弱 の 雇 用 を 生 み 出 す( 図 表 10) 地 域 エネルギー 事 業 の 特 徴 は 効 果 が 長 期 にわたり 継 続 することである 一 時 的 な 効 果 にとどまる 公 共 J R Iレビュー 2015 Vol.7, No.26 105

( 図 表 10) 地 域 エネルギー 事 業 の 雇 用 効 果 ( 人 ) 直 接 効 果 一 次 波 及 効 果 二 次 波 及 効 果 単 純 15 年 間 ( 就 業 誘 発 者 数 ) ( 就 業 誘 発 者 数 ) 合 計 合 計 エネルギー 供 給 ランニング 30 34 16 80 1,200 設 備 投 資 42 13 12 67 1,006 省 エネ ランニング 3 1 1 5 75 設 備 投 資 7 2 2 11 161 合 計 82 50 31 163 2,442 ( 資 料 ) 日 本 総 合 研 究 所 作 成 ( 注 ) 設 備 投 資 については 直 接 効 果 一 次 波 及 効 果 二 次 波 及 効 果 は 15 年 間 の 効 果 として 算 出 した すなわち 産 業 連 関 分 析 上 の 数 値 を15 分 の1にして1 年 間 の 数 字 を 算 出 した 投 資 とは 違 い 生 活 インフラを 供 給 する 事 業 は 継 続 的 に 地 域 に 資 金 と 雇 用 を 生 み 出 す また 森 林 バイ オマスを 利 用 すれば 林 業 への 資 金 還 流 を 生 み 出 し 林 業 の 再 生 を 後 押 しする 国 土 の3 分 の2が 森 林 で ある 日 本 では 多 くの 地 域 で 期 待 できる 効 果 と 言 える 一 般 的 に 地 方 20 万 人 の 地 域 で 以 上 のような 規 模 の 経 済 と 雇 用 の 効 果 を 生 み 出 すのは 容 易 ではない ドイツのシュタットベルケのように 他 の 公 共 サービスを 含 めれば 効 果 はさらに 大 きくなる 可 能 性 もあ る さらに エネルギーをはじめどこの 地 域 にでもあるインフラをベースに 生 み 出 すことができるので ある 仮 に 全 国 100の 自 治 体 で 実 現 されれば 年 間 で30 億 円 弱 16,000 人 15 年 間 で4 兆 円 強 25 万 人 弱 の 経 済 と 雇 用 の 効 果 が 生 まれる ( 注 1) 鳥 取 市 の 人 口 は2014 年 11 月 30 日 時 点 で193,083 人 ( 注 2)ここでは 鳥 取 県 が 提 供 している 平 成 17 年 (2005 年 )の108 分 類 産 業 連 関 表 を 用 い 算 出 した 逆 行 列 については 開 放 型 の 逆 行 列 係 数 表 (I (I M )A) 1 を 用 い 商 業 マージンおよび 運 輸 マージンについては 総 務 省 の 平 成 17 年 (2005 年 ) 産 業 連 関 表 取 引 基 本 表 ( 購 入 者 価 格 評 価 )から 全 国 のデータを 援 用 した ( 注 3) 鳥 取 市 の 一 世 帯 当 たりの 人 数 は2.5 人 ( 人 口 193,083/ 世 帯 数 78,425)のため 約 1 万 6,000 世 帯 に 相 当 月 300kWhの 電 力 使 用 量 で 家 庭 用 電 気 料 金 (2014 年 11 月 時 点 で 中 国 電 力 の 家 庭 用 電 力 料 金 に 基 づき 固 定 料 金 と 変 動 料 金 を 平 均 化 すると22.3 円 /kwh) を 想 定 すると12.6 億 円 の 売 上 となる ( 注 4)ここでは13,000kWの 需 要 が 獲 得 できると 想 定 した ( 注 5)コージェネレーションによる 安 定 的 な 電 力 供 給 を 前 提 に 再 生 可 能 エネルギーの 割 合 は2 割 程 度 と 仮 定 した ( 注 6) 熱 料 金 単 価 は みなとみらい21 熱 供 給 の2010 年 の 熱 料 金 単 価 5.39 円 /MJを 参 考 に5 円 /MJと 設 定 した ( 注 7) 産 業 連 関 分 析 上 は 収 支 上 の 減 価 償 却 費 を 除 くオペレーション(ランニング)と 減 価 償 却 費 に 対 応 する 設 備 投 資 の 二 つの 分 析 を 行 った ( 注 8) 現 状 の 鳥 取 市 の 再 生 可 能 エネルギーにおけるメガソーラーとバイオマスの 割 合 (6 割 程 度 )が 事 業 時 にはバイオマスの 割 合 になるとの 前 提 を 置 いた 今 後 再 生 可 能 エネルギーの 政 策 がメガソーラー 重 視 からバイオマス 重 視 に 移 ることを 前 提 に 設 定 を 行 った 5. 