No.18ME-S5 Reports of RIAM Symposium No.18ME-S5 Crossover among theoretical, numerical and experimental studies on nonlinear waves Proceedings of a symposium held at Chikushi Campus, Kyushu Universiy, Kasuga, Fukuoka, Japan, November 6-8, 26 Article No. 2 (MATSUMURA Naoki) (WATANABE Shinsuke) Received February 14, 27 Research Institute for Applied Mechanics Kyushu University May, 27
渦 輪 を 用 いた 渦 のつなぎ 換 え 実 験 横 浜 国 立 大 学 工 学 府 松 村 直 樹 (MATSUMURA Naoki) 横 浜 国 立 大 学 工 学 研 究 院 渡 辺 慎 介 (WATANABE Shinsuke) 同 じ 方 向 に 進 む 二 つの 渦 輪 の 相 互 作 用 に 関 する 実 験 を 行 い 渦 輪 対 が 一 つの 歪 んだ 楕 円 渦 輪 につなぎ 換 わり その 後 再 び 二 つの 渦 輪 へとつなぎ 換 わる 様 子 を 実 験 により 観 測 した 二 回 目 のつなぎ 換 えの 際 S.Kida 等 の 研 究 で Bridging と 呼 ばれる 現 象 を 実 験 により 初 めて 観 測 し 彼 らのシミュレーション 結 果 と 類 似 した 結 果 を 得 た 1. はじめに 最 も 基 本 的 な 渦 のつなぎ 換 えに 関 する 実 験 はインクや 煙 を 用 いた 可 視 化 方 法 による 二 つの 渦 輪 の 衝 突 実 験 で あ る (T.Kambe & T.Takao 1), T.Fohl & J.S.Turner 2), Y.Oshima & S.Asaka 3), Y.Oshima & N.Izutsu 4) ) また 複 数 の 渦 輪 の 相 互 作 用 によりつなぎ 換 えを 起 こ す 実 験 も 行 われた(Y.Oshima & S.Asaka 5) ) 更 に 2つの 渦 輪 を 正 面 衝 突 させると 円 周 上 に 多 数 の 小 さな 渦 輪 が 生 じることが 観 測 された(T.T.Lim & T.B.Nickels 6) ) 楕 円 形 噴 流 の 実 験 でも つなぎ 換 えは 重 要 な 要 素 となっている(F.Hussain & H.S.Husain 7) ) そして 計 算 機 の 発 達 により 数 値 シミュレーションを 用 いることによって Bridging と 呼 ばれるつなぎ 換 え 現 象 の 詳 細 が 見 出 され その 仕 組 みが 解 析 されてきた(S.Kida & M.Takaoka & F.Hussain 8), 9), M.V.Melander & F.Hussain 1), S.Kida & M.Takaoka 11) ) しかし Bridging と 呼 ばれる 現 象 は 我 々の 知 る 限 り 実 験 により 観 測 されたという 報 告 はない そこで 我 々は 実 際 に 渦 のつなぎ 換 えの 詳 細 を 実 験 により 観 測 し そのメカニズムを 解 析 考 察 することを 研 究 目 的 とした 実 験 は 同 平 面 状 に 二 つの 等 しい 穴 の 開 いたオリフィスを 用 いて 行 い 渦 輪 の 相 互 作 用 の 様 子 を 高 速 ビデオカメラで 撮 影 した 渦 輪 の 初 期 伝 播 速 度 により 二 回 目 のつなぎ 換 えの 観 測 結 果 が 異 なった 初 速 度 が 遅 いとほぼ 完 全 につなぎ 換 えが 起 こり 初 速 度 が 速 いと 不 完 全 なつな ぎ 換 えとなり つなぎ 換 わった 部 分 (bridge)とつなぎ 換 わらずに 残 った 部 分 (thread)が 生 じ Bridging の 様 子 を 観 測 することが 出 来 た Bridging が 何 故 従 来 のつなぎ 換 え 実 験 では 観 測 できなかったかというと 主 な 理 由 は 渦 輪 がインクや 煙 により 可 視 化 されているためである 渦 は 引 き 伸 ばされたときに 引 き 伸 ば された 個 所 の 渦 度 は 強 くなるが インクや 煙 は 引 き 伸 ばされた 個 所 でより 拡 散 してしまう このような 渦 とトレーサーの 運 動 の 違 いによりインクや 煙 では 渦 度 領 域 をうまく 表 すことが 出 来 ず つなぎ 換 えの 詳 細 観 測 が 困 難 になる しかし 本 実 験 では 渦 輪 の 高 速 回 転 によるキ ャビテーションにより 渦 輪 は 水 中 で 空 気 芯 により 可 視 化 される 空 気 芯 は 渦 芯 内 部 に 閉 じ 込 められるため 渦 度 領 域 を 可 視 化 することができ つなぎ 換 えの 詳 細 観 測 につながったと 考 えられる 1
