土 木 学 会 熊 本 地 震 広 域 交 通 ネットワーク 調 査 団 調 査 報 告 ( 速 報 ) 2016 年 4 月 27 日 家 田 仁 ( 政 策 研 究 大 学 院 大 学 団 長 ) 岩 倉 成 志 ( 芝 浦 工 業 大 学 ) 平 田 輝 満 ( 茨 城 大 学 ) 柳 沼 秀 樹 ( 東 京 理 科 大 学 ) 目 次 1. 調 査 活 動 の 概 要 2. 大 局 的 に 見 て 今 回 の 震 災 をどのようなものと 捉 えるか?~ 特 に 広 域 交 通 NTW の 視 点 から~ 3. 広 域 交 通 ネットワークの 施 設 被 害 / 復 旧 の 状 況 をどう 見 るか?~ 既 往 震 災 との 比 較 を 含 めて~ 4. 広 域 交 通 ネットワークに 関 する 重 要 な 検 討 課 題 と 展 望 1. 調 査 活 動 の 概 要 (1) 現 地 調 査 時 期 : 4 月 21 日 ~24 日 (2) ヒアリング 調 査 対 象 機 関 ( 訪 問 順 ): 国 土 交 通 省 九 州 地 方 整 備 局 西 日 本 高 速 道 路 株 式 会 社 九 州 支 社 国 土 交 通 省 九 州 運 輸 局 鉄 道 運 輸 施 設 整 備 機 構 九 州 新 幹 線 建 設 局 九 州 旅 客 鉄 道 株 式 会 社 熊 本 空 港 ビルディング 株 式 会 社 国 土 交 通 省 大 阪 航 空 局 熊 本 空 港 事 務 所 (3) 現 場 調 査 対 象 箇 所 : 九 州 自 動 車 道 国 道 57 号 325 号 の 被 災 箇 所 益 城 町 熊 本 市 などの 道 路 街 路 などの 被 災 箇 所 九 州 新 幹 線 列 車 脱 線 現 場 熊 本 港 熊 本 空 港 (ターミナルビル)など 2. 大 局 的 に 見 て 今 回 の 震 災 をどのようなものと 捉 えるか?~ 特 に 広 域 交 通 NTW の 視 点 から~ 1 益 城 町 などを 中 心 とする 建 造 物 被 害 とそれに 伴 う 人 的 被 害 南 阿 蘇 などを 中 心 とする 大 規 模 な 斜 面 崩 落 や 土 砂 災 害 に 伴 う 人 的 被 害 施 設 被 害 広 域 的 な 陸 上 交 通 ネットワークが 寸 断 2 物 理 的 な 被 害 の 規 模 に 比 較 して 多 数 の 避 難 者 が 発 生 ( 最 大 時 避 難 者 数 / 被 災 住 宅 数 :19 万 人 / 約 4000 棟 阪 神 :32 万 人 /52 万 棟 中 越 :10 万 人 /12 万 棟 ) 救 援 救 護 のニーズ 拡 大 広 域 交 通 機 能 へのニーズ 3 前 震 / 本 震 の2 段 階 の 震 度 7クラスの 大 地 震 + 約 1 週 間 程 度 続 いた 震 度 4 以 上 の 多 数 の 余 震 被 害 の 逐 次 拡 大 / 復 旧 作 業 の 困 難 / 復 旧 時 間 が 拡 大 4 震 源 の 断 層 線 に 近 接 していたが 幸 いに 軽 微 な 被 害 ですんだ 熊 本 空 港 や 熊 本 港 八 代 港 航 空 海 上 交 通 による 陸 上 交 通 のバックアップ 機 能 が 発 揮 1
3. 広 域 交 通 ネットワークの 施 設 被 害 / 復 旧 の 状 況 をどう 見 るか?~ 既 往 震 災 との 比 較 を 含 めて~ a) 幹 線 道 路 ネットワークに 関 して 道 路 に 関 する 施 設 被 害 は かなり 広 いエリアで 発 生 しているが 大 きな 被 害 の 多 くは 断 層 付 近 ( 日 奈 久 断 層 布 田 川 断 層 )に 集 中 阪 神 大 震 災 後 に 作 られた 新 しい 耐 震 基 準 による 補 強 などによって 高 速 道 路 や 一 般 国 道 については 震 度 6-7の 強 震 エリアについても 橋 梁 崩 壊 などの 深 刻 な 被 害 を 免 