小児科専門医セミナー 内分泌

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表 1 入院時検査所見 11,500L 471 L 17.0 gdl.3 L ph 7.49 PaCO 37.8 mmhg PaO 67.4 mmhg HCO 3.6 meql B E 1. meql 141 meql K 3.9 meql Cl 108 meql Ca 8.4 mgdl P 4.5

脂質異常症を診断できる 高尿酸血症を診断できる C. 症状 病態の経験 1. 頻度の高い症状 a 全身倦怠感 b 体重減少 体重増加 c 尿量異常 2. 緊急を要する病態 a 低血糖 b 糖尿性ケトアシドーシス 高浸透圧高血糖症候群 c 甲状腺クリーゼ d 副腎クリーゼ 副腎不全 e 粘液水腫性昏睡


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4. 治療の実際前述の first line の結果が出たら 診断の方向性を予想し 治療を開始する 以下に代謝性アシドーシスと高アンモニア血症の 2 通りの組み合わせを詳述する 低血糖を認めた場合 血糖値を測定しながらブドウ糖静注を行うが 先天代謝異常症に伴う低血糖は ブドウ糖投与速度 (gluco

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2 身体所見 体格 身長, 体重, BMI を記載する 腹囲なども状況により記載を検討する 浮腫が著明の場合, 真の体重ではないため BMI は参考値となる バイタルサイン 体温, 血圧, 脈拍, 呼吸数など 電子カルテに看護師が毎日記録しているが, 練習のため自分で測定するとより良い 診察所見 必


参考 9 大量出血や急速出血に対する対処 2) 投与方法 (1) 使用血液 3) 使用上の注意 (1) 溶血の防止 参考 9 大量出血や急速出血に対する対処 参考 11 慢性貧血患者における代償反応 2) 投与方法 (1) 使用血液 3) 使用上の注意 (1) 溶血の防止 赤血球液 RBC 赤血球液

3 病床数 施設 ~19 床 床 床以上 284 (3 施設で未回答 ) 4 放射線専門医数 ( 診断 治療を含む ) 施設 ~5 人 226 6~10 人 人

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児に対する母体の甲状腺機能低下症の影響を小さくするためにも 甲状腺機能低下症を甲状腺ホル モン薬の補充でしっかりとコントロールしておくのが無難と考えられます 3) 胎児 新生児の甲状腺機能低下症 胎児の甲状腺が生まれながらに ( 先天的に ) 欠損してしまう病気があります 通常 妊娠 8-10 週頃

カテゴリー別人数 ( リスク : 体格 肥満 に該当 血圧 血糖において特定保健指導及びハイリスク追跡非該当 ) 健康課題保有者 ( 軽度リスク者 :H6 国保受診者中特定保健指導外 ) 結果 8190 リスク重なりなし BMI5 以上 ( 肥満 ) 腹囲判定値以上者( 血圧 (130 ) HbA1

使用上の注意 1. 慎重投与 ( 次の患者には慎重に投与すること ) 1 2X X 重要な基本的注意 1TNF 2TNF TNF 3 X - CT X 4TNFB HBsHBcHBs B B B B 5 6TNF 7 8dsDNA d

37 4

News Release 報道関係各位 2015 年 6 月 22 日 アストラゼネカ株式会社 40 代 ~70 代の経口薬のみで治療中の 2 型糖尿病患者さんと 2 型糖尿病治療に従事する医師の意識調査結果 経口薬のみで治療中の 2 型糖尿病患者さんは目標血糖値が達成できていなくても 6 割が治療

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

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Transcription:

小児科専門医セミナー 小児内分泌の緊急 平成 25 年 5 月 7 日火曜日 鈴木 山田

本日のメニュー 内分泌疾患の緊急対応 よくある内分泌疾患の初期対応

内分泌疾患の緊急 甲状腺クリーゼ すぐに専門医へ転院 1 型糖尿病ケトアシドーシス 副腎クリーゼ 低血糖 ( 重症 ) 検査を中心に

症例 1 11 歳女児 36 kg 意識障害にて 救急搬送された 歩行 会話不可で 時に開眼する 多呼吸あり

意識障害をきたす疾患 痙攣? 頭蓋内出血? 髄膜炎? 脳炎? 重症敗血症? 低血糖? ヒステリー? 血液検査血算 生化学 凝固 血液ガス 血管確保 頭部 CT レントゲン 心電図