2. 実 験 方 法 および 実 験 装 置 実 験 装 置 を Fig.1 に 示 す アクリル 製 の 水 槽 (.5.5 1.3 m 3 ) 上 部 に 渦 輪 発 生 装 置 (Fig.2) が 取 り 付 けられ それは 一 端 ( 下 方 )が 開 放 しているステンレスパイプ(φ= 45 mm)の 中 に 一 対 の 電 極 が 固 定 されたものである 電 極 にはステンレス 製 の 寸 切 りボルト(φ= 6 mm)を 使 用 し これらの 電 極 はデルリンによって 互 いの 電 極 および 渦 輪 発 生 装 置 を 構 成 する 部 品 と 絶 縁 され ている 電 極 の 先 には 直 径.2 mm, 長 さ 12 mm のタングステン 線 (Exploding wire)が 取 り 付 け られている ステンレスパイプ 内 に 空 気 が 混 入 しないように 喫 水 線 をパイプの 上 端 開 口 部 よ りも 上 に 取 った 渦 輪 発 生 装 置 の 下 端 開 口 部 には 取 り 外 しが 可 能 なオリフィスが 取 り 付 けら れている 本 実 験 は 等 しい 大 きさの 穴 が 二 つ 開 いたオリフィス(Fig.3)を 用 いて 行 った 穴 の 直 径 は 14 mm であり 穴 の 中 心 間 距 離 は 21 mm である Exploding Wire 法 を 以 下 に 記 す 高 電 圧 発 生 装 置 からタングステン 線 に 高 電 圧 が 印 加 される と タングステン 線 は 大 電 流 によって 発 生 するジュール 熱 によって 瞬 時 に 融 解 する 融 解 した タングステン 線 と 水 との 間 で 高 速 の 熱 交 換 が 起 こりパイプ 内 で 蒸 気 泡 が 生 じる 発 生 した 蒸 気 泡 によりパイプ 内 の 水 が 押 し 出 され 出 口 のオリフィス 付 近 で 流 れが 巻 き 込 み 渦 度 を 生 じ 渦 輪 が 生 成 される 渦 輪 の 高 速 回 転 によって 引 き 起 こされたキャビテーションにより 空 気 の 芯 で 可 視 化 された 渦 輪 が 観 測 できる タングステン 線 に 印 加 する 電 圧 が 高 いほど 生 成 する 蒸 気 泡 の 体 積 は 大 きくなり 円 筒 形 のパイプから 出 る 水 の 量 は 多 くなる そのため 渦 輪 の 初 速 度 は 速 くなる 渦 輪 の 連 続 写 真 を 撮 影 する 機 器 として ハイスピードカメラ(Hi-Dcam PCI 1S, NAC) を 用 いた 撮 影 速 度 は 1 frames/sec で 撮 影 した 渦 輪 の 正 面 からの 画 像 を 撮 影 するために 水 槽 中 に 鏡 を 45 の 角 度 で 設 置 してある 撮 影 対 象 物 ( 渦 輪 )への 照 明 としてフォトリフレ クタランプ(5W)を 用 いた 電 極 渦 輪 発 生 装 置 オリフィス 渦 輪 の 伝 播 方 向 1.3 m 1. m.5 m.5 アクリル 水 槽 鏡 タングステン 線 オリフィス Fig.1. 実 験 装 置 図 Fig.2. 渦 輪 発 生 装 置 2
7 mm 21 mm 14 mm Fig.3. オリフィスの 形 状 オリフィス 直 径 ( 点 線 ):7 mm, 穴 直 径 ( 実 線 ):14 mm, 穴 の 中 心 間 距 離 :21 mm 3. 