3.1.2 海 溝 海 側 を 含 む 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 震 源 域 周 辺 域 の 海 底 地 震 観 測 (1) 業 務 の 内 容 (a) 業 務 題 目 (b) 担 当 者 (c) 業 務 の 目 的 (d) 2ヵ 年 の 年 次 実 施 業 務 の 要 約 1) 平 成 23 年 度 2) 平 成 24 年 度 (2) 平 成 24 年 度 の 成 果 (a) 業 務 の 要 約 (b) 業 務 の 実 施 方 法 (c) 業 務 の 成 果 1) 房 総 沖 における 海 底 地 震 観 測 2) 宮 城 県 沖 における 海 底 地 震 観 測 3) 超 深 海 型 海 底 地 震 計 の 開 発 4) 平 成 24 年 12 月 7 日 宮 城 県 沖 地 震 (M=7.3)の 余 震 (d) 結 論 ならびに 今 後 の 課 題 21
3.1 海 底 自 然 地 震 観 測 等 3.1.2 海 溝 海 側 を 含 む 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 震 源 域 周 辺 域 の 海 底 地 震 観 測 (1) 業 務 の 内 容 (a) 業 務 題 目 海 溝 海 側 を 含 む 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 震 源 域 周 辺 域 の 海 底 地 震 観 測 (b) 担 当 者 所 属 機 関 役 職 氏 名 上 席 研 究 員 主 任 研 究 員 研 究 員 技 術 研 究 主 事 末 次 大 輔 尾 鼻 浩 一 郎 杉 岡 裕 子 伊 藤 亜 妃 (c) 業 務 の 目 的 2011 年 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 の 周 辺 域 において 将 来 巨 大 地 震 が 発 生 する 可 能 性 を 評 価 することは 地 震 津 波 防 災 上 急 務 である 2011 年 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 において 海 溝 付 近 の ごく 浅 部 でのすべり 量 が 数 十 メートルに 達 し 巨 大 津 波 発 生 の 主 因 となったことが 分 かって きている 周 辺 海 域 で 巨 大 地 震 が 発 生 する 場 合 に 同 様 にプレート 境 界 浅 部 での 破 壊 が 起 きるかどうかは 将 来 の 巨 大 津 波 発 生 の 可 能 性 を 評 価 するために 重 要 である また 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 後 に 正 断 層 地 震 の 活 動 が 活 発 化 した 海 溝 海 側 の 太 平 洋 プレート 内 部 では 1933 年 昭 和 三 陸 地 震 のような 大 きな 正 断 層 地 震 とそれに 伴 う 津 波 発 生 が 懸 念 されている 十 勝 沖 房 総 沖 日 本 海 溝 太 平 洋 側 海 域 など 周 辺 域 において 海 底 自 然 地 震 観 測 をおこない 低 周 波 地 震 活 動 を 含 む 地 震 活 動 ( 位 置 深 さ 発 生 メカニズム)を 明 らかにする 2011 年 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 が 周 辺 域 に 与 えた 影 響 を 評 価 すると 共 に 周 辺 域 での 巨 大 地 震 津 波 発 生 リスクを 明 らかにする (d) 2ヵ 年 の 年 次 実 施 業 務 の 要 約 1) 平 成 23 年 度 : 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 が 震 源 域 南 側 隣 接 海 域 である 房 総 沖 海 底 下 にどのような 影 響 を 及 ぼし 地 震 活 動 がどのように 推 移 しているかを 知 ることは 今 後 の 地 震 津 波 予 測 の 高 度 化 のために 重 要 である 海 洋 研 究 開 発 機 構 観 測 船 みらい のMR12-E01 航 海 により 房 総 沖 日 本 海 溝 から 陸 側 海 域 に 広 帯 域 海 底 地 震 計 6 台 と 短 周 期 長 期 型 海 底 地 震 計 8 台 を 設 置 した 着 底 確 認 後 に1 年 間 の 予 定 で 観 測 を 開 始 した また 引 き 続 き 行 う 観 測 に 向 けて 必 要 とな る 観 測 用 機 材 消 耗 品 を 計 画 的 に 準 備 した 2) 平 成 24 年 度 : 房 総 沖 海 域 に 短 周 期 長 期 型 海 底 地 震 計 15 台 を 追 加 設 置 し 3 月 に 全 25 台 を 回 収 した( 広 帯 域 海 底 地 震 計 1 台 と 短 周 期 長 期 型 OBS3 台 は 未 回 収 ) また 宮 城 沖 の 海 溝 外 側 を 中 心 と した 海 域 に 短 周 期 短 期 型 海 底 地 震 計 46 台 を 設 置 した このうち 24 台 は 平 成 24 年 12 月 7 日 に 発 生 した 宮 城 県 沖 地 震 (M7.3)の 余 震 観 測 のために1ケ 月 で 回 収 し 余 震 分 布 を 求 めた 残 りは 2013 年 3 月 以 降 の 回 収 を 予 定 している 22
