Seto, Oct 25 2015 薬理学 基礎薬理学 五嶋良郎 Yoshio Goshima, M.D. & Ph.D. Dean, Yokohama City University Graduate School of Medicine 第一章総論 第二章薬理学によって解明された情報伝達機構 第三章神経系に作用する薬物 第四章循環器系に作用する薬物 第五章水 電解質と利尿薬 第六章呼吸器系に作用する薬物 第七章消化器系に作用する薬物 第八章血液および造血器に作用する薬物 第九章内分泌 代謝疾患治療薬 第十章泌尿 生殖器作用薬 第十一章感覚器 皮膚科治療薬 第十二章病原微生物に対する薬剤 第十三章抗悪性腫瘍薬 第十四章抗アレルギー薬 免疫抑制薬 末梢神経系に作用する薬物 交感神経系 副交感神経系調節する薬物の臨床適用 交感神経作用薬 1) アドレナリン作動薬 2) 抗アドレナリン作動薬 副交感神経作用薬 1) コリン作動薬 2) 抗コリン作動薬 筋弛緩薬 局所麻酔薬
ヒトの日常 ( 正常とはどういう状況か?) 様々な病態 disease states 喘息 アナフィラキシーショック 重症筋無力症 慢性心不全 胃潰瘍 星状神経ブロック アドレナリン作動薬 抗アドレナリン作動薬 関係する生体内物質 : ノルアドレナリン アドレナリン ( ドパミン ) 作用点 : カテコールアミン神経終末 受容体? カテコールアミン受容体の種類 :α1,2 β1,2, 3 薬理作用 : これらの受容体の生理学的機能を理解する例 : ノルアドレナリンは末梢血管の α1 受容体を介して血管収縮を引き起こす α1 遮断薬 : プラゾシン ( 高血圧 ) タムスロシン ( 前立腺肥大 ) β1および2 遮断薬 : プロプラノロール ( 不整脈 抗高血圧薬 ) β1 遮断薬 : メトプロロール
副交感神経作用薬コリン作動薬 関係する生体内物質 : アセチルコリン 作用点 : アセチルコリン受容体 ( ニコチン性アセチルコリン受容体 ムスカリン性受容体 ) コリンエステラーゼ 薬理作用 : アセチルコニンの生理作用例 ベタネコール ( コリンエステル ) ネオスチグミン ( コリンエステラーゼ阻害 ) はムスカリン受容体を刺激して腸管の動きを促進する 抗コリン作動薬 応用 : 消化管 尿管 胆管のけいれん 麻酔前投与 ( アトロピン スコポラミン ) 散瞳 虹彩炎 ( トロピカミド ) 気管支ぜんそく 肺気腫 ( イプラトロピウム ) 消化性潰瘍 ( ピレンゼピン ) 有機リン中毒 ( アトロピン ) 筋弛緩薬 関係する生体内物質 : アセチルコリン カルシウムイオン (Ca2+) 作用点 : スキサメソニウム ニコチン性アセチルコリン受容体 ダントロレン リアノジン受容体タイプ1 (RyR1) 薬理作用 : 筋弛緩 局所麻酔薬ブピバカイン リドカイン 関与する生体内物質 : ナトリウムイオン (Na+) 作用点 : ナトリウムチャネル 応用 : 表面麻酔 ( 粘膜 創面 ) 浸潤麻酔( 皮下 ) 伝達麻酔( 神経幹 神経叢 ) 脊椎麻酔 ( クモ膜下腔 ) 硬膜外麻酔( 硬膜外腔 )
末梢 中枢連関 血圧 心拍の変動 視床下部 下垂体 内分泌連関 圧受容器反射 化学受容器反射 食餌とメタボリズムなど まだ未知のメカニズムが実に多い! 体全体をシステムとして捉え 創薬ターゲットを見いだして行く必要がある
受容体 ( レセプター ) とは? 受容体は神経伝達物質やホルモンが作用する場合の相手の分子. 結合活性と情報伝達機能を持つ リガンドとは結合活性をもつ化合物をいう
受容体の種類 細胞内レセプター ( ステロイドホルモン 甲状腺ホルモンのレセプター ) ホルモン結合部位と DNA 結合部位をもつ遺伝子発現調節因子 細胞膜受容体 それ以外の例 :NO 細胞膜を自由に透過 細胞内情報伝達系を直接刺激 細胞膜受容体 イオンチャネル複合型受容体リガンド結合により立体構造変化 イオン透過性 ( ニコチン性 ACh 受容体 ) GTP 結合蛋白質活性化型受容体 (β アドレナリン受容体 ) チロシンキナーゼ型受容体 ( インスリン受容体 ) G 蛋白質共役型受容体 一本鎖ペプチドが形質膜を7 回貫通する 3 量体 GTP 結合蛋白質を介して効果器の活性を変化させる G 蛋白質共役型受容体の例 生理活性アミン受容体 神経性アミノ酸受容体 生理活性ペプチド受容体 エイコサノイド受容体 脂質メディエーター受容体 ケモカイン受容体 感覚受容器の受容体