実 験 結 果 印 加 電 圧 が 76 V と 79 V の 実 験 結 果 を 載 せた 印 加 電 圧 が 76 V では 渦 輪 の 初 期 伝 播 速 度 U は 4.12 m/s であり 79 V では 4.62 m/s となった レイノルズ 数 Re(=UD/ν)を 求 め る 際 代 表 長 さは 一 つの 穴 の 直 径 D(=14. mm) 水 の 動 粘 性 係 数 ν そして 初 期 伝 播 速 度 U を 用 いて 計 算 すると 初 期 伝 播 速 度 が 遅 い 方 が Re = 5.39 1 4, 速 い 方 が Re = 6.5 1 4 と なった (1) Re = 6.5 1 4 タングステン 線 融 解 時 を t= ms とし t= 1 ms 以 降 の 実 験 結 果 を 載 せた Fig.4 は 伝 播 方 向 から 撮 影 した 写 真 である 単 独 の 円 形 の 渦 輪 は 自 身 がつくる 速 度 場 により 直 進 する しかし 渦 輪 が 横 に 二 つ 並 んだ 場 合 一 方 の 渦 輪 が 作 る 速 度 場 の 影 響 を 他 方 の 渦 輪 が 受 ける このとき 双 方 のより 近 くに ある 渦 管 が 強 く 影 響 を 及 ぼし 合 うため 内 側 の 渦 管 が 外 側 の 渦 管 に 比 べ 遅 れて 伝 播 する その ため 二 つの 渦 輪 の 伝 播 方 向 が 向 き 合 い 内 側 の 渦 管 が 接 触 し 一 回 目 のつなぎ 換 えが 起 こる(2 ~4 ms) その 結 果 歪 んだ 一 つの 楕 円 渦 輪 が 生 成 する(5 ms) この 楕 円 渦 輪 は 各 部 分 が 曲 率 に 比 例 し 動 くため 三 次 元 的 に 振 動 しながら 伝 播 する(5~9 ms) その 際 初 め 最 も 離 れた 場 所 に 位 置 した 渦 管 が 接 近 し 合 い(6 ms の 矢 印 の 向 き) その 渦 管 が 接 触 し 二 回 目 のつなぎ 換 えが 起 こる(9 ms) そして 1 ms 以 降 の 写 真 は 不 完 全 なつなぎ 換 えの 結 果 となっている 不 完 全 なつなぎ 換 えが 生 じた 渦 輪 は 不 安 定 であり その 後 形 状 が 崩 れ 消 滅 してしまう 1 ms 2 ms 4 ms 5 ms 3
6 ms 9 ms 1 ms 13 ms Fig.4. 伝 播 方 向 から 撮 影 した 渦 輪 の 連 続 写 真 U = 4.62 m/s, Re = 6.5 1 4 (2) Re = 5.39 1 4 Fig.5 はレイノルズ 数 が 小 さい 方 の 実 験 結 果 である 一 回 目 のつなぎ 換 え(3~4 ms)はレイ 4 ノルズ 数 が 大 きい 方 の 実 験 結 果 ( Re = 6.5 1 )と 類 似 しているが 二 回 目 のつなぎ 換 え (9 ms 付 近 )は ほぼ 完 全 につなぎ 換 えが 行 われるため 観 測 結 果 が 異 なった また 初 め 縦 に 渦 輪 が 二 つ 並 んでいたものが 連 続 した 二 回 のつなぎ 換 えにより 横 に 二 つ 並 んでいることが 分 かる ほぼ 完 全 につなぎ 換 わることが 出 来 た 二 つの 渦 輪 は 形 状 伝 播 速 度 をあまり 変 えず 互 いに 遠 ざかる 方 向 に 安 定 して 伝 播 して 行 く 様 子 が 観 測 できた 1 ms 3 ms 4 ms 7 ms 9 ms 11 ms Fig.5. 伝 播 方 向 から 撮 影 した 渦 輪 の 連 続 写 真 U = 4.12 m/s, Re = 5.39 1 4 4
(3) 初 期 伝 播 速 度 による 影 響 二 つの 実 験 条 件 において 二 回 目 のつなぎ 換 えの 際 観 測 結 果 に 違 いが 生 じた(Fig.6) (a) はほぼ 完 全 なつなぎ 換 え (b)は 不 完 全 なつなぎ 換 えとなった 結 果 である 結 果 が 異 なった 原 因 は 初 期 伝 播 速 度 の 影 響 であると 考 えられる 伝 播 速 度 が 速 い 渦 輪 は 渦 管 が 作 る 速 度 場 も 強 くなる そのため 7 ms の 渦 管 接 近 部 で 互 いの 渦 管 が 伝 播 方 向 に 強 く 押 し 流 し 合 うため 渦 管 が 接 近 しづらくなり 不 完 全 なつなぎ 換 えになり 易 くなったと 考 えられる ( a) U = 4.12 m/s ( b) U = 4.62 m/s 7 ms 8 ms 7 ms 8 ms 9 ms 1 ms 9 ms 1 ms Fig.6. 