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資料1:地球温暖化対策基本法案(環境大臣案の概要)

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1 二酸化炭素回収 貯留 (CCS) とは 火力発電所等から排ガス中の二酸化炭素 (Carbon dioxide) を分離 回収 (Capture) し 地下へ貯留 (Storage) する技術

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1. のれんを資産として認識し その後の期間にわたり償却するという要求事項を設けるべきであることに同意するか 同意する場合 次のどの理由で償却を支持するのか (a) 取得日時点で存在しているのれんは 時の経過に応じて消費され 自己創設のれんに置き換わる したがって のれんは 企業を取得するコストの一

GLOBAL STATUS OF LARGE-SCALE INTEGRATED CCS PROJECTS: December 2011 update has been translated from English into Japanese for convenience. The Global

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ニュースリリースの件数増大についての提言と依頼


第1章

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事例2_自動車用材料

経済学 第1回 2010年4月7日

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MARKALモデルによる2050年の水素エネルギーの導入量の推計

RIETI Highlight Vol.66

Microsoft Word - 【セット版】別添資料2)環境省レッドリストカテゴリー(2012)

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内の他の国を見てみよう 他の国の発電の特徴は何だろうか ロシアでは火力発電が カナダでは水力発電が フランスでは原子力発電が多い それぞれの国の特徴を簡単に説明 いったいどうして日本では火力発電がさかんなのだろうか 水力発電の特徴は何だろうか 水力発電所はどこに位置しているだろうか ダムを作り 水を

問題意識 民生部門 ( 業務部門と家庭部門 ) の温室効果ガス排出量削減が喫緊の課題 民生部門対策が進まなければ 他部門の対策強化や 海外からの排出クレジット取得に頼らざるを得ない 民生部門対策において IT の重要性が増大 ( 利用拡大に伴う排出量増加と省エネポテンシャル ) IT を有効に活用し

2

IFRS基礎講座 IAS第11号/18号 収益

プロジェクト概要 ホーチミン市の卸売市場で発生する有機廃棄物を分別回収し 市場内に設置するメタン発酵システムで嫌気処理を行なう また 回収したバイオガスを利用してコジェネレーション設備で発電および熱回収を行ない市場内に供給する さらに メタン発酵後の残さから堆肥メタン発酵後の残さから堆肥 液肥を生産

平成 21 年度資源エネルギー関連概算要求について 21 年度概算要求の考え方 1. 資源 エネルギー政策の重要性の加速度的高まり 2. 歳出 歳入一体改革の推進 予算の効率化と重点化の徹底 エネルギー安全保障の強化 資源の安定供給確保 低炭素社会の実現 Cool Earth -1-

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表1-4

PowerPoint プレゼンテーション

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09 資料2 グローバルCCSインスティテュート シニア クライアントエンゲージメント リード イングビット オンブストレット様 ヒアリング資料

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( 参考様式 1) ( 新 ) 事業計画書 1 事業名 : 2 補助事業者名 : 3 事業実施主体名 : Ⅰ 事業計画 1 事業計画期間 : 年 月 ~ 年 月 記載要領 事業計画期間とは 補助事業の開始から事業計画で掲げる目標を達成するまでに要する期間とし その期限は事業実施年 度の翌年度から 3

Microsoft Word - JSQC-Std 目次.doc

お知らせ

ポイント 藻類由来のバイオマス燃料による化石燃料の代替を目標として設立 機能性食品等の高付加価値製品の製造販売により事業基盤を確立 藻類由来のバイオマス燃料のコスト競争力強化に向けて 国内の藻類産業の規模拡大と技術開発に取り組む 藻バイオテクノロジーズ株式会社 所在地 茨城県つくば市千現 2-1-6

どのような便益があり得るか? より重要な ( ハイリスクの ) プロセス及びそれらのアウトプットに焦点が当たる 相互に依存するプロセスについての理解 定義及び統合が改善される プロセス及びマネジメントシステム全体の計画策定 実施 確認及び改善の体系的なマネジメント 資源の有効利用及び説明責任の強化

第 1 四半期は好調なスタートとなり 通年でも好調を維持する見通しです 主要製品の販売量を高水準で維持しながら 他の主な指標すべてにおいても 非常に好調であった前年同期からさらに大幅に向上しました と コベストロのチーフ コマーシャル オフィサー (CCO) であり 次期最高経営責任者 (CEO)