(2) 平 成 24 年 度 の 成 果 (a) 業 務 の 要 約 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 が 震 源 域 南 側 隣 接 海 域 である 房 総 沖 海 底 下 にどのような 影 響 を 及 ぼし 地 震 活 動 がどのように 推 移 しているかを 知 ることは 今 後 の 地 震 津 波 予 測 の 高 度 化 のために 重 要 である 房 総 沖 海 域 に 短 周 期 長 期 型 海 底 地 震 計 15 台 を 追 加 設 置 し 全 29 台 に よる 海 底 地 震 観 測 を 実 施 した また 宮 城 沖 の 海 溝 外 側 を 中 心 とした 海 域 に 新 たに 開 発 し た 超 深 海 型 を 含 む 短 周 期 短 期 型 海 底 地 震 計 46 台 を 設 置 し 約 3ヶ 月 の 地 震 観 測 を 実 施 した のちに 回 収 した 平 成 24 年 12 月 7 日 に 発 生 した 宮 城 県 沖 地 震 (M7.3)の 予 察 的 な 余 震 分 布 を 求 めた (b) 業 務 の 実 施 方 法 広 帯 域 海 底 地 震 計 にはGuralp 社 製 CMG-T 広 帯 域 3 成 分 センサーとセンサー 姿 勢 制 御 装 置 24ビットデジタイザー ディスクから 成 り リチウム 電 池 音 響 通 信 用 トランスポンダー と 共 に チタン 球 の 中 に 全 ての 機 器 が 納 められている( 図 1) 6 点 のうち2 点 には 津 波 検 出 に 有 効 な 差 圧 計 を 広 帯 域 海 底 地 震 計 に 装 着 した 短 周 期 長 期 型 海 底 地 震 計 は4.5Hz 短 周 期 3 成 分 センサーとハイドロフォン 24ビットデジタイザー ディスクから 成 り リチウム 電 池 と 共 にガラス 球 に 収 められている( 図 2) また 新 たに 水 深 9000m 以 上 の 海 底 に 設 置 可 能 な 超 深 海 型 海 底 地 震 計 を 開 発 し 宮 城 沖 での 観 測 に 使 用 した( 後 述 ) この 海 底 地 震 計 は 短 周 期 海 底 地 震 計 で 用 いているガラス 球 の 代 わりに 耐 圧 性 能 の 高 いセラミック 球 を 使 用 したものである 設 置 は 海 洋 研 究 開 発 機 構 の 観 測 船 かいれい のKR12-10 航 海 ( 房 総 沖 )とKR12-20 航 海 ( 宮 城 県 沖 )によって 実 施 された 設 置 方 法 は 観 測 船 からの 自 由 落 下 方 式 である 回 収 は 海 洋 研 究 開 発 機 構 の 観 測 船 かいれい のKR12-20 KR13-06 航 海 と( 株 ) 芙 蓉 海 洋 開 発 の 第 七 開 洋 丸 を 用 いた 傭 船 航 海 によって 実 施 した 回 収 方 法 は 船 上 の トランスポンダーからの 錘 切 り 離 し 信 号 による 自 己 浮 上 方 式 である 図 1 広 帯 域 海 底 地 震 計 の 外 観 23
図 2 短 周 期 長 期 型 海 底 地 震 計 の 外 観 (c) 業 務 の 成 果 1) 房 総 沖 における 海 底 地 震 観 測 海 洋 研 究 開 発 機 構 の 観 測 船 かいれい のKR12-10によって 房 総 沖 海 底 に 短 周 期 長 期 型 海 底 地 震 計 15 点 を 設 置 し 前 年 度 設 置 した14 台 とともに 全 29 台 で 約 1 年 間 の 海 底 地 震 観 測 を 実 施 した 広 帯 域 海 底 地 震 観 測 点 BB3とBB4には 差 圧 計 も 装 着 してある 回 収 作 業 は ( 株 ) 芙 蓉 海 洋 開 発 の 第 七 開 洋 丸 ( 傭 船 )によって 実 施 した 図 4に 観 測 点 図 を 示 す 回 収 され たデータは 良 好 であり 平 成 25 年 度 に 震 源 決 定 やメカニズム 決 定 等 のためのデータ 解 析 に 使 用 される 予 定 である 2) 宮 城 県 沖 における 海 底 地 震 観 測 海 洋 研 究 開 発 機 構 の 観 測 船 かいれい