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Climate Action Tracker JPN Climate Action Tracker 日本の 1.5 C ベンチマーク ~ 2030 年温暖化対策目標改定への示唆 ~ 2021 年 3 月

要旨 本稿は クライメート アクション トラッカー (CAT) 並びにその構成団体である NewClimate Institute と Climate Analytics の分析に基づき パリ協定の 1.5 C 目標達成に向けた日本の 2030 年とそれ以降の経済全体及び部門レベルのベンチマークを提示するものである これらベンチマークは 今世紀後半に世界が 実証されていない二酸化炭素 (CO 2 ) 除去技術に過度に依存する必要がないよう設定されている 日本の温暖化対策をパリ協定の 1.5 C 目標と整合させるには 国内の温室効果ガス (GHG) 排出を 2030 年までに 2013 年比で 60% 以上削減する必要がある 本稿では 様々な対応策やシナリオを分析した上で この野心的な目標を達成するための方策を提案している そのため日本が現在掲げている 2030 年目標 ( 国が決定する貢献 :NDC) の改定に当たっては 本稿のベンチマークと同等かそれ以上の目標が検討されることを期待したい 部門レベルでは すべての部門において 2030 年までに根本的な変化が引き起こされなければならない 例えば発電部門では 2030 年までに CO 2 回収 再利用 貯留 (CCUS) の備えのない石炭火力を廃止し 再生可能エネルギー ( 以下 再エネ ) 発電を 60% 程度かそれ以上にする必要がある そうすることで現状不透明な原子力や CCUS 付火力発電への過度な依存を防ぎ また 2050 年再エネ 100% 達成を視野に入れることもできる 電源構成の低炭素化に加え エネルギー効率の上昇やインフラ改革によるエネルギーサービス需要の低減 さらには行動変容を促すことで エネルギー需要を徹底的に削減することも重要である 更には エネルギー最終消費部門の電化を進める必要がある 発電量の増加が見込まれるものの 変動性のある再エネを統合するための方法も増えつつある また再エネ由来のグリーン水素は 電化の困難な産業プロセスや重量物輸送 航空の脱炭素化に向けたカギとなる この際 水素は再エネによって生産され 他の代替手段が存在しない場合に限り使用される ということが極めて重要である 日本のグリーン成長戦略による革新的技術の開発 展開は 脱炭素化への後押しとなり得る しかし 既に存在する技術 ( 洋上風力を含む風力 太陽光発電 ZEB/ZEH EV 等 ) をまずは 2030 年までに徹底的に展開することが 2050 年 GHG 排出実質ゼロ目標の達成において非常に重要であることを強調したい 1

目次 1 はじめに Contents 要旨... 1 1. はじめに... 3 2. パリ協定と整合する日本の GHG 排出経路... 4 3. 部門別の 1.5 目標と整合するベンチマークと NDC 改定における主要検討事項... 5 3.1 発電部門...5 3.2 産業部門...6 3.3 運輸部門...8 3.4 家庭 業務部門...9 3.5 最終消費部門におけるエネルギー需要削減の重要性... 10 4. まとめ... 11 付録... 12 参考文献... 13 2020 年 10 月に菅義偉首相は 日本が 2050 年までに温室効果ガス (GHG) 排出量の実質ゼロを目指すと宣言し 積極的な温暖化対策が経済に大きな恩恵をもたらすと強調した (Prime Minister of Japan and His Cabinet, 2020) この宣言は 現行水準から排出量を 2050 年までに 80% 削減し 21 世紀後半の できるだけ早期に 実質ゼロを実現するという従来の目標からの大きな前進である (Government of Japan, 2019) 政府は現在 国が決定する貢献 (NDC) の改定作業を進めている 現在の NDC では 2030 年度に 2013 年度比で 26% 削減を目標としているが この新しい 2050 年 GHG 排出実質ゼロ目標と整合させるには 2030 年目標もより高い削減率へと改定する必要がある (MOEJ, 2020) この宣言後の 2020 年 12 月には 2050 年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 が発表された (Government of Japan, 2020) この戦略全体で重視されているのが 水素 アンモニア燃料等の カーボンリサイクル ( 炭素回収 貯留付きバイオエネルギー (BECCS) を含む ) や次世代型太陽光等の革新的技術 並びにこれらがカーボンニュートラル経済で果たす役割である 一方で 2050 年 GHG 排出実質ゼロを達成するために必要な 既存の低炭素技術の中期的な展開戦略 (2030~2040 年 ) については あまり触れられていない こうした背景を踏まえ 本稿はパリ協定の長期目標と整合する 日本の 2030 年とそれ以降の国内経済全体及びセクター別のベンチマーク (GHG 排出量 電源構成や各種技術指標等 ) を提示する これらベンチマークを通じ 2030 年目標をより野心的なものにするための政策決定者の議論を促したい なおこのベンチマークは 未だ実証されていない BECCS 等の二酸化炭素 (CO 2 ) 除去技術や土地利用の吸収源に 世界が今世紀後半に過度に依存せずに 1.5 目標を達成できるよう設定されている 本稿は クライメート アクション トラッカー (CAT) 並びにその構成団体である NewClimate Institute と Climate Analytics の分析に基づき 主に日本に焦点を当てた分析結果を提示しているが 比較対象として適切な場合 他先進国の事例等も取り上げる 2 Climate Action Tracker 日本の1.5 Cベンチマーク ~2030 年温暖化対策目標改定への示唆 ~ 3

