Robinson 分類 ( 鎖骨遠位端の Neer 分類も含む ) 鎖骨近位端骨折の治療 通常保存治療で成績がよい しかし 2004 Robinson 8) の報告では受傷後 24 週の時点での偽関節率は 8,3% であった 転位が高度のもの (type1b) では 14.3% 転位のないもの (t

Similar documents
対象 :7 例 ( 性 6 例 女性 1 例 ) 年齢 : 平均 47.1 歳 (30~76 歳 ) 受傷機転 運転中の交通外傷 4 例 不自然な格好で転倒 2 例 車に轢かれた 1 例 全例後方脱臼 : 可及的早期に整復

遷延癒合した鎖骨骨折の保存的治療 田村哲也 1), 荻野英紀 2) 2), 長嶋竜太 1) 了德寺大学 健康科学部整復医療 トレーナー学科 2) 医療法人社団了德寺会 高洲整形外科 要旨鎖骨骨折は臨床上多く経験する骨折の一つであり, 保存的治療が原則とされている. 今回は遷延癒合した鎖骨骨折に対し保

かかわらず 軟骨組織や関節包が烏口突起と鎖骨の間に存在したものを烏口鎖骨関節と定義する それらの出現頻度は0.04~30.0% とされ 研究手法によりその頻度には相違がみられる しかしながら 我々は骨の肥厚や軟骨組織が存在しないにも関わらず 烏口突起と鎖骨の間に烏口鎖骨靭帯と筋膜で囲まれた小さな空隙

アクソス ロッキングプレート カタログ

骨・関節を“診る”サブノート

Locking Clavicle Plating System

< AE8C608A4F89C836362D322E696E6462>

TheShoulderJoint,2005;Vol.29,No.3: はじめに a 転位骨片を伴う関節窩骨折に対しては直視下に整復, 内固定を施行した報告が多いが, 鏡視下での整復固定の報告は比較的稀である. 今回我々は転位骨片を伴う関節窩骨折に腋窩神経麻痺を合併した1 例に対し,

手関節骨折治療CI_f.indd

m A, m w T w m m W w m m w K w m m Ⅰはじめに 中手指節関節 以下 MP関節屈曲位でギプス固定を行い その直後から固定下で積極的に手指遠位指 節間関節 以下 DI P関節 近位指節間関節 以下 PI P関節の自動屈伸運動を行う早期運動療法 以下 ナックルキャストは

はじめに 転位の大きな大腿骨頚部骨折は, 高エネルギー外傷によっておこることや, 合併症の多い人におこることが多く, 治療も難しい

柔道整復師が行う鎖骨中1╱3骨折に対する保存療法の有用性

本研究の目的は, 方形回内筋の浅頭と深頭の形態と両頭への前骨間神経の神経支配のパターンを明らかにすることである < 対象と方法 > 本研究には東京医科歯科大学解剖実習体 26 体 46 側 ( 男性 7 名, 女性 19 名, 平均年齢 76.7 歳 ) を使用した 観察には実体顕微鏡を用いた 方形

肩関節第35巻第3号

第 43 回日本肩関節学会 第 13 回肩の運動機能研究会演題採択結果一覧 2/14 ページ / ポスター会場 第 43 回日本肩関節学会 ポスター 運動解析 P / ポスター会場 第 43 回日本肩関節学

小児大腿骨骨幹部骨折

脛骨近位部骨折の治療 土田芳彦 脛骨近位部骨折についての緒言脛骨近位部骨折は骨端部から骨幹端部にかけての骨折であり 関節内外の骨折を含む 比較的低エネルギー損傷でも生じるが 高エネルギー損傷のことが多い この部位の骨折は よくある骨幹部骨折とは異なり治療が難しく 特別な注意を要する まず どのような

の内外幅は考慮されず 側面像での高さのみで分類されているため正確な評価ができない O Driscoll は CT 画像を用いて骨片の解剖学的な位置に基づいた新しい鉤状突起骨折の分類を提案した この中で鉤状突起骨折は 先端骨折 前内側関節骨折 基部骨折 の 3 型に分類され 先端骨折はさらに 2mm

46 図L 受傷時の肩関節の外観 肩甲上腕関節部に陥凹がみられる 矢印 a b C 図2 受傷時の単純X線像 a 正面像 肩甲上腕関節裂隙の開大 vacant glenoid sign 上腕骨頭の内旋 light bulb 肩甲骨 前縁と上腕骨頭距離の開大 rim sign がみられた b 軸写像