れている 高 速 道 路 では 九 州 自 動 車 道 と 大 分 自 動 車 道 で 通 行 止 めを 伴 う 被 害 箇 所 が 約 10 箇 所 で 発 生 震 度 4 以 上 の 余 震 による 作 業 中 断 が 必 要 であったことなどのためか 通 行 止 めの 完 全 解 除 には 既 往 震 災 に 比 べると 時 間 を 要 している 九 州 自 動 車 道 については 高 速 道 路 を 横 断 する 県 道 などの 道 路 橋 などの 被 害 が 中 心 で その 撤 去 によってまもなく 解 除 される 見 通 し 大 分 自 動 車 本 線 の 橋 梁 の 損 傷 については 通 行 止 め 解 除 に 時 間 を 要 する 見 通 し 九 州 自 動 車 道 の 植 木 IC~ 益 城 熊 本 空 港 IC の 通 行 止 め 区 間 では 本 震 2 日 後 から 緊 急 輸 送 車 に 限 って 通 行 を 開 始 (8 日 後 からはさらに 高 速 バスも 緊 急 輸 送 車 扱 いに) 高 速 道 路 の 通 行 止 め( 植 木 IC 八 代 IC 間 ) に 伴 う 渋 滞 を 緩 和 するため 植 木 IC 付 近 では 暫 定 的 な 迂 回 路 策 定 とドライバーへの 情 報 提 供 を 強 化 し 渋 滞 の 緩 和 に 努 力 (ピーク 時 渋 滞 延 長 15km 3km 未 満 に 減 少 ) 国 道 など 一 般 道 の 被 害 は 比 較 的 軽 微 ( 土 工 部 の 被 災 や 土 砂 落 石 が 中 心 )で 長 期 的 な 通 行 止 めを 伴 う 被 害 は 既 往 震 災 と 比 較 して 少 ない 全 般 的 に 見 ると 県 道 町 道 などを 含 めて 代 替 経 路 が 概 ね 確 保 できてい る ただし 例 外 的 ケースとして 国 道 57 号 の 立 野 地 区 は 阿 蘇 山 外 輪 山 のまさに 喉 首 部 に 相 当 する 場 所 で 大 規 模 な 斜 面 崩 壊 ( 長 さ 700m 幅 200m)が 発 生 し 国 道 325 号 の 阿 蘇 大 橋 や 並 行 する 在 来 線 の 豊 肥 本 線 も 流 失 これに 伴 い 南 阿 蘇 村 では 集 落 や 施 設 の 孤 立 が 発 生 した 一 般 道 の 道 路 啓 開 作 業 については 予 震 直 後 より 国 土 交 通 省 ( 全 国 )から 自 治 体 へのリエゾンや TECH- FORCE 部 隊 ( 約 400 名 )が 派 遣 された 上 記 箇 所 のような 一 部 の 区 間 を 除 くと 既 往 災 害 と 比 較 してもかなり 早 い 時 期 に 啓 開 作 業 が 開 始 完 了 された また 東 日 本 大 震 災 後 に 作 成 された 啓 開 計 画 とノウハウ これま で 実 施 してきた 自 治 体 と 協 力 した 道 路 啓 開 活 動 のトレーニングが 活 かされた( 本 年 3 月 には 南 海 トラフ 地 震 津 波 を 想 定 して 九 州 東 進 計 画 が 発 表 されている) b) 九 州 新 幹 線 など 鉄 道 ネットワークに 関 して 九 州 新 幹 線 (2011 年 3 月 開 業 )は 阪 神 大 震 災 後 に 作 られた 新 しい 耐 震 基 準 によって 作 られたもので 震 度 6~7の 大 きな 震 動 を 記 録 したエリアについても 構 造 物 の 被 害 は 高 架 橋 コンクリートの 軽 微 な 表 層 の 剥 離 や 新 八 代 駅 のホーム 桁 柱 の 損 傷 など 軽 微 な 被 害 が 散 見 されるに 留 まっている 東 日 本 大 震 災 において 東 北 新 幹 線 で 多 数 発 生 し 運 転 再 開 の 時 間 的 ボトルネックとなった 電 化 柱 (コンクリート 製 )の 倒 壊 被 害 は 比 較 的 軽 量 な 鋼 管 柱 を 電 化 柱 に 使 用 した 九 州 新 幹 線 では 全 く 発 生 していない その 他 に 防 音 壁 のコンクリ ートパネルの 高 架 橋 の 外 側 への 落 下 (54km の 区 間 にわたって 89 箇 所 )と 沿 線 の 民 間 施 設 の 古 いレンガ 造 り 煙 突 が 倒 壊 し 新 幹 線 線 路 の 端 部 を 一 部 支 障 する 被 害 が 生 じた 2