けた取組が重要である 米国 カナダ 欧州諸国が UNFCCC へ提出した 2050 年に向けた長期戦略においても 濃淡はあるものの 各国ともゼロエミッション化 電化の重要な手段として CCS/CCUS を位置付けている これまで 将来的に CO2 削減にかかるコストについては 様々な報告がなされてい

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バイオ燃料

3 流動比率 (%) 流動資産流動負債 短期的な債務に対する支払能力を表す指標である 平成 26 年度からは 会計制度の見直しに伴い 流動負債に 1 年以内に償還される企業債や賞与引当金等が計上されることとなったため それ以前と比べ 比率は下がっている 分析にあたっての一般的な考え方 当該指標は 1

産業組織論(企業経済論)

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電解水素製造の経済性 再エネからの水素製造 - 余剰電力の特定 - 再エネの水素製造への利用方法 エネルギー貯蔵としての再エネ水素 まとめ Copyright 215, IEEJ, All rights reserved 2

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平成20年度税制改正(地方税)要望事項

別添 4 レファレンスアプローチと部門別アプローチの比較とエネルギー収支 A4.2. CO 2 排出量の差異について 1990~2012 年度における CO 2 排出量の差異の変動幅は -1.92%(2002 年度 )~1.96%(2008 年度 ) となっている なお エネルギーとして利用された廃

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2019 年 3 月期決算説明会 2019 年 3 月期連結業績概要 2019 年 5 月 13 日 太陽誘電株式会社経営企画本部長増山津二 TAIYO YUDEN 2017

大規模災害等に備えたバックアップや通信回線の考慮 庁舎内への保存等の構成について示すこと 1.5. 事業継続 事業者もしくは構成企業 製品製造元等の破綻等により サービスの継続が困難となった場合において それぞれのパターン毎に 具体的な対策を示すこと 事業者の破綻時には第三者へサービスの提供を引き継

輸入バイオマス燃料の状況 2019 年 10 月 株式会社 FT カーボン 目 次 1. 概要 PKS PKS の輸入動向 年の PKS の輸入動向 PKS の輸入単価 木質ペレット

ピクテ・インカム・コレクション・ファンド(毎月分配型)

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水素の 利用 輸送 貯蔵 製造2030 年頃 2040 年頃庭用海外 水素 燃料電池戦略ロードマップ概要 (2) ~ 全分野一覧 ~ 海外の未利用エネルキ ー ( 副生水素 原油随伴カ ス 褐炭等 ) 水素の製造 輸送 貯蔵の本格化現状ナフサや天然カ ス等フェーズ3: トータルでのCO2フリー水素供

エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律の制定の背景及び概要 ( 平成 22 年 11 月 ) 資源エネルギー庁総合政策課編

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08 資料1 グローバルCCSインスティテュート チーフエグゼクティブ オフィサー ブラッド ペイジ様 ヒアリング資料

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2. 利益剰余金 ( 内部留保 ) 中部の 1 企業当たりの利益剰余金を見ると 製造業 非製造業ともに平成 24 年度以降増加傾向となっており 平成 27 年度は 過去 10 年間で最高額となっている 全国と比較すると 全産業及び製造業は 過去 10 年間全国を上回った状況が続いているものの 非製造

資料2 紙類の判断の基準等の設定に係る検討経緯について

2018年3月期 決算説明会

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( 別紙 ) 中国電力株式会社及び JFE スチール株式会社 ( 仮称 ) 蘇我火力 発電所建設計画計画段階環境配慮書 に対する意見 1. 総論 (1) 石炭火力発電を巡る環境保全に係る国内外の状況を十分認識し 本事業を検討すること 本事業を実施する場合には 本事業に伴う環境影響を回避 低減するため

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参考資料2 プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況 2016年

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新興国市場開拓事業平成 27 年度概算要求額 15.0 億円 (15.0 億円 ) うち優先課題推進枠 15.0 億円 通商政策局国際経済課 商務情報政策局生活文化創造産業課 /1750 事業の内容 事業の概要 目的 急速に拡大する世界市場を獲得するためには 対象となる国 地