2 パリ協定と整合する日本の GHG 排出経路 3 部門別の 1.5 目標と整合するベンチマークと NDC 改定における主要検討事項 日本の現在の NDC は 気温上昇を 1.5 に抑制するパリ協定の目標や日本の 2050 年 GHG 排出量実質ゼロ目標を達成出来るほど野心的なものではない (Climate Action Tracker, 2020c) CAT は 気候変動に関する政府間パネル (IPCC) の 1.5 シナリオデータベースに報告されている総合評価モデル (IAM) のシナリオ (Huppmann et al., 2019) に基づき 1.5 と整合する国レベルの排出曲線の分析を実施した (Climate Action Tracker, 近日公表 ) これらシナリオは世界全体での総費用最小化に基づく つまり世界で一律のカーボンプライシングが適用された排出経路を示している ( 方法論については付録 A1 を参照 ) 本分析では 気温上昇の一時的な 1.5 超過が 0.1 未満 ( オーバーシュートなし 限定的 ) かつ BECCS および土地利用による CO 2 吸収への依存度が持続可能な範囲内に抑制されているシナリオのみを検討している なお これらシナリオにおいては 責任や負担能力などの公平性指標は考慮していない 分析の結果 日本の GHG 総排出量 ( 土地利用 土地利用変化および林業 (LULUCF) を除く ) は 2030 年までに 2013 年度比で 62% 2040 年までに 82% 削減される必要があることがわかった ( 共に中央値 図 1) 1 1.5 目標を達成するには 2020~2030 年に世界全体で GHG 排出量を半減させる必要があるが 日本の分析結果はこれと概ね一致している 日本の排出量は 2013 年以降減少傾向にある一方 1.5 と整合した排出経路をたどるには大幅かつ急速な排出削減が必要である しかし日本の現在の NDC は パリ協定以前の 2 未満に抑える 国際目標とも整合していないのが現状である ( 中央値 :2013 年度比 40% 削減 )( 図 1) 様々な公平性指標を考慮した場合には 2 および 1.5 目標と整合する 2030 年の排出許容量は 世界全体での最小費用シナリオに基づく排出経路よりさらに低いものとなる ( 図 1)(Robiou du Pont et al., 2016 も参照されたい ) 2 これはつまり 先に述べた国内の GHG 排出削減 (2030 年までに 2013 年度比で 62% 2040 年までに 82% 削減 ) 以上の削減を行うか 財政支援によって海外 ( 途上国 ) の排出削減により貢献する必要があることを意味している CO 2000 1600 1200 800 400 0 1 1990 年比 58% および 80% 削減に相当する 1.5 1.5 C ( 2 C 2030 2030 (NDC) 2013 26% * 1.5 2013 62% 2 C 1.5 C -400 1990 2000 2010 2020 2030 2040 2050 図 1:1.5 目標に沿った 世界全体での最小費用シナリオと整合する日本の GHG 排出経路 ( 土地利用 土地利用変化および林業 (LULUCF) を除く ) 過去の排出実績値 (1990-2018) 現行の NDC(LULUCF および海外削減分を除く ) 現行政策シナリオ下の排出見通し並びに 2 目標と整合した排出経路も示す 出典 : クライメート アクション トラッカー ( 近日公表 ;2020c) 2 2 つの公平性指標に基づいた 2 目標に整合する ( 定型化された ) 排出経路については 本稿や Robiou du Pont et al. (2016) の試算より多めの排出許容量を示唆した過去の研究もある (Kuramochi et al., 2016) 3.1 発電部門 発電部門は 2018 年度に国内 CO 2 総排出量の 40% を占めている (GIO, 2020) 福島原子力発電所の事故後に排出量が過去最大となった 2013 年度と比べれば 13.3% 減であるとはいえ 1990 年度と比較した場合には 30.9% 増加している (GIO, 2020) 日本の現在の NDC における 2030 年エネルギーミックス目標は 2015 年の 長期エネルギー需給見通し に基づき 原子力 20~22% 再生可能エネルギー ( 以下 再エネ )22~24% 火力発電 56% となっている (METI, 2015) この目標値は 2018 年の エネルギー基本計画 並びに 2019 年の パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略 にて再確認されている (METI, 2018a; Government of Japan, 2019) 2050 年に向けた 2050 年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 では 脱炭素電源構成として再エネ 50~60% 原子力と CO 2 回収 再利用 貯留 (CCUS) 前提の火力発電が 30~40% 残りの 10% は水素 アンモニア発電が想定されている (Government of Japan, 2020) 1.5 目標と整合する 2030 年と 2040 年のベンチマーク 1.5 目標の達成には 日本の発電部門は急速に排出削減する必要がある ( 表 1) Climate Analytics の分析によれば 日本が 1.5 目標と整合するには 2030 年までに再エネおよび他のゼロ / 低炭素エネルギー源 ( 原子力や CCUS 付きの火力発電等 ) が 60% 以上 2040 年には 80% を超える必要がある (Climate Analytics, 2021 の基礎データに基づく ) なおこれらのベンチマークは 世界全体の再エネ発電のベンチマークとも整合している (Climate Action Tracker, 2020d) 3 対照的に 削減対策なし (=CCUS なし ) の石炭火力発電は 2030 年までにほぼ全廃される必要がある (Climate Analytics, 2021 の基礎データに基づく ) この結果は 過去の関連研究においてもたびたび指摘されていた (Climate Analytics and Renewable Energy Institute, 2018; Climate Action Tracker, 2020d) 更には 削減対策なしの天然ガス火力発電も 2050 年までに全廃されなければならない 総発電量に占める再エネおよび他のゼロ / 低炭素エネルギー源の割合については 関連した研究として Oshiro et al. (2018) の日本 2050 年実質ゼロ排出シナリオ分析がある ここで報告されている 2030 年時点の割合は表 1 で示す幅の下方に位置する 4 また WWF ジャパンの委託で実施された積み上げ型の分析においては 再エネの割合は低く (2030 年に約 45%) 原子力はほぼなく CCUS 前提の火力発電がゼロとなることが示されている (Research Institute for Systems