在 来 線 については 豊 肥 本 線 立 野 付 近 での 巨 大 な 斜 面 崩 壊 によって 線 路 が 流 失 しているが 新 規 に 建 設 された 熊 本 駅 付 近 で 建 設 中 の 高 架 橋 を 含 めて 重 大 な 構 造 物 被 害 は 生 じていない 〇 九 州 新 幹 線 では 中 越 地 震 や 東 日 本 大 震 災 時 と 同 様 に1 列 車 (6 両 編 成 150m)が 14 日 の 前 震 時 に 脱 線 ( 脱 線 痕 は 約 300m の 延 長 にわたって 残 っている) 熊 本 駅 南 方 の 本 線 上 の 半 径 1000m の 曲 線 を 80km/h ( 通 常 速 度 が 120km/h の 区 間 )で 回 送 運 転 中 の 列 車 九 州 新 幹 線 では 2004 年 の 中 越 地 震 以 降 に JR 各 社 によって 検 討 導 入 されてきた 直 下 型 強 震 時 の 新 幹 線 列 車 の 脱 線 対 策 を 踏 まえ 危 険 性 が 高 いものと 考 え られる 活 断 層 近 傍 を 優 先 して( 東 海 道 新 幹 線 と 同 様 の) 脱 線 防 止 ガードを 設 置 ( 全 線 の 約 10%の 区 間 に 設 置 )している ただし 当 該 脱 線 箇 所 は 脱 線 防 止 ガードを 設 置 していない 区 間 なお 一 部 の 列 車 には 逸 脱 防 止 ストッパーが 設 置 されている 新 幹 線 の 脱 線 列 車 には( 中 越 地 震 のケースとは 異 なり) 反 対 線 を 支 障 するような 線 路 逸 脱 を 生 じていない ( 枠 型 軌 道 スラブが 逸 脱 防 止 の 効 果 をもたらしたのではないかという 意 見 もある) 余 震 に 対 する 安 全 性 の 確 保 のため 本 格 的 な 復 旧 作 業 には 多 少 の 時 間 を 要 したが 脱 線 現 場 の 線 路 被 害 は 中 越 地 震 のケースと 比 べて 軽 微 なもので 脱 線 車 両 の 撤 去 後 レール 締 結 装 置 の 更 換 や 枠 型 軌 道 スラブのコンクリート 損 傷 部 の 補 修 によって 迅 速 な 運 転 再 開 が 可 能 (28 日 の 再 開 が 予 定 されている) この 他 に 筑 後 船 小 屋 駅 - 熊 本 駅 間 では 営 業 車 両 が3 編 成 走 行 していたがいずれも 安 全 に 停 止 ( 内 2 列 車 は 脱 線 防 止 ガードの 設 置 区 間 ) 脱 線 防 止 ガードを 含 めた 直 下 型 強 震 時 の 脱 線 対 策 の 効 果 については 今 後 詳 細 な 技 術 的 検 証 が 必 要 であるが 今 回 の 震 災 での 経 験 はこれまでの 対 策 の 基 本 的 考 え 方 を 裏 切 る ものとはなっていない 地 震 直 後 には 九 州 新 幹 線 を 含 めて6 路 線 が 不 通 となったが 大 きな 被 害 を 生 じた 豊 肥 本 線 ( 肥 後 大 津 ~ 豊 後 竹 田 )や 南 阿 蘇 鉄 道 を 除 くと 在 来 線 は 地 震 発 生 後 10 日 間 程 度 の 間 に 運 転 を 逐 次 再 開 し 既 に 完 了 して いる 九 州 新 幹 線 の 運 転 再 開 は 博 多 熊 本 間 が 9 日 間 全 線 開 通 は 14 日 間 ( 予 定 )となっている これは 