1 繰越控除適用事業年度の申告書提出の時点で判定して 連続して 提出していることが要件である その時点で提出されていない事業年度があれば事後的に提出しても要件は満たさない 2 確定申告書を提出 とは白色申告でも可 4. 欠損金の繰越控除期間に誤りはないか青色欠損金の繰越期間は 最近でも図表 1 のよ

Similar documents
改正された事項 ( 平成 23 年 12 月 2 日公布 施行 ) 増税 減税 1. 復興増税 企業関係 法人税額の 10% を 3 年間上乗せ 法人税の臨時増税 復興特別法人税の創設 1 復興特別法人税の内容 a. 納税義務者は? 法人 ( 収益事業を行うなどの人格のない社団等及び法人課税信託の引

作成する申告書 還付請求書等の様式名と作成の順序 ( 単体申告分 ) 申告及び還付請求を行うに当たり作成することとなる順に その様式を示しています 災害損失の繰戻しによる法人税 額の還付 ( 法人税法 805) 仮決算の中間申告による所得税 額の還付 ( 法人税法 ) 1 災害損失特別勘

粉飾決算と過年度損益修正 1. 概要 経営上の諸般の事情により やむを得ず粉飾して架空売上や架空在庫を計上する場合があります 前期以前の 過年度の決算が間違っていた場合は 会計上は当期の期首で修正できます ただし 過年度の損失を当期に損金算入すれば その事業年度に損金計上すべきであり 過年度の損失は

3. 改正の内容 法人税における収益認識等について 収益認識時の価額及び収益の認識時期について法令上明確化される 返品調整引当金制度及び延払基準 ( 長期割賦販売等 ) が廃止となる 内容改正前改正後 収益認識時の価額をそれぞれ以下とする ( 資産の販売若しくは譲渡時の価額 ) 原則として資産の引渡

下では特別償却と対比するため 特別控除については 特に断らない限り特定の機械や設備等の資産を取得した場合を前提として説明することとします 特別控除 内容 個別の制度例 特定の機械や設備等の資産を取得して事業の用に供したときや 特定の費用を支出したときなどに 取得価額や支出した費用の額等 一定割合 の

完全支配関係の添付書類 ( 出資関係図 ) (1) 出資関係図の記載例 (Q&A 問 1) 平成 22 年度税制改正で グループ法人税制が導入されたことに伴い 法人税の確定申告書に 内国法人との間に完全支配関係がある法人との関係を系統的に示した図 ( 以下 出資関係図 という ) を添付することが定

法人税 faq

投資法人の資本の払戻 し直前の税務上の資本 金等の額 投資法人の資本の払戻し 直前の発行済投資口総数 投資法人の資本の払戻し総額 * 一定割合 = 投資法人の税務上の前期末純資産価額 ( 注 3) ( 小数第 3 位未満を切上げ ) ( 注 2) 譲渡収入の金額 = 資本の払戻し額 -みなし配当金額


実務特集1. 寄附修正 Ⅰ はじめに グループ法人税制 100% グループ内の法人間での譲渡損益の繰り延べ 100% グループ内の法人間の寄附 ( 以上 2010 年 11 月号 ) 100% グループ内の法人間の寄附 ( 寄附修正 ) 支配関係 完全支配関係の判定 100% グループ内の法人のステ

[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

CONTENTS 第 1 章法人税における純資産の部の取扱い Q1-1 法人税における純資産の部の区分... 2 Q1-2 純資産の部の区分 ( 法人税と会計の違い )... 4 Q1-3 別表調整... 7 Q1-4 資本金等の額についての政令の規定 Q1-5 利益積立金額についての政

1% 子会社の清算に係る繰越欠損金の引継ぎ等 概要 平成 22 年度税制改正後においては 平成 22 年 1 月 1 日以後の解散決議により 完全支配関係がある子法人が清算した場合のその清算法人株式の譲渡損益については その清算法人株式を簿価で譲渡したものとして 親法人で譲渡損益 ( 清算損 ) を