仙台市立病院医誌 索引用語 上腕骨近位端骨折 原 成人 高齢者 保存的治療 著 成人 高齢者上腕骨近位端骨折の保存的治療成績 倍 加 斉 毅 佐 木 藤 黒 沼 秀 治 大 介 粋 安 大 川辺 則 吉 々 ヲ 新 人 倍 安 美 博 ヲ 橋 高 森 田 常武 柴 茂 渡 蔵

日本メデイカルネクス卜 鎖骨プレーティングシステム

結果 上記の運動の概念を得た 2010 年 10 月以降に治療を行った PIP 背側脱臼損傷 19 指のうち 6 指に ORIF を施行した 結果 PIP 関節伸展平均 -2 度 屈曲平均 96 度であった 考察 掌側板と側方支持機構や伸筋腱は吊り輪状に連結しており リンクした運動をしている PIP

大腿骨頚部骨折

日本職業・災害医学会会誌第51巻第1号

[ 骨損傷の分類 (1) 外傷性骨折 正常な骨に外力が作用して骨組織の連続性が完全にまたは部分的に離断されたもの (2) 疲労性骨折 比較的軽度な負荷が繰り返し加わって発生下肢の疲労骨折は 10 代に好発 (16 歳にピークがある ) 中足骨 脛骨 腓骨 肋骨などに発生 (3) 病的骨折 骨に基礎疾

内釘は一般的に使われています 前腕骨や鎖骨用のものもありますが 現状では一般的ではありません 8: 整復して 髄内釘を挿入します 相対的固定により化骨形成を伴った骨癒合がえられます 6: それでは髄内釘の長所 短所についてお話したいと思います 7: まずは長所からです 何と言っても低侵襲ということで

Microsoft PowerPoint - 【逸脱半月板】HP募集開始150701 1930 2108 修正反映.pptx

Ⅰ はじめに 柔道整復師が取り扱う骨折や脱臼などの外傷の治療の基本原則は非観血的療法である その中で通常は 観血的療法の適応となる外傷でも非観血的療法を行なう場合がある 今回は 観血的療法を選択すること が多い中手指節関節 以下 MCP関節 脱臼を伴った示指基節骨骨折に対し非観血的療法を行った症例を

日本臨床麻酔学会 vol.33

2011ver.γ2.0

10035 I-O1-6 一般 1 体外衝撃波 2 月 8 日 ( 金 ) 09:00 ~ 09:49 第 2 会場 I-M1-7 主題 1 基礎 (fresh cadaver を用いた肘関節の教育と研究 ) 2 月 8 日 ( 金 ) 9:00 ~ 10:12 第 1 会場 10037

手指中節骨頚部骨折に対する治療経験 桐林俊彰 1), 下小野田一騎 1,2) 3), 大澤裕行 1) 了德寺大学 附属船堀整形外科 了德寺大学 健康科学部医学教育センター 2) 3) 了德寺大学 健康科学部整復医療 トレーナー学科 要旨今回, 我々は初回整復後に再転位を生じた右小指中節骨頚部骨折に対

Surgical Treatment of Fracture-dislocation of the Ankle by Tomoyuki NODA, Kinzo YASUDA, Hiroshi NAGANO, Taketo KUROZUMI, Shuji HAZAKI and Kyuen OTANI

NCB Periprosthetic Femur Plate System 手技書

The Usefulness of Distal Clavicle Resection for Acromioclavicular Joint Disease by YOSHIDA Atsushi Department of Orthopaedic surgery, National Tochigi

ストレッチング指導理論_本文.indb

CLS Spotorno Hip Stem CLS スポトルノヒップステム Nature is Our Model

PowerPoint プレゼンテーション

2 4 診断推論講座 各論 腹痛 1 腹痛の主な原因 表 1 症例 70 2 numeric rating scale NRS mmHg X 2 重篤な血管性疾患 表

Mayo Clinic Congruent Elbow Plate System

現在における AO の骨折治療原理とは 骨組織の血行を温存すること 関節面とアライメントを整復すること そして安定した固定性を得 早期に痛みのない可動を獲得するということです 過去と比較して最も変化しているのはこの血行温存の点につきます そして これらの AO 法の知識を習得し 骨折治療の技術を習得