既 往 震 災 ( 東 日 本 大 震 災 :49 日 間 中 越 地 震 :66 日 間 阪 神 大 震 災 :81 日 )と 比 較 すると 顕 著 に 短 い c) 空 港 及 び 航 空 ネットワークに 関 して 熊 本 空 港 は 震 源 地 に 近 い 益 城 町 に 位 置 していたにもかかわらず 滑 走 路 駐 機 場 管 制 保 安 施 設 など の 空 港 の 基 本 施 設 については 被 害 は 軽 微 なクラックの 発 生 などに 留 まった これは 同 空 港 が 地 盤 条 件 の 良 い 高 台 の 上 に 設 置 されていることに 加 えて 基 本 施 設 の 耐 震 性 能 が 2013 年 に 行 われた 耐 震 照 査 で 確 認 済 みであり 管 制 塔 も 2007 年 に 耐 震 改 修 済 みであったこと 霧 対 策 のための CATⅢb 等 の 管 制 保 安 施 設 には 機 器 の 正 常 動 作 をモニタリングする 装 置 があり 損 傷 がないことがすぐに 確 認 できたことなどが 功 を 奏 したものと 考 えられる 熊 本 空 港 の 旅 客 ターミナルビルでは 最 も 古 いメインフロアは 2012 年 に 全 面 改 修 し ブレースによる 耐 震 補 強 に 加 え 過 去 に 他 の 空 港 で 落 下 事 例 のあった 吊 り 天 井 についても 耐 震 対 策 をしていたため 被 害 は 軽 微 であった ただし 1 期 から4 期 まで 段 階 的 に 増 築 してきたビルの 境 界 箇 所 では 一 部 の 構 造 部 材 に 被 害 が 発 生 し ターミナルの 使 用 に 制 約 を 生 じさせている 3
こうした 結 果 発 災 後 安 全 点 検 を 経 て 直 後 より 緊 急 支 援 機 の 運 航 が 可 能 となった また 旅 客 ターミナルも ( 使 用 には 制 約 をともないつつではあるが) 本 震 から 3 日 目 には 一 般 旅 客 便 の 発 着 を 再 開 することができた 熊 本 地 震 を 踏 まえて 熊 本 空 港 は 暫 定 的 に24 時 間 運 用 がなされている 熊 本 空 港 には 陸 上 自 衛 隊 分 屯 地 と 熊 本 県 防 災 用 駐 機 場 が 隣 接 して 設 置 されており 道 路 等 のネットワ ークが 寸 断 される 中 ヘリなどによる 被 災 地 への 支 援 活 動 の 交 通 拠 点 としての 機 能 が 大 いに 発 揮 された 後 者 は 2014 年 度 末 に 整 備 されたもので 南 海 トラフ 地 震 に 対 する 全 国 5 箇 所 の 広 域 防 災 拠 点 のひとつとして 2015 年 に 指 定 されている 福 岡 ~ 鹿 児 島 等 の 臨 時 航 空 便 が 運 行 されたことも 航 空 輸 送 による 陸 上 交 通 ネットワークの 代 替 機 能 を 果 たしている また 熊 本 空 港 は 第 一 空 港 線 と 第 二 空 港 線 の 二 つのアクセス 道 路 によって 周 辺 市 街 地 や 高 速 道 路 と 結 ばれており 広 域 交 通 上 高 い 利 便 性 と 多 重 性 が 確 保 されていることもプラスの 因 子 ということ ができる d) 港 湾 及 び 海 上 ネットワーク 熊 本 港 八 代 港 別 府 港 では 軽 微 な 損 傷 が 発 生 したのみで 被 害 は 限 定 的 被 災 地 に 最 も 近 い 熊 本 港 は 遠 浅 の 海 に 熊 本 港 大 橋 で 繋 がった 埋 立 地 に 建 設 されているが 岸 壁 ガントリークレーンなどの 重 要 な 荷 役 施 設 アクセス 道 路 の 橋 梁 といった 重 要 な 施 設 には 極 めて 軽 微 な 被 害 しか 生 じていない ヤードや 臨 港 道 路 面 のクラックや 段 差 ( 数 10 センチ 程 