病歴追加 3 か月前より 夜間に尿でトイレに起きる 1 週間前より 疲労感が強く 2 日前より 発熱 腹痛あり 血糖 860 mg/dl

糖尿病性ケトアシドーシス (Diabetic Ketoacidosis:DKA) の初期対応

DKA の診断 1 高血糖 ( 血糖値 ) 200mg/dl 2 静脈血液ガス分析 ph<7.3 または HCO3-<15 mmol/l 3 血中ケトン体高値または尿ケトン陽性 ( 血中総ケトン 3 mm 以上 β ヒドロキシ酪酸 >300μmol/l )

その他 *DKA は インスリン治療中の児のシックデイやインスリンの中断 インスリンポンプのトラブルなどでも起こりうる * 重症度は症例によりまちまち意識障害が強く呼吸 循環管理が必要の場合は ICU 管理軽症で経口摂取可能の場合は インスリン皮下注射で治療開始となることもある

DKA の症状 意識障害 ; 独歩可能 ~ 昏睡まで意識障害の程度はさまざま 進行する 呼吸の異常 ; 呼気のケトン臭 早く 深い呼吸 (Kussmal 大呼吸 ) 消化器症状 ; 悪心 嘔吐 急性腹症に似た腹痛 脱水症状 ; 皮膚ツルゴール低下 粘膜乾燥 頻脈 低血圧 感染を伴う場合は発熱

バイタル DKA 診断時の評価項目 検査 脈拍 呼吸数 血圧 体温 血液 尿検査 血糖 電解質 [Na K Cl Ca ip (Mg)] 血液ガス (ph HCO3- pco2) 血漿浸透圧 BUN Cr ケトン体 TG FFA インスリン 血液像 Hb Ht CRP HbA1c ケトン体 尿糖 補正 Na;Na+1.6 (BG-100)/100 2 Na+BG/18 で算出も可 ( 抗 GAD 抗体 抗インスリン抗体 抗 IA-2 抗体 ) その他心電図 K 異常高値の場合 早期に 体重測定 適切な培養検体 感染の合併時

治療のポイント 1 循環動態の改善 水分と電解質の修正 2 インスリン作用不足の改善 3 血糖値の正常化 4 酸 - 塩基平衡の改善 5 脳浮腫の予防 2009 年 ISPAD (International Society of Pediatric and Adolescent Diabetes) 国際小児思春期糖尿病学会より コンセンサスガイドラインより

1 治療のモニタリング ルート確保 ( 輸液用と頻回採血の 2 ルートが望ましい ) 心電図 血圧 SpO2 モニター バイタルサイン 神経学的所見 血糖値 電解質 静脈血ガスを 1-2 時間毎に

1 輸液 1) まずは 生食で 10(~20)ml/kg 1~2 時間で投与 生食の投与のみでも 血糖値は低下する 2) 次の 4~6 時間 ; 利尿得るまでの移行期生食または酢酸リンゲル ; 維持輸液 + 欠乏量を 48 時間で均等配分ペースの輸液 3) その後維持輸液 (0.45% 食塩水以上の濃度の液 ) + 欠乏量を 48 時間で均等配分の輸液適宜電解質補正 4) 血糖 <250~300 mg/dl で糖を加える 0.2~0.3g/ kg /h (GIR 3~5 mg/kg/min)

2 インスリン * インスリン補充は 初期輸液開始 1~2 時間後から開始 * インスリン静注のボーラス投与行わない * インスリン速度 ; 0.05 U/kg/hr (textでは 0.1 U/kg/h) 速効型インスリン ( ヒューマリン R U-100 100 U/ml) 生食 100ml+ ヒューマリン R 1ml 生食 100ml+ ヒューマリン R 0.1ml 0.1 U/ml * インスリン投与開始 1 時間後に血糖チェック * 血糖下降速度 ;1 時間に100 mg/dl 以下 1 U/ml 血漿浸透圧の急激な変化は 脳浮腫の危険を増大させる

3 アシドーシスの対応 * 原則 炭酸水素ナトリウム ( メイロン ) は投与しない Na 負荷が 脳浮腫をきたす可能性ある 脳内のアシドーシスを悪化させる ( 奇異性脳内アシドーシス ) * メイロン投与が勧められるのは 最重症症例で ph<6.9 ショック状態でカテコラミンの使用を考慮または 蘇生が必要な生命の危機に瀕しているときのみ

4 電解質補正全体的に欠乏状態 1)K 補充インスリンを開始により 細胞内への K 取り込みが促進され急激な低 K 血症を来す可能性がある 初期生食輸液後 利尿あり K 5.5 meq/l なら K 添加 濃度は 30~40 meq/l で 2)P 補充リン酸 2 カリウム

