4) ホルモンの化学構造からみた種類にはホルモンの種類分泌器官とホルモン名視床下部放出ホルモン 下垂体前葉ホルモン 1 ペプチドホルモン上皮小体ホルモン インスリン グルカゴンなど卵巣ホルモン 精巣ホルモン 副腎皮質コルチコイド 2 ステロイドホルモン活性型ビタミン D 1) カテコ ルアミン 3

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ゴナドトロピン分泌異常症 性腺刺激ホルモン ( ゴナドトロピン ) である LH と FSH の 2 種類のホルモンの分泌が亢進あるいは低下することにより 下位の性腺ホルモンであるエストロゲンやテストステロンが分泌異常をきたす疾患 年齢 性別により種々の異なった病像を示す 14,000 人 3. 原

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インスリンが十分に働かない ってどういうこと 糖尿病になると インスリンが十分に働かなくなり 血糖をうまく細胞に取り込めなくなります それには 2つの仕組みがあります ( 図2 インスリンが十分に働かない ) ①インスリン分泌不足 ②インスリン抵抗性 インスリン 鍵 が不足していて 糖が細胞の イン

52 レニン 腎臓から分泌 細胞外液量の減少, 血圧低下, 交感神経興奮, 立位などにより分泌促進 レニン アンジオテンシン アルドステロン系の活性化 Na + と水の再吸収促進 体液の保持 血管収縮による血圧上昇 糸球体傍装置の主なもの 糸球体傍細胞 レニンを分泌 緻密斑 NaCl( 特に Cl

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られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

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日本の糖尿病患者数は増え続けています (%) 糖 尿 25 病 倍 890 万人 患者数増加率 万人 690 万人 1620 万人 880 万人 2050 万人 1100 万人 糖尿病の 可能性が 否定できない人 680 万人 740 万人

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1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( はい / ) 上記外来の名称 対象となるストーマの種類 7 ストーマ外来の説明が掲載されているページのと は 手入力せずにホームページからコピーしてください 他施設でがんの診療を受けている または 診療を受けていた患者さんを

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G 内分泌系のしくみと働き 1. 神経系と内分泌系生体の恒常性は神経系と 内分泌系 ( ホルモン ) によって調節される 1 神経系による調節神経線維の電気信号による素早い伝導とシナプスでの伝達 2 内分泌による調節化学伝達物質によるゆっくりした伝達 ( ホルモン ) 1) 分泌様式 早い伝達 ( 電話 ) 遅い伝達 ( 郵便 ) 2. 内分泌とホルモン 1) ホルモンとは 1 化学的情報伝達物質として微量で効果を発揮する 2 ホルモンは特定の内分泌腺や細胞から血中に分泌される 3 ホルモンは標的細胞の受容体と結合して作用を発現させる 2) 内分泌器官には 人体の内分泌器官 特定の細胞から分泌 下垂体前葉と後葉 甲状腺 上皮小体 副腎皮質と副腎髄質 膵臓ランゲルハンス島 卵巣 精巣 消化管ホルモン 視床下部ホルモン 3) ホルモンには分泌のタイプがある 1 内分泌 ( ホルモン ) 血管内に伝達物質を分泌 通常の内分泌器官 2 神経内分泌 軸索内輸送により血管内に分泌 下垂体後葉ホルモン 3 傍分泌 ( パラクリン ) 細胞の近くに分泌 ( 細胞間伝達 ) サイトカイン 71

4) ホルモンの化学構造からみた種類にはホルモンの種類分泌器官とホルモン名視床下部放出ホルモン 下垂体前葉ホルモン 1 ペプチドホルモン上皮小体ホルモン インスリン グルカゴンなど卵巣ホルモン 精巣ホルモン 副腎皮質コルチコイド 2 ステロイドホルモン活性型ビタミン D 1) カテコ ルアミン 3 アミノ酸誘導体ノルアドレナリン アドレナリン ドーパミン 2) 甲状腺ホルモン 5) ホルモンは受容体に結合して作用する ホルモンは標的器官の受容体とのみ結合することができる 細胞膜受容体細胞内受容体以外の親水性ホルモン受容体の種類細胞内受容体ステロイド 甲状腺ホルモンなどの脂溶性ホルモン 3. 視床下部自律神経の最高中枢下垂体前葉放出ホルモン下垂体後葉ホルモン 体温 摂食 飲水 糖質代謝 性本能 下垂体前葉ホルモンの分泌を刺激 視床下部から下垂体後葉ホルモンを分泌 1) 視床下部から分泌されるホルモン (245) (1) 下垂体前葉放出 / 抑制ホルモンは視床下部から分泌されるホルモンで神経内分泌である 下垂体に作用してホルモンの分泌を調節する 1. 成長ホルモン放出ホルモン 2. 成長ホルモン抑制ホルモン 3. プロラクチン抑制ホルモン 4. 甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン 5. 副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン 6. 性腺刺激ホルモン放出ホルモン 神経細胞がホルモンを血管に分泌する 視床下部下垂体門脈 (2) 下垂体後葉ホルモン (2 種類 ) 1. バソプレシン 2. オキシトシン 前葉 後葉 72