<88F38DFC E8F8A93BE92BC914F979D985F837D E815B816A>

別表五(一) 利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書

<4D F736F F D FC194EF90C C98AD682B782E >

法人による完全支配関係下の寄附金 1.100% グループ内の法人間の寄附 ( 法法 372) 現行税制上では 寄附金は支出法人では損金計上限度額を超える部分が損金不算入 受領法人では益金算入です 平成 22 年度税制改正により 100% グループ内での支出法人では寄附金全額を損金不算入とし 受領法人

国外転出時課税制度(出国税)の導入

( 注 3) その他の少額上場株式等の非課税口座制度の詳細については 証券会社等の金融商品取引業者等にお問い合わせ下さ い b. 利益を超える金銭の分配に係る税務個人投資主が本投資法人から受取る利益を超える金銭の分配 ( 平成 27 年 4 月 1 日以後開始事業年度に係る利益を超える金銭の分配につ

日本基準でいう 法人税等 に相当するものです 繰延税金負債 将来加算一時差異に関連して将来の期に課される税額をいいます 繰延税金資産 将来減算一時差異 税務上の欠損金の繰越し 税額控除の繰越し に関連して将来の期に 回収されることとなる税額をいいます 一時差異 ある資産または負債の財政状態計算書上の

Microsoft Word - 非適格合併の諸問題 HP用

【問】適格現物分配に係る会計処理と税務処理の相違

Transcription:

欠損金の繰越控除と繰戻還付に係る留意点企業会計上 損失が発生すればそれはその事業年度かぎりのことで その金額が他の年度の損益計算に影響を与えることはありません 税務上の所得計算も 単年度ごとに益金から損金を控除して行いますが ある年度の欠損金を他の年度の所得金額と通算せず所得の発生した年度にだけ課税するのは 企業資本の維持の観点から問題が残ります そこで法人税法では ある事業年度に生じた欠損金について 次年度以降の所得で補填すること ( 欠損金の繰越し控除制度 ) を認め また 前年度の所得と相殺すること ( 欠損金の繰戻し還付制度 ) も認めています 1 青色欠損金の繰越控除 1. 欠損金発生事業年度において青色申告書である確定申告書を提出しているか青色欠損金の繰越控除制度は 欠損金の生じた事業年度において青色申告書である確定申告書を提出していることが要件である 青色申告を前提にすると複式簿記による正確な記帳に基づいた正確な期間損益の計算が行われることが期待できることから 制度の濫用を防止できるというのがその趣旨である 2. 青色申告が遡って取り消される要素はないか (1) 青色申告の取消しと青色欠損金の繰越控除青色申告の承認取消しは その取消事由が生じていたことが調査等で判明した場合は 遡ってその承認が取り消される その場合には 取消事業年度以後に提出していた青色申告書は 青色申告書以外の申告書とみなされる そうすると青色欠損金でなくなるため 青色欠損金の繰越控除 の要件を満たさなくなり 遡って青色欠損金の繰越控除もその適用が否認される (2) 青色申告の承認取消しの要件 次のような事実がある場合には 税務署長は青色申告の承認を取り消すことができるとされ ている 1 帳簿の備付け 記録 保存が所定のとおりに行われていないこと 2 帳簿に係る税務署長の指示に従わなかったこと 3 隠ぺい仮装等により全体に真実性を疑う相当の理由があること 4 申告期限まで提出しなかったこと 5 連結納税承認取消しを受けたこと 3. 欠損金発生事業年度から連続して確定申告書を提出しているか青色欠損金の繰越控除制度は 欠損金が生じた事業年度後の事業年度について連続して確定申告を提出していることが要件とされている この場合の 連続して 提出 の意味は次のような内容である 1