A.L.P.S. Total Foot System LC

原因は不明ですが 女性に多く 手首の骨折後や重労働を行う人に多く見られます 治療は安静や飲み薬で経過を見ますが しびれが良くならない場合 当科では 小さな傷で神 経の圧迫をとる手術を行っており 傷は 3 ヶ月ぐらい経過するとほとんど目立ちません 手術 時間は約 30 分程度ですが 抜糸するのに約 1

5 月 22 日 2 手関節の疾患と外傷 GIO: 手関節の疾患と外傷について学ぶ SBO: 1. 手関節の診察法を説明できる 手関節の機能解剖を説明できる 前腕遠位部骨折について説明できる 4. 手根管症候群について説明できる 5 月 29 日 2 肘関節の疾患と外傷 GIO: 肘関節の構成と外側

CPP approach Conjoint tendon Preserving Posterior Surgical Technique

PowerPoint プレゼンテーション

Vol 夏号 最先端の腹腔鏡下鼠径 ヘルニア修復術を導入 認定資格 日本外科学会専門医 日本消化器外科学会指導医 専門医 消化器がん外科治療認定医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 外科医長 渡邉 卓哉 東海中央病院では 3月から腹腔鏡下鼠径ヘルニ ア修復術を導入し この手術方法を

LCP LOW BEND MEDIAL DISTAL TIBIA PLATE 3.5 Anatomic plates with low profile head for intra- and extraarticular fractures SURGICAL TECHNIQUE

<4D F736F F D208FC797E195F18D CA9967B>

PowerPoint プレゼンテーション

The Treatment of Malleolar Fractures of the Ankle Joint by Eijirou Adachi, Hisao Endo, Tatsuhiko Hemmi, Masami Takahashi, Kouji Fujii and Tadanori Oga

The Shoulder Joint, Vol.20, No.1, 57-62, 1996.

1)表紙14年v0

Key words: 肩腱板損傷 / 肩関節周囲炎 / リハビリテーション / 疼痛誘発テスト / 超音波検査要旨Jpn J Rehabil Med 2017;54: 特集 運動器リハビリテーションに必須の評価法と活用法 û 肩関節痛のリハビリテーションに必須な評価法と活用法 The

6 腰椎用エクササイズパッケージ a. スポーツ選手の筋々膜性腰痛症 ワイパー運動 ワイパー運動 では 股関節の内外旋を繰り返すことにより 大腿骨頭の前後方向への可動範囲を拡大します 1. 基本姿勢から両下肢を伸展します 2. 踵を支店に 両股関節の内旋 外旋を繰り返します 3. 大腿骨頭の前後の移

骨端線損傷を伴った小児寛骨臼骨折の治療経験 札幌医大救命救急センター 整形外科 塩崎彰 入船秀仁 小林拓馬 宮川健 土田芳彦 目的 骨端線損傷を合併した小児寛骨臼骨折の稀な 1 例を経験したのでこれを報告する 症例 症例は 11 歳男児である 横断歩道横断中にオートバイにはねられて受傷し 高エネルギ

<924A814092BC8EF72E656339>

であった まず 全ての膝を肉眼解剖による解析を行った さらに 全ての膝の中から 6 膝を選定し 組織学的研究を行った 肉眼解剖学的研究 膝の標本は 8% のホルマリンで固定し 30% のエタノールにて保存した まず 軟部組織を残し 大腿骨遠位 1/3 脛骨近位 1/3 で切り落とした 皮膚と皮下の軟

Ⅰはじめに 中節骨基部掌側骨折掌側板付着部裂離骨折 はPI P関節の過伸展によって生じる外傷で 日常でしばし ばみられるPI P関節背側脱臼に合併して発生することや単なる捻挫と判断されるなど 見逃されること が多く 骨癒合不全による掌側不安定性 運動痛および関節拘縮を起こすことがあるこの骨折に対する

原著論文 肩関節屈曲による交互滑車運動器使用時における肩甲骨の動きからみた肩甲上腕リズムの検討 寒川貴雄 (RPT) 1) 成末友祐 (RPT) 2) 新枝誠人 (RPT) 1) 原田貴志 (RPT) 1) 澤近知代 (RPT) 3) Key Word 交互滑車運動器 肩関節屈曲 肩甲骨の動き 肩甲

