CCS の採用を促進する 回収 を促進する 回収 CO2 の工業利用 2011 年 3 月
The executive summary of ACCELERATING THE UPTAKE OF CCS: INDUSTRIAL USE OF CAPTURED CARBON DIOXIDE has been translated from English into Japanese for convenience. The Global CCS Institute does not warrant the accuracy, authenticity or completeness of any content translated in the Japanese version of the Report. CCS の採用を促進する : 回収 CO 2 の工業利用 は 利用者の便宜のために ACCELERATING THE UPTAKE OF CCS: INDUSTRIAL USE OF CAPTURED CARBON DIOXIDE のエグゼクティブサマリーを英語から日本語に翻訳したものです グローバル CCS インスティテュートは日本語版のいかなる内容についてもその正確性 信頼性又は完全性について保証しません
エグゼクティブサマリー 目的と背景 本報告書の基本目的は CO 2 回収貯留 (CCS) の開発及び商用規模での実施を促進するために CO 2 の既存及び新たな利用法を調査し 工業分野における CO 2 の回収と再利用の可能性を検討することである 本報告書では 石油増進回収 (EOR) などの成熟技術の近い将来の利用及び技術開発の初期段階にあるいくつかの有望な新技術の将来的な利用の両方について検討する 世界の CO 2 再利用に関する市場規模は 現在約 8 千万トン / 年であり 北米の EOR 需要がその大半を占める EOR の年間 CO 2 需要量は約 5 千万トンで そのうち年間 4 千万トン前後は CO 2 貯留層から自然に産する CO 2 が供給されており その価格は通常約 15~19 米ドル / トンである 人為起源 CO 2 の潜在的供給量は 潜在的需要量よりもはるかに大きい 世界で年間約 5 億トンの低コスト (20 米ドル / トン未満 ) 高濃度の CO 2 が 天然ガス処理 肥料プラント及びその他の工業排出源の副産物として利用可能である 高コストではあるが (50~100 米ドル / トン ) 発電所 製鉄所及びセメント工場から現在排出されている希釈 CO 2 流から 年間約 180 億トンを回収できる CO 2 の EOR への再利用は 既存の北米の CCS プロジェクトの収益源であり EOR は北米の多くの CCS プロジェクトの計画に盛り込まれている 世界各地 特に新興国及び発展途上国では CCS 開発の経済的な触媒として EOR の可能性が検討されている 本報告書で検討する重要な課題は EOR 及びその他の CO 2 の再利用技術が CCS の採用とその商業展開を促進できるのかどうかの是非及びその程度である 再利用のための高濃度 CO 2 の将来的な供給量及び市場価格は 政府による CO 2 排出に対する規制又は罰則の適用の程度に大きく影響される したがって 本報告書では CO 2 の再利用が CCS の開発を促進する可能性について 炭素規制及び炭素価格が弱い場合並びにそれらが強い場合の双方の状況下における CO 2 回収コストの高低とそれらの状況との関係について検討している 主な結論 本報告の主な結論は以下のとおりである 1. 現在及び将来見込まれている CO 2 再利用の需要は 人為起源 CO 2 排出量のわずか数パーセントである 再利用によって CO 2 が世界規模で大幅に削減される可能性はないが 再利用施設及び市場が排出源に近い好条件であれば 再利用は短期的な CCS プロジェクトにとってある程度の収益源となる可能性がある 2. EOR は成熟度が高く CO 2 を大量に利用するため 短期的 中期的には依然として主要な CO 2 再利用方法であり続ける そのため EOR は 強力な炭素価格設定がない場合には EOR の実施可能性がある地域における短期的な大規模 CCS 実証プロジェクトの開発支援の一助となっている 初期段階の大規模 CCS 実証試験は 商業展開において重要な前提条件であり 実用的な法制度及び規制制度の策定 地域の受容並びに CCS プロジェクトの最適化及びコスト削減において非常に重要である 3. 新たな CO 2 再利用技術のほとんどは 商用規模の実施に必要な技術的成熟段階に達するまでに数年を要する 鉱物化技術は 最終的に地層貯留において CCS の補完的な役割を持つ可能性があり 小さい割合ながら人為起源 CO 2 の排出量削減を促進することができる 燃料生産における CO 2 の再利用技術も 化石燃料の代替として CO 2 の間接的な緩和となる可能性がある これらは有益だが開発期間が長いため 短期的には CCS の商用規模での実施を加速する推進力には