4. 下垂体 1) 下垂体から分泌されるホルモン間脳の視床下部に位置する約 0.5~0.8gの内分泌腺で蝶形骨のトルコ鞍におさまる 下垂体は腺性下垂体 ( 前葉 ) と神経性下垂体 ( 後葉 ) に分かれる 両者とも外胚葉発生 前葉ホルモン 中間部 後葉ホルモン 1 成長ホルモン ( GH ) 2 プロラクチン ( PRL ) 3 副腎皮質刺激ホルモン ( ACTH ) 4 甲状腺刺激ホルモン ( TSH ) 5 性腺刺激ホルモン ( 下垂体ゴナドトロピン ) a. 卵胞刺激ホルモン ( FSH ) b. 黄体形成ホルモン ( LH ) 1 メラトニン ( MSH: インテルメジン ) メラニン細胞刺激ホルモン 1 バソプレソン ( 抗利尿ホルモン ADH ) 2 オキシトシン ( 子宮収縮ホルモン 射乳ホルモン ) 2) 下垂体前葉ホルモン ( 245 ) (1) 成長ホルモン ( GH ) と働き骨成長を促進甲状腺ホルモンも骨代謝に関わる 成長 発達乳幼児 小児 青年期で促進 成人では代謝に作用する. GH は肝臓に作用して IGF-i( ソマトメジン ) を分泌して成長促進思春期女子のエストロゲンの分泌は GH 分泌を促進 ( 女子の早期成長 ) 同化作用タンパク合成と筋肉増加 血糖上昇作用概日リズム 24 時間周期がある 小児では徐波ノンレム睡眠で分泌が増加 成長ホルモンの分泌障害過剰分泌思春期前巨人症 (2m 以上の身長 ) 成長後末端巨大症 ( 四肢肥大と肥厚 ) 分泌欠乏 小児期小人症 ( 身長 1.2m 以下 ) 過剰分泌の原因の多くは良性の GH 産生腺腫 (2) プロラクチン (PRL) と働き a. 乳汁生成妊娠 4 カ月頃から上昇し 出産で急激に増加し乳腺を刺激 b. 妊娠の維持黄体を刺激して黄体ホルモンを分泌促進 c. 排卵抑制妊娠中や授乳期の ( 授乳性無月経 : 出産後約半年後に月経再開 ) 73