地 方 創 生 とエネルギー 政 策 に 与 える 効 果 地 域 エネルギー 事 業 は 三 つの 観 点 から 地 方 創 生 の 足 掛 かりとなる 一 つ 目 は 上 述 した 経 済 効 果 である 地 域 でお 金 が 回 り 雇 用 が 生 まれることで 取 引 が 活 性 化 され 経 済 の 核 が 生 まれる 二 つ 目 は 人 材 育 成 効 果 である 地 域 に 核 があることで 経 営 人 材 が 育 つとともに これまで 地 域 外 に 頼 っていた 技 術 者 が 育 つ すなわち 地 域 エネルギー 事 業 は 高 度 人 材 を 地 域 で 育 成 する 基 盤 となる 三 つ 目 は 全 国 的 な 事 業 展 開 である 地 域 エネルギー 事 業 は 全 国 どこにでもあるインフラを 起 点 とするため 面 的 な 広 が 106 J R Iレビュー 2015 Vol.7, No.26

地 方 創 生 とエネルギー 自 由 化 で 立 ち 上 がる 地 域 エネルギー 事 業 りをもって 地 方 創 生 に 貢 献 することが 可 能 となろう 地 域 エネルギー 事 業 は 次 に 示 す 二 つの 視 点 から エネルギー 政 策 としての 有 効 性 が 見 出 せる( 図 表 11) 一 つ 目 は 固 定 価 格 買 取 制 度 見 直 し 後 の 再 生 可 能 エネルギーの 推 進 力 となることが 期 待 される 再 生 可 能 エネルギーの 導 入 コストを 抑 えるためには 地 産 地 消 で 電 力 と 熱 をバランスよく 利 用 すべきで あり 地 域 エネルギー 事 業 を 通 じて 熱 導 管 を 整 備 することで バイオマスなどの 熱 利 用 しやすい 環 境 が 整 えば 再 生 可 能 エネルギーの 拡 大 に 貢 献 できる 二 つ 目 は 需 給 一 体 となったエネルギーマネジメントの 普 及 である 地 域 に 密 着 したエネルギーシス テムの 利 点 は 顧 客 に 密 着 したエネルギー 供 給 が 可 能 となることである 需 給 双 方 の 動 向 を 踏 まえたき め 細 かなエネルギーマネジメントが 可 能 となる そのためにはエネルギーの 技 術 者 が 不 可 欠 となるが 地 域 でのエネルギー 利 用 を 継 続 的 に 見 直 すことで 時 間 をかけて 人 材 を 育 てることができる それにより 地 域 の 企 業 はエネルギーに 関 するノウハウを 持 つ 技 術 者 を 雇 用 し 需 要 サイドの 技 術 を 活 用 し 需 給 一 体 型 で 地 域 密 着 のきめ 細 やかなエネルギーマネジメントを 行 うことが 可 能 となる スマートシティの 取 り 組 みで 開 発 された 技 術 やシステムは 需 給 一 体 型 のマネジメントにより 地 域 に 浸 透 させることが 可 能 となろう 6. 事 業 実 現 に 向 けた 必 要 施 策 地 域 エネルギー 事 業 の 実 現 には 自 治 体 が 主 導 してビジョンを 描 き 事 業 の 枠 組 みを 検 討 し 地 元 企 業 を 巻 き 込 み 外 部 からも 必 要 な 機 能 を 取 り 込 むことが 必 要 である 日 本 では 系 統 電 力 に 過 度 に 依 存 す る 政 策 の 下 インフラ 基 盤 燃 料 調 達 構 造 業 界 構 造 が 形 成 されてきたため 地 域 で 分 散 型 エネルギー システムが 導 入 しにくい 構 造 がある 地 域 主 体 のエネルギー 事 業 を 立 ち 上 げるためには 以 下 の 六 つの 要 件 に 対 応 した 政 策 が 必 要 となる( 図 表 12) J R Iレビュー 2015 Vol.7, No.26 107