ならない 4. エネルギー及び建築資材の需要が高く 炭素価格制度の早期採用の可能性が低い新興国及び発展途上国では CO 2 の再利用が大規模 CCS 実証プロジェクトの重要な要素となる可能性がある 成熟度及び CO 2 の使用量からみて EOR は最も注目されるであろう 中国 インドなどの新興国は 炭酸塩鉱物化 CO 2 によるコンクリート養生 ボーキサイト残渣の炭酸化 コールベッドメタン増進回収 (ECBM) 尿素増産及び再生可能メタノールにも関心を持つ可能性がある しかし 3. で前述したように これらの技術は開発の初期段階にあるものもあり CCS の開発と同時期に商用規模で実施されるほどの成熟段階にはないと考えられる 5. バルク CO 2 (CO 2 を大量に販売する場合 ) の現在の市場価格 (15~19 米ドル / トン ) は 将来の CO 2 の上限価格を示唆している 再利用のためのバルク CO 2 の市場価格は 全般的に長期的上昇傾向にはなく CO 2 排出量の規制が導入された場合は市場価格に下落圧力がかかる可能性が高い 強力な炭素価格及び / 又はプロジェクト独自の資金が必要となる発電所 製鉄所及びセメント工場については CO 2 の再利用による収益では CCS 開発の推進に十分ではない 中期的には 天然ガスの処理及び肥料生産など低価格のソースからの CO 2 供給が 再利用 CO 2 の供給量増加の大部分を占める可能性が高い 6. 強力な炭素価格がない場合及び新興国では 実証段階における CCS 開発を支援する上で CO 2 の再利用が初期的な役割を果たす しかし 排出される炭素のコストが上昇するにしたがい EOR( 成熟度が高いため採用された ) を中心とする CO 2 再利用の初期的な役割は重要ではなくなり 最終的には商用規模で広範な CCS 実施を促進することとなる さらに 5. で前述したように 排出量の規制強化に伴う炭素価格の上昇にしたがってバルク CO 2 の価格が下がる可能性が高い 報告の構成 本報告は以下のような構成となっている 序文 背景及び状況 第 1 部 CO 2 再利用技術の調査及び評価 第 2 部 CO 2 再利用のための 第 3 部 主要な調査結果 提言及び結論 CO 2 再利用技術 本報告書の第 1 部では 既存及び新たな CO 2 再利用技術を調査し 現在及び将来予測される市場規模について考察している これらの技術は CO 2 の世界全体の再利用能力のしきい値である年間 500 万トンに基づき選定したものである このしきい値の設定は 発電所及びその他の大規模工業の点排出源からの CO 2 排出量と同規模の CO 2 を必要とする可能性のある技術に調査の重点を置くものであり これら技術が CCS 促進に貢献し得るかの手がかりとなる 詳細な分析と評価が行われる CO 2 の再利用技術には以下のものがある
石油増進回収 (EOR) 鉱物化 ( 炭酸塩鉱物化 / コンクリート養生 / ボーキサイト残渣処理を含む ) 尿素増産 ( 原料として CO 2 を使用 ) 強化地熱システム ( 作動流体として CO 2 を使用 ) ポリマー処理 ( 原料として CO 2 を使用 ) 藻類生産 液体燃料 ( 再生可能メタノール / ギ酸を含む ) コールベッドメタン増進回収 (ECBM) 上述の技術についての机上調査でそれらの特性が分かり 以下の点が明らかになった 各再利用技術は ( 高濃度 CO 2 ガスから未処理燃焼排ガスなどの低濃度 CO 2 ガスまでの ) 各種 CO 2 排出源を活用し CO 2 の恒久的貯留の特性は様々である これら特性の違いは CCS の採用促進という目標を考慮する場合に様々な影響をもたらす 以下の図に示すとおり 選定された CO 2 再利用技術の開発段階と成熟度は様々である (EGS: Enhanced geothermal systems ECBM: Enhanced coal bed methane) 注記 : それぞれの提案者の主張に基づき 薄い青の丸印は実証規模であることを表し 濃い青の丸印は技術の商用規模の稼動を表す 結果として 見通しは楽観的であると考えられる 濃い青の丸印から伸びている矢印は実用化までのより実際的な期間を示す 選定された CO 2 再利用技術は以下の 3 つに大別される 1. EOR 及び尿素増産はすでに商用利用の実績がある CO 2 再利用技術であり 成熟していると考えられる 2. ボーキサイト残渣 ( 赤泥 ) の炭酸化はすでに商用規模で初期稼動している一方で 再生可能メタノールは商用規模で建設中である これらの技術はどちらも地点に依存し 適切な地域条件によって存在し得る 3. その他の技術には 相対的な成熟度の順に炭酸塩鉱物化 コンクリート養生 炭層メタン増進 ( ECBM: Enhanced coal bed methane) 地熱増進システム (EGS: Enhanced geothermal systems) ポリマー 藻類及びギ酸があるが これらは技術的な実証試験及び / 又は実証プラントによる更なる実証が必要な有望技術である