Technology, 2020) 2030 年における低炭素電源の内訳は Climate Analytics (2021) 及び本稿で分析したシナリオ間で大きく異なる 5 しかし 2030 年およびそれ以降の電源構成に原子力と CCUS 前提の火力発電が大きく寄与すると想定するのは 現状を踏まえると想定し難しい 日本における原子力発電の未来は 現在の訴訟問題 (National network of legal teams for nuclear phase-out, 2020) や様々な技術的問題点 ( 既存並びに新設の発電所が満たすべき安全規制等 )(Renewable Energy Institute, 2020 の例を参照 ) 新設には約 20 年という長いリードタイムが必要であること (Cabinet Secretariat of Japan, 2011) を考えると 極めて不確実性が高い CCUS 前提の火力発電は 日本でまだ商業運転が行われておらず 2020 年末現在 発電所レベルの具体的な設置計画もない (Kiko Network, 2019) 世界全体でも商用運転しているのは 1 基のみである (Global CCS Institute, 2021) 6 こうした背景や再エネのコスト競争力が継続的に高まっていることを踏まえると 日本の 1.5 目標達成のためのゼロ / 低炭素発電は主に再エネで実現されると想定するのが合理的だろう これは 再エネが 2030 年度の総発電量の 60% 程度かそれ以上を占める必要があることを意味している その実現によって 2050 年再エネ 100 % の達成も視野に入れることができる (Research Institute for Systems Technology, 2020) 3 3 2030 年に 55~90% 2040 年に 75~100% 2050 年に 98~100% 4 この研究は AIM/Enduse [Japan] モデルに基づく 本稿では その分析結果のうち 2030 年に排出規制のない 2 つの 2050 年実質ゼロ CO 2 シナリオ ( 技術の利用可能性に制約がない 1.5deg 並びに 2050 年までに原子力が段階的に廃止される 1.5deg_NucPO ) を参照した CO 2 地下貯留は 2050 年までに約 200 MtCO 2 / 年までの規模拡大が想定されている 5 Sugiyama et al. (2019) など他のモデル比較研究においてもモデルやシナリオ間で電源構成や電力需要レベルに大きな違いがみられる 6 世界で唯一商業運転しているカナダの Boundary Dam3 号機 (SaskPower, 2020) については 様々な技術 経済的問題が指摘されている (Climate Action Tracker, 2020a) 4 Climate Action Tracker 日本の1.5 Cベンチマーク ~2030 年温暖化対策目標改定への示唆 ~ 5

表 1: 日本の発電部門において 2030 年 2040 年 2050 年に世界全体での最小コストシナリオに基づき 1.5 目標と整合する CO 2 排出原単位と 総発電量に占める再エネおよび他のゼロ / 低炭素エネルギー源と削減対策なしの石炭火力発電の割合出典 : Climate Analytics (2021), Climate Analytics and Renewable Energy Institute (2018) の基礎データに基づく 国 地域 年 CO 2 排出原単位 gco 2 /kwh 日本 1) CAT による世界平均のベンチマークは 2030 年に 50 125 gco 2 /kwh 2040 年に 5 25 gco 2 /kwh と より低いものとなっ ている (Climate Action Tracker, 2020d). 2) CAT による世界平均のベンチマークは 2030 年に 55~90% 2040 年に 75~100% である (Climate Action Tracker, 2020d) この想定では 削減対策なしのガス火力が残りのほぼすべてを供給することを意味するが このガス火力も 2050 年を前に全廃されなければならない ガス火力への依存を最小限に留めるには エネルギー最終消費部門の電化を同時に進める必要がある 更には電力需要を最大限削減することも重要だ 技術面およびインフラ面での措置を講じ さらには行動変容も促すことで省エネを推し進めることが極めて重要となるだろう ( 詳細は 3.5 節を参照 ) 発電部門の脱炭素化には大きな経済効果が期待できる 最新の関連研究結果は 火力発電に依存したベースラインに比べ 脱炭素化が正味の国内雇用を増加させ また地方により多くの安定した雇用をもたらすことを示唆している (Kuriyama and Abe, 2021) 火力発電所の操業停止に関する早期決定とプランニング並びに影響を受ける労働者への十分なサポートが前提となるが 発電部門の脱炭素化は 地方経済の活性化のみならず労働者人口間の不平等の解消への貢献することが示唆されている (Kuriyama and Abe, 2021) 3.2 産業部門 再エネ CCUS 付火力発電 原子力が総発電量に占める割合 2017 ( 実績値 ) 520 20% 34% 2030 90 200 1) 63 87% 2) <5% 2040 10 110 1) 81 99% 2) 0% 2050 <0 40 94 100% 0% 削減対策なし (CCUS なし ) の石炭火力が総発電量に占める割合 また 1.5 目標を達成するには 世界レベルで 2030 年までに生産量 1 トン当たりの CO 2 排出量を製鉄では 25 ~30% セメントは 40% 削減する必要がある ( 表 2)(Climate Action Tracker, 2020d) 日本が 2050 年までに完全な脱炭素化を実現するには エネルギー需要のさらなる電化に加え 既存産業政策の転換が極めて重要となる (Ju et al., 2021) 排出原単位を大幅に改善するには 脱炭素エネルギーや原料を用いた生産技術の迅速かつ大規模な展開が必要である (Climate Action Tracker, 2020d) 鉄鋼業界の技術的なオプションとしては 鉄鋼くずのリサイクル向上 グリーン水素を用いた水素製鉄法への転換 木炭やバイオガスの活用などが挙げられる 世界第 2 位の銑鉄 粗鋼生産国である日本においてグリーン水素を活用し 排出量を大幅削減することが特に重要である セメント業界の技術的なオプションとしては クリンカ / セメント比の低減 新しいセメント材の展開 CCUS の大規模展開 (2050 年までに 65~80% の設備への普及 ) 更には熱エネルギーの電化などが挙げられる (Climate Action Tracker, 2020d) 本業界においては 長期的には排出原単位 100% 削減を目指し 革新的な技術に向けた更なる研究開発努力が望まれる また技術革新に加え サプライチェーンの変革を検討することも重要である 例えば日本の鉄鋼業界は 主にオーストラリアから輸入した鉄鉱石とコークスを使って製鉄している Gielen et al. (2020) は オーストラリアの大きな再エネのポテンシャルに目を付け 現地の再エネ由来の水素で直接還元鉄 (DRI) を生産し それを日本が輸入して最終鉄鋼製品を製造することを提案している このインフラ移転によって 67 米ドル /tco 2 という比較的低コストで日本の鉄鋼業界の CO 2 排出量を 3 分の 1 程度削減できる可能性がある (Gielen et al, 2020) その他の重要な排出削減策として 例えば 家庭 業務部門におけるセメントの代替製品の使用促進や マテリアル効率の改善等が挙げられる オーストラリアを含む他先進国の事例研究によれば 産業部門の 2050 年までの排出量ネットゼロの実現は可能であり (Climate Action Tracker, 2020a) 本稿はそうした研究結果を世界全体のセメント業と鉄鋼業のベンチマークとして設定した (Climate Action Tracker, 2020d) 表 2: 世界全体の産業部門における 1.5 目標と整合するベンチマーク出典 :Climate Action Tracker (2020d) より作成 国 地域 年 セメントCO 2 排出原 単位 (2015 年比 ) 世界 鉄鋼 CO 2 排出原単位 (2015 年比 ) 2030 40% 25 30% 35% 2040 N/A N/A 45 55% 最終エネルギー消費に占める電力の割合 (2018 年の日本 :36% (IEA, 2020a)) 産業部門の排出量は 2018 年度の日本のエネルギー起源 CO 2 の 39.5% に相当する ( 電力由来排出量も含める場合 ) この排出量は減少傾向にあり 2018 年度は 2013 年度比で 14% 減 1990 年度比で 21% 減となっている また本部門においては CO 2 以外の GHG も様々な産業プロセスから相当量が排出されていることに注意が必要である なお現在の NDC において産業部門は 2030 年度のエネルギー起源 CO 2 を 2013 年度比で 8.7% 削減を目標としているが 最新の政府資料によると本目標は既に達成済みである (MOEJ and METI, 2021) エネルギー集約型産業においても 例えば日本鉄鋼連盟の最近の発表に見られるように 2050 年までに GHG 排出量ネットゼロを達成するための動きがみられる (JISF, 2021) 1.5 目標と整合する 2030 年と 2040 年のベンチマーク 1.5 目標の達成には エネルギー集約型産業からの排出量が今後数十年間に大幅削減される必要がある これは 2020 年以降に新設される全ての工業施設が低炭素である必要性を意味している (Kuramochi et al., 2018) 産業部門を脱炭素化するには 熱エネルギーや供給原料の ( 再エネをベースとしたグリーン水素利用による ) 電化を促し 直接的または間接的に化石燃料を置き換えることが重要である (Climate Action Tracker, 2020d) 2050 85 90% ( 長期的には 100%) 95 100% 50 55% 6 Climate Action Tracker 日本の1.5 Cベンチマーク ~2030 年温暖化対策目標改定への示唆 ~ 7

3.3 運輸部門 運輸部門の排出量は 日本の 2018 年度のエネルギー起源 CO 2 総排出量の 18% を占めている (GIO, 2020) 本部門においては 附属書 I 国全体が平均年率 3% で増加しているのとは対照的に 日本では 2001 年以降減少傾向が続いている (UNFCCC, 2020) 現在の NDC によると 日本は 運輸部門の排出量を 2030 年度までに 2013 年度比で 27% 削減することを目指している (Government of Japan, 2015) これは昨年 10 月の 2050 年 GHG 排出実質ゼロ目標発表以前の目標であるが 具体策として 2030 年度までに 次世代自動車 7 の乗用車新車販売に占める割合を 50~70% 7 とし (METI, 2018a) 2050 年には 日本国内で生産されるすべての乗用車新車の Tank-to-Wheel ( 車単体の CO 2 排出量 ) を 2010 年度の水準から 90% 削減するとしていた (METI, 2018c, 2018b) 2050 年 GHG 排出実質ゼロ目標発表後の新たなターゲットとして 日本は現在 遅くとも 2035 年までに乗用車新車販売で 電動車 100% の実現を目指している ( ただし この 電動車 にはプラグインではないハイブリッド車 (HV) 及びプラグインハイブリッド車 (PHV) も含まれる )(NHK, 2021) なお東京都知事はさらに早い期限である 2030 年という目標を示している (Nikkei Asia, 2020) 1.5 目標と整合する 2030 年と 2040 年のベンチマーク 1.5 目標の達成には ガソリン ディーゼル車からの転換を急速に進める必要がある 2018 年の CAT 分析 (Kuramochi et al., 2018) によれば 2050 年に排出量ゼロを達成するには 世界全体で 2035 年までに乗用車新車販売からガソリン ディーゼル車を完全に廃止する必要がある より最新の分析 (Climate Action Tracker, 2020d) においても 電気自動車 (EV) が 2030 年までに世界全体で軽量自動車 (LDV) の新車販売の 75~95% を占め 2040 年までには 100% を占める必要性が示されている ( 表 3) 欧州連合 (EU) と米国のベンチマークは 2030 年の新車販売の 95~100% と より野心的な数値が設定されている EU の場合 これは 2030 年までに LDV 車両の半分以上が EV である必要性を意味している (Climate Action Tracker, 2020d) 日本のベンチマークもおそらく同レベルであろうと考えられるが 更なる精査が必要である 表 3: 世界全体の運輸部門 ( 国際航空 海運を除く ) における 1.5 と整合するベンチマーク出典 :Climate Action Tracker (2020d) より作成 国 地域 年 年間車両販売に占め るEV 販売の割合 (%) 世界 ( 内は EU と国 ) 1) 2018 年の実績値 :2.7% (IEA, 2020a) 2030 75 95% (95 100%) 15% (15 20%) 2040 100% 40 60% (45 60%) 2050 100% 70 95% (75 100%) 最終エネルギー消費に占める電力 水素 およびバイオ燃料の割合 (%)( 日本の 2018 年実績値 :2.7% (IEA, 2020a)) 1) EV の急速な普及に加え 今後数十年間で運輸部門全体に占める低炭素燃料の割合を劇的に増加させる必要があり この実現のカギを握るのは電化であろう ( 表 3)(Climate Action Tracker, 2020d) この点において留意すべきは ゼロ / 低炭素な技術的選択肢に比較的乏しい貨物輸送業と航空業に 2050 年に許容され得る非低炭素燃料消費の全てかそのほとんどを振り分ける必要があるということである (Climate Action Tracker, 2018, 2020d) 日本が示した新たな 100% ゼロエミッション目標は 世界の車市場に変革をもたらす可能性がある 2020 年 11 月時点で 17 の中央政府や地方政府がガソリン車の段階的な廃止目標を掲げており これは 2019 年の世界の乗用車新車販売の 13% に相当する (Cui and Wappelhorst, 2020) 日本の自動車製造業が国内のみならず世界においても重要な存在であることに鑑みれば 世界レベルにおけるゼロエミッション車の製造や展開においてリーダーシップを発揮するチャンスである 7 次世代自動車には バッテリー電気自動車 (BEV) と燃料電池電気自動車 (FCEV) のほか ハイブリッド車 プラグインハイブリッド車 クリーン ディーゼル 車 天然ガス (CNG) 自動車も含まれる しかし ガソリン車の廃止を万能薬と考えるべきではない EV の展開には更なる政策プッシュが必要であり またモーダルシフトや輸送需要の全体的な低減も重要である (EU における運輸部門の脱炭素化に係る議論については (Emmrich et al., 2020) を参照 ) 日本において低排出ガス車の購入を更に促進するには 行動変容へのインセンティブ ( 駐車料金の無料化や道路通行料の免除など ) や金銭的インセンティブ (EV の購入補助金や付加価値税の減税 ) などの政策パッケージを導入する必要がある (Steinbacher, Goes and Jörling, 2018; Emmrich et al., 2020) 3.4 家庭 業務部門 日本の家庭 業務部門の CO 2 排出量は 1990 年以降増加しており 電力由来排出量も含めた場合 2018 年度に日本のエネルギー起源 CO 2 総排出量の 32% を占めている (GIO, 2020) 現在の NDC によると 本部門における削減目標は他部門に比べて野心的であり エネルギー起源 CO 2 排出量 ( 電力由来排出量を含む ) を 2030 年度までに 2013 年度比で 40% 削減するとしている なお 2018 年度の排出量は 2013 年度比で 19% 減だった 日本政府はゼロ エネルギー ハウス (ZEH) とゼロ エネルギー ビル (ZEB) を推進しており 2030 年までに新築住宅 ビル全体でネット ゼロ エネルギーの実現を目標に掲げている (METI, 2014) 1.5 目標と整合する 2030 年と 2040 年のベンチマーク 家庭 業務部門においても 1.5 目標の達成には急速な脱炭素化が求められており ( 表 4) 遅くとも 2040 年には既存の建築物の年間改築率が 3.5%/ 年に達する必要がある さらに新築の建築物は全てネット ゼロであるべきで これは全世界共通のベンチマークである (Climate Action Tracker, 2020d) 既存技術の活用で 2050 年までに本部門の排出量をゼロにすることは可能である一方 再エネまたは電化によるゼロ カーボン冷暖房設備と建物外皮の性能向上に相当な投資も必要となる 2018 年時点で 日本の新築住宅のうち ZEH または ほぼ ZEH は 13% に限定されており エネルギー基本計画 (METI, 2018a) に明記されている 2030 年までに 100% という目標達成にはまだほど遠い 加えて ZEB に至っては未だ普及の初期段階にある (Sustainable open Innovation Initiative, 2019b, 2019a) こうした現状を踏まえると 2030 年までに新築の建築物の一次エネルギー消費を実質ゼロにするという政府目標の達成には より踏み込んだ政策が必要である 表 4: 世界全体の家庭 業務部門における 1.5 目標と整合するベンチマーク出典 : Climate Action Tracker (2020d) より作成 国 地域年排出原単位 kgco 2 /m 2 世界 (2015 年比での削減率 %) 改築率 (%/ 年 ) 2030-2.5 3.5% 2040 90% ( 住宅 ) 90 95% ( 業務 ) 2050 95~100%( 住宅 ) (OECD/ 先進国では 100%) 100%( 業務 ) 既存建築物における大幅な排出削減は そのほとんどが私有財産であるため実現が難しい (Murakami, 2017) 日本においては 既存建築物のほとんどが 2050 年までに建て替えられる見込みであることを踏まえると 建築基準の強化に加え 建て替えを加速させるための措置を講じることが得策かもしれない (Murakami, 2017) さらには省エネ家電や照明 持続可能な熱供給システム スマートなデマンドサイドマネジメントの促進によってエネルギー需要を減らしつつ オンサイトで再エネによるエネルギー供給を行うことが重要である (Sterl et al., 2017; Carnevale et al., 2019; IEA, 2019; Climate Action Tracker, 2020d) 2018 年時点で 日本の新築住宅のうち ZEH または ほぼ ZEH は 13% に限定されており エネルギー基本計画 (METI, 2018a) に明記されている 2030 年までに 100% という目標達成にはまだほど遠い 加えて ZEB に至っては未だ普及の初期段階にある (Sustainable open Innovation Initiative, 2019b, 2019a) こうした現状を踏まえると 2030 年までに新築の建築物の一次エネルギー消費を実質ゼロにするという政府目標の達成には より踏み込んだ政策が必要である 3.5% - 8 Climate Action Tracker 日本の1.5 Cベンチマーク ~2030 年温暖化対策目標改定への示唆 ~ 9