ファンド名説明 ifree 8 資産バランス 本を含む世界の 8 資産へ均等に分散投資します 株式および不動産投資信託に投資することで世界の経済成 の果実を享受するとともに これらとは値動きの異なる債券にも投資することで安定した収益の確保も期待できます これまで預貯 中 だったお客様が幅広く資産を分

博士論文 考え続ける義務感と反復思考の役割に注目した 診断横断的なメタ認知モデルの構築 ( 要約 ) 平成 30 年 3 月 広島大学大学院総合科学研究科 向井秀文

企業活動のグローバル化に伴う外貨調達手段の多様化に係る課題

バイオマス比率をめぐる現状 課題と対応の方向性 1 FIT 認定を受けたバイオマス発電設備については 毎の総売電量のうち そのにおける各区分のバイオマス燃料の投入比率 ( バイオマス比率 ) を乗じた分が FIT による売電量となっている 現状 各区分のバイオマス比率については FIT 入札の落札案

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平成22年3月期 決算概要

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2007年12月10日 初稿

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に異なることもありますのでご留意願います 3.3 ヶ年の収益展望 ( 連結 ) の達成条件について 当社は下記 3 ヶ年の収益展望 ( 連結 ) における目標値を達成するため 以下の達成条件を今後のアクションプ ランとして実行してまいります 現状の事業ドメインにおける達成条件 自社製品の拡販 自社製

FIT/ 非 FIT 認定設備が併存する場合の逆潮流の扱いに関する検討状況 現在 一需要家内に FIT 認定設備と非 FIT 認定設備が併存する場合には FIT 制度に基づく買取量 ( 逆潮流量 ) を正確に計量するため 非 FIT 認定設備からの逆潮流は禁止されている (FIT 法施行規則第 5

ミクロ経済学Ⅰ

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ISO9001:2015規格要求事項解説テキスト(サンプル) 株式会社ハピネックス提供資料

御意見の内容 御意見に対する電力 ガス取引監視等委員会事務局の考え方ることは可能です このような訴求は 小売電気事業者が行うことを想定したものですが 消費者においても そのような訴求を行っている小売電気事業者から電気の小売供給を受け 自らが実質的に再生可能エネルギーに由来する電気を消費していることを

資料3-1 温室効果ガス「見える化」の役割について

目次 1. 策定の趣旨 2 2. 水素利活用による効果 3 3. 能代市で水素エネルギーに取り組む意義 5 4. 基本方針 7 5. 水素利活用に向けた取り組みの方向性 8 6. のしろ水素プロジェクト 10 1

弱な他の国々が 強靱で完全に競争的なエネルギー システムを追及することに対しても 支援する 6. 我々は 国連気候変動枠組条約 (UNFCCC) の締約国が第 21 回締約国会議 (COP21) において 産業革命以前と比べ 世界の平均気温上昇を 2 よりも十分低く保持すること 及び世界の平均気温上

概要:プラスチック製容器包装再商品化手法およびエネルギーリカバリーの環境負荷評価(LCA)

経済学でわかる金融・証券市場の話③

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Transcription:

CCS の採用を促進する 回収 を促進する 回収 CO2 の工業利用 2011 年 3 月

The executive summary of ACCELERATING THE UPTAKE OF CCS: INDUSTRIAL USE OF CAPTURED CARBON DIOXIDE has been translated from English into Japanese for convenience. The Global CCS Institute does not warrant the accuracy, authenticity or completeness of any content translated in the Japanese version of the Report. CCS の採用を促進する : 回収 CO 2 の工業利用 は 利用者の便宜のために ACCELERATING THE UPTAKE OF CCS: INDUSTRIAL USE OF CAPTURED CARBON DIOXIDE のエグゼクティブサマリーを英語から日本語に翻訳したものです グローバル CCS インスティテュートは日本語版のいかなる内容についてもその正確性 信頼性又は完全性について保証しません