プロラクチンの分泌障害 過剰分泌( 良性腺腫 : プロラクチノーマ ) により 男性 : 性欲低下 女性 : 無月経 PIH( プロラクチン抑制ホルモン : ドパミン ) により 分泌が抑制される ハロベリドール( ドパミン阻害薬 ) は向精神薬でプロラクチン分泌を促進するので 男性でも乳腺が発達し 乳汁が産生される (3) 甲状腺刺激ホルモン (TSH) 甲状腺を刺激して甲状腺ホルモンを分泌促進するホルモン (4) 副腎皮質刺激ホルモン (ACTH) ACTH は主に副腎皮質の束状帯 網状帯を刺激してホルモンを分泌させる メラニン細胞を刺激して色素沈着 (MSH と同じ作用 ) を起こす ( アジソン病 ) (5) 性腺刺激ホルモン ( ゴナドトロピン分泌細胞 ) a. 卵胞刺激ホルモン ( FSH ) 卵胞を発育促進して卵胞ホルモン ( エストロゲン ) を分泌促進女性への作用排卵直前ではエストロゲンが上昇し LH が上昇し排卵を誘発する 精子形成 *( アンドロゲン結合タンパクを生成して 精子形成男性への作用に関わる ) * セルトリ細胞で育成される b. 黄体形成ホルモン ( LH ) 女性への作用 排卵 黄体を刺激して黄体ホルモン ( プロゲステロン ) を分泌促進 男性への作用 精巣の精細管間細胞のライディッヒ細胞に働きテストステロン分泌 3) 下垂体後葉ホルモン ( 246 ) 働き分泌刺激は乳児の乳頭吸引刺激 分娩時の膣伸展刺激オキシトシン妊娠末期の子宮収縮と陣痛を起こす ( 正のフィードバック ) 分娩後の射乳 ( 乳腺腺房の筋上皮細胞の収縮に作用 ) バソプレシン 分泌刺激は血漿浸透圧の上昇 ( 脱水 ) 腎臓で水の再吸収促進 ( 尿の濃縮作用 ) 体内の水分保持作用 分泌過剰で血管収縮により高血圧 分泌減少( 後葉の損傷など ) で尿量は増加 ( 尿崩症 :10l/ 日 ) 口渇 多飲治療 : デスモプレシン点鼻薬 74

5. 甲状腺気管上部の前面に位置し左右 2 葉と峡部からなる 重さ約 20gで内分泌器官として最も大きい 甲状腺ホルモンと傍濾胞細胞からカルシトニンが分泌さ ( れる 甲状軟骨 濾胞 コロイド T3 T4 気管甲状腺濾胞上皮 1) 甲状腺ホルモンの働き (242) 1 サイロキシン ( T4 ) 約 90% 脱ヨード化されてT3になる 2 トリヨードサイロニン ( T3 ) 約 10% 甲状腺ホルモンの活性はT3が高い 基礎代謝を促進( 分泌過剰でタンパク 糖質 脂肪の分解促進 ) 熱産生 酸素消費増加 肝臓のLDL 受容体増加による脂肪酸合成と消費が促進し コレステロール値が低下する 血糖値を上げる( 消化管からの糖吸収促進 ) が高血糖は生じない 心機能亢進( 心拍数 心拍出量増大 ) 交感神経増強作用(β 2 受容体親和性促進 ) 発育と成熟( 胎児期の骨格と神経系の分化成熟 : 分泌不足がクレチン病 - 精神遅滞 小人症 ) 分泌刺激 TSH と血中濃度低下 寒冷 興奮 妊娠で促進 (1) 甲状腺機能異常 ( 成人の1~2% が罹患 ) 甲状腺機能亢進症 甲状腺機能低下症 主な疾患名 バセドウ病 亜急性甲状腺炎 慢性甲状性炎 ( 橋本病 ) 好発年齢 20~40 歳代の女性 45~65 歳代の女性 症状 メルゼブルグ三徴候 1 甲状腺腫 2 頻脈 3 眼球突出体重減少 高血圧 発汗過多 下痢 体温上昇 ( 微熱 ) T3 T4 上昇 TSH 低下 低体温 寒がり 徐脈 低血圧浮腫 ( 酸性粘液多糖類による圧痕を残さない non-pitting edema) 便秘 T3 T4 低下 TSH 上昇抗サイログロブリン抗体陽性 検査 抗 TSH 受容体抗体 TRAb 陽性抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体 (TPO) 血中コレステロール低下 ( 脂質が血中コレステロール上昇 ( 脂質が消費され エネルギー源として消費される ) ない 肝で分解 ( 胆汁酸へ変換 ) されない ) 75