5 脳浮腫について *DKA 死亡原因の 60~90% が脳浮腫 * リスク ; 低年齢 ( 特に 5 歳未満 ) 重症アシドーシス 輸液の過剰 Na 補正の遅れ BUN 高値 HCO3- 投与 急激な血糖低下 *DKA 治療開始 ~12 時間後脳浮腫の徴候 ; 頭痛 除脈 嘔吐 易刺激性 傾眠傾向 血圧の変動 血中酸素濃度の低下 ICU へ収容 酸素投与 頭部冷却 1 マンニトール 0.25~1.0 g/kg を 20 分で点滴投与 30 分 ~2 時間で効果認められなければ 繰り返し投与 2 輸液量を 1/3 へ減らす

副腎クリーゼ

副腎クリーゼ 副腎自体の問題 ( 先天性副腎皮質過形成 ) 下垂体性の副腎不全 急性期の治療は両者とも同じ 副腎不全の誘因 飢餓 睡眠不足 発熱 胃腸炎 発表会 遠足

症例 2

3 歳 2 カ月女児 下垂体前葉機能低下のため コートリル チラージン s 内服 GH 注射をしている 3 日間プールに通い 疲れていた 午前 2 時から突然の嘔吐が出現 普段は 8mg/m2/ 日のコートリルを内服している ストレス時用に 80mg/m2/ 日のコートリルを処方されていたが内服できず 午前 4 時にぐったりして意識レベル低下し来院 痛み刺激に反応なし

検査結果 WBC 16300 /μl 血ガス CRP 0.1 mg/dl ph 7.295 BUN 14 mg/dl HCO3 21.1 Cr 0.4 mg/dl Na 137 meq/l K 3.5 meq/l Cl 105 meq/l BS 93 mg/dl

経過 副腎不全と判断しヒドロコルチゾンを静注し 数時間後にはいつもと変わらない元気さになった ( サクシゾン or ソルコーテフ ) 副腎不全の診断名がついている場合 急性副腎不全の可能性が否定できなければ まず治療

副腎不全時の初回ステロイド量 新生児 : 10mg/kg 乳児以降 : 体重 x 5mg で切りのいい数字例 ) 9kg 50 mg 13kg 50 mg 15kg 100 mg 23kg 150 mg 困ったら多めで良い 150mgが成人量

副腎不全時の主治医指示 体調不良時には 通常内服量のハイドロコルチゾン ( コートリル ) の 3-10 倍の量を内服するように 嘔吐 胃腸炎で内服できない場合や その他原因のいかんに関わらず 体調不良時 外傷時は急性副腎不全と考えます

副腎不全追加事項 補液開始時の組成と量 ソリタ T1 20ml/hr ( 生食 500ml+20% 糖液 2 本 20ml/hr ) SIADH に注意 鉱質コルチコイドの補充をしている症例でも 上述の大量のハイドロコルチゾンが投与されている時は考慮しなくて良い 初期治療開始したら 専門医に相談

症例 3

原因不明の低血糖 10 か月女児 主訴 : ケイレン重積 低血糖 既往歴 : 正常分娩 先天代謝異常検査正常 発達に異常なし H24 年 4 月下痢にて 近医で補液を受けたが 帰宅後も食事がとれなかった 翌日朝 痙攣にて前医受診 血糖は Low 補液開始して血糖は 76 まで上昇したが痙攣は続き 痙攣重積の診断で当院へ搬送された

次に どんな検査をしますか? 内分泌に限らず 挙げてください ここに メモ書きして

症例 10 か月女児 検査 : 緊急検査で出せるもの 確定診断検査 初発時の検体が重要です

低血糖ファースト ステップ インスリン高値か インスリン低値か 鑑別に役立つ検査項目は?

インスリン高値除外 血糖 遊離脂肪酸 ケトン ( 血中 尿中 ) インスリン値 (C-peptid 溶血強い時 ) すぐ出る すぐ出ることもある () 出ない

内分泌疾患による低血糖 インスリン過剰分泌 副腎不全 GH 欠損 急性期に診断するのは 非常に難しい ホルモン値は その日には分かりません

低血糖の鑑別 救急の現場で 内分泌疾患の鑑別は不可能 代謝異常も含めて鑑別開始 大竹先生のチャートを使いましょう 大竹先生チャートは覚えられません どこにあるのか 知っていれば良いものです