エグゼクティブサマリー 目的と背景 本報告書の基本目的は CO 2 回収貯留 (CCS) の開発及び商用規模での実施を促進するために CO 2 の既存及び新たな利用法を調査し 工業分野における CO 2 の回収と再利用の可能性を検討することである 本報告書では 石油増進回収 (EOR) などの成熟技術の近い将来の利用及び技術開発の初期段階にあるいくつかの有望な新技術の将来的な利用の両方について検討する 世界の CO 2 再利用に関する市場規模は 現在約 8 千万トン / 年であり 北米の EOR 需要がその大半を占める EOR の年間 CO 2 需要量は約 5 千万トンで そのうち年間 4 千万トン前後は CO 2 貯留層から自然に産する CO 2 が供給されており その価格は通常約 15~19 米ドル / トンである 人為起源 CO 2 の潜在的供給量は 潜在的需要量よりもはるかに大きい 世界で年間約 5 億トンの低コスト (20 米ドル / トン未満 ) 高濃度の CO 2 が 天然ガス処理 肥料プラント及びその他の工業排出源の副産物として利用可能である 高コストではあるが (50~100 米ドル / トン ) 発電所 製鉄所及びセメント工場から現在排出されている希釈 CO 2 流から 年間約 180 億トンを回収できる CO 2 の EOR への再利用は 既存の北米の CCS プロジェクトの収益源であり EOR は北米の多くの CCS プロジェクトの計画に盛り込まれている 世界各地 特に新興国及び発展途上国では CCS 開発の経済的な触媒として EOR の可能性が検討されている 本報告書で検討する重要な課題は EOR 及びその他の CO 2 の再利用技術が CCS の採用とその商業展開を促進できるのかどうかの是非及びその程度である 再利用のための高濃度 CO 2 の将来的な供給量及び市場価格は 政府による CO 2 排出に対する規制又は罰則の適用の程度に大きく影響される したがって 本報告書では CO 2 の再利用が CCS の開発を促進する可能性について 炭素規制及び炭素価格が弱い場合並びにそれらが強い場合の双方の状況下における CO 2 回収コストの高低とそれらの状況との関係について検討している 主な結論 本報告の主な結論は以下のとおりである 1. 現在及び将来見込まれている CO 2 再利用の需要は 人為起源 CO 2 排出量のわずか数パーセントである 再利用によって CO 2 が世界規模で大幅に削減される可能性はないが 再利用施設及び市場が排出源に近い好条件であれば 再利用は短期的な CCS プロジェクトにとってある程度の収益源となる可能性がある 2. EOR は成熟度が高く CO 2 を大量に利用するため 短期的 中期的には依然として主要な CO 2 再利用方法であり続ける そのため EOR は 強力な炭素価格設定がない場合には EOR の実施可能性がある地域における短期的な大規模 CCS 実証プロジェクトの開発支援の一助となっている 初期段階の大規模 CCS 実証試験は 商業展開において重要な前提条件であり 実用的な法制度及び規制制度の策定 地域の受容並びに CCS プロジェクトの最適化及びコスト削減において非常に重要である 3. 新たな CO 2 再利用技術のほとんどは 商用規模の実施に必要な技術的成熟段階に達するまでに数年を要する 鉱物化技術は 最終的に地層貯留において CCS の補完的な役割を持つ可能性があり 小さい割合ながら人為起源 CO 2 の排出量削減を促進することができる 燃料生産における CO 2 の再利用技術も 化石燃料の代替として CO 2 の間接的な緩和となる可能性がある これらは有益だが開発期間が長いため 短期的には CCS の商用規模での実施を加速する推進力には