度 ) フェリーの 乗 降 可 動 橋 の 機 械 部 分 などに 軽 微 な 不 具 合 が 発 生 したが いずれも 短 期 間 に 応 急 復 旧 している なお 顕 著 で 深 刻 な 液 状 化 や 噴 砂 は 生 じていない 熊 本 港 の 岸 壁 は 耐 震 化 が 未 了 であったが 幸 いにも 今 回 は 深 刻 な 被 害 を 免 れた この 点 については 技 術 的 な 検 証 が 必 要 である いずれにしても アクセス 道 路 の 橋 梁 などを 含 めて 港 湾 の 重 要 施 設 が 震 災 後 に も 機 能 できることの 重 要 性 が 再 確 認 された この 結 果 4/20 までに 応 急 復 旧 を 終 え 22 日 にはフェリー 入 港 23 日 にはコンテナ 船 の 入 港 を 再 開 福 岡 市 からの 支 援 物 資 の 海 上 輸 送 にも 熊 本 港 が 使 われた なお 有 明 海 を 横 断 し 熊 本 と 島 原 半 島 と 直 結 する フェリーは 2 社 が 運 航 ( 高 速 フェリー7 往 復 一 般 フェリー8 往 復 )する 生 活 産 業 上 も 観 光 上 も 非 常 に 重 要 な 路 線 となっている また 熊 本 市 の 断 水 に 伴 い 4/16 からは 船 舶 からの 飲 料 水 を 提 供 ( 国 交 省 の 調 査 観 測 兼 清 掃 船 により) 海 上 保 安 庁 の 巡 視 船 による 被 災 者 への 入 浴 支 援 も 南 阿 蘇 地 域 へは 道 路 啓 開 状 況 も 考 慮 し 大 分 港 別 府 港 から 支 援 物 資 を 供 給 博 多 港 からも 熊 本 の 被 災 地 に 支 援 物 資 を 輸 送 4. 広 域 交 通 ネットワークに 関 する 重 要 な 検 討 課 題 と 展 望 〇 広 域 交 通 ネットワーク 施 設 の 計 画 設 計 や 損 傷 箇 所 の 復 旧 あるいは 道 路 啓 開 や 広 域 的 な 通 行 マネジメ ント 代 替 交 通 確 保 方 策 など 通 行 作 業 については 阪 神 大 震 災 中 越 地 震 東 日 本 大 震 災 など 多 くの 大 災 害 の 経 験 が 順 次 適 切 に 積 み 上 げられてきた 今 回 の 震 災 においてはそうした 経 験 の 積 み 上 げ 効 果 が 基 本 4
的 には 着 実 に 功 を 奏 していることが 確 認 された 結 果 となったものと 考 える その 一 方 で 新 たに 生 じてきた 課 題 も 散 見 される そうした 事 態 に 対 して 今 後 も 継 続 的 に 対 応 していくことが 重 要 〇 その 一 つは 九 州 自 動 車 道 における 横 断 跨 道 橋 の 損 傷 や 九 州 新 幹 線 における 近 接 煙 突 の 崩 落 のように 広 域 交 通 ネットワーク 施 設 の 本 体 ではない 横 断 構 造 物 や 近 接 構 造 物 が 震 災 時 における 安 全 性 や 復 旧 の 大 きな 制 約 要 素 となる 可 能 性 がある その 照 査 や 横 断 道 路 の 集 約 化 などを 含 めた 撤 去 改 善 措 置 に 関 する 制 度 的 充 実 方 策 の 検 討 が 必 要 である また 新 幹 線 の 防 音 壁 のコンクリートパネルの 落 下 のような 構 造 物 本 体 への 付 帯 設 備 の 安 全 性 向 上 も 課 題 である 〇 今 回 の 震 災 では 陸 上 交 通 ネットワークに 比 べると 港 湾 の 岸 壁 やアクセス 道 路 の 橋 梁 空 港 の 滑 走 路 や 管 制 保 安 施 設 などといった 重 要 な 基 本 施 設 が 幸 いにもほとんど 無 傷 であった このため 臨 港 道 路 などに 生 じた 段 差 補 修 や 空 港 ターミナルビルの 点 検 と 使 用 制 