2) カルシトニン ( CT ) (1) 甲状腺濾胞間細胞 ( 傍濾胞細胞 :C 細胞 ) から分泌 食後の血中 Ca 増加によって分泌され 血中 Ca 濃度を下げる 骨へのリン酸 Ca の沈着を促進させ 血中 Ca イオンを低下 エストロゲンは破骨細胞の骨吸収を抑制 閉経後の分泌低下で骨粗鬆症を招く エストロゲン減少はカルシトニンを抑制する カルシトニンは破骨細胞を抑制 (2) カルシウムの働き (3) 血中カルシウムの調節 a. 血液凝固反応 b. 分泌パラソルモン Ca ++ c. 筋収縮 d. 神経興奮 Ca ++ カルシトニン 血 管 6. 上皮小体 ( 副甲状腺 )(243) 1) パラソルモン ( PTH ) (1) パラソルモンの働き a. 破骨細胞に働いて骨を溶解し 血中 Ca 上昇 b. 尿細管での Ca 再吸収促進 リン酸再吸収抑制 c. カルシトニンと拮抗的に作用 d. 分泌不足はテタニーを起こす 筋の興奮性亢進 e. 分泌過剰は骨がもろくなる 骨粗鬆症を生じる (2) パラソルモンの分泌異常 上皮小体機能亢進症 上皮小体昨機能低下症 主な疾患 原発性上皮小体機能亢進症 ( 腺腫 ) 二次性機能低下症 ( 甲状腺術後 ) 症状 悪心 嘔吐多尿 多飲 尿路結石 テタニー 検査 高 Ca 血症 尿中 Ca 増加 低 P 血症 低 Ca 血症 高 P 血症 2) カルシウム代謝に関係するホルモン血中 Ca 2+ 濃度 働 き カルシトニン Ca 2+ 低下作用 尿へ Ca 2+ 排出骨へ Ca 2+ 沈着 パラソルモン Ca 2+ 上昇作用 骨溶解と腎から Ca 2+ を吸収 ビタミンD Ca 2+ 上昇作用 腸から Ca 2+ を吸収 76

8. 膵ランゲルハンス島とホルモン (247) a.a(α ) 細胞好酸性細胞 20% グルカゴン b.b(β ) 細胞主細胞 70% インスリン c.d(δ ) 細胞 10% ソマトスタチン ランゲルハンス島 1) インスリン (1) インスリンの作用食後の血糖値上昇で分泌促進 ( 副交感神経がラ島に作用してインスリン分泌 ) 分泌刺激 2 時間後正常に戻る 血糖値が正常に戻れば分泌は低下する a. 肝 筋 脂肪細胞に作用してグルコース 脂肪酸 アミノ酸を取り込む インスリンがないと細胞はグルコースを利用することができない 働き脳はインスリンがなくても糖利用が可能 b. 糖をグリコーゲンに変換して肝臓や筋に貯蔵する c. 糖を脂肪に変換し 脂肪細胞に貯蔵する (2) 糖尿病 Ⅰ 型糖尿病 : 小児 若年者型は絶対的インスリン不足が原因 Ⅱ 型糖尿病 : 成人型はインスリンの感受性の低下と分泌不足が原因 糖尿病の症状 口渇 多飲 ~ 高血糖で血漿浸透圧が高いため喉が渇く 多尿 ~ 尿細管中に糖が多いために浸透圧が高くなり水の再吸収ができない ( 浸透圧利尿を生じるため ) 糖尿病はケトアシドーシス ( 代謝性アシドーシス ) を起こす 2) グルカゴン (1) グルカゴンの作用 a. 肝臓のグリコーゲンをグルコースにして血中に放出 b. 血糖値上昇作用 ( グルカゴンはインスリンの存在下で協同的に作用 ) c. アミノ酸からグルコースを作る ( 糖新生 ) d. 脂肪分解とケトン体生成 (2) グルカゴンの分泌刺激 (3) 血糖値を上昇させるホルモン血糖値の低下で分泌促進 a. 糖質コルチコイド血糖値の上昇で分泌低下 b. アドレナリン c. 成長ホルモン d. グルカゴン 77