ならない 4. エネルギー及び建築資材の需要が高く 炭素価格制度の早期採用の可能性が低い新興国及び発展途上国では CO 2 の再利用が大規模 CCS 実証プロジェクトの重要な要素となる可能性がある 成熟度及び CO 2 の使用量からみて EOR は最も注目されるであろう 中国 インドなどの新興国は 炭酸塩鉱物化 CO 2 によるコンクリート養生 ボーキサイト残渣の炭酸化 コールベッドメタン増進回収 (ECBM) 尿素増産及び再生可能メタノールにも関心を持つ可能性がある しかし 3. で前述したように これらの技術は開発の初期段階にあるものもあり CCS の開発と同時期に商用規模で実施されるほどの成熟段階にはないと考えられる 5. バルク CO 2 (CO 2 を大量に販売する場合 ) の現在の市場価格 (15~19 米ドル / トン ) は 将来の CO 2 の上限価格を示唆している 再利用のためのバルク CO 2 の市場価格は 全般的に長期的上昇傾向にはなく CO 2 排出量の規制が導入された場合は市場価格に下落圧力がかかる可能性が高い 強力な炭素価格及び / 又はプロジェクト独自の資金が必要となる発電所 製鉄所及びセメント工場については CO 2 の再利用による収益では CCS 開発の推進に十分ではない 中期的には 天然ガスの処理及び肥料生産など低価格のソースからの CO 2 供給が 再利用 CO 2 の供給量増加の大部分を占める可能性が高い 6. 強力な炭素価格がない場合及び新興国では 実証段階における CCS 開発を支援する上で CO 2 の再利用が初期的な役割を果たす しかし 排出される炭素のコストが上昇するにしたがい EOR( 成熟度が高いため採用された ) を中心とする CO 2 再利用の初期的な役割は重要ではなくなり 最終的には商用規模で広範な CCS 実施を促進することとなる さらに 5. で前述したように 排出量の規制強化に伴う炭素価格の上昇にしたがってバルク CO 2 の価格が下がる可能性が高い 報告の構成 本報告は以下のような構成となっている 序文 背景及び状況 第 1 部 CO 2 再利用技術の調査及び評価 第 2 部 CO 2 再利用のための 第 3 部 主要な調査結果 提言及び結論 CO 2 再利用技術 本報告書の第 1 部では 既存及び新たな CO 2 再利用技術を調査し 現在及び将来予測される市場規模について考察している これらの技術は CO 2 の世界全体の再利用能力のしきい値である年間 500 万トンに基づき選定したものである このしきい値の設定は 発電所及びその他の大規模工業の点排出源からの CO 2 排出量と同規模の CO 2 を必要とする可能性のある技術に調査の重点を置くものであり これら技術が CCS 促進に貢献し得るかの手がかりとなる 詳細な分析と評価が行われる CO 2 の再利用技術には以下のものがある

石油増進回収 (EOR) 鉱物化 ( 炭酸塩鉱物化 / コンクリート養生 / ボーキサイト残渣処理を含む ) 尿素増産 ( 原料として CO 2 を使用 ) 強化地熱システム ( 作動流体として CO 2 を使用 ) ポリマー処理 ( 原料として CO 2 を使用 ) 藻類生産 液体燃料 ( 再生可能メタノール / ギ酸を含む ) コールベッドメタン増進回収 (ECBM) 上述の技術についての机上調査でそれらの特性が分かり 以下の点が明らかになった 各再利用技術は ( 高濃度 CO 2 ガスから未処理燃焼排ガスなどの低濃度 CO 2 ガスまでの ) 各種 CO 2 排出源を活用し CO 2 の恒久的貯留の特性は様々である これら特性の違いは CCS の採用促進という目標を考慮する場合に様々な影響をもたらす 以下の図に示すとおり 選定された CO 2 再利用技術の開発段階と成熟度は様々である (EGS: Enhanced geothermal systems ECBM: Enhanced coal bed methane) 注記 : それぞれの提案者の主張に基づき 薄い青の丸印は実証規模であることを表し 濃い青の丸印は技術の商用規模の稼動を表す 結果として 見通しは楽観的であると考えられる 濃い青の丸印から伸びている矢印は実用化までのより実際的な期間を示す 選定された CO 2 再利用技術は以下の 3 つに大別される 1. EOR 及び尿素増産はすでに商用利用の実績がある CO 2 再利用技術であり 成熟していると考えられる 2. ボーキサイト残渣 ( 赤泥 ) の炭酸化はすでに商用規模で初期稼動している一方で 再生可能メタノールは商用規模で建設中である これらの技術はどちらも地点に依存し 適切な地域条件によって存在し得る 3. その他の技術には 相対的な成熟度の順に炭酸塩鉱物化 コンクリート養生 炭層メタン増進 ( ECBM: Enhanced coal bed methane) 地熱増進システム (EGS: Enhanced geothermal systems) ポリマー 藻類及びギ酸があるが これらは技術的な実証試験及び / 又は実証プラントによる更なる実証が必要な有望技術である