各 CO 2 再利用技術は 将来の潜在的需要と推定収益が大きく異なる 選定された技術について 現在から 2020 年までの世界全体の推定累計需要と推定総収益を以下に示す 2020 年までの累計需要 2020 年までの総収益 * 技術 / 用途 >5 億トン >75 億米ドル EOR 2000 万トン ~1 億トン最大 15 億米ドル尿素増産 鉱物炭酸化及び ECBM 500 万トン ~2000 万トン 最大 3 億米ドルポリマー 再生可能メタノール CO 2 コンクリート養生 ボーキサイト残渣炭酸化及び藻類栽培 <500 万トン 7500 万米ドル未満ギ酸及び EGS * 収益は想定バルク CO 2 価格 15 米ドル / トンに基づく 成熟した再利用技術 特に EOR は 後の段階である広範な CCS 実施へ道筋をつけるために必要な 初期的 CCS 実証プロジェクトの経済的実行可能性を収益面で補完できる 初期の実証プロジェクトでは 実践的学習 によってコストを最適化するとともに CCS に対する地域の信頼を獲得し 有効な法規制を構築する必要がある EOR は 条件の良い場所で行われる初期の実証プロジェクトの近い将来の開発を加速する役割を有するが 後の段階における広範な CCS 実施を実質的に促進することとなるような十分な CO 2 需要をもたらすことができるかは明確ではない CCS の経済的推進力としての CO 2 の再利用 各再利用技術は 後の広範な実施段階での CCS を促進するために 大規模な CO 2 需要と収益源を生み出すだけでなく CCS の開発予想期間と足並みを揃えるよう商用的操業段階に近づけておく必要がある さらに CCS の広範な採用促進の上で特定の技術が持つ影響の大きさは バルク CO 2 市場の経済状況 ( 再利用技術を利用した ) 最終生産物の価値及び炭素価格の導入などの推進力にも大きく関わっている CO 2 の再利用に関連する経済性及び商業的枠組みの評価は 本報告書 ( 第 2 部 ) の中核を成すものであり 以下の主要な調査結果が明らかになった 1. 短期的には CO 2 再利用による収益は CCS 実施の主要な推進力にはならない ただし 実証プロジェクトが進展している場合 再利用による収益は CCS コストをある程度相殺する役割を果たす したがって 再利用は 長期的かつ広範に商用規模で実施されるプロジェクトではなく 初期の実証プロジェクトにおいて利益をもたらす これは再利用技術への CO 2 供給の際に 排出者が長期に渡って生み出す潜在的な収益は 大量かつ長期的な CO 2 の供給過剰によって下落圧力がかかる可能性があるためである 炭素価格の導入は 排出者が炭素ペナルティの支払いを回避するために自社の CO 2 を処理する必要性を増加させ 現在のバルク CO 2 の市場価格を押し下げることになる 2. 広範な商用規模の CCS 実施には 再利用のためのバルク CO 2 の推定市場価格よりもはるかに高い世界的な炭素価格が必要となる 主に EOR など CO 2 の再利用により生み出される収益は 初期の実証プロジェクトにおいては ある程度の経済的な支援となるが 長期的には炭素価格の導入が すべての CO 2 固定排出源に対して CCS が広範に採用されるための重要な推進力となる 発電所 製鉄所及びセメント工場における CCS の推定コストギャップは現在のバルク CO 2 の市
場価格より数倍高いが 炭素価格が上昇すると最終的にはバルク CO 2 の市場価格へ下落圧力がかかる 回収コストの低い工業排出源においては 適度な初期炭素価格が 近い将来 現在のガス関連 CCS のプロジェクト数以上に CCS を実施するきっかけとなる十分な可能性がある 3. CO 2 再利用による削減実績の法的な承認に係る不確実性は 再利用技術の採用に対する課題となっている CO 2 を恒久的に貯留しない CO 2 再利用技術においては CO 2 排出者と最終生産物との間で 炭素ペナルティの責任に関する不確実性が存在するため その技術への投資は結果的により大きなリスクにさらされることとなる 一方では CO 2 の排出者 ( 