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日本の糖尿病患者数は増え続けています (%) 糖 尿 25 病 倍 890 万人 患者数増加率 万人 690 万人 1620 万人 880 万人 2050 万人 1100 万人 糖尿病の 可能性が 否定できない人 680 万人 740 万人

糖尿病は 初めは無症状で経過しますが 血糖値の高い状態が長く続くと口渇 多飲 多尿 体重減少 倦怠感などの症状がみられます 糖尿病は自覚症状が乏しいので 血糖値がある程度改善すると 通院しなくなる人がいます 血液検査を行わなければ糖尿病の状態を知ることはできないので 自覚症状だけに頼ってはいけません

インスリンが十分に働かない ってどういうこと 糖尿病になると インスリンが十分に働かなくなり 血糖をうまく細胞に取り込めなくなります それには 2つの仕組みがあります ( 図2 インスリンが十分に働かない ) ①インスリン分泌不足 ②インスリン抵抗性 インスリン 鍵 が不足していて 糖が細胞の イン

わが国における糖尿病と合併症発症の病態と実態糖尿病では 高血糖状態が慢性的に継続するため 細小血管が障害され 腎臓 網膜 神経などの臓器に障害が起こります 糖尿病性の腎症 網膜症 神経障害の3つを 糖尿病の三大合併症といいます 糖尿病腎症は進行すると腎不全に至り 透析を余儀なくされますが 糖尿病腎症

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ただ太っているだけではメタボリックシンドロームとは呼びません 脂肪細胞はアディポネクチンなどの善玉因子と TNF-αや IL-6 などという悪玉因子を分泌します 内臓肥満になる と 内臓の脂肪細胞から悪玉因子がたくさんでてきてしまい インスリン抵抗性につながり高血糖をもたらします さらに脂質異常症

53巻6号/TNB06‐10(委員会報告)

脂質異常症を診断できる 高尿酸血症を診断できる C. 症状 病態の経験 1. 頻度の高い症状 a 全身倦怠感 b 体重減少 体重増加 c 尿量異常 2. 緊急を要する病態 a 低血糖 b 糖尿性ケトアシドーシス 高浸透圧高血糖症候群 c 甲状腺クリーゼ d 副腎クリーゼ 副腎不全 e 粘液水腫性昏睡

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第12回 代謝統合の破綻 (糖尿病と肥満)

スイスイ検診ってなに?? 20 歳以上の方で ご自分の身体について ふと思う事はありませんか? たとえば 健康について気になるけど健康診断 人間ドックを受けていない! 病院で診察を受けるまでもないけど ちょっと気になる! 健康管理に気をつけているから大丈夫だと思うけど 検査の数値が気になる! 主人は

 今年のスギやヒノキ花粉の飛散は、「少なく」または「非常に少なく」なりそうです

告示番号 1 糖尿病 ( ) 年度小児慢性特定疾病医療意 書 新規申請用 病名 1 1 型糖尿病 受給者番号受診日年月日 受付種別 新規 1/2 ふりがな 氏名 (Alphabet) ( 変更があった場合 ) ふりがな以前の登録氏名 (Alphabet) 生年月日年月日意見書記載時の年齢歳か月日性別


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第三問 : 次の認知症に関する基礎知識について正しいものには を 間違っているものには を ( ) 内に記入してください 1( ) インスリン以外にも血糖値を下げるホルモンはいくつもある 2( ) ホルモンは ppm( 百万分の一 ) など微量で作用する 3( ) ホルモンによる作用を内分泌と呼ぶ

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糖尿病経口薬 QOL 研究会研究 1 症例報告書 新規 2 型糖尿病患者に対する経口糖尿病薬クラス別の治療効果と QOL の相関についての臨床試験 施設名医師氏名割付群記入年月日 症例登録番号 / 被験者識別コード / 1/12

やまぐち糖尿病療養指導士講習会  第1回 確認試験

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標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会

複製 転載禁止 The Japan Diabetes Society, 2016 糖尿病診療ガイドライン 2016 CQ ステートメント 推奨グレード一覧 1. 糖尿病診断の指針 CQ なし 2. 糖尿病治療の目標と指針 CQ なし 3. 食事療法 CQ3-2 食事療法の実践にあたっての管理栄養士に

目次 1. 目的 2 2. 人工透析患者の年齢等の分析 3 性別 被保険者 被扶養者 3. 人工透析患者の傷病等の分析 8 腎臓病 併存傷病 平成 23 年度新規導入患者 4. 人工透析 健診結果 医療費の地域分析 13 二次医療圏別 1

3 スライディングスケール法とアルゴリズム法 ( 皮下注射 ) 3-1. はじめに 入院患者の血糖コントロール手順 ( 図 3 1) 入院患者の血糖コントロール手順 DST ラウンドへの依頼 : 各病棟にある AsamaDST ラウンドマニュアルを参照 入院時に高血糖を示す患者に対して 従来はスライ

肥満者の多くが複数の危険因子を持っている 肥満のみ約 20% いずれか 1 疾患有病約 47% 肥満のみ 糖尿病 いずれか 2 疾患有病約 28% 3 疾患すべて有病約 5% 高脂血症 高血圧症 厚生労働省保健指導における学習教材集 (H14 糖尿病実態調査の再集計 ) より

医療法人将優会 将優会 クリニックうしたに

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健康な生活を送るために(高校生用)第2章 喫煙、飲酒と健康 その2