限 措 置 などを 迅 速 に 行 うことによって 空 港 港 湾 共 に 早 期 に 使 用 が 可 能 となり 初 期 の 救 援 救 護 輸 送 に 貢 献 し こうした 拠 点 的 施 設 の 総 合 的 な 耐 震 性 強 化 の 意 義 が 改 めて 確 認 された 陸 上 航 空 海 上 を 網 羅 するマルチモードの 交 通 ネットワークの 信 頼 性 のチェック とその 確 保 策 の 検 討 が 必 要 〇 国 道 57 号 立 野 地 区 の 大 規 模 な 斜 面 崩 落 個 所 は 阿 蘇 山 カルデラから 白 川 ( 及 び 黒 川 )が 流 れ 出 す 喉 首 に 当 たる 場 所 で 防 災 上 のリスクが 極 めて 高 い 地 点 となっている 建 設 コストに 配 慮 したものか 国 道 や 豊 肥 本 線 などの 交 通 機 関 がここに 集 中 して 作 られているが 今 回 の 被 災 個 所 の 道 路 や 鉄 道 の 復 旧 に 当 たっては 応 急 復 旧 はともかくとしても 当 該 箇 所 の 北 側 のルート( 例 えば 阿 蘇 大 津 道 路 計 画 )により 外 輪 山 をトンネ ルで 貫 通 するルートなど 安 全 性 の 抜 本 的 な 向 上 を 図 ることのできるような 単 なる 原 形 復 旧 ではないプラン の 検 討 が 必 要 〇 今 次 の 震 災 の 地 震 発 生 個 所 は 断 層 線 (より 広 くみれば 中 央 構 造 線 )に 沿 って 発 生 しており 雲 仙 阿 蘇 九 重 などの 火 山 群 もこのラインに 沿 ったもので この 断 層 線 は 防 災 上 の 重 要 なハザード 帯 となっている 実 際 様 々な 災 害 ハザードに 対 して 道 路 ネットワークの 脆 弱 性 評 価 (2015 年 12 月 より 道 路 局 の 事 業 評 価 手 法 の 一 つとして 使 用 されている 評 価 法 )を 行 った 結 果 をみると 熊 本 から 大 分 に 至 るラインが 九 州 でも 特 に 脆 弱 性 の 高 い(すなわち 改 善 の 必 要 性 の 高 い)ものとなっている( 添 付 図 参 照 ) 同 時 にまた このラインを 含 めた 長 崎 雲 仙 熊 本 阿 蘇 別 府 に 至 る 回 廊 は 九 州 の 中 でも 有 数 の 重 要 な 観 光 回 廊 であって 今 後 の 地 方 創 生 地 域 観 光 振 興 の 上 から 言 っても この 回 廊 上 の 幹 線 道 路 や 港 湾 などの 防 災 性 を 向 上 させることが 必 要 地 域 高 規 格 道 路 である 中 九 州 横 断 道 路 などは 今 震 災 の 復 旧 復 興 プロジェクトとして 位 置 づけ 九 州 横 断 観 光 防 災 回 廊 ( 仮 称 ) として 検 討 する 意 義 が 高 い 〇 新 幹 線 の 脱 線 については 2004 年 の 中 越 地 震 における 上 越 新 幹 線 の 脱 線 ( 負 傷 者 なし) 以 降 JR 各 社 に よって 多 少 の 方 針 の 違 いがあるものの 直 下 型 地 震 への 備 えとして 脱 線 防 止 方 策 や 逸 脱 抑 止 方 策 が 逐 次 進 められてきた その 後 2011 年 の 東 日 本 大 震 災 における 東 北 新 幹 線 の 仙 台 駅 付 近 での 脱 線 と 今 回 の 九 州 新 幹 線 の 脱 線 が 発 生 している これらの 経 験 は これまで 採 用 されて 方 策 の 基 本 的 考 え 方 を 裏 切 るような ものとはなっていないが 諸 方 策 の 効 果 や 有 効 性 を 学 術 的 にも 十 分 に 検 証 するためには 土 木 技 術 車 両 技 術 の 連 携 のもとに さらに 一 層 の 技 術 的 研 究 の 積 み 重 ねを 必 要 としている 以 上 5