3.5 最終消費部門におけるエネルギー需要削減の重要性 4 まとめ 先に述べた通り 2050 年 GHG 排出実質ゼロを達成するには 全ての部門においての排出削減行動を大幅に強化する必要がある (Sugiyama et al., 2021) 国内では発電部門の脱炭素化 とりわけ電源構成への関心が高いが (Hanawa, 2020) 最終消費部門におけるエネルギー需要の削減や電化の推進も重要である エネルギー需要の大幅な削減は 排出量の緩和オプションにおける制約 ( 例えば 負の排出技術への依存や気温上昇を 1.5 以内に抑える緩和コスト等 ) を軽減することができる (Rogelj et al., 2015; Grubler et al., 2018) 輸入化石燃料に依存し続けてきた日本にとって 長期脱炭素化はエネルギー安全保障にも寄与するだろう (Oshiro, Kainuma and Masui, 2016) 一方 将来のエネルギー需要が大幅に削減されない場合 脱炭素化の過程でエネルギー安全保障が低下する可能性もある 大きな懸念の 1 つが 特に発電部門で石炭火力発電の割合を劇的に低減させる場合に つなぎの燃料 として高コストな液化天然ガスの輸入が増加する可能性である (Akimoto et al., 2012) 2011 年の福島第一原子力発電所の事故を受け原子力発電所が運転停止となった後 ガス火力が 2010 年の 326 TWh から 2014 年には 438 TWh に増加した なおそれ以降は減少に転じ 2019 年には 340 TWh であった (IEA, 2020a) 3.1 節 ( 発電部門 ) に示した 2030 年の 1.5 目標と整合する発電のベンチマークは それまでに石炭火力発電を段階的に廃止する場合 ガス火力が引き続き総発電量の 40% 程度を占める可能性があることを示唆している ガス火力を例えば年間 320-340 TWh に維持する場合 年間総発電量は約 800-850 TWh に抑えられる必要がある 推定される総発電量は Oshiro et al. (2018) で吟味された原の段階的廃止を徐々に行う 1.5 シナリオと概ね整合しており 2019 年の水準から 20% の削減となる (IEA, 2020a) 8 エネルギー最終消費部門の電化を進めながら このような電力需要の大幅削減を達成するには 抜本的な社会変革の実施が求められる (Oshiro, Masui and Kainuma, 2018) 本稿で示したように 日本の中長期の温暖化対策を 1.5 目標と整合させるには 現在の NDC の野心度を大きく高める必要がある 具体的には 経済全体で国内の GHG 排出を 2030 年までに 2013 年比で 60% 以上削減する必要があることが示された 上記の排出削減率は 気温上昇を産業革命以前に比べ 1.5 に抑制するために必要な世界全体での排出削減率とも整合している そのため日本が現在掲げている 2030 年目標 ( 国が決定する貢献 :NDC) の改定に当たっては 本稿のベンチマークと同等かそれ以上の目標が検討されることを期待したい 部門レベルの分析では 2030 年までにすべての部門において根本的な変化が引き起こされる必要性を示した 例えば発電部門では 2030 年までに CCUS の備えのない石炭火力を廃止し 再エネ発電を 60% 程度かそれ以上にする必要がある そうすることで現状不透明な原子力や CCUS 付き火力発電への過度な依存を防ぎ また 2050 年再エネ 100% の達成を視野に入れることもできる 電源構成の低炭素化に加え エネルギー効率の上昇やインフラ改革によるエネルギーサービス需要の低減 さらには行動変容を促すことで エネルギー需要を徹底的に削減することも重要である 更には エネルギー最終消費部門の電化を進める必要がある 発電量の増加が見込まれるものの 変動性のある再エネを統合するための方法も増えつつある 再エネ由来のグリーン水素は 電化の困難な産業プロセスや貨物輸送 航空の脱炭素化に向けたカギとなる この際 水素は再エネによって生産され 他の代替手段が存在しない場合に限り使用されることが必要不可欠である 本稿では取り上げていないが 2030 年までに CO 2 以外の GHG を大幅に削減することも極めて重要である 特に近年排出量が著しく増加しているハイドロフルオロカーボン (HFCs) への対策を強化する必要がある (GIO, 2020) また農業など 脱炭素化が困難な部門で残存する排出を相殺するため CO 2 除去技術の役割も 2 節で議論したように持続可能なレベルに抑制されることが前提であるが 今後重要となる 日本のグリーン成長戦略による革新的技術の開発 展開は 脱炭素化への後押しとなり得る しかし 既に存在する技術 ( 洋上風力を含む風力 太陽光発電 ZEB/ZEH EV 等 ) をまずは 2030 年までに徹底的に展開することが 2050 年 GHG 排出実質ゼロ目標の達成において非常に重要であることを強調したい 8 国際エネルギー機関 (IEA) の 世界エネルギー展望 (WEO)2020 の総発電量予測によれば 公表政策シナリオ (STEPS) では 2030 年までに 2019 年の水準から 1.3% 減 持続可能な開発シナリオ (SDS) でも 5.6% 減に留まると想定されている (IEA, 2020b) WWF ジャパンの 2050 年実質ゼロシナリオでは 2030 年度の総発電量が約 900 TWh と推計され そのうち 400 TWh 近くがガス火力発電である (Research Institute for Systems Technology, 2020) 10 Climate Action Tracker 日本の1.5 Cベンチマーク ~2030 年温暖化対策目標改定への示唆 ~ 11