健康診断結果の 見方のついて

第1 総 括 的 事 項

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

人間ドック結果報告書 1/5 ページ 所属 : 株式会社 ケンコウタロウ健康太郎 様 性別 / 年齢 男性 / 49 歳 生年月日 昭和 40 年 3 月 17 日 受診日 平成 26 年 5 月 2 日 受診コース 人間ドック ( 胃カメラ ) 問診項目 今回前回前々回平成 26 年 5 月 2

デベルザ錠20mg 適正使用のお願い

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高砂報第170号                    平成18年4月26日

書式・記述方法等の統一について

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妊婦甲状腺機能検査の実施成績 東京都予防医学協会母子保健検査部 はじめに て乾燥させたろ紙血液を検体とする 検体は本会の 妊婦の甲状腺機能異常による甲状腺ホルモンの 過不足は 妊娠の転帰に影響を与えるばかりでなく 代謝異常検査センターに郵送される 2 検査項目と検査目的および判定基準 生まれてくる子

1 ししつ脂質 いじょうしょう へ 高脂血症から 脂質脂質異常症 医療法人将優会クリニックうしたに 理事長 院長牛谷義秀 脂質異常症とは 血液中に含まれる LDL( 悪玉 ) コレステロールと中性脂肪中性脂肪のどちらか一方 あるいは両方が過剰の状態 または HDL( 善玉 ) コレステロールが少ない

(6/5 19:00修正)資料3 標準的な健診・保健指導プログラム改定のポイント (2) (2)

障害程度等級表 級別じん臓機能障害 1 級 じん臓の機能の障害により自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの 2 級 3 級 じん臓の機能の障害により家庭内での日常生活活動が著しく制限されるもの 4 級 じん臓の機能の障害により社会での日常生活活動が著しく制限されるもの

CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

激増する日本人糖尿病 ( 万人 ) 2,500 糖尿病の可能性が否定できない人 (HbA1c 6.0~6.4) 糖尿病が強く疑われる人 (HbA1c 6.5% 以上 ) 2,210 万人 2,000 1,500 1,000 1,620 万人 1,370 万人 万人 880 万人 +

第 Ⅰ 部 総論 11 第 Ⅰ 部 総論

糖尿病性腎症に合併したネフローゼ症候群の治療

検査項目情報 6154 一次サンプル採取マニュアル 4. 内分泌学的検査 >> 4E. 副腎髄質ホルモン >> 4E016. カテコールアミン3 分画 カテコールアミン3 分画 [ 随時尿 ] catecholamines 3 fractionation 連絡先 : 3764 基本情報 4E016

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カテゴリー別人数 ( リスク : 体格 肥満 に該当 血圧 血糖において特定保健指導及びハイリスク追跡非該当 ) 健康課題保有者 ( 軽度リスク者 :H6 国保受診者中特定保健指導外 ) 結果 8190 リスク重なりなし BMI5 以上 ( 肥満 ) 腹囲判定値以上者( 血圧 (130 ) HbA1

特定の原因によるその他の糖尿病遺伝子の異常によるもの ほかの病気や薬剤に伴って起こるものがあります 妊娠糖尿病妊娠中に初めて発見した又は発症した糖尿病に至っていない糖代謝異常のことを言います 妊娠中はわずかな高血糖でも胎児に影響を与えるため 糖尿病ではなくとも 妊娠糖尿病 と呼びます 妊娠中に胎盤が

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山梨県生活習慣病実態調査の状況 1 調査目的平成 20 年 4 月に施行される医療制度改革において生活習慣病対策が一つの大きな柱となっている このため 糖尿病等生活習慣病の有病者 予備群の減少を図るために健康増進計画を見直し メタボリックシンドロームの概念を導入した 糖尿病等生活習慣病の有病者や予備

第4章:施策と目標 2:生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底(3)糖尿病(4)COPD

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1治療 かっていたか, 予想される基礎値よりも 1.5 倍以上の増加があった場合,3 尿量が 6 時間にわたって 0.5 ml/kg 体重 / 時未満に減少した場合のいずれかを満たすと,AKI と診断される. KDIGO 分類の重症度分類は,と類似し 3 ステージに分けられている ( 1). ステー

理学療法の臨床と研究第 27 号 2018 年 総説 糖尿病患者に対する理学療法実施の際に必要な知識 * 河江敏広 要旨糖尿病は増加傾向であり 私たち理学療法士でも担当症例に合併症として存在する場合は多いと考えられる しかしながら糖尿病においては使用している薬物の種類や合併症の程度よって留意すべき事

市民公開講座(2011/04/16)

糖尿病がどんな病気なのか 病気を予防するためにどんな生活が望ましいかについて解説します また 検診が受けられるお近くの医療機関を検索できます 健康診断の結果などをご用意ください 検査結果をご入力いただくことで 指摘された異常をチェックしたり 理解を深めたりすることができます 病気と診断され これから

甲状腺機能が亢進して体内に甲状腺ホルモンが増えた状態になります TSH レセプター抗体は胎盤を通過して胎児の甲状腺にも影響します 母体の TSH レセプター抗体の量が多いと胎児に甲状腺機能亢進症を引き起こす可能性が高まります その場合 胎児の心拍数が上昇しひどい時には胎児が心不全となったり 胎児の成

あなたの糖尿病治療をサポートします 地域の先生と関係病院の話し合いのもとに糖尿病の治療 管理を標準化することができました この糖尿病地域連携パスの目的はあなたに身近な地域の先生と病院の担当医の 2 人の主治医を持っていただき 糖尿病のコントロールを良好に保つことにあります 合併症のために血液透析導入

院内検査基準値項目説明 項目名基準値単位検査について検査値の見方 大久保病院 WBC ( 白血球数 ) 男 女 )3.3~ /μl 白血球は 骨髄で作られ 病原微生物に対する防御の働きをしています 増加 : 急性の炎症 白血病低下 : 再生不良性貧血 抗がん剤投与 ウイルス感染症等