発電所又は工業排出源 ) は CO 2 を再利用しているにもかかわらず 炭素価格 / 炭素税を全額負担しなければならない可能性がある これは再利用を目的とした CO 2 の回収を 商業的に魅力のないものにする 他方で 炭素価格が最終生産物に転嫁されれば その製品は商業的に競争力がなくなるというリスクがある 学習と受容の推進力としての CO 2 の再利用 成熟した形態の CO 2 再利用は 特に強力な炭素価格が存在しない場合 初期の大規模実証プロジェクトの比較的早い段階の開発を実質的に進展させる可能性がある これらの実証プロジェクトは 実用的な法規制の整備 地域住民の CCS の受容及びプロジェクトとコストの最適化において 実践的学習 を通じて重要な役割を果たす 初期の CCS 実証開発における CO 2 再利用技術の影響に関する本報告書の主な分析結果は次のとおりである 1. 測定 監視及び検証 (MMV) を組み合わせた EOR を使用した CO 2 再利用によって 貯留に関する知見を得ることができ CO 2 貯留に関する地域住民の受容が促進される EOR における CO 2 の利用は CO 2 プルーム ( 注入された CO2 を含む地下の空間的領域 ) の移動を追跡するために MMV と組み合わせることによって 貯留層の詳細な地質を明らかにし 地下の CO 2 移動に影響する要因の理解を促進する Weyburn-Midale 及び Cranfield プロジェクトはこの可能性の実例である 2. EOR 及び程度は下がるがその他の技術による CO 2 の再利用は 回収技術の開発及び知見習得の機会を提供する 高濃度 CO 2 の低コスト排出源 ( 天然ガス処理 肥料工場など ) は 再利用において一般的に最も競争力のある供給源であるが 再利用による収益と助成金の組み合わせによって 発電所 製鉄所及びセメント工場から排出される CO 2 を回収する実証プロジェクトを実施する場合もある そのような実証プロジェクトによって CO 2 回収に関する知見習得の追加的又は早期の機会が与えられ さらに EOR 以外の再利用技術の適用によって 地層貯留が可能な場所が近くにない回収プロジェクトも実施可能になることがある 3. エネルギー及び建設資材の需要が高く 炭素価格を早期に採用する可能性が低い新興国及び発展途上国においては CO 2 の再利用は CCS 実証プロジェクトの重要な要素となる可能性が高い EOR が主な関心事項となると考えられるが 炭酸塩鉱物化 CO 2 を使用したコンクリート養生 ボーキサイト残渣の炭酸化 ECBM 尿素増産及び再生可能メタノールも 新興国の関心が特に高い可能性がある しかし これらの技術の中には開発の初期段階にあるものもあり CCS の開発と同時期に商用規模で実施するのに必要とされる成熟段階にはないと考えられる 推奨事項 推奨される優先実施項目は 以下のとおりである 1. 地域の CO 2 再利用プロジェクトの可能性を地図化し CO 2 に由来する製品への高い需要と一致する CO 2 の点排出源 特に高濃度排出源を特定する 必然的に 本報告書の技術及び商業面の評価は世界規模のレベルで行われた 特定の地域を対象とし その地域において CO 2 由来の製品に対する強い需要が CO 2 の点排出源と一致している場合 地域プロジェクトを実施する機会
が生じ得る 特に新興国では ガス処理 石炭ガス化及び肥料生産に関連した CO 2 排出源などの 低コストで高濃度の CO 2 排出源を特定することが CO 2 再利用プロジェクトの実現可能性を確認する上で特に重要である 2. 北米以外での CO 2 -EOR の実施及び CO 2 -EOR に関連する知見の習得並びに地域住民の受容機会の最大化を奨励する 現在の調査では CO 2 再利用技術としての CO 2 -EOR は その成熟度と CO 2 利用容量の大きさから従来型の CCS の促進に最適であると認識されており 初期の実証プロジェクトを円滑に実施する上で重要となる可能性が高い 北米の CO 2 -EOR 産業は成熟しているが 北米以外での実施は今までのところ限定されている EOR による地下 CO 2 プルームの厳密な測定 監視及び検証 (MMV) の導入は プロジェクトがもたらす貯留に関する知見の習得と 地域住民の受容というメリットを最大限引き出す鍵となる 3. 新興国及び発展途上国における大規模 CCS 実証プロジェクトの開発を促進するプログラムにおいては 特に CO 2 再利用の可能性に注目する CO 2 点排出源の地図化及びランク付けと再利用可能性とを一致させることは 途上国及び新興国で大規模 CCS 実証プロジェクトの開発を促進するための支援及び / 又は資金の優先順位を決める上で有益な手段となる