9. 副腎皮質の構造とホルモン (186) (1) 副腎の構造副腎皮質 (90%) 副腎皮質刺激ホルモンにより分泌副腎髄質 (10%) 交感神経刺激により分泌 (2) 副腎皮質の3 層構造と分泌するホルモン a. 球状層 (10%) 電解質コルチコイド アルドステロン レニン (AGⅡ) の支配 b. 束状層 (75%) 糖質コルチコイド コルチゾール コルチゾン ACTH の支配 c. 網状層 (15%) 男性ホルモン アンドロゲン ACTH の支配 1) 電解質コルチコイド (1)) アルドステロンの分泌と働き分泌刺激体液量減少 血圧低下 腎血流量の低下 AGⅡ 高 K 血症アルドステロンの作用腎で Na + 再吸収と K + 排出 H + 排出 ( 体液量の調節 血圧維持 ) (2) アルドステロンの分泌異常 a. アルドステロンの分泌低下 ( アジソン病 ) b. アルドステロンの分泌過剰原因 )1. 原発性アルドステロン症 2. クッシング症候群 Na + を再吸収できない 低 Na 血症 K + を捨てられない 高 K 血症 H + 排出低下 アシドーシス Na + 再吸収過剰 高 Na 血症 K + 排泄過剰 低 K 血症 H + 排出過剰 アルカローシス 2) 糖質コルチコイド ( GC ) (1) 糖質コルチコイドの作用コルチゾルの作用 働き ( 過剰分泌含む ) 免疫抑制作用 リンパ球抑制 抗体生成抑制 易感染性 ヒスタミン分泌抑制 抗炎症作用血糖上昇 ( 抗インスリン作用 ) 好中球遊走抑制 発熱物質の PGE2 IL 産生抑制高血糖 ( 糖尿病 ) 糖新生 ( アミノ酸とブドウ糖から糖を生成 ) 脂質代謝アルドステロン作用骨形成抑制アンドロゲン作用 満月様顔貌 水牛様肩 中心性肥満 皮膚線条高血圧 高 Na 血症 低 K 血症骨粗鬆症多毛 にきび 赤ら顔 78

(2) 副腎皮質ホルモンの分泌異常 1 クッシング症候群 異所性 ACTH 産生腫瘍 ( 肺小細胞癌 ) 副腎皮質腺腫 2 クッシング病 下垂体腺腫が原因で ACTH 過剰分泌 機能亢進症 3 ステロイドの長期服用 投薬 満月様顔貌 中心性肥満 高血圧 (85%) 頻脈 高血糖による糖尿 症状 病 免疫力低下 易感染性 低 K 血症 骨吸収の増大 ( ビタミン D 作用抑制により骨粗鬆症 ) 消化管潰瘍 男性化, 皮膚の希薄化 1アジソン病 自己免疫疾患や結核によって皮質の破壊 (90% 以上が破壊される ) で起きる 機能低下症 2 副腎クリーゼ ( 急激 ) 感染や出血により急激な皮質機能低下を起こした危機的な状態 症状 ACTH 過剰のメラニン細胞刺激による色素沈着 低血圧 ( アルドス テロン不足による主徴候 ), 低 Na 血症 高 K 血症 低血糖 3) 副腎皮質の性ホルモン (1) 男性ホルモンの強さ精巣のテストステロン > 副腎皮質のアンドロゲン アンドロゲン男性ホルモン ( 女性の男性ホルモンの約 1/2 を分泌 ) 10. 副腎髄質ホルモン 交感神経節前線維アセチルコリン髄質細胞カテコールアミン (1) 髄質ホルモンの種類 ( カテコールアミン ) 1 ノルアドレナリン NA20% 脳 交感神経 副腎髄質で合成 2 アドレナリン AD80% 副腎髄質で合成される ( N-メチル転移酵素による ) 3 ドーパミン 79

(2) 髄質ホルモンの作用 受容体 働き β 1 作用 心拍数増加 拍出量増加 血圧上昇 アドレナリン β 2 作用 気管支平滑筋拡張 ( 気管支拡張薬 ) ( エピネフリン ) 血糖値上昇作用 肝グリコーゲン分解促進インスリン分泌抑制 ノルアドレナリン ( 交感神経終末分泌 ) α 1 作用血管収縮による最大血圧 最低血圧を上昇抹消血管収縮はアドレナリンより強い. 全身の血圧 上昇作用が強い グリコーゲン分解作用はない (3) 髄質ホルモンの分泌刺激 ( 交感神経に支配される ) 分泌刺激交感神経刺激 ( ストレス 運動 寒冷 出血 低血圧 低血糖 恐れ 怒り 痛み ) (4) 血圧を上昇させるホルモン ホルモン 分泌臓器 分泌刺激 働き レニン 腎臓 腎血流量低下 血圧を上昇させる バソプレシン 下垂体後葉 血漿浸透圧上昇 集合管で水の再吸収促進 アドレナリン 副腎髄質 ストレス 心臓の収縮を速める コルチゾル 副腎皮質 クッシング アルドステロン作用 アルドステロン 副腎皮質 AGⅡ Na 再吸収 K 排出 血圧上昇 甲状腺ホルモン 甲状腺 バセドウ 交感神経増強 11. 消化管ホルモン ( ポリペプチドホルモン ) 消化管粘膜の特定の細胞から分泌され 消化液の分泌 運動を調節 1) 消化管ホルモンの種類と働き 消化管ホルモン 分泌場所 働き ガストリン 胃幽門粘膜 G 細胞から分泌 胃液分泌促進 胃の運動促進 セクレチン 十二指腸粘膜 S 細胞 膵液の分泌促進 胆嚢収縮胃液分泌 胃の運動抑制 コレシストキニン 十二指腸粘膜細胞 M 細胞 膵酵素の分泌 胆嚢収縮胃液分泌 胃の運動抑制脂質の接触刺激 GIP 胃液分泌抑 胃の運動抑制十二指腸粘膜 K 細胞 ( 胃抑制ペプチド ) ガストリン分泌抑制 80