1 繰越控除適用事業年度の申告書提出の時点で判定して 連続して 提出していることが要件である その時点で提出されていない事業年度があれば事後的に提出しても要件は満たさない 2 確定申告書を提出 とは白色申告でも可 4. 欠損金の繰越控除期間に誤りはないか青色欠損金の繰越期間は 最近でも図表 1 のように変遷している 繰越期間に誤りがないように管理しておく必要がある 図表 1 欠損金の繰越可能期間 事業年度平成 13 年 3 月 31 日以前に開始した事業年度に生じた欠損金額平成 13 年 4 月 1 日以後に開始した事業年度に生じた欠損金額平成 20 年 4 月 1 日以後に終了した事業年度に生じた欠損金額 繰越可能期間 5 年 7 年 9 年 5. 欠損金の繰越控除限度額に誤りはないか平成 24 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度については 中小法人等を除き 欠損金の繰越控除限度額が欠損金の繰越控除適用前の所得金額の 80% に改正された したがって 中小法人等かそれ以外の法人かによって青色欠損金の繰越控除の繰越控除限度額が異なることに注意する必要がある 中小法人等とは 1 普通法人のうち 各事業年度終了の時において資本金の額若しくは出資金の額が 1 億円以下であるもの又は資本若しくは出資を有しないものただし 相互会社等及び資本金の額等が 5 億円以上の法人 ( 以下 大法人 という ) との間に大法人による完全支配関係がある法人は除かれる なお 複数の大法人に支配されている場合で一の大法人がそれらのすべての株式を所有しているものとみなした場合に完全支配関係があることとなるその法人も中小法人等にはならない 2 公益法人等又は協同組合等 3 人格のない社団等 6. 粉飾決算等があった場合の欠損金の是正は 修正の経理 申告調整 更正の請求 等 を正しく行っているか 2

粉飾決算等が行われていた場合は 過去に遡って粉飾分を是正し欠損金を正しく認識する必要が生じてくる この場合に過去の粉飾決算の是正は 更正の請求を通じて行うことになる 平成 23 年 12 月改正前は 更正の請求の期間が 1 年であったことから嘆願書の提出などが行われていたが 平成 23 年 12 月改正により 更正の請求期間と更正処分の期間制限の期間とが同一になった 法人税の純損失の金額に係るものは 9 年 ( 平成 20 年 4 月 1 日以後終了事業年度分から適用 ) となった この更正の期間制限を過ぎた粉飾決算分については是正がでないことになり 損失は無視される 更正の請求期間の改正更正の請求期間については平成 23 年 12 月に改正されているので次に記載する 1 更正の請求期間の延長納税者がする更正の請求について 請求をすることができる期間を原則として 5 年 ( 改正前 1 年 ) に延長することとされた 法人税の純損失等の金額に係る更正の請求ができる期間は 9 年 ( 改正前 1 年 ) に延長された 2 増額更正の期間制限の延長更正の請求期間の延長の改正にあわせ 課税庁がする増額更正の期間制限について 原則として 5 年 ( 改正前 3 年 ) に延長することとされた 法人税の純損失に係るものは 9 年とされた 3 適用関係上記 1 及び2の改正は 平成 23 年 12 月 2 日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用される 3

2 欠損金の繰戻還付青色申告書を提出する法人で生じた欠損金は それが生じた事業年度 ( 欠損事業年度 ) の期首以前 1 年以内に開始したいずれかの事業年度 ( 還付事業年度 ) に繰り戻して その年度の法人税額の還付を受けることができます 還付金額は 次の算式で計算します 算式 還付事業年度の法人税額 欠損事業年度の欠損金額 還付事業年度の所得金額 = 還付金額 1. 繰戻還付の適用がある中小法人等に該当するかこの制度は現在 清算中に終了する事業年度及び中小法人等を除き適用停止中である 適用がある中小法人等とは 上記 1 の 5 で記載した中小法人等と同じである 図表 2 解散等の場合の繰戻還付 解散等の事実 1 年以内申告 1 2 3 前 1 年以内 2. 還付所得事業年度から欠損事業年度までの各事業年度について連続して青色申告書である確定申告書を提出しているか繰戻還付制度は 法人が還付所得事業年度から欠損事業年度までの各事業年度について連続して青色申告書である確定申告書を提出していることが要件である この場合に申告書は連続していればよいのであって期限内申告の制限はないが 青色申告書でなければならない点は留意する必要がある 3. 欠損事業年度の青色申告書である確定申告書を提出期限までに提出しているかこの制度は 欠損事業年度の青色申告書である確定申告書をその提出期限までに提出した場合に限り 適用される 解散等の場合の繰戻還付の場合と異なり 税務署長がやむを得ない事情があると認める場合を除き 期限内申告書でなければならない点は注意する必要がある 4. 解散等の場合の繰戻還付を適用している場合に解散等の事実に該当するか解散等の事実が生じた日前 1 年以内に終了したいずれかの事業年度又は同日の属する事業年度において生じた欠損金額があるときは 法人は その事実が生じた日以後 1 年以内に税務署長に対して欠損金額の繰戻還付の請求をすることができる ( 図表 2) 4