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1 血中アンモニア高値 : 新生児 >120μmol/L(200μg/dl) 乳児期以降 >60μmol/L(100μ g/dl) 以上 2アニオンギャップ正常 (<20) であることが多い 3 血糖が正常範囲である ( 新生児期 >40mg/dl) 4BUN が低下していることが多い 5OTC 欠

平成 19 年 11 月第 10 号住所平塚市平塚 電話 FAX HP htpp:// 今年もそろそろ終わりに近づいてきました 今年は皆さんにとってどんな年でしたか? 嬉しいこ

糖尿病

自動車運送事業者における 心臓疾患大血管疾患 対策ガイドライン 概要版 本ガイドラインのポイント 実践 業者が実施スクリーニング検査事医療機関が実施事業者が実施知識 健康起因事故の原因となる心臓疾患 大血管疾患 疾患の原因と予防 ( 参考 ) 関係法令について 心臓疾患 大血管疾患の早期発見と発症予

糖尿病予備群は症状がないから からだはなんともないの 糖尿病予備群と言われた事のある方のなかには まだ糖尿病になったわけじゃないから 今は食生活を改善したり 運動をしたりする必要はない と思っている人がいるかもしれません 糖尿病予備群の段階ではなんの症状もないので そう考えるのも無理はないです しか

1 疾患別医療費札幌市国保の総医療費に占める入院医療費では 悪性新生物が 21.2% 循環器疾患が 18.6% となっており 循環器疾患では 虚血性心疾患が 4.5% 脳梗塞が 2.8% を占めています 外来医療費では 糖尿病が 7.8% 高血圧症が 6.6% 脂質異常症が 4.3% となっています

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平成14年度研究報告

やまぐち糖尿病療養指導士講習会  第1回 確認試験

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負荷試験 検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 検体ラベル ( 単項目オーダー時 )

第三問 : 次の認知症に関する基礎知識について正しいものには を 間違っているものには を ( ) 内に記入してください 1( ) インスリン以外にも血糖値を下げるホルモンはいくつもある インスリンが血糖値を下げる唯一のホルモンです 2( ) ホルモンは ppm( 百万分の一 ) など微量で作用する

血糖 透析開始後の血糖検査 血糖朝食前の血糖値血糖値ですです 正常範囲正常範囲は 70~ mg mg/dl) 7 回血糖検査 1 日に7 回の血糖検査血糖検査をしますをします 透析施設によりにより 検査内容検査内容が異なるなる場合場合もありますもあります ヘモグロビン A1c(HbA c

血糖値 (mg/dl) 血中インスリン濃度 (μu/ml) パラチノースガイドブック Ver.4. また 2 型糖尿病のボランティア 1 名を対象として 健康なボランティアの場合と同様の試験が行われています その結果 図 5 に示すように 摂取後 6 分までの血糖値および摂取後 9 分までのインスリ

1. 趣旨 目的 香川県糖尿病性腎症等重症化予防プログラム 香川県医師会香川県糖尿病対策推進会議香川県国民健康保険団体連合会香川県 本県では 糖尿病患者の人口割合が全国上位にあり 糖尿病対策が喫緊 の課題となっている 糖尿病は放置すると網膜症や腎症 歯周病などの合 併症を引き起こし 患者の QOL

し重症化すると黄色い塊 ( 黄色腫 ) が体のあちこちにできたり 血管が詰まって脳梗塞や心筋 梗塞を引き起こしたりする恐ろしい病気です それでは脂質異常症とはいったい何でしょう か? (1) 脂質異常症の原因 ( 食生活の乱れ 運動不足 ) 脂質異常症は 血液中の中性脂肪や悪玉コレステロールが異常に

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よく分かる!!検査と病気のつながり

神緑会学術誌 平成24年度 第29巻 2013年 神緑会研究事業年間報告書 糖尿病発症におけるインクレチン効果の疫学的研究 第2報 ー妊娠糖尿病のスクリーニングからのアプローチー 研究代表者 社会医療法人愛仁会 研究協力者 社会医療法人愛仁会 社会医療法人愛仁会 社会医療法人愛仁会 産婦人科 概 要

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尿検査のみかた、考えかた

(検8)05資料4 門脇構成員 随時血糖値の判定基準について

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減量・コース投与期間短縮の基準

糖尿病と治療の目的 糖尿病とは 糖尿病とは 体内でインスリンというホルモン p.3参照 が不足したり はたらきが悪くなったりすることによって 血液中に含まれる糖 血糖 の値が高い状態が続く病気です 糖尿病 患者さんの 場合 健康な 人の場合 インスリンによって糖が細胞に取り込まれ 血液中の糖が使われ

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わかりやすい検査案内 糖尿病編 世界糖尿病デーのシンボルマーク ブルーサークル 大阪医科大学附属病院中央検査部

目次 本書ご使用に当たっての注意事項 2 基準値範囲について 検査データに影響を及ぼす因子検査を受けるにあたっての注意点 3 採血を受ける前に 採血 尿の採取糖尿病とは 5 糖尿病の診断 7 糖尿病の診断のための検査 9 血糖コントロールのための検査 10 病状を知る検査 11 糖尿病の合併症 15 細小血管障害の検査 16 大血管障害 ( 動脈硬化性疾患 ) の検査 19 最後に 22 1