12. ホルモン分泌の調節 1) フィードバックによる調節 (1) 負のフィードバック ( 視床下部 下垂体系 各内分泌器官 ) 血中のホルモン濃度が正常より上昇すると 正常に戻すために分泌されたホルモン自身によって上位の視床下部や下垂体に作用し分泌を抑制する その結果ホルモン濃度は正常に保たれる 負のフィードバックによるもの 1 甲状腺ホルモン 2 副腎皮質ホルモン (2) 正のフィードバック ( 排卵 分娩 ) ホルモン濃度の上昇が別のホルモンの分泌を促す作用である ホルモン濃度の急激な上昇は不均衡状態となり 排卵 (LH サージ ) や分娩 ( オキシトシン ) の引き金となる 1 エストロゲン上昇 視床下部 下垂体 LH 大量分泌 卵巣 ( 排卵 ) 2 産道伸展刺激 下垂体後葉 オキシトシン 子宮平滑筋収縮 分娩 2) 神経系と内分泌系による分泌調節は関連して内部環境を調節する ストレス 激怒 恐怖 危険 大出血 血圧低下 寒冷 低体温 外傷 疼痛視床下部 自律神経 ( 交感神経 ) 副腎髄質 アドレナリン分泌ストレス 中枢神経系視床下部 CRH 下垂体 ACTH 副腎皮質 コルチゾル分泌 がいじつ 3) サーカディアンリズム : ホルモンの分泌リズム ( 概日リズム ) による分泌 内外の環境に対応して身体の様々な機能が 24 時間周期で変動する ( 日周変動 ) 概日リズムにより分泌されるホルモンの種類 a. 副腎皮質ホルモン 早朝と覚醒 日中で高く深夜で低くなる b. 成長ホルモン 睡眠時で高い ( 徐波睡眠 NREM) 思春期高く成人は低い c. プロラクチン 睡眠で増加 覚醒で低下 妊娠中は直線的に増加 d. 甲状腺ホルモン 夜間睡眠時高く 昼前に低下 e. メラトニン 暗くなると松果体から分泌され 睡眠を誘発 81

13. 腎臓から分泌されるホルモン 1) 腎から分泌されるホルモンレニン血圧上昇作用エリスロポエチン骨髄に作用して赤血球生成 ( 造血 ) を促す活性化ビタミン D 腸管から Ca 2 + 吸収を助ける (1) レニン 腎臓の糸球体傍細胞から分泌されるホルモン 分泌刺激 : 大出血 血圧低下 脱水 ( 浸透圧上昇 循環血液量低下 ) アンギオテンシンノーゲンレニンの作用でアンギテンシン Ⅰ ACE 変換酵素 ( 肺胞血管 ) アンギオテンシン Ⅱ アンギオテンシンⅡの作用アンギオテンシンⅡ 強い血管収縮作用を持つ アルドステロンの分泌刺激 * レニンは結果的に血圧を上昇させることになる ( 昇圧作用 ) (2) エリスロポエチン 分泌刺激 : 血液中の酸素分圧の低下 低酸素 赤血球を分化増殖させる 腎性貧血 腎不全があるとエリスロポエチンの分泌不足によって貧血を招く (3) 活性化ビタミン D の生成プロビタミン D 紫外線照射ビタミン D ビタミン D の水酸化 ( 肝臓 ) 腎臓で活性化ビタミン D 生成 ( エストロゲンの影響を受ける ) ビタミン D は脂溶性ホルモンである 腸粘膜での Ca の吸収はビタミン D の作用により促進される ビタミン D 欠乏症 a. 小児くる病脛骨の変形屈曲と骨格変形 b. 成人骨軟化症骨密度低下と骨折 骨痛 14. 性ホルモン (234) 1) 性ホルモンの種類 1 卵巣エストロゲン プロゲステロン 2 精巣アンドロゲン ( テストステロン ) 3 副腎皮質アンドロゲン ( 男女とも ) 女性ホルモン 男性ホルモン 82

