STEP 1 検査値を使いこなすために 臨床検査の基礎知識 検査の目的は大きく 2 つ 基準範囲とは 95% ( 図 1) 100 5 図 1 基準範囲の考え方 2
STEP 1 血算 2 押さえておきたい検査の特徴 1 血算 項目略称基準範囲 白血球数 (white blood cell count) WBC 3.3 ~ 8.6 10 3 /μl 好中球数 (neutrophil) Neut 40.0 ~ 70.0% ヘモグロビン (hemoglobin) Hb 男性 :13.7 ~ 16.8g/dL 女性 :11.6 ~ 14.8g/dL 血小板数 (platelet count) PLT 158 ~ 348 10 3 /μl 検査の特徴 白血球数 (WBC) Neut LYMP MONO EOS BASO ( 表 1) 表 1 白血球の構成比 種類 構成比率 (%) 好中球 (Neut) 40.0 75.0 リンパ球 (LYMP) 18.0 49.0 単球 (MONO) 2.0 10.0 好酸球 (EOS) 0.0 8.0 好塩基球 (BASO) 0.0 2.0 10
STEP 1 血算 3 押さえておきたい検査の特徴 ( 小児 ) 1 血算 検査の特徴 白血球数 (WBC) 基準範囲は p. 274 20 10 3 / L 1 10 10 3 / L 10 10 3 / L 好中球数 (Neut) 1 2 60 30 5 6 ヘモグロビン (Hb) 基準範囲は p. 274 18g/dL 血小板数 (PLT) 基準範囲は p. 275 1 50 10 4 / L 4 5 50 10 4 / L 血算をチェックするときのポイント 白血球数の異常で想定される疾患 54
STEP 腎機能 4 CASE ケースでわかる検査値の読み方と疑義照会 24 腎機能 CASE 24 カペシタビン投与中 適応症は? 検査値のどこが問題? 73 歳女性身長 157cm 体重 50kg 体表面積 1.48m 2 Rp.1 ゼローダ 錠 ( カペシタビン )300mg 1 回 6 錠 (1 日 12 錠 ) 1 日 2 回朝夕食後 14 日分 Rp.2 ヒルドイド ローション ( ヘパリン類似物質 )0.3% 5 本 1 日 3 回程度, 手足に塗布 Rp.3 マイザー 軟膏 ( ジフルプレドナート )0.05% 3 本 1 日 3 回程度, 手足に塗布 項目 基準範囲 結果 項目 基準範囲 結果 WBC 3.3 8.6 10 3 /μl 3.89 T - Bil 0.4 1.5mg/dL Neut 40.0 70.0% 60.0 血清 Cr 0.46 0.79mg/dL 0.97 Hb 11.6 14.8g/dL 11.9 egfr 90~110mL/ 分 /1.73m 2 43 PLT 158 348 10 3 /μl 186 CK 41 153U/L PT - INR 0.9 1.1 CRP 0.0 0.14mg/dL 0.72 AST 13 30U/L 19 K 3.6 4.8mmol/L 4.0 ALT 7 23U/L 17 HbA1c 4.9 6.0% 204
患者背景 : 結腸がんの手術後, 注射抗がん薬の併用はなし 前回処方 (21 日前 ): ゼローダ 錠 300mg 1 回 6 錠 (1 日 12 錠 ) 1 日 2 回朝夕食後 患者からの情報 : 皮膚の乾燥もあるから保湿剤は寝る前に塗っていますが, 指先にひび割れができて, ちょっと痛みが出てきました 先生からは 症状がひどくなってきたのでもう一種類塗り薬を処方する と言われました 検査値をどう見るか Cr 0.97mg/dL Ccr 40.8mL/ Hb 11.9g/dL 11.6 14.8g/dL 処方薬をチェックカペシタビン さて, あなたはこの処方箋にどう対応しますか? STEP 4 ケースでわかる検査値の読み方と疑義照会CASE24 5 - deoxy - 5 - fluorocytidine 5 - deoxy - 5 - fluorouridine 5 - FU 1. 適応症に応じた用法 用量 205