( 図 表 12) 地 域 エネルギー 事 業 基 盤 強 化 に 向 けた 要 件 項 目 要 件 主 体 インフラ 1 公 共 によるインフラ 整 備 国 自 治 体 上 下 分 離 方 式 に よる 事 業 化 サービス 2 需 要 家 接 続 義 務 による 事 業 化 国 自 治 体 民 間 事 業 体 3 自 治 体 から 経 営 的 に 独 立 した 事 業 体 自 治 体 民 間 4 低 コストの 燃 料 調 達 国 エネルギー 燃 料 5 再 生 可 能 エネルギーの 熱 利 用 国 システムの 改 革 余 剰 電 力 6 系 統 の 利 用 条 件 整 備 国 ( 資 料 ) 日 本 総 合 研 究 所 作 成 (1) 公 共 によるインフラ 整 備 一 つ 目 は 熱 導 管 を 公 共 団 体 が 主 体 となって 整 備 するための 制 度 作 りである 一 般 的 にインフラは 長 期 間 での 投 資 回 収 が 必 要 なため 長 期 資 金 の 確 保 が 必 要 となる 通 常 道 路 は 公 的 資 金 で 整 備 され 電 力 系 統 は 地 域 独 占 の 電 力 会 社 が 総 括 原 価 方 式 でコストを 需 要 家 に 転 嫁 できる 制 度 の 下 で 整 備 された それ が 許 されたのは 道 路 や 電 力 系 統 が 経 済 基 盤 として 不 可 欠 だったからに 他 ならない 熱 導 管 についても エネルギーの 効 率 的 な 利 用 ならびに 地 域 経 済 底 上 げ 効 果 を 踏 まえ 公 的 な 資 産 と しての 整 備 が 正 当 化 されても 理 論 的 な 矛 盾 はない これまでのわが 国 の 熱 供 給 事 業 では 国 の 支 援 はあ ったものの 熱 配 管 を 民 間 資 産 として 整 備 したことが 事 業 としての 拡 大 を 難 しくした 大 きな 原 因 の 一 つで あった 熱 配 管 の 法 定 耐 用 年 数 は17 年 に 設 定 されているが 日 本 での 実 績 を 見 ても 実 際 には40~50 年 の 利 用 が 可 能 である こうした 長 期 の 利 用 が 可 能 な 資 産 については 日 本 では 公 共 資 産 として 整 備 した うえで 長 期 の 償 還 期 間 を 前 提 とした 利 用 料 等 が 算 定 されている 熱 配 管 についても 同 様 に 位 置 付 けれ ば 基 幹 部 分 については 公 共 資 産 として 整 備 して 適 切 な 利 用 料 を 設 定 することに 正 当 性 が 見 出 せる 下 水 道 管 水 道 管 と 同 等 の 公 共 財 であると 考 えれば 並 行 して 整 備 されることを 考 えると 自 治 体 が 起 債 等 で 資 金 調 達 したうえで 整 備 を 進 め 後 に 国 が 交 付 税 を 上 乗 せするなどの 財 政 面 で 支 援 するという 仕 組 みが 考 えられる (2) 需 要 家 接 続 義 務 による 事 業 化 二 つ 目 は 民 間 事 業 者 の 熱 利 用 を 促 進 するための 枠 組 み 作 りである 公 的 資 金 による 熱 配 管 が 整 備 さ れた 地 域 においては 一 定 以 上 の 施 設 を 建 設 する 場 合 熱 利 用 のための 設 備 を 設 けることを 義 務 付 ける あるいはそのための 税 制 補 助 金 等 でのインセンティブを 付 与 する といった 取 り 組 みが 考 えられる 公 的 施 設 においては 接 続 と 利 用 の 義 務 を 課 すことも 考 えられる 上 述 した 償 却 期 間 と 実 利 用 期 間 のか 108 J R Iレビュー 2015 Vol.7, No.26