本書ご使用に当たっての注意事項この冊子の基準値は当院 ( 大阪医科大学附属病院 ) で設定している値です 測定方法の違いなどもあり 他施設での検査データと一概に比較することはできませんのでご注意下さい 検査項目名は 当院で使用している名称です 各自の検査データについて疑問な点がありましたら主治医にご相談下さい 基準値範囲について 1. 基準値は多数の健常者測定値から上限 下限の 2.5% ずつを除いた残りの 95% の範囲を表しています 基準値外のカットした 5% にも健常者は含まれていますので 基準値はひとつの めやす とお考え下さい 2. 検査値がある一定レベルを超えると 特定の病態の発生が増加することが判明している項目 ( 総コレステロール HDL コレステロール 中性脂肪など ) では 病態識別値を基準値としています 検査データに影響を及ぼす因子 ( 食事 運動 投薬 採血時間など ) があります 食事が影響する検査項目血糖 中性脂肪 インスリン 胆汁酸 遊離脂肪酸など 運動が影響する検査項目クレアチンキナーゼ (CK) 乳酸 成長ホルモン 白血球など 採血時間が影響する検査項目鉄 (Fe) 副腎皮質刺激ホルモン コルチゾール 成長ホルモン 甲状腺刺激ホルモンなど 喫煙が影響する検査項目 CEA 遊離脂肪酸など 2

検査をお受けになる際の注意点 採血を受ける前に 過去に採血時に気分が悪くなったことがある方は採血時にお申し出下さい アルコール綿で肌が荒れる方は採血時にお申し出下さい 袖をまくり上げた時に 腕がしめつけられるような服装は避けて下さい 採血前の激しい運動は避けて下さい 採血 順番検査内容により採血容器の準備に時間がかかることがあり 採血の順番が前後することがありますので ご了承願います 採血本数 採血量検査内容により採血容器 採血量が異なります このため採血本数が多くなる場合があります 採血時間主治医から指示がある場合には その指示に従い採血を受けて下さい ( 例 : 朝食の 2 時間後採血 10:30 採血 薬の服用 1 時間後採血 30 分安静後採血など ) 食物摂取の影響一般には早朝空腹時が望まれますが お水かお茶は少量なら支障ありません 食事を摂っても差し支えない場合がありますので主治医に相談して下さい ( 多くの生化学成分は 軽い朝食の 3~4 時間後には早朝空腹時に近似した値を示します ) 薬剤の影響採血前のお薬の服用の有無については 主治医に相談して採血を受けて下さい 採血後採血部位を 5 分以上しっかり圧迫して下さい 当日の入浴は差し支えありませんが 採血部位をこすらないように気を付けて下さい 3

尿の採取 採尿前の激しい運動は避けて下さい 検尿コップは 検査用お手洗い奥の窓口に提出して下さい 来院時に採尿が難しい方は 自宅で採尿していただくことが可能な場合もありますので受診科にご相談下さい 採尿できない 尿量が少ない場合は 検査用お手洗いの窓口で技師に申し出て下さい できる限り中間尿を提出して下さい ( 中間尿とは出始めと終わりの尿は採らないで 中間部分だけを採った尿です ) 4

糖尿病とは糖尿病 (Diabetes Mellitus: DM) は 血糖値 ( 血液中のブドウ糖濃度 ) が高い状態が続くことによって 様々な合併症を起こす病気です 糖尿病の原因食事の後にブドウ糖やアミノ酸が体に吸収されると 膵臓の β 細胞からインスリンと呼ばれるホルモンが分泌されます このインスリンの働きによりブドウ糖が筋肉や脂肪などへ取り込まれ 血糖が一定値以上に上昇しないようになっています ( 厚労省ホームページより引用 ) 糖尿病は インスリンの分泌量が減少したり あるいは肥満などによりインスリンがうまく働かなくなることが原因です このため 摂取したブドウ糖は筋肉や脂肪などに取り込まれにくくなり 行き場をなくしたブドウ糖はそのまま血液中に留まるため 結果的に血糖値が高くなり やがて尿の中にも糖が出てきます 一方 細胞内ではエネルギー不足をきたすことになります ( 代謝障害 ) 血糖値が慢性的に高い状態が続くと 細胞の様々な働きに支障をきたし 全身の血管や神経が障害され やがて色々な合併症が出現してきます 5

糖尿病の病型分類 1 型糖尿病 1 型糖尿病の発病は多くが急激で重症になり易い特徴があります インスリンをつくる膵臓の β 細胞が破壊されてインスリン分泌が欠乏し インスリンが絶対的に不足することによって発症します β 細胞破壊の原因は自己免疫異常やウイルス感染などが考えられています 1 型糖尿病は 治療上インスリン注射が必須で いずれの年代でも発症の可能性がありますが その多くは 15 歳未満の子供にみられます 2 型糖尿病 2 型糖尿病は日本でも糖尿病の大部分を占めています 2 型糖尿病はインスリン分泌が足りない状態やインスリンの効果が低いといった遺伝的要素に加え 発症因子として過食 偏食 運動不足 ストレスなどの生活習慣の影響が加わり無症状のうちに発病します 肥満の関与は最重要とされており 中高年での糖尿病の予防はまず太らないことが最も大切です 妊娠糖尿病妊娠中に血糖値が高い状態が初めて発見されることを言います それに対して妊娠前から糖尿病と診断されていた場合には 糖尿病合併妊娠 と言います 妊娠中に母体が高血糖になると母体には妊娠高血圧症候群などのリスク 胎児や新生児には巨大児や先天奇形などの原因となります 多くの場合 分娩後に血糖値は改善しますが将来糖尿病になりうるハイリスク群となります その他の特定の機序 疾患によるもの遺伝子異常や糖尿病以外の疾患 ( 膵 肝疾患 バセドウ病などの内分泌疾患 ) ステロイドなどの薬物によるものがあります 6