腎機能 CASE 24 表 1 カペシタビンの適応症と用法 用量 投与スケジュール体表面積 (m 2 ) 1 回用量 (mg) 適応症 1.31 未満 900 A 法 21 日間連日投与, 1.31 以上 1.64 未満 7 日間休薬 1,200 1.64 以上 1,500 1.33 未満 1,500 B 法 14 日間連日投与, 1.33 以上 1.57 未満 1,800 7 日間休薬 1.57 以上 1.81 未満 2,100 1.81 以上 2,400 1.36 未満 1,200 C 法 14 日間連日投与, 1.36 以上 1.66 未満 1,500 7 日間休薬 1.66 以上 1.96 未満 1,800 1.96 以上 2,100 いずれも 1 日 2 回朝夕食後に服用 手術不能または再発乳がん 手術不能または再発乳がん 結腸がんにおける術後補助化学療法 治癒切除不能な進行 再発の結腸 直腸がん ( 他の抗がん薬と併用 ) 胃がん ( 白金製剤併用 ) ( 表 1) B 2.Ccrに応じた用量調節 Ccr 5 - FU AUC Ccr 50mL/ 1 ( 表 2) 2 Ccr 40.8mL/ 1 3. 副作用の確認 生活指導 ( 表 3) 206
表 2 腎機能に応じたカペシタビンの用量調節 腎機能障害 投与開始前の Ccr(mL/ 分 ) 投与量 重度 30 未満 投与禁忌 中等度 30~50 75% 用量 (1 段階減量 ) で開始 軽度 51~80 初回減量は不要 表 3 QOL B6 カペシタビンの添付文書 重大な副作用 手足症候群 (hand - foot syndrome;hfs) 手掌および足底に湿性落屑, 皮膚潰瘍, 水疱, 疼痛, 知覚不全, 有痛性紅斑, 腫脹などの手足症候群があらわれることがあるので観察を十分に行い, 異常が認められた場合には, 投与を中止し適切な処置を行うこと STEP 4 ケースでわかる検査値の読み方と疑義照会CASE24 ここを疑義照会! 腎機能が低下しているため, カペシタビンを減量すべきではないか? 薬剤師 A さんの検査値を確認したところ, 中等度の腎機能低下がみられるようです ゼローダ は, 中等度の腎機能低下がある場合は 1 段階減量が推奨されています 1 回 6 錠から 5 錠への減量はいかがしましょうか? 207
腎機能 CASE 24 そうでしたか ゼローダ の用量は見直したほうがよさそうですね 今晩から 1 回 5 錠に減量しましょう 医師 この症例のポイント カペシタビンは適応症によって用法 用量が異なるため, 患者や医師から情報を収集し, 体表面積や腎機能に応じた適切な投与量か確認する 手足症候群の対策として保湿剤で手足の乾燥を防ぎ, 症状に応じてステロイドの外用薬を使用する 外用薬の使用方法や物理的刺激を避ける生活上の工夫について指導する カペシタビンと S 1 併用は禁忌 7 S - 1 5 - FU S - 1 7 ( 表 4) 208
ASE表 4 カペシタビンの添付文書 重要な基本的注意 と 併用禁忌 重要な基本的注意 テガフール ギメラシル オテラシルカリウム配合剤投与中止後, 本剤の投与を行う場合は, 少なくとも 7 日以上の間隔をあけること ( 相互作用 の項参照 ) 併用禁忌 薬剤名などテガフール ギメラシル オテラシルカリウム配合剤 ( ティーエスワン ) 臨床症状 措置方法早期に重篤な血液障害や下痢, 口内炎などの消化管障害などが発現するおそれがあるので, テガフール ギメラシル オテラシルカリウム配合剤投与中および投与中止後 7 日以内は本剤を投与しないこと 機序 危険因子ギメラシルがフルオロウラシルの異化代謝を阻害し, 血中フルオロウラシル濃度が著しく上昇する 引用文献 1 Cassidy J et al : First - line oral capecitabine therapy in metastatic colocrectal cancer : a favorable safety profile compared with intravenous 5 - fluorouracil/ leucovorin. Ann Oncol 13 : 566-575 2002 2 : STEP 4 ケースでわかる検査値の読み方と疑義照会C24 209