付録 参考文献 A1: CAT の 1.5 目標と整合する国内排出経路に関する方法論の概要 日本の 1.5 目標と整合する GHG 排出経路は van Vuuren et al. (2007) が開発し Gidden et al. (2019) により改良された IPAT 方程式 ( 環境影響 I= 人口 (P)x 豊かさ (A)x 技術 (T)) をベースとした方法を用い OECD 地域の排出経路を各 OECD 加盟国に配分したものである この方法論では 日本の単位 GDP 当たりの GHG 排出量が 2100 年には OECD 平均に収斂すると想定している この国毎の配分を各シナリオについて実施し それらの中央値を パリ協定の長期目標に整合した排出経路 の上限として示している Akimoto, K. et al. (2012) Consistent assessments of pathways toward sustainable development and climate stabilization, Natural Resources Forum, 36(4), pp. 231 244. doi: https://doi.org/10.1111/ j.1477-8947.2012.01460.x. Cabinet Secretariat of Japan (2011) Keikakukara kadoumade no kikan ni tuite [Regarding lead time required for the construction of power plants]. Available at: https://www.cas.go.jp/jp/ seisaku/npu/policy09/pdf/20111125/siryo6-1. pdf. Carnevale, P. et al. (2019) Roadmap to 2050: A Manual for Nations to Decarbonize by Mid-Century. Available at: https://roadmap2050.report/static/ files/roadmap-to-2050.pdf. Climate Action Tracker (2018) Highway to Paris: Safeguarding the Climate by Decarbonising Freight Transport, CAT Decarbonisation Series. Available at: https://climateactiontracker.org/ documents/353/cat_20180522_decarbseries_ FreightTransport.pdf (Accessed: 4 July 2018). Climate Action Tracker (2020a) Canada September 2020 Update. Climate Action Tracker (Climate Analytics, NewClimate Institute). Available at: https://climateactiontracker.org/countries/ canada/ (Accessed: 30 September 2020). Climate Action Tracker (2020b) CAT Scaling Up Climate Action series. Australia. Climate Action Tracker (Climate Analytics, NewClimate Institute). Available at: https://climateactiontracker.org/documents/806/cat_2020-11-10_ ScalingUp_AUSTRALIA_FullReport.pdf. Climate Action Tracker (2020c) Country assessment: Japan. September 2020 Update, Climate Action Tracker. Climate Action Tracker (Climate Analytics, NewClimate Institute). Available at: https://climateactiontracker.org/countries/ japan/2020-09-22/ (Accessed: 16 December 2020). Climate Action Tracker (2020d) Paris Agreement Compatible Sectoral Benchmarks: Elaborating the decarbonisation roadmap. Climate Action Tracker (Climate Analytics, NewClimate Institute). Available at: https://climateactiontracker.org/documents/753/cat_2020-07-10_ ParisAgreementBenchmarks_FullReport.pdf. Climate Analytics (2021) 1.5 C National Pathway Explorer. Berlin, Germany: Climate Analytics. Available at: http://1p5ndc-pathways.climateanalytics.org. Climate Analytics and Renewable Energy Institute (2018) Science Based Coal Phase-out Timeline for Japan: Implications for policymakers and investors. Climate Analytics, Renewable Energy Institute. Cui, H. and Wappelhorst, S. (2020) Growing momentum: Global overview of government targets for phasing out sales of new internal combustion engine vehicles, The International Council on Clean Transportation, 11 November. Available at: https://theicct.org/blog/staff/ global-ice-phaseout-nov2020. Emmrich, J. et al. (2020) A radical transformation of mobility in Europe : exploring the decarbonisation of the transport sector by 2040 Explorative scenario & related policy packages. Gidden, M. et