のKR12-20によって 宮 城 沖 の 海 溝 外 側 を 中 心 と した 海 域 に 新 たに 開 発 した 超 深 海 型 を 含 む 短 周 期 短 期 型 海 底 地 震 計 46 台 を 設 置 した この うち26 台 は 平 成 24 年 12 月 7 日 に 発 生 した 宮 城 県 沖 地 震 (M7.3)の 余 震 分 布 を 迅 速 に 求 め るために 同 航 海 によって 設 置 後 約 3 週 間 で 回 収 し 残 りは3 月 以 降 に 回 収 する 予 定 である 回 収 作 業 は 海 洋 研 究 開 発 機 構 の 観 測 船 かいれい のKR13-06 及 び( 株 ) 芙 蓉 海 洋 開 発 の 第 七 開 洋 丸 ( 傭 船 )によって 実 施 した 図 5に 観 測 点 図 を 示 す 回 収 されたデータは 良 好 であり 平 成 25 年 度 に 震 源 決 定 やメカニズム 決 定 等 のためのデータ 解 析 に 使 用 される 予 定 である 24
図3 房総沖に設置した海底地震計の分布 BS-S## BS-L##は短周期長期 型海底地震計 BS-B##は広帯域海底地震計を示す 25
図 4 宮 城 沖 の 海 底 地 震 観 測 点 ( 下 三 角 ) 2011 年 3 月 11 日 の 本 震 ( 大 きな 星 ) 2012 年 ( 平 成 24 年 )12 月 7 日 の M7.3 の 余 震 ( 小 さな 星 ) JFAST 掘 削 点 (ひし 形 )も 併 せて 示 す 3) 超 深 海 型 海 底 地 震 計 の 開 発 従 来 の 海 底 地 震 計 では 設 置 可 能 水 深 が6,000m 程 度 に 限 られており 日 本 海 溝 の 海 溝 軸 のような 大 水 深 に 海 底 地 震 計 を 設 置 する 事 は 出 来 なかった 今 回 耐 圧 性 能 の 高 い セラミック 製 耐 圧 容 器 を 開 発 するとともに トランスポンダー の 性 能 を 見 直 し 水 深 9000mを 超 え る 超 深 海 底 での 地 震 観 測 が 可 能 な 超 深 海 型 海 底 地 震 計 を 開 発 した こ れにより 日 本 海 溝 などでも 観 測 が 可 能 になり 海 溝 軸 付 近 で 発 生 して いる 地 震 を 間 近 で 観 測 できるよう になった( 図 5) 図 5 超 深 海 型 海 底 地 震 計 用 耐 圧 容 器 26
4) 平 成 24 年 12 月 7 日 宮 城 県 沖 地 震 (M=7.3)の 余 震 平 成 24 年 12 月 7 日 に 宮 城 県 沖 の 海 溝 軸 付 近 でM7.3の 地 震 が 発 生 し 東 北 地 方 太 平 洋 沿 岸 で 数 十 cmの 津 波 が 観 測 された グローバルな 地 震 観 測 データを 用 いたGCMTの 結 果 によれば この 地 震 は 太 平 洋 プレート 内 部 の 深 さ60kmの 逆 断 層 地 震 と 深 さ20kmの 正 断 層 地 震 の 連 発 し たものと 考 えられている この 地 震 の 余 震 分 布 を 迅 速 に 求 めるため 2012 年 12 月 12 日 以 降 海 溝 軸 周 辺 及 び 海 溝 海 側 に 超 深 海 型 海 底 地 震 計 を 含 む 短 周 期 海 底 地 震 計 を 設 置 するととも に その 一 部 を2013 年 1 月 に 回 収 し 実 体 波 の 到 着 時 刻 読 み 取 りと 震 源 決 定 をおこなった その 予 察 的 な 結 果 を 図 6に 示 す 余 震 は 海 溝 軸 より 陸 側 の 沈 み 込 む 太 平 洋 プレート 内 部 深 さ10-20kmに 集 中 しているが 深 さ50kmに 及 ぶ 地 震 もあることが 分 かった 今 後 より 詳 細 な 解 析 を 行 い 連 発 余 震 のメカニズムを 明 らかにする 図 6 2012 年 12 月 13 日 2013 年 1 月 5 日 の 地 震 分 布 を 示 す( 点 ) 点 の 色 は 震 源 の 深 さを 示 している ピンクと 緑 の 震 源 メカニズム 解 は 各 々2012 年 12 月 7 日 に 連 発 した 深 い 逆 断 層 地 震 浅 い 正 断 層 の 震 源 メカニズムを 示 す(GCMT による) (d) 結 論 ならびに 今 後 の 課 題 今 後 は 回 収 された 短 周 期 広 帯 域 地 震 波 データを 解 析 して 震 源 決 定 や 震 源 メカニズム 決 定 などをおこない 房 総 沖 及 び 宮 城 県 沖 の 地 震 活 動 の 推 移 を 明 らかにする 予 定 である と くに 広 帯 域 海 底 地 震 計 を 設 置 した 房 総 沖 では 超 低 周 波 地 震 が 発 生 しているかどうかにつ いても 明 らかにしていきたい 27