GTP 結合蛋白質を介する受容器から効果器への情報の伝達 イオンチャネル複合型受容体 A R G G GDP 効果器E GTP GDP 交換反応 GTP Pi GDP GTPase R G G E GTP Adenyryl cyclase camp 互いに相同性のある5 本のペプチドが N 末端を細胞外に向けて 形質膜を4 回貫通する (4TM 型 ) N 末端より2 番目の膜貫通部位が花弁状に集まってチャネルを形成 A:agonist ( 作動薬 ) R:receptor ( 受容体 ) チロシンキナーゼ型受容体 形質膜を1 回貫通するペプチドより成る (1TM 型 ) その細胞内領域にチロシンキナーゼ活性領域とリン酸化されるチロシン残基をもつものがある チロシンキナーゼを内臓しない受容体は刺激によって細胞質のチロシンキナーゼ活性を活性化する場合が多い 細胞情報伝達の基本原理 細胞内情報伝達ネットワークのクロストーク 情報物質によるシグナルの発信と受信酵素反応 蛋白質の非共有結合 ( 会合 ) 蛋白質の分解 ( ユビキチン / プロテアソーム系 ) 情報蛋白質の細胞内移動
交感神経系と副交感神経系の中枢内局在, 末梢分布, 機能と伝達物質 くすりの開発の歴史 レボドパ ( ドーパ ) 自律神経系の機能とそのメカニズム 2 自律神経系の高位中枢は? 視床下部 さらに前頭葉, 大脳辺縁系から影響を受ける
末梢自律神経の基本構造 交感神経 交感神経節 節前神経 ACh 節後神経 Noradrenaline 副交感神経 副交感神経節 節前神経 ACh 節後神経 ACh
交感神経系 Thoracolumbar outflow Th1( 第一胸髄 ) L2( 第 2 腰髄 ) の側角に節前神経細胞の細胞体がある 前根と一緒に脊髄を出て, 交感神経幹で節後神経へ 腹腔領域では一部, 腹腔神経節で節後神経へ接続する 副交感神経系 Craniosacral outflow 脳幹の神経核 (III, VII, IX, X)( 動眼神経, 顔面神経, 舌咽神経, 迷走神経 ) と第 2,3,4 仙髄 S2,3,4 にのみ 目標臓器の近くの神経節 ( 副交感神経節 ) で節後神経へ 相反性二重支配 心臓交感神経興奮 ( 拍数, 収縮力 ) 副交感神経興奮 (, ) 一見そうでない場合もある 瞳孔の筋 : 交感神経 ( 瞳孔散大筋 ) も副交感神経 ( 瞳孔縮小筋 ) も収縮 機能的拮抗 唾液分泌 : 交感神経 粘液性, 副交感神経 漿液性
自律神経系のコンセプトが大きく変わる事件 血管弛緩因子 NO (nitric oxide) の発見 (Furchgott, Murad, Ignarro) 血管収縮因子エンドセリン (endothelin) の発見 (Yanagisawa, Masaki) 自律神経の直接的標的支配という図式がくずれた 自律神経系障害の症候 起立性低血圧 発汗の低下 皮膚萎縮, 体毛減少, 骨萎縮 膀胱障害 直腸障害 瞳孔異常 膀胱障害と中枢障害部位 中脳より上位 脱抑制性膀胱 ( 尿意頻数, 切迫尿意 ) 橋から腰髄 随意排尿の障害 仙髄またはその遠心路 横溢性尿失禁 膀胱からの救心性線維の障害 膀胱感覚の消失 ( 無緊張性膀胱 ) 自律神経反射の機能 臨床的な観点から
圧受容器反射経路 圧受容器反射 血圧を維持するための重要な反射機構の1つ Hypothalamus LC RVLM C1 NTS (DOPA?) CSN: 頸動脈洞神経 (Carotid sinus nerve) ADN : 大動脈減圧神経 ( Aoritic depressor nerve) NTS: 孤束核 (Nucleus tractus solitarii ) RVLM : 吻側腹外側延髄 ( Rostal ventrolateral medulla) CVLM : 尾側腹外側延髄 (Caudal ventrolateral medulla) IML: 中間質外側核 (Intermediolateral cell column) + (DOPA?) A1 ++ (DOPA, Glu?) CVLM + IX X IML CSN ADN Spinal Cord Is OA-1 is a receptor that mediates DOPA-induced pharmacological responses? Baroreflex pathways Microinjection of L DOPA to NTS Glu Kubo et al., 1992 Depressor & Bradycardic Response
その他 図の中に見にくいものがありますが多くは教科書にあります 確認してください その他質問のある方 薬理学教室の研究テーマなどに興味のある方は以下のホームページを参照してください 薬理学 http://www user.yokohamacu.ac.jp/~pharmac/