<4D F736F F D A838CA7979D8A7797C396408E6D89EF976C81408A948EAE89EF8ED067656E C8B9E8A4A8DC A837E B8FEE95F188EA C2E646F6378>

採択演題一覧

δ

<4D F736F F D F8D9892C595CF90AB82B782D782E88FC781458D9892C595AA97A382B782D782E88FC75F8D9892C58CC592E88F705F2E646F63>


目 次 第 1 章肩の解剖学 1 第 1 節総論... 1 第 2 節肩の骨格... 2 第 3 節肩に関連する筋の解剖学 第 1 項肩甲骨 鎖骨に関連する筋 第 2 項肩関節に関連する筋 第 3 項肘関節に関連する筋 第 4 項体幹に関連する筋...

情報提供の例

きた (Howard et al.1989, Cooney et al.1980, Porter et al.1987 ほか ) その結果どのような固定法を用いたことよりも どれだけ良好な整復位が得られ そして保持されたかによって最終成績が決定されることが明らかとなった たとえ徒手整復 ギプス固定で

数多く存在するボーンスクリューの中にはキャニュレイティッドスクリュー ヘッドレススクリュー コンプレッションスクリューなどがありますが アキュトラックはそれらの利点をすべて兼ね備えた理想的なボーンスクリューです スタンダードアキュトラック ミニアキュトラック アキュトラック / アキュトラックプラス

CONTENTS はじめに 3 必修問題 7 第 14 回 8 第 15 回 13 第 16 回 19 第 17 回 25 第 18 回 31 第 19 回 37 第 20 回 43 第 21 回 49 第 22 回 56 第 23 回 63 解剖学 71 第 13 回 72 第 14 回 79 第

<4D F736F F D F90D290918D64968C93E08EEEE1872E646F63>

<4D F736F F D DC58F4994C5817A F938C91E F C A838A815B83588CB48D652E646F63>

退院患者数 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 1 月 2 月 3 月 合計 24 年度 年度

Arthrodesis of the Carpometacarpal Joint of the Thumb by Umeo NISHIKAWA, Tetsuya NISHIKOORI Naotaka SHU and Hayato HIROTANI Department of Orthopaedics

018_整形外科学系

等級割合第660% 第7級50% 第8級障害の状態 耳の聴力を全く失い 他耳の聴力が 40 センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの級4せき柱に著しい変形又は運動障害を残すもの 51 上肢の3 大関節中の2 関節の用を廃したもの 61 下肢の3 大関節

The Treatment of Mallet Finger after Distal Phalanx Fracture Tsugutake MORISHITA, Hiroaki MAEDA and Yuzuru MATSUI by Department of Orthopedic Surgery

平成 29 年度九段坂病院病院指標 年齢階級別退院患者数 年代 10 代未満 10 代 20 代 30 代 40 代 50 代 60 代 70 代 80 代 90 代以上 総計 平成 29 年度 ,034 平成 28 年度 -

第 128 回北海道整形外科外傷研究会 一般演題 1 11:30~12:00 座長土田芳彦先生 ( 湘南鎌倉病院 ) (1) 近位骨片が関節内に嵌頓した小児肘頭骨折の一例 函館五稜郭病院村橋靖崇先生 (2) 鎖骨近位端骨折に対する骨接合にてロッキングプレートを用いた 1 例札幌東徳洲会病院畑中渉先生

手首が痛い! 使いすぎなのか!? 仕事でパソコンを頻繁に使う 美容師や理容師ではさみを頻繁に使う 料理で包丁を頻繁に使う 演奏 裁縫 趣味など 手先を使う仕事やスポーツを行い 手首が痛い と訴えるほとんどの患者さんは 普通の人より手先を使うこが多いため 腱鞘炎は 使いすぎ によるといわれています 確

!"# $%&'(


A case report of ASD (Arthroscopic Subacromial decompression) for impingement syndrome due to a huge acromial osteophyte Tetsu Yamaguchi, Koji Midorik

骨に関する基礎知識 総論 図 1 骨の構造骨は, 骨膜, 関節軟骨, 血管 リンパ管, 神経, 骨質, 骨質中や表面に存在する細胞, 骨髄から構成される. 骨折を理解するためには, 正常な骨構造を理解し, 骨折により骨組織がどのように破壊されているかを想像する必要がある. 1 骨膜骨膜は, 筋の付着