大竹先生チャート骨子 1 やらなければいけない検査スライド 14 2 保存しなければいけない検体スライド 14 3 始めるべき治療アシドーシス有無 高アンモニア有無スライド 12 13 4 治療に対する反応で方向性確認

大竹先生チャートスライド 4-5 低血糖における内分泌疾患の位置づけ

代謝異常ではない? 内分泌の鑑別開始 ( 初期検査がそろったら ) 内分泌の低血糖は 検査値の異常がそれほど複雑ではありません 治療の必要性 高アンモニア アシドーシスの治療は必要なさそうだ 血糖 電解質管理を主にすればよさそう

チャート見直し 内分泌異常で見られる所見 副腎不全: 低 Na 脱水 体色黒い あまり特異的でない 成長ホルモン欠乏: 低身長 鞍鼻小陰茎 ( 下垂体全体の機能低下 ) 高インスリン GIR>7mg/kg/minならインスリン過剰

おまけ 高 GIR 時の水分量を計算しよう GIR 5mg/kg/minの場合 5% 糖液は 50mg/mlのブドウ糖 5 mg/kg/min を時間になおすと 300 mg/kg/hr 6 ml/kg/hr 例 ) 10kgの乳児 60 ml/hr 比較 : 脱水時の急速輸液速度 ml/kg/hr 糖 7mg/kg/Hr の輸液速度は?

高インスリンの場合の 必要補液速度は明らかに異常 これはおかしいな 治療経過で判断する

副腎不全による低血糖 1 疑うこと 低 Na 低血圧 体色が浅黒い 2 ブドウ糖補充で血糖上昇が悪いなら ステロイドを1 回投与血糖上昇 副腎不全らしいあがらない それ以外

GH 欠損による低血糖 1 体型以外に手掛かりなし 2 GH の使用は 数日後からで構わない 糖液補液 他疾患鑑別

原因不明の低血糖 10 か月女児 Na 123 meq/l blood gas ph 7.495 k 4.1 meq/l pco2 23 Cl 96 meq/l BE -5.0 AST 45 IU/L HCO3 18.0 ALT 12 IU/L Urine ph 7.0 BUN 9.9 mg/dl keton ++ Cr 0.2 mg/dl アンモニア正常 CRP 2.9 mg/dl

原因不明の低血糖 10 か月女児 経過 入院時 痙攣は止まっていたが 痛み刺激に反応する程度の意識状態 血圧は低めに推移 Na 値 体色 血圧などより 試しにハイドロコルチゾンを静注し 持続点滴開始 低血糖は改善し 意識も回復 特殊検査結果が出るまで ステロイドを維持量で継続した

原因不明の低血糖 10 か月女児 ACTH 840 pg/ml (7.2 63.3) cortisol < 1.0 micg/dl (4.0-18.3) aldosterone 198 pg/ml (38-307) PRA 5.5 ng/ml/hr (0.3 5.4) 尿ステロイドプロフィール : ステロイド全般に著明低値尿中有機酸 アミノ酸分析 : 異常なし血中カルニチン分析 : 異常なし

診断 : 副腎皮質機能不全 (NNT 遺伝子異常 )

よくある内分泌疾患 マススクリーニングでの TSH 高値 17OHP 高値 軽度高値とパニック値 低身長紹介時のポイント

マス スクリーニング TSH 高値 10 以上再検査 ( 各病院 産院で ) 50 以上できるだけ早く専門病院へ 17OHP 高値 50 ng/ml 以上できるだけ早く専門へ

マス スクリーニング 健康づくり財団からの指示 軽度高値 再検査できる病院を受診 1 週間以内に病院へ 極高値 出生病院に電話連絡 群馬大にも電話連絡 2-3 日のうちに専門病院へ

マス スクリーニング 17OHP 高値が判明した時点で すでに生後 10-14 日になります 先天性副腎皮質過形成はその頃に悪化します 報告が来たら その日の内に病院を受診させるようにしてください 電解質異常 血糖値だけでもすぐに調べる必要があります 専門医のいる病院 群馬大 伊勢崎市民 太田記念

17OHP 高値 もし 各病院で検査治療を開始することになれば 電解質 血糖 ACTH コルチゾール アルドステロン レニン活性 (PRA) 尿ステロイド分析 ( 慶応大学に依頼 ) 治療前検査が大事です まずは専門医へコンサルトを

低身長コンサルト時のポイント 両親の身長 出生体重 週数 周産期異常 思春期の有無 ( タンナーステージ ) 成長曲線現在身長 =-2SD? 年間成長 >4cm? 骨年齢 ( 計算ソフト )