糖尿病の診断 * 血糖値とは血糖値とは血液中のブドウ糖 ( グルコース ) の濃度のことを言い その検査には空腹時血糖検査 (FPG) と随時血糖検査があります 空腹時血糖検査(FPG) 検査当日の朝食を抜いた空腹の状態で採血し 血糖値を測る検査です 110mg/dL 未満 正常型 126mg/dL 以上 糖尿病型 随時血糖検査食後からの時間を特に決めないで採血し 血糖値を測る検査です 200mg/dL 以上 糖尿病型 7

* 経口ブドウ糖負荷試験 (OGTT) とは 75g のブドウ糖を炭酸水に溶かしたものを飲み 血糖値がどう変化するかを調べるもので糖尿病を最も確実に診断できる検査です 糖尿病型負荷前 126mg/dL 以上または負荷後 2 時間値が 200mg/dL 以上 正常型負荷前 110mg/dL 未満で かつ負荷後 2 時間値が 140mg/dL 未満 境界型糖尿病型と正常型のどちらにも属さない状態現時点は糖尿病ではありませんが 血糖値が高い状態が続くため 放置すれば糖尿病へ進行する可能性が高くなります ~ 診断の補足 ~ 1) 随時血糖値が 200 mg/dl 以上 2) 早朝空腹時血糖値が 126 mg/dl 以上 3) 経口ブドウ糖負荷試験 (OGTT) で 2 時間後の血糖値が 200 mg/dl 以上 4) ヘモグロビン A1c が 6.5%(NGSP 国際標準値 ) 以上 初回検査で 上記の 1)~4) のいずれかを認めた場合は 糖尿病型 と判定されます 別の日に再検査を行い 再び 糖尿病型 が確認されれば糖尿病と診断します ただしヘモグロビン A1c だけの反復検査による診断はできません 上記の 1)~3) の血糖値とヘモグロビン A1c が同時に糖尿病型を示すことが確認されれば 初回検査だけでも糖尿病と診断されます 上記の 1)~3) の血糖値が糖尿病型を示し以下のいずれかの条件を示した場合は 初回検査だけでも糖尿病と診断されます 糖尿病に特徴的な症状 ( 口渇 多飲 多尿など ) がある 確実な網膜症がみられる 妊娠糖尿病の診断経口ブドウ糖負荷試験 (OGTT) を行い 下に示す 3 つの血糖値が 1) 負荷前 92mg/dL 以上 2) 負荷後 1 時間値 180mg/dL 以上 3) 負荷後 2 時間値 153mg/dL 以上のうち 1 つ以上を満たした場合に診断されます 8

糖尿病の診断のための検査 血糖値 ( 血清 血漿 ) 糖尿病をはじめとする内分泌疾患 代謝性疾患 膵臓疾患の診断 治療および経過観察に用いられます 基準値 : 血清 60-90 (mg/dl) 血漿 60-100 (mg/dl) 高値になる主な疾患糖尿病 先端巨大症 甲状腺機能亢進症 低値になる主な疾患インスリン分泌過剰 下垂体機能低下症 副腎機能不全 甲状腺機能低下症 生理的変動食後高値を示します その他ステロイド治療で高値を示すことがあります ヘモグロビン A1c (HbA1c) ( グリコヘモグロビン ) 過去 1~3 ケ月間の平均血糖値を反映するため 糖尿病で長期間の血糖コントロールの指標として用いられます 基準値 : HbA1c(NGSP) 4.6-6.2(%) 高値になる主な疾患糖尿病 異常ヘモグロビン血症の一部 低値になる主な疾患網赤血球が増加している症例 持続性低血糖 異常ヘモグロビン血症の一部 経口ブドウ糖負荷試験 (OGTT) 糖尿病の診断 P7 参照 9

血糖コントロールのための検査 血糖値 ( 血清 血漿 ) 糖尿病の診断のための検査 参照 ヘモグロビン A1c (HbA1c) ( グリコヘモグロビン ) 糖尿病の診断のための検査 参照 グリコアルブミン (GA) 過去 1~2 週間の血糖コントロールの指標として用いられます 基準値 : 11.0-16.0 (%) 高値になる主な疾患糖尿病 その他高血糖をきたす疾患 低値になる主な疾患ネフローゼ症候群 甲状腺機能亢進症 1.5-AG (1.5 アンヒドロ -D- グルシトール ) 短期間の血糖状態を反映します 尿糖レベルが高いほど血中濃度が低下するため 血糖コントロールや糖尿病の治療効果判定において有用な指標となります 基準値 ( 男性 ) : 14.9-44.7(μg/mL) 基準値 ( 女性 ) : 12.4-28.8(μg/mL) 低値になる主な疾患糖尿病 その他の高血糖を呈する疾患 腎性糖尿 慢性腎不全 生理的変動妊婦 (30 週以降 ) で 低値を示すことがあります 尿糖糖尿病のコントロール指標となります 基準値 : 0.04-0.09 (g/day) * 随時尿検査では基準値は有りません 高値になる主な疾患糖尿病 Fanconi 症候群 Wilson 病 ガラクトース血症 慢性カドミウム中毒 10