博士の学位論文審査結果の要旨 申請者氏名河野心範 横浜市立大学大学院医学研究科運動器病態学 審査員 主査 横浜市立大学大学院医学研究科教授 中村健 副査 横浜市立大学大学院医学研究科教授船越健悟 副査横浜市立大学大学院医学研究科准教授三上太郎

選考会実施種目 強化指定標準記録 ( 女子 / 肢体不自由 視覚障がい ) 選考会実施種目 ( 選考会参加標準記録あり ) トラック 100m 200m 400m 800m 1500m T T T T33/34 24

<4D F736F F F696E74202D BC690AB8A4F8F9D95AA96EC A6D92E894C581458F4390B3816A817A2E B8CDD8AB B83685D>

頭頚部がん1部[ ].indd

表1-表4 [更新済み]

< AE8C608A4F89C836372D322E696E6462>

リハビリテーションを受けること 以下 リハビリ 理想 病院でも自宅でも 自分が納得できる 期間や時間のリハビリを受けたい 現実: 現実: リ ビリが受けられる期間や時間は制度で リハビリが受けられる期間や時間は制度で 決 決められています いつ どこで どのように いつ どこで どのように リハビリ

外来在宅化学療法の実際

を優先する場合もあります レントゲン検査や細胞診は 麻酔をかけずに実施でき 検査結果も当日わかりますので 初診時に実施しますが 組織生検は麻酔が必要なことと 検査結果が出るまで数日を要すること 骨腫瘍の場合には正確性に欠けることなどから 治療方針の決定に必要がない場合には省略されることも多い検査です

<4D F736F F D208E6C95D38C608AD48C848FC78CF38C5182CC8B5E82A282C991CE82B782E9834A D E E D836C8163>

後遺障害別等級表・労働能力喪失率

パンフレット

4 表2 CE角 dysplastic Y軟骨閉鎖 18 3LO 8例 Y軟骨未閉鎖 1L4 8例 例 58例 例 46例 例 26例 24例 78例 例 表3 治療前の病変程度とCE角 dysplastic 8

第 126 回北海道整形外科外傷研究会 一般演題 (1) 大腿骨頚部骨折に対する仰臥位前方進入法の有用性市立札幌病院後山恒範 (2) 大腿骨転子下骨折への CITS 固定後角度可変機構破綻を生じた一例森山病院仲俊之 (3) 大腿骨近位部 近位骨幹部骨折に対する大腿骨遠位部用ロッキングプレートによる骨

2 片脚での体重支持 ( 立脚中期, 立脚終期 ) 60 3 下肢の振り出し ( 前遊脚期, 遊脚初期, 遊脚中期, 遊脚終期 ) 64 第 3 章ケーススタディ ❶ 変形性股関節症ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

Transcription:

鎖骨骨折の治療 相木比古乃 木村明彦 歴史 鎖骨は皮下直下にあるため 視診や触診で容易に診断できる場合が多いため 人類の骨折治療に関する最も古い記載の中に登場する 古くは紀元前 400 年ヒポクラテスが鎖骨骨折に関してのいくつかの記録を残している それによると 1 骨折した鎖骨の遠位部は上肢の重量のために下方に転位する場合が多い 2 骨折を整復することもそれを維持することも困難であり 転位した位置が骨折の natural position である 3 骨癒合は良好であるが変形治癒をしばしば生じる などと書いてある それ以降 治療に関してはいくつかの報告がある 1893 年に Dupuytren は枕に腕を乗せて骨癒合までじっと待てと延べ 1860 年に Lucas Championniere は 8 の字バンド固定などを報告した いずれにせよ 少なくとも 19 世紀の段階では 多少の変形治癒はやむをえなく それによる機能障害や審美性の問題も少ないとされていた しかし近年では 鎖骨骨折の治療に基づく分類がなされ 治療法の多様化が見られるようになっている 解剖 鎖骨は人体の中で最も早く骨化する骨であり ( 胎生 5 週 ) 長管骨の中で唯一膜性骨化する 骨化中心は鎖骨中央部であり 5 歳くらいまでに最も成長する部位である それ以降は両端の成長軟骨で成長する 鎖骨は大まかに近位 中央 遠位の 3 つの部位に分けられる 内側は太く海綿骨が豊富であり 中央は細いが骨皮質部が多く 外側は形状がフラットであり海綿骨も多少ある バイオメカニクス的には 内側 外側ともに 1/3 の部位が軸圧には最も弱い しかし 最も骨折頻度が中央 1/3 に多いのは 靭帯や筋の補強がない部分であるからと考えられている 進化論的に鎖骨の大きな役割は 肩関節をより外側に位置させることによって 人類は上肢の三次元的な動きを獲得できたと言われている 鎖骨の解剖学的役割は 1) 胸郭から肩甲帯への連結 僧帽筋筋力の伝達 上肢の安定化への寄与 2) 肩甲帯の動きに関与 ( 肩屈曲 180 度の際に胸鎖関節で上方へ 30 度 後方へ 35 度動き 長軸に対して 50 度回旋する ) Rockwood の報告では 鎖骨切除後の症例で 自動運動の筋力低下 肩関節の内方への転位とそれに伴う腕神経叢の刺激痛を認めたとの報告もある 肩外転 180 度の際 肩甲骨 60 度の外旋のうち 最初の 30 度は胸鎖関節における鎖骨の挙上である 3) 鎖骨外側 1/3 の頭側は僧帽筋上方 1/3 線維の停止部であると同時に前方は三角筋の起始部でもある 胸鎖乳突筋は内方の背側から立ち上がり 前方からは大胸筋が起始する また鎖骨下筋が第一肋骨前方から斜めに後外側に鎖骨下面に沿って走り 鎖骨骨折の際の血管神経束損傷を protect している 4) 血管神経束の保護 5) 呼吸機能 6) 審美性などに関与している 分類 1) いろいろある様だが骨幹部に関しては治療方針を決める上で有用なのが Robinson 分類ではないかと思う 鎖骨骨幹部の骨折型を転位度と粉砕度を考慮して分類している点に注目したい 鎖骨遠位端骨折については Rockwood 分類 2) が有名である Rockwood 分類は Neer 分類のタイプⅡを A と B に分けたもので タイプⅡAは烏口鎖骨靭帯の菱形靭帯 円錐靭帯ともに残存しているもの タイプⅡBは円錐靭帯が断裂したものである

Robinson 分類 ( 鎖骨遠位端の Neer 分類も含む ) 鎖骨近位端骨折の治療 通常保存治療で成績がよい しかし 2004 Robinson 8) の報告では受傷後 24 週の時点での偽関節率は 8,3% であった 転位が高度のもの (type1b) では 14.3% 転位のないもの (type 1A) では 6,7% であった しかし偽関節と臨床成績との関連が出ておらず 手術適応に関してはっきりとしたことは言えない 鎖骨中 1/3 骨折 (Robinson type 2) の治療 保存治療中 1/3 の鎖骨骨折に対しては 8 の字のバンドで固定するとの報告が最も多い この場合は患者の痛みが軽減すれば可能なかぎり早くにバンドをはずし 可動域訓練を開始する 骨癒合は 多くは 6 週で X 線上確認できるが機能的に回復するのは大人の場合で 12 週間必要である 鎖骨の短縮や痛みのない変形は多くは肩関節の機能には影響をおよぼさない