各 CO 2 再利用技術は 将来の潜在的需要と推定収益が大きく異なる 選定された技術について 現在から 2020 年までの世界全体の推定累計需要と推定総収益を以下に示す 2020 年までの累計需要 2020 年までの総収益 * 技術 / 用途 >5 億トン >75 億米ドル EOR 2000 万トン ~1 億トン最大 15 億米ドル尿素増産 鉱物炭酸化及び ECBM 500 万トン ~2000 万トン 最大 3 億米ドルポリマー 再生可能メタノール CO 2 コンクリート養生 ボーキサイト残渣炭酸化及び藻類栽培 <500 万トン 7500 万米ドル未満ギ酸及び EGS * 収益は想定バルク CO 2 価格 15 米ドル / トンに基づく 成熟した再利用技術 特に EOR は 後の段階である広範な CCS 実施へ道筋をつけるために必要な 初期的 CCS 実証プロジェクトの経済的実行可能性を収益面で補完できる 初期の実証プロジェクトでは 実践的学習 によってコストを最適化するとともに CCS に対する地域の信頼を獲得し 有効な法規制を構築する必要がある EOR は 条件の良い場所で行われる初期の実証プロジェクトの近い将来の開発を加速する役割を有するが 後の段階における広範な CCS 実施を実質的に促進することとなるような十分な CO 2 需要をもたらすことができるかは明確ではない CCS の経済的推進力としての CO 2 の再利用 各再利用技術は 後の広範な実施段階での CCS を促進するために 大規模な CO 2 需要と収益源を生み出すだけでなく CCS の開発予想期間と足並みを揃えるよう商用的操業段階に近づけておく必要がある さらに CCS の広範な採用促進の上で特定の技術が持つ影響の大きさは バルク CO 2 市場の経済状況 ( 再利用技術を利用した ) 最終生産物の価値及び炭素価格の導入などの推進力にも大きく関わっている CO 2 の再利用に関連する経済性及び商業的枠組みの評価は 本報告書 ( 第 2 部 ) の中核を成すものであり 以下の主要な調査結果が明らかになった 1. 短期的には CO 2 再利用による収益は CCS 実施の主要な推進力にはならない ただし 実証プロジェクトが進展している場合 再利用による収益は CCS コストをある程度相殺する役割を果たす したがって 再利用は 長期的かつ広範に商用規模で実施されるプロジェクトではなく 初期の実証プロジェクトにおいて利益をもたらす これは再利用技術への CO 2 供給の際に 排出者が長期に渡って生み出す潜在的な収益は 大量かつ長期的な CO 2 の供給過剰によって下落圧力がかかる可能性があるためである 炭素価格の導入は 排出者が炭素ペナルティの支払いを回避するために自社の CO 2 を処理する必要性を増加させ 現在のバルク CO 2 の市場価格を押し下げることになる 2. 広範な商用規模の CCS 実施には 再利用のためのバルク CO 2 の推定市場価格よりもはるかに高い世界的な炭素価格が必要となる 主に EOR など CO 2 の再利用により生み出される収益は 初期の実証プロジェクトにおいては ある程度の経済的な支援となるが 長期的には炭素価格の導入が すべての CO 2 固定排出源に対して CCS が広範に採用されるための重要な推進力となる 発電所 製鉄所及びセメント工場における CCS の推定コストギャップは現在のバルク CO 2 の市