(1) 卵巣ホルモン 女性ホルモンは卵巣から分泌される 8~9 歳ごろから分泌される 1. 卵胞ホルモン ( エストロゲン ) 乳房発育 子宮内膜増殖第二次性徴発現皮下脂肪形成 15 歳頃から分泌される 2. 黄体ホルモン ( プロゲステロン ) 子宮内膜腺の分泌促進 着床準備基礎体温上昇更年期では両者が低下するが性腺刺激ホルモン ( FSH LH ) は上昇 卵巣の卵胞と卵子 卵胞膜はエストロゲンを分泌 黄体はプロゲステロンを分泌 1 卵胞ホルモン : エストロゲンの作用 排卵誘発( 排卵サージ : 高濃度のエストロゲンの上昇は正のフィードバックを起こし排卵の誘発を起こす 子宮筋腫, 乳癌は( エストロゲン依存性腫瘍 ) 子宮粘膜増殖( 受精卵の着床がない場合は内膜が剥離して月経となる ) 頸管粘液は薄い粘液分泌( 排卵期 : 精子を通過しやすくする ) パラトルモンの破骨細胞による骨吸収を抑制 ( 閉経で骨粗鬆症を起こしやすい ) コレステロール低下作用( 閉経で LDL コレステロールが上昇 ) 男性型に変化 2 黄体ホルモン : プロゲステロンの作用 子宮粘膜増殖の停止 子宮粘膜を分泌期にする ( 妊娠維持 ) 妊娠中の排卵抑制: 性腺刺激ホルモン放出ホルモン (LHRH) の分泌を抑制 温熱中枢を刺激して基礎体温上昇 着床後の妊娠の持続 胎盤絨毛性ゴナドトロピン ( HCG ) プロゲステロン エストロゲンを分泌し 妊娠を 持続させる 83

月経周期月経周期は28 日リズム月経が終ってから排卵までの10 日間 ( 卵胞期後期 ) (1) 増殖期エストロゲンにより子宮内膜が肥厚, 卵胞期後期基礎体温は低温相 ( 卵胞期 ) 後期でエストロゲン濃度が急上昇 LH サージが誘発されて排卵となる 月経が終わってから15 日目から28 日目頃 ( 黄体期 ) (2) 分泌期排卵後 2 日目からプロゲステロン濃度が上昇しエストロゲン作用は ( 黄体期 ) 抑制される ( 基礎体温は上昇 ) 内膜は浮腫状となる ( 卵子のベッドが用意される ) 排卵後 7 日目頃は卵子が着床する時期妊娠が成立しないと黄体は退縮し エストロゲンとプロゲステロン (3) 月経期濃度が低下する 子宮内膜の血流が停止し 機能層は壊死 剥離して血液や粘液とともに子宮外に排出される ( 月経 ) 月経周期 1 4 日 14 日 28 日 卵胞期 排卵 黄体期 月経 月経期 (4 日間 ) 増殖期 (10 日間 ) 分泌期 (13 日間 ) 排卵後 14 日目 基礎体温低温相 基礎体温高温相 2) 精巣ホルモン (1) 精巣の働き 精子を育成するのはセルトリ細胞 アンドロゲンを分泌するのはライディッヒ細胞 FSH( 卵胞刺激ホルモン ) の作用 LH( 黄体形成ホルモン ) の作用 (2) 男性ホルモン分泌細胞 精細管間細胞ライディッヒ細胞 (LH の作用 ) (3) テストステロンの働き 1 男性生殖器の成熟 ( 二次性徴 ) 2 精子形成には高濃度のアンドロゲンが必要 精細管の精子形成ライディッヒ細胞 15. 松果体 メラトニン メラトニンの分泌は夜間増加し 昼間は減少する 夜間の光刺激の低下により分泌され 体温を低下させ 眠気をもよおす され 体温が低下すると 睡眠を生じさせる 84