ため 通常は手術の適応は少ない また一般的に保存治療の成績は良好である 1998 年の報告では 17 年の経過観察で 保存治療を行った 225 例のうち 82% が肩の症状はなく 成績不良であったのは 1 例のみとであるとしている 3) しかし 保存治療における最初の 3 週間は痛くて ADL 上不便であるが それらは過小評価されてきたようである 保存治療による社会復帰への遅延も考慮しなくてはならない さらに 保存治療でも偽関節にはならない という一般的な認識も間違っているとする報告もある 4) また 鎖骨骨折における保存治療の結果を評価する場合 偽関節や可動域だけではなく痛み 整容を考慮すると成績はもっと悪くなると指摘されている 9) 転位したままの骨片が痛みの原因となることはよくあることである 転位の大きい鎖骨骨折に対しては手術治療を考慮する必要があるかもしれない 手術治療成人における開放骨折 神経血管損傷 floating shoulder 多発外傷 転位が大きく皮膚を突き刺しているものは手術適応となることが多い また保存的に治療した場合に見られる鎖骨の短縮は長期的には機能障害をきたし 偽関節の可能性が高いため 転位が大きいものは ORIF の適応であると主張する整形外科医もいるだろう しかし この理論はコンセンサスを得られているものではない ある報告では 5 年の経過観察で 14mm 以上の短縮は機能障害を残すと述べ 他の報告では成人の中 1/3 骨折で受傷時に 20mm 以上の短縮がみられるものは偽関節の可能性が高いと述べている しかし基本的に文献上は 鎖骨単独の中 1/3 骨折の場合は転位していてもルーチンに手術をすることは勧めてはいない しかしながら 1998 年に Robinson 1) が鎖骨骨幹部骨折 1000 例の保存療法の結果を発表した 彼によると Type2B( 転位の大きいもの ) の保存療法では 24 週の時点で 5.8% が偽関節であったと述べている さらに彼は 2004 年に偽関節となった症例の原因について検討している 8) それによると 581 例中 4.5% が偽関節となったが 高齢者 女性 骨皮質の重なりがない完全転位 粉砕が強いなどを偽関節の危険因子としてあげている 中 1/3 骨折でも転位が高度のものや粉砕骨片がある場合は手術の適応としてよいとする考えが徐々に支持されてきている 手術を行う場合にどのような方法を選択すべきであろうか 文献によると pinning プレートのいずれも良い成績であり それぞれを比較した文献は渉猟できなかった pinning は骨折部に対して低侵襲であり しかも手技的にとてもシンプルである しかし一方 ルーズニングがおこりやすく wire が皮膚を突き破ることがある これを予防するためにいくつかの工夫があるが wire の先端を曲げて鎖骨にぴったりと引っ掛けるように打ち込むとか 使用する K-wire 2mm を 2 本刺入するとか ねじ切り wire 2,5mm を使用するなどがある pinning の最も大きな利点は骨膜の剥離が最小限に抑えられることであり プレート固定より創が小さく 創外固定よりも簡単で安価であることである もしプレートを使用する場合は横骨折に対しては 3.5mm DCP プレート 斜骨折に対しては lag screw と reconstruction プレートの併用がよいとされている プレートは侵襲度が高く 創も大きいが pinning では得られない固定性 ( 特に回旋安定性 ) が得られる 将来的には MIPO が主流となるかもしれない 遠位端骨折の治療 鎖骨の遠位端骨折は烏口鎖骨靭帯損傷の有無により分類される

Ⅰ 型 : 烏口鎖骨靭帯と烏口肩峰靭帯間での骨折 近位骨片の転位は軽度 この場合は安定しているので中 1/3 骨折と同様保存治療を行う Ⅱ 型 : 烏口鎖骨靭帯の近位で骨折がおこるので近位骨片の上方転位を伴う 近位骨片は骨性にも靭帯性にも肩甲帯との連続性が絶たれる 近位と遠位骨骨片間に存在する gap の結果として偽関節となると言われている 過去 1960 年に Neer は 鎖骨遠位端骨折に保存治療を行った 50% に偽関節が発生したと報告しており 5) 日本でも秋穂らが 1988 年に 42% と報告している 6) しかしながら この骨折に対する最も適切な治療法は決まっていない 手術治療を支持するものは 保存治療では偽関節発生率が 30% 以上との報告にもとづいており 保存治療を支持するものは保存治療での疼痛や偽関節の割合はとても低いとの報告に基づいている Robinson 10) は手術適応として開放骨折 鎖骨ならびに肩甲棘 ( 肩鎖関節を含む ) が 2 箇所で破綻しているもの 皮膚トラブルがあるものを挙げている 彼の報告の中では 101 例中 後に手術を行ったものが 14% 保存療法で偽関節となったものは 21% 保存療法で骨癒合が得られたものは 52% であり やはり保存療法では偽関節の割合は大きい しかし各々の臨床成績に関しては有意差はなく 特に高齢者の遠位端骨折に関しては保存治療でよいと述べている 手術治療を行う場合の選択としては Plate 固定法 tension band wiring 法 烏口鎖骨靭帯再建などがあるが 鎖骨遠位端用の特殊 plate としては Wolter plate に代表される肩鎖関節用プレートと Scorpion plate に分けられる 遠位骨片がとても小さい場合は骨片切除と烏口鎖骨靭帯再建法がよい Ⅱ 型の鎖骨遠位端骨折に対する tension band wiring と遠位端用 plate については いずれも術後の骨癒合率や肩関節機能において差は認めないものの 合併症の面でプレートの方が成績が良いようである 7) この tension band wiring に関する合併症としては wire の migration, ゆるみ 整復の損失などが多くみられた wire のゆるみに関しては糸で K-wire と巻き wire を締結し 靭帯下または軟部組織下に埋没させて逸脱予防とする報告もある 11) Ⅲ 型 : 肩鎖関節内骨折負荷をかけての両側肩の X 線撮影をすると烏口鎖骨靭帯損傷の評価ができる 一般的には保存治療を行うが 関節面に step-off がみられ 骨片が大きい場合は ORIF の適応となる 外傷後の肩鎖関節 OA に対しては鎖骨遠位端切除を行う 合併症 鎖骨骨折治療の合併症は多くはないが 偽関節 変形治癒骨折 外傷後肩鎖関節 OA 胸