場価格より数倍高いが 炭素価格が上昇すると最終的にはバルク CO 2 の市場価格へ下落圧力がかかる 回収コストの低い工業排出源においては 適度な初期炭素価格が 近い将来 現在のガス関連 CCS のプロジェクト数以上に CCS を実施するきっかけとなる十分な可能性がある 3. CO 2 再利用による削減実績の法的な承認に係る不確実性は 再利用技術の採用に対する課題となっている CO 2 を恒久的に貯留しない CO 2 再利用技術においては CO 2 排出者と最終生産物との間で 炭素ペナルティの責任に関する不確実性が存在するため その技術への投資は結果的により大きなリスクにさらされることとなる 一方では CO 2 の排出者 ( 発電所又は工業排出源 ) は CO 2 を再利用しているにもかかわらず 炭素価格 / 炭素税を全額負担しなければならない可能性がある これは再利用を目的とした CO 2 の回収を 商業的に魅力のないものにする 他方で 炭素価格が最終生産物に転嫁されれば その製品は商業的に競争力がなくなるというリスクがある 学習と受容の推進力としての CO 2 の再利用 成熟した形態の CO 2 再利用は 特に強力な炭素価格が存在しない場合 初期の大規模実証プロジェクトの比較的早い段階の開発を実質的に進展させる可能性がある これらの実証プロジェクトは 実用的な法規制の整備 地域住民の CCS の受容及びプロジェクトとコストの最適化において 実践的学習 を通じて重要な役割を果たす 初期の CCS 実証開発における CO 2 再利用技術の影響に関する本報告書の主な分析結果は次のとおりである 1. 測定 監視及び検証 (MMV) を組み合わせた EOR を使用した CO 2 再利用によって 貯留に関する知見を得ることができ CO 2 貯留に関する地域住民の受容が促進される EOR における CO 2 の利用は CO 2 プルーム ( 注入された CO2 を含む地下の空間的領域 ) の移動を追跡するために MMV と組み合わせることによって 貯留層の詳細な地質を明らかにし 地下の CO 2 移動に影響する要因の理解を促進する Weyburn-Midale 及び Cranfield プロジェクトはこの可能性の実例である 2. EOR 及び程度は下がるがその他の技術による CO 2 の再利用は 回収技術の開発及び知見習得の機会を提供する 高濃度 CO 2 の低コスト排出源 ( 天然ガス処理 肥料工場など ) は 再利用において一般的に最も競争力のある供給源であるが 再利用による収益と助成金の組み合わせによって 発電所 製鉄所及びセメント工場から排出される CO 2 を回収する実証プロジェクトを実施する場合もある そのような実証プロジェクトによって CO 2 回収に関する知見習得の追加的又は早期の機会が与えられ さらに EOR 以外の再利用技術の適用によって 地層貯留が可能な場所が近くにない回収プロジェクトも実施可能になることがある 3. エネルギー及び建設資材の需要が高く 炭素価格を早期に採用する可能性が低い新興国及び発展途上国においては CO 2 の再利用は CCS 実証プロジェクトの重要な要素となる可能性が高い EOR が主な関心事項となると考えられるが 炭酸塩鉱物化 CO 2 を使用したコンクリート養生 ボーキサイト残渣の炭酸化 ECBM 尿素増産及び再生可能メタノールも 新興国の関心が特に高い可能性がある しかし これらの技術の中には開発の初期段階にあるものもあり CCS の開発と同時期に商用規模で実施するのに必要とされる成熟段階にはないと考えられる 推奨事項 推奨される優先実施項目は 以下のとおりである 1. 地域の CO 2 再利用プロジェクトの可能性を地図化し CO 2 に由来する製品への高い需要と一致する CO 2 の点排出源 特に高濃度排出源を特定する 必然的に 本報告書の技術及び商業面の評価は世界規模のレベルで行われた 特定の地域を対象とし その地域において CO 2 由来の製品に対する強い需要が CO 2 の点排出源と一致している場合 地域プロジェクトを実施する機会

が生じ得る 特に新興国では ガス処理 石炭ガス化及び肥料生産に関連した CO 2 排出源などの 低コストで高濃度の CO 2 排出源を特定することが CO 2 再利用プロジェクトの実現可能性を確認する上で特に重要である 2. 北米以外での CO 2 -EOR の実施及び CO 2 -EOR に関連する知見の習得並びに地域住民の受容機会の最大化を奨励する 現在の調査では CO 2 再利用技術としての CO 2 -EOR は その成熟度と CO 2 利用容量の大きさから従来型の CCS の促進に最適であると認識されており 初期の実証プロジェクトを円滑に実施する上で重要となる可能性が高い 北米の CO 2 -EOR 産業は成熟しているが 北米以外での実施は今までのところ限定されている EOR による地下 CO 2 プルームの厳密な測定 監視及び検証 (MMV) の導入は プロジェクトがもたらす貯留に関する知見の習得と 地域住民の受容というメリットを最大限引き出す鍵となる 3. 新興国及び発展途上国における大規模 CCS 実証プロジェクトの開発を促進するプログラムにおいては 特に CO 2 再利用の可能性に注目する CO 2 点排出源の地図化及びランク付けと再利用可能性とを一致させることは 途上国及び新興国で大規模 CCS 実証プロジェクトの開発を促進するための支援及び / 又は資金の優先順位を決める上で有益な手段となる