病状を知る検査 尿一般定性 健康診断などで 検尿 として行われている尿のスクリーニン グ検査です 基準値 : ph 5.0-7.5 蛋白 < 15 mg/dl(-) 糖 < 100mg/dL(-) ウロビリノーゲン +/- ビリルビン - ケトン体 - 潜血 - 比重 1.006-1.030 白血球 - 亜硝酸塩 - 色調 淡黄色 ~ 黄褐色 混濁 - 尿中有形成分定量腎 尿路系疾患の鑑別とその程度を知るうえで重要な検査です 基準値 : 赤血球 < 20 (/μl) 白血球 < 20 (/μl) 当院ではフローサイトメトリー法で測定しているため 尿中赤血球数および白血球数を ( 個 / μl) で報告しています 施設によっては 顕微鏡の強拡大で 一視野中の尿中赤血球数や白血球数を測定し ( 個 /HPF) で報告しています 上皮細胞円柱混濁 正常尿ではほとんど観察されません インスリン精密測定 (IRI) 糖尿病の診断および病態の把握が必要な場合に測定されます 基準値 : 18.7(μIU/mL) ( 空腹時負荷前 ) 高値になる主な疾患 2 型糖尿病の一部 肥満 インスリン受容体異常 低値になる主な疾患 1 型糖尿病 2 型糖尿病の大部分 副腎不全 生理的変動食後高値を示します 11

C- ペプチド (CPR) インスリンが膵臓で生成される際 同時に等量生成されるためインスリン投与時 あるいはインスリン抗体が存在する場合の膵 β 細胞のインスリン分泌能評価に有用です 基準値 : 0.8-2.5 (ng/ml) 高値になる主な疾患 2 型糖尿病の一部 インスリン受容体異常 低値になる主な疾患 1 型糖尿病 2 型糖尿病の大部分 膵疾患に続発する糖尿病 グルカゴン負荷試験インスリンの分泌能力を評価する検査です インスリン治療の必要性などの治療法選択の目安となります 尿 C- ペプチドインスリン抗体によってインスリン測定が困難な場合に有用です 基準値 : 22.8-155.2(μg/day) 高値になる主な疾患インスリノーマ インスリン自己免疫性症候群 肥満 肥満を伴う糖尿病 クッシング症候群 末端巨大症 低値になる主な疾患 1 型糖尿病 褐色細胞腫 原発性アルドステロン症 膵癌 ケトン体分画肝臓にて脂肪酸より生合成され その生成は糖質の供給が十分でない飢餓や糖尿病において亢進します 1 型糖尿病の重症化に伴うケトアシドーシスで高値となります 基準値 : 総ケトン体 17-107 (μmol/l) アセト酢酸 2-66 (μmol/l) 3-ヒドロキシ酪酸 12-77 (μmol/l) 高値になる主な疾患 1 型糖尿病の重症化に伴うケトアシドーシス 下痢や嘔吐 脱水によるアシドーシス 飢餓尿ケトン体肝臓にて脂肪酸より生合成され その生成は糖質の供給が十分でない飢餓や糖尿病において亢進します 基準値 : 陰性 陽性になる主な疾患重症糖尿病 飢餓 嘔吐 下痢 妊娠悪阻 12

遊離脂肪酸糖 脂質代謝や内分泌機能を評価する検査として利用されます 基準値 : 140-850 (μeq/l) 高値になる主な疾患糖尿病 急性肝炎 肝硬変 甲状腺機能亢進症 低値になる主な疾患甲状腺機能低下症 汎下垂体機能低下症 生理的変動運動 食後で低値を 飢餓 寒冷 喫煙で高値を示すことがあります 乳酸組織循環不全 代謝障害 糖尿病のコントロール不良による乳酸アシド シスが疑われる場合に測定されます 基準値 : 3.0-17.0 (mg/dl) 高値になる主な疾患循環不全 肝不全 尿毒症 管理不良の糖尿病 ミトコンドリア異常症 低値になる主な疾患 PGAM 欠損症 PGK 欠損症 LDH 欠損症 ピルビン酸乳酸とともに測定されることが多く 組織循環不全の指標 代謝性アシドーシス 先天性糖代謝異常症やミトコンドリア DNA 異常症などの精査で測定されます 基準値 0.30-0.94 (mg/dl) 高値になる主な疾患循環不全 肝不全 尿毒症 管理不良の糖尿病 ミトコンドリア異常症 LDH 欠損症 低値になる主な疾患 PGAM 欠損症 PGK 欠損症 13

尿蛋白腎疾患の早期発見や治療効果をみる検査です 尿蛋白は半定量検査で -~3+(>300 mg/dl) で結果を報告します 基準値 : 40-150 (mg/day) * 随時尿検査では基準値は有りません 排泄量が同じであっても尿量によって濃度が異なるため 随時尿では尿蛋白が多いかどうかの判定は難しいです 但し 随時尿の尿蛋白濃度と尿クレアチニン濃度より 1 日の尿蛋白量を推定できます これをクレアチニン補正といい 尿蛋白 / 尿クレアチニン (Cr) 比で求めます 正常値は 0.15g/gCr(150mg/gCr) 未満です 高値になる主な疾患糸球体腎炎 ネフローゼ症候群 腎硬化症 膠原病 IgA 腎症 抗 GAD 抗体 ( 抗グルタミン酸デカルボキシラーゼ抗体 ) 自己免疫性 1 型糖尿病に高頻度に検出される膵 β 細胞に対する抗体であり診断の指標として測定されます 基準値 : < 1.5 (U/mL) 高値になる主な疾患自己免疫性 1 型糖尿病 インスリン抗体インスリン治療中の糖尿病患者での治療抵抗性を見るために行われる検査で インスリンが異常値の場合も存在が疑われます 基準値 < 0.4 (U/mL) 高値になる主な疾患インスリン治療の既往のある糖尿病患者の一部 抗 IA-2 抗体膵島関連自己抗体のひとつで 1 型糖尿病発症予測に有用なマーカーです 自己免疫性 1 型糖尿病の診断の指標として測定されます 基準値 : < 0.4(U/mL) 高値になる主な疾患自己免疫性 1 型糖尿病 14