鎖関節 OA などが挙げられる 偽関節の発生率は 0.9-4.0% と報告されており 偽関節の 85% は中 1/3 骨折である 不十分な固定 著明な転位 受傷時の損傷程度の大きさ 軟部組織の介在 再骨折 初回の ORIF が偽関節の原因とされている 症状のない偽関節は治療の対象とはならない 痛み 肩の機能障害などがある場合は compression plating か髄内鋼線固定で骨移植を用いて骨整合を行う 萎縮性の偽関節の場合は腸骨の tricortical bone を用いて compression plate で固定をするのがよい ( 下図参照 ) 鎖骨にほぞ穴を開ける tricortical bone を採取 (cancellous の棘つき ) 鎖骨に tricortical bone をはめ込んで DC plate で固定 推奨する治療方法 1 鎖骨中 1/3 骨折は基本的には鎖骨バンドで治療するが 骨片間が完全に離れているような転位の大きいものや粉砕骨片がある場合は手術を行う 2 手術は経皮ピンニングを第 1 選択とする やむをえず open になる場合にはプレート固定にする 3 鎖骨遠位端骨折 (Ⅱ 型 ) に対しては plate 固定を行う 4 plate 固定としては Woler plate synthes plate BEST 社の plate などいくつかあるが どれにも特別な差はない ( つぶやき ) しかし 高齢者や鎖骨の湾曲が強い症例ではプレートが合わず 無理矢理 bending したあげく その後プレートが脱転する例を経験したことがある 鎖骨遠位端用プレートも locking システムができれば脱転が少なくなるのではないかと思ったりもしている 出典 Ortopaedic Knowledge Update 7 Soulder Trauma:Bone P263-272 参考文献 1) Robinson CM et al.fractures of the clavicle in the adult:epidemiology and classification.j Bone Joint Surg 1998;80B:476-485. 2) Rockwood CA et al.fractures of the outer clavicle in children and adults.j Bone Joint Surg 1982;64B:642. 3) Peterson NA et al.midclavicle fractures in adults:end result study after conservative treatment.j Orthop Trauma 1998;12:572-576. 4) Hill JM et al. Closed treatment of displaced middle-third fractures of the clavicle gives poor results.j Bone Joint Surg 1997;79B:537-539. 5) Neer CS et al.nonunion of the clavicle.j A M A 1960;172:1006-1011. 6) 秋穂靖ほか. 鎖骨骨折に対する観血的治療の検討. 中部整災誌 1988;31:1058-1060.

7) Flinkkila T et al.surgical treatment od unstable fractures of the distal clavilce.acta Orthop Scand 2002;73:50-53. 8) Robinson CM et al.estimating the risk of nonunion following nonoperative treatment of a clavicular fracture. J Bone Joint Surg 2004;86-A:1359-1365. 9) Nowak J et al.can we predict long-term sequelae after fractures of the clavicle based on itnitial finding? A prospective study with nine to ten ywears of follow-up.j Soulder and Elbow 2004;13:479-486 10) Robinson CM et al.primary nonoperative treatment of displaced lateral fractures of the clavicle. J Bone Joint Surg 2004;86-A:778-782. 11) 小西誠二ほか.Tension band wiring 法による鎖骨遠位端骨折の治療経験. 骨折.2003;25:606-609.