地 方 創 生 とエネルギー 自 由 化 で 立 ち 上 がる 地 域 エネルギー 事 業 ( 図 表 13)ドイツと 日 本 の 熱 導 管 の 償 却 期 間 比 較 国 区 分 対 象 法 定 耐 用 年 数 断 熱 性 パイプ 20 材 質 別 銅 管 30 ドイツ プラスチックパイプ 30 敷 設 方 法 別 鉄 筋 コンクリートの 共 同 溝 内 に 埋 設 25 地 上 または 直 埋 設 20 貸 借 対 照 表 の 償 却 年 数 35 備 考 材 質 別 の 耐 用 年 数 は 比 較 的 長 期 に 設 定 敷 設 を 考 慮 して 耐 用 年 数 が 見 込 まれる 実 際 の 耐 用 年 数 は50 年 以 上 のため 新 たな 基 準 作 りも 検 討 日 本 熱 供 給 業 用 設 備 17 17 法 定 耐 用 年 数 に 基 づく 議 論 が 中 心 ( 資 料 )ドイツ 技 術 者 協 会 規 格 (VDI) シュタットベルケ デュイスブルグヒアリングなどをもとに 日 本 総 合 研 究 所 作 成 い 離 については ドイツでは 償 却 年 数 を35 年 とする 措 置 がなされている( 図 表 13) 日 本 でも 償 却 負 担 の 大 きな 施 設 については 同 様 の 措 置 が 検 討 されても 良 いのではないだろうか (3) 自 治 体 から 経 営 的 に 独 立 した 事 業 体 三 つ 目 は エネルギー 事 業 の 事 業 体 を 自 治 体 から 経 営 的 に 独 立 させることである 熱 導 管 などのイン フラを 整 備 し 地 域 の 経 済 社 会 システムを 動 かすには 自 治 体 が 公 益 性 の 観 点 で 強 く 関 与 すべきである 地 域 エネルギー 事 業 が 地 域 経 済 のエンジンとしての 役 割 を 担 うためには 自 治 体 による 事 業 の 立 ち 上 げ に 強 いコミットメントが 必 要 であり 自 治 体 出 資 で 事 業 を 立 ち 上 げることも 考 えられる しかしながら エネルギー 事 業 が 自 治 体 の 事 情 に 振 り 回 され 自 治 体 出 資 者 が 経 営 者 として 送 り 込 まれるようになれば 事 業 としての 持 続 的 成 長 はおぼつかない 自 治 体 は 出 資 者 の 立 場 から 経 営 に 対 し 一 定 のガバナンスを 効 かせるにとどまり 実 際 の 事 業 はエネルギー 事 業 にノウハウを 持 つガス 会 社 などの 地 元 企 業 分 散 型 エネルギーの 運 用 に 長 けたメーカーなど 民 間 企 業 に 委 ねる 体 制 作 りも 必 要 である (4) 低 コストの 燃 料 調 達 四 つ 目 は 地 方 のガス 会 社 の 燃 料 コストの 低 減 化 を 支 援 するための 枠 組 み 作 りである エネルギー 分 野 では 経 済 産 業 省 がエネルギー 供 給 構 造 高 度 化 法 による 設 備 基 準 をもとに 近 年 石 油 精 製 設 備 の 統 廃 合 を 主 導 するなど 実 質 的 な 国 主 導 の 効 率 化 の 先 例 がある 経 済 産 業 省 が 主 導 する 東 京 電 力 改 革 は 東 京 電 力 と 中 部 電 力 の 提 携 につながり LNG 調 達 集 約 化 の 起 点 となりつつある しかし 競 争 の 少 ない 地 方 部 では 大 手 エネルギー 会 社 がすべての 需 要 家 に 対 して 安 い 燃 料 の 供 給 を 競 うとは 限 らないため 燃 料 が 高 止 まりする 可 能 性 もある LNG 調 達 の 構 造 変 化 が 地 方 にまで 及 ぶような 制 度 設 計 が 望 まれる 例 えば 地 方 ガス 会 社 が 大 手 エネルギー 会 社 によるLNG 調 達 に 共 同 参 画 する 支 援 制 度 を 国 が 整 備 し 地 方 ガス 会 社 が 共 同 調 達 枠 組 みの 恩 恵 を 受 ける 制 度 作 りが 考 えられる あるいは 自 由 化 後 には 国 が 卸 ガス 市 場 の 整 備 を 進 めることも 検 討 すべき 課 題 と 言 えよう すでに 東 京 工 業 品 取 引 所 のOTC 市 場 で LNGの 先 物 市 場 が 創 設 されたが 実 需 を 伴 わない 取 引 のため LNG 価 格 の 変 動 への 対 処 にはなるもの のLNG 調 達 コストを 低 減 するためには 不 十 分 である 大 手 エネルギー 会 社 が 調 達 したLNGの 一 定 割 合 を 一 定 の 利 益 率 で 卸 市 場 に 販 売 することを 義 務 付 けるといった 仕 組 みを 具 体 化 すれば 地 方 ガス 会 社 の LNG 調 達 コスト 低 減 につながる J R Iレビュー 2015 Vol.7, No.26 109