糖尿病の合併症急性合併症インスリンが極端に不足することにより脱水症状や意識障害を引き起こす糖尿病性昏睡 薬物療法中に最も高頻度にみられる低血糖発作があります 慢性合併症糖尿病は自覚症状がなく血糖値が高い状態のまま放置することによって 全身に様々な合併症をきたし糖尿病に特有な 細小血管障害 ( 腎症 網膜症 神経障害の 3 大合併症 ) および 大血管障害 ( 動脈硬化性疾患 ) を引き起こします 合併症はないか? また あった場合は進行状態がどの程度のものなのか? を知るために定期的な検査が必要となります 細小血管障害糖尿病腎症とは腎臓の糸球体の毛細血管の障害により起こります 初期には無症状で 進行すると蛋白尿が出現し 高血圧やむくみなど腎炎と似た症状が起こります さらに進行すると腎不全や尿毒症となり透析が必要となることがあります 糖尿病網膜症とは網膜の血管障害により起こります 初期にはほとんど自覚症状がなく 進行すると失明の恐れがあります 糖尿病神経障害とは末梢の感覚神経や運動神経 自律神経などの障害によって起こります 末梢神経障害では初期の段階から足のしびれやこむら返りなどの自覚症状がありますが 放置すると足の壊疽 切断の恐れがあります 大血管障害 ( 動脈硬化性疾患 ) とは血管の弾力性が失われて硬くなったり 内部の壁にさまざまな物質が沈着して血管が狭くなったり あるいは血栓ができたりして血液が流れにくくなる状態のことです 心筋梗塞や狭心症 脳梗塞 閉鎖性動脈硬化症などの原因となります 糖尿病の方の場合 そうでない人に比べて動脈硬化症が 10~15 年早く進行し 心筋梗塞や狭心症を引き起こしやすいとされています また境界型の場合 動脈硬化などはすでに始まっており これらの疾患を引き起こすリスクが高いとされています 15

細小血管障害の検査 糖尿病腎症 尿蛋白 病状を知る検査 参照 尿中アルブミン糖尿病による糸球体病変の早期検出のために測定されます 基準値 : < 2.0 (mg/dl) < 30.0 (mg/g Cre) 尿中 ALB/CRE 補正値 高値になる主な疾患糖尿病性腎症 妊娠高血圧症候群 高血圧 発熱 尿路感染 原発性糸球体疾患 生理的変動起立性蛋白尿 過度の運動負荷状態で高値を示すことがあります クレアチニン (CRN) 腎臓から尿中に排泄されます 腎機能が低下すると尿中に排泄されにくくなり 血中で上昇するため 腎機能の指標に用いられます 基準値 : 0.50-1.20 (mg/dl) 高値になる主な疾患糸球体腎炎 腎不全 うっ血性心不全 脱水症 熱傷 先端巨大症 巨人症 低値になる主な疾患尿崩症 筋ジストロフィー 生理的変動クレアチニン値は筋肉量に比例するため 男性は女性より優位に高値を示します 24 時間クレアチニンクリアランス腎機能の評価や 腎不全患者における投薬量の調節などの目的で測定され 糸球体濾過値の指標となります 基準値 : > 90 (ml/min) 低値になる主な疾患糸球体腎炎 腎硬化症 うっ血性心不全 ショック 尿路閉塞 16

糸球体濾過量 ( 推算値 )egfr 単位時間当たりに腎糸球体で血漿が濾過される量を 血中クレアチニン値と年齢で推算した値です 腎臓の機能を推定できます ( 成人のみ適応 ) 基準値 : 参考値 > 90 (ml/min) 低値になる主な疾患腎機能の低下シスタチン C 腎糸球体濾過量 (GFR) を反映する新しい血中指標で 筋肉量の影響を受けないため性差が小さく より早期の腎機能低下の検索に用いられます 基準値 ( 男性 ): 0.63-0.95(mg/L) 基準値 ( 女性 ): 0.56-0.87(mg/L) 高値になる主な疾患腎機能 ( 糸球体濾過量 ) 低下 甲状腺機能亢進症 低値になる主な疾患甲状腺機能低下症 血中尿素窒素 (BUN) 腎機能検査のスクリーニングとして測定されます 基準値 : 8-20 (mg/dl) 高値になる主な疾患腎炎 尿毒症 尿管閉塞 脱水症 熱傷 消化管出血 低値になる主な疾患肝硬変 肝炎 尿崩症 生理的変動高蛋白食で高値を示すことがあります 血中 β2-m (β2- マイクログロブリン ) 糸球体濾過または尿細管再吸収機能の低下により 血中で増加します 基準値 : 0.68-1.65(mg/L) 高値になる主な疾患急性 慢性糸球体腎炎 尿毒症 慢性腎不全 糖尿病性腎症尿中 β2-m ( 尿中 β2- マイクログロブリン ) 糸球体濾過または尿細管再吸収機能の低下により 尿中で増加します 基準値 : 150(μg/L) 高値になる主な疾患 Fanconi 症候群 尿細管アシドーシス 尿毒症 慢性腎不全 糖尿病性腎症 17