解散等の事実 1 解散 ( 適格合併による解散を除く ) 2 事業の全部の譲渡 3 更正手続の開始の申立て 4 事業の全部の相当期間の休止又は重要部分の譲渡でこれらの事実が生じたことにより欠損金の繰越控除の適用を受けることが困難と認められるもの 5 再生手続開始の決定 5. 欠損金の繰戻還付制度のない地方税の処理は正しく行われているか地方税においては 地方財政を考慮して繰戻還付制度が存在しない したがって その処理を間違わないようにする必要がある (1) 事業税 ( 所得割 ) 繰戻還付のための繰戻控除が行われなかったものとして欠損金の繰越控除の計算を行う (2) 法人住民税法人税の繰戻還付が行われても直ちに還付金に対応する還付処理を行わず 法人税の還付法人税を 9 年 (7 年 ) にわたって法人税割の課税標準額から控除する 5

3 その他 1. 完全支配関係がある清算中等の法人に係る株式評価損を計上していないか平成 23 年度税制改正により 完全支配関係がある他の内国法人が 1 清算中である場合 2 解散が見込まれる場合 又は3そのグループ内で適格合併により解散することが見込まれる場合には その株式に係る評価損について損金の額に算入しないこととされた 親会社が清算による残余財産の確定前にその子法人の株式に係る評価損を計上した上に 残余財産が確定した時点で子会社の青色欠損金を引き継ぐことが可能であり 二重に損失を計上することになってしまう不都合を防止するためである 平成 23 年 6 月 30 日以後に行う評価換えについて適用がある 2. 会社更生手続開始決定があった場合の期限切れ欠損金の損金算入計算は正しく行われているか法人税法 59 条 1 項から 3 項で規定されている 会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入 措置については 平成 23 年 12 月改正の影響が生ずる 例えば 法人税法 59 条 1 項の会社更生手続開始の決定があった場合に債務免除等に係る期限切れ欠損金の損金算入制度がある この場合は 期限切れ欠損金が青色欠損金に先行して控除される その場合に残額所得金額について適用される青色欠損金の損金算入について 80% 限度額を超える 20% 部分が課税されてしまう不都合が生ずる そこでそのような影響が生じないように欠損金の損金算入ができるようにする等の措置が手当された 3. 解散の場合のマイナスの資本金等の額を期限切欠損金に含めているか平成 23 年度改正により 解散の場合の期限切れ欠損金の損金算入制度においてマイナスの資本金等の額を期限切れ欠損金と同様に取り扱うことになった マイナスの資本金等の額が生じている場合は実質的には残余財産がないにもかかわらず 控除できる金額がマイナスの利益積立金だけであると所得金額が生じ 課税が行われることになってします 残余財産の分配がない実態を考慮して所得金額が生じないように整備したものである この改正は平成 23 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度の所得に対する法人税について適用されている 4. 連結子法人の連結開始前欠損金を個別所得金額を限度として正しく繰越控除しているか平成 22 年度改正により 資産の時価評価の適用対象外となる連結子法人の加入前欠損金額について その連結子法人の個別所得金額を限度として連結納税制度の下での繰越控除が認められた 6 以上