al. (2019) Global emissions pathways under different socioeconomic scenarios for use in CMIP6: a dataset of harmonized emissions trajectories through the end of the century, Geoscientific Model Development, 12, pp. 1443 1475. Available at: https://gmd.copernicus. org/articles/12/1443/2019/. Gielen, D. et al. (2020) Renewables-based decarbonization and relocation of iron and steel making: A case study, Journal of Industrial Ecology, 24(5), pp. 1113 1125. doi: 10.1111/jiec.12997. GIO (2020) The GHG Emissions Data of Japan (1990-2018). Greenhouse Gas Inventory Office of Japan, National Institute of Environmental Studies. Available at: http://www.nies.go.jp/ gio/en/aboutghg/jqjm1000000kb5qe-att/ L5-7gas_2020-GIOweb_1.0.xlsx (Accessed: 13 August 2020). Global CCS Institute (2021) CO 2 RE: The CCS Database. Facilities Database. Global CCS Institute. Available at: https://co 2 re.co/facilitydata (Accessed: 21 February 2021). Government of Japan (2015) Submission of Japan s Intended Nationally Determined Contribution (INDC). 17 July, 2015. Bonn, Germany: United Nations Framework Convention on Climate Change. Available at: http://www4.unfccc.int/ submissions/indc/published Documents/ 12 Climate Action Tracker 日本の1.5 Cベンチマーク ~2030 年温暖化対策目標改定への示唆 ~ 13

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執筆者 NewClimate Institute 倉持壮ヴァイソープト マリー Niklas Höhne 鈴木暢大 (Central European University) Climate Analytics Ursula Fuentes Hutfilter Bill Hare Matthew Gidden Marie-Camille Attard Jonas Hörsch デザイン 編集 Cindy Baxter Dilara Arslan Matt Beer クライメート アクション トラッカーについて Climate Action Tracker The Climate Action Tracker (CAT) is an independent scientific analysis produced by two research organisations tracking climate action since 2009. We track progress towards the globally agreed aim of holding warming well below 2 C, and pursuing efforts to limit warming to 1.5 C. Climate Analytics is a non-profit climate science and policy institute based in Berlin, Germany with offices in New York, USA, Lomé, Togo and Perth, Australia, which brings together interdisciplinary expertise in the scientific and policy aspects of climate change. Climate Analytics aims to synthesise and advance scientific knowledge in the area of climate, and by linking scientific and policy analysis provide state-of-the-art solutions to global and national climate change policy challenges. Contact: Dr. h.c. Bill Hare, +49 160 908 62463 NewClimate Institute is a non-profit institute established in 2014. NewClimate Institute supports research and implementation of action against climate change around the globe, covering the topics international climate negotiations, tracking climate action, climate and development, climate finance and carbon market mechanisms. NewClimate Institute aims at connecting up-to-date research with the real world decision making processes. Contact: Prof. Dr. Niklas Höhne, +49 173 715 2279