(5) 再 生 可 能 エネルギーの 熱 利 用 五 つ 目 は 地 域 経 済 の 底 上 げとエネルギー 供 給 源 の 多 様 化 のための バイオマス 供 給 の 仕 組 みづくり である バイオマスは 林 業 農 業 食 品 加 工 業 などとの 相 関 が 強 く 燃 料 化 できれば 地 域 経 済 を 変 える きっかけとなり 得 る 森 林 バイオマスでは 林 道 整 備 が 不 十 分 で 山 中 に 放 置 され A 材 B 材 と 呼 ばれ る 建 築 用 木 材 とC 材 と 呼 ばれる 間 伐 材 で 収 集 ルートが 分 離 するなど 林 業 とバイオマス 事 業 の 一 体 運 用 が 課 題 となっている そこで 地 域 全 体 でC 材 の 切 り 出 しを 一 体 化 するなど 効 率 的 な 森 林 経 営 が 必 要 となる 森 林 組 合 な ど 既 存 組 織 にとって 新 たな 負 担 が 発 生 するため 林 業 の 衰 退 に 危 機 感 を 抱 く 地 域 では 自 治 体 が 中 心 と なって 事 業 を 手 がけている 例 もある 岡 山 県 西 粟 倉 村 では 自 治 体 が 森 林 の 総 合 的 な 活 用 を 行 う 森 林 百 年 構 想 の 一 環 として バイオマス 事 業 を 手 がけている (6) 系 統 の 利 用 条 件 整 備 六 つ 目 は 熱 電 のバランスのとれたコージェネレーションと 系 統 電 力 の 協 調 運 用 のための 制 度 作 りで ある 経 済 産 業 省 が 作 成 した 分 散 電 源 の 系 統 接 続 のガイドラインは 系 統 への 電 力 の 流 れ( 逆 潮 流 )を 制 度 的 には 認 めつつも 運 用 上 厳 しい 制 約 をかけてきた 安 全 性 を 担 保 するための 保 護 装 置 やセンサー の 設 置 負 担 が 分 散 電 源 サイドに 求 められている そのうえ 変 電 所 の 既 存 容 量 の 制 約 がかかり 分 散 電 源 から 系 統 への 逆 潮 流 は 困 難 なのが 実 態 であった コージェネレーションの 電 力 が 余 った 場 合 は 系 統 に 流 し 不 足 する 場 合 は 系 統 から 電 力 を 調 達 できるようにすれば 設 備 稼 働 率 を 上 げることができる また 熱 の 需 要 に 合 わせてコージェネレーションを 運 用 するには 系 統 との 柔 軟 なやり 取 りが 必 須 に なる 2016 年 4 月 に 広 域 的 運 営 推 進 機 関 が 設 置 され 2020 年 には 発 送 電 分 離 が 実 行 され 中 立 的 な 系 統 運 用 が 実 現 するなかで 分 散 電 源 の 柔 軟 な 運 用 のための 系 統 接 続 への 方 針 が 示 されることが 必 要 となる これまでは 供 給 設 備 として 変 電 所 の 容 量 増 設 につながる 分 散 電 源 に 接 続 制 約 がかけられてきたが 分 散 電 源 の 主 たる 目 的 は 需 要 サイドの 効 率 的 なエネルギー 利 用 であるから 柔 軟 な 系 統 接 続 を 許 容 しうる と 考 えられる それに 伴 う 変 電 所 の 容 量 拡 大 のコスト 等 は 送 配 電 会 社 の 総 括 原 価 のコストとして 見 込 むことが 可 能 となる 以 上 のように 分 散 型 エネルギーシステムを 具 体 化 できる 国 の 政 策 自 治 体 のアクションが 実 行 される ことで 官 民 共 同 で 地 域 の 事 業 を 立 ち 上 げることが 可 能 となる 地 方 創 生 では 持 続 的 な 経 済 のエンジ ンを 地 域 に 埋 め 込 むことが 大 切 であり 地 域 エネルギー 事 業 はその 役 割 を 果 たせる 数 少 ない 選 択 肢 の 一 つである 分 散 型 エネルギーシステムを 軸 とした 地 域 エネルギー 事 業 の 拡 大 のために 早 急 な 政 策 整 備 が 求 められる (2015. 4. 24) 110 J R Iレビュー 2015 Vol.7, No.26