二 回 目 のつなぎ 換 えの 際 二 つの 実 験 条 件 における 観 測 結 果 の 違 い (a) U = 4.12 m/s, Re = 5.39 1 4. (b) U = 4.62 m/s, Re = 6.5 1 4 4. つなぎ 換 え 詳 細 (Bridging Bridging) つなぎ 換 えの 詳 細 を S.Kida 等 の 論 文 を 参 考 に 二 回 目 のつなぎ 換 えを 例 に 挙 げ 説 明 する (Fig.7) 接 触 した 部 分 の 渦 線 p( 図 (a)の 相 互 作 用 領 域 ( 黄 色 部 分 ))は 渦 度 の 向 きが 逆 向 きで 粘 性 拡 散 によりキャンセルする そのため 渦 線 p は 相 互 作 用 領 域 の 端 で 切 りつながり 二 つ の 輪 となる( 図 (a)) 渦 線 p は 渦 管 の 回 転 方 向 ( 単 独 矢 印 の 向 き)に 回 転 する 初 め 相 互 作 用 領 域 から 離 れた 場 所 に 位 置 した 渦 線 q も 同 様 に 回 転 する その 結 果 渦 線 p と 渦 線 q は 相 互 作 用 領 域 の 端 で 絡 み 合 う 形 となる( 図 (b),(c)) つなぎ 換 えは 連 続 的 に 生 じるため 渦 線 p は 次 第 に 増 えてくる つまり 図 (c)の 実 際 の 渦 管 は 図 (C)のようになっていると 考 えられる ま た 図 (C)のように 不 完 全 なつなぎ 換 えとなるのは 渦 管 の 接 触 を 促 す 速 度 場 ( 渦 管 の 自 己 誘 導 による 速 度 場 )が 働 いている 内 につなぎ 換 わることが 出 来 なかった 渦 管 が 図 (C)の 渦 管 Q の ように 残 ってしまうことが 原 因 である 接 触 を 促 すような 速 度 場 がないと 渦 度 を 持 った 渦 管 は 互 いに 流 し 合 うため 接 近 せず 離 れてしまう そのため 直 ぐ 四 角 で 囲 った 部 分 の 渦 管 Q は 互 いに 離 れてしまう 5
図 (C)の 四 角 で 囲 った 部 分 の 渦 管 P, Q が S.Kida 等 の 論 文 で bridge, thread と 呼 ばれる 部 分 である 図 (d)は 図 (a)で 描 いた 渦 線 を 追 って 描 いたもので 図 (D)は 実 際 の 渦 管 を 描 いたもの となっている 描 いた 絵 の 形 状 は 実 験 結 果 と 良 く 一 致 している 粘 性 拡 散 により キャンセル p thread q (a) P Q Z q bridge p (b) 拡 大 Q q p (c) P (C) p P q (d) Q (D) Fig.7. つなぎ 換 え 詳 細 図 (Bridging) (a~d)はある 特 定 の 渦 線 のみを 追 って 描 いた 図 である 図 の 二 つ 矢 印 は 渦 度 の 向 き 単 独 矢 印 は 渦 線 の 回 転 方 向 を 示 す 図 の 点 線 は 図 面 の 裏 側 ( 奥 )を 示 す 図 (C), (D) は 図 (c), (d)の 実 際 の 渦 管 を 描 いたものとなっている 6
5. 結 論 ほぼ 完 全 につなぎ 換 えが 生 じる 場 合 はつなぎ 換 えの 詳 細 (Bridging)は 観 測 しづらい 渦 が 半 分 ほどつなぎ 換 わった 状 態 を 観 測 することでつなぎ 換 えの 詳 細 を 知 ることができた また 実 験 結 果 は S.Kida らの 数 値 計 算 結 果 と 一 致 した 参 考 文 献 1) T.Kambe and T.Takao: J.Phys.Soc.Japan 31 (1971) 591 2) T.Fohl and J.S.Turner: Phys.of Fluids 18 (1975) 433 3) Y.Oshima and S.Asaka: J.Phys.Soc.Japan 42 (1977) 78 4) Y.Oshima and N.Izutsu: Phys.of Fluids 31 (1988) 241 5) Y.Oshima and S.Asaka: J.Phys.Soc.Japan 42 (1977) 1391 6) T.T.Lim and T.B.Nickls: Nature 357 (1992) 255 7) F.Hussain and H.S.Husain: J.Fluid Mech. 28 (1989) 257 8) S.Kida, M.Takaoka and F.Hussain: Phys.of Fluids A 1 (1989) 63 9) S.Kida, M.Takaoka and F.Hussain: J.Fluid Mech. 23 (1991) 583 1) M.V.Melander and F.Hussain: Phys.of Fluids A 1 (1989) 633 11) S.Kida and M.Takaoka: Annu. Rev. Fluid Mech. 26 (1994) 169 7