尿 NAG 指数尿細管障害の早期発見 腎移植後の経過観察 上部尿路感染の指標です 基準値 : 1.0-6.3 (U/g Cre) 高値になる主な疾患ネフローゼ症候群 急性腎不全 糸球体腎炎 糖尿病性腎症 糖尿病網膜症 視力検査眼底検査眼の奥の網膜や網膜の血管の状態を調べる検査です 蛍光眼底造影腕の血管から造影剤を注射して 眼の奥の血管や網膜などの写真を撮影する検査です 検査により病気の診断や治療方針が決定できます 糖尿病神経障害 感覚 運動神経機能の検査腱反射ゴムのハンマーで膝のお皿の下やアキレス腱を叩き 反射があるかどうか調べる検査です 振動覚検査振動させた状態の音叉を足のくるぶしなどにあてて 振動の感知時間を調べる検査です 末梢神経伝導速度検査手や足の神経を刺激して その刺激の伝わる速さ ( 伝導速度 ) を測り 神経障害の程度を調べる検査です 自律神経機能の検査心電図 R-R 間隔変動係数安静時と深呼吸時の心電図を記録しての R 波の間隔の変動を調べます 自律神経機能障害の指標となります 起立性低血圧測定起立性低血圧は糖尿病自律神経障害の中で出現頻度が高い症状です 起立時の血圧低下に対する反応が遅れ 起立直後に立ちくらみを起こします 18

大血管障害 ( 動脈硬化性疾患 ) の検査総コレステロール (T-Cho) 脂質代謝異常の指標です 基準値 : 140-220 (mg/dl) 高値になる主な疾患糖尿病 甲状腺機能低下症 閉塞性黄疸 ネフローゼ症候群 低値になる主な疾患肝実質障害 甲状腺機能亢進症 栄養障害 生理的変動妊娠 動物性脂肪に富む食習慣で高値を示すことがあります HDL コレステロール善玉コレステロールとも呼ばれており 動脈硬化性疾患における危険因子の検索や 脂質代謝異常が疑われる場合に測定されます 基準値 : 40-70 (mg/dl) 高値になる主な疾患原発性胆汁性肝硬変 低値になる主な疾患脳梗塞 冠状動脈硬化症 慢性腎不全 肝硬変 糖尿病 生理的変動喫煙 肥満 運動不足で低値 食事 飲酒で高値を示すことがあります 19

LDL コレステロール ( 計算値 ) 悪玉コレステロールとも呼ばれており 本院では下記計算式にて算出表記しております LDL コレステロール = ( 総コレステロール )-(HDL コレステロール )-( 中性脂肪 ) 5 LDL は 肝臓で作られたコレステロールを身体の各部分 ( 末梢組織 ) に運びます コレステロールは 細胞膜 の材料として重要な役割を果たしています HDL コレステロールと同時に算出して動脈硬化 脂質異常症などの診断や経過観察に用いられます LDL コレステロール / HDL コレステロール比 (LDL-C/HDL-C 比 ) 動脈硬化指数 ( 動脈硬化の起こりやすさを表現したもの ) で 4.0 以上の場合は その値が大きいほど動脈硬化の危険性が高いと言われています 中性脂肪 (TG) 動脈硬化の危険因子で 糖尿病や肥満など 糖 脂質代謝異常をきたす各種の疾患において 診断や治療の経過判定に用いられます 基準値 : 55-150 (mg/dl) 高値になる主な疾患糖尿病 肥満 動脈硬化 痛風 甲状腺機能低下症 ネフローゼ症候群 低値になる主な疾患甲状腺機能亢進症 栄養障害 肝障害 生理的変動食事 飲酒で高値を示すことがあります 糖尿病患者における脂質管理目標 コントロールの目標値 (mg/dl) 総コレステロール 200 未満 ( 冠動脈疾患の場合 180 未満 ) HDL( 善玉 ) コレステロール 40 以上 LDL( 悪玉 ) コレステロール 120 未満 ( 冠動脈疾患の場合 100 未満 ) 中性脂肪 ( 早朝空腹時 ) 150 未満 20

心電図心臓の筋肉が全身に血液を循環させるための拡張と収縮を繰り返している時に微弱な活動電流が発生します この電流を波形に記録したものが心電図で 心疾患や不整脈の診断と治療に有用です また運動して心電図を記録する運動負荷心電図 24 時間連続して心電図を記録するホルター心電図も必要に応じて行われます 頸動脈超音波頚動脈に超音波をあてて頸動脈を映し出し 血管の壁が厚くなっていないか あるいは血流が悪くなっていないかなど 血管の状態を調べる検査です 動脈硬化の程度がわかります 足関節上腕血圧比 (ABI) 寝た状態で両足首と両腕の血圧を測定し 足首と上腕の血圧の比を調べる検査です 血管の詰まりの程度を表します 脈波伝播速度 (PWV) 心臓の拍動が動脈を通じて 手や足に届くまでの速度を調べる検査です 血管の硬さの程度を表します CAVI( キャビィ ) 検査脈波伝播速度 (PWV) と同じく動脈の硬さの程度を調べる検査ですが 血圧の変動に依存することなく血管の状態 ( 動脈硬化の指標 ) を表します 21

最後に 糖尿病の治療の目的は 合併症を防ぐことにあり そして健康な人と変わらない日常生活を送り 健康な人と変わらない寿命をまっとうすることです そのためには 血糖のコントロールが大切です このように糖尿病の診断や治療には数々の検査が必要です それはより良い血糖コントロールを維持し 合併症を進行させないためのものです 各検査の意味と目標値をよく理解し そして自分の検査値を記録し自分のからだの状態を把握していくことが必要です 糖尿病は患者さんが治療をする病気です 22

わかりやすい検査案内糖尿病編平成 26 年 10 月第 5 版 監修腎臓内科発行大阪医科大学附属病院中央検査部 http://www.osaka-med.ac.jp/deps/kns/main.html